劇団スーパー・エキセントリック・シアター(SET)の、第54回本公演『土九六(どくろ)村へようこそ』が、10月21日(金)に開幕する。約半月後に本番を控えた稽古場にお邪魔した。SET『土九六村へようこそ』チケット情報本作は、SETの新作。物語の舞台は小さな「土九六村」。村民は祭りを催し、今年の豊作を「ドクロ様」に祈っていた。ところが村の若者たちは「ドクロ様」「村のしきたり」に違和感を覚え、親世代とぶつかる。そんな中、村には移動型ミュージカル劇団「放浪座」がやってくる。実は彼らは単なる劇団ではなかった――。稽古場では、演出と出演を務める座長・三宅裕司を前に、ダンスのチェックが行われていた。出演者全員によるキレのあるダンスは圧巻だが、三宅は立ち位置や見え方の調整はもちろん、「腕の位置はそこでいい?」など細かい部分まで見逃さず、丁寧にキッチリと詰めていく。大きく変わったわけではないのに、グッと見やすさがあがっていた。ダンスの後は、コメディシーンの確認。とある“歌がハモれない”場面では、わざと音をずらすのが意外と難しいようで、微妙な音で苦戦。すると「(取材陣がいる中で)SETが音を取れないと思われるのでやめてください!」というツッコミが入り、稽古場は大爆笑。そんな中でもひときわ大きな笑いをさらうのは、やはり小倉久寛。登場シーンからインパクト抜群だったが、エグザイル風ダンスシーンでは独特の存在感を爆発!さらに三宅とふたりのシーンはさすがのコンビネーションで、何気ない会話すら面白く感じさせていた。その後、稽古はアクションシーンへと続き、わずか1、2時間の間に踊り、歌、殺陣、芝居とさまざまな稽古をすることに驚いた。しかし、稽古場には“ミュージカル・アクション・コメディー”をつくり続ける劇団ならではの「何が来ても大丈夫」な空気があった。三宅は稽古中、「そこは息がぴったり合った方が面白い」「差を見せるためにもうちょっと長さがほしい」など、ただ動きを調整するのではなく“なぜそうした方がいいか”を必ず伝えていた。団員は入れ代わり立ち代わり三宅のもとに訪れ、気になる動きやセリフの確認をする。稽古場を見渡すと、あちこちで団員同士がシーンの相談をしていた。なぜSETは鮮度を失わずに走り続けているのかがわかる稽古場だと感じた。公演は10月21日(金)から11月6日(日)まで東京・サンシャイン劇場、11月11日(金)・12日(土)愛知・穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホールにて。取材・文:中川實穗
2016年10月19日作家・演出家である鴻上尚史のプロデュースユニットKOKAMI@networkの第15回公演『サバイバーズ・ギルト&シェイム』が11月に上演される。主演は、『仮面ライダーゴースト』の仮面ライダースペクター/深海マコト役などを演じた山本涼介。鴻上と山本に話を聞いた。KOKAMI@network vol.15『サバイバーズギルト&シェイム』チケット情報鴻上書き下ろしの新作である本作。「サバイバーズ・ギルト」とは、戦争や災害、事故、事件などに遭いながら奇跡的に生還を遂げた人が、周りの人々が亡くなったのに自分が助かったことに対してしばしば感じる罪悪感を表す言葉。鴻上は本作が生まれた背景について「“サバイバーズ・ギルト”という言葉、生き残ったことへのいろんな想いについて、ずっと考えていました。具体的にはやっぱり3.11。それまでもそういうことはあったけど、国民として“サバイバーズ・ギルト”にどう向き合えばいいんだろうっていうことを、みんなが考えだしたのはやっぱり3.11以降なんじゃないかなって思うんですよね。“シェイム”って足したのは、日本人らしく生き延びた恥ずかしさもあるだろうってことで。このタイトルで作りたい作りたいと思ってて、やっと作品になりました」と語る。それを“抱腹絶倒の爆笑悲劇”と表現するのは「悲劇的な状況をどれだけ笑える状況にするかっていうのが、表現の力だったり、芸術や芸能のやるべき仕事だと思っているから」(鴻上)。山本は舞台初主演。「台詞が出ない夢を見ます(笑)」とプレッシャーを感じながらも「共演者のみなさんは、僕にはまだできない芝居をする方々。観て学びたいですし、この舞台を通してたくさんの“初めて”を経験していきたい。一個一個大事にできたら」と意気込む。そんな山本に鴻上は「涼介の仕事は、野球でいえばピッチャーとしてとにかく一生懸命球を投げること。周りの守備たちはベテランなのでどんな球が飛んできても処理する。だから観客は一生懸命投げる涼介の姿に一番感動するんだよ」と話す。山本が演じるのは、戦場から「死んじゃった」と帰ってきた主人公。天国に行かずに故郷に戻った理由は、大学で所属していた映画研究会で納得できる映画がまだ撮れていないから。南沢奈央をヒロインに最後の映画を撮ることを決意する。「人に対してまっすぐぶつかる人。自分とそこまでかけ離れてないので、自身にあるもので活かせるところは活かしていきたいですね」(山本)。「テーマは「生きる」ってことかなあ。「サバイバーズ・ギルト」に苦しんでいる人もいない人もみんないろんな意味で生きのびて苦労してると思うんです。そういう時に、深刻に悩むんじゃなくて笑い飛ばせる力を少しでも与えられる作品になれば。」(鴻上)公演は、11月11日(金)から12月4日(日)まで東京・紀伊國屋ホールにて。取材・文:中川實穗
2016年10月18日武内直子原作の『ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」-Amour Eternal-』が10月15日(土)に開幕。前日にゲネプロと囲み取材が行われた。本作は、「美少女戦士セーラームーン」の20周年記念プロジェクトの一環として2013年より上演するミュージカル「美少女戦士セーラームーン」(セラミュー)の新作公演。今作から新たなセーラー5戦士がお披露目、セーラー10 戦士のコスチュームも進化するなど、フレッシュな公演となる。【チケット情報はこちら】囲み取材には新生セーラー5戦士の、セーラームーン・月野うさぎ役の野本ほたる、セーラーマーキュリー・水野亜美役の竹内夢、セーラーマーズ・火野レイ役の小林かれん、セーラージュピター・木野まこと役の楓、セーラーヴィーナス・愛野美奈子役の長谷川里桃に加え、今作が4度目の出演となるタキシード仮面・地場衛役の大和悠河が登壇。野本は「タキシード仮面様とセーラー10戦士、そしてカンパニーの皆さんとともに、セーラームーンの愛をお届けできるようにがんばります!」、竹内は「私たちが新たな5戦士となります。前作まで演じられた先輩方が3年間、必死に作り上げたセーラームーンへのたくさんの愛と、セーラー戦士との友情を受け継ぎ演じることにプレッシャーはありますが、私たちにしかできないものをお届けできれば」と意気込みを語った。また、大和は「1年に1度だけ男になる、タキシード仮面・地場衛になるのが大変快感です」と微笑み、新生5戦士について「本番が近づくにしたがってどんどん強くなっていった。作っていく過程がすでにみんなを戦士にしていっている」と話すと、5人のキャストは目を輝かせた。セラミュ―第4章となる本作は、人間の美しい夢に住むというペガサスを探し求め、高校生になったうさぎたちに“デッド・ムーン サーカス団”が魔の手を伸ばすというストーリー。うさぎたちは地球存亡の危機があると知り、この星を守るためにセーラー戦士の力を再び集結させる。舞台はセーラー5戦士の新曲『Speed of Light』で幕開け。セーラー10戦士による華麗なアクションや歌に加え、デッド・ムーン サーカス団の華やかなアクロバット、エリオス役の平山ひかるによるコンテンポラリーダンス、ポップな衣装など、見どころは盛りだくさん。ストーリーはわかりやすく、コミカルなシーンもあり、今作で初めて観劇する人も楽しめるはずだ。本編後のスペシャルライブショーでは『ムーンライト伝説』などおなじみの曲も披露される。公演は10月23日(日)まで東京・AiiA 2.5 Theater Tokyoで上演後、福岡、大阪を巡演。取材・文:中川實穗
2016年10月17日10月15日(土)に、東京グローブ座で開幕する、梅棒 6th OPUS『GLOVER』。大貫勇輔、梅田彩佳、松浦司(Shya7)らをゲストに迎え、シェイクスピアの名作「ロミオとジュリエット」をベースに “ダンス×J-POP×演劇”の梅棒スタイルで上演する。梅棒 6th OPUS『GLOVER』チケット情報今回、その稽古場にお邪魔した。稽古場には、数日前に組みあがったばかりという大きなセットが。東京グローブ座、森ノ宮ピロティホール(大阪)と、梅棒史上で最も大きな劇場となる今回は、セットもこれまでにないサイズ。キャスト達は、それを決まった時間内で転換できるように、スムーズさや見た目にもこだわりながら少しずつ調整していた。その確認作業中、他のメンバーは稽古場のあちこちでジャンルもさまざまなダンスを踊っている。その楽しそうな姿はまさに「梅棒の現場」と感じさせられる光景。この人たちがひとつの作品で一緒に踊ると考えるだけでも楽しみだ。梅棒の総合演出・伊藤今人の号令で、ダンスシーンの稽古がスタート。この日見られたのは3シーンほどだが、これまでより広くなった舞台にも関わらず、ところ狭しといった印象だった。シーン全体から受ける楽しさも、一つひとつの動きの面白さも、両方がパワーアップしており本番への期待が高まる。夜に初の通し稽古を控えていたこの日は、それぞれのシーンを通す中で伊藤からのブラッシュアップや細かな調整が入り、誰もが真剣な表情に。しかしそんな中でも、梅棒メンバーの遠藤誠がクドい芝居をいつまでも続けて伊藤に突っ込まれるなど、梅棒らしい空気が稽古場を盛り上げていた。また、稽古場で圧倒的な存在感を放っていたのが、この物語のヒーロー&ヒロインを担う大貫と梅田。群舞のシーンではふたりが一緒に踊っている姿に目が引き付けられ、「もっとふたりの踊っているところが見たい」と感じさせられた。梅棒は台詞がほとんどなく、J-POPの歌詞で物語を伝える独特のスタイルだが、梅田はダンスで表情豊かに感情を伝えていた。さらに大貫は、あまりイメージにない、世の女性をときめかせるような動きも!普段舞台を観ない人でも楽しませるのが梅棒の舞台。今作はさらに、心動かされるものになりそうだと感じた。ダンスに詳しくなくても、さらにはシェイクスピアに興味がなくても、ぜひ一度体験してほしい。梅棒 6th OPUS『GLOVER』は、10 月15 日(土)から23 日(日)まで東京グローブ座、10月25日(火)から27日(木)まで大阪・森ノ宮ピロティホールにて。また、10月16日(日)18:00公演終了後大貫勇輔、梅田彩佳、伊藤今人(梅棒)によるアフタートークも開催決定!詳細は公式HPにて。取材・文:中川實穗
