本番とほぼ同じ状態で行われる稽古を「通し稽古」と言う。蜷川幸雄演出、窪塚洋介主演の『血の婚礼』の初めての通し稽古に立ち会った。大規模修繕劇団旗揚げ公演「血の婚礼」チケット情報蜷川の盟友・清水邦夫が1986年に書いたこの戯曲は、スペインの詩人でもあり、劇作家でもあるロルカの『血の婚礼』にインスパイアされたもの。ロルカ版は、結婚式の日に花嫁を奪う男と、婚約者を裏切って運命の男のもとに走る女を描いた情熱的な話だが、清水版はいわばその後日談。家族も故郷も捨て、手に手を取って駆け落ちしたものの、今ではすっかり愛が冷めてしまった男女と、屈辱の精算のためにふたりを追ってきた元・婚約者と親類達を中心に進んでいく。だが、熱情の時期が去ったあとの人と人の関係に鋭い分析を施し、同時に豊かな抒情性を含む清水戯曲は、単純な愛憎でストーリーを構成しない。この物語の本当の主人公は、人間を呼び込み、迷わせる“路地”だ。そのことは、オープニングからわかる。やがてそこで起きる悲喜劇のためにスタンバイするように、静かに形を変える路地。清水戯曲を世界中の誰よりも数多く演出してきた蜷川は、鮮やかにそれを視覚化する。そして、戯曲の中に埋め込まれた詩を際立たせるためだろう、雨、鼓笛隊、人と人がののしり合う声などの喧騒をフルボリュームで聴かせる。ノイジーなのは音だけではない。かつてその路地で葬られた物語が女性の姿を借りて出てきたような不思議な存在が、何人も登場する。窪塚演じる“兄さん”は、体温の高そうな登場人物の中にあって、最初から最後までひんやりした温度で舞台上に立ち、すでに半分は路地に魅入られてしまった人間であることを示す。昨年の『血は立ったまま眠っている』に続いて蜷川の指名を受けた窪塚だが、この世とあの世の中間に立つような役は、なるほど、確かによく似合う。輪郭を持たない“兄さん”の像を浮かび上がらせるように、弟役の近藤公園、元・恋人のふね役の中嶋朋子、恋仇のハルキ役の丸山智己が、的確な演技で脇を固める。蜷川のダメ出しも、ちょっとした立ち位置の注意程度。ラストシーンまで約90分、ノンストップで終えたあとの言葉も優しいものだった。「今は70%でいいよ」実はこの舞台、ほぼ全編に渡って舞台上に雨が降っている設定。この日は雨の音だけを流していたが、蜷川の言葉は実際に降らせた時のことを想定したものだ。「雨を降らせたら、声や動きが絶対に変わる。だから今の段階でガチガチに固めず、変更に対応できる糊しろを持っていたほうがいい」という意味だ。でも、雨が降っていなくても相当激しいこの舞台、実際に数トンの水が降ったら、俳優の体力の消耗はどうなるのか。しかも、東京を皮切りに、雨と共に各地をツアーする。俳優、スタッフの水との戦いも、かなりの見ものになりそうだ。公演は6月24日(金)より東京・にしすがも創造舎体育館特設劇場ほかにて上演。取材・文:徳永京子
2011年06月17日映画『太平洋の奇跡−フォックスと呼ばれた男−』が2月11日(金・祝)、公開を迎え、主演の竹野内豊をはじめとするキャスト・スタッフ陣による舞台挨拶が行われた。映画の内容とは打って変わった陽気な舞台挨拶の最後に思わぬサプライズが!戦争末期のサイパン島における実話を映画化した本作。大場栄大尉(竹野内さん)率いる部隊が、圧倒的な兵力を誇るアメリカ軍と激闘を繰り広げる姿が描き出される。竹野内さんに井上真央、山田孝之、阿部サダヲ、中嶋朋子、岡田義徳に唐沢寿明、日本軍のパートを演出した平山秀幸監督とアメリカ軍のパートを担当したチェリン・グラック監督という錚々たる顔ぶれが並んだこの日の舞台挨拶。最初に挨拶するのはもちろん、竹野内さん。司会者に紹介され、口を開こうとしたその瞬間、なぜか唐沢さんが自分が喋る気満々で一歩前に進み出る。唖然とする周囲をよそに唐沢さんは表情で「俺じゃないの?」とアピール!これには客席もほかの登壇陣も爆笑、竹野内さんは笑顔で「唐沢寿明です!」と挨拶し、会場は再び笑いに包まれた。これを皮切りに、陽気な舞台挨拶がスタート。山田さんが「雪がワァワァ降る中、某ボクシング映画(※同日公開の『あしたのジョー』)もあるのに、こちらの来ていただいてありがとうございます。僕から言えるのは…それだけです」と言ったかと思えば、唐沢さんは「久々に会ったら阿部くんは太ったし、山田くんは足が短くなった。岡田くんはアメ横の中田商店(※ミリタリーショップ)の店長みたいになって…」などなど、過激な挨拶で会場を盛り上げた。さらに司会者から映画のタイトルにちなんで「最近、起きた奇跡は?」、「○○と呼ばれた経験」という、映画の内容とはかけ離れたお題が出され、これには登壇陣からブーイングが…。竹野内さんは「(撮影が行われた)タイで、井上真央ちゃんが虫を食べたのが奇跡ですね」と明かすと、すかさず井上さんは「食べさせられたんです!」