これは筆者が2軒目に購入した住まい・小さな一戸建てを売却したストーリーです。前々回、前回に続いて、今回もその一戸建てを購入した約12年前の経緯からお話しています。■ 概略だけの物件情報だけど、運命の予感?実際に見つけた画面は、たったこれだけ。立川市の1,680万円の売地でした。まず、2,000万円以下で立川駅から徒歩圏というのが非常に珍しかった。いえ、見たのは初めてでした。この物件の土地は南向きで、古家が付いているらしい。もしこの建物をリフォームできれば、無謀な目標予算2,000万円も夢ではないかもしれない!真夏日、これを最後の物件と夫と約束して見に行ったところ……、そこには簡素な2階建て・昭和な木造住宅が建っていました。見た瞬間「悪くない、まだ十分に使える建物だ」と思いました。とはいえ、内部の状態は著しく汚れていて間取りも細切れ、外部はごく小さな庭があるだけで、肝心の駐車スペースもありません。それでも「これなら、いえ、これを買いたい」という意志を夫婦共に固められる物件だったのです。その日に申込書を書き、一番手をゲットしました。Good morning / PIXTA(ピクスタ)つまり不動産屋に一番に問い合わせし、見に行ったのが私達だったのです。毎日ネットをチェックし、多くの物件を検討していたからこそ、写真の1枚もない新着情報に対し、即座に行動を起こせたのだと思います。■ 正式購入する前に立ちはだかったこととは?80万円の値引き交渉も通り、価格1,600万円の契約へとコマを進めるのですが……。購入の必須課題、それは住宅ローンを組むこと!Naoaki / PIXTA(ピクスタ)今回は夫でなく、筆者自身に貸してくれる銀行をいくつも当たりましたが、受け付けてくれたのはたったの2行だけ。KazuA / PIXTA(ピクスタ)まずは大手で金利の安い方がよいだろうと、誰でも知っているメガバンクを選んだら、信じられないことが次々に起こりました。一番驚いたのは、審査も通って金銭消費貸借契約、いわゆるローンの契約日。金額はじめ、すべて事前に記入しておいてくださいと言われたので、持参した記入済の契約書を前にし、担当者はまったく悪びれない表情でこう言い放ったのです。「審査にちょっと間違いがありまして、融資金額は100万円下がります。もう一度、ここで契約書を書き直してください」と。あの家を買うためにローンは組みたくても、さすがにこれを鵜呑みにはできませんでした。「今日は契約しません!」と言って引き上げた翌日、上席の方から連絡があり、双方歩み寄って折り合いをつけた後も別の問題が起きてしまい、結局その銀行は、こちらからお断りしました。■ ようやく本格的始動へ審査が降りていたもう一方の金融機関で無事に契約し、物件の引き渡しを受けて合鍵をもらい、夫と二人で玄関を開けた時の嬉しさは、一生忘れないと思います。リノベのプランも、ほぼ決まりつつありました。ごく普通の木造家屋なのに、デザイン性のある階段や吹き抜けをつくり、なんと駐車場もあります!詳しくは次回に。「えーまた続く?いつになったら売却の話になるんだ!?」と思われた方には申し訳ありません。購入やリノベの経緯にも、何か皆さんの参考になる部分があると信じて書いていきますので、続きます。
2019年04月26日これは、筆者が2つ目に購入した住まいの一戸建てを売却したストーリーです。今回も、前回に続き、その一戸建てを購入した約12年前の経緯からお話します。■ 熱はどうにも止まらない?「一戸建て欲しい病」「階段や吹き抜け空間のある一戸建てに、大切な多くの雑貨たちと一緒に住み替えたい!」これが、私達が一戸建てがほしかった一番の理由でした。その他、他にもある数々の理由は前回の記事をご覧ください。物件探しの当初は、土地ばかり探して見ていました。デザイン性のある階段や、吹き抜け・ロフト等にも凝りたいので、その場合ゼロからプランニングする新築が適していると思ったからです。ucchie79 / PIXTA(ピクスタ)狭小住宅ばかり紹介した本も買い漁って、プランやコストを研究しました。