「リフレーミング」について知りたいことや今話題の「リフレーミング」についての記事をチェック!
40年以上もの間、世界でもっとも幸福な国であり続けるデンマーク。その国で「親が子どもに与えられる最高の贈り物」とされているのが「リフレーミング」というテクニックです。今回は、そんな「リフレーミング」についてお伝えします。【世界一幸せな国デンマークの子育て】連載 Vol.1 日本の子育ては、子どもを「幸せな大人」にできるのか? ■大人になって成功できるのは「折れない心」「リフレーミング」とは、自分が世界を見ている額縁(フレーム)をとり替えること、いわば情報を再解釈するテクニックです。アメリカの多くの企業では、リフレーミングの研修が行われています。なぜなら、リフレーミングは、レジリエンス(折れない心)に欠かせない能力と見なされているからです。レジリエンスは、最近の教育界の「キーワード」でもあります。教育関係者に取材すると皆さん異口同音に、「今、もっとも子どもたちに必要なのは、レジリエンス(折れない心)です」と、おっしゃいます。ハーバード・ビジネス・レビュー誌の記事では、アメリカのある創業者社長がこんなふうに言っています。「経験よりも訓練よりも、人のレジリエンスのレベルが成功者と落語者を決定づける。それはガン病棟でも、オリンピックでも、役員会議室でも言えることだ」。 ■「折れやすい心の子」にしてしまう親の言葉ところで、私たちが既に持っている「フレーム」は、何によって形づくられているのでしょうか? それは、言葉です。普段、何気なく子どもにこんな「フレーム」を投げつけていませんか?あなたは、何をやってもダメよねこの子は、繊細すぎるあなたは、わがまま!この子は、数学が苦手あなたはスポーツがあまりできない親からそう言われ続けている子どもは、これらの「フレーム」につじつまを合わせる行動をとるようになります。やがて子どもは「自分はそういう子だ」と信じ込むようになって、何かにトライするなんていうことはせず、「折れやすい心の子」の一丁あがりです。与えられた物語がいったん人生の一部になると、自分のなかから追い出すのは至難の業。つまり自分や子どもについての気に食わないことをくり返し口に出すことで、まさにその欠点を強化してしまうのです。■デンマーク流の言葉がけでは、どうしたら良いのでしょうか? デンマーク人は、子どもに対しての言葉がけがとても上手です。子どもが不機嫌な時、一緒に感情の波に巻き込まれて乱暴な「フレーム」を投げつけるかわりに、そうなった理由を子ども自身が気づけるように促します。少し長くなりますが、デンマーク流の親子の会話例を引用してみましょう。私は、この会話を声に出しながら読んでみました。声に出してみると「心に入って来る言葉」はわかるものですね。読み進むうちに、私はゆったりとした気持ちになりました。「どうしたの?」「別に」「様子がちょっと変だけど、何かあった?」「まぁね」「どういうことなの?」「わからない」「悲しいの? 怒ってる? 嬉しい?」「悲しい」「どうして悲しいの?」「悲しいのは、ゲイリーが遊び時間に私の人形を取ったから」「彼が人形を取ったのね。どうしてあなたの人形をとったのかしら」「彼が意地悪だから」「彼は意地悪だと思う? ゲイリーはいつも意地悪なの?」「そうよ」「でも、先週はゲイリーとたくさん遊んでいたんじゃなかった?」「そう」「そのときは意地悪だった?」「ううん」「なるほど。じゃあゲイリーは優しいときもあるのね?」「うん。優しいときもある」出典: 『デンマークの親は子どもを褒めない』~世界一幸せな国が実践する「折れない」子どもの育て方~ デンマークの親は、子どもが自分の感情をきちんと言い表せるようになるのを上手に手伝い、建設的な思考へと導きます。これはリフレーミングに欠かせない作業です。自分の感情を、きちんと言い表せるようにする。これ、本当に大切ですよね。私自身、ひとりの母親として、「子どもと、そんな会話をしたことなかった」と反省しきり…。■ネガティブなことばかり言ってしまう場合会話の続きに戻ります。