自宅をフルリノベした人気ブロガー・ちきりんさんのリノベ体験談やリノベーションについての考え方などを4回にわたってお届けしています。最終回である第4回目のテーマは「常識に縛られずにつくりあげた、5つのお気に入りポイント」です。ここまで読んできてくださった方は、その内容が “ヘリンボーン張りの無垢床” や “ブラックフレームの室内窓” でないことはきっとお分かりですね。ちきりん流のこだわり&お気に入りスペースを写真付きで見ていきましょう!■ 1.マルチに活躍するエントランスホール取材当日、玄関に一歩足を踏み入れると広がっていたのは、アジアンリゾートを思わせる開放的な玄関。大人4人が立ち話をしてもなお余裕のある広さで、それは、最近よくある “土間のある玄関” ともちょっと違う。玄関や土間より “エントランスホール” と呼ぶのがふさわしいかもしれません。なぜなら、用途が玄関や土間にとどまらないから。自宅を事務所としても使うちきりんさんは、この空間に机と椅子を持ってきて打ち合わせスペースにすることもあるそう。そして個性的な壁紙の奥には、旅行グッズや外出着など、普段家の中では使わないものすべてが収納されています。だから、海外旅行に行く時のパッキングや、外出する前に着替えをするスペースとしても活躍。宅配された荷物を開封したり、DIYもできちゃうマルチなスペースなのです。■ 2.扉のないトイレ親族がよくぎっくり腰になるんだと笑って教えてくれたちきりんさんは、ぎっくり腰や将来的に介護状態になった時、トイレは広い方が便利だと熱弁。また、ベッドから近いことも大切です。体が不自由になったとしても、なるべく長く、ひとりでトイレに行けるように考えてとのこと。外国では扉なしのトイレは珍しくないそうですが、日本ではリノベーションでもしない限り手に入りません。健康な今はまったく気にも留めませんが、家は長く住んでいると、自分も家族もどんどん年を取ります。10年後、20年後、さらにその先を考えた間取りを今検討して、今採用することは、なかなか難しいかもしれません。でも、長く付き合う家だからこそ、先の、そのまた先の暮らしまで想像を及ばせて考えることは大事だなと思いました。■ 3.収納付きパウダールーム扉なしトイレと同じ空間に水まわりが集結した大空間。どれくらい広いかというと、エントランスホールと水まわりで約60㎡の家の半分を占める、というと想像がつくでしょうか。この空間にはワイドな洗面台とバスルーム、洗濯機置き場や室内物干しがあって、一見 “ザ・水まわり”。洗面台は 着け置き用のオケが置ける(駄洒落じゃなくて!)のが必須条件で、奮発して購入したものだし、浴室には念願のガス温水式サウナもあるし、こだわり満載の水まわりです。ところが、ちきりんさんにかかればただの水まわりにとどまらず。洗面台の奥にはメイク用品が収納されていて、脚立にもなる椅子に座れるメイクルームでもあるし、パジャマや部屋着を収納するオープンクローゼットもありました。ここで気付きます。掃除が苦手と自称するちきりんさんの家が暮らしやすいのは、適材適所に収納があるからだ、と。室内で使わないものはエントランスホールに収納して室内に持ち込まない、お風呂から出た後に着るパジャマや朝起きて身支度ついでに着替える室内着の収納は脱衣所、洋服は乾燥機や浴室で乾かすからクローゼットは水まわりに配置、など合理的な収納計画がされていました。■ 4.コーナーごとに景色が変わるワンルームエントランスホールと水まわりで家の半分の面積を占めるちきりん邸。残り半分はというと、生活&仕事スペースであるワンルームの空間です。キッチン、リビング、寝室、ワークスペースを兼ねていますが、仕切りも扉も一切ありません。それぞれのコーナーから見える室内の景色は異なり、どこからでもお気に入りの空間を眺められます。眺めるといえば……ちきりんさんは大のテレビ好き。なので、どこにいてもテレビが見えるように、とリクエストしたそう。これが叶ったのもワンルームだからこそ。そして、ちきりん邸に設置された扉はわずか2つ。それは移動のしやすさや開放感にもつながっていますが、空調管理という面でもメリットが。