■ 設定した条件4つ一戸建てを探すときに、私達が設定した条件は以下の4つでした。閑香 / PIXTA(ピクスタ)土地・建物合わせ2,000万円前半まで(←非常に厳しい)エリアは中央線を第一希望・第二希望で京王線と小田急線その3路線に接続する線も入れて、都心通勤可能な範囲床面積は55平米以上取れればよいhaku / PIXTA(ピクスタ)これら、4つの条件をもとに物件探しを始めたのですが、予想以上に難航してしまい……。■ 出会うのは難アリ物件ばかり!行き詰まる計画平日のうちにくまなく物件をピックアップしておき、休日に車で現地をまわる日々が続きます。駅から遠いテラスハウスの調査・左手前が当時の愛車もともと夫婦共に大の不動産・建築好きなので、物件を見に行くこと自体は苦になりません。しかし1,000万円前後の土地となると、何かしら難のある土地ばかり……例えば、駅から近いけど線路沿いや、道路に挟まれた中洲のような三角形だったり……。リフォーム前提に中古物件も見ましたが、住宅ローンが出にくいテラスハウスや、躯体だけの薄いビルなどばかりでした。こちらの予算に無理があるので、当然の話なんですけどね。少しでも買えそうであれば、多少の難は目をつぶって突き進もうとする筆者に対し、夫は、駅からの距離といった利便性のみならず、環境や雰囲気的な面で気になる点があると、GOサインを出しません。■ 最後の物件は出会いか?別れか?TATSU / PIXTA(ピクスタ)「買う」「買わない」で絶えず話し合っていると、お互い疲れも出始めてきます。そもそも「欲しい病」にかかっていたのは、私だけだったのです。突っ走っている自分が、どうやら夫に時間的にも精神的にも負担をかけてしまっている……。やはり計画に無理があった、ここは一旦延期する方が良いかとなりかけた矢先、それでも習性的にやっていた毎朝のネット検索で、昨日までは無かった新着物件が目に飛び込んできたのです。こ、これは!tomcat / PIXTA(ピクスタ)物件情報は町の不動産屋さんが出したごく簡単なもので、写真もありませんでした。しかし今まで多くを検索してきただけにこの物件、かなり希少と判断し、即座に情報元の不動産会社に電話をかけたのです。つづく
2019年04月14日筆者は現在52歳。家族はアラ還の夫と大型犬で、結婚してから実に3回、家を買いました。中古マンション、中古一戸建て、中古一戸建ての順で購入しました。それぞれ思い入れのある住まいですが、さまざまな理由で売却することにしました。その理由をその家の思い出とともにご紹介いたします。■ これまで購入した3つの家を紹介します!再建築不可の平屋をリノベした現在の自宅玄関にて今まで購入した家をすごろく風に紹介すると、こんな感じです。1. 最初の物件は夫41歳・筆者30歳の1996年に購入。中古マンション築23年JR中央線武蔵小金井駅より徒歩5分約55平米(3DK)2,475万円↓2. 次は夫50歳・筆者39歳の2005年に2軒目を購入。中古一戸建て築22年JR中央線立川駅より徒歩12分約67平米(4DK)1,600万円↓3. そして3軒目の家は夫59歳・筆者48歳の2015年に購入。中古一戸建て築40年超えJR中央線立川駅より徒歩20分約37平米(2DK)780万円※築年数は購入時の年数。価格にリノベ費用は入っていません。こうして並べてみると、現在住んでいる3軒目の物件は、一般的価値でのスペックは下がっているように思う方もいるかもしれませんが、現在の小さな家があらゆる面で、今の私達(+大型犬)にとって快適でベストな住まいになっています。どれも皆、購入にあたりローンで悩まされたり、リフォーム・リノベで苦労したりと、とても思い入れのある家々でした。2軒目の一戸建ではセルフリノベ三昧でしたそんな愛着のある家のため引越後も貸していましたが、今年のはじめに2軒目の立川の一戸建てを売却しました。気付いたのですが、日刊Sumaiには「家の購入」にまつわる記事が多くありますが、「売却」に関してはほとんどありません。今や「家は一生に一度の大きな買い物」ではなく、買い替えたり、複数持つ人もいます。