シェアしたくなる法律相談所がお届けする新着記事一覧 (16/28)
*画像はイメージです:やブログなどを利用している人は多いと思いますが、個人から情報発信をすることができる、ということは一昔前からすると非常にすごいことです。個人の情報発信が増えるということは、それだけ自由闊達な議論ができることにつながるため、プラスの側面があるといえます。しかし、これを悪用して、稀にデマを流す人もいます。誰も傷つかないデマであれば問題ありませんが、場合によっては誰かを傷つけたり、社会の混乱を招いてしまうこともあります。このようなデマ情報を公開した場合、どのような問題があるでしょうか。 ■無害なものであれば罪に問われない仮に、デマを発信したとしても、そのデマが誰にも信用されないものであるとすれば、何の影響力もないため、問題にされることはありません。しかし、デマにより他人に迷惑をかけるようなことになれば、いろいろな法律に抵触する可能性が出てきます。 ■風説の流布デマといってもいろいろな種類があると思いますが、たとえば上場企業についてのデマを流して、株価に影響を及ぼすことを目的にしている場合、「風説の流布」に当たるとして、金融商品取引法違反として摘発される可能性があります。風説の流布は、合理的な根拠のない事実やうわさを、不特定多数の人に伝達される状態に置くと成立し得ますが、ネット(ブログやSNS)はそれ自体不特定多数の人に伝達される状態にあるものです。そのため、単に個人の予想や願望を発信することにどとまらず、相場の変動を目的にしたデマを流せば、金融商品取引法違反に問われる可能性があります。 ■名誉毀損名誉毀損とは、社会定期評価の低下を招く表現を指します。社会的評価とは、ごく簡単にいえば、一般にどのように認識されているのかということであり、マイナスに受け取られる事態があれば名誉毀損になり得るということになります。株価をマイナス方向に仕向けようとする風説の流布が成立するような場合、同時に名誉毀損罪も成立し得ます。また、上場企業でなければ株価についての問題は通常生じないですが、未上場企業で会っても、社会の評価の中で活動していることは当然であるため、その評価を不当に下げられる事態に至れば、名誉毀損罪が成立する可能性があります。 ■業務妨害デマが流されることで本来不要な業務が発生したり、正常な業務に支障を来たされた場合、業務妨害罪が成立する余地があります。風説の流布が成立するような場合は、業務妨害罪も成立しているといえる場合も多いだろうと思います。また、名誉毀損罪と同じく、未上場企業においても、デマによって当別の出費が生じたり、特別の対応をする必要が生じた場合には、業務妨害罪が成立する可能性があります。 *著者:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)【画像】イメージです*kikuo / PIXTA(ピクスタ)
2017年07月07日*画像はイメージです:夏の行楽シーズンが近づいてきました。中には、海外旅行などの計画を立てている人もいらっしゃるのではないかと思います。しかし、いつにもましてこれからの時期に気をつけたいのが交通事故。浮かれ気分で車でレジャーに向かう人が多いぶん、いつもより危険があります。仮に交通事故に巻き込まれてけがをしてしまい、楽しみにしていた旅行に行けなくなったとしましょう。場合によってはキャンセル料が発生することもありえます。このような場合、事故の加害者に対して、旅行のキャンセル料は請求することができるのでしょうか。今回はこの点について解説していきたいと思います。 ■損害賠償に含まれる損害とはどういうものか?一見、事故と関係がありそうな損害であっても全てが損害賠償の対象となるわけではありません。判例は、事故と「相当因果関係」がある損害に限り、賠償の範囲に含まれるとしています。典型的な例は、治療費や入通院費、後遺障害に対する慰謝料等が含まれます。 ■旅行のキャンセル料も賠償の範囲に含まれる交通事故のために旅行に行けなくなった場合、そのキャンセル料についても賠償の範囲に含まれるという判例が複数あり、原則的に、加害者に対して請求できるという実務が定着しているようです。ただ、例えば、事故が起こる前に仕事の予定が入って旅行をキャンセルする必要が生じ、その後事故が発生したという場合には、キャンセル料の発生と交通事故の間には相当因果関係がないと判断されることになるでしょう。このような場合には、キャンセル料を請求できないと考えられます。 いくらキャンセル料が返ってきたとしても、楽しみにしていた旅行に行けなくなるのは困りますし、その後けがの後遺症が残っては、後々大変な思いをすることになります。事故を起こさないのはもちろんのこと、交通ルールを守るなどして事故に遭わないようできる範囲での自衛をすることも大切です。 *著者:弁護士 寺林智栄(ともえ法律事務所。法テラス、琥珀法律事務所を経て、2014年10月22日、ともえ法律事務所を開業。安心できる日常生活を守るお手伝いをすべく、頑張ります。)【画像】イメージです*kojikoji / PIXTA(ピクスタ)
2017年07月06日*画像はイメージです:月14日、無資格であるにもかかわらず40年間にわたり司法書士や弁護士活動を行っていたとして、81歳の男が逮捕されました。何よりも驚きなのは、資格がないにもかかわらず依頼者の目を誤魔化し続けていたことと、誰も気が付かなったということ。今回は相続についての提案が間違っていたことに気がついた親族が警察に相談したことから発覚しましたが、知識がない人が「弁護士だ」と紹介されると、その発言に疑問を持たない人が多いようです。日々真面目に業務をこなしている弁護士としては、憤りを隠せない事件ではないでしょうか。星野法律事務所の木川雅博弁護士に、今回の件についてお聞きしました。 ■弁護士でない者は報酬獲得目的で法律事務をしてはならない「弁護士資格がないにも関わらず40年にもわたり弁護士活動をしていた男が、弁護士法違反や司法書士法違反で逮捕されたことを知りました。40年間も無資格で活動していたことがわからなかったのはなぜかについて解説します。弁護士の資格なしに、報酬を得る目的で反復継続して法律事務を行うことは、弁護士法違反(いわゆる「非弁行為」)となり、2年以下の懲役または300万円以下の罰金が科されます(弁護士法72条等)。ここにいう法律事務とは、債権回収や賃料交渉、賃借物件からの立退き交渉など、あらゆる法律事件に関する交渉、手続代理のことをいいます。非弁行為が罰則の対象となる理由は、なんら規律に服さない資格のない者により、事件関係者の利益や法律秩序が害されることを防止するためです。医師が医師免許なしに医療行為を行ってはならないのと同様に考えるとわかりやすいと思います」(木川弁護士) ■40年間もばれなかった理由とは「非弁行為については、各弁護士会設置の非弁護士取締委員会によって取り締まりを行っています。当然のことながら、警察や委員会が非弁行為を認知しなければ取り締まることはできませんから、事件関係者が無資格であることを見抜き、弁護士や弁護士会に相談しなければ発覚しないことになります。そして、一般の方は、弁護士であると紹介され、名刺を渡されたら“本当に弁護士ですか?”と疑うことはないと思いますし、たとえ身分確認をしたいと思っても、紹介者や非弁護士の手前、なかなか言い出せなかったりすることもあったと思われます。逮捕された男は年間300万円程度の売上だったと供述しているようですので、事件処理数や取扱規模が小さかったことも発覚しなかった要因の一つだと考えられるでしょう。また、非弁護士は、かつて司法試験合格を目指していたり、不動産業を営んでいたり、債権回収業者に勤務していたりする等、一定の専門知識と実務の運用を知っている者であることがほとんどですから、依頼者にとってよい結果となるよう事件を処理することができてしまう場合があります。現在は減っているようですが、ある地域では非弁護士の“ゴロつき”が多くおり、共同で法律事務を含む事業を行っていると聞いたことがあります」(木川弁護士) ■弁護士資格の有無を確かめる方法は?「現在は、インターネットが使えるのであれば、日弁連が提供する『ひまわりサーチ』というウェブサイトから、簡単に弁護士資格の有無を確認することができます。同サイトに(自称)弁護士の氏名を入れて、登録番号や事務所所在地などの登録情報が確認できなければ、その人間は非弁護士ということです。インターネットが使えない方であれば、記章(弁護士バッジ)を確認したり、日弁連または各弁護士会発行の身分証明書を確認させてもらったりすることが有効ですが、偽造されている可能性もありますので、所属弁護士会を尋ね、当該弁護士会に電話で確認するほうが確実だと思います。非弁護士による事件処理は、たまたま依頼者にとっていい結果となることもありますが、結果がよくとも手続の適法性や報酬額の適正さが担保できません。また、依頼者にとってはいい結果でも、相手方当事者の無知に乗じ、通常であればあり得ない金額や条件での和解・示談となることも多いので、非弁行為による法秩序破壊は著しいといえます。ですから、やはり非弁行為を許しておくことはできませんので、もし万が一被害に遭いそうになったり、非弁行為を見つけたりした場合は、弁護士会に連絡していただければと思います」(木川弁護士) たとえ問題が解決したとしても、無資格の弁護士活動は違法行為。見かけた場合は、弁護士会に速やかに連絡しましょう。また、木川弁護士によると、『ひまわりサーチ』というサイトで弁護士資格の有無を確認できるそう。相談する際は、活用してみてはいかがでしょうか。 *取材協力弁護士:木川雅博 (星野法律事務所。通信会社法務・安全衛生部門勤務を経て、星野法律事務所に所属。破産・再生・債務整理を得意とする。趣味は料理、ランニング)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*まなな / PIXTA(ピクスタ)
2017年07月05日*画像はイメージです:猛毒を持つといわれる南米原産の「ヒアリ」が神戸港に続き、名古屋港でも見つかったことが話題になっています。このヒアリは、人を死に至らしめるほどの強い毒を持っており、性格も非常に狂暴とのこと。一説によると、ヒアリに刺されたことにより、年間100名以上の人が命を失っているとの情報もあります。こういった外来種による被害を防ぐために、法律はどういった手当てをしているのかについてご説明いたします。 ■外来生物法という法律で制限されているヒアリのような外来種による被害を防ぐために、日本では「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」という法律があります。「外来生物法」などと省略されて紹介されることもありますが、正しくはこの通りです。この法律では、生態系や人の生命や身体、農林水産業に被害が生じるおそれのある外来生物につき、国が「特定外来生物」と定めて、飼ったり、持ち込むことを禁止しています。外来生物法が定める特定外来生物の一例として有名なものをあげると、いわゆる「ブラックバス(オオクチバス、コクチバス)」や「ヌートリア」、「カミツキガメ」などがいます。同法では、これら特定外来生物を許可なく販売目的で飼ったり、輸入したりすることを禁じております。 ■どんな罰則があるのか過去にはある芸人がカミツキガメを無許可で飼っていて書類送検されたというニュースもありました。当時のニュースを詳しく調べてみると、その際には有罪となって罰金30万円(略式命令)が言い渡されたそうです。外来生物法では、上記のような無許可の飼育や輸入につき、罰則を設けています。個人に対しては、最大で3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金(場合によりこれを併科)と、それなりに厳しい罪となっています。一方、法人としてこれらの罪を犯した場合、当該法人に対しても最大で1億円の罰金が設定されていることです。これも、非常に重い罰となっています。 ヒアリに関しては、今のところ犯罪性が疑われているわけではありませんが、もしヒアリを許可なく意図的に輸入したり、放出した場合には、厳しい罰則が下されるということになります。 *著者:弁護士 河野晃 (水田法律事務所。兵庫県姫路市にて活動をしており、弁護士生活7年目を迎える。敷居が低く気軽に相談できる弁護士を目指している。)【画像】イメージです*masaya / PIXTA(ピクスタ)