エアコン一台で家中どこにいても一定の室温を保てて、とても快適なのだそう。お風呂上がりの脱衣所が寒い、なんていうあるあるとも、ちきりん邸では無縁です。■ 5.キッチンのガスコンロが1口ちきりん邸には「えっ!」と驚くポイントがたくさんありましたが、そのなかでもキッチンは他で見ることのない佇まいでした。なぜならガスコンロが1口!しかもキッチン自体が狭いから仕方なく1口、ではなく、作業台もカップボードもとっても広くて大きいなかで1口ガスコンロが控えめにちょこんと備わっているのです。魚焼きグリルもない一口ガスコンロを採用したのは、「自分はガスコンロを使わない」と分かっていたから。でも決して料理をしないわけではありません。ちきりんさんは調理家電が大好き。レンジ、コンベクションオーブン、無水自動調理鍋などをフル活用しているので、コンロは炒め物にしか使わないと分かっていました。利用頻度の低いコンロにスペースを割くよりも、広い作業台があったほうがいいと思っての選択です。ちなみに、それらの調理家電はキッチン背面の造り付けカップボードに見事に美しく収納されていました。調理家電のサイズに合わせ、配線も隠し、さらには同時に使ってもブレーカーが落ちないようにコンセントの配線を細かく分けました。これも “暮らしやすさ” を叶えるための、リノベならではの工事ですね。■ やり直せるならココを変えたい! 小さな失敗談よく考えて設計された合理的な間取り、そして予算内でメリハリをつけてこだわりを実現した内装のちきりん邸。とっても暮らしやすく快適だとお話しいただきましたが、小さな失敗はあったそう。それは、照明です。ワンルームの各コーナーに埋め込んだダウンライト。これが思いがけずまぶしかったのです。まぶしいのが苦手なちきりんさんは、もちろん照明にも配慮していました。それでも、ある程度の段階に工事が進むまで、そのまぶしさに気付けなかったと言います。でも、これは誰のせいでもない、とも。変更が間に合う段階で幸いにも気付けたので、間接照明になるダウンライトを追加してもらえて事なきを得たそうです。ショールームで一目ぼれしたというトイレ用アームレストも「いらなかったね!」とスッパリ。煌びやかなショールームは物欲をとことん掻き立ててきます。どうぞその熱烈ラブコールに惑わされませんように。さて、自宅をリノベーションしたちきりんさんの体験談やリノベーションの考え方を、4回にわたってお届けしてきました。リノベーション検討中の方はきっと、リノベ会社選びの視点や予算の考え方を見直し、希望プランや理想の暮らしを一考するきっかけになったのではと思います。リノベの価値は暮らしやすさの創造。雑誌でよく見る憧れの間取りやオシャレな内装をマネっこする前に、家族の生活動線や日常的にストレスに感じていることを洗い出しましょう。そして、暮らしやすい家とはどんな家なのか、自分たちにとってリノベの価値は何なのかをたくさん話し合い、リノベーションを楽しみながら理想の家をつくり上げてくださいね。もっとちきりん流のリノベ論に触れたい方は、ぜひ本を手に取って読んでみてください。さあ、最後の締めもちきりんさんの決まり文句で。そんじゃーね!■ちきりん関西出身。大学卒業後、金融機関に就職。アメリカの大学院留学を経て、外資系企業に転職し、在職中にブログを書きはじめる。退職後、2011年からは文筆家として活躍。『自分のアタマで考えよう』『マーケット感覚を身につけよう』(ダイヤモンド社)ほか著書多数。「Chikirinの日記」は月間ユーザー30万人を超える人気ブログ。徹底的に考えてリノベをしたら、みんなに伝えたくなった50のこと完全に「顧客目線」ですべてを解説。リノベーション&リフォーム入門の決定版!