「彼が人形を取ったとき、どうなったの?」「私が泣いちゃったの」「人形を取られて悲しくなったのね。その気持ち、わかるわ。じゃあ、今度ゲイリーに人形を取られたとき、悲しくならないためには、どんなことをすればいいと思う?」「ゲイリーに返してちょうだいって言う。それとも、先生に言おうかな」「返してちょうだいって言うのが、良い解決策だと思うわ。ゲイリーは人形遊びが好きなの?」「時々ね」「返してちょうだいって言う以外に、何かできることはあるかしら?」「一緒に人形で遊んでもいいかもしれない」「それは素晴らしい解決策だわ。ゲイリーは、本当は優しい子なんだから、今度そんなことがあったら、一緒に遊びたい? ってきいてみたら?」「そうする!」出典: 『デンマークの親は子どもを褒めない』~世界一幸せな国が実践する「折れない」子どもの育て方~ 「物ごとの良い方の面を見る」というテクニックは、あらゆる状況に活用できます。出来事をきちんと分析し、状況を建設的にリフレーミングするために必要なキッカケを探す。そこから物語を紡ぎなおす。ママ自身がリフレーミングを知ることで、いまよりもっとハッピーな気分になれるのではないでしょうか? たとえば子どもに対してネガティブな決めつけを言いそうになったときは、「わが子の違ったストーリー」を見つけてみては? ふとわれに返れたとき(返れなくても、落ち込まず…)、自分に少し余裕があるとき、一つずつでも「わが家の言葉」を変えていくだけで、子どもに大きなプレゼントができているのだと私は思います。「リフレーミングは、練習を積めば楽にできるようになり、楽しめるようになるでしょう」とは『デンマークの親や子どもを褒めない』の著者の弁。何だか、希望が湧きますね!■今回の記事の参考文献 『デンマークの親は子どもを褒めない~世界一幸せな国が実践する「折れない」子どもの育て方~』 ジェシカ・ジョエル・アレキサンダー/イーベン・ディシング・サンダール 著/鹿田昌美 訳/集英社 ¥1,500(税別)ジェシカ・ジョエル・アレキサンダーさんアメリカ人の作家、コラムニスト、文化研究者。デンマーク人と結婚して13年になり、常に文化の違いに強い関心を持ってきた。イーベン・ディシング・サンダールさんナラティブ・セラピーの認定療法士など資格を持ち、コペンハーゲン郊外で個人診療を行う。専門は家族と子どものカウンセリング。翻訳者 鹿田昌美(しかた まさみ)さん国際基督教大学卒業。訳書に「フランスの子どもは夜泣きをしないーパリ発『子育ての秘密―』(集英社)など多数。
2018年04月19日子どもが身の回りのことをできるようになってくると、たまには子どもを預けてリフレッシュしたい! というママも増えてくるのではないでしょうか。なかには「独身のころ大好きだったジャニーズのコンサートに再び行くようになった」「学生時代に夢中だったロックバンドのライブに15年ぶりに行ってハマってしまった」なんていう声も。大好きだった〇〇に再びハマって、ママたちが青春時代にカムバックする理由とは? 脳内では何が起きていて、どんな影響があるのでしょうか?脳研究者で、ご自身もふたりの娘さんの子育て真っ最中の池谷裕二先生にお話をうかがいました。池谷裕二先生 プロフィール研究者、薬学博士。東京大学・薬学部教授。専門は神経科学および薬理学で、脳の成長や老化について研究している。『海馬』(新潮文庫)、『進化しすぎた脳』(講談社ブルーバックス)など著書多数。近著に『パパは脳研究者』(クレヨンハウス)がある。プライベートでは二児の父。■時間とともに美化される「過去の記憶」―― 出産後、子育てに慣れてくると、学生時代や独身のころに好きだったアーティストに再びハマるママが、ちらほら出てくるように思います。何か理由はあるのでしょうか?池谷裕二先生(以下、池谷先生):「マンネリ化の打破」があるのではないでしょうか。小さい時は見るもの・聞くものひとつひとつが輝いていたのに、年をとってさまざまな経験を重ねることで、マンネリ化してくる傾向があります。加齢によるマンネリ化はごく自然なことですが、マンネリ化の打破は快感なんです。