2017年07月04日仕事は大概、雇用主と請ける側で契約書が存在するもの。とくに契約社員やフリーランスで仕事をしている場合は、雇用期間の定めやなどを事細かに文書にしておくのが一般的です。しかし、極稀に「じゃあお願いしますね」などと、口約束で仕事を請けることがあります。フリーライターのBさんもその1人で、ある業者から口頭による執筆依頼をうけ、記事を書いていました。ところが、5ヶ月程度経過したある日、突然「執筆依頼を停止します」とメールで告げられ、以降何の説明もなく連絡も取れなくなったそうです。Bさんはその収入をアテにしていただけに、納得のいかないものを感じているそうです。なんとかならないのでしょうか?ピープルズ法律事務所の森川文人弁護士にお伺いしました。Q.口約束でしていた仕事を突然破棄された。不当性を訴えることはできますか?*画像はイメージです:契約の存在やその期間ができれば、不当性を訴えることができる可能性もあります。「ライターへの原稿依頼は、委託契約だと思います。民法でいう請負に近い類型です。口頭でも契約は可能です。口頭契約の問題は、証明の問題です。契約の有無・内容につき当事者間で争いになった場合に、書面があればともかく、口頭の時には立証が困難です。委託が継続していたという実績自体、一つの証明材料にはなると思います。原稿のやりとり、委託料の振込等の痕跡などでその「実績」は示せるでしょう。それにより「契約の存在」を証明したうえで、いかなる場合に解除できるかですが、請負と解釈できる場合であれば損害を賠償しなければ解除はできません(民法637条)。仮に委任だとして同じでしょう。ということで、その旨伝えて、交渉ということになるでしょう」(森川弁護士)口頭だけに契約の立証ができるかどうかが争点となるようです。Bさんに限らず、フリーランスの場合口頭契約が続き、収入の柱になっているケースが少なくありません。やはり仕事を請ける際にはなんらかの書面を残しておいたほうがいいかもしれません。Bさんのようなケースになってしまった場合は、契約の存在やその継続性や期間を証明できるものを集めたうえで弁護士に相談するなどし、対策を考えましょう。 *取材協力弁護士:森川文人(ピープルズ法律事務所。弁護士歴25年。いわゆる街弁として幅広く業務を経験。離婚、遺産相続をはじめ、不動産、 慰謝料・損害賠償請求、近隣トラブル、借地借家、賃金、インターネット問題、知的財産権などを扱う。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*chombosan / PIXTA(ピクスタ)
2017年07月03日*画像はイメージです:今年3月、大阪市城東区の分譲マンションに住む男性が、購入した部屋の近くに設置された生ごみ処理機(ディスポーザー)の臭気がひどく住み続けられないとして、不動産会社に約5,800万円の損害賠償請求を起こす事案がありました。購入時、不動産会社から臭気について説明がなく、入居後間もなくひどい臭いと騒音がするようになり、住めないほどになったそう。原告は不動産会社の過失を主張しています。しかし、被告側は「売買締結時には臭気がなく、管理の問題」として請求棄却を求めているようです。このようなことはレアケースですが、分譲・賃貸にかかわらず、物件に住んだあと、知らされていなかった事態が出てくることも稀にあります。そのようなとき、部屋を買った・借りた人間は不動産会社に損害賠償請求することはできないのでしょうか?銀座ウィザード法律事務所の小野智彦弁護士にお聞きしました。 ■損害賠償を受け取ることができる?「大阪のケースのように、部屋の近くにディスポーザーの排気口があり、臭くて日常生活を送れないというのであれば、正当な家賃を払って住んでいる意味がありませんね。賃貸借契約における貸主の義務は、借主に貸した家屋を支障なく使ってもらう義務がありますし、借主はその義務の履行に対しての対価として家賃を支払うわけです。部屋の近くにディスポーザーの排気口があって、臭くて支障をきたすというのであれば、それをなんとかしてもらう権利が借主に発生し、家主はそれに従う義務があります。家主は、その義務を行わない限り、債務不履行ということになり、家賃の値引きに応じる、あるいは、借主からの解約に応じなければならなくなります。解約の場合には、敷金礼金、引っ越し代などの損害賠償請求をされる可能性が高いものと思います。仲介会社については、あらかじめそのような事情を知っていたながら、借主に説明しなかったということになりますと、やはり支障をきたす物件を仲介したということになりますので、仲介手数料や引っ越しにかかる費用など、損害賠償請求される可能性が高いものと思います。またこれは分譲についても同様です」(小野弁護士) 不動産会社がその事実を知りながら、借主や購入者に説明をしなかった場合は、損害賠償請求される可能性が高いのですね。 *取材協力弁護士:弁護士 小野智彦(銀座ウィザード法律事務所。浜松市出身。エンターテイメント法、離婚、相続、交通事故、少年事件を得意とする。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*kuro / PIXTA(ピクスタ)
2017年07月02日*画像はイメージです:高齢者の運転する車の事故報道を見聞きする機会が増えたのではないでしょうか。よくあるのが、アクセルとペダルを踏み間違えるパターン。この操作をすると、意図せぬ暴走で惨事になることもあります。統計によれば、交通事故の総数は減っていますが、65歳以上の高齢者ドライバーによる事故の割合は増加しているようです。このデータもあり、2015年に道路交通法が改正されて75歳以上の認知症対策が免許更新時に行われ、免許返納制度も採用されました。 ■暴走が認知症による勘違いから起こったら問題は、たいていの事故が意図的な暴走運転ではなく、高齢者の勘違いから起こっていることです。もし、その高齢者に軽度の認知症が認められたとしたら、死傷者が出た場合でも罪に問われるのでしょうか?星野宏明弁護士にお訊きしました。「交通事故の加害者には、不法行為責任として、被害者に損害賠償をしなければなりません。これは民事上の責任で、たいていの方は事故に備えて任意保険に加入されていますよね。問題は刑事責任で、自動車運転過失致死傷罪に問われます」では、事故を起こした高齢者が認知症だったら?「これは認知症の進行具合によっては、刑事罰の責任能力がなく加害者本人は無罪となります。民事の場合は、運転していた加害者に監督義務者がいる場合、その人が相当の注意を尽くしていたと認められなければ、監督義務者が本人の代わりに賠償責任を負います。認知症が軽度だったり、減弱がある場合は、有罪に問われますが、執行猶予が付される場合もありえます」 ■認知症が認められたら運転させない環境を作る重度の認知症を患う高齢者が車を運転するというのは、非情に怖いことです。あげく、交通事故を起こして巻き込まれた側にとっては「そもそも、そんな人間が監督義務者が同乗していたとしても、運転させるのが間違っている」と憤りを感じるはずです。となると民事でなんとかしたいと訴えることになるのですが、星野弁護士によれば「認知症患者を介護している親族の負担と責任のバランスも考慮しなければならず、介護に疲弊していたり、運転ではいちいちどちらのペダルを踏んでいるか見るのは困難でしょう。また、高齢者が高齢者を介護することも珍しくなく、監督義務者に賠償するだけの資力がない場合もあります。単に誰かに責任を負わせればいいという問題でないのですが、それでは被害者の気持ちの持って行き場がなく、救済を図る方法の模索をしなければならないでしょう」と、現状では認知症患者に対する法や、被害者への救済が後手に回っています。ただし、「認知症でない高齢者が事故を起こせば、それはただの過失です。量刑は死亡結果や負傷結果にとどまるか、被害者の数、適用罪名等、ケースバイケース」とのこと。アクセルとブレーキの踏み間違いは若い人でもうっかりやってしまうことがあるので、慣れていることとはいえ、加齢に従って感覚も鈍くなりますのでご注意を。そして、高齢者が家族にいるなら、可能であれば運転させずに若い家族がハンドルを握る環境を作るようにしたいものです。 *取材協力弁護士:星野宏明(星野法律事務所。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)*取材・文:梅田勝司(千葉県出身。10年以上に渡った業界新聞、男性誌の編集を経て独立。以後、フリーのライター・編集者として活躍中。コンテンツ全般、IT系、社会情勢など、興味の赴く対象ならなんでも本の作成、ライティングを行う。Twitterアカウントはこちら)【画像】イメージです*sacco / PIXTA(ピクスタ)
2017年07月01日*画像はイメージです:医療従事者はそのほとんどが患者の症状を治癒するため、奮闘しているものと思われます。しかしごく一部に、自分の儲けを考え、あくどい診療をする医師もいるようです。例えば、本当は歯を抜く必要がないにもかかわらず、「虫歯」だと言って抜いた挙句、高額な義歯を埋め込んだり、さほど重大でもないのに「深刻である」と告げ、入院を促したりすることがあると聞きます。このような「嘘の診療」を行った場合、どのような罪に問われるのでしょうか?あすみ法律事務所の高野倉勇樹弁護士にお聞きしました。 ■どのような罪に問われる?「医師については、詐欺罪が成立します。傷害罪が成立する可能性も考えられます。まず、詐欺罪ですが、2つの詐欺罪が成立する可能性があります。第1に、患者に対する詐欺罪です。実際には行っていない診療について診療費が発生したかのように装い、支払を請求して受領することは、詐欺罪となります。第2に、社会保険診療報酬支払基金に対する詐欺罪です。医師は、診療報酬請求明細書を社会保険診療報酬支払基金に提出して、診療報酬を請求します。実際に行っていない診療内容を明細書に記載し、診療費が発生したかのように装い、請求して受領することは、詐欺罪になります。次に、患者に対する傷害罪です。医療行為は、患者の同意があって初めて正当化されます。例えば、手術は、形式的には傷害罪に該当します。ですが、患者の同意があるので、犯罪にはなりません。同意したとは異なる内容の治療が行われていた場合、同意がないまま治療行為が行われたときと同じように、傷害罪が成立する余地があります。なお、文書偽造罪は成立しません。文書偽造罪は、作成名義を偽ることで成立します。嘘の内容の文書を作成しても、刑法上の文書偽造ではないからです。診断書を発行した場合には、嘘の内容の診断書ということになります。診療報酬請求明細書も、嘘の内容です。ですが、どちらも作成した医師が、自分の名義で作成した文書なので、偽造ではありません」(高野倉弁護士) ■患者はどのような対応を取ればいい?悪徳医師がいるといわれても、患者はまったくわからないもの。仮に被害にあってしまった場合、どのような対応を取ればいいのでしょうか?同じく高野倉勇樹弁護士にお聞きすると…「被害に遭った患者としては、損害賠償請求を行うことが考えられます。騙し取られた治療の額を損害額として、損害賠償を請求できます。また、実際よりも悪い状態であるという嘘の診断をされたり、望まない治療を受けさせられていたのであれば、慰謝料を請求する余地があります。このほか、詐欺罪で刑事告訴することも可能です」(高野倉弁護士) 実際に被害にあった場合、損害賠償請求などを行うことができるようです。ただし、闇雲に「慰謝料」「損害賠償請求」と言っても、その主張が正当であるか疑問視されてしまうでしょう。「納得のいかない診療を受けた」という場合は、弁護士に相談し、医師が下した診断の正当性などを慎重に議論することをおすすめします。 *取材協力弁護士:高野倉勇樹(あすみ法律事務所。民事、刑事幅広く取り扱っているが、中でも高齢者・障害者関連、企業法務を得意分野とする)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中【画像】イメージです*studiolaut / PIXTA(ピクスタ)