2019年05月21日社会派人気ブロガーのちきりんさんが、ご自宅をリノベーションして得られた多くの学びを「これからリノベする人」にも共有したい!と考えて書かれた『徹底的に考えてリノベをしたら、みんなに伝えたくなった50のこと 』(ダイヤモンド社)を出版したと聞きつけ、一番乗りで取材へ。自宅をフルリノベした人気ブロガー・ちきりんさんのリノベ体験談やリノベーションの考え方などを4回にわたってお届けしています。第3回目のテーマは「リノベの予算」です。プランニング中に何度も顔を出しては施主を悩ませる “予算調整”。でも、ちきりん流で論理的に考えるとスッキリ解決しちゃうかも。■ 「予算いくら?」という質問の真意freeangle / PIXTA(ピクスタ)個別相談に行くと必ず聞かれる「予算はいくら?」という質問。いやいや、いくらくらいでリノベができるかこっちが聞きたいくらいだよ、という人も多いでしょう。それでも聞かれる予算。なぜリノベ会社はそこまで予算を聞いてくるのでしょうか。それは、予算によって見せる世界が変わってくるから。例えば、予算2000万円なら間取りを大胆に変更し、ふんだんに自然素材を使い、豪華なキッチンやバスルームを備えるプランも提案できます。でも、予算500万円の人にその煌びやかな世界を見せても無意味です。もちろん逆も然り。だとしても、無垢フローリングにするといくらかかるか、オーダーキッチンはいくらで作れるかを知らないのに予算なんて組めないよ、と思うかもしれません。ところが、リノベ会社にとってもこの段階でそれを明示するのはとても難しいのです。というのも、ひとことでユニットバス、もしくはオーダーキッチンといっても、ピンからキリまで大きな価格差があるからです。リノベ費用の多くは設備の材料費よりも人件費です。fujiyaman / PIXTA(ピクスタ)例えば床材。ヘリンボーン貼りはとてもおしゃれですが、貼るのに時間がかかる上、無駄になる端材も発生するため面積以上の床材が必要。だから「床を無垢にするといくらかかりますか?」と聞かれても、リノベ会社も明確に答えられないのです。そうなると、予算は自分で決めるありません。ではその予算はどうやって決めたらいいのでしょうか。■ 「月いくら払えるか」から予算を考えるYNS / PIXTA(ピクスタ)貯金がいくらあるから、ローンがここまで組めるから、だから予算はこれだ! と決める人、または施工事例を見てだいたいの予算感をつかむ人もいるでしょう。でも、もっと論理的に予算を決める方法があります。それは、「リノベ後の家に、月いくらの家賃を余分に払えるか考えること」です。ちきりんさんはまず、リノベをした後、何年ここに住むだろうと考えました。その答えは「できれば20年は住みたい」。次に考えたのが「今の部屋と新しくなった部屋、もしどちらも賃貸だったら、何万円、家賃が高くても新しい部屋に住みたいか」そういう流れでちきりんさんは予算を考えたそうです。cba / PIXTA(ピクスタ)ちきりんさんの答えは「お風呂もキッチンも新しくなる。動線も完璧。二重窓で断熱性も高くなる。これなら家賃でプラス月3万円は払う」。次に考えたのが「フリーランスなので、仕事の打ち合わせやネット会議ができるスペースを整えたい。そのために月いくら払うか?」その答えは「月2万円ならオフィス分として払える」。つまり「圧倒的に暮らしやすくなる家に月3万円、オフィスとして使うための費用として月2万円、合計5万円が、自分として納得できる額」というのが、ちきりんさんの答えだったのです。そして、この額×住むであろう期間をかけた額が、ちきりんさんのリノベ予算となりました。ちきりんさんは所有物件をリノベ―ションしたので予算はリノベ費用のみでしたが、物件から購入する人だって考え方は同じ。何年住んで、月々いくら払ってもいいと思える部屋になるのか。一度、そこから考えてみてはいかがでしょう。■ 優先すべきは何? 予算配分の考え方ABC / PIXTA(ピクスタ)今回ちきりんさんにお話を聞いて大きく頷いたポイントのひとつはココ。予算を決めたら、その次に考えるべきは優先順位です。ちきりんさんの優先順位トップは「暮らしやすさ」。おしゃれな内装よりも基本性能が大切、という考えでした。なので、ちきりんさんはスケルトンリノベという貴重な機会にしかできない断熱や間取り変更などの工事に優先的に予算を投下。そして、余った予算内で設備をチョイスし、内装を楽しみました。予算と優先順位を決めれば、ブレない。「150万円の浴室は無理だな」「オーダーキッチンはやめよう」といった判断がスパッとできるようになります。