freeangle / PIXTA(ピクスタ)今回は誰かの参考になればと思い、今回の売却経験を過去にも遡りながら書くことにしました。■ 1軒目の中古マンションを売却しようと思った理由まずは、1996年に購入した1軒目の中古マンションについてお話しします。こちらは、その中古マンションリフォームのアフター写真です。間仕切りを極力取り払ってワンルームにした白い部屋は、当時まだ珍しかったので、メディアにも何度か取り上げられました。東南角部屋で、南側に約8畳のルーフバルコニー付き、夫婦二人暮らしには充分のはずが……、雑貨や家具収集という共通の趣味、さらに筆者は着物に目覚めてしまい、モノが増える一方……。そのせいで、部屋はどんどん狭く、窮屈になってしまいました。そんな時に感じたのが、「やっぱり平面の区分(マンション)より、一戸建ての方が階段や吹き抜けにより縦にも空間が拡がって、よりコレクションを増やせるのではないか!?」ということでした。■ マンションから一戸建てに住み替えたいと思った理由言い訳がましくなりますが、マンションから一戸建てに住み替えたいと思った理由は、他にもありました。一戸建てなら愛車との生活がより楽しめるとか自主管理のマンションは、輪番制の管理組合役員業務が意外と大変だったり足腰丈夫な今でないと、階段や吹き抜けを楽しむ機会を逃してしまうかもしれないまた、夫婦共働きでも先行きへの不安がかなりありました二人とも、ボーナスや退職金を多くを期待できないので、不動産を増やし資産にしていくことが対策になるのでは?と考えたのです。世に言う「不動産投資」という意識は、まったくありませんでした。単純に「今住んでいるマンションも立地が良くて気に入っているので、売らずに持ち続けたいな。いつか戻って住むかもしれないし……」といった感覚だったのです。こうして欲しい病が重症化した筆者、不動産情報を猛烈検索する日々が始まりました。雑貨パラダイスにできる理想の住まいは、はたして予算内で見つかるのでしょうか?この続きは、次回にご紹介します。
2019年04月05日夫の谷章生さんが設計事務所を設立するにあたり、仕事場を兼ねた住まいづくりを考えていた谷さん夫妻。もともと中古不動産の活用に興味があり、UR都市機構の築18年(取材時)の賃貸物件を気に入ってセルフリノベへの挑戦を決意。解体からスタートして、約3か月。工事費約90万円(税・材料費込み)で、素材にこだわったセルフリノベ空間を作りあげました。■ 勾配天井のLDKは解放感たっぷり間取りでこだわったのはLDKを広く取ること。もともと和室だった場所の天井を撤去したことで、LDKには勾配天井が出現しました。一番高いところで4mもあるというのは、最上階物件ならではの恩恵。そのおかげで、58平米とは思えないほどの開放的な空間を演出できています。リビングの壁は少しくすんだブルーが印象的。環境に配慮した珪藻土塗りで、色を混ぜて夫妻で仕上げたというオリジナルです。インテリアのアクセントになるうえ、空間にメリハリを生み出しています。リビングのシンプルなテレビ台の上には、お気に入りの雑貨を並べて賑やかに。国内外の旅先で買ったものも多いそう。そして、塗りムラがかえっていい味を出している、LDKのデスク側の珪藻土の壁。「手づくり感いっぱいですが、愛着が湧きます」と夫妻は笑って話してくれました。■ 環境や素材にこだわった床材やテーブル床材には、FSC(森林管理協議会)認定を受けた間伐材の檜を使用。「三重県の尾鷲(おわせ)まで行き、持続可能な森林づくりをしている速水林業を見学して、床材を注文しました」と谷さん。そこに合わせたのは、反りにくい足場板でつくった4mのダイニングテーブル。長〜いテーブルを生かして長〜い手巻き寿司をつくるホームパーティも楽しみました普段の食事はもちろん、打ち合わせやホームパーティの際にも活躍しているそう。また、そのテーブルに平行して、壁際にはデスクを造作してワークスペースに。ごくシンプルなデザインなので、デスク下は収納スペースとしても使えます。既存のキッチンは面材だけをリフレッシュ。