新潟、東京、金沢、魚津、沖縄の5都市による全国共同制作プロジェクトとして、プッチーニのオペラ『トスカ』が上演される。新潟、魚津、沖縄で大勝秀也、東京、金沢で広上淳一が指揮し、映画監督・河瀬直美が演出を手がけることでも話題だ。公演に先駆けて稽古の様子が公開された。歌劇「トスカ」チケット情報『トスカ』といえば19世紀初頭のローマを舞台にした物語だが、河瀬は、古代日本の雰囲気漂う架空の場所、“牢魔”と設定。役名も、ヒロイン・トスカはトス香、その恋人カヴァラドッシはカバラ導師・万里生、トスカに横恋慕するスカルピアは須賀ルピオ、といった具合に改められている。公開された稽古は2幕、ルイザ・アルブレヒトヴァ演じるトス香が三戸大久扮する須賀ルピオに、捕らえられた万里生を自由にしてほしいと頼む場面だった。映画監督だけあって、河瀬の演出は細かい。身体の向きや振り返り方、タイミング……。演技がリアルであることに加え、河瀬が特にこだわるのは、須賀ルピオのあり方だ。三戸に「身体が流れないよう、背筋を伸ばして」「カッコイイほうがいいです」と指示する河瀬。トス香に野卑に襲いかかろうとはせず、余裕をもってじっくりと追い詰めるのが、河瀬の須賀ルピオ像なのだ。その演出に応え、三戸の須賀ルピオはトス香を心理的に追い込んでいく。トス香が嘆くアリア「歌に生き愛に生き」の切ない調べ。『トスカ』で必ず拍手が起きる名アリアだ。すると、須賀ルピオも拍手しながらトス香に近づく。そんな須賀ルピオの求愛に応じたかに見せかけ、ナイフで刺すトス香。須賀ルピオの死体に、彼女は腰に刺していた赤い羽根を置く。「トス香は鷹のような女」とする河瀬の言葉に呼応する演出だろう。稽古場には、河瀬をサポートしながら歌手に助言する大勝、広上の姿もあった。続いて行われた会見では、河瀬は「映画とは違い、既に脚本があり、その脚本を一言一句変えることができず音楽も必ずそのリズムでついてくるという中で、どれだけオリジナリティを出せるかを考えています」「世界から戦争がなくなったことはないけれど、芸術がひと筋の光を見出す力になると信じています。今回の『トスカ』では、須賀ルピオが悪いのではなく、その時代、その瞬間の人間関係が生んだ悲劇として描きたい」と抱負を語った。そんな河瀬を、広上は「監督が非常に新鮮な感覚で僕らに色々なアイデアを提供してくれるのが一番嬉しい。畑の違う才能のある方の手にかかるとこんなに面白いのかと、お客さんと共有できる舞台になりつつあります」、大勝は「僕達は楽譜を読んで歌い手達と作るが、河瀬さんはテキストから誰もが持つ欲望やエゴを読み解き、奇をてらわず、今の世の中もこんなこといっぱいあるよね、というふうに新風を吹き込んでくださる。それがオペラの普遍さになるでしょう」と笑顔で讃えた。新潟での公演を終え、この後、10月27日(金)より東京公演が開幕。取材・文:高橋彩子※河瀬直美の「瀬」は正しくは旧字体
2017年10月18日開場20年目のシーズンを迎えている新国立劇場で10月12日、来年5・6月に20周年特別公演として上演される新演出の《フィデリオ》(ベートーヴェン)の制作発表会見が行なわれた。愛と自由が全編を貫くベートーヴェン唯一のオペラ。ドイツ・オペラ史上最重要の古典をどのように描くのか。公演を指揮する飯守泰次郎や演出のカタリーナ・ワーグナーらがそれぞれの思いを語った。新国立劇場オペラ「フィデリオ」のチケット情報飯守にとっては、2014年から4年間の任期を務めた芸術監督としての最後の指揮公演となる。「ベートーヴェンは、ワーグナーと並んで私が最も深く掘り下げてきた作曲家。任期の締めくくりとして《フィデリオ》に取り組めるのは大変意味のあること。ベートーヴェンの理想主義と哲学が表現された、深い感動をもたらす特別な作品。《フィデリオ》と聞いただけで身が引き締まる」(飯守)《フィデリオ》に描かれているのは、政敵に囚われた夫フロレスタンを救うため、男装して監獄に乗り込んだ妻レオノーレの命がけの愛。夫婦愛が軸となる。「身を焦がすような恋も、浮気も裏切りもない夫婦愛はオペラにはなりにくいテーマ。悲劇が足りないという人もいるが、この作品はそんな俗説を超越して、より深く、より高貴な人間性という理念を追求している。声楽的オペラというより、むしろ器楽的で、歌手にも高度な技術が要求される。しかも気品とパワーが必要な、ある意味ワーグナーより難しいオペラ」(飯守)演出はバイロイト音楽祭総監督のカタリーナ・ワーグナー。リヒャルト・ワーグナーの曾孫でもある。父ヴォルフガングは20年前に新国立劇場開場記念公演の《ローエングリン》(ワーグナー)を演出しているので、父娘2代にわたる演出家としての登場となる。「《フィデリオ》に新しい視点を提供したい。大きなテーマとなるのは、人はどのように認識するかということ。同じものを見ても人それぞれ異なる認識を持つ。たとえばレオノーレは女性だけれど男性として認識される。それをもう少し広く考えてもよいのではないか。人物だけでなく「自由」がどのように認識されるのかも考えなければならない。オペラではピツァロとフロレスタンの関係もはっきりとは見えてこない。最終的にどちらが勝ったのかわからないまま終わってしまう。そういうこところにも注目して解釈している。驚くかもしれないけれども、どうぞ楽しみに」(ワーグナー)飯守も「新国立劇場から世界に発信する《フィデリオ》にふさわしい新鮮な舞台を期待」と語る新プロダクション。保守的なアプローチではない、より心理的な解釈の舞台になりそうだ。出演はステファン・グールド(フォロレスタン)、リカルダ・メルベート(レオノーレ)、妻屋秀和(ロッコ)、ミヒャエル・クプファー=ラデツキー(ドン・ピツァロ)、黒田博(ドン・フェルナンド)ほか。初日は2018年5月20日(日)、東京・初台の新国立劇場オペラパレスで。チケットは来年1月27日(土)午前10時より一般発を予定している。取材・文:宮本明
2017年10月13日劇団四季のミュージカル『オペラ座の怪人』が、12月27日(水)より6年ぶりに京都劇場で上演される。2015年より演出スーパーバイザーを務める北澤裕輔に、作品への思いや京都公演にかける意気込みを聞いた。劇団四季「オペラ座の怪人」チケット情報本作は、ガストン・ルルーの同名小説をもとにしたミュージカルで、パリ・オペラ座の地下に棲み、歌姫クリスティーヌに恋をする“怪人”の悲しい愛を描いた物語。『キャッツ』や『エビータ』なども手がける“21世紀のモーツァルト”アンドリュー・ロイド=ウェバーによる、美しくも重厚な旋律で紡がれる人気作だ。北澤も本作の楽曲に魅了され、劇団四季に入団したという。「元々、音楽大学でオペラ歌手を目指していたこともあり、クラシックに近い、オペラのような曲があることが、僕の琴線に触れました。全曲歌いたいし、聴いていたいと思える作品ですね」。四季入団後、同作ではアンサンブルから始まり、オペラ座の新しいスポンサーのラウル・シャニュイ子爵、支配人ムッシュー・アンドレなどを演じてきた北澤。演出スーパーバイザーとして関わる今、「ますます作品への愛が深まっている」という。「俳優として出ていると、演じることに一生懸命なので、本当の素晴らしさに気付いていなかったのかもしれません。今は曲を聴いているのもワクワクするし、だからこそ作品の立体感や曲のよさを引き立たせたい。今の四季の俳優たちは全体的に歌唱のレベルが上がっているので、高度なことが要求できます。彼らのポテンシャルを最大限に引き出して、お客様を圧倒したいと思います」。醜い容姿を隠すために仮面をつけ、オペラ座の地下深くに身を潜める“怪人”。そんな彼が見せるクリスティーヌへの一途な愛が、胸を締め付ける。「好きという感情を通り越して、恥も外聞もなく愛するあの姿に惹かれますよね。そんな風に生きてみたい。2幕は怪人が必死であればあるほど、ラストシーンがより印象深くなると思うんです。だからそこは感情にまかせて、とにかく必死に愛して、出し切ってほしいと伝えています」。『ノートルダムの鐘』でも演出スーパーバイザーを務めた北澤。京都劇場は「横に広くなく、音をダイレクトに伝えやすいから、緊張感と迫力で魅せたい」と語り、「観たことがない方にはぜひ劇場で圧倒されてほしいし、観たことがある方にも“やっぱりすごい!”と思っていただけるように作っていきたい」と意気込みを見せた。公演は、11月19日(日)まで広島上野学園ホールにて、12月27日(水)より京都劇場にて上演。チケットは発売中。取材・文:黒石悦子
2017年10月11日ハーゲンダッツ(Häagen-Dazs)のスペシャリテ『抹茶のオペラ』が11月21日(火)より冬期限定で登場。全国のコンビニエンスストアで発売される。スペシャリテとは、選ばれた素材と、層を重ねた構造により、たくさんの味わいを楽しめるアイクリーム。高級感に加え、見た目も楽しいところがポイント。『抹茶のオペラ』では抹茶アイスをベースに、チョコレート、アーモンド、そして、まろやかな甘みが特徴のブロンドチョコレートを使って、抹茶ケーキ「抹茶のオペラ」を表現。ココアバターのコクをプラスした、ほろ苦の風味豊かな抹茶アイクリームをベースに、香ばしい味わいのアーモンドソース、アーモンドクッキー、ブランデーがほのかに香るまろやかブロンドチョコレートアイスクリームを組み合わせ、さらに天面にはほろ苦いチョコレートソースと金粉を施した。金粉がきらめき、見た目もゴージャスだ。『抹茶のオペラ』価格:416円(+税) ※税込価格:449円 発売日:2017年11月21日(火) 販売:全国のコンビニエンスストア内容量:103ml 【問い合わせ先】ハーゲンダッツ ジャパン株式会社 お客様相談室TEL:0120-190821
