「舞台化絶対無理」と言われた同名人気ギャグ漫画の舞台化第三弾となる『舞台 増田こうすけ劇場 ギャグマンガ日和 ~奥の細道、地獄のランウェイ編~』が2月15日に開幕。それに先がけてゲネプロと囲み取材が行われ、阿部丈二、小笠原健、大場美奈(SKE48)、米原幸佑、宮下雄也、脚本・演出のなるせゆうせいが登壇した。『舞台 増田こうすけ劇場 ギャグマンガ日和 ~奥の細道、地獄のランウェイ編~』チケット情報原作は、歴史的な偉人、動物、ケダモノ、パロディなどさまざまなキャラクターが登場し、シュールなギャグを展開する増田こうすけ作のギャグ漫画。舞台版は2015年に初演され、シリーズ第三弾となる今作は初の完全新作のオリジナル。ゲネプロ後の囲み取材で、なるせが「前回『登場人物が多いです』ってすごく言われたので、今回は更に倍ぐらいにしたいなと思いながらやったんですけど(笑)」と話したように、今作では阿部演じる松尾芭蕉と小笠原演じる河合曽良を中心に、ヒロインのマチ子(大場)や浅野内匠頭(宮下)、堀部安兵衛(米原)ら40以上ものキャラクターが登場。一瞬しか登場しないキャラクターなどもいてマニア心をくすぐる。そんな登場人物たちが好き勝手に動き回っているようでいて「ただトリッキーなことをしているわけじゃなくて、ラストに向かってどんどんつながっていく」(米原)のが気持ちいい。初演から出演する宮下も「なるせさんの描く世界観と、増田こうすけ先生の世界観ってなんか似てる」と話す通り、まさに“増田こうすけ劇場”が“体感”できる舞台となっている。「原作の台詞をうまく使いつつもストーリーは完全にオリジナル。本当にこの舞台を観ない限り見られないシーンの連続です!」(阿部)。キャストも「(市川)刺身ちゃんとか、かなでちゃんとか、よしもと勢がすごく引っ張ってくれました。初参加のいーま君は稽古場のアイドルでした」(小笠原)とさまざまなジャンルで活躍するメンバーが集結。「役者は曲者が揃ってますから。彼らのバトルは僕としても観たいと思っていますし、お客様にも観てほしいです」(なるせ)、「役者にとって“笑いをとる”というのは実はすごく難しいこと。それに対してそれぞれがどういう風に立ち向かっていくかっていうのも観ていいただけたら」(阿部)。「気軽に観て面白い舞台。何も考えずに来てほしいです」(大場)という本作。ギャグと下ネタはもちろん、「せっかくラフォーレでやらせていただけるということで爪痕を残したい。普通の舞台にはしたくないなって想いはありました」(なるせ)と、思いもよらぬ演出やファッションビルらしい演出もあるのでぜひ楽しんで。公演は2月21日(火)まで、東京・ラフォーレミュージアム原宿にて。取材・文:中川實穗
2017年02月17日アラサー女性5人の本音を描いた舞台「野良女」が4月に上演される。その公開制作発表が開かれ、主演の佐津川愛美をはじめ、芹那、沢井美優、深谷美歩、菊地美香、演出を手掛ける稲葉賀恵(文学座)、原作者の宮木あや子が登壇した。舞台『野良女』チケット情報原作は宮木あや子による同名人気小説。宮木自ら“しょぼくれSex And The City @中央線の荻窪駅より西側”とキャッチフレーズをつけたアラサー女性たちの、恋や仕事、病気、性などにまつわる悩みが下ネタ満載のガールズトークで描かれ、出版から8年が経つ今でも根強い人気を誇る。出演女優5人は役柄同様アラサーで、演出の稲葉も「こんなに女が多い芝居、アラサーが集まった芝居も珍しい。はっちゃける女優たちが見られると思いますのでご期待ください」と挨拶した。宮木は、最初はドラマ化の提案だったと明かし「台詞が“ピー”だらけになるので無理でしたって話を聞かされて(笑)。諦めかけてたところに舞台にできます!と。しかし出てくれる女優はいるのだろうかと思ったら意外にも皆さま出てくださって。ありがとうございます!」と笑顔を見せた。女優陣は役衣装で登場し、手にはアルコール。原作の居酒屋トークを彷彿させるスタイルで和やかに進行。恋人が2年間おらず毎晩のように友人と酒を飲む鑓水役の佐津川は「絶対面白いものにしようと思っています!」と熱く語り、下ネタについても「全然平気です。私は事務所NGとかもないので何でも大丈夫!」と気合い十分。彼氏からのDVで痣を作りつつも向けられる憐れみを保険の営業で活かす女・桶川を演じる芹那は「アラサー5人で包み隠さずガールズトークする舞台と聞いて『楽しそう!』と台本を読んだらめっちゃ下ネタ多くて、どうしようって思いました(笑)」実家は大金持ちで学生時代はミスコン三連覇、現在は役員秘書という華やかな生活を送るが、彼は50代でバツイチの朝日役の沢井は「私もアラサー真っ只中なので、この作品で内面がえぐられるのかなと思っています。闘いまくっていい作品になれば」仕事に情熱を持ち正社員採用されたばかりだが早くも転職活動中、カナダに住む元カレに未練がある壺井役の深谷は「年相応のアラサー、なおかつ下ネタを言う役は初めて。自分の新境地になるんじゃないかなと思います」独身だと言い張る既婚者と不倫中、情緒不安定で手首に傷がある横山役の菊地は「これだけハードな作品でも思う存分やれるのが舞台。その分エネルギーを使うと思いますが、力を合わせて新しい何かを打ち出していけたら」生々しくパワフルな作品になりそうな本作は4月5日(水)から9日(日)まで、東京・新宿シアターサンモールにて。取材・文:中川實穗
2017年02月14日増田こうすけ原作の同名人気ギャグ漫画を舞台化した『舞台 増田こうすけ劇場 ギャグマンガ日和 ~奥の細道、地獄のランウェイ編~』が2月15日(水)に開幕する。その稽古場に潜入した。「舞台増田こうすけ劇場ギャグマンガ日和~奥の細道、地獄のランウェイ編~」チケット情報原作は、コミック累計発行部数600万部を誇り2005年にはアニメ化もされた人気ギャグ漫画『ギャグマンガ日和』(集英社『ジャンプ SQ.』にて連載中)。名作のパロディや歴史的な偉人、動物、ケダモノなどさまざまなキャラクターが登場し、シュールなギャグを展開する世界観は幅広い世代に人気を博している。そのぶっとんだ世界観が再現された舞台版は2015年に初演され話題に。昨年の再演に続く今作は、完全新作のオリジナルで描かれる。脚本・演出は、初演・再演に続き、なるせゆうせいが務める。今作の主役となるのは、再演にもゲスト出演していた阿部丈二演じる松尾芭蕉と、小笠原健演じる河合曽良。ヒロインであるマッチを売る少女・マチ子は大場美奈(SKE48)が演じる。さらに前作に引き続き、浅野内匠頭役で宮下雄也、閻魔大王役で岡田地平が登場するほか、米原幸佑(堀部安兵衛役)、石渡真修(鬼男役)、森本亮治(伊能忠敬役)、寺山武志(大石内蔵助役)、和合真一(三蔵法師役)らさまざまなジャンルで活躍する出演者が集った。稽古は既に通し稽古の段階に入っていた。早いテンポ、唐突な展開で進んでいく本作。ほとんどのキャストが複数役を演じ、シーンによって目まぐるしく登場人物が入れ変わりながらシュールな世界を表現していく。ギャグに次ぐギャグ、下ネタに次ぐ下ネタで、それを演じるキャスト達の芝居も濃厚。中でもヒロイン役の大場は、好きが高じて前作ではアフタートークイベントに呼ばれた原作ファンだが、アイドルがなかなか言わないワードをバンバン連呼する様に原作愛も感じられた。また、「そいつどいつ」の市川刺身や「3時のヒロイン」のかなで、「レインボー」の池田直人、いーまら普段はお笑いで活動するキャスト達の芝居も個性的。稽古場で何度も大爆笑となっていた。ギャグ漫画独特の空気を丸ごと立体化したような舞台。漫画やアニメ原作の舞台は女性に人気が高いが、本作は男性も存分に楽しめるはず。ぜひ劇場で体感してほしい。公演は2月15日(水)から21日(火)まで、東京・ラフォーレミュージアム原宿にて。取材・文:中川實穗
2017年02月14日兄弟コンビ「中川家」があるステージで魅せたある行動について、「誰も嫌な思いをせず、お父さんと赤ちゃんにとっては、最高の思い出となった」と、ネットで「神対応!」と呼ばれ、話題となっています。■兄弟コンビ「中川家」が魅せた神対応とはライブイベントのステージで兄弟コンビ「中川家」が出演しているときに、前方の客席で赤ちゃんが泣き始めてしまったそうです。父親は赤ちゃんを連れて退席しようとしたところに、中川家の弟・礼二さんからこんな声がかけられました。「出て行かなくていい。そんな良い席なのに。赤ちゃんは泣くのが仕事」。兄の剛さんもすかさず動物の鳴きまねをして赤ちゃんを泣きやませたというからすごいの一言。昨日の中川家ほんと神だったな。前方の席で、赤ちゃんが泣きやまくて退席しようとしたお父さんに礼二さんが「出て行かなくていい。そんな良い席なのに。赤ちゃんは泣くのが仕事。」と声をかけ、さらにステージに呼んで赤ちゃん抱っこして、お兄ちゃんが犬やネコの鳴き真似して赤ちゃん泣き止んだりして— いなまりん☆ (@maripop0210) 2017年2月1日 ネタ中に響き渡る泣き声に、まわりも当人も気まずい空気だったと思うけど、それをひろって笑いに変えて、誰も嫌な思いをせず、お父さんと赤ちゃんにとっては、最高の思い出となったことだろし、さすがだなと思ったよ。赤ちゃんのお兄ちゃんが、階段でつまづいたこともしっかりひろっていじってたしね— いなまりん☆ (@maripop0210) 2017年2月1日 このようにユーザーによってネットに発信され、「中川家さんの神対応感動しました。お父さんも赤ちゃんも絶対うれしかったと思います」「世の中こんくらい余裕が欲しいよね」といった声があふれました。ちなみに中川家は、「第10回ベスト・プラウド・ファーザー賞in関西」で受賞しています。■赤ちゃんに「泣いてもいいよ」の声赤ちゃんが外出先で泣いてしまうことに、いつもドキドキ緊張しているママは多いと思います。とくに電車やバスなど公共の場で泣かれてしまうと、あたふたと降りたくなる気持ちになることでしょう。記事を書いている私自身も子どもが赤ちゃんのとき、泣かれることが怖くて、電車やバスに乗ることに恐怖を感じていました。たまにどうしても電車に乗らなければいけないときも、祈るように時間を過ごしていたように覚えています。でも今回の中川家のように「赤ちゃんは泣くのが仕事!」「泣いたって大丈夫!」という声は少しずつ広がりを見せています。ウーマンエキサイト「WEラブ赤ちゃん」プロジェクトでも、次のようなコメントが寄せられました。「子どもが1歳くらいの頃、単身赴任中の夫に会いに、毎週末電車に乗っていました。ぐずる息子に暖かく声をかけてくれたおばちゃん達に、何度救われたかわかりません」(40代女性)「電車の中で泣いている赤ちゃんが気になって見ちゃうけど、それってママからすると恐縮させてしまうんだろうな…全然気にしてないよ!」(20代女性)「公共の場で泣かれるとお母さんやお父さんとしては心臓が縮こまる気持ちだと思います。そんなとき、『大丈夫だよ迷惑に思ってないよ!』と言いたいものです」(30代女性)「デパートなどで愚図っている子供を見ると、ママ頑張れ!!と応援したくなります。大丈夫。誰ひとり迷惑をかけずに育った子供などいません」(元赤ちゃん女性) WEラブ赤ちゃんプロジェクト には、赤ちゃんを温かい目で見守っている人たちの声が、今も集まり続けています。赤ちゃんがぐずるのを心配するママ、外出先で肩身の狭い思いをするパパに、ひとこと温かい言葉をかけるだけで世の中がぐっと変わってくるかもしれませんね。