もちろん、寒くてもいいからおしゃれな家に住みたいんだ!という人もいるでしょうし、それはそれでいいんです。リノベーションで何をしたいのか、どんな暮らしを実現したいのか、よく考えて優先順位の上から予算を配分していきましょう。■ それでも迫られる予算調整はどう切り抜ける?予算と優先順位をしっかり決めても、細かい予算調整には何度も頭をかかえることになるでしょう。そんな時は、自分のこだわりのない部分はどこなのかを考え、そこの予算をどんどん削りましょう。bee / PIXTA(ピクスタ)例えば、日本製のトイレはどこも素晴らしい。だからちきりんさんは「どのメーカーのどの品番でもいい、一番安く仕入れられるものを」とリクエストしたそうです。また自然素材にもこだわらず、むしろメンテナンスのしやすさを重視して、無垢フローリングではなく手入れが簡単な突き板フローリング、珪藻土ではなく塗り壁風に見えるクロスを採用。そのおかげで、玄関ホールの輸入壁紙やリビングの壁に貼ったタイルなどに費用を充てることができ、こだわりある内装もしっかり実現できました。freeangle / PIXTA(ピクスタ)内装はメリハリがつけやすいポイント。譲れる部分と譲れない部分、しっかりすみ分けて予算を配分すれば、叶わなかった内装リクエストも実現できるかもしれません。おしゃれな内装や最新設備と天秤にかけられる、予算という名の重し。どうやってその総額を決めるのか、それをどうやって配分して予算を死守するのか、リノベ予算の考え方をここではお伝えしました。これで悩ましい予算問題もスッキリ解決……するといいですね。さて、次回は最終回。ちきりんさんが作り上げた暮らしやすい理想の家のなかで、特に気に入っているポイントをご紹介します。そこかしこに常識にとらわれないオリジナリティがキラリ。さあ、次回はいよいよ魅惑的な(?)ちきりん邸に潜入です!■ちきりん関西出身。大学卒業後、金融機関に就職。アメリカの大学院留学を経て、外資系企業に転職し、在職中にブログを書きはじめる。退職後、2011年からは文筆家として活躍。『自分のアタマで考えよう』『マーケット感覚を身につけよう』(ダイヤモンド社)ほか著書多数。「Chikirinの日記」は月間ユーザー30万人を超える人気ブログ。徹底的に考えてリノベをしたら、みんなに伝えたくなった50のこと完全に「顧客目線」ですべてを解説。リノベーション&リフォーム入門の決定版!
2019年05月15日日刊Sumaiの運営のほか、『住まいの設計』『リライフプラス』の撮影で年間70件以上のお宅撮影に飛び回る編集部・君島(47)の取材こぼれ話や、うっかり母さんなプライベートをチラ見せ!■ 協力的なボーイズに感動先日はお宅撮影が2軒。午前の部は、北区にてアズ建設さんの戸建てリノベでした。1年生と5年生のボーイズたちがとても協力的でおばちゃん感動。キッチンがまたおしゃれなのです。ボーイズたちのお部屋はそれぞれロフトベッドがあり、おうちの形の間仕切り?がついててとってもフォトジェニックでした。■ いちいち可愛い!オカメインコ昨日の午後の部は、西東京市方面にてスタイル工房さん物件です。可愛いオカメインコちゃんがいて、最後に室内に放して撮影させていただきましたとっても可愛い声で鳴いたり、お父さんお母さんの肩に止まったり(逃げたり?)、鏡で自分を見たり(鏡大好きだそうです)いちいち可愛いかったです。ちなみに「自然素材でリノベしてよかった!」っていう特集です。誌面では元気すぎる6歳男児も大活躍してますのでぜひご覧くださいね!■ 人気ブロガー・ちきりんさんにインタビュー!すでに日刊Sumaiで2本の記事人気ブロガー・ちきりんさんが自宅をフルリノベ。リノベする人に伝えたいこと5つ人気ブロガー・ちきりんさん流リノベ会社の選び方&リノベ会社に言いたいことを配信していますが、人気ブロガー・ちきりんさんが『徹底的に考えてリノベをしたら、みんなに伝えたくなった50の こと 』(ダイヤモンド社)を出された、ということで発売直後に一番乗りでインタビューさせていただきました!