2017年10月01日6年ぶり7度目の引越し公演のために来日したバイエルン国立歌劇場。オペラ公演は9月21日(木)に初日を迎えるが、それに先立って来日会見が行なわれた。劇場の音楽総監督で、2019年からベルリン・フィル首席指揮者就任が決まっている指揮者キリル・ペトレンコが初来日。取材嫌いで知られる彼も出席するとあって、報道陣が詰めかけた(9月17日・東京文化会館)。バイエルン国立歌劇場 日本公演 チケット情報冒頭、ニコラウス・バッハラー劇場総裁の挨拶に続いて注目のペトレンコが口を開いた。いくぶんシャイな、でも穏やかな話ぶりだ。「劇場の伝統でもある来日公演が自分の任期内に実現できることは本当に名誉。期待を裏切らない上演ができると思っている。初めて日本にやってきて今日で4日目。街も人々も、そして食事も素晴らしい」と、まずは型どおりの挨拶。さらに、質問に答える形で次のように話した。「大切なのはどんな公演にも十分に準備して真摯に向かうこと。その意味で、音楽に向かい合う際の私の一番の信条は『リハーサル』だ。リハーサルでオーケストラと一体になることができれば、本番での指揮者の役割は音楽を伝えることだけ。ステージでやることは、なるべく少ないほうがいい」「録音が少ないのは、ライヴがより重要だから。ライヴでは音楽が生き生きとしている。録音のように確実すぎる状況で音楽をするべきではないと思う」そして、なぜインタビューを受けないのかという質問には、「自分の仕事について語るべきではない。指揮者の仕事は指揮台の上だけにある。秘密はできるだけ多いほうがいい」とニヤリと笑った。会見には21日(木)に初日を迎える《タンホイザー》(ワーグナー)の歌手たちも同席。ペトレンコ観を問われた彼らが一様に語ったのは、その無駄のないリハーサル、それを可能にする正確な楽譜の読みと周到な事前準備。しかもそのすべてが本番につながっていること。そのおかげで歌手もリハーサルの時間を有効に使えるし、エネルギーをより良く配分できること。等々。ペトレンコ自身の言葉を裏付ける内容で、彼の音楽づくりの一端が垣間見えるやりとりだった。今回上演されるのは劇場にとって対照的な2演目。1978年に制作され長く愛されている、アウグスト・エヴァーディング演出の《魔笛》(モーツァルト)と、今年5月に新制作初演されたばかりの、ロメオ・カステルッチ演出の《タンホイザー》。革新と伝統が絶妙にバランスする同劇場の本領発揮という選択だ。特に《タンホイザー》は、舞台写真を見るだけでも、ヴェーヌスの異形などかなり刺激的なのだが、「この演出の中での自分たちの役どころは?」の質問を、総裁が「明日も長いリハーサルが」とやんわり遮って会見は終了。これも音楽総監督同様、十分な準備こそが自分たちの仕事という姿勢のあらわれかもしれない。となればやはり、自分の目で見て確かめるしかない。いざ劇場へ!取材・文:宮本明
2017年09月19日「切れば血が出るような、生々しさ」「いきいきとした人間ドラマ」──。出演歌手たちがそう口を揃えるリアルな愛憎劇。今年生誕450年の作曲家クラウディオ・モンテヴェルディの晩年の代表作、オペラ《ポッペアの戴冠》が上演される。公演の指揮者・鈴木優人と出演歌手らによる記者会見が開かれた。【チケット情報はこちら】指揮者の鈴木が「勧善懲悪ならぬ勧悪懲善」と表現するように、ローマ皇帝ネローネ(ネロ)と美女ポッペアのW不倫愛に端を発して、ネローネは反対する腹心を自殺に追い込むわ、正妻のオッターヴィアはポッペアの暗殺を企むわ、不道徳で不正義な謀略が渦巻く物語。その不条理をモンテヴェルディが官能性豊かな音楽で描いた傑作だ。17世紀初めのオペラ誕生から間もない時期に、人間の暗部までをこんなにリアルにえぐり出す作品が生まれていることに驚く。男役も含め、登場する役の多くが女声の音域で書かれた作品を演じるのは、森麻季(ポッペア)、レイチェル・ニコルズ(ネローネ)を始め、波多野睦美(オッターヴィア)、森谷真理、小林沙羅、藤木大地、櫻田亮ら実力派揃いの豪華オールスター・キャスト。古楽のベテランから、森谷や小林、そしてやや意外なことにカウンターテナーの藤木も、バロック・オペラ初挑戦の新進歌手まで広く起用しているのは、古楽に軸足を置きながら多様なフィールドで活躍する鈴木ならではの、唸らせるキャスティングだ。2009年の新国立劇場での上演に続いて2度目のポッペア役を演じる森麻季は、「悪女といわれるポッペアだが、実は誰かを殺したり陥れたりたりはしない。自分の命も顧みずに選んだ愛は真実だと思う」と語る。なるほど、悪意ではなく、今年流行した「忖度」を自然に促す魔性の女というところかもしれない。まさに現代的。演奏会形式(管弦楽=バッハ・コレギウム・ジャパン)での上演ながら、田尾下哲の演出(舞台構成)がつく。25人を超える登場人物(歌手によってはひとり3役、4役を演じ分ける)の関係をわかりやすく整理してくれるから、休憩含め4時間弱の長丁場でも、バロックだとか古楽だとかの専門知識がなくても、存分に楽しめるはず。モンテヴェルディ・イヤーにふさわしい記念碑的公演になりそうだ。《ポッペアの戴冠》は、作曲家の没年である1643年にヴェネツィアで初演された。自筆スコアは残っておらず、後年の2種類の筆写譜(ヴェネツィア稿とナポリ稿)がおもな源泉資料となる。今回は、チェンバロ奏者・指揮者で音楽学者のアラン・カーティス校訂のスコアに基づくが、「楽譜はあくまでも出発点。通奏低音は即興演奏だし編成も自由。オーケストレーションや、ときにはこのパートを誰が歌うのかまで、多くの部分はわれわれ演奏者の判断に委ねられている」(鈴木)というように、作曲家でもある鈴木の補作によるスペシャル版での上演となる。公演は11月23日(木)に東京オペラシティコンサートホールにて開催。チケットは発売中。取材・文:宮本明
2017年09月15日10月1日(日)に2017/18シーズンの初日を迎える新国立劇場。記念すべき開場20年目のシーズンだ。その幕開けを飾るのはワーグナーの《神々の黄昏》。3年がかりで制作してきた新国立劇場の新しい『ニーベルングの指環』が、いよいよ完結する。【チケット情報はこちら】《神々の黄昏》は4部作中最長の6時間におよぶ超大作。ハーゲンの策略にはまってジークフリートは死に、彼のあとを追った妻ブリュンヒルデが、世界を支配する指環とともに炎に身を投じると、神々の世界は崩落し、すべては無に戻る。「ジークフリートの葬送行進曲」「ブリュンヒルデの自己犠牲」など、単独でも演奏される聴きどころが多数ある、『指環』全作のクライマックスだ。英雄ジークフリートを歌うのはステファン・グールド。今回の「新国リング」で、ローゲ(ラインの黄金)、ジークムント(ワルキューレ)、ジークフリートと演じてきた世界的なヘルデン(英雄)テノールが、4部作を連続制覇することになる、いわばグランドスラム。ブリュンヒルデ役には現在最も注目されるワーグナー歌手であるペトラ・ラング。新国立劇場には昨年の《ローエングリン》に続いての登場。ジークフリートの裏切りに復讐の鬼と化し、最後は神々しい自己犠牲で、悪意に満ちた『指環』の壮大な物語に終止符を打つドラマティックなヒロインを、世界最高水準で聴かせてくれる。オペラ史上屈指の悪役バス、ハーゲンには、昨年の《ワルキューレ》でフンディングを歌ったアルベルト・ペーゼンドルファーが再登場。ブリュンヒルデの異母姉妹のヴァルトラウテにも大物が起用される。現代を代表するメゾ・ソプラノ、ヴァルトラウト・マイヤー。38年間歌い続けているという同役は、彼女の輝かしいキャリアのなかでも重要なレパートリーだ。舞台は故ゲッツ・フリードリヒが1996~99年にフィンランド国立歌劇場で演出したプロダクションで、これまでの3作でもそうだったように、ワーグナーのドラマと音楽を真正面から堪能させてくれる。指揮は新国立劇場芸術監督でワーグナー演奏の第一人者・飯守泰次郎。読売日本交響楽団が初めて新国立劇場のオーケストラ・ピットに入る。4部作中で唯一登場する合唱は、もちろん新国立劇場合唱団。指環を巡る争いの悲劇に幕を降ろし、「愛の救済の動機」が未来への希望を高らかに予感させるフィナーレに向かって、役者が揃った。公演は10月1日(日)4日(水)、7日(土)、11日(水)、14日(土)、17日(火)の全6回。最終日はチケットぴあが1階席前方の中央ブロックを確保。世界有数のワーグナー歌手たちの圧倒的な歌唱と荘厳な分厚いオーケストレーションを、間近で、全身に浴びるように体感するチャンスだ!取材・文:宮本明