2016年10月13日高畑淳子主演舞台『雪まろげ』が、9月24日に開幕した。本作は『放浪記』『おもろい女』に並ぶ、森光子の三大代表作のひとつ。森が主演を務めた1980年から2007年の間にシリーズ通算471回という上演回数を重ね、「森が最も愛した喜劇」と言われている。主演を高畑が引き継ぎ、9年ぶりの上演が実現した。舞台『雪まろげ』チケット情報芸者・夢子がついた小さな嘘が“雪まろげ(=雪転がし)”のように大きくなっていき、やがて街を揺るがす大きな嘘になってしまうというストーリーで、元々は森の「嘘つき女を演じてみたい」というひと言から生まれたあて書き。作品の舞台は昭和50年代半ば、青森の奥座敷・浅虫温泉。お人好しで、その場を盛り上げるためや仲間を助けるためについつい嘘をついてしまう夢子は、流れ流れて今はこの地で働く温泉芸者。共に働く芸者仲間は、陰では“こがね虫”と呼ばれるほどお金が好きな売れっ子・銀子(榊原郁恵)や、面倒見のいい姐さんのお千賀(柴田理恵)をはじめ、駒子(青木さやか)、ぽん太(山崎静代)、アンナ(湖月わたる)と個性派だらけ。そこに銀子の幼馴染で東京から異動してきた新聞記者の大吾(的場浩司)も加わり、さまざまな騒動が巻き起こっていく。全員が全員濃厚というキャスト陣だが、そのやり取りは軽妙でテンポ感も抜群。それぞれの人物像も明確で、大笑いしながらあっという間に物語の世界に引き込まれる。それに加えて世界観を作り上げていたのが津軽弁。青森育ちの銀子やお千賀たちの会話はもちろん、劇中で大吾の作品として披露される青森在住の詩人・伊奈かっぺいの詩、タマ伸也が歌う当時の歌謡曲などは全て津軽の言葉。独特のなまりはやさしく響き、言葉の一つひとつをより深く沁みこませてくれるようだった。劇中では、夢子がつい嘘をついてしまうようになった理由や、お金に執着する銀子が密かに背負ってきたもの、大吾や芸者仲間の過去が丁寧に描かれていく。誰かのやさしさやいたわりが誰かの“雪まろげ”を溶かし、その奥にあった真実をポロリと見せる。「嘘」が描かれた物語だが、それは「嘘の罪」では決してない。印象的だったのは、降りしきる雪の中で夢子が言葉もなく佇むラストシーン。セットもなにもないだだっ広い舞台を身ひとつで埋め尽くした高畑淳子に、女優魂を見せられた気がした。これは劇場でしか味わえないもの。ぜひ体感してほしい。舞台『雪まろげ』は、10月19日(水)まで東京・日比谷シアタークリエにて。その後、12月4日(日)まで全国各地を巡演。取材・文:中川實穗
2016年10月11日俳優集団D-BOYSの演劇公演 Dステ19th『お気に召すまま』が、10月14日(金)に開幕する。本作は青木豪×D-BOYSの「こんなに笑えるシェイクスピアは初めて」と好評を博したオールメール(=全員男性)Dステ第3弾。Dステ19th『お気に召すまま』 チケット情報客演としてフレデリック公爵と前公爵の2役を演じる松尾貴史、D-BOYSから前公爵の娘・ロザリンドを演じる前山剛久、フレデリック公爵の娘・シーリアを演じる西井幸人に話を聞いた。稽古について松尾は「この稽古場ほど演出家の『試しに』っていう単語を多用されたことがないです(笑)。でもその中でいろんなことをひらめいたり、軌道修正したりが毎日行われていて。だから一週間たつと雰囲気が全然変わっています」Dステ2作目の西井も「こんなに笑っている稽古場、初めてです。すごく楽しいんですよね。今回は色々なことを試す時間もあるので、役で遊ぶっていうことを自分のテーマにして、いろんな人を観察しながら、新鮮に敏感に稽古しています」今回、松尾のほかに石田圭祐、鈴木壮麻と魅力的な客演が揃う。前山は「勉強になります。松尾さんをはじめ先輩方は、引き出しも多いしリラックスして演じられている。最終的に僕らもその域まで到達できればと思います」女性役を演じる前山と西井。父親役の松尾も「カツラをつけていると、あんな子いたっけ?とか一瞬思う」と笑う。西井「シーリアのイメージは女子高生です。『先輩に話しかけられた!やばーい!』みたいな感じで。でも最近、友達にも仕草が女性っぽいって指摘されて(笑)」前山「ロザリンドは劇中で男装しますし、さらに恋人の前で女性のマネをするっていう四重構造で。その複雑さが演じていて面白いです。恋人に対してどれくらいの割合で男を見せるか女を見せるか、など」松尾の演じる2役は、兄弟ながら真逆の性格。「髪がなびかないように速く走れって、そんなことを求められている感じ。前公爵はひとつ悟ったみたいな人で、フレデリック公爵は権力を欲しいままにしている。その両方で力強さと威厳と、スピードも要求される。大変だけどやりがいのある作業をしているなって思いますね」(松尾)前山「(お客様が)恋がしたくなったら僕らの成功だと思います。それぞれの個性が強い分、いろんな角度で観られるので、何度でも楽しんでもらえたら嬉しいです」西井「恋して夢中になっているときって本当に突拍子もないことをしますし、そんな僕たちの姿をツッコミ気分で観ていただければ」松尾「多分、シェイクスピアが書いたときにすごく力を入れたのはキャラクター設定だと思うんです。どの登場人物に一番肩入れしたり、応援したり、共感を覚えたかを試すのも面白いと思いますよ」公演は10月14日(金)から30日(日)まで東京・本多劇場にて。その後、山形、兵庫を巡演。取材・文:中川實穗
2016年10月06日原田優一出演の音楽劇『瀧廉太郎の友人、と知人とその他の諸々』が、10月5日(水)に開幕する。音楽劇『瀧廉太郎の友人、と知人とその他の諸々』チケット情報音楽家・瀧廉太郎にまつわる“IF-イフ-”の物語である本作は、『故郷』『朧月夜』『荒城の月』など唱歌の中に存在する作者不詳曲の作曲に関わったとされる岡野貞一と、天才とうたわれながら弱冠23歳で亡くなった瀧廉太郎が音楽と向き合う姿を、事実を交えながら展開していく。岡野役の原田は初演からの出演。演出は再演版から引き続き板垣恭一。今回、本番まであと約1週間というタイミングの通し稽古におじゃました。感動したのは登場人物6人それぞれの芝居の豊かさだ。物語は、ドイツ留学中の瀧(和田琢磨)が暮らす部屋に、日本から仕事でやってきた岡野(原田)が訪れるシーンから始まる。誰もいない部屋をひとり見回す岡野のただそれだけの姿から、瀧への想いや再会の喜びが流れ込んできて、あっという間に気持ちを掴まれた。また、瀧が病を告白するシーンでは、それまで多くを語らなかった瀧が爆発するように感情を吐露する。その言葉は八つ当たりともいえるひどいものだが、悲しみや悔しさなど言葉とイコールにならない感情がひしひしと伝わってくる。ヴァイオリニスト・幸田幸(愛加あゆ)と瀧の間にそっと存在する恋心も、ふたりが語り合う姿を見ているだけでときめいてしまうほどかわいい。ふたりの恋から感じる瑞々しさはこの物語の潤いだと感じた。そして、コミカルさも本作の魅力。幸の世話人として瀧とも交流があるフク(星野真里)と岡野のやり取りには何度も笑わされた。他にも、岡野の酔っぱらう姿は絶品だし、役人・野口(佐野瑞樹)のお説教はどこか楽しいし、基吉(Wキャスト・白又敦/服部武雄)の笑ってしまうほどの軽薄さは魅力的。コミカルさや笑いの中にも真実や温かさがあり、どれも大切なシーンとなっている。本作は「音楽劇」だが、ミュージカルのように心情を歌うのではなく、物語の流れの中で唱歌を原田と愛加が歌うというもの。唱歌は『荒城の月』など誰もが歌ったことのあるものだが、原田や愛加の歌声で聴くと極上。ふたりの声が合わさると鳥肌が立つ。何気なく歌ってきた唱歌に感動する経験は新鮮だった。芝居と歌とピアノの生演奏が互いを高め合うかのように存在している舞台。シンプルなのに豊かで、舞台の醍醐味を感じられる本作は、老若男女問わずにオススメしたい。公演は、10月5日(水)から10日(月・祝)まで、東京・草月ホールにて。取材・文:中川實穗