toolboxの味のあるオークの挽き板を張っています。コンロ回りの壁のタイル貼りもDIYで。そして、キッチン側のテーブルの下は、家電などの収納スペースに。床の端材と無印良品のケースを組み合わせてつくりました。「家電やカトラリーなど、よく使うけど生活感が出やすいものをしまっておけるので助かっています」と妻。■ クロスや塗装で既存のものをリフレッシュエントランスの右手にある収納は既存のもの。扉に個性的な柄のクロスを貼ってリフレッシュしました。また、床はフローリングの余りを裏返して使用し、変化をつけています。DIYでつくった棚に写真やグリーンを飾ることで、ゆとりを感じられるスペースに。コストダウンも兼ねて、味のある既存建具は塗装して再利用。リビング扉はガラス入りなので、LDKの光を廊下まで届けてくれます。「古いものはよく見るとかわいいデザインだったりしますよね。塗装したらかなり印象が変わりました」と妻。無垢のフローリングにもしっくり馴染んでいます。寝室は既存の間取りのまま、内装だけを変更。LDK同様、壁は珪藻土塗りで、一面だけ色を入れてアクセントに。リラックスできそうな優しいニュアンスのグリーンが、コンパクトな寝室に広がりを感じさせてくれます。「表面的な仕上げの変更だけでなく、空間や間取りを自分たちの手作業で再編集する取り組みが、もっと増えたらいいと思います。中古不動産の活用や建築材料の再活用は、持続可能な都市づくりにつながるし、これからの時代の暮らし方に最適だと思うんです」と、谷さんは力強く語ってくれました。※物件価格、工事費、ご家族の年齢等は取材時のものです。設計SUMIT(スミト)撮影山田耕司
2018年12月24日最近人気を集めているDIYやセルフリノベーションですが、自分の力量を考慮したり、計画的に行わないと結局は失敗に終わってしまうこともあるようです。今回は「実際にチャレンジしてみたからこそわかった失敗例」をご紹介してみたいと思います。この6つの例が、これからDIYやリノベーションを自分でやってみようと思っている人の参考になればうれしいです。■ 1.棚の高さが身長と合わなかった「トイレットペーパーやを置くための棚を増設したのですが、位置が高すぎて使い勝手が悪かった」(30歳/専業主婦)Satoshi KOHNO / PIXTA(ピクスタ)壁や便器などとの高さのバランスばかりに気を取られてしまったために失敗してしまったとのこと。せっかく作った棚ですが、自分の身長との兼ね合いがとれず、結局あまり使えていないそうです。■ 2.便座のサイズが違った「機能性を重視したばかりに、サイズが大きくなりすぎてしまった」(32歳/パート)maruco / PIXTA(ピクスタ)多機能便座を選ぶと、どうしても便座部分が大きくなってしまうことがあります。それにより元の部分とのバランスが悪くなって、前よりも使いにくくなることがあるため、変える前にはしっかりとサイズを確認する必要があります。■ 3.かえって使い勝手が悪くなった「収納を増設したら想像以上に玄関が狭くなって、通るたびに若干のストレスを感じる」(34歳/パート)ABC / PIXTA(ピクスタ)棚が思いのほか大きくなって通路にはみ出してしまい、通りにくくなってしまったのだそう。収納力は上がったものの、“歩きにくさ”という新たな課題を生んでしまったリノベーションです。■ 4.ノコギリなどでを使った木材の加工で手こずる「ノコギリでカットしたとき、まっすぐ切れずに歪んでしまった」(35歳/フルタイム)dorry / PIXTA(ピクスタ)木材の加工は素人が行うには意外と難しいものです。こういうときに便利なのがホームセンターのカットサービス。ただ、ホームセンターによってはあまり正確な幅のカットはお願いできず、結局は自分で行わなければならない場合もあるのですが……自信がない人はそちらを利用するのもひとつの手でしょう。■ 5.時間がかかりすぎて途中で飽きてしまった「時間がかかりすぎて、中途半端なまま途中で断念した」(36歳/フルタイム)Fast&Slow / PIXTA(ピクスタ)DIY、ましてやリノベーションとなればかなり根気のいる作業となります。