■前回のあらすじ元気な赤ちゃんたちの泣き声を聞くたびに寂しさが込み上げてきましたが、看護師さんに救われました。そして私は無事退院しました。■NICUへ通う日々絵では省略しましたが、全員マスクをしています。看護師さんとの連絡ノートは、持って帰っても良いとの記述を見逃して、ずっと病院に置いていたので、前半全て看護師さんのターンでした…。■GCUへ移動した娘管が取れてGCUへ移動し、ついにワンステップクリア!これから退院に向けて、様々な試練が課せられます…!※本記事はあくまで筆者の体験談であり、症状を説明したり、医学的・科学的な根拠を保証したりするものではありません。気になる症状がある場合は医師にご相談ください。次回に続く(全57話)「出産の記録~低酸素性虚血性脳症の娘と私」連載は12時更新!
2021年08月05日■前回のあらすじ娘の呼吸器が取れました。まだ管はたくさんついているけれど、初めて娘を抱っこすることが出来ました!■娘のそばにいられない寂しさが襲うおそらく、この病院で私が一番重症だったので、ナースステーションの前の部屋にされたのですが、ナースステーションの隣が新生児預かり室だったので、赤ちゃんの泣き声を聞くのは相変わらず複雑な思いでした。■看護師さんの言葉に救われるおそらくこの時が一番どん底でした。余談ですが、この病院には赤ちゃんとお母さん両方を診る2週間検診というものがあり、みんな赤ちゃんを連れてきているのに、自分だけひとりだったので、その時もとても辛かったです。■そして退院の日…とても良い産院でした。看護も手厚く、たくさん寄り添ってもらいました。体重のお米は、特定を避けるためのフェイクです。似たようなお祝いの品をいただきました。※本記事はあくまで筆者の体験談であり、症状を説明したり、医学的・科学的な根拠を保証したりするものではありません。気になる症状がある場合は医師にご相談ください。次回に続く(全57話)「出産の記録~低酸素性虚血性脳症の娘と私」連載は12時更新!
2021年08月04日■前回のあらすじ複雑な気持ちのまま赤ちゃんに会いに行ったけれど、いざ目の当りにしたら嬉しくて涙が止まりませんでした。■赤ちゃんへの接し方に戸惑いを感じていたけれど…ほとんどのお母さんが経験される気持ちかと思うのですが、「こいつ、本当に私のお腹の中にいたのか…」という不思議な気持ちと、どうやって接したらいいか分からない…という何とも座りの悪い気持ちが混ぜこぜでした。副耳がついていたの可愛かったなぁ。ひとつは自然に取れて、もうひとつは骨が通っていなかったので、根元で縛って取ってもらいました。■主治医の先生から話を聞く先生とお話ししました。右も左も分からず、夫や母から伝え聞くのみだったので、お話できて本当に良かった。実際はもっと質問しています。■初面会終了、誠実な先生に感謝とても安心感のある先生でした。NICU内は機内モードであれば、スマホの持ち込みは可能でした。※本記事はあくまで筆者の体験談であり、症状を説明したり、医学的・科学的な根拠を保証したりするものではありません。気になる症状がある場合は医師にご相談ください。次回に続く(全57話)「出産の記録~低酸素性虚血性脳症の娘と私」連載は12時更新!
2021年08月01日■前回のあらすじ母乳指導が始まりました。初乳はとても微量でしたが、助産師さんたちはとても褒めてくれて…。■喜んで世話を続ける母母は孫が生まれてくるのを本当に本当に楽しみにしていました。独身の頃も早く結婚して子どもを産め産め言うタイプだったので、若干鬱陶しくもあったのですが、いざ産んだらそれはそれは手厚く世話をしてくれました。こんなことになって母が落ち込んだりしないか心配だったのですが、むしろ私が動けないことをいいことに、嬉々として必要なものの買い出しに行ってくれました。■母乳に関してネガティブな気持ちはない母乳に対してこだわりはありません。娘の現状を考えるとそれどころではなかったので、母乳のことまで考える余裕はありませんでした。※本記事はあくまで筆者の体験談であり、症状を説明したり、医学的・科学的な根拠を保証したりするものではありません。気になる症状がある場合は医師にご相談ください。次回に続く(全57話)「出産の記録〜低酸素性虚血性脳症の娘と私」連載は12時更新!