2016年10月05日11月に上演される舞台「あずみ~戦国編」の公演成功祈願と制作発表会が東京・花園神社で行われ、主演の川栄李奈、鈴木拡樹、早乙女友貴、小園凌央、有森也実、星田英利、構成・演出を手がける岡村俊一が登壇した。本作は小山ゆうの漫画『あずみ』が原作。昨年、川栄主演で上演された「AZUMI~幕末篇」の前作、言わばパート1にあたり、舞台では10年ぶりのリメイクとなる。【チケット情報はこちら】まず岡村が作品について「テーマは『正義とは何か』。いろんな戦争において、味方の側の正義と、敵の側の正義がありまして。刺客・あずみは雇われる人ごとに使命が変わっていくわけです。自分に命令する人によっての正義。正しいと思ったことが本当に正しかったんだろうかと、ひとりの少女の目で戦国時代というものを捉えていくという壮大な物語でございます。本当の正義は一体誰の心にあるのかということをテーマに、この物語を作っていこうと思います」と話した。あずみを演じる川栄は「みんなで団結していいものができたらと思っています」と挨拶。岡村は「川栄ってばかだばかだと言われますけど元々の性能はいいので、まず間違いないと思っています。あずみは人間ですが最も強い兵器。誰があずみを持つか、その一番強い兵器が何を選ぶか、それは本当に正義のためにふるっていいものなのか、みたいなことを問うてる作品です。あずみを演じる川栄がとんでもない…神のような瞬間を作るのが目標です」と話した。また、見どころのひとつである殺陣について「去年も驚かれてましたけど、その1.5倍くらいの数をあずみひとりで斬るんですよ。相当激しい殺陣になります」と明かした。その殺陣について川栄は「前回は早乙女さんが教えてくれたので、今年も期待して任せています!」と笑顔をみせた。あずみと同じく刺客として育てられたうきはを演じる鈴木は「冷静な立ち位置であずみをずっと見守るポジションなので、しっかりと見守りたいと思います。うきはの恋もしっかりと描けるようにがんばりたいです」。あずみたちを狙う性別不詳の美しい刺客・美女丸を演じる早乙女は「僕は美女丸が昔から好きで、いつかやってみたいと思っていたので、こういう機会をいただけてとても嬉しく思っております。美しく、人を殺すことに快感を覚えるという変態なので、どこまで変態になれるか、がんばってみたいと思います」上演は、11月11日(金)から27日(日)まで東京・Zeppブルーシアター六本木にて。取材・文:中川實穗
2016年10月03日太鼓芸能集団「鼓童」が9月から4か月に渡り全国35都市を巡る『鼓童ワン・アース・ツアー2016~螺旋』。「鼓童ワン・アース・ツアー」シリーズの最新作となる本作は、8月にサントリーホールで上演された「鼓童創立35周年記念コンサート」第二夜で初演を迎えた作品。鼓童 チケット情報本ツアーの千穐楽に出演する船橋裕一郎(鼓童代表)、坂本雅幸に話を聞いた。8月の35周年記念コンサートを経ての本ツアー。「この夏に『螺旋』は初演を迎え、お客様にも好評をいただきました。今回はいよいよ全国ツアーということで、初演からより洗練し、熟成してお届けできると思います。鼓童の創設当初からの曲『モノクローム』から、全く新しい曲まで。これまでの35周年と、(演出の坂東)玉三郎さんがいらっしゃってからの16年の融合が集約できたと思います」(船橋)この演目が初披露された記念コンサートでは、奏者以外の役割も果たした坂本。「サントリーホールでみんなが演奏してるところを観て、自分のグループのことではあるんですけれども、『なんて誇らしいんだ』と涙が出ました。3日間違う舞台を作るのは大変なことでしたが、やり終えてみると、みんな自信がついたのではないかと思います」(坂本)古典の曲と新曲が合わさり、螺旋のようにぐるぐると回り進化していくイメージで構成されている本作。その最後に演奏され、タイトルにもなっている『螺旋』という新曲は「さまざまな種類の日本の太鼓を使って、西洋の楽器も取り入れた曲。これまで玉三郎さんが鼓童で作られたもの、それは楽器もそうですし、音の出し方もそうですし、それがかなり集約されています。この楽曲を観ていただくだけでもすごく面白いかと思います」(船橋)坂本「鼓童は、『ザ・和太鼓』っていうのじゃないんですけど、それをつき詰めていくことで逆により日本人らしさが出ていると言われます。『ザ・日本』ではない切り口の時にも、なぜかより日本が見えてくる感じがすごくある。その感じをぜひご覧ください!」船橋「この挑戦があったから次はこっちに行けるんだなというような、次の例えば40周年、50周年に向けての大きな踏み出しになる作品となりました。ぜひ会場で、いろんな音を生で楽しんで、五感を刺激していただけたらと思います」千穐楽は12月21日(水)から25日(日)まで東京・文京シビックホール 大ホールにて。現在ツアーにて全国巡演中。取材・文:中川實穗
2016年10月03日「近代演劇の父」と称されるヘンリック・イプセンの傑作『幽霊』が、朝海ひかる主演で9月から上演される。演出は、数々の話題作を手掛け、昨年も『廃墟』『マンザナ、わが町』で読売演劇大賞最優秀演出家賞を受賞した鵜山仁。舞台『幽霊』チケット情報シェイクスピア以降、世界で最も盛んに上演されている劇作家のひとりであるイプセンだが、その戯曲の数々は発表当初、“スキャンダラス”と考えられていた。中でも本作は、自由恋愛や近親相姦などタブーに言及した内容で、イプセンの母国・ノルウェーの劇場は上演されず。結果、発表の翌年1882年に、イプセン戯曲としては初のアメリカ(シカゴ)で初演された作品。孤児院の開院式を翌日に控え、アルヴィング夫人(朝海)の屋敷には、マンデルス牧師(小山力也)が立ち寄り、愛するひとり息子のオスヴァル(安西慎太郎)も帰省していた。だがそんな中、彼女がおそれていた〈幽霊〉が再び現れる。そこから明るみになっていく数々の真実。夫人がひた隠しにしてきた因襲の幽霊とは――?稽古開始から2週間ほど経過したこの日。稽古場では、アルヴィング夫人がマンデルス牧師にある秘密を告白する濃密なシーンが繰り返されていた。朝海と小山の会話だけで、“立派な夫”を持つ妻として生きてきた夫人の、予想だにしない過去が明らかになっていく場面。美しい言葉遣いでやり取りされる会話の一つひとつに、長年ひた隠しにしてきた真実やそのさらに奥にある夫人の執念が現れ、稽古場にも緊迫感が漂う。稽古は、シーンを少しずつ区切り、ひとつの言葉、ひとつの動きの意味を確認しながら進められていた。演出の鵜山は、台詞について一方的に説明するのではなく、例えば「捨てた男にこういう話をするのはある種の復讐なんですかね?」など、役者自身の解釈をその都度聞き、会話しながらそのニュアンスを確認していく。動作についても、一歩近づくときの距離から椅子から立ち上がるタイミングまで、すべてを精査し、繰り返し、探っていく。そうやってじわりじわりと変化を重ね、気付いたときにはふたりの言動の端々から濃密な空気が漂う、見てはいけないものを見せられているような気にさせられるシーンになっていた。淡々と進められているように見えて、すべてのシーンに熱量と体力が注がれている。その分観る側は、本作の恐ろしさや重苦しさにどっぷり浸り、存分に楽しめると感じた。最後に待っている衝撃の重さへの期待が高まる稽古場だった。舞台『幽霊』は9月29日(木)から10月10日(月・祝)まで、東京・紀伊國屋ホール、10月13日(木)・14日(金)兵庫・兵庫県立芸術文化センター阪急中ホールにて上演。取材・文:中川實穗
2016年09月27日今年3月に東京で上演された『歴タメLive~歴史好きのエンターテイナー大集合!』の大阪公演が、10月15日(土)・16日(日)に開催される。舞台で活躍中の人気俳優たちがコントや歌で歴史の面白エピソードを表現するライブイベント。染谷俊之、杉江大志ら俳優陣に加え、Co.慶応や金田哲(はんにゃ)らも出演。出演者の鈴木拡樹と井深克彦に話を聞いた。【チケット情報はこちら】舞台、ライブと2014年から続く本シリーズ。鈴木は「もうホームな感じがしますね。集まったときに『この座組で作る』というよりも『この家族で作る』感じがあります」、井深も「ほんとにその意識はある!それだけ相手のことを信頼できているので、例えばハプニングが起きても、それをバネにしてよりいいものを作れるような。みんなで助け合ってやっていけることは自信にもつながります」東京公演から半年ぶりのライブだが、井深は「このカンパニーのキャストは面白いことが好きだったり、サービス精神が旺盛な方が多いので、大阪向けのアドリブシーンとかも入れてくる人がいるんじゃないかなと思って。僕は逆にそれに怯えてます(笑)」。大阪が地元の鈴木は「自分が長く関わってる作品を地元の大阪に、自分としては“持ち帰れる”みたいなところもあるんですけど、そうなるのはすごく嬉しくて。だからこそ関西方面のお客様にも楽しんでいただきたいし、知っていただいて、続く舞台も観てもらえるようになったらいいなって。ひとつ勝負所だなと感じている部分もあります」大阪では新作コントも披露予定。コント初参加となる細貝圭の役柄を聞いてみると「聞いて即笑っちゃったんだけど…ペリーです」(鈴木)。「ピッタリですよね。海外で生活していた期間が長くて、日常生活で突然英語使ったりするようなちょっと風変わりな方なので(笑)。新しい風を起こしてくれるんじゃないかなと思います」(井深)さらに今回は、初の公式グッズも発売。そのひとつが、キャスト陣が扮した歴史上の人物の“うちわ”。うちわを振って応援できると聞いた井深は「それ、(自身演じる)吉良上野介がいない…みたい感じになりかねないじゃないですか!吉良のうちわを買ってください!(笑)」「前作観ていただいた方も今回観ていただく方も同じように大盛り上がりできるようにパワーアップさせなきゃいけない」(鈴木)とキャスト達が取り組む公演は、10月15日(土)・16日(日)に、大阪・松下IMPホールにて。取材・文:中川實穗
