「自分に自信のある人はいない」『昭和元禄落語心中』 が心に響く名作である理由
しかし落語は逆に、女の居場所がない世界です。小夏は、子どもの頃から落語に慣れ親しんでいながら、落語家になることはできません。八雲も小夏も、生まれた場所の違いから、自分の性別を肯定することができないのです。
自分に落ち度がなくても、自分を認めてもらえないことがある。逆に、自分ですべてを壊してしまう人もいる。どうして人生ってこううまく行かないんだろう、などと思ってしまいます。
そして、作中に産まれた赤ん坊、実はとある人の子どもかもしれない……という予測が語られます。その展開を読んだとき、ドドン! と心臓が鳴りました。
こんな奇跡のような子どもがいるのかと。
漫画を読み終えたとき、胸がずしんと重たくなり、頭はのろのろと動きが悪くなって、物語の中に自分が入り込んでしまうことがあります。それは間違いなく自分の人生を変えるような名作です。
『昭和元禄落語心中』は、そんな物語でした。Text/和久井香菜子
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