2017年06月30日*画像はイメージです:月16日、仙台地裁で裁判中だった被告が突如傍聴席にいた警察官2人を刃物で刺すという前代未聞の事件が発生。世間に大きな衝撃を与えました。警察官は命に別状がないとのことですが、男は計画的に刃物を持ち込んでいたようです。今回のような事件は極めてレアケースですが、裁判所でも様々な「不測の事態」が起こりうります。例えば大災害に見舞われる、被告の体調が著しく悪化するなどして、予定されていた裁判ができないことがあります。そんなとき、雨天時の野球のように「中止」とせざるをえませんが、関係者の予定もあり、そうもいかないとも思ってしまいます。一体裁判の中止はできるのでしょうか?また、可能である場合どのようなケースで中止となるのでしょうか?法律事務所あすかの冨本和男弁護士にお話をお伺いしました。 ■裁判が中止になることってある?「民事裁判の場合、天災その他の事故によって裁判所が職務を行い得ないような場合、中止となります(民事訴訟法130条)。また、当事者が急に精神病となった場合にも、裁判所の判断により中止となる場合があります(民事訴訟法131条)。刑事裁判の場合、被告人が心神喪失の状態のとき、被告人・重要証人が病気のために出頭できないとき、管轄指定・移転の請求があったときに中止となる場合があります。ほかにも、忌避の申立(不公正な裁判のおそれがある場合に、当事者が担当裁判官や担当書記官に職務執行をさせないように申し立てること)があったとき、再審請求が競合したとき等に公判手続が停止となります(刑事訴訟法314条、刑事訴訟法規則6条、11条、285条)。以上のような法律で明記されている場合の他にも、裁判所の裁判長には訴訟指揮権・法廷警察権がありますので(民事訴訟法148条、刑事訴訟法294条、裁判所法71条)、被告人や傍聴人が暴れたり、大規模な地震が発生した場合等に、訴訟指揮権・法廷警察権の行使として退廷を命じたり裁判を中止したりすることができると考えられます。私が扱った裁判で、中止となった例は今のところありません」(冨本弁護士) 民事・刑事で若干異なるものの、中止になる条件はしっかりと決まっているようです。また、裁判長の権限で中止させることもできるそう。なかなかないことではありますが、覚えておいて損はない知識ですね。 *取材協力弁護士:冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*graphicalicious / PIXTA(ピクスタ)
2017年06月28日*画像はイメージです:ドラマなどでたまに「結婚式中に教会を飛び出す」シーンを見かけることがありますよね。現実ではなかなか起こることはないかと思いますが、その後別れることになるでしょうから、婚約破棄のようにも思えますし、そもそも結婚をしないならご祝儀を返してほしいといった事態にもなるでしょう。そこで今回は、結婚式中に教会を飛び出したら、どんな法的責任を負うことになるのか、解説してみたいと思います。 ■挙式費用の返還についてまず、挙式費用が発生していた場合ですが、新郎新婦のいずれの名義で申込をしていても、双方とも、教会に対する挙式費用の支払義務は残ります。教会側(式場側)は、何ら落ち度なく、挙式を提供していたのですから、挙式費用を免れることはできません。また、挙式費用は、1つの不可分な挙式サービスに対する債務であり、新郎新婦いずれも不可分債務の債務者となります。したがって、式場側から請求があれば、どちらが飛び出したかにかかわらず、双方とも教会に対する挙式費用支払義務が残ります。また、飛び出さなかった人が教会に対し全額支払った場合には、他方に対し、求償することができます。不当な婚約破棄による不法行為の損害賠償として請求することも可能でしょう。したがって、挙式費用は請求可能です。 ■婚約破棄の慰謝料について挙式前にすでに入籍していた場合は、法律上の婚姻関係がすでに成立しています。挙式途中であっても、もはや婚約ではなく、正式の婚姻関係にあります。したがって、すでに入籍済みの場合は、配偶者に対する不貞行為の証拠や離婚原因となり、かつ、慰謝料発生事由となります。また、入籍がまだの場合は法的な婚姻関係にはありませんが、関係性が挙式まで至っているのであれば、法的には婚約の段階に至っていると評価できます。そして不当な婚約破棄は、それ自体、婚約(婚姻予約)という相手方の法的利益を違法に侵害するものとして、やはり慰謝料発生原因となり得ます。ただし、婚約があるにすぎない場合は、入籍して法律上の婚姻関係が成立している場合と比較して、一般的に慰謝料の額は低くなりがちです。 ■ご祝儀の返還の必要性挙式途中で飛び出した人に対し、ご祝儀の返還を求めるのは難しいです。婚約破棄による不法行為の損害賠償の範囲の問題となり、因果関係が認められる範囲では、飛び出した人に対し賠償請求できる可能性はあります。 万が一「結婚式中に教会から飛び出した」なんてことがあれば参考にしてみてください。 *著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)【画像】イメージです*evesang / Shutterstock
2017年06月27日社会問題化しているにもかかわらず、いまだに存在しているブラック企業。その多くは、自分のことしか考えない横暴な社長のめちゃくちゃな経営方針が原因であると考えられています。「ブラック」とはいかなくとも、社員の言うことに全く耳を貸さない、自分の儲けばかり考えて社員のことを考えていないなど、困った社長はいるものです。そんな「社長」に社員が辞めさせることはできないのでしょうか?Q.社長を辞めさせたいのですが、そんなことは可能ですか?*画像はイメージです:ケース・バイ・ケースですが、可能です。ケース・バイ・ケースですが、辞めさせることができる場合もあります。会社に取締役会がある場合は、事前に大半の取締役から代表取締役解職について了解を得ておいた上で、取締役会の席上代表取締役解職の緊急動議を出し、会社法362号3項に基づき、代表取締役を解職し、新しい社長を選定することができます。株式会社の場合は1%以上の株式を取得している株主が取締役に対して次回株主総会における社長解任の議題を提案し、株主総会で過半数の賛成があれば、解任することが可能です。総株主の議決権の3%以上の株式を取得している株主は、社長の取締役解任を決議事項として取締役に株主総会の招集を請求することもできます。社員から有力な取締役や株主に働きかける、自身で株式を取得するなどの準備をしたうえで株主総会を開かせ、過半数の支持を集めることができれば、辞めさせることができるでしょう。ただし、通常株主総会での解任は社長の意向が色濃いなかでの開催となるため、辞職に追い込むのは難しいとの認識が一般的です。また、取締役も存在せず、株主総会もめったに開かれないような企業については、社長を辞職に追い込むことは非常に困難で、手立てがないと言わざるを得ません。仮に社長が創業者の場合は辞めさせることができたとしても、結局なんらかの形でかかわりをもつため、完全に関係を断つことは難しいことも、頭に入れる必要があります。 いずれにしても様々なケースが考えられますので、まずが法の専門家である弁護士に相談してみましょう。 *記事監修弁護士:冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*den-sen / PIXTA(ピクスタ)
2017年06月27日*画像はイメージです:御朱印帳がネットオークションで転売されていることが話題になりました。御朱印張の出品に対して、賛否両論があるようですが、果たして法律的にはどのように扱われるのでしょうか?売買契約に関する考え方や、実際に売買(転売)が禁止されているものは何があるのか、といったことと併せて解説してみたいと思います。 ■売買契約とは?売買契約とは、売主がある財産(についての権利)を買主に譲渡することを約束し、その代わりに買主が売主に代金を支払うことを約束するという契約です。転売というのは、自分が購入した財産を他の人に売却することをいいます。売買(転売)できる財産は、譲渡が考えられる財産であり、テレビや土地等の形ある財産はもちろん、特許権といったそれ自体は形を持たない権利も含まれます。また、まだ自分の財産でない財産の売買(他人物売買)についても、他人から取得して買主に譲渡することは考えられますので、最終的に買主に譲渡されるかどうかはともかく、契約としては有効とされています。ですので、御朱印帳については、罰当たりかもしれませんが、売買(転売)を禁止する法律が見当たりませんから、売買自体は可能だといえるでしょう。 そうすると、何でもかんでも転売できるように思われるわけですが、様々な理由により、売買(転売)できないものもありますので、実際に売買(転売)が禁止されているものをご紹介したいと思います。 ■有害性・危険性から売買(転売)が禁止されているもの覚せい剤、大麻、合成麻薬等の違法薬物、毒物、劇物、拳銃等です。それ自体の有害性・危険性から売買(転売)が犯罪とされ禁止されています。 ■犯罪を助長する可能性から売買(転売)が禁止されているもの携帯電話(スマホ)や銀行口座・通帳・キャッシュカードです。転売されたものが振り込め詐欺等の犯罪に利用されることから禁止されています。転売する目的でこれらを取得することも、取得したものを転売することも犯罪となります。 ■他人の権利を侵害するから売買(転売)が禁止されているもの偽ブランド品です。ブランドを持っている企業の商標権を侵害することになるので売買・転売が禁止されます。商標権というのは、ブランドのマークを自分や自分の認めた者だけが使える権利です。偽ブランド品の転売も犯罪となります。 ■生態系を守るために売買(転売)が禁止されているもの絶滅が危惧されるためにワシントン条約で保護されている動物・植物です。絶滅しないようにするために売買(転売)が禁止されています。 ■不公正な取引防止のために売買(転売)が禁止されているものライブ・スポーツ観戦等のチケットや乗車券等です。こうしたチケット・乗車券等を公共の場所や公共の乗物で誰彼かまわず売ろうとする行為(=ダフ屋行為)が都道府県の条例で禁止されています。不当な高値で売買されないようにするためです。 *著者:弁護士 冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)【画像】イメージです*makaron* / PIXTA(ピクスタ)