2016年09月23日梅棒 6th OPUS『GLOVER -グラバー-』が10月に上演される。今作のモチーフは、シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」。不朽の名作を“ダンス×J-POP×演劇”の梅棒スタイルで上演する。本作にゲストとして出演するのが、舞台で幅広く活躍する大貫勇輔と、この4月に48グループを卒業したばかりの梅田彩佳。今回、梅棒の総合演出・伊藤今人、大貫、梅田に聞いた。梅棒 チケット情報「これ以上はない100点のキャスティングができました。これでつまんなかったら俺の責任です」と話す伊藤。大貫の印象は既出の対談で語ってもらったが、梅田に関しては「梅ちゃんがセンターをやっていた『抱きしめちゃいけない』(アンダーガールズ/’11)のMVが焼き付いてて。透明感があってダンスが上手いので、いつかヒロインを外部から呼ぶってことになったときは梅ちゃんがいいねって話をずっと梅棒ではしていて」と熱烈オファーだったことを語る。「ヒップホップとハウスダンスを2年間やっていましたが、それ以降はAKB48だけなのでダンスがちゃんと踊れるか心配」と話した梅田だが、伊藤は「ダンスの上手い下手じゃないんですよ、梅棒。もちろん、技術があるに越したことはないですが、そこを超越した表現力だったりとか、気持ちの表れを僕らは大事にしていて。ダンスがうまいだけの人には出せないようなところを出していきたいっていうのが梅棒のひとつの挑戦ではあるので。ていうかそもそも(梅田は)うまいんで丈夫です!」。伊藤が「スーパースキルダンサー」と評す実力派・大貫も「僕はもう120%生かしてくれるのを期待してついていきます!」と梅棒色に染まる準備は万全だ。ふたりがどんな役柄になるか聞いてみると「大貫くんは、今回はちょっと荒々しくなってもらおうかなって。泥だらけになって上裸でウオー!みたいな感じ。梅ちゃんはロボットで、イチから感情を学んでいくんです。その後ふたりがどうなっていくのかは、劇場でのお楽しみです!」(伊藤)大貫「創っていく作業の時間がすごく楽しみですね。それを考えると一番ワクワクするかも。僕も全力を尽くすので、たくさんの人に観てもらえればなと思っています」梅田「ガツガツ踊るのがすごく楽しみになりました。アイドルっぽいダンスはいっぱいやってきたんですけど、ガツガツってあんまりないですし。それをファンの方に観てもらうことも楽しみですね」公演は、10 月15 日(土)から23 日(日)まで東京グローブ座、10月25日(火)から27日(木)まで大阪・森ノ宮ピロティホールにて。取材・文:中川實穗
2016年09月16日14名の俳優による愛憎×群像×スポ魂活劇である『露出狂』が今月30日に開幕する。作・演出は中屋敷法仁(劇団「柿喰う客」)。2010年にオール女性キャストで初演された本作を、2012年にパルコ・プロデュースとしてオール男性キャストで上演。今回は14名×3チーム<チーム露・チーム出・チーム狂>の計32名(2チーム出演者アリ)で上演する。作・演出の中屋敷と、それぞれチーム露・出に出演する市川知宏、陳内将に話を聞いた。【チケット情報はこちら】今回、3チームで上演することについて中屋敷は「3チームでやろうと思ったのではなく、オーディションで一緒にやりたい俳優が多かったということです。既に作ってしまった作品で、僕自身も『この作品はこうあるべきだ』みたいな固定観念みたいなものができてしまっているので、できればそれを崩してくれるような、豊かな彩りを持った俳優さんに出会いたいというのが先にあって。役のイメージを更新してくれそうな俳優さんを探していたら、すごくたくさんいた」。選ぶ基準については「芯のある声、身体、心を持った人。言葉だけ、上っ面じゃない芝居をできる人」だったという。本作の内容について陳内は「(スポ根の)熱いお芝居が始まるんだなと思って観ていたら、途中からおやおやおや、と。これなんの話だろうなって(笑)」、市川も「衝撃でしたね。なにをやってるんだろうと思って。ゲラゲラ笑ったのを覚えているので、それを超えるものを作りたいです」。配役については「みんなを露出させるためには、(各出演者が)これまでどういう見方をされてたのか、どういうイメージの役をやってきたのかがすごく大事で。敢えて若干のミスキャスト、少しピッタリじゃない配役を心掛けました。この人のこういう芝居観たことあるってならないようにしなきゃってことは考えています」(中屋敷)。中屋敷「『露出狂』に出合うと、確実に価値観が変わるんじゃないかなと僕は思っています。世の中の見方とかが変わって人生が楽しくなるんじゃないかな。僕もそういう作品を作れてよかったなといまだに思うので。気持ちいい演劇を観れると思います」市川「小さすぎてアホらしかったり、部活を出ちゃえばどうでもいいことに揉まれてる感じに楽しさを感じてもらえると思います。観て何か感じる作品だと思うので、ぜひ観てほしいです」陳内「32人が入り乱れる稽古は、どのチームも作用されるし作用すると思っていて。その稽古場でのうねりがドーンとお客さんに届くはずなので。いろんなチームを観たくなると思います!」公演は、9月30日(金)から10月10日(月)まで東京・Zeppブルーシアター六本木にて。各回のチケットのほか、チケットぴあではセット券も発売中。取材・文:中川實穗
2016年09月14日舞台『真田十勇士』が9月11日に開幕。それに先がけ囲み取材が行われ、主演の中村勘九郎、加藤和樹、篠田麻里子、加藤雅也、浅野ゆう子、演出の堤幸彦が登壇した。【チケット情報はこちら】2014年の初演から約2年半ぶりの再演となる本作。劇作家・マキノノゾミのオリジナル戯曲で、戦国時代の名将と称えられる真田幸村(加藤雅也)が実は非力な人物で、数々の武功は「十勇士」のひとり・猿飛佐助(中村)の作戦によるものだという発想をもとに、佐助が大嘘で戦国の世を生き延びていく痛快な物語。9月22日(木・祝)には、同じく勘九郎主演で映画版が公開される。初日を迎え、勘九郎は「堤監督が製作発表のときにおっしゃっていた『大変です』という言葉はまさにその通りでした。昨日初めて舞台で通すことができたんですけれども、今日は初日ですが『千秋楽にならないかな』と思っております(笑)。ただ、それくらい大変だということは、それだけ極上のエンターテインメント作品になっていると思うので、自信を持ってお客様にお届けしたいです!」と挨拶。初演と映画では由利鎌之助を演じ、今回の再演では佐助の相棒・霧隠才蔵を務める加藤和樹は「映画を経ての再演なので、パワーアップしているところがたくさんあります。僕も村井(良大)くんもそうですけど、役が変わってる人もいますし、今回から参加される方もいます。なので再演というよりは、いろんなことがパワーアップした初演だと僕は思っております。前回を観た方も今回初めて観る方にも最高だったと言ってもらえるような舞台にしたいです」と熱く語った。初演からの変化について堤は「初演で作り上げた回る舞台や、自由自在に動き回るセットを生かした合戦のシーンを一切合切リニューアルしました。前回観られた方も、よりパワーアップしてるなと思っていただけると思います」と紹介。初演と映画、今作と真田幸村を演じる加藤雅也が「舞台では生身の身体で向かっていく“熱”をお客さんに見せていければ」、勘九郎も「初演でも舞台の“熱”に重きを置いてやっていました。今回も舞台裏で何人かぶっ倒れてます」と話すように、舞台ならではの魅力は“熱”。公開舞台稽古では、映像やプロジェクションマッピング、ワイヤーアクションが魅せる華やかさと共に、生身の人間が目の前で演じるからこその“熱”が伝わる舞台を披露した。公演は10月3日(月)まで、東京・新国立劇場中劇場にて。その後、神奈川、兵庫と巡演する。取材・文:中川實穗
2016年09月13日シンガーソングライターにして俳優の中川晃教が、デビュー15周年を迎え精力的に活動している。7月にはミュージカル『ジャージー・ボーイズ』で実在するシンガー、フランキー・ヴァリ役を熱演。この後も『マーダー・バラッド』『フランケンシュタイン』と出演作が目白押しだ。そんな中、この夏には自身のルーツである“音楽”に焦点を当てたライブコンサートも立て続けに開催。中川に話を訊いた。チケット情報はこちら8月8日には東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団とともにコンサートを行った。「やっぱり(歌手として出発した)デビューを振り返ると“音楽”というものが一番、僕の核になっていると思うんです。その音楽で、デビューの月に皆さんと触れ合えることが出来た。僕にとっても本当に特別な一夜でした。あの日はフルオーケストラならではの音楽の中で、僕がこの15年で培った経験が歌声として表現できたらと思ってやりました」。あの日オーケストラをバックに届けられた中川の歌声はどこまでも透明で美しく、感動的だった。その感想を伝えたところ「嬉しい!」と少年のような顔で笑う。「でも客席の一番後ろまで届くような濁りのない歌のイメージというのは、ミュージカルをやったことによって自分が得ることできた歌唱だと思っています。僕自身、最初の誰に教わったわけでもない音楽家としての第一歩の歌い方が“1stボイス”、その後ミュージカルなどの出演を経て、テキストや譜面の中で求められる声に、自分の個性をどう乗せていくかという経験からの歌声が“2ndボイス”と位置づけているのですが。今“3rdボイス”という次のステージを見始めています。それは『ジャージー・ボーイズ』のフランキー役に出会ったことが本当に大きい。彼特有の“トワング”という発声を含め、その声の出し方を取得することで、これだけの音楽性が自分の中で広がるんだということを実感しています。それは一言で言えば“みんなから愛される声”かな(笑)? その声を聞いたらみんなが「中川晃教ね」って思ってもらえる、その声を極めていきたいです」。すでにボーカリストとして、ミュージカル俳優として唯一無二の立ち位置を確立している彼だが、さらに高みを目指しているようで、そのあくなき向上心に驚かされる。さて、彼が次に開催するのは、音楽を追求する“I Sing”シリーズのオールタイム・ベストコンサート『I Sing~Crystal~』。「15年僕と共に歩んでくれた人、1か月前に僕を知ってくれた人、すべての人にとっての“中川晃教の最高の今”をお届けしたいです。バンドでやるのも2年ぶり。だから8月のコンサートともまったく違うものになりますよ! みんなで一緒に楽しめるもの…“一体感”を大切に作りたいです」。アニバーサリー・イヤーをまさに止まらない勢いで駆け抜けている中川。最後に、彼にとって音楽とは? と訊いたところ「成長していくもの。すごくのびしろがあるもの」と即答した。まだまだ、彼の飛翔は終わらない。コンサートは9月18日(日)に東京国際フォーラム ホールCにて開催。
