「ひとり」も「ふたり」も、どの関係が尊いかなんて他人にはわからない
というのが描かれていた作品だったと思うのです。
もう一つ似たような夫婦の情を描いた作品で、池田理代子さんの漫画『ベルサイユのばら』で、私がすごく気に入っているシーンがあります。
フランス革命によって夫婦そろって追い詰められ、最終的にアントワネットの夫・ルイ16世が死刑台にのぼることになってしまった際のエピソードです。
「パンがなければお菓子を食べればいいじゃない」のセリフで悪名高いアントワネットはそれまで、豪華な服やギャンブルで浪費し放題、さらにスウェーデンの伯爵フェルゼンとの不倫の恋に溺れていた、とんでもない妻でした。そんな彼女が、死に際に冴えなかった夫・ルイ16世への思いを独白しているシーンがあります。
いわく、不倫相手であるフェルゼンに抱いたような熱い思いを、夫に向けたことはなかった。だけど、長年連れ添ってきた夫には淡い情のような感情があって、これだって愛に違いはなかったのではないかというのです。そうして、心の内で自分の思いを噛み締めながら、死刑台にのぼる夫を見送ります。
「夫婦」と一言でいっても、愛し合っている夫婦もいれば憎み合っている夫婦もおり、またほとんど何の感情も抱かず、お互いを空気のように思っている夫婦もいます。