2017年06月26日*画像はイメージです:交通事故を起こした、または、起こされた場合、一般的には警察・救急車を呼ぶと思います。では、仮に、警察を呼ばなかった場合に交通事故訴訟でどのような影響があるのでしょうか。また、交通事故で怪我をしたけれども軽微であると思い、交通事故で怪我をした旨の診断書を警察に届け出なかった場合、交通事故訴訟でどのような影響があるのでしょうか。ご紹介していきたいと思います。 ■交通事故が発生したのに、警察に届けなかったら?まず、交通事故が発生した際に、警察に届け出なかった場合、交通事故証明書が発行されません。交通事故証明書は、警察が発行するわけではありませんが、警察に交通事故を届け出なかった場合、発行されません。交通事故証明書は、その名のとおり、交通事故がいつ、どこで、誰と誰の間で発生したのかを証明する書面ですので、交通事故証明書がないと、交通事故の発生から証明しなければならなくなります。私も、過去、交通事故証明書の存在しない交通事故の訴訟を担当したことがありましたが、そもそも、双方の主張する交通事故の場所も異なっていたため、非常に苦労しました。また、そもそも交通事故を起こした(起こされた)場合、警察への通報義務がありますので、必ず届け出るようにしましょう。 ■軽い怪我だったから診断書を警察に届け出なかったら?次に、交通事故での怪我を軽微だと思い、診断書を警察に届け出なかった場合、警察は、交通事故を物件(物損)事故として扱うため、実況見分が実施されません(交通事故証明書には、物件(物損)事故か人身事故のいずれかの記載があります)。他方で、交通事故で怪我をしたという診断書が警察に届け出られた場合、警察は、当該事故を自動車運転過失致傷事件として扱います。そして、交通事故が自動車運転過失致傷事件として扱われた場合、警察官は、被害者・加害者立会いの下(場合によっては、一方当事者のみの立会いの下)、実況見分を実施し、実況見分調書を作成します。実況見分調書は、端的にいえば、交通事故の状況を記載した書面です。警察官が刑事事件のために作成した交通事故の状況を記載した書面である実況見分調書は、交通事故訴訟において過失割合に争いがある場合、非常に有用です。ちなみに、警察が交通事故を物件(物損)事故として扱った場合、物件事故報告書を作成しますが、実況見分調書に比べると、非常に簡易なものが多く、事故状況を確定するには情報が足りないことがあります。 実際のところ、交通事故を起こさない、起こされないというのが一番いいのですが、万が一、交通事故を起こしたり起こされた場合、将来的に争いになることを見据えましょう。ですので、交通事故の発生を警察に届け出る、交通事故で怪我をした場合にはその旨の診断書を警察に届け出て、実況見分を実施してもらうのがいいと思います。依頼される弁護士の立場でも、交通事故証明書がない交通事故よりもある交通事故、実況見分調書のない交通事故よりもある交通事故のほうが、進行しやすいです。最後に、交通事故でお悩みの人も多いかと思います。当事務所では、弁護士一同、様々なトラブルに関する相談を行っておりますので、お気軽にご相談にいらっしゃって下さい。 *著者:弁護士 阿部栄一郎(丸の内ソレイユ法律事務所の弁護士。交通事故から、不動産、離婚まで幅広い分野に精通。「不安定になることや感情的になることもあると思います。そんなときは、まず当事務所にご連絡下さい」)【画像】イメージです*タカチン / PIXTA(ピクスタ)
2017年06月26日*画像はイメージです:フレッシュな新入社員が研修を終え、各部署に配属される時期です。新規の契約社員やバイトが入ったところもあるでしょう。若い女性が職場にあふれるこの季節、新たにセクハラの対象となってしまう人も……。世間でさんざん訴えられたりしているのに、いまだにセクハラが無くなっていない現実に唖然としている方も多いのではないでしょうか?ここで今一度、セクハラと認定されるのはどういう行為なのかを、ともえ法律事務所の寺林智栄弁護士に確認の意味でお聞きします。 「セクハラとは、一般的に会社内において、上司が、その地位を利用して、社内の女性(社員だけでなく、パートや派遣社員なども含みます)に対して性的に嫌悪感を抱くようなことをいったり、あるいは性的関係を強要したり、身体を触ったりする行為を指します。女性が関係を拒否したり、言動をやめるよういったりした場合に、業務上の不利益処分(減給、配置転換、場合によっては解雇)を科したり、匂わせたりするようなこともあります」 そうしたセクハラは犯罪に当たるのか、というと、寺林弁護士によれば基本的には労働問題なのだそうです。 「セクハラの全てが犯罪に該当するわけではないのです。ただし、悪質なケースで犯罪に該当するとすれば、脅迫罪、強要罪、強制わいせつ罪などが挙げられるでしょう」 ■セクハラ被害の苦しみはどこに訴えればいいの?では、セクハラを訴えるとすると、実際はどこに相談するべきでしょうか? 「社内に相談窓口がある場合は、そこに相談してください。窓口がない場合、会社がまともに取り合ってくれない場合には、労働基準監督署に相談窓口がありますので、そちらに相談してください。また、弁護士に相談して、慰謝料請求等をすることも考えられます」 ■会社が取り合わなければ辞める覚悟も必要相談する場合、音声や映像など証拠があると自分の被害を訴えやすくなります。しかし、実際に記録を残しにくいのがセクハラ、と寺林弁護士は言います。もし録音などが可能ならセクハラ発言を記録に残し、さらにセクハラされたらその日時とセクハラの内容を具体的に記録して残しておくと良いとのことです。では会社としてセクハラ防止のためにどういう取り組みをするべきでしょうか? 「なかなか難しい問題ですが、会社内に相談窓口がない場合にはこれを作ることです。社内で、男性と女性が二人きりになる状況を作らない、悪い噂のある社員と女性を同席させないなどの取り組みが必要だと思います。社長自らがセクハラをしているような小規模オフィスの場合には、社長を相手どって慰謝料請求などとするしかないと思います。この場合は、不本意だと思いますが、会社にいづらくなることもあるので、退職する覚悟も必要かもしれません」 会社のセクハラが絶望的な状況で、改善も認められない場合は、労働基準監督署に相談してみましょう。それでも駄目なら弁護士さんに相談を。 *取材協力弁護士:寺林智栄(ともえ法律事務所。法テラス、琥珀法律事務所を経て、2014年10月22日、ともえ法律事務所を開業。安心できる日常生活を守るお手伝いをすべく、頑張ります。)*取材・文:梅田勝司(千葉県出身。10年以上に渡った業界新聞、男性誌の編集を経て独立。以後、フリーのライター・編集者として活躍中。コンテンツ全般、IT系、社会情勢など、興味の赴く対象ならなんでも本の作成、ライティングを行う。Twitterアカウントはこちら)【画像】イメージです*AH86 / PIXTA(ピクスタ)
2017年06月25日今年も6月に入り、暑く感じる日が増えてきましたが、梅雨が明ければ更に暑い日が続くことになります。夏本番は誰もが気を付けていますが、意外と油断しがちなのが、車内環境。エアコンをつけなければかなり高温になり、エアコンをつけていても乾燥しがちになります。このような車内環境に子どもを置いていて、死亡させてしまうような出来事は、残念なことにたびたび発生しています。それは読者の皆さんもご存知でしょうが、どのような罪になり、どのくらいの懲役が科せられるのかは、あまり知られていないようです。Q.自動車内に子どもを置いていて死亡させてしまった場合、どのような罪になりますか?*画像はイメージです:危険性を認識していたのであれば保護責任者遺棄(不保護)致死罪に問われ、危険性を認識していなかったとしても重過失致死罪に問われます。保護者が子どもを真夏の自動車内に置き去りにして死なせた場合、保護責任者遺棄(不保護)致死罪に該当する場合があり、該当する場合3年以上の懲役が科せられます。「保護責任者遺棄(不保護)致死」とは、「老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護」せず、死なせてしまった場合に科せられる犯罪です。親には子どもを保護する責任があります。それを放棄し子どもを遺棄する、あるいは生存に必要な保護を怠れば保護責任者遺棄(不保護)罪に問われ、3ヶ月以上5年以下の懲役となりますが、死亡させてしまったということになると、その罪はかなり重くなります。仮に危険性を認識していたとまでいえない場合、保護責任者遺棄(不保護)罪とまではなりませんが、それでも子どもの発達状況や健康状態・当日の気象状況・駐車場の状況・車内に放置した時間帯によっては子どもが熱中症等に陥るのを未然に防止する義務が保護者に認められます。ですので、こうした義務に違反して自動車に子どもを置き去りにし、子どもを死亡させるに至った場合、重過失致死罪に問われると考えます。6月から8月にかけては気温が上昇し、うだるような暑さになります。自動車を締め切った状態で子どもを放置すれば、生命の危機にさらされてしまうことは、明白です。誰もが分かっていることですが、今回のように発生してしまっている現状があります。子を持つ親の皆さんには、くれぐれもこのようなことがないよう、お願いしたいものです。 *記事監修弁護士:冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*poosan / PIXTA(ピクスタ)
2017年06月24日近年はバブル崩壊時、リーマンショック直後に比べると比較的景気のいい時期であるといえますが、それでも業種によっては慢性的に不景気な会社もあるようです。このような会社でいきなり「業績悪化により給与を20%カットする!」と会社から通知を受けたとします。このように、一方的に会社が従業員の給与を引き下げることは違法ではないのでしょうか?Q.いきなり賃金20%カットなんて違法では?*画像はイメージです:従業員への説明・同意なしに行われた賃金カットは違法です。三井埠頭事件という判例がありますが、この会社は業績悪化に伴い会社更生法の適用を申請していましたが、従業員に対して一方的に賃金の20%カットを行ったため、この有効性が争われた事件です。判例では、「労働契約における最も重要な要素である賃金を使用者が一方的に減額することは許されない」とし、会社側が敗訴することになりました。会社更生法の適用となった会社ですら賃金カットが裁判で無効とされたのですから、単に業績が悪化しているからといって賃金を一方的にカットするのは違法であるということができます。一方的に賃金をカットする前には、新規採用を控えたり、残業数や賞与額を減らしたり、会社としてできる限りの努力をすることが求められます。その上で、やはり止むを得ず賃金を引き下げなければならない状況に陥ってしまった場合に、従業員と賃金引き下げに関わる交渉をするのが正しいプロセスであると言えます。裏を返していえば、一方的ではなく従業員からの同意があれば、合意に基づき賃金を多少カットすることは可能です。 *取材・文:ライター松永大輝(個人事務所Ad Libitum代表。早稲田大学教育学部卒。在学中に社労士試験に合格し、大手社労士法人に新卒入社。上場企業からベンチャー企業まで約10社ほどの顧問先を担当。その後、IT系のベンチャー企業にて、採用・労務など人事業務全般を担当。並行して、大手通信教育学校の社労士講座講師として講義サポートやテキスト執筆・校正などにも従事。現在は保有資格(社会保険労務士、AFP、産業カウンセラー)を活かしフリーランスの人事として複数の企業様のサポートをする傍ら、講師、Webライターなど幅広く活動中。【画像】イメージです*ぺかまろ / PIXTA(ピクスタ)