2016年09月12日長塚圭史、中山祐一朗、伊達暁による演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」が、旗揚げ20周年の今年、2004年の作品『はたらくおとこ』を再演する。キャストは阿佐ヶ谷スパイダースの3人に加え、池田成志、中村まこと、松村武、池田鉄洋、富岡晃一郎と初演時のメンバーが再集結。女性キャストの北浦愛は今作で初出演。作・演出の長塚に話を聞いた。【チケット情報はこちら】20周年の公演に『はたらくおとこ』を選んだことについては「ひとつは『はたらくおとこ』を2016年に上演したらどういう反応が返ってくるのかなっていう興味。12年前とは世の中が全く変わってるわけで、今、どういう風にこの作品が響くのかという興味は大きくありました。それと、阿佐ヶ谷スパイダースを好きなお客さんから再演の希望がすごく高いこともあります。でも、成志さんもまことさんもいないってなったら、やらなかったかもしれないです。そのくらいにこの作品は彼らと作ってきたので。それで上演が決まって、気が付くと『20周年だ』みたいな」と、20周年は後からついてきたものだったそう。長塚は「僕ら10周年も15周年も見落としてきてるから」と笑う。再演については「楽しみですよ。僕は『失われた時間を求めて』(2008年)くらいから、『はたらくおとこ』時代のお客さんに随分敬遠されたんじゃないかと思ってるんです。わざわざ難しいことをやってるみたいに言われるんだけど。そんなつもりはなくて。でも言われ続けるわけですよ。『圭史くんの作品、変わった』って。で、まあじゃあそういうのを1回景気づけにやるか、みたいな。やるなら面白くしますよ、当然ですけど。前回以上の作品にしたいなって思うし。ギャグもやりますよ。この『はたらくおとこ』に笑いは絶対必要だから」再集結するキャストについては「みんな多分、阿佐ヶ谷スパイダースがどうとかっていう考えではないと思うんですよ。『はたらくおとこ』をどう面白くするかっていうことだけで向かってくると思うから。有意義なクリエイションができることは確信しています。でもまあ会ってみないとわからないですね。なんか盗賊みたいな人たちが1回わかれて、もう1回集まるみたいな。そういう感じあるんですよ(笑)。それも、集まって同窓会するんじゃなくて、同じかそれ以上のことしようっていうんですから。その盗賊が成志さんとかまことさんでしょ?おかしいよね(笑)」公演は11月3日(木・祝)から20日(日)まで東京・本多劇場にて。その後、福岡、大阪、仙台など全国6か所を巡演。取材・文:中川實穗
2016年09月08日植田圭輔と平野良がW主演を務める舞台『インフェルノ』が9月に開幕する。同作は、講談社「ARIA」にて連載中の同名漫画(原作:高殿円、漫画:RURU)が原作。孤児だった男ノエル(平野)とマフィアの御曹司リッカ(植田)の、血より濃い“親子”の絆を描くサスペンスアクション。脚本は原作者である高殿円が手がける。その稽古場にお邪魔した。【そのほかの画像はこちら】皇歴235年、かつての東京は今では“ラージ・プリズン”と呼ばれ、巨大な暗黒街と化していた。その場所にシマを持つマフィアの三大勢力のひとつ、コーザ・ファミリー。その御曹司として育ったリッカの傍には、10年前に“血の誓い”を交わし“息子”となったノエルがいる。スラムでの生活から救い出されて以来、リッカの唯一の家族となったノエル。ある日、コーザの次期ドンであるリッカの兄・サーシャが、新しい幹部を決めるゲームをすると言い出す――。この日、稽古が行われていたのは、リッカ、ノエル、サーシャ(藤田玲※この日の稽古は欠席)、クラウド(山内圭輔)、スネーク(桑野晃輔)、オリーブ(藤原祐規)、ブラック・サンタ(中村龍介)が集結するシーン。まず一度通した後、演出の西森英行から、芝居の動きに加え、客席から見えやすい動線や立ち位置など、かなり細かい部分まで調整が入っていく。台詞の中で特にハッキリ伝えたいワードを説明するなど、みせたい部分、そのみせ方をクリアにする、わかりやすい指示。登場人物の奥に潜んだ感情を、キャラクターの背景なども話しながら丁寧につめていた。キャストも気になる点は積極的に西森と話し、その結果、台詞の順番が変更することなどもあった。その後、再び同じシーンを始めると、一気に空気に飲み込まれた。サーシャの右腕・クラウドがノエルの怪しい過去を暴露し、リッカがノエルの潔白を懸けてルーレットを回すという、ふたりの一挙手一投足に火花が散るシーン。挑発と計算を伴い次々と揺さぶりをかけるクラウド。しかし、リッカが揺らいでないのは観ていて伝わる。リッカを演じる植田が醸し出す気高さや強さがその空間全体を飲み込んでいた。その後、物語はサーシャの鶴の一声で、執行役員の椅子を懸けたロシアンルーレットへとうつっていく。引き金を引けば死ぬかもしれない状況下での振舞いが、各キャラクターを表しており、印象的。銃をこめかみにつけ、ふっと表情を変えたノエルにヒヤッとさせられるものがあった。舞台『インフェルノ』は、9月3日(土)から11日(日)まで東京・東京ドームシティ シアターGロッソにて上演。取材・文:中川實穗
2016年08月31日1630年頃のロンドン、グローブ座を舞台に、かつての名優と少年俳優たちによる演劇界の裏側を描いた『クレシダ』が、9月4日(日)に開幕する。今回、その稽古場にお邪魔した。舞台『CRESSIDA クレシダ』チケット情報主演は平幹二朗。グローブ座の演技指導者となった元名優を演じる。他にも浅利陽介、花王おさむ、高橋洋ら実力派が顔を揃える。演出は、今最も勢いのある演出家との呼び声が高く、2016年は『BENT』や『イニシュマン島のビリー』を手掛ける森新太郎。タイトルの『クレシダ』は、シェイクスピアの『トロイラスとクレシダ』に登場する女性の名前。女性役は少年俳優が女装して演じていた時代の物語で、クレシダ役に抜擢された少年俳優・スティーブン(浅利)と、ある思惑があり彼に演技指導を始めるシャンク(平)を中心に展開する。その日、まず稽古していたのはラストシーンだった。平ひとりでの語りと、浅利と橋本淳の会話で構成された、シンプルなシーンだ。その10分ほどの場面を、丁寧に1時間ほどかけて作っていく。森は「今はこう見えているが、こう見せたい。そのためにこうしたい」と演出意図を伝え、ひとつの台詞、ひとつの動きに対し、納得できるまで粘る。82歳の大ベテラン・平にも臆する様子はなく、もちろん平も真摯に応える。森の作品への愛情、そして役者への信頼を感じる稽古場だと感じた。そうやって大切に作られたラストシーンは、ぜひ劇場で確認してほしい。ちなみに、スティーブン(浅利)からハニー(橋本)への恋心に対するひとつの答えが見えるシーンはとてもかわいかった。スティーブンの素直な台詞も、大人になりかけのハニーの表情も魅力的。続いて一幕に戻り、グローブ座の楽屋シーンへ。少年俳優たち(橋本、碓井将大、藤木修)が当時のドレスを纏って登場。彼らのクラシカルなドレス姿は麗しいが、そのドレスを雑にポイポイ脱ぎ捨てたり、取っ組み合いの喧嘩をしたりと、少年らしい騒がしさが舞台を楽しく盛り上げる。そこにやってくる「幼すぎる喋り方をする14歳の少年」を違和感なく演じてみせた29歳・浅利もさすが。そんな中でもやはり平の存在感は圧倒的。空間が一瞬で平のものになる瞬間は、観ていて気持ちがいい。長年役者を続けてきた平が演じるかつての名優の台詞は、一言一言が強く響く。舞台『クレシダ』は、9月4日(日)から25日(日)まで東京・シアタートラムにて。その後、水戸、大阪を巡演。取材・文:中川實穗