取りかかる前には、長期スパンでの計画をしっかりと立てておくことをオススメします。■ 6.養生が甘く、家具を傷つけてしまった「養生が甘く、家具を傷つけてしまいました。嫁入り道具として持ってきたものだったので、ショックです」(30歳/パート)chaako28 / PIXTA(ピクスタ)養生が甘いと、取り返しのつかない事態に陥ることもあります。大切な家、家具を守る準備をお忘れなく!できることなら、失敗なんてしたくはないものです。Graphs / PIXTA(ピクスタ)しかし、慣れない分野での失敗はつきもの。しっかりと計画を立てて、少しでも失敗するリスクを減らしていきましょう。
2018年10月25日DIYやちょっとしたセルフリノベに、ペンキ塗りの方法を知っておくととっても便利です。プロのコツを知っているのと知らないのとでは、仕上がりに天と地ほどの差が出ますよ。人気リノベーション会社が教える壁の補修法や、アンティーク加工の方法など、とっておきの情報を4本まとめてご紹介します!■ 親子一緒にやってみたい!壁の補修法東京・恵比寿にオフィスを構える人気リノベーション会社・EcoDeco(エコデコ)。工務店ファインアーツ代表の渡辺力也さんが講師となって「職人から学べる塗装壁の直し方」のワークショップが行われました。壁の補修って自分でできるの?と驚いてしまいますが、ホームセンターで材料をそろえることができて、初心者でも気負わずチャンレジすることができます。記事では作業前の部屋の養生のポイントや、道具の使い方を写真付きで分かりやすく解説。子どもでもできる作業があるので、親子で一緒にしてみるのもオススメです。詳しくは記事をチェック!簡単4ステップ塗装壁をDIYで補修するワークショップに参加してきました■ ペンキの選び方とすぐにできる壁の補修法3つペンキには水性と油性がありますが、特徴や用途の違ってよく分かりませんよね。水性はさらっとしていて塗やすく、油性は粘度が高くドロッとしています。扱いやすさで言うと水性ペンキの方が上ですが、耐久性は油性に軍配があがります。こうした特徴を知っておくと、水性と油性のペンキの使い分けがしやすいのではないでしょうか。一般的には壁のペイントや補修では水性のペンキを使い、窓枠や扉などは油性ペンキを使います。このほか、壁の汚れを簡単に消す方法、クラック(ひび割れ)のふさぎ方、コーナーの擦れ傷の補修方法など、知っておくとお得なテクニックを一挙公開!家の中の気になるところを自分で修繕できるなんてうれしいですね!詳しくは記事をチェック!水性?油性?色は?初めてのペンキ選びと壁の補修法3パターン■ 塗料を試し塗りできるショールームがあった!木材の塗料にはさまざまなものがありますが、どんな仕上がりになるのかは実際に木材に塗って試してみないと分かりません。ドイツ生まれの自然塗料オスモカラーの「オスモ&エーデル(OSMO&EDEL)ショールーム」では、木材を持参すると塗料を試し塗りすることができます。購入前にチェックできるので、納得のいく塗料を見つけることができますよ。オスモカラーは自然の植物油と植物ワックスがベースなので、赤ちゃんや小さいお子さんがいても安心して使えます。詳しくは記事をチェック!自然塗料オスモカラーの試し塗りも!「オスモ&エーデル」ショールーム体験記■ アンティークの味わいが出せる「ミルクペイント」って?味わいのあるペイントに憧れるなら、ターナー色彩株式会社の水性塗料「ミルクペイント」はいかがでしょう。「ミルクペイント」はDIYの完成度をワンランクあげてくれる心強い味方。のびがよく初心者でもきれいに塗ることができ、柔らかく少しく澄んだ優しい色調なので、アンティーク調の雰囲気を出すのにぴったりの塗料なんです。しかも、木箱や厚紙のボード、金属、モルタルなど、幅広い素材に使用することができますよ。アンティークの古びた味わいを出すための塗り方のポイントとは?詳しくは記事をチェック!アンティーク加工も簡単!DIYに最適な水性塗料「ミルクペイント」の魅力って?