2017年06月22日2017年6月4日、栃木県で行われたトライアスロンの大会に参加していた50代の男性が、水泳の競技中に死亡するという事故が発生しました。トライアスロンに限らずマラソンなど持久力を競う大会や、生命の危険をかけながらプレーするスポーツについては、極稀に競技者が命を落とすことがあります。仮にそうなった場合、誰が責任を負うことになるのでしょうか?エジソン法律事務所の大達一賢弁護士に見解をお伺いしました。 Q.トライアスロンなどスポーツの大会で選手が死亡……責任は誰が取る?*画像はイメージです:ケース・バイ・スケースですが、基本的には自己責任となります。「基本的にはその選手自身の自己責任ということになります。というのも、スポーツの大会などに出る場合には、参加者はそのスポーツで通常起こりうる危険に関してはそれを引きうけ、承知しており、リスクを負った上でスポーツ大会などに参加しているからです。今回のように、トライアスロンのスイム中に溺れるなどの事故に関しても、参加者はその危険性及び自身の身体能力を認識した上で参加しているのが通常です。そのため、原則として参加者自身の自己責任として、主催者側が責任を問われることは考えにくいものと思われます。ただし、例外的に、そのスポーツにおける通常の危険性を超える事故が起きた場合、たとえば大会におけるコース設定に明らかな問題があったり、天候状況からして中止して然るべきにも関わらず中止判断をしなかったりなどの事情がある場合には、当該事故発生について大会の運営者が予見し得るものであって、その事故発生を防止することができたとして、民事上は不法行為責任(民法709条)を、刑事上は業務上過失致死傷(刑法211条)などの責任を負う可能性があります。また、事故発生原因が本人や運営者以外の者にある場合、たとえば別の大会参加者の故意又は過失によって事故が起きたような場合には、その事故を起こした者が直接の責任を負うことになるでしょう。スポーツとひとくちにいっても色々とありますが、どんなスポーツでも事故の危険は付きもの。特にこれからの季節、スポーツに熱中するのはいいけれど、熱中症には気を付けたいですね。安全に体を動かして、爽やかで健康な体づくりを心がけたいものです」(大達弁護士) ケース・バイ・ケースですが、自己責任となることが多いようです。これからレースに参加される予定のある方はくれぐれも気をつけてください。 *取材対応弁護士: 大達 一賢(エジソン法律事務所。第一東京弁護士会所属。「強い、やさしさ。」、「守る≒攻める」、「戦略&リーガル」の3つの思いを胸に、依頼者のために全力を尽くします)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*Pavel1964 / PIXTA(ピクスタ)
2017年06月21日*画像はイメージです:離婚についての情報は、今やネット上に、いやというほど載っています。しかも、その中には、3年の別居で自動的に離婚できる、と思わせるような誤った情報や、不正確な情報が入り混じっています。しかし、離婚において必要な情報は、実は8つのポイントしかありません。後悔しない離婚のためには、この8つのポイントをしっかりと押さえ、心と頭を整理し、戦略・戦術を練ることが重要です。本日は、第1のポイント「二人のパワーバランスを冷静に判断すべし」というお話です。 ■その1二人のパワーバランスを冷静に判断する離婚相談の中で代表的なご相談は、「いきなり夫から離婚を切り出された。明日からどうやって生きていったらいいのでしょうか?子どももまだ小さいのに」といって泣き崩れる専業主婦というパターンです。こんなとき、私は、「あなたとご主人と、どちらが法的に立場が強いと思いますか?」と質問します。このとき、多くの女性が、「(なぜ当たり前のことを聞くんだろう?夫に決まっているのに。でもわざわざ質問するということは、答えは違うのかしら?と思いながら、おずおずと)夫だと思うんですけど?」と答えるのです。そのたびに、私は「ブーッ!外れです。立場が強いのはあなたなのです!」と答えます。 なぜでしょうか? 民法には、離婚の方法として、「協議離婚」「調停離婚」「裁判離婚」という方法が規定されています(「審判離婚」も規定されていますが現実にはほとんどありません)。そのうち「協議離婚」「調停離婚」は話し合いによる離婚ですから、要するに「当事者の同意」か「法律上の離婚原因」のいずれかが備われば離婚できる、ということになります。ところで、「法律上の離婚原因」として民法770条1項には、以下のような5つの要件が規定されています。(1)配偶者の不貞(2)配偶者による悪意の遺棄(3)配偶者が三年以上の生死不明のとき(4)配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込みがないとき(5)その他婚姻を継続することが困難な場合の5つです。(5)は少し分かり難いのですが、要するに(1)から(4)と同程度重要な事情があるとき、という意味です。しかし、ちょっと考えてみて下さい。三年以上の生死不明や強度の精神病にかかり回復の見込みがない場合と同程度の重要な事情など、一般にはほとんど想定できないですね。つまり、離婚の事例で法律上の離婚原因をはじめから備えている夫婦は、ほとんど無いといっても過言ではないのです。となると、離婚を切り出した夫が離婚するために必要なことは、多くの事例で「妻の同意」ということになります。夫が離婚を切り出した途端、離婚できるかどうかのキャスティングボードは、妻に傾いているといえるでしょう。このような二人の法律上のパワーバランスを冷静に判断すれば、妻はこのような自分の立場を逆手にとって「離婚はしたくない。でも、私が求める条件に全てOKと言ってくれれば離婚してあげてもいいわよ」と言える立場ということになるのです。一般的には弱者と思えるような妻たちへの私の最初のアドバイスは、「夫から離婚を切り出されたら、まずNOと回答すること」です。二人のパワーバランスを考えたら、当然のことですね。私の説明に納得した妻たちが、笑顔になって事務所を後にする、私どもの事務所では、こんな光景が毎日繰り広げられています。2つ目以降はポイントについては随時執筆していきますが、ご相談したい事がありましたら、お気軽にご連絡ください。 *著者:弁護士 中里 妃沙子(丸の内ソレイユ法律事務所の代表。離婚を含む家事事件において、質・量ともに日本トップクラスの事務所を率いる女性弁護士。「一人で思い悩む必要はありません。お気軽にご相談下さい」)【画像】イメージです*プラナ / PIXTA(ピクスタ)
2017年06月19日超高齢化社会といわれる現代の日本。なかでも深刻化しているのが、「介護」の問題です。認知症を患っている人や、身体的な問題から寝たきりとなった人を介護するのは、労力と精神力を必要とするため、「介護する側」が疲弊してしまい、自暴自棄になるケースが増えています。自分の直接的な家族なら我慢することもできますが、姑など義理の親への介護については、血のつながりがないだけに、納得のいかないものを抱えている人がいることも多いようです。「死後、遺産だけでも自分が手にしたい」と考えるのも、下世話かもしれませんが、当然のことでしょう。しかし、義理の娘には「相続権がない」という話もあるようで、遺産を受けとることができるのか否か気になります。さらに遺書が残っている場合についても、どうなるのか不明瞭です。真偽を確かめるべく、三宅坂総合法律事務所の伊東亜矢子弁護士にお聞きしました。Q.介護をしていた義父母が亡くなった……相続する権利は発生する?*画像はイメージです:発生しません。故人が遺書を残している場合は取得することができますが、全額を受け取ることはできない可能性があります。「相続人は“子”ですので、義理の娘には相続権は発生しません。遺書を残している場合それに従って財産を取得することはできますが、兄弟姉妹以外の相続人には遺留分(※)があります。 ※(遺留分の帰属及びその割合)第千二十八条 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合に相当する額を受ける。一 直系尊属のみが相続人である場合被相続人の財産の三分の一二 前号に掲げる場合以外の場合被相続人の財産の二分の一 したがって“義理の娘に全財産を遺贈する”という遺言があっても、他の相続人から遺留分相当額については自分が受け取る権利があるという請求を受ける可能性があります」(伊東弁護士)一生懸命介護している義理の娘には、されている側も「何かを残したい」と思うはずですが、法律上遺産を相続することはできません。どうしても義理の娘に遺産を残したい場合は、予め遺書に「義理の娘に財産を遺贈する」と記し、残すようにしておくと良いでしょう。この場合に、後の紛争をできるだけ避けるため、法定相続人に対する遺留分相当額についてはあらかじめ当該法定相続人に相続させる旨の遺言を残しておくことも考えられます。具体的には専門家へご相談頂くのがよいと思われます。 *取材協力弁護士:伊東亜矢子(三宅坂総合法律事務所所属。 医療機関からの相談や、 人事労務問題を中心とした企業からの相談、離婚・ 男女間のトラブルに関する相談、 子どもの人権にかかわる相談を中心に扱う。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*kikuo / PIXTA(ピクスタ)
2017年06月17日*画像はイメージです:今では、広く知られるようになったフランチャイズ。フランチャイズといえば、コンビニやファストフード店などのイメージがあるかと思いますが、実は、日本の最初のフランチャイズチェーンは1963年に設立されたダスキンであるといわれています。また、現在では、小売業、外食業及びサービス業の様々な業種でフランチャイズチェーンが展開されており、フランチャイズチェーン全体の売上高は、2015年度では約24兆5945億円と非常に大きな市場となっています。(※1) ■そもそも、フランチャイズって?フランチャイズの定義は、様々ですが、今回は一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会の定義をご紹介します。『フランチャイズとは、事業者(「フランチャイザー」と呼ぶ)が他の事業者(「フランチャイジー」と呼ぶ)との間に契約を結び、自己の商標、サービスマーク、トレード・ネームその他の営業の象徴となる標識、および経営のノウハウを用いて、同一のイメージのもとに商品の販売その他の事業を行う権利を与え、一方、フランチャイジーはその見返りとして一定の対価を支払い、事業に必要な資金を投下してフランチャイザーの指導および援助のもとに事業を行う両者の継続的関係をいう』としています。本部企業には、低コストで安定した事業を展開できるメリットがあり、加盟店側には、本部企業のネームバリュー・イメージを利用することができ、事業経験がない場合や、事業経験が少ない場合でも比較的容易に新規の事業を開始できるというメリットがあります。これに対し、いわゆる直営店のように、ひとつの本部企業が、店舗を作り、従業員を雇用して営業するものをレギュラーチェーン(以下、直営店)といいます。多くのチェーンでは、直営店とフランチャイズチェーン(以下、FC店)の両方が展開されているのではないかと思いますが、消費者から見ると、チェーン展開されている店舗が直営店なのか、FC店なのかは、一見してもわからないようになっています。 ■FC店と直営店の違いについてFC店と直営店との最大の違いは、直営店が、本部企業が直接管理・経営するものであるのに対し、FC店は、あくまで本部とは別の事業者(いわゆる加盟店)が管理・経営していることにあります。 ■直営店とFC店で働く従業員には何か違いがある?では、アルバイトを含めた従業員から見て直営店とFC店との間で、何か違いはあるでしょうか。最大の違いは、やはり雇用主の違いになります。従業員の雇用契約の主体は、直営店では、本部企業になるのに対し、FC店では、加盟店になります。そのため、雇用条件は、直営店と加盟店とで同じということはありません。職場環境としては、直営店は、店長も本部企業の従業員であり、店舗の売上成績等が店長の評価に直結して店長の出世にかかわるため、FC店に比べて一般的にルールに厳しい、などということが指摘されています。また、店長がある程度短期間で変わってしまうこともあるようです。他方でFC店は、本部企業との間の契約で、同一イメージの元に事業を展開しているものの、職場の雰囲気はひとえに加盟店オーナーの人柄等に大きく左右されることになりそうです。 ここ数年で、さらに数が増えてきており、改めて注目されているフランチャイズチェーン。あなたも注目してみてはいかがでしょうか。 ※1一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会『2015年度「JFAフランチャイズチェーン統計調査」報告』*著者:弁護士 牧野孝二郎(交通事故、労働災害、企業法務分野を扱う。この弁護士とであれば一緒に戦っていける・安心できるという印象を持てるような弁護士でありたいと思っています。)【画像】イメージです*kikuo / PIXTA(ピクスタ)