2016年08月30日劇団プレステージが、9月2日(金)から東京・CBGKシブゲキ!!で第11回本公演『リサウンド~響奏曲~』を上演する。本作に3兄弟の役で出演する今井隆文、大村まなる、長尾卓也に話を聞いた。劇団プレステージ『リサウンド~響奏曲~』チケット情報今回、3度目のタッグとなるほさかよう(空想組曲)が脚本・演出を手掛ける本作。「ドラマ6.5:コメディ3.5な作品です。(劇団員の猪塚)健太とか(平埜)生成とかが出ないでこういうドラマ作品をやるのは、かなりの賭け。そこが抜けてドラマやれんのかってみんな思ってると思うし、出ないメンバーも『ん?』って思ってると思うんです。だからそのメンバーに『これ出たかったわ』って言わせるのが今回の目標というか。それが多分お客さんも一番喜ぶと思う」(今井)早くに両親を失った倉橋家の三男・奏(そう/大村)は、バンドマンである長男の響也(きょうや/今井)に憧れ、自分もバンドを始めようとしていたが、突発性難聴で両耳が聞こえなくなってしまう。そんな弟のために次男の楽(がく/長尾)は教師の夢を奏に託し、一家の大黒柱として働き始める。「大丈夫」と何事もなかったかのように大学に通う奏。だが、次第に兄弟の気持ちはすれ違い、不協和音を奏ではじめる――。長男を演じる今井が「僕はギターボーカルなので大変ですよ。まず音楽スタジオで楽器の練習をしてから稽古場に来てます」と話すように、今回はバンドの生演奏も。耳が聞こえなくなる三男役の大村も「ただ手話をやってもお客さんたちは『ん?』ってなる。そこに役として何かひとつ要素を足さなきゃいけないのが難しいですね」と、さまざまなチャレンジと向き合っている。中でも次男役の長尾は「卓也の見たことない顔見てます、今」(大村)と言われるように、芝居への挑戦の最中。「劇団ではバラエティ担当だったので。僕が今までやってきてない役で苦戦しています」と全身全霊で取り組んでいた。11年目となった劇団プレステージ。「今は『これが劇プレだ』じゃなく、『お、こっちで来たか』という新しいものをやらなきゃいけないとき」(今井)と語る。長尾「劇団プレステージの印象ってバラエティのほうが強いと思うんですけど、新たな一面を楽しみにしてもらえればと思います」大村「今回は、劇団メンバーの内側のまだ見せてなかった部分が出ている作品になってるんじゃないかと思います。作品としても、なにか持って帰ってもらえるものになっていると思うので、ぜひ観に来てください」今井「観なきゃ損しますよ!やりたいことが見つかっていないという人はぜひ観に来てください」『リサウンド~響奏曲~』は9月2日(金)から18日(日)まで、東京CBGKシブゲキ!!にて。チケットは発売中。取材・文:中川實穗
2016年08月30日せたがやこどもプロジェクト2016 キッズ・ミュージカル「ワンサくん」-祭りにいくぞ!大脱走! が、8月18日に、東京・シアタートラムで開幕。ギャオ!組のゲネプロを取材した。キッズ・ミュージカル「ワンサくん」チケット情報本作は、手塚治虫が1970年代に発表しアニメ化もされた未完の漫画『ワンサくん』が原作。キッズキャストはオーディションで選ばれ、主人公・ワンサ役のみのり(ギャオ!組)・鈴木颯人(ワァオ!組)をはじめ、個性溢れる顔ぶれが揃った。演出はダンスカンパニー「コンドルズ」の小林顕作、脚本は『桐島、部活やめるってよ』にて、第36回日本アカデミー賞優秀脚本賞を受賞した喜安浩平が手掛ける。演出の小林は、NHKEテレ「みいつけた!」のオフロスキー役や、シアタートラムで毎年上演する「子どもとおとなのための◎読み聞かせ『お話の森』」(せたがやこどもプロジェクト)で、子供たちにもおなじみ。物語は、10円で売られ、お母さんと離ればなれになった野良犬・ワンサくんがお金持ちのお屋敷に連れてこられ、そこで10匹の子犬と出会うことから始まる。ある大切なことのために脱走を企てるワンサくんだが、意外とお屋敷は居心地がよくて――。子供たちの元気な歌とダンス、コミカルな芝居が満載の本作。ワンサくん含め12匹の子犬たちが舞台の上を駆け回り、賑やかで楽しい舞台を作り上げる。子犬たちのキャラクターもそれぞれ個性的で、男の子チームは幼く、女の子チームはおませ。観ていると思わず笑ってしまう。そんな子犬たちを舞台上でまとめるのが、お屋敷で暮らす犬で唯一の大人・市川しんぺー。ときには一緒に駆け回り、ときにはフォローしながら、まさに“脇を固めて”いた。そして、主役であるワンサ役のみのりは、透明感のある声と真っ直ぐに心に届く芝居が魅力的。あっという間に観客を惹きつけ、物語を運んでいく。語り部として登場する遠藤三貴とふたりのシーンでは、手塚治虫原作ならではの切なさややさしさをしっかりと感じさせた。子犬たちが全身で表現する犬の動きも取り入れたポップなダンスも必見。劇中では、まさかの理由でかわいらしい殺陣も観られる。ちなみに“まさかの理由”は舞台好きなら納得かも!?ぜひ劇場で確認して!楽しくて、温かくて、自然と笑顔になれるキッズ・ミュージカルは8月28日(日)まで、東京・シアタートラムにて上演中。上演時間も約1時間15分と観やすいので、家族みんなで過ごす夏の締めくくりにオススメ!取材・文:中川實穗
2016年08月25日今年、15周年を迎える梅棒が10月に上演する、梅棒 6th OPUS『GLOVER -グラバー-』。今作のモチーフは、シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」。“ダンス×J-POP×演劇”の特徴的なスタイルで、梅棒が古典に挑戦する。梅棒 6th OPUS チケット情報そんな挑戦作で主役・ロミオを務めるのが大貫勇輔。幅広い演劇で活躍する実力派の大貫だが、梅棒の総合演出・伊藤今人の対談で、意外な接点が判明した!伊藤「僕は劇場から作品をイメージすることが多いのですが、グローブ座と言えばやっぱりシェイクスピア。昔から梅棒が古典をモチーフにやったらどうなるかって言われていたし、僕らは普段演劇を観ない人にも観てもらいたいと思っているので『ロミオとジュリエット』を題材に選びました」梅棒と大貫、ダンス・演劇という共通項はあれど異色の組み合わせのように思えるが、大貫「梅棒さんの名前はずっと知っていましたが、あるとき今人さんがやられていることを知ってびっくりしました。2013年に出場した『ストリートダンスバトル DANCE@LIVE』で、MCの今人さんが応援してくれたんですよ」。伊藤「さっきそのことがわかって、テンションめっちゃ上がってます。あの時の彼に出てもらえるなんて!」と、思わぬ繋がりが発覚。大貫はダンスバトルに「Nonsuke」という名前で出場していたそうで、伊藤は「舞台に興味ないかなと思ってた」と笑う。大貫にオファーしたのはそんな事実が発覚する前だが、「“やべーヤツ”に出てもらおうって話をしてて。主役を務められるイケメンで、お客さんが『この人が梅棒に出るんだ』『どんなことになるんだろう』ってワクワクしてくれる方ってやっぱり限られてるんですよ。でもまさか出てくれるとは!」(伊藤)。「尊敬するのは、お笑い芸人とダンサー。人を笑顔にしたり元気にさせることがすごく好きなので、ダンスとエンターテインメント性がかけあわさった作品に出られるのはすごく嬉しいですね。僕がずっと願い続けているスタイルの作品です」(大貫)。大貫「15年やられている梅棒さんに、僕がなにかひとつ新しい石を投げ入れられたら嬉しいし、それが僕の仕事だと思うし。与えられたものを僕はとにかく全力でやる。いろんなものを感じてくれるような新しい舞台、新しい場になったらいいなと思います」伊藤「まず、見たことないのんちゃん(=大貫)が見れますよって言いたいですね。それに、彼が加わることで見たことない梅棒になります…Win-Winです!楽しみにしていてください」公演は、10 月15 日(土)から23 日(日)まで東京グローブ座、10月25日(火)から27日(木)まで大阪・森ノ宮ピロティホールにて。取材・文:中川實穗
2016年08月24日創立37年を迎える劇団スーパー・エキセントリック・シアター(SET)の、第54回本公演『土九六(どくろ)村へようこそ』が、この秋、上演される。結成以来、解りやすくて誰もが楽しめる“ミュージカル・アクション・コメディー”をつくり続けるSET。その座長であり、演出と出演を務める三宅裕司に話を聞いた。SET『土九六村へようこそ』チケット情報脚本に初めての作家・福田哲平を迎えた本作。三宅は「昔のSETの匂いがする作品になると思います」と語る。“昔のSET”とはどんなものかと聞いてみると「(当時は)座付作家が世の中よりも何歩か前へ行っているような人間で、すごくブラックなテーマ、重いテーマを持ってきていたんですよ。でもそれをストレートに出しちゃうと、お客さんが重い気持ちで観なきゃならない。だから、テーマはそのままで楽しく観てもらうために、音楽とダンス、歌、笑い、アクションを入れて、“ミュージカル・アクション・コメディー”にしたんですね。今作も、そんな楽しさの最後に『こんな重いテーマでやっていたのか』と感じてもらえる作品です」物語の舞台は、今からさほど遠くない未来。土九六(どくろ)村では、村立50周年のお祭りが催される。歌と踊りで盛り上がり、今年の豊作を「ドクロ様」に祈る村民一同。しかし、村の若者たちは、「ドクロ様」「村のしきたり」に違和感を覚え、親世代の村民たちとぶつかる。そんな村に移動型ミュージカル劇団「放浪座」がやってくる。しかし、彼らもまた、単なるミュージカル劇団ではなかった――。「すごくいい作品になると思いますよ。移動型ミュージカル劇団や村のお祭りのシーンでは音楽、歌、ダンスがありますし、喧嘩のシーンではアクションもあります。もちろんギャグも入りますし、社会的なテーマもある。見どころ満載です」SETの作品に欠かせないのは“笑い”。「テーマと笑いの落差の大きさ、音楽の入れ方、ダンスのかっこよさ。SETの特徴を形にしなければ、たくさんの公演がある中でSETを選んでくれたお客さんが満足してくれないですよね」と、創立37年となる今も変わることなく徹底的に作り上げる。「SETのファンの方には、今回は少し懐かしく観ていただけたり、しっかりとテーマを出してきたねって思っていただけそうです。でも基本的には“ミュージカル・アクション・コメディー”ですので、誰もが楽しめる芝居になりますよ」公演は、10月21日(金)から11月6日(日)まで東京・サンシャイン劇場にて、11月11日(金)・12日(土)には愛知・穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホールにて上演。取材・文:中川實穗