2017年02月08日Live Musical「SHOW BY ROCK!!」が、5月に初のライブイベント「THE FES Ⅱ-Thausand XVⅡ」、10月に新作公演を行うことがSANRIO EXPO 2017で発表され、その囲み会見にクロウ役の米原幸佑、アイオーン役の輝馬、ヤイバ役の鳥越裕貴、ロム役の滝川英治が登壇した。本作は、音楽・バンドをテーマとしたサンリオキャラクターで、スマホ向けソーシャル音ゲーアプリとして240万ダウンロードを突破している「SHOW BY ROCK!!」の舞台化第2弾。5月に初のライブイベント「THE FES Ⅱ-Thausand XVⅡ」、10月にミュージカル公演が上演される。会見では、舞台版の主役バンド「シンガンクリムゾンズ」メンバーを演じる4人が、“痛い中二病全開の、V系ロックバンド”のキャラクタービジュアルで登場。第1弾と変わらぬキャストとなったことを「この4人で出演が決まったことの喜びといったらもう!5月が楽しみで楽しみでしょうがないです」(輝馬)と喜んだ。新作への意気込みを「舞台ならではのシンガンクリムゾンズで暴れ倒したい」(米原)、「来てくださる皆さんとひとつになって盛り上がれるようにがんばります!」(輝馬)、「はちゃめちゃな奴らが戻ってきました。時間を一瞬で取り戻すような空気感もあって、今からすごく楽しみ」(鳥越)、「個性がバラバラだからこそ奏でられる、僕らにしかできない演奏、四重奏を」(滝川)とコメント。メンバーの印象について米原が「輝馬はマイワールドがすごい。マイペースで、(役と)ぴったりなんですよね。ロム役の英治くんはビシッと決める2割・天然8割みたいな…」と言いかけると、滝川は「ほぼ決めれてへんやん!」とツッコミ。米原は笑いながらも「そんな人が(バンドのリーダーである)ロムをやってるのがすごく愛おしい。それを一生懸命ツッコんで引き出す鳥越ヤイバとか、あとは僕がそれを拾って…。自然とバランスのいいチームになったと思います」。米原「初演はお客さんの歓声でシンガンクリムゾンズとして、クロとしてそこに立たせてもらっていると実感できた。先にライブイベントがあって、その後にお芝居があるというのはすごく楽しみ。5月は本当のライブのつもりで叫んではしゃいでほしいです」輝馬「この4人でバカやりながら演奏して、かっこよく皆さんにお届けして、会場がひとつになれるように頑張りたいです」鳥越「果たしてライブはシンガンクリムゾンズだけなのか…!?ほかにバンドが出るのか!?というところも楽しみにしていただけたら」滝川「熱い熱いステージになりますので、タオルを2、3枚用意してもらった方がいいと思います!」ライブイベントは5月に東京・ステラボールにて、ミュージカル公演は10月に東京・AiiA 2.5 Theater Tokyoにて上演。取材・文:中川實穗
2017年02月07日歌舞伎俳優の坂東玉三郎と太鼓芸能集団・鼓童の共演作『坂東玉三郎×鼓童 特別公演幽玄』が5月に上演される。その制作発表会見が行われ、坂東玉三郎、鼓童の石塚充、中込健太、北前船代表取締役社長の青木孝夫が登壇した。『坂東玉三郎×鼓童 特別公演 幽玄』チケット情報2000年に初めて鼓童の演出を手掛け、12年からは鼓童の芸術監督も務める玉三郎。その玉三郎と鼓童の共演作は『アマテラス』(06年・13年)に次ぐ2作目。本作では世阿弥が見た世界を「羽衣」「道成寺」「石橋」などの能の代表演目を題材に表現し、不世出と評される玉三郎の優雅な舞と世界の絶賛を浴びる鼓童の太鼓に、花柳壽輔をはじめとする花柳流舞踏家の舞踏が華を添える。玉三郎が「“鼓童とも歌舞伎とも違った世界に”という意味で、『幽玄』を題材にさせていただきました」と話す本作は、鼓童創立35周年記念ツアーの締めくくりの公演でもある。「『みんなどんなものが創りたいの?』という話になったときに『“日本のもの”をやりたい』と。それからいろいろ考えて、一昨年から“日本のもの”に向かって創りはじめました。もちろん和太鼓は日本のものなのですが、日本の様式のものをやるというのは大変難しい。和太鼓の世界であればそれなりのものができますが、“日本の様式を持った美しさ”のある舞台を創るのは大変なことだと思っています」と、一つの挑戦であることを明かす。今回は鼓童のメンバーが謡(うたい)をうたうなど、今までにない演出も。玉三郎は「能楽の楽器を使うわけではなく、ひとつの様式というものを学んで、鼓童の楽器あるいは演奏法に翻訳していくわけですから、そこが大変ですね」。石塚も「演奏や音楽の形式として日本のものを扱うのは初めてです。普段、鼓童は人間が生活の中で自然に歌うように出てきた音楽を土台にすることが多かったのですが、今回はなにか人間じゃないところにいく、ということをすごく要求されている。お能のお囃子の間の取り方、声の出し方、先生方の呼吸の仕方も、人間であるというところを超えているような印象がありまして、そこを目指しているのがすごく大変なことです」、中込は「例えば音と音の間が尋常じゃないくらい長く感じたりとか、自分たちにないテンポ感とか音楽の形を耳で聴いて解読するところから始まりました。能は物語があるということで、音の出し方も違うと感じています。能の謡を合わせたとき、自分たちの太鼓の音が全然違う風に聞こえてきたところは驚きでした」と話すなど、玉三郎と鼓童の新たな姿を楽しめる公演になりそうだ。公演は5月16日(火)から20日(土)まで、東京・Bunkamuraオーチャードホールにて上演後、新潟、愛知、福岡、京都を巡演。取材・文:中川實穗
2017年02月03日4月にTBS赤坂ACTシアターで上演される「赤坂大歌舞伎」。2008年に始まり5回目となる今回、初めての新作歌舞伎『夢幻恋双紙 赤目の転生(ゆめまぼろしかこいぞうしあかめのてんせい)』を上演する。その作・演出をつとめるのは、中村勘九郎・中村七之助と同世代の劇作家である蓬莱竜太。赤坂大歌舞伎 チケット情報今作を「演劇界をひっくるめての事件になれば」と熱く語る勘九郎に話を聞いた。「前々から蓬莱さんに書いて欲しいと話していたのですが、4月に赤坂大歌舞伎をやることになって『じゃあここでできるじゃん!』って」と、待ちに待ったタッグであることが笑顔から滲み出る勘九郎。蓬莱といえば小劇場のイメージもあり、先日行われた製作発表会見でも「僕が普段やってる芝居は歌舞伎とは縁遠いというイメージを持っていまして。逆にそれがどう融合するか楽しみ」(蓬莱)と話していたが、勘九郎自身は「蓬莱さんは家族や日常を…日常の変な人たちを描くのがすごくうまい。(蓬莱が脚本を手掛けた)『まほろば』を観たときに絶対に(歌舞伎でも)書いて欲しいと思ったんです」。同世代の蓬莱とのタッグは、父である十八代目中村勘三郎の言葉も背景にある。「父が言っていたんですよ、『俺はしあわせだ。同世代で野田秀樹、渡辺えり、それに串田和美さんとか、いろんな人と巡り会って新しいものを生み出してきた。お前達も巡り会えたらいいね』って。だからこれは喜んでくれると思います。ただやっただけじゃ怒られますけども」。気が弱くイマイチな男・太郎(中村勘九郎)が、愛した歌(中村七之助)を幸せにするために転生を繰り返す物語。勘九郎は「あらすじを読んですぐ電話しましたね、『天才だ!』って(笑)。ミステリーであって、喜劇のようで、笑いながら深い闇に落とされるような話です」。会見では蓬莱が「パラレルワールドみたいなもので、人格がこんなに人生に影響していくんだっていうことが描かれています」と解説。恋模様については勘九郎が「さすが蓬莱さんというような台詞が散りばめられています。(愛する女性に)これを言ったらいけないよとか、これ絶対『帰る』って言い始めるよ…って言葉がね、あるんですよ(笑)。男性も女性も覚えのあるものが表現されると思います」と話し、どこか馴染みやすさを感じさせる。会見では七之助も「リアルな描写。これを歌舞伎にしてどうなるのかなというのが楽しみです」と感想を述べつつも、演者として「役者が一生懸命やらないとダメにしてしまう作品。がんばらないと」と気合いをみせた。公演は4月に東京・TBS赤坂ACTシアターにて。チケットぴあでは2月8日(水)午前11時まで抽選先行プレリザーブのエントリーを受付中。取材・文:中川實穗