2017年06月15日*画像はイメージです:夕方のニュース番組などでよく見かけるゴミ屋敷問題。近隣にゴミ屋敷があると、臭いや衛生上の問題が気になりますし、「火事が発生したら?」と思わず心配になってしまいます。ただ、マイクを向けられた当の本人は、ゴミは自分のものであり、自分の敷地内だから問題ないと、片付ける意向を示さないこともあるようです。確かに、ゴミはその人の物で、ゴミが放置されているのがその人の家であれば、他人が口出しをすることはできないように思います。そこで今回は、分譲マンション内で発生したゴミ屋敷問題に対象を絞り、「分譲マンションからゴミ屋敷の家主を追い出すことができるのか?」について検討してみます。 ■分譲マンションには共有部分と専有部分がある問題検討に先立ち、分譲マンションの共用部分と専有部分という用語を確認しておきましょう。分譲マンションには、廊下や階段に代表される共用部分と、居室(102号室などの「家」の部分)に代表される専有部分という構造上の区分があります。このうち、共用部分は、居室の持ち主である区分所有者全員の共有に属するとされています(建物区分所有法第11条1項本文)。そのため、共用部分については、区分所有者全員で構成される管理組合という団体で管理することになります。全員のものだから全員で管理するということです。他方で、居室のような専有部分は、原則として、その居室を所有する区分所有者が自由に使用し、管理します。その人の物ですから当然のことです。 ■原則として、居室内(専有部分)のゴミ屋敷問題に口を出すことはできないが……例えば、廊下にゴミを放置あるいは置いている人がいたとします。先ほど述べたとおり廊下は管理組合が管理する共用部分にあたるので、管理組合から違反者に対してゴミの撤去を求めることになります。他方で、居室内(専有部分)は、これを所有する人が自由に使えるわけですから、そこにゴミが溜まっていようが、管理組合が口を出すことはできません。 ■分譲マンションに住む住民全体に不利益が生じている場合は例外しかし、いくら居室内(専有部分)の問題といっても、ゴミ屋敷の場合には、部屋からの異臭が廊下やベランダを通じて漏れ出てくることもありえますし、虫が湧いて出てくるようなこともあります。このような事態が確認されれば、それはもはや居室内の問題に留まりません。異臭や虫の発生が確認できるようなマンションでは、マンション全体の価値が著しく低下し、他の住民にも大きく影響を与えます。このような事態(他の区分所有者らの共同の利益に反する状態)にまで発展した場合には、管理組合が居室内のゴミ屋敷問題に口を出すことができるようになります。 ■追い出しまで可能か?ゴミ屋敷の家主を追い出す方法としては、区分所有法59条に基づく競売請求を行うことが考えられます。競売請求が認められて、競落者が現れれば、ゴミ屋敷の家主は家を失い、マンションに住むことはできなくなります。つまり、追い出された状態になります。ただし、この競売請求を行うことができるのは、「他の方法によっては」障害を除去できない場合に限定されています。つまり、(1)ゴミの撤去の請求(同法57条)や(2)居室の使用禁止(同法58条)の方法によっても解決が期待できない場合にのみ競売請求ができることになります。ゴミ屋敷であっても所有権を奪うということになりますから、所有権を奪わずに解決できるのであればそちらを優先しなさいということです。裁判例の中には、ゴミ屋敷所有者に対して、区分所有法58条第1項に基づき、3ヶ月の居室使用禁止(前記(2)の手段)と損害賠償を認めた事案があります。この事案は、居室の使用禁止ですので、ゴミの撤去は含まれず、また、3ヶ月経過すればゴミ屋敷の家主は戻ってこられるということになります。そのため、判示においては「根本的な解決にならない」とも指摘されています。したがって、ゴミの撤去請求や居室の使用禁止では根本的な解決を図れないような場合には、上記のように競売の請求を行うことができると考えられます。この場合、競売によりゴミ屋敷の家主は自宅を失い、マンションから追い出されるという結論になります。 *著者:弁護士 河原崎友太(浦和法律事務所。2017年2月にマンション管理士に登録。ご相談に際しては、ご相談に見える方が、弁護士に何を期待しているのかを見定め、丁寧な事情聴取、解決方法の提案を心がけています)【画像】イメージです*koti / PIXTA(ピクスタ)
2017年06月14日*画像はイメージです:神奈川県のある駅で、ツバメのフン掃除をしていた駅員が巣を壊してしまい、ヒナが落下してしまったことが判明。目撃者によれば、その後、車に轢かれて死亡したのではないかといわれているようです。この駅員は利用者の「フンが汚い」という苦情を受けて掃除をしていたところ、巣を誤って壊してしまったようです。実際のことは定かではありませんが、この巣を壊すという行為が鳥獣保護管理法違反になるのではないかとの指摘があります。はたして本当にそうなのでしょうか?星野法律事務所の星野宏明弁護士に見解をお伺いしました。 ■違反の可能性は……「野生の鳥類であるツバメは、鳥獣保護管理法にいう“鳥獣”に該当します(2条1項)そして、野生のツバメの巣を叩き落として殺傷することは、同法にいう捕獲等(捕獲又は殺傷)に該当し、同法8条での鳥獣の無許可捕獲等行為に該当する可能性があります。したがって、鳥獣保護管理法違反の可能性があります。同法83条で1年以下の懲役又は百万円以下の罰金の罰則規定もありますただし、過失によって殺傷した場合の過失犯規定はないので、誤って巣を壊してヒナを落下させてしまった場合は、罰則はありません」(星野弁護士) ツバメの巣を壊すことによって卵やヒナを死なせる、傷つける、そしてツバメを死なせてしまうなどした場合は、鳥獣保護管理法違反に問われる可能性が高いようですが、今回の場合では、誤って掃除用具を巣にぶつけてしまったということなので、罰則に問われない可能性が高いでしょう。自宅の敷地内にツバメの巣ができて困っているという場合は、役所などに相談し、対応を協議することをおすすめします。 *取材協力弁護士:星野宏明(星野法律事務所。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*DREAMNIKON / PIXTA(ピクスタ)
2017年06月13日6月8日の午前9時15分頃に、阪神高速道路池田線の上り線でトラック同士の事故があり、破損した荷台から豚が逃げ出すという出来事がありました。豚は無事に捕獲されましたが、逃げ出した影響で、高速道路は約5時間半にわたり通行止めになりました。豚が高速道路内に逃げ出し通行止めになることは珍しい出来事ですが、このことは何かの罪に問われるのでしょうか?解説していきたいと思います。*画像はイメージです:■直接の罰則はない事故が原因となり、結果的に通行止め状態を発生させてしまったことを直接罰する規定はありません。事故については、注意義務違反があれば、それに対して自動車運転過失致傷などの罪には問われます。また、積載重量や積載方法の違反があれば、それも道交法違反となりますが、単に事故が原因で結果的に通行止め状態となり、かつ、それが過失であれば罰則はありません。 ■道路往来妨害罪道路を損壊または閉塞して道路の往来を妨害した場合、刑法124条の往来妨害罪が成立する可能性があります。道路を閉塞とは、障害物による道路を塞ぐことを意味しますので、通行止めとすることも、道路を閉塞させる行為に該当はします。しかし、道路の往来妨害罪は、過失犯処罰規定がなく、過失の交通事故によって、通行止めとなっても、刑法上の道路往来妨害罪とはなりません。この点、過失によって、電車の往来に危険を生じさせた場合は、刑法129条の過失往来危険罪という規定がありますが、道路については過失による往来妨害処罰規定はありません。 ■民事の賠償はある以上は刑事罰の話ですが、刑罰法規に該当しなくても、民事上の賠償責任は残ります。したがって、事故による当事者間の損害賠償の他、有料道路であれば、運営元会社に対し、通行止めとなったことによる賠償責任はあります。もっとも、過失による事故にすぎない場合は、通行止めとなったことの賠償責任まで追及されるケースはあまりないと思います。 *著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)【画像】イメージです* Kichigin / Shutterstock
