自宅をフルリノベした人気ブロガー・ちきりんさんのリノベ体験談やリノベーションについての考え方などを4回にわたってお届けしています。最終回である第4回目のテーマは「常識に縛られずにつくりあげた、5つのお気に入りポイント」です。ここまで読んできてくださった方は、その内容が “ヘリンボーン張りの無垢床” や “ブラックフレームの室内窓” でないことはきっとお分かりですね。ちきりん流のこだわり&お気に入りスペースを写真付きで見ていきましょう!■ 1.マルチに活躍するエントランスホール取材当日、玄関に一歩足を踏み入れると広がっていたのは、アジアンリゾートを思わせる開放的な玄関。大人4人が立ち話をしてもなお余裕のある広さで、それは、最近よくある “土間のある玄関” ともちょっと違う。玄関や土間より “エントランスホール” と呼ぶのがふさわしいかもしれません。なぜなら、用途が玄関や土間にとどまらないから。自宅を事務所としても使うちきりんさんは、この空間に机と椅子を持ってきて打ち合わせスペースにすることもあるそう。そして個性的な壁紙の奥には、旅行グッズや外出着など、普段家の中では使わないものすべてが収納されています。だから、海外旅行に行く時のパッキングや、外出する前に着替えをするスペースとしても活躍。宅配された荷物を開封したり、DIYもできちゃうマルチなスペースなのです。■ 2.扉のないトイレ親族がよくぎっくり腰になるんだと笑って教えてくれたちきりんさんは、ぎっくり腰や将来的に介護状態になった時、トイレは広い方が便利だと熱弁。また、ベッドから近いことも大切です。体が不自由になったとしても、なるべく長く、ひとりでトイレに行けるように考えてとのこと。外国では扉なしのトイレは珍しくないそうですが、日本ではリノベーションでもしない限り手に入りません。健康な今はまったく気にも留めませんが、家は長く住んでいると、自分も家族もどんどん年を取ります。10年後、20年後、さらにその先を考えた間取りを今検討して、今採用することは、なかなか難しいかもしれません。でも、長く付き合う家だからこそ、先の、そのまた先の暮らしまで想像を及ばせて考えることは大事だなと思いました。■ 3.収納付きパウダールーム扉なしトイレと同じ空間に水まわりが集結した大空間。どれくらい広いかというと、エントランスホールと水まわりで約60㎡の家の半分を占める、というと想像がつくでしょうか。この空間にはワイドな洗面台とバスルーム、洗濯機置き場や室内物干しがあって、一見 “ザ・水まわり”。洗面台は 着け置き用のオケが置ける(駄洒落じゃなくて!)のが必須条件で、奮発して購入したものだし、浴室には念願のガス温水式サウナもあるし、こだわり満載の水まわりです。ところが、ちきりんさんにかかればただの水まわりにとどまらず。洗面台の奥にはメイク用品が収納されていて、脚立にもなる椅子に座れるメイクルームでもあるし、パジャマや部屋着を収納するオープンクローゼットもありました。ここで気付きます。掃除が苦手と自称するちきりんさんの家が暮らしやすいのは、適材適所に収納があるからだ、と。室内で使わないものはエントランスホールに収納して室内に持ち込まない、お風呂から出た後に着るパジャマや朝起きて身支度ついでに着替える室内着の収納は脱衣所、洋服は乾燥機や浴室で乾かすからクローゼットは水まわりに配置、など合理的な収納計画がされていました。■ 4.コーナーごとに景色が変わるワンルームエントランスホールと水まわりで家の半分の面積を占めるちきりん邸。残り半分はというと、生活&仕事スペースであるワンルームの空間です。キッチン、リビング、寝室、ワークスペースを兼ねていますが、仕切りも扉も一切ありません。それぞれのコーナーから見える室内の景色は異なり、どこからでもお気に入りの空間を眺められます。眺めるといえば……ちきりんさんは大のテレビ好き。なので、どこにいてもテレビが見えるように、とリクエストしたそう。これが叶ったのもワンルームだからこそ。そして、ちきりん邸に設置された扉はわずか2つ。それは移動のしやすさや開放感にもつながっていますが、空調管理という面でもメリットが。エアコン一台で家中どこにいても一定の室温を保てて、とても快適なのだそう。お風呂上がりの脱衣所が寒い、なんていうあるあるとも、ちきりん邸では無縁です。■ 5.キッチンのガスコンロが1口ちきりん邸には「えっ!」と驚くポイントがたくさんありましたが、そのなかでもキッチンは他で見ることのない佇まいでした。なぜならガスコンロが1口!しかもキッチン自体が狭いから仕方なく1口、ではなく、作業台もカップボードもとっても広くて大きいなかで1口ガスコンロが控えめにちょこんと備わっているのです。魚焼きグリルもない一口ガスコンロを採用したのは、「自分はガスコンロを使わない」と分かっていたから。でも決して料理をしないわけではありません。ちきりんさんは調理家電が大好き。レンジ、コンベクションオーブン、無水自動調理鍋などをフル活用しているので、コンロは炒め物にしか使わないと分かっていました。利用頻度の低いコンロにスペースを割くよりも、広い作業台があったほうがいいと思っての選択です。ちなみに、それらの調理家電はキッチン背面の造り付けカップボードに見事に美しく収納されていました。調理家電のサイズに合わせ、配線も隠し、さらには同時に使ってもブレーカーが落ちないようにコンセントの配線を細かく分けました。これも “暮らしやすさ” を叶えるための、リノベならではの工事ですね。■ やり直せるならココを変えたい! 小さな失敗談よく考えて設計された合理的な間取り、そして予算内でメリハリをつけてこだわりを実現した内装のちきりん邸。とっても暮らしやすく快適だとお話しいただきましたが、小さな失敗はあったそう。それは、照明です。ワンルームの各コーナーに埋め込んだダウンライト。これが思いがけずまぶしかったのです。まぶしいのが苦手なちきりんさんは、もちろん照明にも配慮していました。それでも、ある程度の段階に工事が進むまで、そのまぶしさに気付けなかったと言います。でも、これは誰のせいでもない、とも。変更が間に合う段階で幸いにも気付けたので、間接照明になるダウンライトを追加してもらえて事なきを得たそうです。ショールームで一目ぼれしたというトイレ用アームレストも「いらなかったね!」とスッパリ。煌びやかなショールームは物欲をとことん掻き立ててきます。どうぞその熱烈ラブコールに惑わされませんように。さて、自宅をリノベーションしたちきりんさんの体験談やリノベーションの考え方を、4回にわたってお届けしてきました。リノベーション検討中の方はきっと、リノベ会社選びの視点や予算の考え方を見直し、希望プランや理想の暮らしを一考するきっかけになったのではと思います。リノベの価値は暮らしやすさの創造。雑誌でよく見る憧れの間取りやオシャレな内装をマネっこする前に、家族の生活動線や日常的にストレスに感じていることを洗い出しましょう。そして、暮らしやすい家とはどんな家なのか、自分たちにとってリノベの価値は何なのかをたくさん話し合い、リノベーションを楽しみながら理想の家をつくり上げてくださいね。もっとちきりん流のリノベ論に触れたい方は、ぜひ本を手に取って読んでみてください。さあ、最後の締めもちきりんさんの決まり文句で。そんじゃーね!■ちきりん関西出身。大学卒業後、金融機関に就職。アメリカの大学院留学を経て、外資系企業に転職し、在職中にブログを書きはじめる。退職後、2011年からは文筆家として活躍。『自分のアタマで考えよう』『マーケット感覚を身につけよう』(ダイヤモンド社)ほか著書多数。「Chikirinの日記」は月間ユーザー30万人を超える人気ブログ。徹底的に考えてリノベをしたら、みんなに伝えたくなった50のこと完全に「顧客目線」ですべてを解説。リノベーション&リフォーム入門の決定版!
