1994年の誕生以来、古典に新たな風を吹き込み、進化を続ける「渋谷・コクーン歌舞伎」。このたび、5月9日に初日を迎える渋谷・コクーン歌舞伎 第十六弾『切られの与三』のゲネプロ、囲み取材が行われ、与三郎役を務める中村七之助、コクーン歌舞伎初出演となるお富役の中村梅枝、同じく初出演となる中村萬太郎のほか、笹野高史、片岡亀蔵、中村扇雀、演出・美術を務める串田和美が登壇した。【チケット情報はこちら】会見では、今になって与三郎をやることになるとはと話した七之助。普段女形として活躍するだけに不慣れな立役と言いながらも、「今回はどのように与三郎という人間が出来あがったのかという話。一所懸命やるのでぜひ足を運んでもらえたら(七之助)」と語った。演出・美術を務める串田は、そんな七之助の与三郎を絶賛。「立役は慣れないと言っているが、すばらしい与三郎。コクーン歌舞伎とはいったい何なのかを改めて再発見できたのでは(串田)」。また与三郎の相手役となるお富を演じるのは、今回がコクーン歌舞伎初参加となる梅枝。七之助からは「すべてリードしてくれる、心強い女形。改めて歌舞伎における女形の大切さを感じた」と絶賛されながらも、梅枝は「右も左もまだわからない。まだまだではありますが精進していければ」と意気込んだ。コクーン歌舞伎の常連でもある笹野は意気込みを聞かれると、「とにかくいつも楽しみにしてくれているお客様を満足させられるように、また勘三郎さんの意思を継いでいきたい。そして(初出演となる)梅枝さん、萬太郎さんにはまた出たい、と思ってもらえる舞台にできたら(笹野)」と語った。名作『与話情浮名横櫛』を原作に、現在ではなかなか全幕上演されることのない九幕すべての場面を洗い出し再構築した新作となる『切られの与三』。歌舞伎で上演されることの多い序幕「木更津海岸見染」から三場「玄治店」はもちろん、大詰の「島抜けの場」まで息つかせぬ展開で見所ばかりの今作。「ヨサブロウが走りぬけた先」はぜひ劇場で確認してほしい。渋谷・コクーン歌舞伎 第十六弾『切られの与三』は東京・Bunkamura シアターコクーンにて、5月31日(水)まで。チケットは発売中。
2018年05月16日1994年に、十八世中村勘三郎と串田和美のタッグで開始した渋谷・コクーン歌舞伎。その第十六弾『切られの与三』が5月に上演される。公演に先立って製作発表記者会見が行われ、演出の串田、補綴の木ノ下裕一、出演の中村七之助、中村梅枝が登壇した。【チケット情報はこちら】この『切られの与三』は、三代目瀬川如皐が書いた歌舞伎『与話情浮名横櫛』を再構成するもの。主人公は、小間物問屋の若旦那・与三郎と芸者・お富。木更津の浜で恋に落ちたふたりだが、お富が土地の親分・赤間源左衛門の囲われ者であったことから、与三郎は源左衛門とその手下に身体中を切りつけられてしまう。変わり果てた姿の与三郎がお富と再会する「源氏店」の場面は、「しがねえ恋の情けが仇」の名台詞と共に有名で、今もしばしば上演されている。中学生か高校生の頃、十一世市川團十郎が演じる与三郎を観たという串田は「与三郎が傷を受けながら生き抜いていくさまに、ずっと興味を持っていました。(コクーン歌舞伎で上演した)『三人吉三』にしろ『東海道四谷怪談』にしろ『夏祭浪花鑑』にしろ、原作を読むと、朝から晩まで芝居を上演していた江戸時代から現代に至るまでに落としてしまった面白いものもある。遠い昔の関係ない話ではなく私達の話として上演したい」と語る。また、現在、補綴の作業中である木ノ下は「“傷”がひとつのテーマになるのではないかと思います。傷は何かの痕跡であり、そこには記憶も眠っている。原作は10年ほどの歳月を描くお芝居で、与三郎の周りの環境も彼の立場も社会も変わっていきます。社会全体の傷を与三郎が負っているような読み方のホンにできれば。その上で、串田監督のイメージが様々に重なって今に繋がっていくと思います」と言う。そして今回、与三郎を演じるのが七之助だ。「父が残してくれた宝物のひとつであるコクーン歌舞伎をやらえてもらって嬉しく思います。コクーン歌舞伎立ち上げ当初の、父や串田監督や(中村)芝翫の叔父が稽古場で作り上げた熱量は今も変わりません。それはどんな人にも平等で誰の意見も聞く串田監督が作り上げてくれた空気です。今回は不慣れな立役ですので手探りで、私なりに良いものにしたい」と意気込んだ。与三郎の相手役・お富を演じるのは、梅枝。「お富は、古典では1度させていただいていますが、古典は形から入る部分がありますので、この機会にお富の精神・内面を、イチから作り上げていければと思います。七之助の兄さんは年が近い女方の先輩。尊敬し、嫉妬しています。相手役を勤めることで、教えをいただき、それから兄さんにない良い所も多分あると思うので、そこが上手くはまっていけば」と抱負を述べた。「渋谷・コクーン歌舞伎 第十六弾 切られの与三」は、5月9日(水)から31日(木)まで、東京・シアターコクーンにて。チケットは発売中。取材・文:高橋彩子