2017年02月03日塚田僚一(A.B.C-Z)主演パルコ・プロデュース『サクラパパオー』の上演が、2017年春に決定した。本作は、夜の競馬場を舞台に小さな奇跡が起きるワンナイト・コメディ。喜劇の名手と言われる鈴木聡が主宰する劇団「ラッパ屋」が1993年に初演、95年に再演し、2001年にはパルコ・プロデュースとしても上演された(すべて作・演出:鈴木)。16年ぶりの上演となる今作は、演出を中屋敷法仁(劇団「柿喰う客」代表)が手掛け、新しいコメディとして生まれ変わる。舞台『サクラパパオー』チケット情報主演の塚田に話を聞いた。出演について「すごく嬉しいです。でもそれだけじゃなくて、観に来てくださるお客さんやファンの方々に楽しんでもらえないと意味がないと思っているので、浮かれてる場合じゃないぞって思っています。天使と悪魔的な(笑)」と喜びと気合を滲ませる。本作の印象は「競馬場の馬券売り場の話ですが、競馬を知らなくても楽しめると思います。登場人物は借金を抱えていたり女性問題があったり、第一印象はけっこうネガティブなんですけど、観ていると、みんな愛くるしいというか、かわいらしさがあります。物語が進むにつれてそういうのがわかって、明るく開けていく、みたいな。終わったころにはみんな素敵だなという印象を持ちました」。その中で自身が演じる田原俊夫(たばらとしお)という役は「嘘がつけない人なんですけど、そこがすごく自分と似てるいると感じました。田原は恋人に対してなんですけど、自分だったらテレビに出るときに、がんばろうって思えば思うほど見栄をはっちゃう。こういう自分でありたい、と。でもそこで空回ったり、口だけで行動が示せてなかったりするんです。(田原のように)好きな人の前ではがんばっちゃうのは、自分もそうだろうな、と思いました」。演出の中屋敷とは同世代で、今回が初タッグ。「いろんな作品を幅広く演出されていると聞いて、すごく楽しみです。ジャニーズは初めてになるんですよね。初めてって嬉しいです」。鈴木の作品も初めて演じるが「鈴木さんの作品はずっと観ていて、ジャニーズだと稲垣(吾郎)さんのイメージがあります。身近なお話が多くて、あと、すごくおしゃれだと思います。雰囲気が感じられて」。共演者とは「みんなで競馬場に行ってみたいですね」。「ファンの方は自分のいろんな姿を観てくれてると思うんですけど、この『サクラパパオー』は、その経験をしてきたうえでの『サクラパパオー』。新しい自分が絶対に出ると思うから、楽しみにしてもらいたいです!」公演は、2017年4月26日(水)から30日(日)埼玉・彩の国さいたま芸術劇場、5月10日(水)から14日(日)東京国際フォーラム ホールCほか、宮城、愛知、大阪にて。埼玉、東京公演については、電話抽選先行の申込エントリーを特別電話0570-02-9975にて2月6日(月) 23:59まで受付中。取材・文:中川實穗
2017年02月01日柴田よしきの同名小説を原作とした舞台『猫は毒殺に関与しない』が、2月23日(木)に開幕する。主演は、NHK連続テレビ小説「まれ」(矢野陶子役)、ドラマ「99.9」(谷繁美代子役)などに出演する柊子。演出は俳優の嶋尾康史。舞台『猫は毒殺に関与しない』チケット情報主演を務める柊子に話を聞いた。主演の柊子、演出の嶋尾をはじめとする馴染みのメンバーで年1回上演してきた“アトリエ公演”を「Team337」の公演として初めて上演する今作。昨年12月に上演した大阪公演の感想を聞いてみると「Team337としての旗揚げ公演ということで力を入れて臨みました。これまで毎年やってきたけれど、ここで新たにステップアップするつもりで迎えた公演だったので、初日のドキドキは例年以上でした。そんな中、たくさんのお客様が連日観に来てくださって、満員御礼という言葉がピッタリで。『すごく面白かったよ』という言葉をいただけたので、自信を持って東京公演に臨めると思っています」。原作は、1998年から続く柴田よしきの人気推理小説「猫探偵正太郎シリーズ」の最新作。作家の桜川ひとみが愛猫の正太郎とともに事件の解明に挑むシリーズで、柊子はその桜川ひとみを演じる。読書好きの柊子は、だからこそ小説の舞台化にプレッシャーを感じたという。「本って読む人それぞれの世界があるじゃないですか。しかも長い間愛されているシリーズですから、それをいざ自分がってなると…。なんとか世界観を壊さないようにと意識することしかできないなって」。そんな中での役作りは苦しんだそうだが「大阪公演には原作を読んできてくださった方が結構いたんですけど『面白かった』ってすごく言ってくださって。あと、本を買って帰ってくださる方もたくさんいました」。劇場で販売していた原作が完売したという事実が、舞台の面白さを物語っている。東京公演の舞台である赤坂RED/THEATERは柊子にとって憧れの劇場。「空気感がすごく好きなんですよね。温かな感じがするし、距離感も遠すぎず近すぎずというか。なんかほっとする空気感なんです。最近、用もないのに前を通りますよ。『私、ここに出るんだ』と思って(笑)。自分があの舞台に立つ日がこんなに早く来るなんてって…話してるだけで鳥肌立っちゃいます。だから今回の東京公演は特別です」。「原作を読んだことある人にもない人にも楽しんでいただける自信があります!」(柊子)という公演は2月23日(木)から26日(日)まで、東京・赤坂RED/THEATERにて。取材・文:中川實穗
2017年02月01日『ライブミュージカル「プリパラ」 み~んなにとどけ!プリズム☆ボイス2017』が、1月26日に開幕。その前日、公開ゲネプロと囲み取材が行われ、主人公たち6人を演じる茜屋日海夏、芹澤優、久保田未夢、山北早紀、澁谷梓希、若井友希と、舞台オリジナルキャラクターを演じる高柳明音(SKE48)、畑中智行が登壇した。ライブミュージカル「プリパラ」 み~んなにとどけ!プリズム☆ボイス2017 チケット情報本作は、アイドルテーマパーク「プリパラ」を舞台にアイドルを夢見る女の子たちの姿を描いた同名アニメが原作。昨年2月に初演され、アニメで主人公たち6人を演じる声優がそのまま自身の役柄を演じることでも話題を集めた。今作ではさらに新キャラクター・ジュルルの登場や、アニメ3期の新曲ライブシーンの追加、アニメ版エンディングテーマでもおなじみのPrizzmy☆から高橋果鈴、宮崎妃夏も出演&ライブを披露するなど、さらにパワーアップした内容となっている。アニメ第1クールオープニングテーマ曲『Make it!』で舞台はスタート。主人公たちによるポップなパフォーマンスが一気に劇場の熱を上げる。物語は舞台オリジナルで、ひょんなことから過去にタイムスリップしてしまったらぁら(久家 心・石井心愛/Wキャスト)が、その時代のらぁら(茜屋)と協力し、青井めが姉ぇ(高柳)・青井めが兄ぃ(畑中)の邪魔をかわしながら未来を変えないようにみんなを導くストーリー。 アニメの映像もふんだんに使用されており、そらみスマイルやドレッシングパフェなどアイドルたちのライブパフォーマンスでは、背景で流れるアニメとリンクした動きで本当にそこから飛び出してきたかのような楽しさが味わえる。また、暗闇をサイリウムで照らしたり一緒に歌ったりと、客席から参加できるシーンもたっぷり。客席も一緒に作り上げるライブミュージカルとなっている。また、毎公演後には「プリパラ」アニメキャラクターの声優によるスペシャルミニライブも。毎回異なるキャストで開催され、ゲネプロでは緑風ふわりを演じる佐藤あずさが登場。アニメの劇中歌『コノウタトマレイヒ』などを披露した。囲み取材で茜屋は「今回は畑中さんもアンサンブルのみなさんも舞台の経験がある方で、熱量がすごくて、それをそのまま私たちも受け継いでやれています」。山北は「前回はキャラを守って演じることを重視してたんですけど、今回は更に、いかに自分の個性やアドリブを出すかが加わっていて。それが『プリパラ』のアフレコの現場みたいで楽しいです」と話した。公演は1月29日(日)まで、東京・Zeppブルーシアター六本木にて。撮影・取材・文:中川實穗
2017年01月27日映画『きょうのキラ君』完成披露試写会が26日(木)に都内で行われ、中川大志、飯豊まりえ、葉山奨之、平祐奈、川村泰祐監督が登壇。中川さんと葉山さんは、劇中のキスシーンを再現し、ファンの悲鳴を浴びた。注目のシーンは、中川さん演じるキラが、飯豊さん演じるニノに「チューしていいスか?」と尋ね、ニノがはにかみながらうなずいてキラに近づいてハグ。そして、2人が唇を重ねるというもの。女子のキュンキュンが止まらないシーンだが、今回のニノ役はくじ引きで、なんと葉山さんに決定。妖しいムードに観客が大興奮する中、「やるしかない」と葉山さんは意気込み十分。中川さんは「いままで踏み入ったことのない(世界に踏み入りそう)」とたじろぐが、川村監督のスタートの声がかかると真剣モードに。そして、「奨之、チューしていいスか?」の台詞のあとに、劇中より激しいハグからキスへ…。とはいえ、実際に唇が触れたかどうかは謎だが、中川さんは「映画を撮っときより緊張した。変な汗をかいてる」とドキドキが止まらない様子。葉山さんも「わかる。俺もビッショビショ」と明かすと、「改めて身長が大きくて頼もしいな、ちょっと好きになりそうになりました」と満更でもない表情を見せた。みきもと凜の人気コミックを基にした本作は、他人と関わることが苦手なニノと、誰もが憧れるクラスメイトのキラの切なくもピュアな恋を描いた“キュン泣き”ラブストーリー。少女漫画の実写映画に初主演した中川さんは、川村監督から「キラキラした目で『僕、自信があります』と言っていた」と暴露されると、「やりきれました」と満足気。飯豊さんは「高校生の頃にできなかった青春を短期間で体験できた感じです」と嬉しそうに撮影をふり返った。また、キラの幼馴染みでクールでドSな澪役の平さんは「ドS役は初挑戦だったので、難しくて不安ばかり感じていました」と吐露するも、飯豊たちは「バッチリ!」と絶賛。キラとニノのクラスメイトでムードメーカーの和弘役の葉山さんは、「撮影が始まっても切り替えることなく、そのままの流れでやっていました」と素の自分でノリノリで演じたことを告白。それぞれのエピソードを紹介し、本作をアピールした。『きょうのキラ君』は2月25日(土)より全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2017年01月26日1月20日(金)にミュージカル『手紙』が開幕した。原作は映画化もされた東野圭吾のベストセラー小説。親を早くに亡くし、弟の学費欲しさに殺人を犯してしまった兄と、ある日突然“人殺しの弟”として生きることになった主人公の10年間が描かれた作品で、ミュージカル版は昨年1月に初上演された。今作はその“再演ではなく、再挑戦”。脚本・作詞を高橋知伽江、演出を藤田俊太郎、作曲・音楽監督・作詞を深沢桂子が手掛け、主人公・直貴を柳下大と太田基裕がWキャストで演じる。両バージョンの観劇レポートをお届けする。