著書も何冊か持っていますし、ブログ「Chikirinの日記」も大好きで、会社のデスクでお昼を食べながら読むのを楽しみにしている、あのちきりんさんに会える!ということでかなりテンション上がりました〜。ただ、お顔出しを一切していないので、もしかしてコワイ方なのかな、本に書いてあることをまた聞いたりしたら怒られないかな、などと行く前はあれこれ気を揉んでいましたが、とても気さくでお話が面白くて、こちらの聞きたいことをちゃんと汲んでそれ以上のものを返してくださる、ほんとにデキる方だなと感じました。連休明けにあと2本、リノベの費用に関する記事と、写真も交えたリノベ後のちきりんさん宅の記事を配信予定ですのでどうぞお楽しみに〜。
2019年05月04日社会派人気ブロガーのちきりんさんが、ご自宅をリノベーションして得られた多くの学びを「これからリノベする人」にも共有したい!と考えて書かれた『徹底的に考えてリノベをしたら、みんなに伝えたくなった50のこと 』(ダイヤモンド社)を出版したと聞きつけ、一番乗りで取材へ。人気ブロガー・ちきりんさんの自宅リノベ体験やリノベ―ションへの考え方を4回にわたってお送りしています。2回目のテーマは「リノベ会社の選び方」。そして日頃から高いマーケット感覚で物事を観察しているちきりんさんならではの、ズバッと鋭い「リノベ会社に言いたいこと」もお届けしましょう。リノベーションという共同プロジェクトのパートナー(リノベ会社)探しには、なるほど!な考え方が満載です。そして気になるちきりんさんがリノベ会社に「言いたいこと」とは?■ 希望と価値観を理解してくれるパートナー選びWorldWideStock / PIXTA(ピクスタ)個別相談の次は各社とのプランニング。自分の価値観や嗜好、そしてやりたい間取りや工事、取り入れたい設備などの詳細な希望をリノベ会社に伝えていきます。ここで驚きなのは、いくら明確に、何度も伝えても希望や価値観を理解してくれない会社もあるということ。ちきりんさんは無垢フローリングや珪藻土などの自然素材にこだわりはなく、断熱や動線などの暮らしやすさやメンテナンスのしやすさを重視。最近よくある「リノベっぽい」リノベはしたくなかったそうです。シロウ / PIXTA(ピクスタ)でも、大多数は「おしゃれな内装」を希望するわけで、「断熱をしっかりやりたい」とか「一口コンロが取り付けられるキッチンを」と熱望しても、理解や共感がされずに、思い描いたプランが出てこないことも。そういう会社はきっと “よくあるリノベパターン” に寄せてくるので、自分のオリジナリティある希望は叶いにくい。ちきりんさんはそう感じて、過去の施工事例をチェック。オリジナリティある施主の希望が形になっている事例が一定量あるリノベ会社を選びました。■ 比較すべきは見積もりやプランではないリノベ会社選びは、ファーストプランと見積もりの比較。そう思っている人が多数ですが、比較すべきはそこではないとちきりんさん。間取りや見積もりもリノベには大事な要素ですが、後からどうにでもできる部分でもあります。見積もりに関しては、各社で項目も違うし、同じ工事だとしてもどの項目に入るかも違い、比較するなんてナンセンス。hide / PIXTA(ピクスタ)もっと言うと、予算を決めるのはリノベ会社ではなく自分なのです。500万円と自分が決めれば、各社500万円でプランを作ってきますよね。そこに見積もり差(予算差)はないわけです。そんなことより大切なのは、ファーストプランや見積もり作成のためのやりとりを通して、相性がいいか、自分の理想を理解して形にしてくれるか、リノベプロジェクトの仲間になれるかどうか見極めること。そう、会社の性質や対応力は契約後に変えることはできないのです。ではその見極め方法は?■ 「普通じゃないリクエストを伝える」ことで見えてくるものちきりんさんがオススメするのは「普通じゃないリクエストも正直に伝える」ことです。bee / PIXTA(ピクスタ)ちきりんさんは、ガス温水式ミストサウナを取り付けたい、ガスコンロは1口がいい、トイレに扉を付けたくない、などを希望。そうすると、各社でその希望に対する考えや対応が大きく異なったそうです。