2017年06月12日*画像はイメージです:若い頃は容姿が優れていたのに、中年になったらすっかり別人になってしまったということは、多々発生する現象です。男女ともその要因にあがるのが、体型の変化ではないでしょうか。身体や顔に肉がつくことにより、形が変わってしまうことで、「ぜんぜん違う」人間に変貌してしまいます。人は中年になると代謝が落ちるだけに、どうしても体重が増えてしまうもの。それを防ぐには、節制するしかありませんが、なかなか難しいのが実情でしょう。そのようなことを抑止する意味で、結婚時に「太ったら離婚」と約束したうえで一緒になることがあるそうです。守ることができればいいのですが、なかなかそうもいかないのが現状。仮にその合意を反故にし、太ってしまった場合、この約束は有効なものとなるのでしょうか?エジソン法律事務所の大達一賢弁護士に見解をお伺いしました。 ■「太ったら離婚」は有効?「太ったら離婚する」というのは、いわゆる「結婚契約(婚前契約)」であると解されますが、基本的に契約は合意に基づいている以上、当事者間での合意は原則として有効です。ただし、違法な内容であったり、社会的に妥当性を欠くような内容であったりする場合には、公序良俗(民法90条)に反するものとして無効となります。今回のように「太ったら離婚する」という内容自体が社会的に妥当性を欠くとまでいえるのかはなかなか難しいところですし、「太ったら」の意味が広すぎて、そもそも「太った」「太ってない」と水掛け論が展開されて、結婚契約の条項としての意味を持たない可能性もあります。そのため、仮に結婚前に「太ったら離婚」という合意をするのであるならば、例えば「〇キロ以上太ったら」とか、「ウェストが〇センチ以上になったら」など、客観的な基準を入れておくと、条項としての機能を持つ可能性も出てきます。とはいえ、このような個人の意思が尊重されるべき内容に関しては強制することはできないうえ、法律上の離婚原因である民法770条1項各号にも該当するともいえなさそうです。ということは、結果的にこの条項を理由に離婚をすることは事実上難しく、条項違反があったときにそれを離婚事由とするという意味での有効性は否定されそうです。この条項に限らず、結婚契約をする場合には、口約束だと実際に争いが起きた際には言った言わないの水掛け論となりかねないので、何か約束事をしたときには、書面化しておきましょう。この記事を読んで「太っても離婚しなくてもいいんだ!」と思った方もいるかもしれませんが、いつまでも出会った当時の素敵なパートナーでいてほしいと思うのは配偶者として当然の思い。法では心は縛れませんし、心にも身体にも贅肉がついていては、夫婦関係も冷えてしまうかもしれません。自身の健康のためにも適度な運動を心がけましょうね」(大達弁護士) なるべくなら、結婚時に交わした「約束」は守りたいものですね。 *取材対応弁護士: 大達 一賢(エジソン法律事務所。第一東京弁護士会所属。「強い、やさしさ。」、「守る≒攻める」、「戦略&リーガル」の3つの思いを胸に、依頼者のために全力を尽くします)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*Satoshi KOHNO / PIXTA(ピクスタ)
2017年06月11日先日、都立高校の約6割が入学時に生徒の髪の色やパーマが「地毛」であるかどうかを確認するため、「地毛証明書」を提出させていると大手新聞社が報じ、驚きの声があがりました。学校側は規律を守るためなどの狙いから入学時に証明書の提出を求めているようで、一定の理解も得られている模様ですが、「時代錯誤だ」「人権を無視している」など、否定的な意見もあり、賛否両論となっているようです。様々な意見があるようですが、法的にみてどうなのか。エジソン法律事務所の大達一賢弁護士にご意見をお伺いしました。Q.都立高校で行われているという「地毛証明書」の提出。違法ではない?*画像はイメージです:裁判では違法とされない可能性が高い。「“合法性”という意味においては違法とまではいえないのだろうと思われます。その理由として、まずおおもとに、「国公立である、私立であるを問わず、学生の教育と学術の研究を目的とする公共的な施設であり、法律に格別の規定がない場合でも、その設置目的を達成するために必要な事項を学則等により一方的に制定し、これによって在学する学生を規律する包括的権能を有するものと解すべきである」と判断をした判例があります(※1)。これに追従するような形で、小中高校においても学校の学則制定における包括的権能を認めている下級審判決が多く存在します。例えば、ある判決(※2)は、「生徒の服装等について規律する校則が中学校における教育に関連して定められたもの、すなわち、教育を目的として定められたものである場合には、その内容が著しく不合理でない限り、右校則は違法とはならない」としており、男子の髪型について「丸刈」と規定していた校則は憲法に違反せず、また違法性も認められず、校長の裁量権の範囲内と判断しています。そのため、現在の都立高校における頭髪に関する校則も違法であるとはされない可能性は高いといえるでしょう。また、校則が適法だとしても、校則を遵守させるための手段が適法である必要があります。この点について、校則に違反してパーマをかけた生徒に対し、自主退学勧告をした行為について、校則違反の態様、反省の状況、平素の行状、従前の学校の指導及び措置などを勘案して違法性を判断しており、結論として自主退学勧告は違法ではないとしています。(※3)さらに他の判決(※4)は、茶髪に染めてきた公立中学校の女子生徒に対し、学校で生活指導教諭らが学校内で当該生徒の髪を黒に染髪した行為について、生活指導の域を出るものではなく何ら違法性はないと判断しています。これらの事例と比較すると、地毛証明書の提出を要求する行為は、生徒の権利侵害がより少ないということもでき、上記各裁判例を踏まえると、裁判上は適法であると判断される可能性が高そうです。ただ、私見としては、髪型や髪色を変えることによって非行が助長される、ということは考えにくいと思います。そもそも、原則として黒髪であるべきだという発想自体、ボーダレスな現代社会の風潮において違和感を覚えます。「教育」=「管理」ではなく、教育とは個性を伸ばすことに重きを置きつつ、社会の一員としての自覚や責任を身に付けさせることだと思っています。「教育」に頭髪がどうあるべきかということの管理まで含ませる必要性はあまり高くはなく、地毛証明書まで求めることには疑問を覚えます」(大達弁護士) 地毛証明書の提出させる行為は、違法性は認められる可能性が低いものの、法律の専門家からみても違和感を覚える行為のようです。読者の皆さんは、どのように感じているでしょうか。 ※1:最高裁判所 昭和49年7月19日判決※2:熊本地方裁判所 昭和60年11月13日判決※3:最高裁判所 平成8年7月18日判決 ※4:大阪地方裁判所 平成23年3月28日*取材対応弁護士: 大達 一賢(エジソン法律事務所。第一東京弁護士会所属。「強い、やさしさ。」、「守る≒攻める」、「戦略&リーガル」の3つの思いを胸に、依頼者のために全力を尽くします)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*Graphs / PIXTA(ピクスタ)
2017年06月10日蛭子能収さん、太川陽介さんと女性ゲスト1人で路線バスのみを使って珍道中を繰り広げる『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』。当初は注目されていませんでしたが、そのハラハラ・ドキドキな展開が評判となり、人気コンテンツになりました。ご存知の通り、蛭子・太川コンビは今年1月で降板となり、現在は俳優・田中要次さんと作家・羽田圭介さんがあとを引き継ぎ、まずまずの人気を見せています。バス旅人気の秘密は、路線バスが停留所にしか止まらないという性質をうまくついていること。仮に路線バスがタクシーのように手を上げただけで停車し、乗車できてしまっては、面白くなくなってしまいます。そんな路線バスについては、極稀に停留所以外での乗降を見かけた人もいるかと思いますが、基本的には停留所以外に止まることはなく、乗降も出来ません。それはなぜなのでしょうか?Q.停留所以外の場所で路線バスが止まらないのはなぜですか?*画像はイメージです:道路運送法で定められているためです。道路運送法には、以下のような規定があります。路線定期運行を行う一般乗合旅客自動車運送事業者は、運行計画(運行系統、運行回数その他の国土交通省令で定める事項(路線定期運行に係るものに限る。)に関する計画をいう。以下同じ。)を定め、国土交通省令で定めるところにより、あらかじめ、国土交通大臣に届け出なければならない。(道路運送法第15条の3)一般旅客自動車運送事業者は、天災その他やむを得ない事由がある場合のほか、事業計画(路線定期運行を行う一般乗合旅客自動車運送事業者にあつては、事業計画及び運行計画。次項において同じ。)に定めるところに従い、その業務を行わなければならない。(道路運送法第16条)この法律により、天災などやむを得ない理由がないにもかかわらず停留所を飛ばす、道順を変えるなど、国への申請時に設定した事業計画及び運行計画と違う行動をとることは、法律違反となります。ですから、停留所以外の場所で停車し、客を乗降させることは法的に「できない」ということになります。儲かっていないバスなら、止まって客を拾いたいと考えるかもしれませんが、それをすると、法を犯すことになってしまいます。ただし、バス会社によっては「フリー乗降制」をしいている場合があります。この場合は、客がバスを見つけたときにで手を上げれば停車し、降りる場所についても申告制となります。もちろんこちらも、国が許可した場合のみとなります。たまに「手を上げただけでバスに乗れた」という声を聞きますが、これはフリー乗降制であると思われます。 *記事監修弁護士:冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*leonido / PIXTA(ピクスタ)
2017年06月08日ペットは家族同然の存在。戯れているときが、「最高の癒やし」と感じている人も多いのではないでしょうか。無邪気に懐いてくるペットは、やはり愛おしいものです。そんなペットですが、生き物であるだけに必ずしも人間のいうことを聞くわけではありません。本能のままに赴き、他人に迷惑をかけてしまうこともあります。極稀に発生するのが、飼い犬が第三者に噛み付いて怪我をさせてしまうケース。この場合、当然怪我をさせられた側は、治療費の請求などの責任を飼い主にとってもらおうとすることでしょう。しかし、実際に噛み付いたのは人間ではなく「犬」。飼い主には責任が発生しないようにも思えます。実際のところ、どうなのでしょう?Q.ペットが噛み付いて第三者に怪我をさせてしまった場合、飼い主に責任が発生しますか?*画像はイメージです:発生します民法718条に以下のような規定があります。動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたときは、この限りでない。2.占有者に代わって動物を管理する者も、前項の責任を負う。したがって、犬にリードをせずに放し飼いにしていたなど、「相当の注意を持って管理した」とはいい難いシチュエーションで相手に怪我をさせた場合は、当然ながら賠償責任が発生することになります。その額については犬の大きさや怪我の程度に比例して増減するのが一般的。また、子供に重傷を負わせてしまった、あるいは死なせてということになれば、重過失致死傷罪に問われる可能性もあります。飼い主は「ペットのやったこと」と責任を逃れることはできません。散歩をする際は十分に注意してください。 *記事監修弁護士:冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*t-room / PIXTA(ピクスタ)