オリジナルミュージカル『手紙』チケット情報舞台は、兄弟役以外の出演者が客席のあちこちから登場し、舞台上へと集まっていくシーンから始まった。彼らは10年の間に兄弟が出会うさまざまな人物を演じるキャストたち。差別する者、支える者、恋をする者、仲間になる者、傍観する者…。そんな彼らが客席から登場することにも、作品の描くひとつのテーマを感じさせられる。そして、兄・剛志(吉原光夫)が弟・直貴(柳下/太田)に誕生日プレゼントのギターを贈り、「いつかこれで『イマジン』(ジョン・レノンの楽曲)を弾いてほしい」と話す和やかな時間から物語は始まる。しかし続くのは、苦しく重い兄弟の運命だ。罪を犯してしまった兄のたったひとりの家族である直貴を中心に、その周囲の人間の姿、ひいては現代社会の抱える問題をも描く原作。それが歌で、音で、芝居で、驚くほど繊細に描かれていく。中でも、諦めに慣れたかのように見える直貴の、その内側に閉じ込めた感情は、歌だからこそ突き刺さるように響き、ミュージカルの魅力を改めて教えられたように感じた。そんな直貴を演じる柳下と太田は元々タイプの違う俳優だが、今回その差がこの作品をより深くみせてくれた。情熱的で、けれど舞台上の空気を掌握しているようにも見える柳下。まっすぐで、溢れる感情に溺れそうな繊細さが空気を揺らす太田。それぞれの直貴がいて、その兄・剛志がいて、その周りの人間達がいる。絶望、喜び、反発、希望、信念…それぞれの直貴がみせる感情は歌に響き、音に響き、まるで違う作品のようにも感じられた。そのすべてを受け止める音楽という存在、そして生まれたふたつの物語を体感できるのは、この作品の面白さだと感じた。公演は2月5日(日)まで東京・新国立劇場 小劇場にて、2月11日(土・祝)・12日(日)兵庫・新神戸オリエンタル劇場にて。取材・文:中川實穗
2017年01月26日安西慎太郎主演の舞台『幸福な職場~ここにはしあわせがつまっている~』 が、1月26日(木)に開幕する。その稽古場で、安西と作・演出のきたむらけんじに話を聞いた。舞台『幸福な職場』チケット情報本作は、劇団「東京フェスティバル」が2009年に初演し再演を重ねてきた、きたむらの代表作。全国初の心身障がい者雇用モデル工場となった日本理化学工業が初めて知的障がい者を雇用したときのエピソードをベースにしており、今作では知的障がいのある女の子・聡美のほのかな恋心という新たなエピソードが加わる。物語の舞台は昭和34年。大森(安西)は父親が病に倒れたため、急遽、チョークを製造する「蒲田理化学工業」の専務として働いていた。若造が上司になることを快く思わない久我(谷口賢志)や、大森に引き抜かれたものの作業に飽き飽きしている原田(松田凌)が働く工場には、先代に頼まれ住職(中嶋しゅう)も毎日顔を出す。そんなある日、近所の養護学校の教師(馬淵英里何)に頼み込まれ、知的障害者の聡美(前島亜美/SUPER☆GiRLS)が実習で働くことになり――。ストーリーから重い空気も想像していたが、稽古が始まってみると登場人物それぞれに奥深い魅力を感じ、心掴まれ、あっという間に物語に引き込まれた。安西は「(23歳の)僕自身より年上(28歳)で専務という役なんですけど、頑張って自分のランクを上げて年上を演じて、果たして魅力的になるんだろうかと思って。だったら若く見えたとしても会社を守る想いが強いところが見えればいいのかなって」。するときたむらは「すごく頼れる専務になってます。この感じが伝わるとお客さんもいい会社だねって物語の世界に入っていけるんじゃないかな」。稽古場では、キャストがきたむらに芝居のアイデアを出したり、台詞の背景を確認したりする姿も多く見られ、活気が溢れる。きたむらの演出について安西は「きたむらさんは役者の言葉を受け止めてくれるし、ダメ出しもどうやったらちゃんと役者の身体に入っていくかをすごく考えて話してくださる方。そこを諦めないでずっとやってくれるのでありがたいです。きたむらさんについていけば大丈夫だなって信頼させくれます」。きたむらも稽古は「順調すぎるくらい順調」と話し、「キャストの皆さんが本を深く読みこんでくれて、細かいところを丁寧に作っていくような作業をしています。コミュニケーションを取りながらいい形に向かっています」と笑顔。「安西さんの座組っていうやさしい雰囲気が出てます」(きたむら)という本作。公演は1月26日(木)から29日(日)まで、東京・世田谷パブリックシアターにて。取材・文・写真:中川實穗
2017年01月25日畠中恵のファンタジー時代小説シリーズを原作にしたミュージカル「しゃばけ」が、1月19日に開幕。それに先がけゲネプロが公開され、ゲネプロ後の囲み取材には主演の植田圭輔、滝川英治、中村誠治郎、藤原祐規、逢沢優、大平峻也、福井将太、萩野崇、川下大洋が登壇した。ミュージカル『しゃばけ』チケット情報江戸の大店・長崎屋の若だんなで身体は弱いが頭の回転はすこぶるいい一太郎と、彼を取り巻く妖(あやかし)たちの賑やかな日々を描いた小説シリーズは、累計720万部を超える人気作。今回、ミュージカル版ではその第1作目のエピソードを描く。脚本は神楽澤小虎(MAG.net)、演出・音楽は浅井さやか(One on One)。歌とダンスに乗せて描かれる本作。一太郎(植田)や妖たちのみんなで歌うにぎやかなテーマ曲をはじめ、一太郎を見守る佐助(滝川)と仁吉(中村)のデュエット曲や、一太郎と親友・栄吉(逢沢)の美しいハモリで絆を感じさせる曲、屏風のぞき(藤原)・鈴彦姫(大平)・守狐(福井)の妖トリオがポップに歌い盛り上げる曲など色とりどり。十数曲もの楽曲が不思議で温かな物語を彩る。主演の植田は身体は弱いが内側には強さを持つ一太郎を熱演。その一太郎の側にいて、ときには静かに見守りながらもなにかと過保護に一太郎を甘やかしまくる佐助と仁吉を、滝川と中村が真逆のテンションで魅力的に演じる。さらに、衣華やかな衣装も浮世離れした存在を際立たせる屏風のぞき、鈴彦姫、守狐や、ミステリアスな暗夜(萩野)など、小説という文字の世界で生きるキャラクターたちを鮮やかに表現した。また、あちこちに登場する小さな妖・鳴家(やなり)は一般からも募集した3歳~12歳の子役たち。元気いっぱいで可愛らしく、見どころのひとつとなっている。ゲネプロ後の囲み取材で植田は「原作が小説ということで、どうすればわかりやすく伝わるかということを話し合いながら、みんなで作ってきた作品です。一太郎同様、周りの人に支えられて、自分は素敵な環境にいるんだなということを改めて感じられました」と振り返った。滝川は「若旦那、植田圭輔を命に代えても守り通すということを、がんばっていきたいと思います!」、中村は「舞台をやることによってこの作品がたくさんの人に愛される作品になる力のひとつになれたら」、藤原は「ちょんまげ、着物、舞台セットと“和”が詰め込まれていて、なじみやすい舞台になっていると思います。小説原作のむつかしさをお客様にわかりやすく伝えられるようにがんばりたい」とコメントした。公演は1月29日(日)まで、東京・紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYAにて。取材・文:中川實穗
2017年01月24日佐藤アツヒロ主演の舞台『さくら色 オカンの嫁入り』が1月20日(金)のプレビュー公演を皮切りに2月に大阪・東京にて開幕する。その稽古場に潜入した。舞台『さくら色 オカンの嫁入り』チケット情報原作は、第3回日本ラブストーリー大賞ニフティ/ココログ賞を受賞した咲乃月音の同名小説。2010年の初演から4度目の上演で、今回の公演中に公演回数100回を達成する人気作となった。物語の舞台は大阪の下町。ある晩、酔ったオカン(母親/熊谷真実)が若い男を“拾って”きて「オカンな、この人と、結婚しよ思うてんねん」と娘・月子(荘田由紀)に伝えることから始まる。“捨て男”として拾われた研二(佐藤アツヒロ)はその日からオカンと月子の暮らす家に住み、祖父(島田順司)に教わったという美味しい食事を作るようになるが、男性にトラウマを持つ月子は拒絶し、心を閉ざす。そんな毎日の中で、オカンと月子、愛犬・ハチ(溝口琢矢)、隣に住む大家・サク婆(正司花江)の日常が静かに変わり始める――。稽古がスタートしてまだ1週間ほどであったが、既に通し稽古が行われていた。稽古が始まる前にはキャスト陣が和やかにおしゃべりをしながらストレッチをしていて、まるでオカンと月子の家のちゃぶ台を囲んでいるかのよう。正司が荘田の食事を気にかけるなど役柄同様のやり取りが行われ、キャスト達が作品に馴染んでいるのが伝わってきた。また、稽古の合間には関西弁のチェックも。キャスト達は方言指導の先生に何度もイントネーションを確認し、役作りに取り組む。本作には、自分の親切がもとで起きた事件がトラウマで外出恐怖症になった月子の苦しみや、祖父が自分の友人に騙され責任を感じ続けている研二の葛藤、さらに認知症やガンという病気、たったひとりの家族の死など、現代を生きる私たちのすぐそばにある出来事が数多く描かれている。その出来事を「不幸」として描くのではなく、周りの人たちの温もりの中でゆっくりと前を向いて歩き出すまでの姿を丁寧にみせていた。登場人物たちはいつも誰かのことを想っていて、それがなかなか伝わらなくても諦めない。人に当たったりしながらも相手と向き合う姿は、人と人とのつながりや会話をすること、待つことや時間をかけることの大切さなどを思い出させる。それを押しつけがましくなく感じられたのは、キャスト達から生まれる温かな空気もひとつの理由のように感じた。1月20日(金)に埼玉・志木市民会館パルシティでプレビュー公演。その後、2月2日(木)に大阪・すばるホール、2月8日(水)から15日(水)まで東京・銀座 博品館劇場にて上演。取材・文:中川實穗