2017年09月15日プチバトー(PETIT BATEAU)は、パリ・オペラ座バレエ団のエトワール、マリ=アニエス・ジロ(Marie-Agnes Gillot)とコラボレーションしたベビー、キッズ、レディースのコレクションを、2017年11月3日(金)より展開する。パリ・オペラ座バレエ団最高位のダンサーであり、振付師でもあるマリ=アニエス・ジロが、プチバトーのアイコニックなアイテムを生まれ変わらせた。バレリーナのワードローブをベースとした、思わず踊りたくなるような動きやすく自由なデザインが特徴的。ジャージー素材のマリニエールボーダーは、一見ゆったりとしたプルオーバーに見えるが、背面が深く開いていて、レオタードを着たバレリーナの後姿を彷彿とさせるシルエットになっている。また、オールインワン&レッグウォーマーセットは、オールインワンにショルダー&レッグウォーマーというバレリーナならではのスタイリング。バレエレッスンの練習着のように動きやすく、更に着心地も考えられたアイテムだ。他にも、キッズラインのアイテムには、自身の初舞台の衣装からインスピレーションされたチュチュワンピースや、3歳になる息子のことを考えながらデザインしたコンビネゾンなど、"エトワール"としてだけではなく、「1人の母親」「1人のバレリーナ」としての彼女の想いまで詰め込んだコレクションとなっている。【詳細】プチバトーとマリ=アニエス・ジロのコラボレーション 糸の上のパドドゥ発売日:2017年11月3日(金)販売店舗:プチバトー表参道店、下北沢店、吉祥寺店、自由が丘店、ルミネ新宿店、ルミネ横浜店、京都藤井大丸店、神戸店、ブリーゼブリーゼ店、オンラインストア展開:ベビー・キッズ・レディースアイテム例:■ベビーラメチュールドレスボディ 6ヵ月、12ヵ月 8,500円+税 / 18ヵ月、24ヵ月 9,000円+税■キッズラメチュールロングドレス 3~5歳 11,000円+税 / 6~12歳 12,000円+税レッグウォーマー&アクセサリーセット 5,000円+税■レディースジャケット XXS~M 21,000円+税ロングスカート S,L 16,000円+税ロングドレス XXS~S 21,000円+税マリニエールプルオーバー XXS~M 13,000円+税マリニエールボディ XXS~M 8,400円+税オールインワン&レッグウォーマーセット XXS~M 10,000円+税【問い合わせ先】プチバトー・カスタマーセンターTEL:0120-190-770
2017年08月24日レイ ビームス(Ray BEAMS)は、トーガ プルラ(TOGA PULLA)とのコラボレーション新作シューズを2017年8月中旬に販売する。トーガ プルラのデコラティブなシューズは、毎シーズンのコレクションにおいてもひときわ目立つアイテム。レイ ビームスは今回、バックル付きのオペラシューズに着目した。レオパード柄のハラコと、ベロアの2素材展開にて販売する。秋の装いにぴったりな、トーガ プルラらしく存在感のあるシューズに仕上がっている。【詳細】レイ ビームス、トーガ プルラとのコラボレーション新作シューズ発売発売日:2017年8月中旬販売店舗:ビームス ウィメン 渋谷、ビームス 阿倍野・神戸・心斎橋、ビームス ストリート 梅田、ビームス ジャパン、オンラインショップアイテム詳細:オペラシューズハラコ(レオパード)63,000円+税オペラシューズベロア(ブラック)55,000円+税サイズ:36(22.5cm)、37(23.5cm)、38(24.5cm)、39(25.5cm)【問い合わせ先】ビームス ウィメン 渋谷TEL:03-3780-5501
2017年08月07日バレエ、オペラともに世界最高の名門歌劇場「英国ロイヤル・オペラ・ハウス」の人気公演の舞台映像を映画館のスクリーンで楽しめる『英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン』。このほど、ロイヤル・バレエ「不思議な国のアリス」、ロイヤル・オペラ「カルメン」などを含む『英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン 2017/18』の全12演目が発表された。『英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン』は、ロンドンのコヴェント・ガーデン、ロイヤル・オペラ・ハウスで上演されたロイヤル・バレエ団、ロイヤル・オペラによる世界最高峰のバレエとオペラを、映画館で鑑賞できるもの。すべての上映作品には、ロイヤル・オペラ・ハウスで人気の高い案内人による舞台裏でのインタビューや特別映像などが追加されており、映画館の大スクリーンと大迫力の音響による、まるでライブ観劇のような臨場感と、さらにシネマシーズンならではの細やかな表情まで映し出されたスペシャルな映像を同時に楽しむことができる。2016/17シーズンでは、ロイヤル・バレエ「眠れる森の美女」やロイヤル・オペラ「蝶々夫人」を始めとした人気作品12演目が上映され、好評を博した。そして新シーズンでは、ロイヤル・バレエでは「不思議の国のアリス」「くるみ割り人形」「白鳥の湖」など6演目、ロイヤル・オペラでは「カルメン」「魔笛」「ラ・ボエーム」など6演目、王道の名作から近年のチャレンジングな作品まで、世界最高峰のクオリティで演じられるプロフェッショナルな公演を日本でも楽しめる。また、ロイヤル・バレエ団には、主役ダンサー・プリンシパルとして、日本人ダンサーの高田茜、平野亮一が在籍し、活躍していることで知られており、その雄姿を日本にいながら観られることでも大きな注目を集めている。『英国ロイヤル・オペラ・ハウスシネマシーズン2017/2018』はTOHOシネマズ系列ほか全国にて順次上映予定。<全12演目>■ロイヤル・オペラ「魔笛」「ラ・ボエーム」「リゴレット」「トスカ」「カルメン」「マクベス」■ロイヤル・バレエ「不思議の国のアリス」「くるみ割り人形」「冬物語」「バーンスタイン・センテナリー」(原題)「マノン」「白鳥の湖」(text:cinemacafe.net)
2017年07月27日日本人の若手テノール歌手の中でも際立ったスター性に恵まれ、実力・人気ともに鰻登りの西村悟。得意とする『椿姫』や『ラ・ボエーム』などのイタリアオペラのみならず、日本語オペラ『夜叉ケ池』や、先日大成功を収めた日本フィルの演奏会形式『ラインの黄金』のローゲ役など、レパートリーの拡大もめざましい。その西村が、自らのプロデュース公演としてオーケストラとのリサイタルを行う。歌手自身が指揮者とオーケストラに出資して行う大規模な公演で、日本ではこうしたソリスト発信の試みはまだ珍しい。【チケット情報はこちら】「今までイタリアのボローニャとヴェローナで勉強をしてきたのですが、その成果を聴いて頂くという目的もあるリサイタルです。忙しい山田和樹さんが共演してくださることになって、オーケストラも山田さんが正指揮者を務める日本フィルハーモニー交響楽団に決まり、この素晴らしいチャンスに感謝しています。山田さんや日フィルと築いてきた信頼関係がようやく実になった。一世一代の試みではありますが、満員のお客さんの前で歌えることを願っています」身長183センチの長身とステージ映えするルックスは、デビュー当時から注目の的だったが、元々はバスケットボールに打ち込んでいて、声楽を始めたのは高3のときだった。「音楽教師になるつもりで音大に進んだのですが、先生のアドバイスもあって芸大の大学院の試験に挑戦し、芸大在学時代にイタリア留学のチャンスもいただきました。歌はスポーツにとても似ているんです。バスケットでダンクしたり、柔道で一本背負いをする感覚と、テノールで高音を出す感覚というのは共通したものがある。歌手も筋肉を使い、使った後はケアしますしね」声量の豊かさとピッチの良さ、そして真に迫った演技力は、アスリート的な鍛錬とも関係があるようだ。リサイタルではこれまで歌いこんできたヴェルディやプッチーニ、ドニゼッティのイタリア・オペラのハイライトをメインに歌う。「悲劇的なオペラからのアリアが多いですが、僕自身悲劇が大好きだし、最も自分の音楽性が表現できると思っています。字幕なしでも歌詞の内容が分かる歌を歌うのが目標ですね。表情や音色、音量、手の仕草や目線などで文字なしでも伝えられるものがあると思います」何よりお客さんの前で歌うことが喜びだと語る。謙虚で誠実でユーモアセンスもある、未来の国際派テノールだ。公演は10月11日(水)午後7時より、東京オペラシティコンサートホールで開催。チケットは発売中。取材・文:小田島久恵
2017年07月19日山田和樹指揮、宮城聰演出というタッグも話題のNISSAY OPERA『ルサルカ』。11月の公演を前に、関連企画「オペラ・オードブル・コンサートvol.5 月に寄せる歌」が、日生劇場のピロティにて開催され、『ルサルカ』に出演する田崎尚美、新海康仁、清水那由太、秋本悠希が、ピアニスト湯浅加奈子の伴奏で、オペラの名曲を披露した。オペラ『ルサルカ』チケット情報1曲目は、ルサルカが第1幕で歌う「月に寄せる歌」。森に住む水の精ルサルカが人間の王子への恋を歌う有名なアリアだ。本番でも同役を演じる田崎が、ルサルカの思慕と憧憬をしっとりと歌い上げた。2曲目は、人間の姿で現れたルサルカに魅せられた王子が歌う「私には分かっている」。本番には狩人役で出演する新海が、運命の恋を確信した王子の歌を情熱的に歌った。晴れて王子と婚約するルサルカだが、彼女は人間の体を得る代わりに声が出せなくなっている。第2幕、口のきけないルサルカの前で、外国の公女が王子を連れて行ってしまう。その様子を見た水の精ヴォドニクが歌うのが、この日の3曲目、「哀れ、蒼白のルサルカ」だ。本番でもヴォドニクに扮する清水が、ルサルカへの哀れみと人間の世界への怒りを表した。続く4曲目は、外国の公女と王子の「あなたの瞳には」。本番でも公女を歌う秋本が深海と共に、新たに燃え上がる恋の二重唱を情熱的に歌った。この王子の裏切りを受けて水の底に引きずり込まれたルサルカが3幕で歌うアリアが、5曲目の「生から切り離され」。田崎がその歌にルサルカの深い嘆きを込めた。さらに、同じドヴォルザーク作曲の「わが母の教え給いし歌」も歌われ、その美しい旋律に来場者一同は聴き惚れたのだった。この日、進行も務めるなど大活躍だった田崎は、今回がルサルカ初挑戦。「私は声種的に、重い声の役が多く、ルサルカのような、人間ではない美しい声の役は、あまり経験してきませんでした。ただ、ドヴォルザークというと民族的な旋律が特長的で、そのオーケストラにはワーグナーに近い重厚さもある。実際にルサルカを歌ってみて、ある程度の重みがあってもいいのかな、と感じています。妖精らしさはハープなどの楽器や森の精、合唱などに表れており、人間に憧れるルサルカの歌にはむしろ泥臭いところもある気がするので、私の場合はそこから作っていけたらと思っています」。ドヴォルザークの歌について回るチェコ語の難しさについては「補助記号が、特にルサルカのアリアには多いんです。日本人がやらない発音なので、11月までにどこまできちんとできるかが課題ですね」と意気込む。宮城演出の稽古はまだこれから。「2幕でのルサルカは声を出さないので、表情や動きで表現することになります。どのような演出をつけてくださるのか楽しみですね。ルサルカは、相手のために自分を犠牲にする。現実にはなかなかできない行為ですが、その無償の愛がお客様に伝わるよう、リアルに演じたいです」。オペラ『ルサルカ』は11月9日(木)より東京・日生劇場にて。取材・文:高橋彩子