2019年05月21日社会派人気ブロガーのちきりんさんが、ご自宅をリノベーションして得られた多くの学びを「これからリノベする人」にも共有したい!と考えて書かれた『徹底的に考えてリノベをしたら、みんなに伝えたくなった50のこと 』(ダイヤモンド社)を出版したと聞きつけ、一番乗りで取材へ。自宅をフルリノベした人気ブロガー・ちきりんさんのリノベ体験談やリノベーションの考え方などを4回にわたってお届けしています。第3回目のテーマは「リノベの予算」です。プランニング中に何度も顔を出しては施主を悩ませる “予算調整”。でも、ちきりん流で論理的に考えるとスッキリ解決しちゃうかも。■ 「予算いくら?」という質問の真意freeangle / PIXTA(ピクスタ)個別相談に行くと必ず聞かれる「予算はいくら?」という質問。いやいや、いくらくらいでリノベができるかこっちが聞きたいくらいだよ、という人も多いでしょう。それでも聞かれる予算。なぜリノベ会社はそこまで予算を聞いてくるのでしょうか。それは、予算によって見せる世界が変わってくるから。例えば、予算2000万円なら間取りを大胆に変更し、ふんだんに自然素材を使い、豪華なキッチンやバスルームを備えるプランも提案できます。でも、予算500万円の人にその煌びやかな世界を見せても無意味です。もちろん逆も然り。だとしても、無垢フローリングにするといくらかかるか、オーダーキッチンはいくらで作れるかを知らないのに予算なんて組めないよ、と思うかもしれません。ところが、リノベ会社にとってもこの段階でそれを明示するのはとても難しいのです。というのも、ひとことでユニットバス、もしくはオーダーキッチンといっても、ピンからキリまで大きな価格差があるからです。リノベ費用の多くは設備の材料費よりも人件費です。fujiyaman / PIXTA(ピクスタ)例えば床材。ヘリンボーン貼りはとてもおしゃれですが、貼るのに時間がかかる上、無駄になる端材も発生するため面積以上の床材が必要。だから「床を無垢にするといくらかかりますか?」と聞かれても、リノベ会社も明確に答えられないのです。そうなると、予算は自分で決めるありません。ではその予算はどうやって決めたらいいのでしょうか。■ 「月いくら払えるか」から予算を考えるYNS / PIXTA(ピクスタ)貯金がいくらあるから、ローンがここまで組めるから、だから予算はこれだ! と決める人、または施工事例を見てだいたいの予算感をつかむ人もいるでしょう。でも、もっと論理的に予算を決める方法があります。それは、「リノベ後の家に、月いくらの家賃を余分に払えるか考えること」です。ちきりんさんはまず、リノベをした後、何年ここに住むだろうと考えました。その答えは「できれば20年は住みたい」。次に考えたのが「今の部屋と新しくなった部屋、もしどちらも賃貸だったら、何万円、家賃が高くても新しい部屋に住みたいか」そういう流れでちきりんさんは予算を考えたそうです。cba / PIXTA(ピクスタ)ちきりんさんの答えは「お風呂もキッチンも新しくなる。動線も完璧。二重窓で断熱性も高くなる。これなら家賃でプラス月3万円は払う」。次に考えたのが「フリーランスなので、仕事の打ち合わせやネット会議ができるスペースを整えたい。そのために月いくら払うか?」その答えは「月2万円ならオフィス分として払える」。つまり「圧倒的に暮らしやすくなる家に月3万円、オフィスとして使うための費用として月2万円、合計5万円が、自分として納得できる額」というのが、ちきりんさんの答えだったのです。そして、この額×住むであろう期間をかけた額が、ちきりんさんのリノベ予算となりました。ちきりんさんは所有物件をリノベ―ションしたので予算はリノベ費用のみでしたが、物件から購入する人だって考え方は同じ。何年住んで、月々いくら払ってもいいと思える部屋になるのか。一度、そこから考えてみてはいかがでしょう。■ 優先すべきは何? 予算配分の考え方ABC / PIXTA(ピクスタ)今回ちきりんさんにお話を聞いて大きく頷いたポイントのひとつはココ。予算を決めたら、その次に考えるべきは優先順位です。ちきりんさんの優先順位トップは「暮らしやすさ」。おしゃれな内装よりも基本性能が大切、という考えでした。なので、ちきりんさんはスケルトンリノベという貴重な機会にしかできない断熱や間取り変更などの工事に優先的に予算を投下。そして、余った予算内で設備をチョイスし、内装を楽しみました。予算と優先順位を決めれば、ブレない。「150万円の浴室は無理だな」「オーダーキッチンはやめよう」といった判断がスパッとできるようになります。もちろん、寒くてもいいからおしゃれな家に住みたいんだ!という人もいるでしょうし、それはそれでいいんです。リノベーションで何をしたいのか、どんな暮らしを実現したいのか、よく考えて優先順位の上から予算を配分していきましょう。■ それでも迫られる予算調整はどう切り抜ける?予算と優先順位をしっかり決めても、細かい予算調整には何度も頭をかかえることになるでしょう。そんな時は、自分のこだわりのない部分はどこなのかを考え、そこの予算をどんどん削りましょう。bee / PIXTA(ピクスタ)例えば、日本製のトイレはどこも素晴らしい。だからちきりんさんは「どのメーカーのどの品番でもいい、一番安く仕入れられるものを」とリクエストしたそうです。また自然素材にもこだわらず、むしろメンテナンスのしやすさを重視して、無垢フローリングではなく手入れが簡単な突き板フローリング、珪藻土ではなく塗り壁風に見えるクロスを採用。そのおかげで、玄関ホールの輸入壁紙やリビングの壁に貼ったタイルなどに費用を充てることができ、こだわりある内装もしっかり実現できました。freeangle / PIXTA(ピクスタ)内装はメリハリがつけやすいポイント。