2017年01月20日アニメ「プリパラ」から生まれたミュージカル『ライブミュージカル「プリパラ」 み~んなにとどけ!プリズム☆ボイス2017』が、1月26日(木)の開幕に先がけ公開稽古を行った。ライブミュージカル「プリパラ」チケット情報本作は、アイドルテーマパーク「プリパラ」を舞台にアイドルを夢見る女の子たちの姿を描いた同名アニメが原作。昨年2月の初演をパワーアップさせた2017年バージョンで、新キャラクター・ジュルルが登場したり、アニメ3期の新曲をライブミュージカルで初披露するほか、アニメ版エンディングテーマでもおなじみのPrizzmy☆から高橋果鈴(かりん役)、宮崎妃夏(ひな役)も出演&ライブを披露するなど新要素も盛りだくさん。もちろん主人公たち6人を演じるのは、初演に引き続き原作アニメの声優陣。茜屋日海夏(真中らぁら役)、芹澤優(南みれぃ役)、久保田未夢(北条そふぃ役)、山北早紀(東堂シオン役)、澁谷梓希(ドロシー・ウェスト役)、若井友希(レオナ・ウェスト役)が、アニメと同じ声で各キャラクターを演じる。ストーリーは、主人公・らぁら(茜屋)が過去にタイムスリップしてしまう舞台オリジナル版。らぁらは未来を変えないために、舞台オリジナルキャラクターの青井めが姉ぇ(高柳明音/SKE48)、青井めが兄ぃ(畑中智行)の邪魔をかわしながら、未来のらぁら(久家 心・石井心愛/Wキャスト)と協力してみんなを導いていく。“そらみスマイル”や“ドレッシングパフェ”の結成シーン、ファルル登場シーンなど次々と再現される名シーンの数々は、原作ファンには嬉しく、初めて観る人も「プリパラ」をイチからおさらいできる内容となっている。この日、披露されたのは一幕の通し稽古。舞台は全員による『Make it!』の歌&ダンスでスタート!アニメそのままの歌声に華やかで可愛らしいダンスは息ピッタリで、一気に「プリパラ」の世界に引き込まれた。劇中では、お馴染みそらみスマイルの『Pretty Prism Paradise!!!』、ドレッシングパフェの『No D&D code』、ファルル(澪乃せいら)の『0-week-old』などを次々と披露。アイドルらしいキャンディなどの小道具や、布などを使った演劇的な演出も取り入れられ、舞台ならではの華やかさで盛り上げた。舞台上はもちろん稽古場全体が明るい雰囲気。Prizzmy☆のふたりによる歌&ダンスが繰り広げられる舞台袖で茜屋や澁谷がノリノリで踊る姿など、楽しそうな様子が印象的だった。公演は1月26日(木)から29日(日)まで、東京・Zeppブルーシアター六本木にて。毎公演異なる「プリパラ」のアニメキャラクターの声優によるスペシャルミニライブも開催される。取材・文:中川實穗
2017年01月13日大人計画主宰・松尾スズキ演出のミュージカル『キャバレー』が、1月11日(水)に開幕。それに先駆け、前日に公開稽古と会見が行われ、松尾をはじめ、長澤まさみ、石丸幹二、小池徹平、小松和重、村杉蝉之介、平岩紙、秋山菜津子が登壇した。ミュージカル『キャバレー』チケット情報本作は、1966年に初演されてから世界中で繰り返し上演されている傑作ミュージカル。日本でもさまざまな演出、さまざまなキャストで上演されているが、松尾演出の『キャバレー』は、2007年以来10年ぶりの再演。舞台は1929年、ナチス台頭前夜のベルリン。キャバレー「キット・カット・クラブ」は、毎夜毎夜、退廃的なショーと刹那的な恋の駆け引きが繰り広げられるバラ色の場所。そこで出会ったショーの花形・歌姫サリー(長澤)と、アメリカからやってきた駆け出しの作家・クリフ(小池)はたちまち恋に落ち、一緒に暮らし始める。個性的な人々との賑やかな毎日の中に、いつしかナチズムの足音が高く聞こえ始め――。公開稽古前の会見で松尾が「こういう会見で演出家が何を言ってもコメントとして使われることはない」と語り始めるとキャスト陣は大笑い。「長澤さんに言ってほしい言葉を言います。“松尾さんの独創的な演出により芸術的かつ娯楽性の高い素晴らしい作品になったと思います”」。それを聞いた長澤が「もう一回言ってもらっていいですか?」と松尾にお願いするなど和やかな雰囲気。その長澤は今作がミュージカル初挑戦だが「ここにいる先輩方に支えられて稽古も今日まで乗り切ってきました。初めてのことなんだけれどすごく楽しく稽古ができていたので、稽古場と同じ気持ちをお客さんに届けられたら」と笑顔を見せた。「キット・カット・クラブ」で妖しい魅力でお客を惹きつけるMC役を演じる石丸は「ご覧の通り普通の人間ではないですが(笑)。こういう役どころですので、日常にない世界に飛び込んで演じてみたいなと思っています」。長澤演じるサリーの恋人・クリフを演じる小池は「すごく空気のいい素敵なカンパニーに入れていただいたなという気持ちでいっぱいです。長澤さんとはべったりしたシーンやドキドキするシーンもあるので、ぜひ早く皆さんに観てほしいです!」。公開されたのは一幕。きらびやかで妖しくゴージャスな「キット・カット・クラブ」のショーでは長澤がセクシーな衣装で華やかなダンス&歌を披露。恋や欲望、情熱、そして喜びが描かれた一幕の終わりに迫るナチスの脅威。二幕で広がる世界はどうなるのか…期待したい。公演は1月22日(日)まで東京・EXシアター六本木にて、その後、横浜、大阪、仙台、愛知、福岡を巡演。撮影・取材・文:中川實穗
2017年01月12日3月3日(金)に開幕するTEEN×TEEN THEATER『初恋モンスター』の合同取材会“5年1組保護者会”が開かれ、荒牧慶彦、佐川大樹、神里優希、ゆうたろう、小野健斗、脚本・演出の川尻恵太が出席した。TEEN×TEEN THEATER『初恋モンスター』チケット情報原作は、月刊誌『ARIA』(講談社)で連載中の漫画『初恋モンスター』(作:日吉丸 晃)。世間知らずのお嬢様高校生・二階堂夏歩と、外見は長身のイケメン青年ながら実は小学5年生の高橋奏の恋愛を描くハイテンションラブコメディ。キャスト陣は役衣装で登場。小学校5年生の主人公・奏を演じる荒牧は「今、26歳なんですけど15年ぶりくらいに体操服を着ました」と笑いつつも、自身の役柄について「見た目は大人ですが心は純粋な子供なので、僕も小学5年生の童心に返ったつもりで突き抜けたいと思います」と話す。それに対して川尻も「奏はものすごくストレート。ピッチャーで言ったら大谷翔平くんみたいな。160キロド直球のボケで、でもピュアな“好き”を変化球なしで、肩が壊れるまで投げ続けてほしい(笑)」。奏の同級生・金子十六役の佐川は「トムらしく元気に、おそらくクレイジーになるであろうこの舞台をみんなで楽しく盛り上げていきたい」と意気込み、自身の衣裳について「チャームポイントは特攻服だけど上履きを履いてるところ」とアピール。同じく同級生・三宮銀次郎役の神里は「なかなかこんな格好をすることはないですし、こんなおかしな舞台に出会うこともめったにないので、思い切って演じたい」と話し、「クールな役なので低めのイケボと言われる声を作っていけたら」と役作りのイメージを語った。奏と同じアパートに住む高校1年生・篠原耕太役のゆうたろうは今作が初舞台。「初めての舞台、演技ということもあってすごく緊張しているのですが、耕太くんなりに可愛らしく、ときに乙女顔になれるようにがんばります!」と意気込んだ。同じアパートに住む大学生・多賀敦史役の小野は「大人の役なので、小学生にない大人の魅力と言葉攻めで盛り上げていけたら」と舌打ちの練習などツンデレな役柄特有の準備もしていることを告白した。川尻は「小学生が遊びまわったり歌ったり踊ったりします」と構想を明かし、原作にも度々登場する小学生らしい“下ネタ”は「ニンジンを刻んで入れるかのような(笑)、誰でも食べられる形にしてお出しできれば」と封印はしないことを宣言。「下ネタもそうですけど、子供が言うからこそまっすぐに響く言葉があると思うので、(キャストが)大人であることをいかに忘れさせるかが課題だと思う」と話した。公演は3月3日(金)から12日(日)まで、東京・品川プリンスホテル クラブeXにて。取材・文:中川實穗(C)日吉丸 晃/講談社「初恋モンスター」舞台制作委員会
2017年01月12日町田慎吾主演の方南ぐみ企画公演『伊賀の花嫁』が、2017年1月13日(金)に開幕する。“これぞ喜劇”と銘打たれた本作は、忍者の末裔の「婚活物語」を描いたオムニバス作品だ。【チケット情報はこちら】忍者の末裔・伊賀三四郎を演じる町田慎吾、同じく末裔で三四郎の幼馴染・服部すみれを演じる片山陽加に話を聞いた。「新年の最初の舞台が喜劇っていうのはすごくワクワクしますね。笑って新しい年を始めるっていう。まだ本読みに参加しただけなのですが、濃い人ばかりなんですよ。面白くなると思います」と町田。片山も「先輩方はしょっぱなからものすごく濃いキャラで(笑)、すごく勉強させていただいてます」と話すキャスト陣は、年齢もジャンルも国籍もさまざまで濃厚。初共演だが、互いに舞台で観たことがあるというふたり。その時の印象を町田は「歌も踊りもある作品だったのですが、なんでもできて。舞台上ですごく大きく見えたんですけど、実際にお会いしたら僕よりちっちゃかった(笑)。すごいなと思いましたね」。片山は「とてもパワフルな方だと思いました。いつかご一緒できたらと思っていたのですごく嬉しくて。すみれは三四郎より気の強い女の子なんじゃないかなと思っているので、負けないようにがんばりたいです」抱腹絶倒の喜劇になりそうだが、主演を務める町田は「面白い台詞も、そいつが本気で喋ってるからピントがずれてて面白い。だから今作で三四郎として物語の芯をやらせていただく自分は、まっすぐいればいいんだろうなと思っています。周りが面白い方ばかりですし」。振付の夏まゆみは、片山にとって邂逅。「AKB48でのデビューのときに夏先生に教えていただきました。そのときに言われた『目からビーム、毛穴からオーラ』という言葉が今でも忘れられなくて。来年はデビュー10周年の年で、こうしてまた夏先生とお仕事をさせていただけるのはなにかの縁だし、運命も感じています」。「楽しんでやっている雰囲気が、観に来てくださるみなさまにも伝わったらいいなと思います。劇中である方がアイドルヲタの役をされるんですけど、本当にものすごいので、ぜひアイドル好きの方にも観ていただきたいです。ここにホンモノがいたっていう(笑)。2017年の初笑いに来ていただきたいです」(片山)「幅広い年代の方が楽しんでいただける作品になると思います。個性的な方が揃っているので、絶対に面白い作品になると思っています。皆さんも仕事が始まってる頃だと思うので、観に来て笑って、今年もがんばろうと思っていただけたら」(町田)公演は2017年1月13日(金)から1月22日(日)まで、東京・博品館劇場にて。チケットは発売中。取材・文:中川實穗