と反論。井上さんによると、竹野内さんと唐沢さんと共に屋台に行って「食べさせられた」そう。唐沢さんは「俺はカンケーねぇよ!」と“無実”を訴えていた。井上さんは最近起こった奇跡として「新年会のじゃんけん大会で、100人くらいの中で優勝しました」と語ったが「運を全て使い果たしたかも…」と少し心配そう。阿部さんは、「小中学校のときはもう少しふっくらしてたんですが、その頃、グリコ森永事件が起きまして…。“キツネ目の男(※事件の犯人として警察が作った似顔絵の男)”と呼ばれていました」と自身の経験談を披露。ムチャなお題のせいで微妙な空気のまま舞台挨拶終了か?と思われたが、最後の報道陣向けの写真撮影の最中に劇場の後方から、劇中でも歌われている軍歌「歩兵の本領」が聞こえ始める。歌っていたのは、本作で竹野内さん演じる大場大尉が率いた部隊の兵士を演じた、通称“平山30(さんまる)隊”の面々。キャスト陣には完全サプライズで、初日を祝うためにほとんどのメンバーが、竹野内さんがデザインしたTシャツを着用して集結した。隊のリーダー・長谷部氏から花束を手渡された竹野内さんは思わず長谷部氏をハグ!「本当に…びっくりしました。彼らなしではこの映画は完成し得なかった。胸がいっぱいで何と言っていいか…」と感謝の言葉を述べ、会場は温かい拍手に包まれた。『太平洋の奇跡−フォックスと呼ばれた男−』は全国東宝系にて公開中。■関連作品:太平洋の奇跡−フォックスと呼ばれた男− 2011年2月11日より全国東宝系にて公開© 2011「太平洋の奇跡」製作委員会■関連記事:竹野内豊、3年ぶり主演作完成&40歳の誕生日で感激しきりみるみる痩せていく竹野内豊を井上真央&山田孝之が心配…
2011年02月14日竹野内豊が3年ぶりに主演を務める感動巨編『太平洋の奇跡−フォックスと呼ばれた男−』の完成披露ジャパンプレミアが1月13日(木)、東京・有楽町の東京国際フォーラムで行われ、竹野内さんをはじめ、ショーン・マクゴーウァン、井上真央、山田孝之、中嶋朋子、岡田義徳、唐沢寿明、平山秀幸監督とチェリン・グラック監督が舞台挨拶に登壇した。実話を基に、太平洋戦争下のサイパン島で、4万5,000人もの米軍を翻弄した大場栄大尉(竹野内さん)と日本兵47人の激闘を壮大なスケールで活写する。「自決するより生きて戦うことを選べ!」という信念を貫き、米軍から畏敬の念を込めて“フォックス”と呼ばれた大場大尉の姿を通して、戦争を賞賛するのではなく、生きて戦後日本の礎を築いた誇り高き日本人の姿が描かれる。竹野内さんは「ようやくご覧いただける日が来て、心から嬉しい。当たり前のように感じている平和は、大場大尉をはじめ、多くの方々の苦しい経験があったからこそ」と感慨深げに挨拶。この日は1月2日(日)に40歳になった竹野内さんのために、大場大尉の息子の大場久充さん、そして実際に大場大尉と共に現地で戦い抜いた新倉幸雄さんがサプライズで駆けつけ、竹野内さんも感激しきり。「全力で戦い抜いたみなさんに心の底から感謝したい。戦争から一世紀も満たないうちに、日米合作でひとつの作品が完成し、こんなに素晴らしいことはない」と目にうっすらと涙をためながら、約1,200人の観客に頭を下げた。米軍の攻撃で家族を失った民間人の少女を演じる井上さんは「演じる上で、怒りをテーマにした。難しかったが、やりがいがありましたね。感謝しています」と新境地となった本作に様々な思いが去来した様子。そんな井上さんも1月9日(日)に誕生日を迎えたばかり。壇上に運び込まれた特大ケーキに「こんな大きなケーキ初めて」と大はしゃぎ。今年は24歳の“年女”とあって「いい年にしたいですね」と抱負を語った。唐沢さんはスキンヘッドで任侠の世界に生きる一等兵を熱演。「こんにちは。松野内豊です。これからも竹ちゃんをよろしく」と笑いを誘い、「日米の監督が撮った作品で、突然ガラっと(作品の)雰囲気が変わる不思議な感覚を味わえる」とコメント。米キャストを代表しショーンが、日本語で「今日は来ていただき、ありがとうございます」と挨拶し、「この作品の特徴は、国や文化を超えて私たちが友人同士として完成させたこと」と日米がタッグを組んだ本作の“意義”をアピールしていた。この日は「太平洋戦争を伝えるキャンペーン」の一環として、登壇者と観客が平和への祈りをこめて、千羽鶴を制作。完成した千羽鶴は今月末、竹野内さんと山田さんが映画の舞台となったサイパンに贈呈する予定だ。『太平洋の奇跡−フォックスと呼ばれた男−』は2月11日(金・祝)より全国東宝系にて公開。■関連作品:太平洋の奇跡−フォックスと呼ばれた男− 2011年2月11日より全国東宝系にて公開© 2011「太平洋の奇跡」製作委員会■関連記事:みるみる痩せていく竹野内豊を井上真央&山田孝之が心配…
2011年01月13日