2021年07月30日私の娘は生まれた翌日に呼吸状態が急変し、NICUに緊急搬送されました。命は取りとめましたが、MRI検査で脳の萎縮が判明。「低酸素脳症」と診断されました。その後、私の娘に現れた症状についてお伝えしたいと思います。 最初に気付いたのは左手の動き低酸素脳症と診断された娘は、運動分野に広く脳の萎縮があり、歩けなくなるかもしれないと医師から言われていました。しかし、発達は少し遅いものの順調で、走れるようにもなりました。ただ、ハイハイはせず、おしりと脚で座ったまま移動していました。 のちにわかったことは、腕の力、特に左手の力が弱いということ。左手はグーとパーができますが、手先がうまく動かないことに2歳ごろ気付きました。しかし、日々訓練を続けることで、ボタンをとめることもできるようになりました。 ほかの子に比べて食べこぼしが多い娘はおっぱいを吸う力も弱く、ミルクのほうが多い状況でしたが、ミルクも口からよくこぼしていました。離乳食が始まってからも、ほかの子に比べて食べこぼしが多い状態。どうやら、口の周りの筋肉も弱いようです。 病院で摂食指導を定期的に受け、舌の動きの訓練などを続けることにより、だんだんと食べこぼしも減ってきました。本人も自覚をして、8歳になった今も受け付きのエプロンは必須ですが、だいぶじょうずに食べられるようになりました。 声は出るけど言葉が出ない赤ちゃんのころ、泣き声と笑い声はよく出ていましたが、いわゆる赤ちゃんが発する「喃語」を聞くことがほとんどありませんでした。2歳になっても発語がなく、少し心配でしたが、3歳くらいまでは言葉が出ない子もいるため、経過観察と言われていました。 しかし、以降も発語がなく、7歳のときに再びMRI検査をしたところ、言語分野に脳の萎縮が集中していました。ただ、幼児期より発声を促す訓練を受け、少しずつ言葉らしくなってきています。 娘は幼児期より障害児の通う学校にも通い、日々楽しみながら訓練を続けています。その結果、だんだんと障害の状態も改善してきています。著者:石原みどり知的障害を持つ子どもと口唇口蓋裂を持つ子どもの母。波乱万丈で大変なこともあるが、子どもたちと幸せいっぱいに生活している。経験を踏まえ、子育てに関する情報を発信中。 ※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。
2019年06月12日急性脳症とは出典 : 急性脳症は主にウイルス感染症に感染したのをきっかけに、急激に脳に浮腫(むくみ)が生じ、意識レベルが低下する疾患のことをいいます。病原となるウイルスに感染し、ウイルスに対して過剰な免疫反応が全身の血管に炎症をおこすことにより、意識障害、けいれん、嘔吐、血圧・呼吸の変化などが起こります。ウイルスは身近なインフルエンザウイルスや、突発性発疹を引き起こすヒトヘルペスウイルス、急性胃腸炎を引き起こすロタウイルスなどが主な病原となっています。突発性発疹や急性胃腸炎は乳幼児や子どもに多く発症する疾患ということもあって、急性脳症は生後6ヶ月~1歳代に多く発症します。実は急性脳症という名称は正式な学術用語としては使われていません。したがって、何らかのウイルスに感染し急性脳症を起こした場合は「けいれん重積型(二相性)急性脳症」か「急性壊死性脳症」などの症候群の名称、または「インフルエンザ脳症」など病原ウイルスに関連した名称で診断されます。病原体による分類と臨床・病理・画像所見による症候群分類があるため診断名に違いはありますが、どのウイルスにかかっても「けいれん重積型(二相性)急性脳症」または「急性壊死性脳症」「可逆性脳梁(かぎゃくせいのうりょう)膨大部病変を有する軽症脳炎・脳症」などの病理がみられるため、分類には大きな違いはありません。これら3つの病理は画像所見などが異なりますが、症状には特異的な違いは見られません。ですので、下記では急性脳症の症状や原因などをまとめて紹介していきたいと思います。