2017年06月30日日本最大のオペラ団体である東京二期会は近年、ヨーロッパの歌劇場との提携公演や共同制作を積極的に行なって、世界のオペラ・シーンを見据えた活動を展開しているが、来シーズンはフランス国立ラン歌劇場と共同で、黛敏郎(1929-1997)のオペラ《金閣寺》(三島由紀夫原作)を新制作上演する。6月19日、都内で制作発表会見が行なわれた。【チケット情報はこちら】黛敏郎の《金閣寺》はベルリン・ドイツ・オペラの委嘱により作曲、1976年6月にベルリンで世界初演された。だから歌詞はドイツ語。日本では1991年にようやく初演され、その後1997年、1999年、2015年にも国内上演されている。けっして上演回数が多いとは言えないかもしれないが、20世紀オペラ屈指の名作だ。今回の演出を委ねられたのは宮本亜門。ミュージカルからスタートした彼だが、2002年の《フィガロの結婚》以来、二期会とも多くの名オペラ演出を生んできた。「(黛の《金閣寺》は)いつかもし演出できれば、とずっと待ち望んでいた。音楽がなんと力強いことか。ストラヴィンスキーやラヴェルのようにエネルギーが生々しく迫ってくる」(宮本)この原作を舞台化する際、金閣寺という存在をどう扱うかがポイントになるだろうが、黛と宮本は、その方向性において共鳴し合っているようだ。2011年、神奈川芸術劇場(KAAT)こけら落とし公演で宮本亜門が手がけた演劇版《金閣寺》は、現時点での彼の代表作筆頭。そこでは金閣を象徴する「鳳凰」役を創出して演じさせたのが注目された。「(鳳凰は)主人公・溝口の深層心理を対比する役だった。(黛オペラでは)それを合唱が代弁して、溝口の心情を合唱がどんどん深く広げてゆく。合唱を中心に、闇の中で、光や色で常に脈打つ舞台が彼を追い詰めたり広げたりすることを考えている」(宮本)ラン歌劇場は、かつてはもっぱらストラスブール歌劇場と呼ばれていたが、そのストラスブールとミュルーズ、コルマールの3都市に劇場を持つ。演出家の人選がハイセンスで、「面白そうな演出家ばっかり」(宮本)。たとえば今シーズンならロバート・カーセン、ペーター・コンヴィチュニーが名を連ね、来シーズンの《金閣寺》の前後にはタチヤナ・ギュルバカやデイヴィッド・パウントニーが並ぶ。ヨーロッパを代表する演出家が揃う劇場だ。その列に加わる宮本も、「負けていられない。唸らせるぐらいの演出を」と力強く抱負を語った。また今回、海外の上演に二期会の所属歌手を派遣するのが、共同制作としては新たな試みで、フランス公演での「女」役に嘉目真木子(ソプラノ)、道詮和尚役に志村文彦(バス)の出演が決まっている。《金閣寺》は、2018年3~4月にストラスブールとミュルーズで計7公演が行なわれ、日本への凱旋公演は2019年2月予定。まずはフランス・プレミアのニュースを待とう!取材・文:宮本 明
2017年06月23日新国立劇場の2016-17シーズンを締めくくるのは、新制作《ニーベルングの指環》の第3作《ジークフリート》。ワーグナー演出の名匠ゲッツ・フリードリヒ(1930~2000)が晩年にフィンランド国立歌劇場で制作したプロダクションだ。初日を目前に控えた5月29日に行なわれたゲネプロ(ゲネラルプローベ=舞台上で行なわれる最終総稽古)を観た。新国立劇場オペラ「ジークフリート」チケット情報英雄ジークフリートがいよいよ登場するこの演目。傍若無人な悪ガキのジークフリートが、愛と怖れを知る青年へと成長してゆくという一直線のストーリーが軸にあるため、《指環》全4演目のなかで格段に理解しやすい作品となっている。登場人物が7人と簡潔なのも、わかりやすさを助けてくれる(7人以外に、森の小鳥も登場。今回この役がちょっとトリッキーなので、そこは観てのお楽しみ)。もはや懐かしい《ラインの黄金》の地下世界ニーベルハイムや、《ワルキューレ》の最後でブリュンヒルデを炎に包んだ岩山、その前2作の(特に《ラインの黄金》の)登場人物らも現れて、《指環》4部作全体の連関を鮮明に際立たせてゆく。それらに伴って聴こえてくるライトモティーフも、作曲者の自己満足的な隠しアイテムとしてではなく、物語と有機的なつながりをもって、観る側の理解を助けてくれる。その一番の成功例がこの《ジークフリート》だろう。聴きどころは何といっても主役ジークフリートを歌うステファン・グールドだ。ワーグナー作品の花形である「ヘルデン(英雄)テノール」の中でも屈指のハードな難役を、第1幕から全開でカッコよく歌う姿には惚れ惚れとする。リハーサルといえども声をセーブしようという気配など微塵もない。そんなことを言っている歌手にはこの役は歌えないのかもしれない。4時間近くも主役で歌い続けた挙句に、休養十分のブリュンヒルデ(なにせ十数年間の眠りから醒めたばかりだ)を相手に延々と愛の二重唱を歌わなければならないのだから。それを苦もなく聴かせるグールドの、まさに無尽蔵のスタミナ。そのブリュンヒルデのリカルダ・メルベートは、「かつて神の戦士だったが、現在は神性を剥奪された女性」という役柄にふさわしく、硬質ガラスを思わせる、繊細な、しかし強い表現を聴かせる。ドラマティックな面だけがブリュンヒルデではないのだ。さえない悪役であるミーメは、《ジークフリート》では前半の主役級だ。性格俳優的な役柄だが、《ラインの黄金》でも同じ役を歌ったアンドレアス・コンラッドは、キャラクターに振りすぎない立派な美声で、意外と多いミーメ・ファンも納得の、十分な存在感を示していた。公演は6月1日(木)・4日(日)・7日(水)・10日(土)・14日(水)・17日(土)の全6回。上演時間は2回の休憩を含めて約5時間40分。長丁場だけれど、万全の体調で臨もう!取材・文:宮本明
2017年06月01日「人を泣かせて感動させるのは簡単。喜劇は難しいです!」オペラ創作をライフワークに掲げる作曲家・三枝成彰の初めてのオペラ・ブッファ(喜劇オペラ)《狂おしき真夏の一日》が10月に上演される。オペラ「狂おしき真夏の一日」チケット情報タイトルでぴんと来た人もいるだろう。作品はモーツァルトの《フィガロの結婚~あるいは狂おしき一日》へのオマージュであり、物語の設定も《フィガロ》を下敷きにしている。舞台は現代の鎌倉。浮気症の医師・大石は看護師エミコと長い愛人関係にあり、長男・太郎のフランス人の嫁フランシーヌにまでちょっかいを出そうとしている。一方の太郎もかつてエミコと関係があったらしい。ゲイの二男・次郎は新しい恋人の男性ユウキに夢中だが、そのユウキは、大石の妻・陽子の美しさにも惹かれてゆく。親子関係の3組のカップルの、邪心と純真、愛欲と金欲が招くドタバタの恋愛模様。大石夫妻が《フィガロ》の伯爵夫妻、太郎とフランシーヌがフィガロとスザンナ、ユウキはケルビーノに当たる役どころだ。今回の作品の発想の原点となったのが大石とフランシーヌの関係だった。「実話なんですよ。ある知人が、息子の美人嫁の写真を持ち歩いていた。親子だから、もともと好きな女性のタイプが同じなのかもしれませんよね。その父親の気持ちを膨らませていたら、使用人の婚約者を狙う《フィガロ》の伯爵と結びつきました」そのフランシーヌが太郎とともに登場するシーンは、《フィガロの結婚》冒頭と同じく、ふたりで部屋の寸法を測る場面。そこでは音楽もモーツァルトをそのまま引用しているのだそう。オペラ・ファンなら思わずニヤリとしてしまいそうな仕掛けだ。一方で、「難しい」と語る喜劇オペラにあえて挑む理由は、モーツァルトならぬヴェルディにもルーツがあるのだという。「ヴェルディが最後に完成したオペラが、オペラ・ブッファである《ファルスタッフ》。最後に喜劇を書きたいという気持ちは同じだと思います。最初から《ファルスタッフ》を意識していたので、フィナーレは出演者全員による九重唱のフーガで締めくくります」なるほど。《ファルスタッフ》の最後を飾る出演者全員のフーガが〈世の中すべて冗談〉なら、三枝の九重唱は〈世の中はいいようにまわっている〉だ。書き下ろしの台本は30年来の付き合いの作家・林真理子。そして、AKB48などで芸能界を牽引する大物プロデューサーの秋元康に、オペラ演出初挑戦を投げかけた。「オペラや演劇の演出家より、オペラのパターンをまったく知らない人がやるほうがいい。もちろんオペラ側の常識とぶつかることもあるだろうと思いますよ。でも秋元さんなら押し切ってしまうはず。力ですよ。歌手にとっては怖い存在かもしれない(笑)」「泣かせの三枝と言われて来ましたから」と笑う三枝が、エンタメ界の重鎮たちをスタッフに迎えて挑む初の喜劇。娯楽としてのオペラが、日本で初めて登場するのかもしれない。公演は10月27日(金)から31日(火)まで東京文化会館 大ホールにて。取材・文:宮本明