2018年10月13日住宅街に佇む一軒の蒸しパン屋さん〔だいちや〕。木戸をガラガラと開け、店内へ一歩足を踏み入れると、木の温もりと、やわらかな陽射しが差し込む開放的な空間が広がります。1年半かけて、ご夫婦が自分たちの手で作り上げたお店を、さっそくのぞいてみましょう。まずはお店を開く場所探しからスタート「ここはもともと、築50年ほどの民家で、7、8年ほど人が住んでいない空き家だったようです。千葉、山梨、茨城、神奈川とあちこち本当によく歩いて探して、ここを見つけた時は即決でした」とご主人の友晃さん。東京に暮らし、整体の仕事をしていた大出夫妻。ふたりには、夢がありました。「休みの日に、よくふたりでパン屋さんめぐりをしていました。その延長線上には“自分たちのお店を持ちたい”という夢がありました。パン屋さんめぐりをしながら、どこか移住できるようなところはないかと、その町を見て歩いていました」と奥さまの香織さん。そして出会ったのが、現在、お店を構える神奈川県の二宮という小さな町でした。ふたりにとって、この町は、縁もゆかりもない土地だったけれど、自分たちの手でお店を作りたいという想いがあったため“セルフリノベーションがOK”というこの古民家に決めました。そして、ふたりはリノベーションをスタート。友晃さんはそれまでやってきた整体の仕事を辞め、メインでお店づくりの作業を。香織さんは整体の仕事を続けながら進めてきたのだそうです。「いつ完成予定?と夫にきいたら『半年くらいかなあ』という答えが返ってきました。でも実際は1年半かかりました」と香織さん。つづけて「僕としては、おそらく1年半くらいかかるだろうなあと、一応、想定内でした(笑)」と友晃さん。2016年2月から作業を始め、〔むしぱんだいちや〕がオープンしたのは2017年7月21日のことでした。解体、基礎工事、内部補強、外壁も自分たちの手で解体がとにかく大変だったと友晃さん。知り合いの大工さんに月に10日ほど手伝いに来てもらい、丁寧に現況を確認しながら、手壊しによる解体作業を行ったそうです。「中身はほぼ新築といえるほど作り直したと思います。床、壁、天井、補強、トイレ、洗面所など全部、作りました」と友晃さん。水道や電気も、通ってはいたものの、配管や分電盤は古く、配線もそのままだったので、すべて交換したそうです。古民家などの古い建物は、実際に解体をしてみると、経年劣化が想像以上に進んでいることがあったり、それまで覆われていた部分があらわになることで、その構造に驚かされたりすることがあるそうです。こちらの建物も、解体したことで衝撃的な発見があったそうです。「木造住宅だと思っていたのですが、解体したら鉄骨が出てきたんです。それまで壁や天井などで覆われていてわからなかったのですが、解体したら出てきました。表に見えていた“柱”も鉄骨で、周囲を木で覆って木の柱のように見せていたんです。当時の流行りだったのか“木造風”だったんですよね」解体したら顔を出した鉄骨。腐敗がひどく、サビを落とすだけで、なんと3ヶ月かかったのだそうです。「この作業がいちばん時間がかかったんじゃないかなあ」と友晃さん。鉄骨にはサビ止めが塗ってあったけれど、上から塗料を塗ったら浮いてきてしまうため、鉄骨の1本1本を、毎日毎日、ガリガリと手作業で削り、とっていったのだそうです。壁をすべて壊して床もはがし、解体を終えると、床下にコンクリートを流し込み、基礎を作る工事に取り掛かりました。友晃さんが「あの作業がいちばん心が折れそうになりました」と振り返るのは“根太(ねだ)”を組んでいく作業です。根太とは、床板を支えるために、その下に渡す木のことで、コンクリートの上に格子状に置き、下地を組んでいきます。腐敗が進んでいた既存の外壁も解体し、下地を作り、透湿防水シートを張り巡らし、窓枠を作ります。友晃さんがその後に行ったのは、杉の板を壁に貼っていく作業です。ここでは杉の木の板を“下見板張り”で張っていきました。ヨーロッパで古くから用いられるこの技法は、上方の板の下端を下方の板の上端に羽重ねにして張っていきます。鎧の錣(しころ)に似ていることから“鎧張り”とよばれることもあります。最初の1枚は水平に測って取り付け、2枚目以降は板と板に一定の重なり部分(2cm程度)を作り、板を張っていきます。