譲れる部分と譲れない部分、しっかりすみ分けて予算を配分すれば、叶わなかった内装リクエストも実現できるかもしれません。おしゃれな内装や最新設備と天秤にかけられる、予算という名の重し。どうやってその総額を決めるのか、それをどうやって配分して予算を死守するのか、リノベ予算の考え方をここではお伝えしました。これで悩ましい予算問題もスッキリ解決……するといいですね。さて、次回は最終回。ちきりんさんが作り上げた暮らしやすい理想の家のなかで、特に気に入っているポイントをご紹介します。そこかしこに常識にとらわれないオリジナリティがキラリ。さあ、次回はいよいよ魅惑的な(?)ちきりん邸に潜入です!■ちきりん関西出身。大学卒業後、金融機関に就職。アメリカの大学院留学を経て、外資系企業に転職し、在職中にブログを書きはじめる。退職後、2011年からは文筆家として活躍。『自分のアタマで考えよう』『マーケット感覚を身につけよう』(ダイヤモンド社)ほか著書多数。「Chikirinの日記」は月間ユーザー30万人を超える人気ブログ。徹底的に考えてリノベをしたら、みんなに伝えたくなった50のこと完全に「顧客目線」ですべてを解説。リノベーション&リフォーム入門の決定版!
2019年05月15日社会派人気ブロガーのちきりんさんが、ご自宅をリノベーションして得られた多くの学びを「これからリノベする人」にも共有したい!と考えて書かれた『徹底的に考えてリノベをしたら、みんなに伝えたくなった50のこと 』(ダイヤモンド社)を出版したと聞きつけ、一番乗りで取材へ。オリジナリティあふれるご自宅で、顧客目線かつビジネス視点のリノベーションの考え方やリノベーション体験談をお聞かせいただきました。リノベ会社の選び方やリノベマネーの考え方、お気に入りポイントなどを4回にわたってご紹介していきます。まずは「これからリノベする人に伝えたい事5つ」というテーマで第1回目をスタートしていきましょう。■ 1.じっくり勉強&妄想してから個別相談へsasaki106 / PIXTA(ピクスタ)リノベーションに欠かせないのは、リノベ会社。どこに頼むかはリノベーションをスタートさせる第一歩でもありますが、その一歩を踏む前にやらなければいけないことが。それは “勉強” と “妄想” です。個別相談はリノベーションを考え始めた初期に行ってはいけないと、ちきりんさんは言います。なぜなら、この段階で個別相談に行ってしまうと、どんどん背中を押され、自分の理想の暮らしや採用したい設備などについてじっくり考えることができなくなるから、とのこと。家族の生活動線や理想の暮らし、絶対に取り入れたい設備、予算やスケジュールなどのイメージをしっかり固めてから相談した方が、具体的に、そしてスムーズに進めることができます。個別相談後は迷わずサクッと進められるよう、事前準備は入念に。■ 2.数百万円のプロジェクトを誰と行うか、という視点でリノベ会社を選ぶリノベ―ションは数百万、ときには1,000万円以上の金額が動く大きなプロジェクトです。そして、手作りであるリノベーションにはトラブルがつきもの。だから、そんな巨大プロジェクトをどの会社と、どの担当者と進めていきたいか、という視点が大事です。makaron* / PIXTA(ピクスタ)それは自分が面接官になって、リノベ会社を採用するようなイメージ。見積もりやプランも大切ですが、その良し悪しだけで決めてはダメ。それよりも、個別相談やプラン提案時に担当者とやりとりをしながら、「この人(会社)と共に思いがけないトラブルに立ち向かいながら、向こう半年のリノベプロジェクトを遂行できるだろうか」を考えてみましょう。リノベ会社の選び方については次回さらに詳しくご紹介します。■ 3.リノベ会社はプロジェクトの仲間であるお金を払う客と、それを受け取って設計・施工をするリノベ会社。これは一見「お客様とクライアント」という上下のある関係性ですが、リノベーションの場合は決してそうなりませんようご注意を。リノベーションは共同プロジェクト。「お金を払っているんだから」とか「忙しいから」と理由をつけてリノベ会社に丸投げして協力しないのは、自分の理想の家づくりから遠のく一因となります。スイマー / PIXTA(ピクスタ)例えば、近隣に迷惑をかけることがあったら、リノベ会社を責めて謝罪に行かせるよりも、住民である自分が説明や謝罪に行った方がいいに決まっています。家づくりの仲間と意識すれば、万一のトラブル時にも「お前のせいだ!」なんて怒り散らすことなく、力を合わせて解決方法を模索できるでしょう。また、リノベ会社の検討段階で、プランや見積もりを他社に見せたり、他社と比較して無理な値下げ交渉をするのもやめましょう。これから構築すべき信頼関係のベースが崩れてしまいます。■ 4.予算や希望は赤裸々に伝えるGraphs / PIXTA(ピクスタ)ちきりんさんは大のテレビ好き。だからどこにいてもテレビが見える間取りを熱望したのですが、それを伝えるのはちょっと恥ずかしかったとのこと。でも、包み隠さずに自分の嗜好を伝えたからこそ、その望みは叶い、「部屋のどこにいてもテレビを見れる」ととっても満足そうでした。ほかにも、トイレに扉を付けたくないとか、掃除が苦手なのでおしゃれさはいらないから掃除をしやすい家にしてほしい、といったこともリクエスト。freeangle / PIXTA(ピクスタ)自分の生活スタイルや性格を会ったばかりのリノベ担当者に話すのは少し恥ずかしいこともあるでしょう。でも、そこはぐっとふんばって、正直に伝達を。特に、ちきりん邸の広い玄関ホールや一口ガスコンロキッチンのような、あまり前例がない間取りや設備などを希望すると、リノベ会社も理解に苦しむシーンが出てきます。それでも、諦めない。理解してもらえるまで、伝えるのです。