2016年12月28日ミュージカルアニメ「Dance with Devils」を原作にした、ミュージカル「Dance with Devils~D.C.(ダ・カーポ)~」が、12月21日に開幕。それに先がけゲネプロが公開された。本作は今年3月に上演された舞台化第1弾のミュージカル「Dance with Devils」(通称:デビミュ)をパワーアップさせた第2弾。ミュージカル「Dance with Devils」チケット情報名門・四皇學園で絶大な人気を誇る生徒会メンバーの鉤貫レム(神永圭佑)、楚神ウリエ(神里優希)、南那城メィジ(吉岡 佑)、棗坂シキ(安川純平)は実はアクマ。人間界で、すべてを支配する力を持つ『禁断のグリモワール』を探す彼らは、同校の生徒・立華リツカが手がかりを握っていることを突き止める。しかし、レムたちの前にはリツカの兄・立華リンド(萩尾圭志)が立ちはだかり――。ゲネプロ前の取材で自身の役の見どころを問われ、神永は「僕は笑わないところ。キャストのアドリブにも負けずに笑わないところは自信があります!」、萩尾は「真っ直ぐなところ。妹のリツカのこととなると止められないのがリンドなので、それは誰にも負けないんじゃないかな」、新キャスト・神里は「美しさ。バラを持ってるくらいなので!」、吉岡は「オラオラなんですけど所作は優雅。全員舎弟にするつもりでやっていきますのでよろしくお願いします!」、安川は「気持ち悪さでは誰にも負けないかな。そこを大切にしていきたい」、内藤大希は「普段は犬の姿なんですけど、犬の声もやらせてもらってます!」とアピール。今作の特徴は2種類のエンディング“Ending A―Dear My Devil Rem(レムエンド)”、“Ending B―Dear My Exorcist Lindo(リンドエンド)”が用意されていること。それぞれの魅力について神永は「リンドエンドは切なくて、観ている方はギュッと胸が締め付けられるようなものがあると思います。前回レムエンドを観てくださった方は、今回また違う感動、違う涙が出るような感じになっているかなと思っております」、萩尾は「リンド派、レム派も生まれてくると思います。いろんなところに楽しめる要素、泣ける要素もあるんじゃないかな」と話した。劇中では原作アニメの楽曲『EMOLIAR』や『KETTO~譲れない、せめぎ愛~』のアレンジバージョンや、今作のために書き下ろされた新曲など全25曲を歌唱(公演後のミニコンサート含む)。加えて前作でレムとリンドのみだったアクマ衣裳が、今作では新たにウリエ、メィジ、シキ、ローエン(内藤)も着用。さまざまな部分がパワーアップしている。公演後にミニコンサートも行われる本作。最後の最後までデビミュの世界に浸れそうだ。公演は12月27日(火)まで東京・AiiA 2.5 Theater Tokyoにて。取材・文:中川實穗(c)グリモワール編纂室/デビミュ製作委員会 (c)グリモワール編纂室/Dance with Devils製作委員会
2016年12月26日2017年夏に日本初演を迎えるミュージカル『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』。その主人公・ビリー役として、1年以上に渡るオーディションを経て選出された4名(加藤航世、木村咲哉、前田晴翔、未来和樹)のお披露目会見が行われた。本作は、2000年公開の映画『BILLY ELLIOT』(邦題『リトル・ダンサー』)を、映画に引き続きスティーヴン・ダルドリーが演出、楽曲をエルトン・ジョンが手掛け、2005年にロンドン・ウエストエンドで初演されたミュージカル。10年以上のロングラン公演を行い、2009年にはトニー賞で10部門を受賞するなど、世界5大陸で上演されてきた大ヒット作。待望の日本初演となる今作は、全キャストが海外クリエイティブスタッフによるオーディションで決定。ビリー役以外にも、父親役を吉田鋼太郎・益岡徹(Wキャスト)、ウィルキンソン先生役を柚希礼音・島田歌穂(Wキャスト)、ビリーの祖母役に久野綾希子・根岸季衣(Wキャスト)、ビリーの兄・トニー役に藤岡正明・中河内雅貴(Wキャスト)、ボクシングコーチ役に小林正寛、大人版ビリー役に栗山廉(Kバレエ カンパニー)・大貫勇輔(Wキャスト)が発表された。会見の冒頭ではホリプロ代表取締役社長の堀義貴が、ロンドンで公演を観劇した際に「打ちひしがれて泣き崩れた。こんなすごいもの日本では作れない、でもできたらどうしてもやりたいと思った」と振り返った。さらに、海外クリエイティブスタッフであるルイーズ・ウィザーズ、サイモン・ポラード、スティーヴン・アモス、トム・ホッジソンが登壇。ルイーズは「本当に特別な子たちです」、サイモンは「4人は全く違うビリーになってくれると思います」と語った。1346名から選ばれた4人のビリーは、緊張しながらも「スタート地点に立つことができたので、引き続き努力してがんばりたい」(加藤)、「合格発表を聞いたときはすごく嬉しかったです。落ちた人たちの分までしっかりがんばっていきたいです」(前田)と挨拶。オーディション中に辛かったことを問われ「バレエでできない技があって、みんなに追いつくのはちょっと辛かったけど、もっとがんばらないとビリーにはなれないと思ったからがんばりました」(木村)と話した。オーディション中の思い出を「熊本から来ているので、路線図を片手にレッスン場に行ってたのですが、ある日、急いで電車に飛び乗って振り向いたらお母さんがホームにポツンと立ってました(笑)」(未来)と話し、取材陣を笑わせた。公演は7月19日(水)から東京・TBS赤坂ACTシアターで上演されるプレビュー公演を皮切りに、11月4日(土)までの3か月間、東京、大阪にて上演。取材・文:中川實穗
2016年12月22日西岡徳馬と音尾琢真(TEAM NACS)が出演する『スルース~探偵~』<スルースバージョン>が12月17日に開幕。その前日にゲネプロが公開された。本作は、西岡VS新納慎也・西岡VS音尾の2バージョンで上演する推理劇。11月25日から12月11日まで上演された新納との<探偵バージョン>に続き、今回の<スルースバージョン>が上演される。舞台『スルース~探偵~』チケット情報『スルース~探偵~』は1970年に初演され、71年にはトニー賞演劇作品賞とエドガー賞を受賞した作品で、72年、2007年には映画化。日本では73年に劇団四季が初演し、現在も再演されている。今作で演出を手掛けるのは深作健太。物語の舞台は、著名なミステリー作家であるアンドリュー・ワイク(西岡)の自宅。そこに呼び出されたマイロ・ティンドル(音尾/新納)は、彼の妻との不倫の追及を受けるのだと思っていたが、アンドリューから「浪費家の妻にはほとほと困り果てていた」「私にも愛人がいる」と告白され、自宅の金庫から宝石を盗んでほしいと提案される。それによりアンドリューは保険金と愛人を、マイロには宝石と妻を手に入れられるというのだ。マイロは考えた末、アンドリューの話に乗るが――。本作の魅力は、社会的地位も年齢も上のアンドリューと、そんな男の妻を奪った若く魅力的な男が騙し合う、プライドをかけた心理戦だ。ひとつの台詞、ひとつの動作がふたりのパワーバランスをガラリと変え、次の一手に緊張が走る。その濃密で張り詰めた空気は、生で観る舞台の面白さを存分に味わわせてくれて、何度でも観たくなる作品だ。それに加え、金髪にネルシャツ、裾を折ったデニムにハンチング、乱暴な話し方、素直に表す感情…新納が演じたものとはすべてが違う音尾のマイロ。同じ台詞でもここまで印象が違うかと驚かされた。新納バージョンを観ている人にはより楽しめるものに仕上がっている。上演に際し、西岡は「新納さんと同じ役なのにこれほど違うのかと、演じる人によってこんなに役が変わるものなのかと、長い俳優生活の中でこの歳になって驚かされるぐらい、ふたりの役は異なっています」「僕にとって70歳の記念樹的な公演です」、音尾は「ひとつ言えることは、2016年はこれを見ないと終われないぞと。そういう素晴らしいお芝居でございます」「なかなか見られるお芝居ではないと思います。大変完成度の高い戯曲で、基本的には少人数の舞台なのですが、登場しない人物の姿が浮き上がってきたり、家族模様が見えてきたりと、非常に広がりのある、奥行きのある作品です」とコメントを寄せた。公演は12月28日(水)まで、東京・新国立劇場 小劇場にて。その後、福岡、愛知、宮城を巡演。取材・文:中川實穗
2016年12月19日Live Performance Stage「チア男子!!」が、12月9日(金)に開幕。それに先がけキャストと演出家の囲み取材、公開ゲネプロが行われた。Live Performance Stage「チア男子!!」原作は、男子チアリーディングをモチーフにした直木賞作家・朝井リョウの同名スポーツ青春小説。幼い頃から共に柔道に打ち込んできた幼馴染のハル(本田礼生)とカズ(古田一紀)が、ハルの怪我をきっかけに柔道部を退部し、大学チアリーディング界初の男子のみのチームを結成。それぞれの動機から集まった男子7人のチーム「BREAKERS」で初ステージに向け奮闘する姿を描く。主演は、ミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズンに出演した本田礼生と古田一紀。さらに平田雄也、皇希、才川コージ、福澤 侑、そして高野 洸と、身体能力の高いメンバーが揃う。脚本・演出は伊藤マサミ。ゲネプロ前の囲み取材で、本田は「Live Performance Stageと銘打っていて“ライブ感”をすごく大事にしています。チアリーディングの魅力をしっかりと伝えていけたら」と本作について語る。全員が初めて挑戦したチアリーディングについて皇希は「今まで経験したことのないことや、経験すると思っていなかったことまで、皆で挑戦させてもらって。悔しかったり嬉しかったり楽しかったり…本当にたくさんのことを感じています。その気持ちを全て“チア”を通して伝えられたら」と振り返る。脚本・演出の伊藤は「僕が20代の頃から『こんな舞台をいつか観てみたい、作りたい』と思っていた作品です。演劇でありライブである、ライブでありその中にドラマがある。お客さんが観るだけではなく『参加して体感する』そんなLive Performance Stage「チア男子!!」にしていきたい」と熱く語った。息ピッタリの歌やダンスで徐々に客席を巻き込み、最後の初ステージの熱気へとつないでいく様は見事。7人の鮮やかな笑顔とパフォーマンスで、客席のコール&レスポンスにも熱が入っていく。そんなパフォーマンスと同様に大切に描かれていたのが、それぞれが抱える悩みやコンプレックスと、そこに手を差し伸べるチームメイトの姿。誰かに支えられ、自分と向き合い、徐々に暗闇があけていく様子から感じる希望と、人を全力で応援するスポーツ・チアリーディング。その両方で観客を“応援”している舞台だった。また、終演後に行われる“アンコールパフォーマンス”も必見。「こんなにいろんなジャンルのパフォーマンスが入っているものを見たことない」(本田)という圧巻のステージは、高校生ダンス甲子園での優勝経験を持つ皇希と福澤が振り付けたダンスなど、それぞれの特技を生かしたパフォーマンスが次々と披露され、最後の最後まで客席を盛り上げた。公演は、12月18日(日)まで東京・AiiA 2.5 Theater Tokyoにて。取材・文:中川實穗(C)朝井リョウ/集英社(C)LPS「チア男子!!」製作委員会2016