参考:急性脳症の全国実態調査 |水口 雅(東京大学大学院医学系研究科 発達医科学 教授)参考:痙攣重積型(二相性)急性脳症|難病情報センター参考:重症・難治性急性脳症|難病情報センター参考:『急性脳症の分類とけいれん重積型』|水口 雅(東京大学大学院医学系研究科 発達医科学 教授)急性脳症の主な症状出典 : 急性脳症は主にウイルス感染症に罹患し、何らかの原因で重篤化することで脳機能全般に障害が生じる疾患です。例えば意識障害、けいれん、嘔吐、血圧・呼吸の変化、などが子どもに現れ、救急で病院を受診することで発覚します。ここでは子どもがウイルスに感染してから、どのような症状が起こるのかまとめていきたいと思います。◇インフルエンザ・・・インフルエンザはA型またはB型のインフルエンザウイルスの感染を受けてから1~3日間ほどの潜伏期間の後に、発熱(通常38℃以上の高熱)、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛などが突然現われ、咳、鼻汁などの上気道炎症状(風邪の症状)が出てきます。約1週間の経過で回復するのが典型的なインフルエンザで、いわゆる「かぜ」に比べて全身症状が強いことが特徴です。参考:インフルエンザとは|NIID国立感染症研究所◇突発性発疹(ヒトヘルペスウイルス)・・・乳児期に発症するのを特徴とする熱性発疹性疾患といわれています。38度以上の発熱が3日間ほど続いた後、解熱とともに鮮紅色の発疹が体幹を中心に顔面、手足に数日間出現します。また下痢、まぶたの腫れ、大泉門(乳児特有の額の上にある骨と骨のつなぎ目)の膨隆、リンパ節の腫れなどがありますが、多くは発熱と発疹のみで経過します。参考:突発性発疹とは|NIID国立感染症研究所◇急性胃腸炎(ロタウイルス)・・・主に発熱、下痢、悪心、嘔吐、腹痛などがみられます。はじめは発熱があり、嘔吐、下痢など腹部症状が遅れて出現することもあります。参考:感染性胃腸炎とは|NIID国立感染症研究所それぞれのウイルス症状のほかに、・頭痛や周囲からの刺激に反応するものの、すぐに意識が混濁する状態・周囲への警戒心が強く、興奮したり、大きな声で叫んだり、暴力を振るったりしやすい状態などが表出します。参考:脳症の治療における留意点|水口 雅(東京大学大学院医学系研究科 発達医科学 教授)ウイルスに感染してから初期症状を経て、主症状に変わっていきます。けいれん重積型急性脳症、急性壊死性脳症、どちらの場合も意識障害、けいれんを主として嘔吐、血圧・呼吸の変化、発熱などが生じます。下記では主症状が起こってから予後までの症状を時系列にまとめました。<主症状が発症してから予後まで>・ウイルスに感染し発熱から24時間以内・・・主症状のけいれん・意識障害が起こります。けいれんは「けいれん重積(15分~1時間程度続く長いけいれん)」が起こる場合がほとんどです。※初めてのけいれん、またはけいれんが約5分継続した時点で救急車を呼んでください。・けいれん後・・・意識障害が生じる場合があります。・発熱から4~6日後・・・2回目の短いけいれんが群発して起こります。このとき意識障害を伴う場合もあります。・回復期・・・目的のない運動を繰り返すことがあります。(反り返り、手足を振り回す行為、口をもぐもぐさせる行為など)・予後・・・急性脳症が起こった後、てんかん、知的障害、運動障害など何らかの後遺症が残る割合は、けいれん重積型急性脳症では66%、急性壊死性脳症では46%といわれています。障害の程度は人それぞれですが、リハビリによって回復することもあります。後遺症に関しては追って説明していきます。参考:痙攣重積型(二相性)急性脳症|難病情報センター参考:急性脳症の全国実態調査 |水口 雅(東京大学大学院医学系研究科 発達医科学 教授)急性脳症の原因出典 : 急性脳症の原因はまだ分かっていません。現在分かっている急性脳症のメカニズムは、主にウイルス感染をきっかけとしてサイトカインストーム、代謝異常、興奮毒性などの病態が進行し、脳や各臓器に異常をきたす、ということです。サイトカインストームとは、免疫作用・抗腫瘍作用・抗ウイルス作用・細胞増殖や分化の調整作用などがあるサイトカインという細胞間情報伝達機能をもつタンパク質の多くが、ウイルスや細菌などが原因で調節不全を起こすことを言います。