2016年08月24日昨年、好評を博した岸惠子の一人芝居『わりなき恋』が、9月に再演される。【チケット情報はこちら】本作は、3年前に発表しベストセラーとなった同名恋愛小説を、著者である岸みずからが脚本、朗読、さらには衣裳も手掛け、舞台化した意欲作。海外で活躍するドキュメンタリー作家・笙子(69歳)が、パリに向かう機内で大手企業に勤める兼太(58歳)と隣り合ったことをきっかけに惹かれ合い、「最後の恋」を自覚しながらも逢瀬を重ねていく、というストーリーを、岸の朗読で届ける。今回の再演について岸に話を聞いた。「やってよかったと思っています。自分で書いて自分でやるんですから、想いも特別ですし」と初演を振り返る岸。「舞台でやってみないかという提案に、最初はとてもダメだと思ったんです。私、舞台慣れしてないから。舞台は3回しか経験がなかったので。でも、4年かけて思う存分書いた作品ですから、やってみようかって。舞台は、座って読んだらみんな退屈しちゃうと思って立って、衣裳も6回変えて、シナリオも十数回書き直してうんと凝縮して出来上がったものです。だから、1回だけで終わってしまうのがちょっと惜しいなと、再び上演することにしました。新しい発見があるといいなと思います」84歳を迎えた今、恋の話を届ける理由を聞いてみると「私は高齢者をみじめに扱わないでほしい、モノのように扱わないでほしいんです。その極端な例として、高齢者にも恋はあるよ、ということを(小説で)書いてみたかったんですね。それが一番手っ取り早かった。人生の終わりに虹が立つような、それは消えるものではあるけれども、一瞬の輝きがあってもいいんだよということを絶対に書きたかったんです」初演に続き、衣裳も自身が手掛ける。「この長い物語でみなさんが退屈しちゃうといけないから、せめて衣装でちゃんと見せようと思って。それで6回も(衣裳を変えて)、大変でしたけど(笑)。衣裳というのはまるごとその人があらわれるでしょう?なので凝りました」「主人公は私自身の性格そのものかもしれません」と話す岸。そんな主人公の美しい恋を描いた渾身の作品を、本人の身体を通して表現される贅沢な約1時間30分だ。原作未読でも十分に楽しめる作品。成熟した男女の“最後の恋”をぜひ体感してほしい。公演は9月24日(土)神奈川・神奈川県立音楽堂(木のホール)、28日(水)東京・新宿文化センター大ホール、10月1日(土)埼玉・さいたま市民会館おおみや大ホール、4日(火)兵庫・兵庫県立芸術文化センター阪急中ホール、8日(土)千葉・千葉市民会館大ホール、12日(水)東京・町田市民ホールにて上演。取材・文:中川實穗
2016年08月15日鴻上尚史率いる「虚構の劇団」の第12回公演『天使は瞳を閉じて』が、8月5日(金)に開幕した。【チケット情報はこちら】本作は、鴻上主宰の劇団「第三舞台」(2011年に解散)が、1988年に鴻上作・演出で初演。以来、再演を重ねてきた作品だ。「虚構の劇団」では2011年8月に上演され、今回5年ぶりとなる。初日の公演を観劇した。舞台は、放射能に汚染されて人間がいなくなった地球。人間がいないせいで天使は暇を持て余していた。しかしあるとき、天使の1人が「透明な壁」に囲まれた小さな街を見つける。そこはかつて原発事故が起き、放射能を外に漏らさないために壁で覆った街。しかしその壁が結果的に街を守り、人類滅亡から逃れた唯一の場所だった。そこで暮らす人間は、街ができた経緯を忘れ、楽しそうに生活している。その姿に惹かれ、1人の天使が人間になる。もう1人の天使は、そんな人間たちの毎日をただただ見つめ続ける――。描かれているのは、人間の営みだった。天使が思わず人間になってしまうほど思いやりや夢に満ちた世界が、(放射能ではなく)人間の心に起因して少しずつ変わっていく。その小さな発端の連なりや、そこから生まれる別の感情、なにかのきっかけで弾ける残酷さ……そういったものが一つひとつ丁寧に描かれ、演じられている。また、鴻上作品ならではの笑いやダンスのシーンは楽しい。ユタカ(上遠野太洸)とマリ(鉢嶺杏奈)の新婚夫婦がいちゃつく姿では、美男美女の壊れっぷりに笑った。物語は少しずつ回転速度を上げていく。いつでもやり直せた日々は、気付けばもう引き返せない速度で動いており、舞台上の空気も変わってしまっている。そんな変化をただ見つめることしかできない天使(小沢道成)の表情は、やさしく切なく悲しい複雑な色をしていた。上演前、舞台上には「通行制限中帰還調整区域につき通行止め原子力災害現地対策本部」と書かれた看板が立っていた。本作はもともとチェルノブイリの原発事故を発端に書かれたものだが、今その看板は身近で生々しいものになった。1988年に書かれた戯曲が驚くほど今とシンクロする。過去に観たことある人も、ない人も、ぜひ“今”観てほしい作品だ。『天使は瞳を閉じて』は8月14日(日)まで東京・座・高円寺1にて。その後、愛媛、大阪、東京にて上演。取材・文:中川實穗
2016年08月12日小説家・樋口一葉(1872~1896)の井上ひさし評伝劇『頭痛肩こり樋口一葉』が、8月5日に開幕した。舞台『頭痛肩こり樋口一葉』チケット情報1984年の初演以来、上演回数は755回を数える井上の名戯曲を、今回は樋口一葉没後120年記念として上演。樋口一葉を永作博美が演じ、一葉を取り巻く女性たちとして三田和代、熊谷真実、愛華みれ、深谷美歩、若村麻由美が2013年に続いて出演する。5000円札にまでなった偉大な小説家・樋口一葉だが、道のりは真っ直ぐではなかった。舞台で描かれるのは、父や兄に先立たれ、樋口家の戸主となり、小説で身をたてる以外に道はないと奮闘する一葉19歳から24歳の死後2年まで。盆の樋口家の様子を通してみせていく。「♪ぼんぼん盆の16日に地獄の釜の蓋があく」と、軽快な歌で幕が開いた。6人の女性がお盆のたびに樋口家に集い、近況を報告であーだこーだと笑って泣いて、不幸もあれど毎年賑やか。舞台の上では、幽霊役の若村がワイヤーで吊られているかのようにスーッと動き、三田や愛華は下ネタで大笑い。以前、永作が本作について「女は生きてても死んでも元気」と話したが、本当に観ているだけで元気が出てくる賑やかさで楽しい。しかし、三田演じる一葉の母は明るく社交的だが「世が世であれば」「まさかこんな時代になるとは」という言葉を度々口にし、過ぎ去った時代への無意識な執着が、娘の恋を妨げ、借金を増やしてしまう。熊谷演じる小学校の先生も、愛華演じる“世が世ならお姫様”も、夫により身分を落とすが、そこに抵抗する術がない。そんな時代の話なのだ。永作演じる一葉も、戸主として、貧しさに苦しみ、恋を捨て、家族のために七転八倒している。盆にその愚痴を話す様には愛らしさがあり、話を聞く女性たちも明るく受け流す。だが、ふと一葉が舞台上に一人になると、そのたびに突然ポカッと暗闇が開いたように世の中への憤りや絶望が見えるのだ。その暗闇がこの作品をただの楽しい作品にはせず、“それでもたくましく生きる美しさ”を感じさせてくれる。深谷のみせるラストシーンは本当に美しく、もともとは井上ひさしが「女性が活躍する時代のために」と書き下ろした戯曲だそうだが、今の時代、すべての人に届く作品だと感じた。8月25日(木)まで東京・シアタークリエにて。9月に兵庫、新潟、宮城、山形、滋賀、長崎、愛知で上演。取材・文:中川實穗
2016年08月10日長塚圭史のソロプロジェクト葛河思潮社の第五回公演『浮標(ぶい)』が、8月4日に神奈川で開幕した。本作は、1940年に初演された三好十郎の戯曲で、葛河思潮社の公演全5回のうち3回上演している作品。日中戦争の影が忍び寄る時代を舞台に、洋画家・久我五郎(田中哲司)が、自己の芸術を信じ、肺を病む妻の美緒(原田夏希)を看護しながら貧困と闘う姿を描く。舞台セットは、黒い木枠の中に白い砂が敷き詰められた、砂場のような造り。両側に椅子が並べられ、出演者は出番以外もその椅子に座り、砂の上で繰り広げられる芝居を見つめる。死にゆく妻を必死で看病する男・五郎を演じるのは、田中哲司。葛河思潮社の本作初演から3度目の出演で、最愛の妻が生き延びられるならどんなことでもする、というギリギリの精神状態で、約4時間(1幕75分、2幕55分、3幕90分)を演じ切る。そして、病床の妻・美緒を演じるのは原田夏希。長塚演出作品は2作目で、本作は初めての出演。最初から最後まで寝たきりの状態、つまりほぼ上半身だけで、死を目前にした人間の揺れ動く感情を豊かに演じていた。夫婦のそばには、耳は遠いがおしゃべりで明るい“小母さん”がいて、五郎と共に美緒の看病をしている。そこに訪ねてくるのが、美緒の親兄弟や、金貸しの友人、大家、腕利きの医者、兵隊の友人らだ。彼らは、五郎に画壇の話をして圧力をかけたり、美緒の財産を譲るように画策したり、出征が決まって挨拶に来たりする。しかしだからといって、単純なヒールやヒーローにはならない。夫婦を困らせるために存在しているのではなく、彼らは彼らで生きていくために今この場面に登場していると感じさせるのだ。生きることはきれいごとでは済まされない。しかし、きれいなこともちゃんとある。さまざまな想いが幾重にも重なった芝居で、生きることと切り離せない“生々しさ”を際立たせる。命が終わりつつある美緒にねだられ五郎が詠むのは『万葉集』だ。言わずと知れた、日本に現存する最古の和歌集。約1300年前の歌が今も詠み継がれていることに、美緒に残された「生」を見つつも、やはり「生きる」ことの絶対的な価値を突きつけられた。公演は、8月7日(日)までの神奈川・KAAT神奈川芸術劇場を皮切りに、愛知、兵庫、三重、福岡、佐賀、東京にて上演。取材・文:中川實穗