2016年12月16日中屋敷法仁演出・宮崎秋人主演で日本初上演される韓国の大ヒット舞台『柔道少年』。高校生のおバカな日常、恋愛のドキドキ、スポーツに打ち込む真摯な姿が描かれた作品の舞台を日本に置き換え、中屋敷の上演台本で新たな作品として描かれる。中屋敷と宮崎に話を聞いた。舞台『柔道少年』チケット情報本作の魅力について中屋敷は「一番の魅力は小手先でどうにかしようとしてない感じ。とにかく全力でお芝居にぶつかっているような熱い内容で、すごく好感を持って脚本を読みました」。その中で自身が演じる主人公について宮崎は「圧倒的におばか(笑)。これまでも、まっすぐで等身大な役はやらせていただいたんですけど、ここまで振り切っているのは初めてです。すごくやりがいもあるし、小手先じゃ多分届かないなって思います。一歩はみ出したところに、この役だったり作品の面白さは出てくるんじゃないかな」と語る。宮崎を「今一番見逃せない時期」と話す中屋敷。「秋人くんは作品と同時に俳優としても成長と変化を遂げるので、会うたびに印象が変わる。でも今回はそういう伸び盛りの秋人くんじゃなくて一番素、原点の部分が見えるといいなと思っています。何もない状態はどんな感じだろうって。人を(柔道で)投げ飛ばしたり投げ飛ばされたりしてれば(笑)、さすがに出てくるんじゃないかな」。俳優集団D-BOYSによる公演・Dステの20作品目となる本作。D-BOYSからは宮崎のほか、荒井敦史、三津谷亮、池岡亮介が出演する。中屋敷も「せっかくこのメンバーでできるんだから、お行儀悪いといいな」という気の知れた面々。宮崎は「聞いたときにキョトンとしました。いいんだ、そのメンバーでって(笑)。でもこの作品の空気感やテンポ感は嘘つけないなっていうのがあって。同じ時間をどれだけ共有しているかが如実に反映されると思うので、ベストなメンバーだと思います。稽古で中屋敷さんに『それはやりすぎ』って何回言われるかが肝だな(笑)」。その中で座長を務めることについては「『俺の背中についてこい!』って人たちでもないので(笑)、とにかくチームワークだなって思いますね。横並びでいけたらなって。それが自分にとっても一番肌に合っていると思います」。いわゆる小劇場で上演する本作。中屋敷は「体温とか息遣いが届くキャパなので、本当の意味で嘘が通じない。お客様も今まで俳優さんを“観る”という感じだったと思うんですけど、俳優さんと一緒にいるんだっていうのを感じられたらうれしい」。公演は2017年2月9日(木)より東京・ザ・スズナリ、2月24日(金)より大阪・ABCホールにて上演。東京・大阪公演ともに公演後にはアフターイベントを開催する。チケットぴあでは東京公演の先着先行プリセールを明日16日(金)昼12時より受付、大阪公演は同じく明日16日(金)より抽選先行プレリザーブを受付開始する。取材・文:中川實穗
2016年12月15日加藤諒主演の舞台「パタリロ!」が12月8日に開幕。それに先がけてゲネプロが公開された。本作は、1978年から連載中の同名ギャグ漫画(作者:魔夜峰央)の初舞台化。舞台版の脚本は池田鉄洋、演出は小林顕作。舞台「パタリロ!」チケット情報ギャグ作品でありながら耽美的という独特の世界観を持つ原作は、マリネラ王国の国王であるパタリロ(加藤)が、バンコラン(青木玄徳)やマライヒ(佐奈宏紀)、タマネギ部隊(細貝圭、金井成大、石田隼、吉本恒生)を巻き込んで起こす騒動が描かれる。ゲネプロ前の囲み取材には、加藤、佐奈、青木、演出の小林が登壇。加藤は「初座長ということもあって結構なプレッシャーがあったんですけど、小林さんについていきまして、なんとかパタリロになれたと思います」、青木は「BL(ボーイズラブ)もののはしりということで、バンコランとマライヒにも注目してもらえたら。僕自身、そういう芝居をするのは初めて」、佐奈は「類まれなる未成年の色気を思う存分発揮して、この『パタリロ!』と客席の皆様を盛り上げたい」、小林は「昭和のおおらかなギャグの世界を存分にやっていきたい。池田鉄洋くんが“(小林が)削るだろう”と思って書いた脚本を、僕がまんまやってしまって『やるとは思わなかった』と言ってました(笑)」。幕が開くまでの客席では80年代ヒットソングが流れ、劇中でも「昭和のおおらかさを思う存分楽しんでください」と始まった本作。物語はパタリロがロンドンに訪れてバンコランやマライヒと出会うところから始まる。そこからの展開は、原作やアニメを見たことがある人ならお馴染み、「パタリロ!」初体験の人なら驚きのハチャメチャぶりを存分に再現。歌やダンスがふんだんに盛り込まれた華々しい世界観に、クックロビン音頭やゴキブリ走法など「パタリロ!」好きには馴染み深いものから、『ガラスの仮面』『翔んで埼玉』、ミーちゃん先生など魔夜好きならピンとくるものまで小ネタも満載。どこを観ても、何度観ても楽しめそうだ。また、4人しかいないとは思えない魔夜メンズの活躍ぶりも見どころ。予想以上の再現度に驚くバンコランとマライヒのシーンはもちろん、フェロモンをまき散らすタマネギ部隊のアフター5など、美男揃いの本作で次々と展開される“耽美”な世界。その中でひとり異色のかわいさを放つのがパタリロだ。加藤演じるパタリロが、愛らしく、賢く、毒も見せながら、観客を置いていくことなくこの多彩な世界観を再現する。それはまさにこの舞台そのものの魅力だと感じた。舞台「パタリロ!」は12月25日(日)まで、東京・紀伊國屋ホールにて。取材・文:中川實穗
2016年12月13日直木賞作家・朝井リョウの同名スポーツ青春小説を舞台化したLive Performance Stage「チア男子!!」が、12月9日開幕した。Live Performance Stage「チア男子!!」チケット情報幼馴染のハルとカズら7人の大学生が、男子だけのチアリーディングチーム「BREAKERS」を結成し、学園祭での初舞台を目指す姿を描いた本作。主演はミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズンを卒業したばかりの本田礼生と古田一紀。共演者に平田雄也、皇希、才川コージ、福澤 侑、そして高野 洸とダンスやアクロバットなど抜きんでた能力を持つメンバーが顔を揃えた。稽古前、本田と脚本・演出を手掛ける伊藤マサミに話を聞いた。「歌、ダンス、お芝居、チア…見どころは全部です!」と笑顔を見せる本田。気になる“Live Performance Stage”について聞いてみると、伊藤は「せっかくいろいろできるメンバーが揃っているので、チアだけじゃなく、言ってしまえば『なんでも男子!!』みたいな(笑)。ゴールはチアですが、最初から最後まで目が離せないものになっています」と話す。「ただ、一番意識しているのはやっぱり“チア”。SHOCKERSさん(原作のモデルとなった男子チアリーディングチーム)のパフォーマンスを観たときに感じた『チアってすごい!』という感動をしっかり伝えたい」(本田)。本作では、コール&レスポンスや手拍子で客席も巻き込む。そのための演出も用意されていて、本田は「“お客さんが(物語に)いていい”っていうのが初めてで、それがすごく新鮮で面白いと思います。今は、お客さんが入ることで広がる“幅”を、どれだけ広げられるかに取り組んでいます」、伊藤も「今回はオーディエンスがいて初めて完成する舞台。最後に揃うキャストはお客さんだと思っているので、今はあくまで迎える準備をしているところです」と、通常以上に観客を意識した稽古を行っているという。そして稽古はキャスト陣が円陣を組み「Let’s go BREAKERS!」という掛け声でスタート。稽古中も休憩中もキャスト陣は飛んだり跳ねたりよく動き、歌い、踊る。その空気と全開の笑顔に飲まれ、コール&レスポンスにも応えたくなった。面白かったのは、登場人物のほとんどがチア未経験というところから物語が始まるため、バック転などが少しずつ上達していく様も演じられていること。そこを経て突入するクライマックスのパフォーマンスは、まるで押さえてきた力が爆発したような抜群の姿を見せてくれた。もちろん身体を動かすシーンだけでなく、それぞれが抱える悩みも繊細に演じられている。歌に乗せて想いを吐露するシーンは、パワフルな世界観に奥行きを与えていた。本田が「まずは、観てください!そしたら絶対伝わると思います」と語る公演は、12月18日(日)まで東京・AiiA 2.5 Theater Tokyoにて。取材・文:中川實穗