興奮毒性とは、興奮性神経伝達物質としてのはたらきをもつグルタミン酸が、過剰に存在することによって細胞毒性を示すというものです。急性壊死性脳症ではサイトカインストームが進行することが多く、けいれん重積型急性脳炎は興奮毒性が多いと推定されています。インフルエンザなどのウイルスに感染してもほとんどの人は病態は進行しません。まれに病態が進行すると急性脳症となります。急性脳症のメカニズムは解明されていますが、どのような条件が揃うと病態が進行し、急性脳症になるのかは分かっていません。しかし、近年の難病情報センターの研究班による研究によって、これらの病態の背景には複数の遺伝的要因が存在するのではないかという仮説が立てられ解明が進められています。特定の遺伝子に特徴があることによって、前述の病態の進行を引き起こし、急性脳症も引き起こす関連があるのではないかといわれています。参考:重症・難治性急性脳症|難病情報センター以上のことから根本的に急性脳症を予防することは難しく、考えられる予防策はインフルエンザや突発性発疹、ロタウイルスなどの感染症を予防することです。ウイルス感染は日々のうがい・手洗いなどによって防ぐことができます。また予防接種などを行うことで、できる限りウイルス感染を予防しましょう。急性脳症の診断/検査出典 : 急性脳症の診断基準と検査方法について紹介していきます。◇臨床診断2章で紹介したけいれん、意識障害などの症状がみられる場合に急性脳症だと臨床診断されます。また重症化すると昏睡状態にともなって次の症状がみられることがあります。・発熱を伴うインフルエンザなどの感染症に罹患している・意識障害がある・けいれんがある(15分以上続くけいれん重積の場合もある)・発熱後に異常言動・行動がある(両親が分からない・急に笑い出すなど)また上記の他には出血傾向や血圧低下、尿の排出量の低下などの全身症状をともなうこともあります。参考:AESD診断基準参考:ANE診断基準参考:MERS診断基準参考:インフルエンザ脳症ガイドライン|厚生労働省 インフルエンザ脳症研究班◇確定診断急性脳症において特徴的な脳浮腫が頭部画像所見でみられる場合は、けいれん重積型急性脳症または急性壊死性脳症などの急性脳症として確定診断がなされます。髄膜検査、血液検査などによって確定診断を行うことはできず、頭部画像所見の検査が行えない場合などは意識障害の程度や持続性を観察したうえでの臨床的・総合的な診断を行います。◇頭部画像検査(CT,MRI)急性脳症の特徴である脳浮腫があるかどうかを確認するために行います。◇髄膜検査髄膜刺激症状と30分以上の意識障害が伴う場合には髄膜検査を行います。髄膜刺激症状とは首の硬直や膝を曲げた状態で股関節を直角に屈曲し、そのまま膝を伸ばそうとすると抵抗があることをいいます(ケルニッヒ徴候などがあります)。これは急性脳症と似た症状がある髄膜炎や急性脳炎との鑑別のために行います。◇血液検査発症12~24時間後、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(以下AST)の軽度上昇がみられることがあります。ASTは細胞内でつくられる酵素のひとつです。肝臓もしくは心臓や腎臓などの臓器に多く存在し、体内でのアミノ酸代謝やエネルギー代謝の過程で重要なはたらきをします。このASTが何らかの異常で肝臓にある肝細胞が破壊されることにより、血液中に漏れ出します。急性脳症が疑われる場合はこのASTの値が上昇するといわれています。◇脳波夜間や何らかの理由により頭部画像検査ができなかった場合、脳波検査が用いられることがあります。また症状の経時的変化を把握する上でも脳波検査は有用といわれています。急性脳症の場合に特徴的な、びまん性の脳波などを示すといわれています。この他にも医師が必要と認めた検査を受けることがあります。参考:急性脳炎・急性脳症|MyMed参考:インフルエンザ脳症ガイドライン|厚生労働省 インフルエンザ脳症研究班急性脳症と似ている病気って?