また、「そんな高いもの買えません」も言いにくい言葉ですが、しっかりと言うこと。あいまいに返事をしたり見栄を張った予算を伝えたりしていると、見当はずれな提案をされて、お互いに無駄な時間を消耗します。■ 5.おしゃれさよりも “暮らしやすさ” を優先anju / PIXTA(ピクスタ)「最近のリノベってお化粧みたい」そのフレーズを聞いて、妙に納得。確かに見た目がおしゃれな家はSNS映えもするし、住んでいて気持ちも上がるから、内装に贅沢なオーダーをしがちです。でも、それってお化粧部分。もっと大事なのって「基礎化粧品」じゃないですか、とちきりんさん。Graphs / PIXTA(ピクスタ)例えば、断熱。いくら素敵でおしゃれでも、冬は室温と外気温が同じで家にいても厚着必須、なんていう暮らしは悲惨です。はじめての冬を迎えてそれに気づいても、時すでに遅し。例えば、間取り。断熱もそうですが間取りはあとから変えにくい要素です。家事動線や愛用の調理家電、掃除用具、洋服の収納場所など、家の中で自分がどういう動きをしているかをとことん考え、間取りに生かしていきます。無駄な動きがなくなることは、思った以上に快適で時短にもなります。kuro3 / PIXTA(ピクスタ)リノベの本当の価値は「基礎化粧品」にあるのです。「お化粧」はお肌のベースが整ったあとで、存分に楽しんで。リノベーション中または検討中の方、これを読んで「ドキッ」としませんでしたか。今からでもきっと間に合います。リノベーションという一大プロジェクトに誰(どのリノベ会社)を採用するか、その担当者とはどうやって信頼関係を築いて仲間になるか、そして自分がリノベで実現したい理想の暮らしって本当にそれでいいのか。少し立ち止まって考えてみると、新しい選択肢や思いがけないアイデアが出てくるかもしれませんね。さて、第1回目はこれまで。第2回目はここでも少し触れましたが、「リノベ会社の選び方」について、さらに深堀りしてご紹介します。そして最後はちきりんさんの決まり文句で締めましょう。そんじゃーね!■ちきりん日本を代表する社会派ブロガー。関西出身。大学卒業後、金融機関に就職。アメリカの大学院留学を経て、外資系企業に転職し、在職中にブログを書きはじめる。退職後、2011年からは文筆家として活躍。『自分のアタマで考えよう』『マーケット感覚を身につけよう』(ダイヤモンド社)ほか著書多数。人気ブログ「Chikirinの日記」を運営する。徹底的に考えてリノベをしたら、みんなに伝えたくなった50のこと完全に「顧客目線」ですべてを解説。リノベーション&リフォーム入門の決定版!
2019年04月26日最近では中古物件を購入し、リフォーム・リノベーションしたい人が増えています。新築よりも手頃な価格で購入でき、間取りや広さ、こだわりのスペースなど、自分の好きなように家づくりをしていくことができるところに魅力を感じている人が多いようです。しかし、一概にリフォーム・リノベーションをすると言っても、その内容は千差万別。人気の事例を参考にすることで、自分の住まい探しをより具体的に考えるきっかけにもなります。SUVACO株式会社とリノベーション専門情報サイト「リノベりす」は、2018年に同サイトに公開されたリノベーション事例の中から、ユーザーの閲覧数をもとに上位10位をランキングした「人気リノベーション事例ランキング2018」を発表。今回はそのランキング結果のいくつかをご紹介します。■ ヴィンテージやモダンをバランスよく取り入れたリノベ事例がズラリ気になる第1位は、「築38年の中古マンションを、英国ヴィンテージの香り漂う住まいにフルリノベーション」。輸入壁紙やシャビーな仕上げの造作家具を取り入れたヴィンテージ調の深みがありながらも、新素材「モールテックス」を使ったアイランドキッチンや全体的に落ち着いた色味がモダンさを醸し出す、美しい佇まいのお宅です。3位は「築33年の団地をリノベ。北欧ヴィンテージが暮らしに溶け込む住まい」。木とホワイトを基調にしてシンプルで落ち着きのある空間を作りつつ、グレーの壁で深みを加えた、北欧ヴィンテージの家具が似合う、洗練された住まいです。4位は「グレー×白の大人モダン、とことん自分好みのマンションリノベーション」。白をベースとした広いキッチンをメインに、ソファや椅子など家具のファブリックをグレーで統一して、上品な雰囲気を醸し出した事例です。その他には、2位「48平米でも家族3人がのびのび過ごせるマンションリノベ」、5位「アイランドキッチンで空間をのびのび使う!自然素材が心地よいマンションリノベーション」など、空間を上手に使い、広くて過ごしやすくしたリノベーション事例がランクインしました。■ 2018年の人気は異素材ミックスと上質なグレーvicnt / PIXTA(ピクスタ)2018年の人気ランキングから見えるキーワードは「端正とグレイッシュ」。2017年に人気だったのは、木材をベースにモルタルや鉄、石など、あえて異なる素材を組み合わせる手法。今年はさらにその洗練度が高まり、端正でありながらも、どこかあたたかみを感じさせる、調和のとれた事例が上位を占める結果となりました。特に印象的だったのが、上質なグレーを取り入れた事例が多かった点。こうしたグレイッシュな色使いは、いまや不動の人気となっている木の素材感を引き立てつつも、決して脇役にとどまらず、それと調和することで洗練された世界観を醸し出せるのが特徴です。これはデザインやインテリア、素材に対する住み手の感性が成熟し、より本物志向へと変化していることの表れかもしれません。2019年には、どのようなリノベーション事例が人気となるのでしょうか。リノベーションを考えている人は、是非今回のランキングを参考にしてみてくださいね。【参考】※リノベーション専門情報サイト『リノベりす』が「人気リノベーション事例ランキング2018」を発表!