再び同じアーティストを好きになるにしても、当時とは違った心の余裕があるというか、「新鮮さ」がありますよね。―― たしかに。昔好きだったアーティストに再びハマるというのは「昔好きだった時の私が好き」みたいなこともあるのでしょうか?池谷先生:それもありますね。年月を経てそのアーティストの容姿が変わったとしても、アーティストを好きだったという「感覚」を脳は覚えています。よく人間は悪いことばかり覚えていると言われますが、調べてみると実際はその反対で、良いことをよく覚えているんです。「バラ色回顧」といって、時が経つと過去の記憶が美化されます。例えば、失恋して間もない頃は苦い思い出ばかりだけど、時間とともに記憶は美化されて、じんわり温かい気持ちになりますよね。心理試験でも、「悪い記憶は抑圧がかかって連想が止まってしまい、思い出さない」というデータがあります。あとは、昔好きだったドラマを見て、楽しくなる気持ちも一種の「新鮮さ」がありますね。 ■「新婚時代にカムバック!」も脳に好影響―― なるほど。懐かしいだけではなく、ワクワク感とか高揚感がありますよね。脳にもいい影響があるのでしょうか?池谷先生:そうですね。ものごとの見方や捉え方(枠組み)を変えて、プラスの方向に考えることを専門用語で「リフレーミング」といいます。先ほどの「青春時代にカムバック!」以外に例をあげると、マンネリ化している夫婦が、結婚式や新婚旅行など仲睦まじかったころのビデオを見ると、しばらく夫婦関係が改善するのがそうです。「子育てや家事、いろいろ不満はあるけれど、子どもがいて楽しい時もある。今の状況って、まあまあ恵まれているよね」と、一歩ひいた目で見られるようになります。―― ママの「リフレーミング」は子どもやパパにもいい影響がありそうですね。池谷先生:もちろん。お母さんがイライラしないのは、家族にとってもいいこと。だからカムバック! もそうですし、ママの息抜きは大切ですね。私も妻が飲み会に行く時は子どもの寝かしつけまでやっていますよ。■ヒトの親は「子育てするようにできていない」―― おっしゃるとおり息抜きは大切だと思うのですが「ママは子育てを頑張らなくてはいけない」みたいな社会的な圧力がいまだにあるように感じられます。池谷先生:そういう風潮はたしかにありますね。0歳で保育園に預けるのはかわいそうとか。ここで言っておきたいのは、生物学的にヒトは「親が子どもを育てるようにできていない」「子どもも親の言うことを聞くようにできていない」ということ。人類の祖先が誕生したのが約500万年前、 ヒトが農業を始めて定住するようになったのが約1万年前。農業をするまでの500万年もの間、人類の祖先は狩猟をして暮らしていたんです。日中、親が狩りをする間、子育てをするのは周りの子どもたちとおばあちゃんでした。これまでの人類の歴史500万年を1年に例えるなら、ヒトの親が子育てをするようになったのは、大晦日になってからのこと。まだまだ日が浅いんです。そんなにすぐうまくいくわけがない。だから、ヒトの親が子育てするとストレスがかかるのは当然といえます。―― 「ヒトの親が子どもを育てるようにできていない」なんて驚きました! 親はどうすればいいのでしょうか?池谷先生:ポイントは、周りの子どもやおばあちゃんとの関わり。親が言ってもきかないのに、お友だちに注意されると子どもはすぐやめますよね。同じ子どもの言うことなら、子どもは受け入れます。だから、子ども同士のコミュニティー作りが大切ですね。それと、おばあちゃんや、それに代わる保育園の先生などが関わる環境作りができるといいと思います。児童館なども活用して、子ども同士やおばあちゃん的な先生と関わっていけるようにしてはいかがでしょう。子育てにストレスを感じるのは生物学的に見ても当たり前のことなので、それ自体を気にすることはありません。息抜きすることをうしろめたく思うお母さんもいるかもしれませんが、イライラが爆発する前にうまくリフレッシュして子育てを「リフレーミング」できるといいですね。
2018年04月04日