出典 : ◇熱性けいれん熱性けいれんとは38℃以上の発熱に伴って、意識を失い全身がけいれんすることを指します。小児期にみられる一般的な発作性疾患のひとつです。よく「ひきつけ」とも呼ばれています。生後6ヶ月~5歳の乳幼児期に発症し、日本では7~11%前後の割合で発症するといわれています。発熱から24時間以内にだいたい1~3分間のけいれんが起こります。けいれんは一過性のものであることが多いですが、乳幼児期には発熱の度にけいれんを起こす場合もあります。熱性けいれんは発熱やけいれんなど急性脳症と似ている症状が発症しますが、短時間のけいれんで治まり、発熱時に1度だけ起こるだけで治まります。急性脳症のけいれんの場合、多くは15分~1時間程度続く長いけいれんである「けいれん重積」が起き、数日後には2回目のけいれんを群発的に起こします。参考:重症・難治性急性脳症|難病情報センター参考:「公益社団法人 母子健康協会」参考:「熱性けいれん診療ガイドライン2015(日本小児神経学会,2015)」◇髄膜炎髄膜は脳や脊椎を覆っている膜です。髄膜が炎症することによって高熱、激しい頭痛、悪寒、嘔吐など風邪に似た症状が発症し、けいれんや意識障害を引き起こす場合も珍しくありません。髄膜炎も急性脳症と似た症状を引き起こします。急性脳症は脳の浮腫が原因で各症状が発症しますが、髄膜炎は髄膜の炎症によって症状が発症します。症状を引き起こす原因が異なるため、髄膜炎と急性脳症は違う疾患といえます。参考:細菌性髄膜炎とは|国立感染症研究所 NIID◇脳炎脳炎はウイルスが直接脳に感染し、炎症を起こすことによって発症する疾患です。脳症と同様に高熱やけいれん、意識障害がおこります。脳炎と脳症の違いは脳内でウイルスが増殖することによって中枢神経に障害を起こしていると考えられれば脳炎で、脳以外の場所で起きている感染が、免疫異常などにより間接的に脳へ障害を起こすものが脳症です。◇てんかんてんかんとは慢性的な脳の疾患(障害)で、大脳の神経細胞が過剰に興奮することで発作が起こり、てんかんによる発作が繰り返しみられる状態を言います。てんかん発作は突然倒れて意識を失い、けいれんを起こすといったいわゆる大発作だけではありません。体の一部が勝手に動いたり、会話の途中にぼんやりしたと思ったら意識を失っていたりといった症状もてんかんの発作として考えられます。てんかんは急性脳症とは異なり慢性的な脳の疾患です。さらに発熱時以外にもけいれんや意識障害などが引き起こされます。出典:「脳炎と脳症」|岡山大学大学院 小児医科学教授 森島 恒雄急性脳症かも?と思ったときの受診先と対応出典 : 急性脳症の場合は長時間のけいれんや意識障害など分かりやすい症状が表出します。できる限り早く救急車を呼んでください。けいれんが長引くほど後遺症が残る確率も高まります。発熱して24時間以内に長時間のけいれんが起き、発熱後4~6日の間に2回目のけいれんが起こるのが急性脳症の特徴です。しかしはじめに起こる長時間のけいれんがまれに1~2分程度で終わってしまう場合があります。その後意識障害も続かない場合は熱性けいれんであると見立てられることがあります。その数日後に2回目のけいれんが群発して起こるようなことがあれば、急性脳症である場合が高まります。もし、熱性けいれんと診断されてから4~6日後に2回目のけいれんを起こした場合は直ちに病院を受診してください。<救急車を呼ぶタイミング>・5分以上けいれんが続く・けいれんが終わったが、その後も意識障害が続く(睡眠とは別)<病院に行くタイミング>・はじめてのけいれんが起こって5分以内に治まった・2回目の短いけいれんが起こった急性脳症の専門科目は脳神経外科や神経内科なります。けいれんが群発して起こっている場合が多いため、抗てんかん薬などでけいれんを治める必要があります。ですので、できる限り早い処置を行えるように救急などを受診するようにしてください。急性脳症がおよぼす後遺症出典 : 急性脳症では約36%の割合で何らかの後遺症が残るといわれています。主にその後遺症は知的障害、運動障害、難治性てんかんなどが発症します。