2018年12月31日思いどおりの空間を手に入れるため、賃貸マンションから持ち家への住み替えを検討していたOさん夫妻。ところが当初、何から手をつけていいかわからず困っていたそうです。そんなときに知ったのが、物件探しや住宅ローンのことまでワンストップで依頼できるリノベーション会社のEcoDecoでした。「不動産会社や銀行、リノベ会社と自分たちだけで回るのはハードルが高すぎる」と、物件探しから相談することにしたそうです。総予算を3,000万円と決め、神奈川県横浜市で昭和61年築、専有面積71.62平米の物件を1,550万円で購入。工事費1,100万円(税・設計料込み)でリノベを行いました。■ こだわりのヘリンボーン張りの床に妥協なし!「そもそも総予算が現実的じゃない金額なので、内装には少し手を加えるだけになるかもと思っていました」と夫。しかし、物件価格が低く抑えられた分、リノベーションに多くの予算を振り分けることできました。リノベ前にあった和室物件は1階角部屋。南西2面にある広いバルコニーや緑豊かな環境に一目ぼれして購入しました。南西側にあった和室をなくし、LDKをL型のバルコニーに囲まれた広い空間とすることで、いっそう光と借景が楽しめるようにしました。部屋がより広く見えるように、家具の高さを抑えているのもポイントです。多趣味な夫妻は、本やレコードなど持ち物の量を最小限に抑えつつ、棚を利用して上手に収納しています。棚などの家具は、ほとんどが無印良品のものです。キッチンのバックカウンターにも無印良品のシェルフを使用しています。リノベ前のキッチンキッチンは、既存では独立型でした。リノベではキッチンをオープン型に変更。さらに、キッチン腰壁には黒い有孔ボードを利用し、個性的に仕上げています。内装で最もこだわったのは、ヘリンボーンの床です。コストがかかる張り方ですが、張る面積を削るという妥協もせず、LDKと廊下はすべてヘリンボーンとしました。オーク材ならではの、重厚感も魅力です。■ ラフな仕上げでインダストリアルな空間に床に予算をかけた分、壁や天井は部分的に躯体現しにして、ラフに仕上げています。「壁紙を剥がしたらパテ跡が抽象画みたいで、そのままでいいかな、と。好みのインダストリアルな雰囲気が出てよかったです」と夫妻。寝室の壁もコンクリート現しです。どこを現しのままにするかは、既存の壁を剥がした時にパテ跡などのバランスを見て夫が直感で決めたそうです。寝室の隣には、絵を趣味とする夫のアトリエがあります。アトリエはいずれ子どもができたら、子ども部屋にする予定とか。「子どもが好きなだけ落書きできるから」と、壁も天井も現しのままにしました。それがまたアトリエらしく見える要因にもなっています。■ 見習いたい! 空間を楽しむ技玄関の壁面には帽子やバッグだけでなく、趣味のレコードなども飾られています。夫妻がリノベ空間を楽しんでいる様子がうかがえますね。キッチンがあった場所は大容量のWICに。レトロな「のれん」もアクセントになっています。トイレの壁2面には有孔ボードを張り、お気に入りのポスターやチラシなどを飾っています。その一方で、実験用シンクを設置した洗面スペースはとてもシンプルな雰囲気です。夫妻は今回のリノベを「大雑把に要望を出し、あとは専門家におまかせ、で正解でした」と振り返ります。例えば、各居室の引き戸は天井までの高さがあり、閉め切ると壁と一体化するつくり。比較的廉価な合板を使用して、建具のコストも抑えています。「自分たちでは考えもつかなかったアイデア」と夫妻も大満足の様子でした。このリノベーションをもっと詳しく見たい方は、ぜひ『リライフプラスvol.27』も参考にしてみてくださいね。※物件価格、工事費、ご家族の年齢等は取材時のものです。プロデュース・設計/EcoDeco撮影/飯貝拓司
2018年12月20日愛犬・ぽっけちゃんとともに、愛知県名古屋市名東区のマンションに住むYさん夫妻。マンション探しを始めたのは結婚がきっかけでしたが、新築は好みに合わず、中古は外観や設備の古さが気になり、物件探しは難航したそうです。ようやく見つけたのは専有面積72.49平米、平成24年築という築浅で状態のよいマンション。名古屋で人気のリノベーション会社・エイトデザインに依頼して、夫妻の好みである「インダストリアル、ブルックリン、ロンドンのパブの3つを足した感じ」にリノベーションしました。リノベーションを担当したのは、思うような物件が見つからないときに出会い、家探しの相談などもするうちに意気投合したというエイトデザインの丹羽健太さんです。■ ファイナンシャルプランを作成して納得の予算に当初、Yさん夫婦が考えていた総予算は、物件と工事費込みで3,500万円ほどでした。しかし、エイトデザインの丹羽さんからは「無理して家を買うより、その後の生活を楽しく過ごすことの方が大切」とファイナンシャルプランの作成を勧められたそう。「今だけでなく、その後のお金の使い方まで考えることができてよかったです」と夫妻。マンションは2,700万円で購入できたので、650万円(税・設計料込み)をリノベの予算としました。リノベ前のLDKリノベ後のLDKリノベで最も力を入れたのはLDKです。本物のレンガの厚みを半分にして貼った、ブリックタイルの壁が目を引きます。本物ならではの風合いが、ロンドンのパブのような雰囲気を醸し出します。レンガの壁の上部に設けた滑り出し窓は、隣接するWICに光と風を届けるためのものです。夫がネットオークションで格安で手に入れた和建具に、鉄粉入りの塗装を施して造作しました。アンティーク材を使ったヘリンボーンに見える床は、実はビニールタイル。愛犬が走り回っても滑りにくいように取り入れたものです。オープン棚は足場板を長ネジでつないで造作しました。テレビとテレビ台を置く位置などにも配慮して、バランスよく設置されています。棚の上に飾られた小物にも、Yさん夫妻のセンスのよさがうかがえますね。■ 工事費650万円の理由は“間取り”と“既存”にあり!間取りで大きく変更したのは、リビングの隣にあった和室をWICにした点です。ふたりとも洋服が大好きなので、ゆとりのあるWICは必須でした。壁の一部を抜くことで、奥の寝室との行き来をしやすくしてあります。リノベ工事費が650万円に抑えられたのは、WIC以外で大きな間取り変更をしていないのが理由のひとつです。2つの洋室にも手をつけず、コストを抑えました。さらに、水回りはなるべく既存を利用しています。