2016年08月10日漫画『ドラえもん』と奈良の老舗「中川政七商店」のコラボレーション商品が登場。2016年8月17日(水)より、全国の「中川政七商店」ブランド直営店および公式オンラインショップにて発売する。「のび太くんのメガネ」は30本限定のアイテム。『ドラえもん』の連載が始まった1970年に用いられていたメガネの製造加工で作り上げることで、作品が誕生した時代を切り取り、現代に伝えることに挑戦した。のび太のかけている丸メガネを再現したようなデザインだ。「しずかちゃんのバスソルト」は、彼女が憧れる牛乳風呂をイメージした、牛乳由来成分配合のバスソルト。海塩が溶けたあとは、メッシュ袋をやさしく揉むとラベンダーの香りが楽しめる。さらに、ドラえもんのひみつ道具の一つ、タイムふろしきを和風の色調にデザインした「お弁当のためのタイムふろしき」も登場。他にも、陶製のドラえもんフィギュアの中に、名言集が入っている「ドラえもんしるべ」が展開される。名言は全5種のうち、いずれか1種が入っている。【詳細】ドラえもん×奈良の老舗 中川政七商店発売日:2016年8月17日(水)価格:・のび太くんのメガネ 45,000円+税<30本限定>・しずかちゃんのバスソルト 1,400円+税・お弁当のためのタイムふろしき 3,000円+税・ドラえもんしるべ 450円+税取り扱い:全国の「中川政七商店」ブランド直営店、公式オンラインショップ※「のび太くんのメガネ」展示販売店舗東京本店、表参道店、札幌ステラプレイス店、エスパル仙台店、東京ミッドタウン店(中川政七商店街)、ルミネ新宿店、LACHIC店、ラクエ四条烏丸店、ルクアイーレ店、アミュプラザ博多店
2016年08月07日創業300周年の中川政七商店が会社名を冠して展開する自社ブランド、中川政七商店が8月17日から30日まで、藤子・F・不二雄による漫画『ドラえもん』とのコラボレーションによる企画展「これからをつくろう 1716→2016→2116」を開催する。同企画では、“『ドラえもん』で描かれる22世紀の未来に日本の工芸がドラえもんのひみつ道具をつくっていますように”という願いを込めて、数量限定のコラボレーションアイテムを製作。会期中に全国の中川政七商店ブランド直営店、公式オンラインショップにて貴重なグッズの数々を販売する。ドラえもんのひみつ道具「タイムふろしき」を和風の色調にデザインした「お弁当のためのタイムふろしき」(3,000円)は、保冷材を入れられるポケット付きでお弁当を包むのにぴったり。「ドラえもんしるべ」(450円)では、陶製のかわいらしいドラえもんフィギュアの中に、ドラえもんの名言5種がランダムで入れられた。しずかちゃん憧れの牛乳風呂をイメージした、牛乳由来成分配合の「しずかちゃんのバスソルト」(5個入り 1,400円)も販売される。その他、ペットボトルカバー(1,700円)やギャザーポーチ(1,800円)、がま口ポーチ(3,200円)、マグネットしおり(800円)など、中川政七商店の定番人気のアイテムにドラえもんの後ろ姿を刺繍したアイテムも登場。赤ちゃんの玩具となる柔らかいボール(2,500円)や、にぎにぎ(2,000円)、色違いのベビースタイ(1,800円)、赤ちゃんのおくるみにもちょうどいいサイズの蚊帳ケット(3,800円)にもドラえもんが刺繍された。また、14年の発売以来、中川政七商店で累計約7万枚を売り上げている「ドラえもんふきん」(500円)に加え、同じ生地で作られた長いサイズの蚊帳タオル「1,200円」も合わせて発売される。また、『ドラえもん』の連載が始まった1970年によく用いられていたメガネの耳部分の加工法・縄手(なわて)を採用した「のび太くんのメガネ」(4万5,000円)を一部店舗にて限定発売。日本最大のメガネ産地である福井県鯖江市に残る資料をもとに産地の知恵と技の集結で作られた、世界に30本しかないメガネとなっている。取り扱い店舗は、東京本店、表参道店、札幌ステラプレイス店、エスパル仙台店、東京ミッドタウン店(中川政七商店街)、ルミネ新宿店、LACHIC店、ラクエ四条烏丸店、ルクアイーレ店、アミュプラザ博多店。
2016年08月06日日本を代表するコメディエンヌ・大地真央が主演を務めるサスペンス・コメディ『一人二役~殺したいほどジュテーム~』が10月に上演される。その製作発表が8月1日に都内で行われ、大地、森公美子、益岡徹、上演台本・演出を手がける福島三郎が登壇した。舞台『一人二役~殺したいほどジュテーム~』チケット情報本作は、“笑いとサスペンス、そして幕切れのどんでん返し”が特徴の作風で、フランスのヒッチコックと称されるロベール・トマが原作のサスペンス喜劇。1970年にパリで初演された。伯父の莫大な財産を相続したフランソワーズ(大地)は、結婚したばかりのリシャール(益岡)が実は財産目当ての乱暴な放蕩者であると分かり、離婚を考え始める。ある日、家政婦のルイーズ(森)の恋人がリシャールと瓜ふたつの弟・ミシェル(益岡/二役)だと知り、彼を利用して離婚の手続きをしようと謀る。ところがミシェルは兄と正反対な臆病者で――。果たしてフランソワーズの逆転劇は成功するのか?会見で大地は、自身がロベール・トマの作品は2作品目、森、益岡、福島との共演も2作品目であることに触れ、「2、2、2、2、って続いて、猫好きの私としては『にゃん、にゃん、にゃん、にゃん』って感じで、とっても縁起がいい作品になるんじゃないかと期待しております」と笑顔で挨拶。福島が演出プランに関して「みなさんコメディに関しては、放っておいてもおもしろいことをやってくださる方々。気をつけるとしたら、シリアスにいかないといけないところでどうしてもダジャレを言ってしまう真央さんが…(笑)」と話す通り、会見中にも大地は自身の役がスイス人だという話から「なんでも“スイス”イといく」とダジャレを言うなどし、会場を盛り上げた。また、「ストレートプレイですが、大地さんと森さんが出演するので、不自然じゃない形で歌のシーンを入れたい」(福島)と、大地と森によるデュエット曲があることも明らかに。大地の大ファンである森は喜びをあらわにした。森は「今、大人がやるお芝居が少なくなっているような気がして。(本作は)今年一番じゃないかと思うくらい平均年齢が高いお芝居になっておりますが(笑)、がんばらせていただきたい!」と抱負を、益岡は「(物語の)最後は、アゴがはずれるような、『これありか!?』という印象を持ちました。稽古に入るのも、お客様に観てもらうのも楽しみ」と話した。舞台『一人二役~殺したいほどジュテーム~』は、10月7日(金)から10日(月・祝)まで東京・THEATRE1010にて。その後、12月まで全国15会場で上演。取材・文:中川實穗
2016年08月02日演出家・西田シャトナーが自作を上演するプロジェクトSHATNER of WONDERの第4弾『ソラオの世界』が7月28日(木)に開幕した。【チケット情報はこちら】2009年の初演以来、5度目の上演となる本作を今回、戯曲段階から再構築。自分の夢の中に閉じ込められてしまう主人公・ソラオは多和田秀弥が演じる。多和田は約1年ぶりの舞台出演となり、初主演。授業の単位とバンドのスタジオ代のために、ある実験の被験者となったソラオ(多和田)。トラブルで昏睡状態に陥り、自分の夢の中に閉じ込められてしまう。夢の中でソラオは、実験の連絡をしてきた声のきれいな女性・ヨルダ(はねゆり)と再会。ふたりは恋人同士になり、夢の中の毎日が光り輝いてゆく。だが、ふたりの過ごす場所に凶暴な魔物たちが近づいていることに気付き、ソラオはヨルダを連れて海の孤島へと逃げこむが――ソラオは果たして目を覚ますのか。多和田の舞台にかける熱い想いが伝わるソラオだった。いくつも印象的なシーンがあったが、特に心に残ったのは、夢の中で過ごす幸福な50年。ソラオは、自分の夢で生きるヨルダを消さないために目を覚まさないと決める。夢の中でふたりは夫婦になり、共に老いていき、いつしかひとりになる。そのとき、それまでのしあわせに包み込まれるような空気がスッと溶けてなくなり、多和田から、寂しさと満足と諦めとさまざまな感情が静かに流れ込んでくる感覚に襲われた。舞台中央には、ぐるりと回転する人の顔の形をした大きな舞台装置があり、登場人物はそれぞれカラフルなヘアメイクに幻想的な服装を身に付けている。そんな、どこか現実離れした世界の中で、ソラオが寝たり覚めたり、夢と現実を行き来する姿を観ているうちに、いったいどこからが現実でどこからが夢なのか、だんだんとわからなくなっていく。今観ているのは夢?現実?気付けばあっという間に引き込まれていた。帰り道、ふと「この舞台も誰かの夢だったのでは?」と考える。夢と世界の境について想像してみる。観劇後、自分がみている世界を不思議な空気で満たしてくれる作品だ。SHATNER of WONDER #4『ソラオの世界』は、7月31日(日)まで、東京・Zeppブルーシアター六本木にて。取材・文:中川實穗
2016年07月29日