知的障害とは発達期までに生じた知的機能障害により、認知能力の発達が全般的に遅れた水準にとどまっている状態を指します。単に物事を理解し考えるといった知的機能(IQ)の低下だけではなく、社会生活に関わる適応機能にも障害があることで、自立して生活していくことに困難が生じる状態です。運動障害とは運動神経経路の疾病によって体の運動機能に障害が生じることです。急性脳症後に大きな後遺症がなく回復し、リハビリを経て歩く・走るなどはできるようになった場合も、今までできていた跳び箱が跳べなくなる、縄跳びができなくなる、坂上がりができなくなるなどの障害が生じる場合があります。また重度の後遺症が残ってしまった場合は歩くこともままならず、日常生活の介助が必要になることもあります。なお、しばしば難治性てんかんというてんかんが後遺症として残ることがあります。ほとんどのてんかんが抗てんかん薬などを投与することにより、けいれんが治まりますが難治性てんかんは薬が効かないてんかんのことです。以上が急性脳症で起こりうる可能性が高い後遺症です。脳に生じた機能障害の程度などによって後遺症は多様であり、回復もそれぞれ個人差があります。出典:急性脳症の全国実態調査 |水口 雅(東京大学大学院医学系研究科 発達医科学 教授)急性脳症の治療出典 : 急性脳症の治療はそれぞれの症状の状態などによって異なりますが、ここでは主な治療について紹介していきます。■急性期の治療急性脳症では長時間のけいれん(重積けいれん)が起こります。そのけいれんを止めるために急性期では抗てんかん薬による治療が行われます。その後は様子をみながら、症状に合わせた治療を行っていきます。■予後の後遺症に対する治療前章で急性脳症の主な後遺症として知的障害、運動障害、難治性てんかんなどを挙げました。主にこれらの症状に対する治療やリハビリテーションを行っていきます。しかし障害の程度は一人ひとり異なるため、治療の内容も様々になってきます。例えば運動機能の障害には食事介助ないし経管栄養や胃ろうが必要となるケースがあり、摂食リハビリテーションを行うこともあります。知的障害に関しても程度が異なるため、療育や生活介助などのサービスを利用することもあります。難治性てんかんの場合は薬物治療以外の方法で、手術やACTH療法、ケトン療法などを用いて治療が行われます。実際はどのような後遺症が残るか、どの程度の後遺症が残るかは分かりません。その時々の医師や専門家の指示に従って治療を行うようにしてください。急性脳症の後遺症が残った場合の社会的なサポートって?出典 : 急性脳症が発症した後、主に後遺症が残ってしまった場合に受けられる社会福祉制度について紹介していきます。◇難病医療費助成制度けいれん重積型急性脳症は国の指定難病にされているため、医療費の助成を受けることができます。指定難病の医療費の自己負担割合は2割です。また、その他の制度による医療費がすでに1割負担となっている患者さんの場合、負担割合は1割のまま変わりません。難病医療費は世帯の所得に応じた医療費の自己負担上限額(月額)が設定されます。自己負担上限額は、受診した複数の医療機関などの自己負担をすべて合算したうえで適応されます。医療費助成制度を利用するためにはお住まいの都道府県へ申請が必要になります。申請方法などは次の厚生労働省のリンクを参考にしてみてください。参考:難病医療費助成制度の対象疾病について|厚生労働省◇障害者手帳の取得障害者手帳は急性脳症による後遺症などが残ってしまった場合などに取得することができます。障害者手帳があると、受けられる支援の幅が広がります。障害者手帳には「身体障害者手帳」「精神障害者保健福祉手帳」「療育手帳」の3つの種類があります。身体障害者手帳は身体障害がある方を対象にしています。精神障害者保健福祉手帳は精神障害や発達障害、てんかんなどがある方を対象にしています。療育手帳は発達障害や知的障害がある方を対象にしています。急性脳症の後遺症としてどのような症状が残ったかによって、取得できる手帳の種類が変わってきます。