2017年05月31日世界的テノール歌手、ホセ・カレーラスの来日公演が決定した。「ホセ・カレーラス テノール・リサイタル」のチケット情報カレーラスは、1950年代から現在までに世界の名門歌劇場でのオペラ公演やコンサートで活躍を続けてきたテノール歌手。キャリア絶頂期の1987年に白血病と診断されるも、闘病生活を経て奇跡的に復活。1990年代にはプラシド・ドミンゴ、ルチアーノ・パヴァロッティとともに「三大テノール」として活動し、1990年のサッカーW杯の前夜祭をはじめ、様々なビッグイベントでコンサートを行うなど、世界的な人気を獲得してきた。今年の日本公演は、東京・大阪の2都市で開催予定。東京公演は「いとしいひと」と題したリサイタル。プログラムの全貌は未定だが、近年のリサイタルのメインレパートリーであるイタリア歌曲などが中心となりそうだ。約10年ぶりのリサイタルとなる大阪では、クリスマスにちなんだ耳なじみのある聖なる歌の数々を披露。ステージから放たれる圧倒的なオーラ、年齢を重ねるごとに円熟味を増すエレガントな歌声が今年も日本のファンを魅了するだろう。ホセ・カレーラス テノール・リサイタルは、東京公演が11月18日(土)にサントリーホールで、大阪公演が11月21日(火)にザ・シンフォニーホールで開催。ともにチケットの一般発売は6月10日(土)より開始となる。また一般発売に先駆けて、チケットぴあでは先行販売(先着順)を実施。東京公演は5月23日(火)より6月10日(土)まで、大阪公演は5月22日(月)より5月30日(火)まで受付。
2017年05月22日劇団四季のミュージカル「オペラ座の怪人」が4月29日、横浜・KAAT神奈川芸術劇場<ホール>での公演で日本初演から29周年を迎え、オペラ座支配人コンビ、ムッシュー・アンドレ役の増田守人とムッシュー・フィルマン役の青木朗が感謝の挨拶を述べた。仏作家ガストン・ルルーの同名小説を基にしたミュージカル「オペラ座の怪人」は、世界で最も有名なミュージカルの1つ。パリ・オペラ座の地下に棲み、歌姫クリスティーヌに恋をする怪人。その彼の悲しいまでの愛の様が、「キャッツ」「エビータ」など傑作ミュージカルを生み出してきたアンドリュー・ロイド=ウェバーの巧みな旋律によって紡がれていく。1986年10月9日、ロンドン・ウェストエンドで初演されて以来、これまで世界35か国、164都市、14言語以上で上演され、その総観客動員数は1億4,000万人以上。現在、“ミュージカルのメッカ”ブロードウェイにおいて自らが保持する最多観客動員、最多上演回数、最長ロングランの記録を塗り替えており、「世界で最も多くの人が観たミュージカル」といわれている。2004年には、怪人をジェラルド・バトラー、クリスティーヌをエミー・ロッサムが演じて映画化された。日本での同作の初演は、1988年4月29日の東京・日生劇場。以来、全国10都市で上演を重ね、総公演回数は6,764回、観客総動員数は669万人(2017年4月29日公演終了時点)におよび、「ライオンキング」「キャッツ」に次ぐ国内第3位を誇る。この日、昼公演時のカーテンコールでは、出演者を代表してパリ・オペラ座の支配人コンビ、ムッシュー・アンドレ役の増田さんと、ムッシュー・フィルマン役の青木さんが感謝のコメントをファンに向けて送った。なお、現在上演中の横浜公演は8月13日(日)まで。その後、9月14日(木)からは広島、12月からは京都での公演が決定している。■ムッシュー・アンドレ役/増田 守人本日は、ご来場いただき誠にありがとうございます。『オペラ座の怪人』は本日、日本上演29周年を迎えました。1988年の東京初演以来、全国10都市で上演。総公演回数は6,763回、のべ669万人ものお客様にご来場いただきました。これもひとえに、お客様の温かいご支援の賜物と、出演者・スタッフ一同心より御礼申し上げます。■ムッシュー・フィルマン役/青木 朗これからも皆様にこの作品の感動をお届けできるよう、精一杯努力して参ります。今後とも『オペラ座の怪人』により一層のご声援を賜りますよう、お願い申し上げます。本日は誠にありがとうございました。ミュージカル「オペラ座の怪人」横浜公演は8月13日(日)までKAAT神奈川芸術劇場<ホール>にて上演中。(text:cinemacafe.net)
2017年05月01日日生劇場で6月に上演される、NISSAY OPERA『ラ・ボエーム』。公演前に無料で様々なレクチャーが行われるのも、NISSAY OPERAの魅力だ。3月25日の「音楽レクチャー」には、本番でタクトを振る指揮者の園田隆一郎と、作曲家の加羽沢美濃が登壇し、122人の来場者の前で2時間以上、熱いトークを繰り広げた。オペラ「ラ・ボエーム」 全4幕 チケット情報レクチャーの最初のテーマは “音楽から読み解く季節感や時間”。加羽沢はこの日の季節と場所と時刻、つまり「春、日生劇場、14時」をテーマにピアノを即興演奏してみせる。「昼下がりでしょう?劇場の格調と爽やかさが感じられるでしょう?でももし夜だったら……?」と、再びピアノに向かう加羽沢。今度はムーディで暗い煌めきを放つ音が広がった。「では『ラ・ボエーム』ではどうでしょうか?」こうして話題は『ラ・ボエーム』1幕冒頭、すなわちクリスマスイブの夕方、パリの屋根裏部屋へ。その季節感や情景描写として作曲家プッチーニが施した工夫を、二人が解き明かしていく。本作冒頭は16分休符のあと、コントラバスの半音階による音型で始まる。園田がピアノで演奏した上で言う。「この最初の休符に、独特の緊張感があって難しいんです。しかも、指揮者から一番遠くにいるコントラバスに指示を伝えなければなりません」。この冒頭が半音階でなかったら、あるいは速度が違ったら、どのような印象になるか?といった実演も。緊迫感溢れるこの半音階の後に全音階の平和な音楽が流れ、対比を作っているのも特長だと、二人は語った。さらに、音楽が表す登場人物達の性格や物語など、幅広い話が展開。清純で病弱なヒロイン、ミミのアリアについて「楽器も少なく、リズムにもキツさがなく、柔らかい。打算がなく夢を持つミミの性格が表れている」と言う園田に対し、加羽沢が「このアリアにはミミちゃんのしたたかさが顕われているんです」。平和な音型に突如ファのシャープが入り、続いて気まぐれに音が飛んだり、歌の下でオーケストラがシンコペーションによる音を奏でたりと、“男心をくすぐる”工夫が盛り込まれていることが詳らかにされたのだった。このほか、クイズあり歌ありリコーダー演奏あり……と、豊富な知識とユーモア溢れる趣向で終始、会場を沸かせた二人。「オペラには、難しい・敷居が高いといったイメージもありますが、やっていることは分かり易い恋愛だったり、脇の甘い男が出てきたり(笑)。それが音楽にも表れている点に注目して、本番も聴いていただきたいですね」(加羽沢)「歌手の良し悪しやビジュアルだけではなく、音も楽しんでいただきたい。この作品は、神様や王侯貴族ではなく、貧しい若者達の物語ですし、テンポ感含め、今の人達にも共感していただける世界だと思います」(園田)なお、この公演はバリトン歌手の宮本益光が書き下ろす日本語訳詞での上演。日本語での歌により、作品世界が一層リアルに鮮やかに広がることも期待される。公演は6月18日(日)、24日(土)日生劇場にて。取材・文:高橋彩子
2017年04月03日東京都交響楽団の4月の定期演奏会で、ジョン・アダムズの《シェへラザード.2》が日本初演となる。2015年3月26日、今回ソリストをつとめるリーラ・ジョセフォウィッツのヴァイオリン、アラン・ギルバート指揮のニューヨーク・フィルハーモニックで初演された作品だ。この新しい作品について、ギルバートに話を聞いた。「ジョンの作品をずっと指揮しているので、彼の作品の進化を実地に体感しています。その変化のなかでも、《シェヘラザード.2》はかなり変ってきたところにあるように思えます。近年のジョンの作品はオペラから影響を受けており、本作には言葉こそついていないけれど、ドラマティックなストーリーはしっかり伝わってきます。主役はヴァイオリンですが、バック・ストーリーがあります。そして、ほかの作品よりロマンティックな仕上がりです。ジョンは年齢とともに、ハートでつくるようになってきている、とわたしはおもっているんですね。ニューヨーク初演はスタンディング・オヴェーションになって、とても好評でした。ヴァイオリニストは暗譜で弾き、目が離せませんでしたし。オーケストラもとても楽しんでいました。難しいけれど、満足感がある。偉大なものに接したというのがみんなのなかにあるんです。宝物をいただいたような、ね」作曲者は、自作について述べるなか、『千一夜物語』のなかに描かれた女性と現在の状況とを重ねている。現在のアメリカ合衆国でイスラム=アラブ世界の物語について言及することも、そこには意識されているようにみえる。「ジョンは政治的なホットなテーマをとりあげることを躊躇ったりはしません。ですが、わたしはそうしたことより、『千一夜物語』はある特定の文化から生まれてきたのは確かだけれど、もっとそれを超えるようなテーマがここにはある、と思っています」オーケストラを存分にひびかせ、指揮者や演奏家にも演奏する喜びを、また聴くことの醍醐味を感じさせる作曲家との評価がある一方、ジョン・アダムズの音楽は日本であまり演奏されていない。「ジョンの音楽はつねにレヴェルは高いけれど、ずいぶん変ってきました。変化しているけれど、その声はしっかり伝わってきます。交響曲的なフォルムや色彩感を大切にしているところは変りません。日本のオケはプログラムについては保守的な面があるけれど、ジョン・アダムズの音楽は弾きやすく聴きやすい、そして新鮮な音楽です。新しいけれどもみんなが理解できる言葉で書かれているのです」東京都交響楽団による《シェへラザード.2》は4月17日(月)東京文化会館 大ホール、4月18日(火)東京オペラシティコンサートホール:タケミツメモリアルにて。文/小沼 純一(音楽・文芸批評/早稲田大学教授)