築浅の物件と巡り合えたおかげですね。既存を利用したとはいえ、どの空間からもYさん夫妻らしさがにじみ出ています。キッチン扉は塗装し、カウンターの腰壁には鉄板を張って大きめのボルトで留めてイメージを一新しました。キッチン上部にはラフな質感の足場板で吊り戸棚を造作しました。アイアンバーとワイングラスを吊る金物は施主支給品です。リノベ前の廊下各居室の建具も既存を塗装して再利用しています。トイレの建具だけは黒板塗装を施して、アクセントにしました。玄関は床をモルタルで仕上げ、収納の扉を塗装しただけですが、印象は大きく変わりました。洗面化粧台は機能的で使いやすかったため、既存のままです。ユニットバスは表面を削ってコーティングを施し、新品同様に生まれ変わりました。トイレは取り換えましたが、なんと夫の知人から「引っ越し祝いに」と贈られたものだとか。LDKのドアは造作しました。ガラス面にはリノベーション完成を記念して、夫妻が大切にしているもの、をテーマにしたサインが入っています。取材は第一子が誕生する前に行われました。今はいっそう賑やかで、楽しい空間になっていることでしょう。このリノベーションをもっと詳しく見たい方は、ぜひ『リライフプラスvol.27』も参考にしてみてくださいね。※物件価格、工事費、ご家族の年齢等は取材時のものです。設計・施工/エイトデザイン撮影/田部雅生
2018年11月14日神奈川県横浜市に建つ、平成10年築のマンションを購入したHさん夫妻。実は当初、3人の子どもたちとゆったり暮らせる戸建てを建築するつもりで土地を探していました。けれども、なかなか思うような土地が見つからず、諦めかけていたとき、不動産業者から内見を勧められたのがこのマンションでした。1階と地下1階からなるメゾネットタイプで、専有面積120平米という広さ。緑に囲まれ、専用庭もあって「戸建て感覚で暮らせそう」と感じたのが決め手になりました。そして、より上質な空間を目指し、1,080万円(設計料・施主支給別)でリノベーションしました。■ こだわったのは素材の質感や光の取り入れ方リノベ後のリビングダイニングリノベ前のリビングダイニング設計は、もともと戸建ての設計を頼もうと思っていたimajo designの今城敏明さん、由紀子さんにそのまま依頼しました。プロデュース会社ザ・ハウスで紹介され、空間づくりも人柄も気に入ってのことです。夫がこだわったのは、素材の質感や光の取り入れ方を重視した、家族が心地よく過ごせる空間です。LDKの床には既存の床暖房に対応しつつ、オークの無垢材部分が厚いものを採用しました。しっかりと質感が感じられる三層集成フローリングです。壁や天井には、吹き付け仕上げを採用しました。表面に凹凸ができるため、光が当たると豊かな表情が楽しめ、独特の高級感が生まれます。リノベ前のキッチンリノベ前は独立型のキッチンでしたが、オープンなスタイルに変更しました。壁を取り払ったおかげで、庭を眺めながら料理ができるようになりました。妻の希望通り天板にステンレスを使ったキッチンは、imajo designが家具工事で製作したものです。照明は手元を照らすものを選び、眩しく感じないように配慮しています。キッチンカウンターの笠木には、木目が美しく木の温もりが感じられるナラ無垢材を採用しました。出窓にもナラ無垢材を使用しています。対面式キッチンではありませんが、動線がリビングダイニングと一直線につながっています。「このほうが片付きやすく、リビングダイニングもすっきりします」と妻は言います。ダイニングスペースでは天板の厚みにまでこだわってオーダーしたアルダー材のテーブルが、やさしい雰囲気をかもし出しています。ソファなども含め、家具はインテリア好きの妻によるチョイスです。■ 5人家族がスムーズに暮らせるゆとりと工夫設計を担当したimajo designは、5人家族の暮らしやすさを考慮して玄関を広げました。引き戸の横にスリットを設け、暗くなりがちな廊下や玄関に光が届くようにしています。広げた玄関には引き戸を採用したシューズクロークを設け、扉をバタバタさせることなく出掛けられるよう配慮しました。3人の子どもたちが成長しても十分対応できるよう、リビング隣にあった洋室をウォークインクロゼットに変更しました。洗濯物の片付けもスムーズです。洗面室を広げて脱衣室と分けたところもポイントです。「パウダールームはリビングとつながっていて、ゲストが使うこともあるので、部屋のような心地よい空間にしたくて」と妻。家族が多いので、鏡もワイドです。トイレは床や壁、天井の仕上げをほかの部屋と統一しました。子ども室は、北側にあった2室をつなげて広いワンルームとしました。窓はすべて既存のままですが、壁を広げてサッシの枠を隠すことでスッキリと見えるようにしています。出入り口は2か所に設け、将来は2室に分けられるように計画されています。■ DIYはコストだけでなく後のメンテにもプラスに!地下室は寝室ですが、こちらは床のカーペットをシンプルでリーズナブルなシナ合板に張り替えるだけにして、コストバランスを取っています。地下室へ続く螺旋階段も、カーペットだった踏み板をシナ合板に張り替え、手すりを塗り替えました。そして、寝室の壁と天井はHさん夫妻がDIYで塗装しました。聞けば、1階の床のオイル仕上げもDIYしたそうです。DIYはコストダウンにつながりますが、慣れておけば後のメンテナンスにも役立ちます。「吹き付けの壁など減額案でも好みに合う素材を提案してもらったので大満足。物件を買う前から建築家に相談できたのもよかったと思います」とHさん夫妻は話してくれました。このリノベーションをもっと詳しく見たい方は、ぜひ『リライフプラスvol.27』も参考にしてみてくださいね。※物件価格、工事費、ご家族の年齢等は取材時のものです。設計/imajo designプロデュース/ザ・ハウス撮影/飯貝拓司