真摯に対応し、適切な機能と価格のものを探し出して提案してくれる会社もあれば、探しも検討もせずにNOを言う会社もあります。よくあるリクエストをしても定型の答えしか返ってこないので無意味です。オリジナリティあるリクエストがあるなら躊躇なくぶつけて、その対応力を判断材料にしましょう。■ 細かいけれど実は大切なことimageteam / PIXTA(ピクスタ)地味ながらも、リノベ会社選びで大事なポイントがふたつ。ひとつ目は自宅から「事務所が近い」こと。リノベ工事中には大小問わず思いがけないトラブルが必ず起きます。その時に担当者がすぐに駆け付けられる距離感がベスト。事務所から現場まで片道2時間なんていう距離感では、担当者は気軽に現地確認に行けません。でも近ければ、忙しいスケジュールの合間にもさっと立ち寄ってすぐに対処してもらえます。工事管理をする担当者のために、そして対応スピードは出来上がる家にも影響するので自分のためにも、距離は大事です。そしてふたつ目は「コミュニケーションツールが合っているか」ということ。shimi / PIXTA(ピクスタ)スマホが普及したいま、メールや電話だけでなく、LINEで気軽に担当者とやりとりができる会社もあります。ちきりんさんは自分の価値観やこだわりある要望についてはしっかり文字にしてメールで送り、きちっと最後まで読んでくれる会社を望んでいました。でも、LINEで「この玄関の感じが好きです!」などと気軽にやりとりをしたい人もいますし、なるべく対面で話したい、という人もいます。リノベーションは、場合によっては半年ほど続くこともあるプロジェクト。自分に合わない手段で密に連絡を取るのは、意外としんどいかもしれません。■ リノベ会社に言いたいこと自宅のスケルトンリノベを経験したちきりんさんから、リノベ会社にズバッと言いたいことを3つお聞きしました。1.「ホームページに客が知りたいことを明示せよ」freeangle / PIXTA(ピクスタ)ひとつ目は「ホームページに客が知りたいことを明示せよ」です。各社のホームページを見ると、「フルオーダーもセミオーダーもどっちも対応します」や「お気軽にご相談を」というメッセージが多く似たり寄ったり。でも実際個別相談に行ってみると、リノベ会社の得意なことと自分の希望が合わなかったり予算感にズレがあったりして、「あ、すみません、お呼びでない」ということも。これではどちらにとっても時間の無駄です。リノベ会社はどうか間口を広げすぎないで。得意な分野は絶対にあるはずだから、そこにフォーカスして伝えてほしいのです。2.「客に最初に会わせるのは、ある程度スキルがある人を」kotoru / PIXTA(ピクスタ)そしてふたつ目は「客に会わせる1人目にはある程度スキルがある人を」です。個別相談に行くと1~2人の担当者が対応してくれますが、客はこの人の対応で会社を判断します。ちきりんさんは、「その受け答えで大丈夫!?」と思わず上司のような気持ちになり、指導したくなった担当者もいたとのこと。もちろんその人ひとりが会社のすべてを表しているわけではありません。でも、もったいない。だから、1人目として客に会わせるスタッフにはもっと教育を。3.「事例紹介には小さなひとつでもいいから失敗談も載せて」Fast&Slow / PIXTA(ピクスタ)最後は「事例紹介には小さなひとつでもいいから失敗談も載せて」です。施工事例にはいいことやお気に入りポイントはたくさん書いてありますが、「ここは後悔しました」というネガティブ情報は皆無。でもそれこそが、これからリノベをする人にとっては貴重な情報です。それはリノベ会社にとっても同じで、小さな失敗を認識して掲載し、社内で共有することで、会社の学びにもなる。次のお客様に生かすことで、満足度向上にもつながります。Fast&Slow / PIXTA(ピクスタ)ネガティブ情報の開示に躊躇することはありません。施工事例に載っているご家族はその会社や出来上がった家に満足したからこそ載っているわけです。そのうえでの小さな後悔ポイントなんて大したことない。そんな大したことない後悔ポイントでも、これからリノベする人には大いに役立つのですから。