2017年03月27日世界の一流カンパニーとして人気を二分するパリ・オペラ座バレエ団、英国ロイヤル・バレエ団のスターたちが集い、それぞれの珠玉のレパートリー、さらには彼らがひとつの作品で共演する合同プログラムを上演するオペラ座&ロイヤル夢の共演〈バレエ・スプリーム〉が、この夏、実現する。3月上旬のパリ・オペラ座バレエ団日本公演期間中、出演者たちがプレス懇談会に出席し、公演への抱負を語った。オペラ座&ロイヤル 夢の競演 〈バレエ・スプリーム〉チケット情報公演に参加する精鋭ダンサーたちとともに現れたのは、パリ・オペラ座チームのスーパーバイザーを務めるオレリー・デュポン(パリ・オペラ座バレエ団芸術監督)。「これはとても野心的なプロジェクト。英国ロイヤル・バレエ団は素晴らしい、豊かなバレエ団で、日本のお客さんにふたつの異なった流派を見比べていただける素晴らしい機会になる」と、自身が選りすぐったダンサーたちを紹介した。パリ・オペラ座バレエ団の最高位、エトワールとして日本公演初日の主役を担ったマチアス・エイマンとミリアム・ウルド=ブラームをはじめ、昨年暮にエトワールに任命されたばかりのレオノール・ボラックとジェルマン・ルーヴェ、懇談会前夜にエトワールに任命され、会場を興奮の渦に巻き込んだユーゴ・マルシャン、デュポンが「素晴らしいショーマン」と太鼓判を押すプルミエ・ダンスールのフランソワ・アリュ。彼らが踊るのは、オペラ座自慢のレパートリーの数々だ。エイマンとウルド=ブラームがAプロで踊るのは、ヌレエフ版『白鳥の湖』第2幕のパ・ド・ドゥ。「新世代のエトワールたちと共演できることは、貴重な経験」(エイマン)、「皆さんに舞台をお見せできるのは幸せ」(ウルド=ブラーム)とふたりは話す。ボラックとルーヴェも、同『白鳥の湖』より第3幕のパ・ド・トロワをAプロで踊る。ともにエトワール任命の日に踊った作品だけに、その思いは特別のよう。「踊れることが楽しみ。ジェルマンは完璧なパートナーです」(ボラック)、「彼女は、私を物語世界へ導いてくれる頼もしいダンサー」(ルーヴェ)。アリュがBプロで踊る『レ・ブルジョワ』(コーウェンベルグ振付)は、テクニックと芝居心が求められるユニークな作品。「個性を発揮できると思います」と自信をのぞかせる。マルシャンが、Bプロの『グラン・パ・クラシック』(クゾフスキー振付)他で共演するのは、日本出身初のプルミエール・ダンスーズとして話題のオニール・八菜。「彼女とともにフランスのバレエを国際的に広めることができ、嬉しい」とコメント。「素晴らしいコラボレーションとなる」と、デュポンも新たな試みへの期待感に胸を躍らせているようだ。公演は7月26日(水)から30日(日)まで、東京・文京シビックホール 大ホールにて。チケットぴあではインターネット先行を3月30日(木)午前10時より受付。取材・文:加藤智子
2017年03月24日劇団四季のミュージカル『オペラ座の怪人』が、この春、KAAT 神奈川芸術劇場 ホールにて上演される。首都圏での同作品の上演は約4年ぶり。3月10日、その稽古場の様子が報道陣に公開されるとともに、出演予定キャストの佐野正幸、山本紗衣による取材会が開催された。劇団四季『オペラ座の怪人』チケット情報『オペラ座の怪人』はパリ・オペラ座の地下に棲み、歌姫クリスティーヌに恋をする“怪人”の悲しい愛の姿を描くミュージカル。この日の稽古場で披露されたのは3場面で、第一幕の劇中劇『ハンニバル』のリハーサルシーン、クリスティーヌがソプラノで歌い上げる『スィンク・オブ・ミー』、第二幕の名曲『ザ・ポイント・オブ・ノーリターン』のシーンだ。劇団四季では本作の上演を1988年から重ねているだけあり、稽古場とはいえすでにかなりの完成度の高さで、俳優たちは充実の演技を見せる。劇中劇のリハーサルシーンは、巨匠アンドリュー・ロイド=ウェバーによるオペラ風のデコラティブな楽曲も印象的だが、バックステージの慌しい雰囲気も見どころのひとつ。舞台の端に至るまで、俳優たちそれぞれが細かい芝居を見せていて興味深く面白い。演出スーパーバイザーを務める俳優、北澤裕輔も「『ハンニバル』が終わったあとの皆さんの反応、リアクションが素晴らしかったです。引き続き、そのままで」とコメント。また怪人とクリスティーヌのデュエット『ザ・ポイント・オブ・ノーリターン』では、怪人役を長く務めている俳優・佐野正幸が、クリスティーヌに恋焦がれ、また自らの外見にコンプレックスを持つ怪人の苦しい胸のうちを、繊細な演技と迫力の歌声で圧倒していた。取材会ではまず佐野が「今回はやはり、KAATという劇場でやるということが目玉」、山本が「私自身、いま神奈川県に住んでおり、この劇団も横浜の劇団。私の地元でもあり、劇団の地元である神奈川で公演ができるのが楽しみ」と今回の横浜公演への期待をそれぞれ語る。さらに佐野は「今回のキャストは作品経験者が多く、しかも稽古期間がいつもより長い。また、本番ではなかなか見ることのできない、他の人の場面も見られるので、貴重な経験が出来ている」と、万全の体制で横浜公演に向けて準備を重ねていることを明かした。佐野は怪人役を務めるようになってから11年目。「1988年の初演、最初の公演はアンサンブルとして立っていました。その後色々な役を経験して、ファントムとしても11年。僕の劇団四季の人生のほとんどが『オペラ座の怪人』と共にある。昨年1年間は『美女と野獣』の野獣役などを主に演じており、1年間ファントム役からは離れていたので、自分でも今、新鮮に演じられています。1年のあいだに別の役で培った経験が、どう11年目のファントムに出てくるか、僕自身も楽しみにしています」と佐野。劇団四季がお膝元・横浜で、気合い十分に挑む『オペラ座の怪人』、お楽しみに。公演はKAAT 神奈川芸術劇場 ホールにて、3月25日(土)開幕。チケットは発売中。
2017年03月15日『オテロ』は圧倒的な作品だ。素晴らしい演奏で接すると、あっという間に2時間余が過ぎ去る。ドラマティックな音楽に吹き飛ばされ、椅子の背にはりついたようになって、呆然としているうちに公演が終わった、そんな経験をさせてくれるオペラはめったにない。『オテロ』は間違いなく、その希少な名作のひとつである。新国立劇場オペラ『オテロ』チケット情報「オペラ王」とも呼ばれるイタリア・オペラの巨匠ジュゼッペ・ヴェルディ(1813ー1901年)は、本作で、彼がめざした音楽とドラマの一体化をきわめた。過去も現在も『オテロ』に名演が目白押しなのは、作品が優れているからに他ならない。原作はシェイクスピアの有名な戯曲『オセロー』。ヴェルディにとってシェイクスピアは「師」だった。彼はシェイクスピアの描いた人間の真実を、人間の普遍的な感情を、心の光と闇をえぐりたいと望んだ。シェイクスピアはヴェルディの神話だった。ほぼ半世紀にわたるオペラ作曲家のキャリアの頂点、74歳!にして書き上げた『オテロ』は、彼が本懐を遂げた作品である。輝かしくも雄弁な音楽で一気呵成に描かれる、英雄の愛と栄光と没落。切なく、愚かで、でもだからこそ愛すべき人間という存在。ヴェルディの音楽はそこに迫り、私たちの胸を打つ。人間とはなにか、という究極の問いとともに。強靭な声と内面的な感情表現が要求されるオペラだけに、キャスティングは簡単ではない。だが今回の新国立劇場公演『オテロ』のキャストはとびきりだ。オテロを歌うカルロ・ヴェントレは、近年本作で絶賛を博しているイタリアのドラマティック・テノール。「服が合うように、オテロ役は今の自分にぴったり」だと抱負を語る。愛妻デスデモナを歌うセレーナ・ファルノッキアは、イタリアが誇るリリックなソプラノで、品格のある声と演技が魅力。ヤーゴ役のウラディーミル・ストヤノフは、世界中の歌劇場でヴェルディのドラマティックなバリトン役にひっぱりだこのスター歌手だ。スタイリッシュな声と劇的な表現力で、説得力のある演唱を繰り広げる。彼らを束ねる指揮は、これもウィーンをはじめ世界中の歌劇場でイタリア・オペラの大作を任されているイタリアの名匠パオロ・カリニャーニ。まさに「役者は揃った!」と言いたくなる豪華な顔ぶれだ。マリオ・マルトーネによる演出は、舞台をヴェネツィアに設定し、50トン!の水を使ってヴェネツィアの運河を再現。迷宮のような街並みとオテロの心の迷宮が重なり合う。人物たちの感情を映し出す「水」の扱いは秀逸で、「愛」と「死」の舞台となる寝室の場面も美しい。新国立劇場が誇る名プロダクションである。4月9日(日)から22日(土)まで、東京・ 新国立劇場 オペラパレスにて。文:加藤浩子