2018年11月07日「新築はそこに暮らす人の姿が見えてこない」と感じ、中古+リノベーションを決意したIさん夫妻は文京区内で3,100万円、築34年の中古マンションを購入。リノベーションは、物件探しから相談できる点にも魅力を感じたというアオイデザインに依頼。約1,000万円(設計料別)をかけてリノベーションし、安心とこだわりの住まいを手に入れました。■ 作業台兼食器収納でゆるく仕切ったダイニングキッチンIさん宅は独立したリビングを持たず、ダイニングと兼用。そのため、ダイニングチェアはゆったりとくつろげる座面の低いものを選んでいます。ソファとテーブルは相合家具、ダイニングチェアは柏木工のものです。「できればなくしたい!」と思っていた大きな梁はタイル貼りに。さらに塗り壁、サイザル麻の床を取り入れるなどして、素材の質感を生かした、調和の取れた空間にリノベーションしました。キッチンは間口の広さを確保するため壁づけに。扉の面材を廊下の建具と同じグレーに塗装することで、空間に一体感が生まれました。また、床には複合フローリングを採用し、メンテナンスのしやすさを優先したリノベーションになっています。Iさん宅はコンパクトなスペースを「兼用」によってゆったり使う工夫が各所に散りばめられています。たとえば、作業台兼食器収納を置くことで、広々とした空間のまま、ダイニングとキッチンをゆるやかに仕切ることができました。また、奥のテレビ台はパソコンデスクを兼ねるため、椅子に合う高さに調整してあります。LDKの一角には、将来自由に仕切れるように壁を設けなかった子どもスペースがあります。壁がないことで、バルコニーからの光が届く明るい空間も実現できました。「目立つ梁は、あえて隠さず生かすことに。マンションの外壁のタイルからヒントを得て、外の雰囲気を中に取り込みました。また、SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)ならではの堅牢さをそのまま見せています」と、アオイデザインの担当者。■ 寝室への廊下をワークスペースとして活用寝室にはLDKから廊下を通ってアクセスする間取りになっています。その廊下を活用し、夫の希望だったワークスペースを設けました。窓際にデスクと棚をL字型に造作し、棚の下を書類などの収納に使っています。「明るくて眺望が抜群。天気のいい日は富士山も見えるんです」と夫妻。こちらの廊下兼ワークスペースとキッチンとの境には引き戸を設置しています。小さなスペースながら、仕事に集中できる環境を整えました。その廊下を進んだところにある独立した空間が寝室です。物入れを撤去し、広さを確保することで、以前から使っていたベッドを収めることができました。また、東側の壁にはパイプと棚を取り付けてクローゼットに。■ エントランスや水まわりもタイル貼りで統一エントランスは、既存の下駄箱を撤去してベビーカーが置ける広さを確保しました。行き止まりのない間取りは、子どもスペースと廊下の2か所からDKにアクセスできて移動や物の搬入がスムーズなのだそう。こちらはエントランスからキッチンにつながる廊下。水回りを左右に分け、廊下の左側には洗濯室とトイレがあります。洗濯室とトイレはキッチンと奥行きを揃えることで、廊下からキッチンにかけてのラインをすっきりと見せることができました。廊下まわりの建具は造作し、グレーで統一したことで、さらにまとまりのある空間に。また、廊下のデッドスペースは収納として活用。浴室横はリネン、玄関脇は上着やルーターを収納しています。キッズスペースの壁の向こう側、家のほぼ中央に位置する水回りスペースに浴室と洗面室を収めています。コンパクトな洗面脱衣室は、引き出し付きの洗面台を選び収納量を確保。排水スペースが必要なため、浴室の床は少し上げることになりました。浴室には梁があるので、自由度の高いハーフユニットバスを採用。壁には梁と同じタイルをあしらい、浴室内も居住空間と同じ雰囲気で統一しています。さらに、子ども室と廊下側の壁の上部にガラスを埋め込む工夫も。洗面脱衣室も壁の上部を空けて、開放感と明るさを取り込んでおり、他の空間と緩くつながる水まわりになりました。ライトグレーの壁が明るい雰囲気のトイレは新調し、向きを変更しています。リノベで自分たちらしい住まいを手に入れたIさん夫妻。「できればなくしたい! というくらい目立っていた梁にタイルを貼り、家のシンボルに。それが浴室の湯舟からも眺められ、戸建てのような開放感がある。ぐるぐると回遊できる間取りも、とても便利なんです!」と嬉しそうに話してくれました。このリノベーションをもっと詳しく見たい方は、ぜひ「リライフプラスvol.17」も参考にしてみてくださいね。※物件価格、工事費、ご家族の年齢等は取材時のものです設計アオイデザイン撮影飯貝拓司
2018年08月08日夫がプロのチェロ奏者というTさん夫妻が以前の住まいで頭を抱えていたのは、近隣への音問題。最上階で隣室のない居室、という条件を優先し、築年数にはあまりこだわらずに探して出合ったのが千葉県浦安市にある8階建てのマンションでした。同じマンションの最上階の部屋を3,600万円で購入。見積もりが良心的、会社が浦安にあり近い、プランナーさんと夫の趣味や感性が近い、などの理由からSHUKENにリノベーションを依頼し、650万円(設計料込み)で住み心地の良い住まいを手に入れました。■ モザイクタイル貼りのカウンターキッチンがお気に入り!予算の関係もあり、大きな間取り変更はしていません。まだ十分に使える設備は既存をうまく活用しつつも、SHUKENの得意とする造作を取り入れることで、大きなイメージチェンジをすることができました。なかでもモザイクタイル貼りのカウンターを挟んだキッチンは夫妻の大のお気に入り。こちらがリノベ前の「換金所」のようなキッチン「既存のキッチンは壁で閉じられ、小窓があるだけのつくりで、まるで換金所みたいでした(笑)。それがお洒落なカフェのように変わり、キッチンに立つのが楽しいです」と妻は話します。キッチン背面の収納は高さを抑えて、LDからは目につきにくくしました。大きな窓があるキッチンの奥側は、以前は引き戸で仕切られたパントリー兼洗濯機置き場だったとのこと。その戸を撤去して開口を空間に取り込むことで、西側からの採光・採風を大幅にアップさせることができました。北側からとらえたリビング。南面は引き違い窓に加え、サッシドアあり、コーナーを使った出窓ありと、大空間であっても眺めが平板になりません。窓上部には木製のカーテンボックスを設置し、無垢フローリングとの調和が美しい空間に仕上げました。こちらはリビング側からの眺め。大空間ならではの開放感を獲得しつつ、 2本の柱がさりげなくゾーニングしています。廊下からLDKに入るとすぐの場所には、ライティングビューローや本棚を配置。アンティークの味わいが深さが、ゲストの目を引き付けます。また、無垢フローリングを張った床は、下地の工夫で十分な遮音性能を確保しており、以前のようにまわりに気兼ねなく演奏を楽しめるようになりました。