2016年12月13日俳優・竹中直人と作・演出家の倉持裕による演劇ユニット・直人と倉持の会Vol.2「磁場」が12月11日に開幕。前日に公開舞台稽古が行われた。直人と倉持の会Vol.2「磁場」チケット情報本作は、2013年12月に第1回公演を行った「直人と倉持の会」のプロデュース公演第2 弾。コメディーの名手でもある倉持が“過剰な期待”が生み出す恐怖をテーマに描いた心理劇を、竹中、そして渡部豪太、長谷川朝晴、黒田大輔、玉置孝匡、菅原永二、田口トモロヲ、大空祐飛という豪華俳優陣が演じる。公開舞台稽古前の囲み取材で、竹中は「大好きな倉持裕さんと素敵な俳優さんたちが集まりました。複雑な人間模様が“6ペンス”…じゃないや“サスペンス”で盛り上がります。今回はかなり怖いですよ。追い詰められ方がどんどん重なっていって…という脚本になっています」と作品を紹介。大空は「素晴らしい皆さんとご一緒できて、稽古場が楽しい…だけじゃいけないんですけど、刺激的で、1秒たりとも無駄にしたくない幸せな日々です」と話した。物語の舞台は、ホテルの豪華なスイートルーム。若い脚本家(渡部)が、マコト・ヒライという芸術家を描いた映画の脚本執筆のために用意された部屋だ。プロデューサー(長谷川)と映画監督(田口)と打ち合わせをしていると、突然、出資者の男(竹中)が秘書(菅原)を引き連れてやって来る。「マコト・ヒライの大ファン」だという男は、あらゆる資料をホテルに運び込み、彼の生涯について熱く語りだし、さらには打ち合わせを見学したいと言い出す。「自分のことは無視してくれていい」と言う男だが、脚本家がアイデアを語り始めると「これはきっとすごい映画になりますよ!」と期待をかけはじめる――。不協和音が鳴り響く中で幕が開いた本作。スイートルームの空気を支配するのは、竹中演じる出資者の男だ。笑顔でゆっくりと近づいてきて、気付けば思考力まで奪うような恐ろしい存在を竹中が怪演。その支配はしんしんと積もっていき、いつしか登場人物たちは、彼の明らかに常軌を逸した行為すら受け入れるようになっていく。途中、追い詰められた脚本家のもとに劇団の友人(黒田)が訪れたとき、その温度差からハッと異常さに気付かされ、恐怖を感じた。客席までも支配する狂気の中、脚本家は過剰な期待に応えられるのか…。その結末はぜひ劇場で。公演は12月25日(日)まで、東京・本多劇場にて。その後、大阪、島根、愛知、神奈川を巡演。取材・文・撮影:中川實穗
2016年12月12日藤田俊太郎の演出、小川絵梨子の翻訳で上演するトニー賞作品『Take me out』が、12月9日(金)に開幕。その前日に公開舞台稽古が行われた。【チケット情報はこちら】2002年にロンドンで初演され、2003年度のトニー賞では演劇作品賞、演劇助演男優賞も受賞した作品の日本初演。演出をニナガワ・スタジオ出身の藤田、翻訳を新国立劇場の次期芸術監督・小川が手掛ける。白人の父親、黒人の母親を持つメジャーリーグのスター選手・ダレン(章平)が、自分はゲイだと告白したことを発端に起こるさまざまな混乱を描く本作。選手役を栗原類、多和田秀弥、味方良介、小柳心、渋谷謙人、Spi、章平、吉田健悟、竪山隼太、ダレンのビジネスマネージャー役を良知真次、監督役を田中茂弘が演じる。本作の特徴のひとつは舞台の構造。対面構造に加え、最下段の客席と舞台は地続きとなっており、まるでそこにあるロッカールームやシャワールームを、観客が取り囲んで観ているような造りなのだ。さらに舞台と客席の距離も近く、キャッチボールやバッティング練習のシーンは、ボールが向かってくるので思わず目を閉じてしまうほど。どこに座るかで観える人の表情、景色が変わり、何度も観たくなる構造だ。また、キャスト陣があまり捌けずに芝居が進んでいくのも特徴のひとつ。舞台上で着替えたりシャワーを浴びたり、ときには客席付近にキャストが座っていたり。真ん中で起きている出来事の間にも、それぞれの時間が流れていることを感じさせられる。そんな濃密な空間の中で、メジャーリーグのロッカールーム、シャワールーム、グラウンドを舞台に、人種、信仰、格差、同性愛、差別などを生々しく描く本作。日本では人種や信仰の問題に直面する機会も少ないが、それでもどこか彼らが発する感情に思い当たる節があり、自らの“正義”や“信念”がグラグラと揺さぶられるような感覚に襲われる。それぞれが持つ偏見、理解、正義、善意、悪意…どれも単純なものではない。さまざまな要因が何重にも重なった結果であることが物語の中でわかるため、感想も大きく分かれるだろう。観劇後は、誰かと感想を語り合いたくなったり、次は逆サイドの席で観劇したくなったりするような作品。ぜひ劇場に足を運んで体感してほしい。公演は12月21日(水)まで東京・DDD AOYAMA CROSS THEATER、12月23(金・祝)、24日(土)に兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホールにて。取材・文:中川實穗
2016年12月12日ジャニーズ事務所の佐野瑞樹と、*pnish*のリーダー佐野大樹による兄弟演劇ユニット「WBB」の第11回目の本公演『スペーストラベロイド』が、12月3日に開幕した。兄弟が交互に企画を担当するWBB。今回は兄・瑞樹が企画するSide-W。毎回、上質なワンシチュエーションコメディを上演するSide-Wの今作は「WBB版新喜劇」と銘打ち、キャストにパンチ浜崎(ザ・パンチ)、児玉智洋(サルゴリラ)と芸人も参加。笑いに特化した作品となった。WBB vol.11『スペーストラベロイド』チケット情報物語の舞台は宇宙船。宇宙旅行の最後のモニタリング飛行を行う船内には、船長候補の玉地(瑞樹)と、火野(大樹)・八木沼(尾関陸)・土田(児玉)が乗組員として働き、総責任者の松金(細見大輔)が採点を行っている。玉地は船長になるために必死だが、土田は自由奔放に動き、開発部から異動してきた火野は機嫌が悪い。さらに八木沼はアンドロイドロボ・メイサ(パンチ)の外見を勝手に改造したと言う。そして乗客は、一般公募で当選した新婚夫婦(大久保聡美、川上将大)と、テレビ取材にやってきたディレクター(畠山遼)&カメラマン(篠田諒)。しかし、新婚夫婦が喧嘩になり撮影はうまく進まない。玉地がどうにか挽回しようと奮闘する中、ある事実が原因で勘違いが勘違いを呼び……。その場しのぎの嘘を発端にさまざまな混乱が起こるベーシックなコメディ。ゲネプロ後に瑞樹が「今回はエネルギー全開、汗かきまくり、全員ホームラン狙い。みんなフルスイングするぞっていうところがテーマになっています。だからみんなの必死さ加減、声の張り方ひとつからすごくパワフルに仕上がってる」と語ったように、キャスト達はフルスロットルでぶつかり合い、次々と笑いを生み出す。さらに今作ではアドリブコーナーもあるなど、これまでのSide-Wとひと味違う仕上がりに。瑞樹は「お客さんがどんな反応をするのかもやってみなきゃわからないので、非常にワクワクドキドキ、期待と不安の気持ちがいつもより強いです!」と開幕を心待ちにしていた。大樹が「キャストはいろんなジャンルから集まっていますが、すごくチーム感がある」と話す10人の息はピッタリ。それに加え、「自分で言うのもなんですが…WBBふたりのシーンもあるので」(大樹)、「そこは自分のやりがい。あそこにすべてを懸けているところはあります!」(瑞樹)という兄弟の熱いシーンも観られる。WBB版新喜劇をぜひ堪能して!WBB vol.11『スペーストラベロイド』は12月11日(日)まで東京・赤坂RED/THEATERにて上演。取材・文:中川實穗
2016年12月06日メジャーリーグスター選手のある告白から巻き起こる混乱を描いたコメディ『Take me out』が、12月9日(金)に開幕する。舞台『Take me out』チケット情報本作は、2002年にロンドンで初演され、その後ブロードウェイで上演。2003年のトニー賞では演劇作品賞、演劇助演男優賞も受賞した作品。日本初演となる今作は、翻訳を新国立劇場次期芸術監督の小川絵梨子、演出をニナガワスタジオでキャリアを積み第22回読売演劇大賞で杉村春子賞、優秀演出家賞を受賞した藤田俊太郎が手掛ける。出演は、良知真次、栗原類、多和田秀弥、味方良介、小柳心、渋谷謙人、Spi、章平、吉田健悟、竪山隼太と注目の若手揃い。そして田中茂弘が脇を固める。今回、その稽古場に潜入した。稽古前に行われていたのはキャッチボール。野球経験者の章平が栗原に球の持ち方や投げ方を教えると投球がみるみる変化し、「ナイスピッチング!」と盛り上がる。そのまま和やかに稽古にうつっていった。この日、取材したのは2幕の終わりからラストまでの後半部分。人種や同性愛への差別という問題がギュッと詰まった部分で、有色人種で同性愛者であるスター選手を演じる章平が、Spiや栗原、味方とそれぞれの理由で対峙する緊張感のあるシーンが続く。中でも栗原演じる白人至上主義の選手がある想いを吐露するシーンでは、栗原が激しく全身で叫ぶような熱演を披露。楽しいコメディで終わらない本作の一面を感じさせた。しかし、そんな中でも良知が演じるゲイの会計士が登場すると空気は一変。愛らしい言動でニコニコ笑顔を振りまく姿は、性別問わずに「かわいい!」と感じさせるもの。そのかわいさのままキャッキャとはしゃぎ章平にやさしく微笑む場面では、藤田が章平に「(良知の)かわいさをもっとキャッチして!」と演出をつけており、本番は更に甘いシーンに仕上がりそう。狭い舞台、少ない人数で表現するメジャーリーグの試合も見どころのひとつ。演出の藤田をはじめ、キャストや音響スタッフがアイデアを出し合い、台詞のタイミング、音響、動作のスピードなど全員で息を合わせていく。そうすると突然、広い球場、ボールの軌跡まで見えるような瞬間がおとずれ、驚いた。舞台上には8人分のロッカールームがあり、キャスト達はその場で着替えなども行う。さらにロッカーは可動式で、パズルのように移動させてさまざまな場所を表現するのが面白い。本作は、劇場の中央に舞台が設けられ、客席は両サイドとなる。どちらに座るかでもまた違う景色が観られそうだ。上演は、12月9日(金)から21日(水)まで東京・DDD AOYAMA CROSS THEATER、12月23日(金・祝)・24日(土)に兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホールにて。取材・文:中川實穗
2016年12月02日