また手帳は数年ごとに更新がなされるため、その後の障害の程度に変化が生じた場合、受けられる支援も変わる場合があります。障害者手帳に関して、相談や申請などの問い合わせ先はお住まいの市区町村の障害福祉担当窓口になります。また障害者手帳に関する詳しい内容は下記を参考にしてみてください。◇知的障害・運動障害の療育サポート療育は障害のある子どもに対して、それぞれに合った治療・教育を行い社会的に自立することを目標にした社会的なサポートです。後遺症が発症した子どもは、通所施設や入所施設などで療育サービスを受けることができます。その子の障害の程度や特性に合わせて個別に支援計画が立てられた上で、療育サービスを利用することになります。コミュニケーションの取り方や身辺動作など、その子どもが日常生活を送る上で必要なスキルを身につけるためのトレーニングなどが行われます。障害の程度にもよりますが、障害者手帳がなくても支援の必要性が認められば、受給者証を取得してサービスを受けることができます。◇障害者総合支援法に基づいた障害福祉サービスなどの利用障害者総合支援法は障害がある方もない方も住み慣れた地域で生活するために、日常生活や社会生活の総合的な支援を目的とした法律です。障害がある子どもから大人を対象に、必要と認められた費用の給付や支援を受けることができます。移動支援や生活介助など障害者総合支援法に基づいたサービスは多岐に渡ります。関連記事を参考にしながら利用を検討してみてください。参考:「障害者総合支援法」の対象となる疾病を332に拡大します|厚生労働省まとめ出典 : 急性脳症はウイルス感染をきっかけに発症する疾患です。近年の研究では特定の遺伝子の型が関係しているのではないかと言われていますが、遺伝子検査で未然に子どもの急性脳症の傾向を知ることはまだ一般的ではありません。現在、考えられる唯一の予防策は感染症の予防です。感染症のなかでも急性脳症と親和性が高い代表的なものは毎年流行するインフルエンザです。また、乳幼児期は子どもの免疫機能が完全に発達しきっていないために、急性脳症の他にもさまざまな病気になりうる可能性があります。インフルエンザやその他のウイルス感染を防ぐため、できうる限りの予防をおすすめします。
2017年03月31日新潟大学は6月18日、糖尿病治療で使われるインスリンなどの血糖降下薬による低血糖脳症に対し、新たな動物モデルを作成し、用いることで低血糖脳症の治療薬を発見したと発表した。同成果は新潟大学脳研究所神経内科の下畑享良 准教授を中心とする研究グループによるもので、6月18日の国際科学誌「PLOS ONE」に掲載された。低血糖脳症は、糖尿病の治療でインスリン注射や内服の血糖降下薬を用い血糖値を下げたときに、薬が効きすぎることで起きる。糖は脳にとってのエネルギー源であるため、低血糖脳症は重度の脳障害や認知症の原因となる。近年、その数が増えていることが問題となっているが、ブドウ糖注射を除くと治療薬がなく、治療薬の開発が望まれているが、良い動物モデルがないという課題があった。従来の動物モデルは低血糖におる脳のダメージによって呼吸が止まるため、人工呼吸器を使用していたが、難易度が高いという問題があった。今回の研究では、脳波をモニターしながら脳の傷害をチェックする方法を用いることで、人工呼吸器を使用しないで済む動物モデルを確立した。また、このモデルを用いることで、低血糖の治療として行うブドウ糖注射のあとに、脳内にアルデヒドのひとつである4HNEという物質が蓄積し、神経細胞を傷害すること、その障害の程度は低血糖の時間が長いほど高度になることを発見。アルデヒドを分解する酵素を刺激する薬剤「ALDH2 アゴニスト」をブドウ糖と一緒に注射したところ、脳内のアルデヒドが減少し、神経細胞の障害も抑制されることを確認した。このアルデヒド分解酵素刺激薬が実用化されれば、低血糖脳症患者の一部の予後を改善する可能性がある。同研究グループは今後、今回開発した動物モデルを用いて、さらに低血糖脳症の治療薬候補の同定を進め、最も効果が期待される治療薬を用いた治療の実用化を目指すとしている。
2015年06月18日