そして、「そんな正直な会社があったら、ぜひそこに頼みたい」とちきりんさんは言います。ということで、リノベ会社選びに頭を悩ませている人は、ぜひこうした視点で改めて候補の会社と向き合ってみてくださいね。見積もりとファーストプラン、そして素敵な過去事例写真だけで判断していてはダメですよ。次回は「リノベ予算の考え方」です。ちきりん流のリノベ予算の考え方は取材メンバー一同「なるほど」の一言でした。予算組みや予算調整にお悩みの方、必読です!■ちきりん日本を代表する社会派ブロガー。関西出身。大学卒業後、金融機関に就職。アメリカの大学院留学を経て、外資系企業に転職し、在職中にブログを書きはじめる。退職後、2011年からは文筆家として活躍。『自分のアタマで考えよう』『マーケット感覚を身につけよう』(ダイヤモンド社)ほか著書多数。人気ブログ「Chikirinの日記」を運営する。徹底的に考えてリノベをしたら、みんなに伝えたくなった50のこと完全に「顧客目線」ですべてを解説。リノベーション&リフォーム入門の決定版!
2019年04月28日社会派人気ブロガーのちきりんさんが、ご自宅をリノベーションして得られた多くの学びを「これからリノベする人」にも共有したい!と考えて書かれた『徹底的に考えてリノベをしたら、みんなに伝えたくなった50のこと 』(ダイヤモンド社)を出版したと聞きつけ、一番乗りで取材へ。オリジナリティあふれるご自宅で、顧客目線かつビジネス視点のリノベーションの考え方やリノベーション体験談をお聞かせいただきました。リノベ会社の選び方やリノベマネーの考え方、お気に入りポイントなどを4回にわたってご紹介していきます。まずは「これからリノベする人に伝えたい事5つ」というテーマで第1回目をスタートしていきましょう。■ 1.じっくり勉強&妄想してから個別相談へsasaki106 / PIXTA(ピクスタ)リノベーションに欠かせないのは、リノベ会社。どこに頼むかはリノベーションをスタートさせる第一歩でもありますが、その一歩を踏む前にやらなければいけないことが。それは “勉強” と “妄想” です。個別相談はリノベーションを考え始めた初期に行ってはいけないと、ちきりんさんは言います。なぜなら、この段階で個別相談に行ってしまうと、どんどん背中を押され、自分の理想の暮らしや採用したい設備などについてじっくり考えることができなくなるから、とのこと。家族の生活動線や理想の暮らし、絶対に取り入れたい設備、予算やスケジュールなどのイメージをしっかり固めてから相談した方が、具体的に、そしてスムーズに進めることができます。個別相談後は迷わずサクッと進められるよう、事前準備は入念に。■ 2.数百万円のプロジェクトを誰と行うか、という視点でリノベ会社を選ぶリノベ―ションは数百万、ときには1,000万円以上の金額が動く大きなプロジェクトです。そして、手作りであるリノベーションにはトラブルがつきもの。だから、そんな巨大プロジェクトをどの会社と、どの担当者と進めていきたいか、という視点が大事です。makaron* / PIXTA(ピクスタ)それは自分が面接官になって、リノベ会社を採用するようなイメージ。見積もりやプランも大切ですが、その良し悪しだけで決めてはダメ。それよりも、個別相談やプラン提案時に担当者とやりとりをしながら、「この人(会社)と共に思いがけないトラブルに立ち向かいながら、向こう半年のリノベプロジェクトを遂行できるだろうか」を考えてみましょう。リノベ会社の選び方については次回さらに詳しくご紹介します。■ 3.リノベ会社はプロジェクトの仲間であるお金を払う客と、それを受け取って設計・施工をするリノベ会社。これは一見「お客様とクライアント」という上下のある関係性ですが、リノベーションの場合は決してそうなりませんようご注意を。リノベーションは共同プロジェクト。「お金を払っているんだから」とか「忙しいから」と理由をつけてリノベ会社に丸投げして協力しないのは、自分の理想の家づくりから遠のく一因となります。