2017年06月07日ときおり、大麻を所持していた疑いで逮捕されるニュースを耳にしますよね。著名人が大麻を所持していたとして逮捕される事案は、珍しくないものになっています。大麻は、大麻取締法により、都道府県知事の免許を受けた者以外による所持が禁じられています。ところで、大麻以外には、どのようなものが所持を禁じられているのでしょうか。*画像はイメージです:■所持が禁止されるには合理的な理由が必要大麻以外にも、覚せい剤などの薬物、ナイフ、児童ポルノなどを所持していたといった事件が、よく報道されています。人には物を所持する自由がありますから、法律で所持を禁止するには、社会に受け入れられる理由が必要です。そのため、所持を禁止されている物の種類から、禁止されている理由がわかるものがほとんどです。所持に刑事罰を与えていることから、それぞれの法律では、所持が禁止される物について、ほとんどの場合、具体的な定義を定めています。今回は、法律上の用語を使って、どのような物の所持が禁止されているか、ざっくりと分類してあげてみます。所持を禁止するときには、特定の目的を持った所持を禁止する場合や、許可等を得ない所持が禁止される場合などがあります。これは、一般には所持を禁止すべき物であっても、医療や学術研究、または適切な管理の下では有効に活用できたり、必要不可欠な場合が多くあるからです。他方で、所持が禁止される物を製造する道具や原料の所持も禁止される場合もあります。これは、所持が違法とされる場合を広く捉えるものといえます。以下、所持が規制・禁止されているものをご紹介します。 ■乱用される薬物薬物乱用は社会だけでなく、使用者へもその悪影響が大きいことから、各種薬物に法規制が行われています。他方で、薬物は医療や学術研究へ有用であることから、許可等を得たときには所持が認められています。「大麻」「向精神薬」「覚せい剤」「あへん」などの所持が禁止されています。医薬品は、医療へ有用ではありますが、その反面、乱用すればその弊害は明らかです。そのため、許可等のない「指定薬物」の所持が禁止されています。危険ドラッグ(違法ドラッグ)と呼ばれるものは、この規制により、所持が禁止されています。 ■毒など危険な物危険の薬品として、「特定毒物」「サリン等」の所持が禁止されています。「サリン等」の所持を禁止する法律は、平成7年に成立しており、その頃宗教団体によって起こされたテロ事件においてサリンが使用されたことがきっかけとなり、制定されました。それまでは直接的に規制する法律が存在していませんでした。刑罰法規は、明確性が求められることから、事前に抽象的に規制をするということが難しく、今後もこのような事後的な対応になってしまう事例が生じる可能性は残されているといえます。また、病気の原因となる、「一種病原体等」「家畜伝染病病原体」も、その危険性から所持が禁止されています。 ■凶器、武器、兵器「鉄砲又は刀剣類」の許可等のない所持も禁止されています。また、刀剣類とまではいえない「刃物」についても正当な理由のない携帯が禁止されています。武器ではない道具についても、その取扱いが制限されているのです。爆発物などの危険物として、「火薬類」「爆発物」「火炎びん」の所持も禁止されています。これらの以上に危険な兵器も、取り締まる法律があります。「対人地雷」「クラスター爆弾」「生物兵器又は毒素兵器」「化学兵器」の所持が禁止されています。更には、一般人はあまり関わりませんが、原子力にかかる物についても、所持が禁止されています。これは、その物の持つ能力や危険性から、取扱いを国として管理する必要が認められるからであるといえます。具体的には、「原子核分裂等装置、放射性物質」「核燃料物質」「放射性同位元素」の所持が禁止されています。 ■わいせつな物昨今、報道されることが多くなってきた、「児童ポルノ」はその所持が禁止されています。平成26年改正前は、他者への提供等の目的による所持が禁止されていましたが、改正により、自己の性的好奇心を満たす目的による所持も禁止され、処罰範囲が拡大されました。「わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物」については、従前から刑法により所持が禁止されています。 ■生活上の注意そのほかにも、所持を禁じる法律はいくつかありますが、日頃生活をしているなかで所持が禁止されているものを手に入れる機会は多くありません。街中のお店で手に入るものであって、必要な理由があって所持しているものであれば、基本的には法律に触れる心配をすることはありません。薬局で買った薬が違法な薬物ではないかとか、観葉植物として購入した植物に違法な病原体や薬物が含まれているのではないかと心配していては、日常生活をおくることもままならなくなってしまいます。しかし、最近ではインターネットで違法な薬物が簡単に入手でき場合もあり、特段の心理的抵抗なく購入したり輸入してしまう場合があります。また、児童ポルノについても、SNSなどのインターネットで違法とは考えずにやり取りしている例が見受けられます。万全の対策というものは難しいですが、ニュースなどで報道されている事件について、自分のまわりに起きる可能性がないかどうか、考えてみると良いと思います。 *著者:弁護士 荻原邦夫(ヴィクトワール法律事務所。刑事事件を主に取り扱っています。お客様に落ち着いていただき、理解していただけるよう対応します。)【画像】イメージです*makaron* / PIXTA(ピクスタ)
2017年06月07日*画像はイメージです:不倫といわれると、「配偶者以外との肉体関係を結んでいる」と考える人が多いのではないでしょうか。「肉体関係は結んでいないよ」と言われたとしても、配偶者が自分以外の異性と親密にしていると、あまり気分がいいものではないと感じる人もいらっしゃるかと思います。実際に肉体関係を結んでいることが発覚すれば、離婚という選択肢を選んだり、慰謝料を請求することも考えられますが、肉体関係を結んでいない場合は、慰謝料の請求はできるのでしょうか?今回は肉体関係がなくても慰謝料が発生するのかといった点について解説したいと思います。 ■肉体関係がなくても慰謝料が発生する場合がある肉体関係がなくても、その行為が婚姻共同生活の平和を侵害する場合には、慰謝料が発生することはありえます。例えば、性交渉に類似する行為をしていたり、同棲している場合など、婚姻破綻に至らせる可能性が高いといえる程度の異性との交流・接触がある場合には、性交渉そのものはなくても慰謝料が発生しうるといわれています。実際に慰謝料が認められたケースをご紹介します。(※1)裁判所の判断は、次のようなものです。「被告(=不貞相手)と元夫の間に肉体関係があったとは明確に言いきれないが、被告は元夫に対して、元夫に対する好意を示す内容で、しかも身体的接触を持っている印象を与える内容のメールを送っている。それは、原告(=元妻)がこのメールを読む可能性がある状況下だったから、そのようなメール送信は、婚姻生活の平穏を害する行為であって違法である、とされました」元夫はブラウザメールを利用しており、原告がそのIDとパスワードを知っていることは想定できた、とされています。結論的には、30万円の慰謝料が認められています。他にも、被告(=不貞相手)と夫の関係について、肉体関係の存在は認めなかったものの、密会を重ねて二人きりの時間を過ごしたことについて、社会通念上相当な男女の関係を超えたものといわざるを得ず、被告(不貞相手)の態度と、夫の原告(妻)への冷たい態度には因果関係がある、等と述べて44万円の慰謝料を認めました。(※2)以上より、肉体関係がない場合でも、慰謝料は発生し得ると考えられます。また、肉体関係を結んでいなくても、浮気相手と度を超えた親密な交際を続けたことによって夫婦間の婚姻関係が破綻したと裁判官が評価してくれた場合は、婚姻を継続し難い重大な事由(民法770条1項5号)があることを理由として離婚が認められることになると考えられます。 ■肉体関係を結んでいても慰謝料が発生しないケースはある?逆に、肉体関係を結んでいても慰謝料が発生しないケースもあります。典型例は、肉体関係を持った時点で既に婚姻が破綻していた場合です。「肉体関係を結んだ時点で夫婦の婚姻が破綻していた場合には、特段の事情のない限り慰謝料は発生しない、なぜなら、既に婚姻が破綻している以上、婚姻共同生活の平和の維持という権利がないからだ」と述べて慰謝料請求を認めませんでした。(※3) また、配偶者がいると知らず、そのことに過失はない、という場合にも慰謝料は発生しないと考えられています。ただし、不貞相手が勤務先の同僚である場合や、年齢や交際の状況から既婚者である可能性がある状況があるにも関わらず既婚者かどうかを確認しなかったような場合は、過失があると判断される可能性があります。一方で、相手が独身だと名乗っており、その言動や客観的な状況から、独身者と信じても仕方がないと考えられるような場合は、過失がないと判断され、慰謝料は認められないと考えられます。 ※1東京地方裁判所平成24年11月28日判決※2大阪地方裁判所平成26年3月判決※3最高裁平成8年3月26日判決*著書:弁護士 近藤美香(秋葉原よすが法律事務所。家事事件を専門的に取り扱い、500件以上の家事事件を取り扱った経験を持つ。JADP認定の夫婦カウンセラーの資格を保持している。)【画像】イメージです*wavebreakmedia / PIXTA(ピクスタ)
2017年06月04日*画像はイメージです:年5月、あるセルフガソリンスタンドを経営するグループ会社が、従業員が関与していなくても客がセルフで給油できるようにしていたことがテレビ局の取材で発覚。担当地域の消防本部が消防法に抵触すると改善を指示しました。該当のスタンドでは店員がいなくとも、給油を許可するタッチパネルを自動的にノックする仕組みの機械を社員が自作して、2016年10月から使用していたそうです。セルフガソリンスタンドは、人件費を節約しているぶん、安い値段でガソリンを提供できますが、完全に無人であることはなく、無人と思えてもスタッフはいます。ガソリンという揮発性の高い燃料の給油を一般の人に任せているわけですから、ドライバーがくわえタバコをしていたり泥酔していたりしないか店員が確認してから、ガソリンが出るように操作することが消防法で定められているわけです。そうでないと、なにかの拍子に給油ノズルが外れてガソリンが出っぱなしになって、大事故になってしまいます。万一、摘発されたスタンドのように機械が人のいるいないに関わらず給油自由にしていたら、引火事故で死傷者が出るケースもあるかもしれません。その場合はどうなるのでしょう?桜丘法律事務所の大窪和久弁護士にお聞きます。 ■引火事故で死者が出れば業務上過失致死罪に「店員が危険がないのを確認せずに給油を開始させた結果引火し死亡事故につながったということであれば、ガソリンスタンドの店員に重大な過失があるということになりますので、業務上過失致死罪に問われることになるでしょう」摘発、というより今回、改善指導は消防署が消防法に則って行いました。しかし、事故が起これば刑事罰に問われます。では、雑居ビル火災などで取り上げられることも多い、消防法とはどんな法律なのでしょうか?「消防法は、火災から国民の生命等を守るために制定された法律です。火災の予防、被害の軽減及び火災等による傷病者の搬送に関する事項を定めています。罰則も定められており(38条以下)、消防設備の破壊や、消防行為の妨害や、消防設備に関する消防署長の命令に反する行為等についてはやった行為の内容に応じて裁判所により懲役や罰金が科されることとなります。また容疑者は他の犯罪の容疑者同様に逮捕されることがあります」消防設備の確認・指導などを行うのが消防署のため、逮捕とは縁遠そうに思えますが、火災は一度起これば大きな被害を出し、それだけに、実は厳しい罰則も用意されているのです。けっして軽く扱ってはいけない法律といえるでしょう。ただ所轄の消防署についてはこのような事故が起こったからといって管理責任が問われるということにはならないそうです。実際、多くの施設を見て回るのは人数的に困難です。今回はテレビ局の取材で発覚しましたが、客として訪れたスタンドでおかしな機械を取りつけていたら、注意して見てみることも必要かもしれません。 *取材協力弁護士:大窪和久(桜丘法律事務所所属。2003年に弁護士登録を行い、桜丘法律事務所で研鑽をした後、11年間、いわゆる弁護士過疎地域とよばれる場所で仕事を継続。地方では特に離婚、婚約破棄、不倫等の案件を多く取り扱ってきた。これまでの経験を活かし、スムーズで有利な解決を目指す。)*取材・文:梅田勝司(千葉県出身。10年以上に渡った業界新聞、男性誌の編集を経て独立。以後、フリーのライター・編集者として活躍中。コンテンツ全般、IT系、社会情勢など、興味の赴く対象ならなんでも本の作成、ライティングを行う。Twitterアカウントはこちら)【画像】イメージです* ICHIMA / PIXTA(ピクスタ)
2017年06月01日