2017年03月13日この秋に開場20周年を控える新国立劇場で、新制作上演のドニゼッティ『ルチア』(3月14日初日)の制作発表会見が行なわれた。「久しぶりのベルカント・オペラ。キャスティングには相当力を入れた」と芸術監督の飯守泰次郎も意気込むように、指揮者、演出含め、充実布陣が整った注目公演だ。新国立劇場オペラ『ルチア』チケット情報『ルチア』は、19世紀前半に隆盛した、技巧的な歌唱法を駆使する「ベルカント・オペラ」の最高傑作。敵対する一族の当主エドガルドと愛し合うルチアは、兄エンリーコの策略によってその仲を引き裂かれ、別の男との政略結婚を強要される。その婚礼の夜、悲しみのあまり精神に異常をきたしたルチアは新郎を刺し殺し、自らも息絶える…。最大の見どころは錯乱したルチアの歌う「狂乱の場」だ。十数分に及ぶ長丁場にコロラトゥーラの歌唱技術が最高度に散りばめられ、ルチア歌手の真価が問われる。今回この難役を歌うのが、「ベルカントの新女王」の呼び声も高いオルガ・ペレチャッコ=マリオッティ。ペーザロのロッシーニ音楽祭をはじめベルカント・オペラで高い評価を得て、現在欧米の歌劇場で引っ張りだこ。スター街道をばく進中の美貌のソプラノだ。2010年にラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンで来日しているが、彼女の躍進が始まったのがちょうどその頃から。今や最も注目されるソプラノとして帰ってきた彼女の出演は、今シーズンの新国立劇場の目玉のひとつと言っていい。「大好きな日本で、新しいルチアを作り上げることができて大変うれしい。劇場も完璧。初日にお会いしましょう!」と流暢なイタリア語で語った。圧倒的な「狂乱の場」にどうしても話題が集中しがちだが、オペラの最後に、物語を完結させる重要なアリアが与えられたエドガルド役のリリック・テノール、イスマエル・ジョルディ、憎まれ役としての強い存在感が必要なエンリーコ役のバリトン、アルトゥール・ルチンスキーも、同役を得意とする実力派。オペラ通なら特に、「ベルカント・オペラの大使」を自認する指揮者ジャンパオロ・ビザンティのタクトにも注目。会見でも「ベルカント・オペラは往々にして表面的にしか理解されていない」と止まらない熱弁をふるった「ベルカント愛」が、その真の姿を引き出してくれるにちがいない。演出はモンテカルロ歌劇場総監督のジャン=ルイ・グリンダ。新国立劇場オペラ『ルチア』は3月14日(火)・18日(土)・20日(月・祝)・23日(木)・26日(日)の5公演。取材・文:宮本明
2017年03月07日日本のオペラ史の概念をくつがえす、度肝を抜くような楽しいオペラが誕生しそうだ。オペラ創作に情熱を注ぐ作曲家・三枝成彰の最新オペラ《狂おしき真夏の一日》の制作発表会見が、2月28日、都内で行なわれた。2013年の《KAMIKAZE-神風-》以来となるオペラ8作目は、三枝にとって初のオペラ・ブッファ。つまり喜劇。「モーツァルト《フィガロの結婚》へのオマージュ」という副題が添えられているとおり、《フィガロの結婚》が下敷きとなっていて、冷え切った関係の熟年夫婦を軸に、その周囲のひと癖もふた癖もあるくせ者たちが絡んで、複雑で色っぽい恋愛模様が描かれる。注目は豪華な顔ぶれの制作陣。オリジナル台本を書き下ろしたのは、大のオペラ・ファンでもある直木賞作家の林真理子。そして演出は、これがオペラ初演出となる秋元康。いうまでもなく、AKB48などを仕掛ける大御所プロデューサーだ。「一度でいいからオペラを書いてみたいという夢が叶った。でも、三枝さんから言われたのは、とにかくゲイと裸とレズを出せ。そして最後はみんなが、『生きてるっていいな』と笑って帰れるような物語を書くようにと。それならばと、物語は男性同士の恋人二人が海水パンツ姿で海から出てくるシーンで始まる」(林真理子)「オペラのよくわかってない人間が入って、今までにないものを創れ、壊していいんだと。いい意味で何か刺激を与えてくれということを頼まれたので、発想だけでも面白いことができたらいい」(秋元康)日本の文学界、エンタテインメント界を牽引する大物ふたりが関わることで、オペラ界に新しい風が吹く。そんな期待が膨らむ。キャストにも人気歌手たちが集まった。《フィガロの結婚》の伯爵と伯爵夫人に当たる、医師の大石夫妻を歌うのは大島幾雄と佐藤しのぶ。その長男夫婦にジョン・健・ヌッツォと小川里美(ビキニの水着シーンがあるらしい)。ゲイの次男に大山大輔、その恋人がカウンターテナーの村松稔之。大石の愛人で看護師の小林沙羅や、執事の坂本朱、家政婦の小村知帆も加わわりドタバタの恋愛喜劇を繰り広げる。三枝が信頼を寄せる実力者たちが揃ったオールスター・キャストだ。三枝の音楽を知り尽くした指揮者・大友直人がタクトを握る。公演は10月27日(金)・28日(土)・29日(日)・31日(火)、東京・上野の東京文化会館にて。秋のオペラ・シーンの大きな話題となるはず。これは観ないと!取材・文:宮本明
2017年03月01日パリ・オペラ座バレエ団が実に15回目となる日本公演のために来日。開幕を前に2月27日、都内で記者会見が行われ、ステファン・リスナー総裁をはじめ、マチアス・エイマン、昨年末にエトワールに昇格したばかりのレオノール・ボラックらが出席し、意気込みを語った。パリ・オペラ座バレエ団 チケット情報カリスマエトワールとして活躍したオレリー・デュポンが昨秋、芸術監督に就任。今回の来日公演では、ロマンティック・バレエの代表作と言える「ラ・シルフィード」、さらに「グラン・ガラ」では、「テーマとヴァリエーション」「アザー・ダンス」、そしてバンジャミン・ミルピエによる「ダフニスとクロエ」が上演される。リスナー総裁は冒頭、毎回の日本のファンの温かい歓迎への感謝を口にする。デュポン就任後、初の来日公演となるが「古典は新作に栄養を与え、新作は古典に刺激を与えるもの。歴史を大切にしつつ、現代性を表現することがオペラ座の芸術監督には求められるのです」と語り、特に「ダフニスとクロエ」は1年ほど前に作られたフレッシュな作品。現代的な美術を含めて注目してほしい」と語った。人気エトワールのマチアス・エイマンは「ラ・シルフィード」「ダフニスとクロエ」の両公演に出演するが「『ラ・シルフィード』はロマンティック・バレエの代表作であり、オペラ座のレパートリー。私にとっては演じるのは2度目ですが、再演においても常に探求の余地があり、新たなパートナーを得て再発見をしていくべきものです。特に日本はバレエを愛する人々が多く、熱意を持って迎え入れてくださるので、こうしてみなさんの前で踊れること嬉しく思っています」と語る。これまで同じダンサーとして向き合ってきたデュポンと芸術監督とエトワールという関係で向き合うことについて「彼女の選択を信頼しています。彼女は“継承”と“共有”を目的とし、すでに自分の場所を見つけたと思います。彼女の好奇心が今回も大いに発揮されることと思います」と深い信頼をうかがわせた。レオノール・ボラックは12月31日にエトワールに昇格したばかりの“新星”。「エトワールとしての第一歩を日本で踏み出せること、12月31日の公演でも一緒に踊ったマチアスと今回もパートナーを組めることに、より強い感動を覚えています。エトワールになったということを考え過ぎれば、それは緊張と恐怖の元となるので、プリミエールの頃からやってきたことの継続を心掛けて踊りたいと思います」と意気込みを語っていた。パリ・オペラ座バレエ団2017日本公演は3月2日(木)開幕。撮影・取材・文:黒豆直樹
2017年02月28日2月の二期会公演『トスカ』(プッチーニ)は、1900年ローマ歌劇場での世界初演時のデザイン画に基づいて忠実に再現された舞台装置と衣装が大きな話題を集めている。その注目公演で、トスカの恋人カヴァラドッシ役を歌う城宏憲。1年前の『イル・トロヴァトーレ』で、急遽の代役でマンリーコを歌って鮮やかな二期会デビューを飾り、一躍期待の若手テノールのトップ集団に躍り出た。二期会公演『トスカ』チケット情報「カヴァラドッシは初役ですが、アリアはコンクールなどでも何度も歌っているので自分としては身体になじんでいる、すごく距離の近い役。でも同時に、現代のテノールにとって、とても危険な役でもあります。現代は、より細かい演技が求められる時代。たとえば拷問の苦しみを想像するだけでも筋肉が硬くなりますよね。苦悩の表情の演技に引っ張られて、声も過度にドラマティックになる可能性がある。そうなると喉への負担を軽視できません。昔のように、オーバーなリアクションで気持ちよく歌うという解釈では、現代の『トスカ』は乗り切れないと思います」繊細さと力強さを併せ持つ、リリコ・スピントの役柄を得意とする。「イタリアのリリコ・スピントというテノールは、スピント寄りのリリコというよりは、両者を兼ね備えていたのではないかと思います。カヴァラドッシはまさに、役柄としても声楽的にも、ドルチェの甘い部分とエネルギッシュでヒロイックな部分が両立しています。そのふたつを、歌い分けるというよりは、行き来できるように演奏したいと思っています。エネルギッシュなだけで歌ってしまうと、優しい部分で声が落ちる。逆に、軽く歌ってしまうと、プッチーニの求めた壮大なオーケストラの波に飲まれてしまいます」テノールの醍醐味とも言えるハイC(高いドの音)には強いこだわりを持っている。「師匠のアルベルト・クピード先生からはよく、財布にいつもハイCを入れておけと言われていました。財布にシやドが入っているかどうかで、受けられる仕事が増えますから。フィギュア・スケートで言えば4回転ジャンプのようなもの。イタリアで師匠と1年以上発声だけを勉強して、それを手に入れることができたと思います」言葉を話すニュアンスで歌いたいというその声は実に自然で、無理な作り込みを感じさせない。1984年生まれの32歳。「イタリア人のように歌う、いや、イタリア人を超えなければいけない」。その視線は、洋々たる新たな地平を見据えている。公演は2月15日(水)から19日(日)まで東京文化会館 大ホールにて。取材・文:宮本明