最上階に建つ箱型形状のT邸。広いバルコニーからは東京ディズニーランドも一望でき、そこから打ち上げられる花火も楽しめるとのこと。そんな南向きバルコニーからの採光は、既存よりも幅を広げた通路を通って室内の奥へ奥へと届きます。リビングの黒っぽい壁面は黒板塗装を採用しました。「絵も描けますが、マットな質感が気に入って、どこかに使いたいと思っていました」と夫。■ 4つの個室を使い分けて贅沢な空間に西側にある個室は夫の仕事部屋。楽器の練習や作曲などに専念できるそう。そして東側の個室は一室丸ごとクローゼットに。こちらの北側に突き出た洋室は、マンガを読んだり、風呂上がりの憩いの場として活用。「だらだらと過ごせる 大切な部屋です(笑)」と妻は話します。■ 陰影が美しいクラシカルな雰囲気の玄関大判のタイルを貼った床が、クラシカルな印象を奏でる玄関ホール。星型のシャンデリアが不思議な陰影を描きます。玄関のすぐ隣にある北側の個室には内窓を設置し、空間に明るさをプラスしました。各所のドアを開けると、リビングや個室から玄関ホールへと光がこぼれて明るい印象に。引き戸に変更した西側の個室からも光がよく届いています。壁に掛けられた絵画はIKEAで購入したものだそう。廊下からアクセスするトイレは設備を新調。さらに壁面は鮮やかなモザイクタイル貼りにしてリフレッシュ。また、洗面化粧台とビッグサイズの鏡はまだ十分使えると判断し、既存のまま活用しています。壁は布のような温かみのある質感のクロスに変更しました。リノベ―ションを振り返って、「家ができたとき、 自分たちでつくり上げたねと満足感でいっぱいに。これまで、普段使う食器などにはあまり気を使いませんでしたが、空間に合うものを選ぶようになりました」と妻は話してくれました。もっと詳しく見たい方は、ぜひ「リライフプラスvol.17」も参考にしてみてくださいね。※物件価格、工事費、ご家族の年齢等は取材時のものです設計・施工 SHUKEN撮影中村風詩人
2018年08月06日「生まれ育った町で子育てしたい」という妻の思いから始まった津川家の家探し。長女の小学校就学前のタイミングで中古マンション購入+リノベを検討し始め、物件探しからトータルで依頼できる会社を探しました。候補だった3社から選んだのは、「最初から色々と説明してくれて親しみやすかった」という、nu(エヌ・ユー)リノベーション。スタッフと内見して一目で気に入った港南台にある築26年のマンションを購入し、1170万円(設計料込み)をかけてリノベーションをしました。■ 夫妻の希望で広々とした玄関土間とLDKを実現トレイルランニングが趣味の夫は、アウトドアグッズを置ける玄関土間を希望し、玄関はゆったりと余裕のあるスペースを確保。靴や装備品などをまとめて置くのに重宝しているそう。窓際のボックスは靴入れで、賃貸住まいの頃から使っていたものを利用しています。「建物の裏手に高速道路があるため、元から二重サッシになっていました。閉めるとすごく静かです」と夫。シックなネイビーのリビング扉はオリジナル。その先には、無垢のフローリングが素足に心地いい空間が広がります。「好きなテイストの写真を集めていたら木ばっかりだった」というふたりの好みを反映して、フローリングには優しいカラマツの無垢材を採用。土間はモルタル、ウォークインクローゼットはコルクタイル、寝室はカーペット、キッチンは磁器質タイル、と異なった床材を使い分けることで、フラットな空間をゆるやかに分けています。夫妻の要望は、個室を小さくする代わりにLDKを広くとること。それに対してデザイナーが提案したのは、ウォークインクローゼットから寝室、リビング・ダイニングへと通り抜けできるプランでした。そのおかげでゆったりしたスペースを確保できたLDKは、ベランダが南向きで、前方に建物がないため2階でも明るさは十分。木製のブラインドをつけたダイニング側の窓は元々台つきで、グリーンなどを飾って楽しんでいるそう。ベランダ側に張り出したスペースは、グリーンを置きたかったのでモルタル敷きのインナーテラスに。リビングに置いたUNICOのソファをはじめ、優しい風合いの木の家具が無垢材の床となじんみ、LDKはやわらかい空気に包まれています。バルコニー側からLDK全体を見た様子。妻はキッチン、子どもはダイニングがお気に入りの場所。夫はリビングにビーズクッションを置いてくつろぐのが定番だそう。■ 北欧風のぬくもりを感じるキッチンキッチンとバックカウンター、ダイニングテーブルと壁付けのテーブルはそれぞれ高さを合わせ、美しく収めました。キッチンとひとつながりになったダイニングテーブルは、nu(エヌ・ユー)リノベーションの施工例を見てオーダー。食事やお茶を楽しむだけでなく、長女が折り紙やお絵描きをしたり、時にはあやとりをしたり、さまざまな場面で活躍しているそうです。壁は少しくすみがかった空色に塗装し、北欧風のぬくもりを感じさせる空間に。キッチン背面には圧迫感が出やすい吊戸棚をつけず、バックカウンターと一枚板のオープン棚で見せる収納に。コンロ横の壁はメンテナンスもしやすいタイル張りにしました。カタログで見てひと目ぼれした蜂の巣のような六角形のデザインがキュート!■ 光と風が通り抜ける寝室LDKに隣接する寝室の床は、落ち着いたトーンのカーペット敷きにしました。LDK側にある引き戸を開けると、バルコニーに面した窓からの光が寝室、その奥のWICまで届きます。寝室と引き戸でつながっているWICは、IKEAの収納パーツをフル活用して使いやすくカスタマイズ。寝室と廊下からアクセスできて、出入りがスムーズなうえ、風もよく通るとのこと。子ども部屋の壁は一面を鮮やかなピンクに塗装しました。現在はあまり使っていないため、ソファなどを置いて予備室的に使用していますが、いずれはベッドなどを入れる予定だそう。キッチンから寝室とサニタリーをつなぐ廊下を見たところ。カーテンの奥は収納になっていて、 トイレ裏にできたスペースを有効に活用しています。キッチン横の通路からアクセスする洗面脱衣所の洗面台は、木製カウンターやミラーキャビネットを造作してシンプルに仕上げました。無垢フローリングの上を冬でも元気に素足で走りまわる長女は、4月から小学生。妻と同じ通学路を通って小学校へ通う日を、心待ちにしているそうです。もっと詳しく見たい方は、ぜひ「リライフプラスvol.17」も参考にしてみてくださいね。設計・施工nu(エヌ・ユー)リノベーション撮影山田耕司
2018年07月05日