この下見板張りは、板を平坦に張るよりも、雨が入りにくく、かつ通気性を保つことができるというメリットがあるそうです。外壁の塗装に使用したのは植物油ベースの自然塗料「オスモカラー」。淡いグリーンに、グレーが入ったような色です。白い部分も、白色にグレーを少し足して調色し、グリーンの色と合うように調整をしたそうです。中の壁も、天井も、鉄骨を残しすべて解体しました。解体した後は、梁と柱を入れて補強し、新たに天井と壁を作り、内装も少しずつ手を入れて作っていきました。入口は、最初はスロープにしようと思っていたという友晃さん。しかし実際に計測してみると、高低差が大きく、スロープにすると急になってしまうため、ウッドデッキを作ることにしました。ウッドデッキを作るにあたっては、一度土を掘り起こし、コンクリートを流し込んで土台を作ったそうです。解体、基礎工事、外壁が終わり内装へ基礎工事などが終わり、内部の壁や床、天井などの仕上げや、装飾および設備の配置へとうつっていきました。「木戸は中古のものをいただきました。木戸を引くと出る“ガタガタガタ”という音を再現したくて、入口はこのようにしました」と友晃さん。子供の頃に、駄菓子屋さんや和菓子屋さんの木戸を引くと聞こえた、あの“ガタガタガタ”という音。友晃さんの心には、この音が残っていました。そのため、入口を作るにあたっては、譲っていただいた木戸の大きさに合わせ、入口を作り上げていったそうです。お客さまを迎え入れる入口は、ファサードといわれる建築物の正面部分にあたるところ。ここは最も目につく場所であり、建物の顔です。木戸にはめるガラスは、解体した際に出たガラスをはめたり、ガラス屋さんでカットしてもらったものをはめこんだそうです。「ガラスや廃材も捨てるのにはお金がかかります。まだ使えるものもたくさんあるのでなるべく使うようにしました」と友晃さん。このブロックガラスも、近所のパン屋さんが古民家をリノベーションし、カフェスペースを作った際に、使われずに転がっていたものを譲っていただいたのだそう。木枠も、もともとキッチンにはまっていたものを磨き、塗装して使っています。照明を吊るしている材木は、知り合いの大工さんに譲っていただいたものを利用しています。上に電気のコードを這わせ、電球をぶら下げました。店内に入り、まず目を引くのが、蒸しパンの並ぶこのカウンターです。こちらも友晃さんお手製。神奈川県産の木材を探していたところ、近所に材木屋さんがあることを知り訪れたそうです。カウンターはその木材屋さんで購入したのだそう。以来、そこへ毎日のように通い、木についていろいろ教えていただいたのだとか。そしてもうひとつ、カウンターと共に目に飛び込んでくるのが、こちらのグリーンの2本の柱です。「これは解体して出てきた鉄骨です。サビをとって塗装をしたのですが、妻がこの柱はこういう色にしたいということで、特別に調色してもらい作りました」と友晃さん。この柱の、このグリーンを基調色にし、店内はこの色に合うように塗装をしていったのだそうです。塗料は、保育園や幼稚園などでも使用されている水彩のものを使用しています。2階へ続く階段。これはもともとあったものをそのまま残し、磨き補強し使用しています。床板部分も一部、残しています。この階段はもともと、水色の壁(写真奥)の裏側にありました。階段の下にはトイレと階段下収納があったそうです。リノベーションするにあたり、もう少しトイレを大きくしたいと思い、壁とトイレは壊し、別のところに設置することにしたのだそうです。壁を取り壊し、トイレをなくした階段下のスペースには、チェアとテーブルを置き、お客さんが座ってくつろげるようにイートインスペースにしました。もちろんこのチェアとサイドテーブルも友晃さんお手製です。廃材を利用しています。向かいのカウンターに置かれた2脚の椅子も、友晃さんが廃材を利用して作ったものです。トイレの移動先は、もともとお風呂場だったところにしました。ここに洗面所とトイレを作りました。洗面台も端材を利用して作っています。「シンクをまず購入して、それに端材を合わせてどうやって作るかが苦労しました。シンクと蛇口の高さを合わせるために、木のブロックを間に挟んで高さ調整をしたり、水道管の位置を合わせたりするのもとても難しかったです」と友晃さん。トイレと手洗い場です。