スイマー / PIXTA(ピクスタ)例えば、近隣に迷惑をかけることがあったら、リノベ会社を責めて謝罪に行かせるよりも、住民である自分が説明や謝罪に行った方がいいに決まっています。家づくりの仲間と意識すれば、万一のトラブル時にも「お前のせいだ!」なんて怒り散らすことなく、力を合わせて解決方法を模索できるでしょう。また、リノベ会社の検討段階で、プランや見積もりを他社に見せたり、他社と比較して無理な値下げ交渉をするのもやめましょう。これから構築すべき信頼関係のベースが崩れてしまいます。■ 4.予算や希望は赤裸々に伝えるGraphs / PIXTA(ピクスタ)ちきりんさんは大のテレビ好き。だからどこにいてもテレビが見える間取りを熱望したのですが、それを伝えるのはちょっと恥ずかしかったとのこと。でも、包み隠さずに自分の嗜好を伝えたからこそ、その望みは叶い、「部屋のどこにいてもテレビを見れる」ととっても満足そうでした。ほかにも、トイレに扉を付けたくないとか、掃除が苦手なのでおしゃれさはいらないから掃除をしやすい家にしてほしい、といったこともリクエスト。freeangle / PIXTA(ピクスタ)自分の生活スタイルや性格を会ったばかりのリノベ担当者に話すのは少し恥ずかしいこともあるでしょう。でも、そこはぐっとふんばって、正直に伝達を。特に、ちきりん邸の広い玄関ホールや一口ガスコンロキッチンのような、あまり前例がない間取りや設備などを希望すると、リノベ会社も理解に苦しむシーンが出てきます。それでも、諦めない。理解してもらえるまで、伝えるのです。また、「そんな高いもの買えません」も言いにくい言葉ですが、しっかりと言うこと。あいまいに返事をしたり見栄を張った予算を伝えたりしていると、見当はずれな提案をされて、お互いに無駄な時間を消耗します。■ 5.おしゃれさよりも “暮らしやすさ” を優先anju / PIXTA(ピクスタ)「最近のリノベってお化粧みたい」そのフレーズを聞いて、妙に納得。確かに見た目がおしゃれな家はSNS映えもするし、住んでいて気持ちも上がるから、内装に贅沢なオーダーをしがちです。でも、それってお化粧部分。もっと大事なのって「基礎化粧品」じゃないですか、とちきりんさん。Graphs / PIXTA(ピクスタ)例えば、断熱。いくら素敵でおしゃれでも、冬は室温と外気温が同じで家にいても厚着必須、なんていう暮らしは悲惨です。はじめての冬を迎えてそれに気づいても、時すでに遅し。例えば、間取り。断熱もそうですが間取りはあとから変えにくい要素です。家事動線や愛用の調理家電、掃除用具、洋服の収納場所など、家の中で自分がどういう動きをしているかをとことん考え、間取りに生かしていきます。無駄な動きがなくなることは、思った以上に快適で時短にもなります。kuro3 / PIXTA(ピクスタ)リノベの本当の価値は「基礎化粧品」にあるのです。「お化粧」はお肌のベースが整ったあとで、存分に楽しんで。リノベーション中または検討中の方、これを読んで「ドキッ」としませんでしたか。今からでもきっと間に合います。リノベーションという一大プロジェクトに誰(どのリノベ会社)を採用するか、その担当者とはどうやって信頼関係を築いて仲間になるか、そして自分がリノベで実現したい理想の暮らしって本当にそれでいいのか。少し立ち止まって考えてみると、新しい選択肢や思いがけないアイデアが出てくるかもしれませんね。さて、第1回目はこれまで。第2回目はここでも少し触れましたが、「リノベ会社の選び方」について、さらに深堀りしてご紹介します。そして最後はちきりんさんの決まり文句で締めましょう。そんじゃーね!■ちきりん日本を代表する社会派ブロガー。関西出身。大学卒業後、金融機関に就職。アメリカの大学院留学を経て、外資系企業に転職し、在職中にブログを書きはじめる。退職後、2011年からは文筆家として活躍。『自分のアタマで考えよう』『マーケット感覚を身につけよう』(ダイヤモンド社)ほか著書多数。人気ブログ「Chikirinの日記」を運営する。徹底的に考えてリノベをしたら、みんなに伝えたくなった50のこと完全に「顧客目線」ですべてを解説。リノベーション&リフォーム入門の決定版!
2019年04月26日