2017年02月08日2月の二期会『トスカ』(プッチーニ)はローマ歌劇場との提携公演。1900年に同劇場で初演された際の舞台美術を忠実に再現した、大注目のプロダクションだ。公演に先がけ、演出のアレッサンドロ・タレヴィがその舞台づくりを語るイベントが催された(1月21日/東京・九段のイタリア文化会館アニェッリホール)。東京二期会オペラ劇場 G.プッチーニ『トスカ』 チケット情報タレヴィは南アフリカのヨハネスブルク生まれ。同地と、その後ロンドンのロイヤル・アカデミーで音楽を学び、2005年にロンドンのサドラーズウェルズ劇場で演出家デビュー以来、多くのオペラ賞を獲得している気鋭のクリエイターだ。今回の『トスカ』は、2015年3月にローマ歌劇場で新制作された舞台。イタリア国外に持ち出されるのはこれが初めて。上述のように、初演時の美術を再現しているのだが、それが可能だったのは、当時美術を担当したアドルフ・ホーエンシュタインの描いたスケッチが残っていたから。すべての幕の舞台装置はもちろん、衣裳についても、主役級だけでなく合唱まですべての役のスケッチが保存されており、そこには生地やボタンの素材などの細かい指示も書き込まれているのだという。タレヴィは言う。「長い年月の間に作られてきたさまざまな伝統を取り払うことができた」つまり、100年以上前の舞台に戻ることで、逆に新たに見えてきたものもあるのだという。例として挙げていたのが、豊かな色彩。たとえば第1幕の教会は、現代では荘厳に重々しく描かれるが、聖歌隊の衣裳を中心に、スケッチは軽やかな明るい光に溢れていた。タレヴィ自身、全員が衣裳を着けた最初の舞台稽古で、「まるで修復されたシスティーナ礼拝堂を見るようだ」と驚いたらしい。しかし、その明るさこそが、プッチーニの音楽にふさわしいという。オリジナルに戻ったのは美術だけではない。タレヴィは、プッチーニがスコアに細かく書き込んだト書も忠実に再現しようと試みたのだそう。100年の間に多くの歌手や演出家たちが無視するようになったト書も少なくなく、結果的に取捨選択はしたものの、プッチーニが舞台上の動きも実によく考えて作曲したことに、あらためて気づかされたという。私たちもまた、オペラ史に刻まれた名作の原風景を目の当たりにする機会になりそうだ。公演は2月15日(水)・16日(木)・18日(土)・19日(日)の4日間(15日(水)のみ18時30分開演、他は14時開演)。いずれも東京・上野の東京文化会館大ホールで。取材・文:宮本明
2017年02月02日クリスマス目前の12月21日、東京・有楽町の日生劇場。クリスマスツリーの飾られた1階ロビーに華やかな歌声が響いた。「カフェ・モミュスへようこそ~《ラ・ボエーム》クリスマス・コンサート」。2017年6月に上演されるNISSAY OPERA《ラ・ボエーム》のプレ・イベント(無料公演)だ。ピアノと司会には本公演の指揮者・園田隆一郎。ミミ役の北原瑠美(ソプラノ)、ムゼッタ役の柴田紗貴子(ソプラノ)、ロドルフォ役の樋口達哉(テノール)、コッリーネ役のデニス・ビシュニャ(バス)が、おなじみの名アリアを披露した。【チケット情報はこちら】しかしこの日の演奏は、聴きなじんだ響きとは少し違う。歌詞が日本語なのだ。そう、6月の《ラ・ボエーム》は日本語訳詞による上演というのが大きな注目ポイントだ。現在主流の字幕付き原語上演が日本で始まったのは1980年代後半のこと。それまでは字幕そのものがなく、日本語上演も一般的だった。リアルタイムではそれに接していない1976年生まれの園田は、「われわれ世代には逆に新しいチャレンジ。イタリア語で歌うのとは違う化学反応を感じる」と語る。言葉の意味がダイレクトに伝わることの意味はもちろん大きいが、イタリア語のイントネーションで書かれた旋律に日本語を当てるのは簡単ではない。園田の強いリクエストもあって訳詞を担当したのが、人気バリトン歌手でもある宮本益光。オペラの日本語訳詞の研究で博士号を取得し、実際にすでに多くのオペラの訳詞・字幕を手がけている。歌手としての経験も存分に生きているのだろう、この日出演した歌い手たちも「とてもきれいな日本語」「母音の一致など、イタリア語と比べても違和感がない」と信頼する訳詞が生まれた。この日歌われたのはアリアだけだったが、オペラ全編がどんな日本語をまとって姿を現すのか、本公演への期待も高まる。コンサート後半には出演者全員によるクリスマス・ソングもあり、イヴに始まる《ラ・ボエーム》の物語にふさわしいイベントとなった。抽選で公演のペア・チケットをゲットした幸運なお客様も。NISSAY OPERA《ラ・ボエーム》は6月18日(日)と24日(土)の2公演。注目の演出家・伊香修吾のプロダクションも大きな楽しみだ。なお、3月と4月には事前レクチャーも用意されているので、みっちり予習してから観たい人はそちらもぜひ(詳しくは下記関連リンクより)。なお、チケットぴあでは1月17日(火)午前10時より、インターネット先着先行「座席選択プリセール」、S席と本公演にちなんだディナーがセットになったインターネット先着先行「春秋ツギハギ当日ディナー付受付」を実施。取材・文:宮本明
2017年01月16日新国立劇場の2017/2018シーズンのラインアップ発表会が1月12日に同劇場で行われた。新国立劇場オペラのチケット情報オペラ芸術監督の任期最終年を迎える飯守泰次郎は「4年間にわたる皆さまの力強い応援に深く感謝しています」と挨拶。「20周年にふさわしく、豪華で多彩」というラインアップは全10演目。新制作は3本(うち日本初演は1本)、再演7本。うち2演目は、開場20周年を記念した特別公演として上演される。シーズンオープニングを飾るのは、新制作の1本目、ワーグナー作曲『神々の黄昏』。飯守芸術監督の任期最初のシーズンより毎年1作品ずつ上演してきた「ニーベルングの指環」四部作がいよいよ完結。前3作品と同様、ドイツの名演出家ゲッツ・フリードリヒによるプロダクション。指揮は飯守芸術監督が務める。新制作の2本目は日本人作品。「国立のオペラハウスで日本人作品を上演する重要さ」を強調する飯守芸術監督が「念願だった」と語る細川俊夫作曲『松風』。音楽と舞踊、声楽が一体となったコレオグラフィック・オペラである本作は、2011年にベルギー・モネ劇場で初演。すでに欧州では絶賛を博しており、待望の日本初演の実現となる。作曲家自身が最も信頼を寄せるサシャ・ヴァルツの演出・振付による初演プロダクションを上演する。新制作の3本目は、ベートーヴェン唯一のオペラ『フィデリオ』。演出は、リヒャルト・ワーグナーのひ孫で、現バイロイト音楽祭総監督カタリーナ・ワーグナー。本公演の指揮を務め、長年バイロイト音楽祭で経験を積んだ飯守芸術監督とタッグを組む。ベートーヴェンの深い精神性と高貴な理想を表現した本作は、開場20周年記念特別公演にふさわしい作品といえる。その他、再演の演目は、『椿姫』(ヴェルディ作曲)、『ばらの騎士』(R.シュトラウス作曲)、『こうもり』(ヨハン・シュトラウス作曲)、『ホフマン物語』(オッフェンバック作曲)、『愛の妙薬』(ドニゼッティ作曲)、『トスカ』(プッチーニ作曲)。2018年4月には、開場20周年記念特別公演のもう1作『アイーダ』(ヴェルディ作曲)を上演。巨匠フランコ・ゼッフィレッリが演出・美術・衣装を手がけ、これまでも人気を博してきたプロダクションがメモリアルイヤーに華を添える。■新国立劇場開場20周年記念2017/2018シーズン オペラ ラインアップ10月神々の黄昏 (楽劇「ニーベルングの指環」第3日) 【新制作】11月椿姫11~12月ばらの騎士1月こうもり2月松風 【新制作・日本初演】2~3月ホフマン物語3月愛の妙薬4月アイーダ【新国立劇場開場20周年記念特別公演】5~6月フィデリオ 【新制作/新国立劇場開場20周年記念特別公演】7月トスカ
2017年01月13日2017年1月から2月にかけて全国4都市で5公演が上演される「全国共同制作プロジェクト」の歌劇《蝶々夫人》(プッチーニ作曲)の発表会見が行なわれ、指揮者・演出家・主要キャストが顔を揃えた(12月13日・東京芸術劇場)。同プロジェクトはコンサートホールでのセミステージ形式のオペラ上演ながら、昨年全国10都市で上演された野田秀樹演出のモーツァルト《フィガロの結婚》が大きな話題を呼んだように、従来の演奏会形式上演の枠を超えた新たな劇場空間の在り方を示すプロダクションとしても注目されている。今回は、俳優・演出家の笈田ヨシが日本で初めてオペラ演出を手がける。ヨーロッパを拠点に活動する笈田は、ピーター・ブルックの多くの舞台に出演してきた俳優であり、演出家として演劇、オペラなどを手がける、世界的な演劇人だ。今回の演出について次のように語った。「プッチーニが意図した重要な要素のひとつはエキゾティシズム。それを日本でやってもエキゾティックでもなんでもないので、プッチーニの望んだ異国情緒は表現できない。その代わり、日本人が観ても、絵空事ではなくて本当に起こったことであると信じられるお話にしたい。外面的な風俗ではなく、人間の真実を描くこと。日本人とアメリカ人の心持ち、その行き違いを表現したい」オペラの題材は豊かな国と貧しい国との間に今も存在する普遍的な問題だ。「豊かな国の男たちが貧しい国へ行って女を買う。そういうお金のことではなく、本当の人間関係とはなんだろう。お客さんが現代と照らし合わせて、人間関係、男女関係を考えていただける要素を提供できると思います」とはいえ、難渋な哲学的考察になるわけではないから安心してよさそうだ。「僕はオペラを観るといつも寝ちゃうんですよ(笑)。だから僕が演出する時はせめて、音楽にあまり関心のない人でも楽しめる、面白いものをお観せしたいと思っています」オペラの主役はもちろん蝶々さん。広い声域とドラマティックな表現が要求されるわりに、役柄の設定としては純真でいたいけな十代の少女という難しい役を演じるのは、中嶋彰子と小川里美。美しい容姿を併せ持つふたりのダブルキャストだ。アメリカ人女優サラ・マクドナルドがケイト役で「オペラ・デビュー」を果たすのも話題になりそう。公演は1月22日(日)金沢、1月26日(木)大阪、2月4日(土)高崎、2月18日(土)・19日(日)東京で。取材・文:宮本明
2016年12月15日