ここはもともとお風呂場でした。壁にはタイルが貼ってあったため、木材をタイル状に加工し、1枚1枚貼り合わせていったのだそう。タイルも処分するのにお金がかかります。それならばと、タイルのサイズに合わせてベニヤ板を切りだし、角をとって貼ってタイルを見えないようにしました。壁も1枚1枚、手作業で塗っていきます。使用したのは「ホタテ漆喰」。ホタテの貝殻を砕いてつくったものです。ホタテの貝殻をブレンドすることによって収縮が少なく、クラックが生じにくいそうです。また貝殻には消臭機能があるほか、貝殻のもつ細微な穴が、室内温度に応じて調湿する効果があるため結露防止や抗カビ機能もあるといわれています。トイレ、洗面所、キッチンは、それぞれ異なる色のホタテ漆喰で塗装しました。小麦、生成り、灰という3色で塗っています。温かみがあり、とても味わいのある表情豊かな壁に仕上がっています。こちらは入口の脇に設けられたイートインコーナーです。ここでは、蒸し立ての蒸しパンや、蒸し直しをしてくれた蒸しパンを食べることができます。ここでひときわ目を引くのが右手の壁の装飾です。大小さまざまな色とりどりの木のブロックが組み合わさり、一枚絵のようになっています。「最初に木を削って色を塗り、壁の幅に合わせて、積み木のように組み合わせて並べました。それをこのまま、壁にボンドに1つ1つ貼り付けていきました」と友晃さん。1つ1つの木片に色を塗って乾かし、また塗り乾かし、削って角をとるという作業をひたすら続け、およそ2週間かかったそうです。お客さんが触ってケガなどしないように角をとる作業はとても大変だったと思います。「大変な作業ではありましたが、装飾なので楽しんでやりました。お子さんたちが興味をもって、楽しそうに触ってくれるのでとても嬉しいです」と香織さん。かわいい装飾を眺め、木の温もりを感じながら蒸しパンをほおばる。やさしい甘みが口いっぱいに広がり、気分もほっこり。新たに壁を作り、蒸しパン屋さんのスペースの隣に作った部屋は、おふたりのもう1つの仕事場、整体の施術室です。施術室の入口にも木のブロックで作った装飾があります。木の温もりがあふれる施術室です。床板も1枚1枚貼り、木のカウンターも友晃さんが作りました。施術室は天然の杉板を使用していて、部屋に入ると無垢材の良い香りがします。靴を脱いでこちらにあがるので、足には木の温もりが伝わって来ます。施術台の脇に置かれていた踏み台も友晃さんの手作り。こちらも廃材を使って作っているそうです。そのほか荷物置きなども廃材を利用して作ったものが置かれていました。木のやさしい風合いを五感で感じるとても心地の良い空間です。解体前の建物は、もともと明かり取りがなく薄暗い印象の室内だったそうです。そのため、天井も一部を抜き、明かり取りにしました。天井を見上げるとこのようになっています。ここから明かりが差し込み、店内はやわらかな日差しに包まれます。お客さんがガラガラと戸を開け「こんにちは」と、ひとり、また、ひとり入って来ます。ご年配の方や、お子さん連れのお母さん、犬の散歩途中の方などなど。みなさん、友晃さんや香織さんと世間話を楽しみ、蒸しパンを2つ、3つと買って行きます。カウンターに並ぶ蒸しパンの数が少なくなってくると、奥のキッチンで作り、蒸しあげていきます。蒸しパンはふたりで作り、整体もふたりで行います。〔だいちや〕さんは、夫婦ふたりで切り盛りしているのです。もっちりムチムチとした独特な食感が印象的な生地は、3日以上時間をかけ、ゆっくりじっくりと発酵させて作っていくのだそうです。今まで食べた蒸しパンのイメージがガラっと変わります。メニューも、甘い系のおやつにぴったりなものから、お惣菜と合わせたおかず系までさまざまで目移りしてしまいます。自分たちらしい暮らしを求め、この町に移り住み、1つひとつ、自分たちの手でお店を作り上げていったふたり。お店に一歩、足を踏み入れた時から感じる心地よさや、心の緊張がするするとほどけていくようなやさしい味わいの蒸しパンは、そんなふたりが作り上げたからこそ、感じるものなのかもしれません。【だいちや】●住所神奈川県中郡二宮町川匂71-6●電話0463-71-7113●営業時間9〜18時(パンは生地がなくなり次第終了)●定休日日・月曜●URL●ライター忍章子
2018年07月08日