2018年05月02日舞台や映画のポスターを多数手がけ、国内外で活躍する写真家の串田明緒(くしだあきお)の新作写真展「Talking with the Horses -naked winter-」が、3月22日よりキャノンギャラリー銀座にて開催される。©Akio Kushida 2018同展では、串田明緒が以前から撮り続けている馬にフォーカスをあてるもので、青森県・尻屋崎にひっそりと暮らしている「寒立馬」と名付けられた野放馬の撮り下ろし写真を30点を展示する。『拝啓 平成中村座様』や『私の上海バンスキング』などの著書があり、エッセイストやモデルとしても活躍する串田明緒氏は、今回の展示に際し、次のようなコメントを寄せている。「降りしきる雪の中に凛と佇む馬たちは、まるでひとつの詩のようだ。寒立馬たちの神々しい孤独は、きっと真冬にこそ露わになるのだろう。限りなくきれいな沈黙が辺りを満たしていた。」キャノンギャラリー銀座での展示終了後は、4月に大阪、5月に名古屋と巡回。詳細は、キャノンギャラリーのサイト()にてチェックできる。【イベント情報】串田明緒 写真展「Talking with the Horses -naked winter-」<東京>会期:3月22日〜3月28日会場:キャノンギャラリー銀座住所:東京都中央区銀座3-9-7 トレランス銀座ビルディング1F時間:10:30〜18:30 ※最終日は15:00まで料金:無料休館:日曜日、祝日<大阪>会期:4月12日〜4月18日会場:キャノンギャラリー大阪住所:大阪府大阪市北区中之島3-2-4 中之島フェスティバルタワー・ウエスト1F時間:10:00〜18:00 ※最終日は15:00まで料金:無料休館:日曜日、祝日<名古屋>会期:5月10日〜5月16日会場:キャノンギャラリー名古屋住所:愛知県名古屋市中区錦1-11-11 名古屋インターシティ1F時間:10:00〜18:00 ※最終日は15:00まで料金:無料休館:日曜日、祝日
2018年02月23日芳根京子が主演を務める冬の月9ドラマ「海月姫(くらげひめ)」。このたび、自らを“尼~ず”と名乗るオタク女子たちに木南晴夏、松井玲奈、内田理央、富山えり子が決定!4人が演じる、ギャップが激しすぎる“尼~ず”の劇中姿も初公開された。累計発行部数440万部超えを誇る、大ヒット同名コミックが原作のシンデレラ・コメディー”となる本作。クラゲを愛しすぎてしまった筋金入りの“クラゲオタク女子”(芳根京子)が、ある日、女装美男子(瀬戸康史)と童貞エリート(工藤阿須加)の凸凹兄弟に出会い、なんとも複雑でややこしい三角関係に突入、やがて自分には一生縁がないと思っていた恋を知り、新しい自分を見つけていくという物語。そんな本作で、芳根さん演じる月海と共に男子禁制アパート「天水館」で暮らすのが、自らを“尼~ず”と呼ぶオタク女子4人グループ。そのオタクっぷりは、一見ギャップが激しすぎるが、実は世の女子たちがクスッとしながら共感できる部分を数多く持っている。枯れ専“ジジ様” …木南晴夏「ほぼ存在感を消すことに徹底」枯れたオジサマ好き、いわゆる枯れ専の“ジジ様”役には、フジテレビ系連続ドラマには「昼顔~平日午後3時の恋人たち~」「貴族探偵」など話題作で熱演を見せ、帯ドラマ第3弾「越路吹雪物語」(テレビ朝日系)にも出演する実力派女優の木南晴夏。「漫画の大ファンだったので、このドラマに参加できることがとても嬉しい」と木南さん。「とにかく影が薄い役なので、ほぼ存在感を消すことに徹底しています。あとは立ち姿だったり、見た目を少しでも原作に忠実に再現したいと思っています」と意気込み十分。鉄道オタク “ばんばさん”…松井玲奈「鉄道好きは、素の自分との共通点」鉄道オタク “ばんばさん”を演じるのは、月9ドラマ初出演となる元「SKE48」の松井玲奈。15年に同グループ卒業後は、舞台『つかこうへい七回忌特別公演「新・幕末純情伝」』で主演を務め、鴻上尚史、串田和美といった演出家の作品に出演するほか、映画『笑う招き猫』など精力的に女優活動を見せている。松井さんも、もともと原作ファンだそうで「尼~ずとして参加できること、そしてばんばさんという出会ったことのないタイプの役をいただけてガッツポーズが出ました!」と語る。「原作のばんばさんは小さいのですが、背の高い“まやや”と一緒にいることが多いので、2人の身長差を感じてもらえるように、できるだけ丸まっているよう意識しています。鉄道好きという部分では、素の自分との共通点がありますが、それだけではない、ばんばさんの心の世界を寡黙なお芝居の中で出せるようにしたいと思います」と役作りに言及する。三国志オタク“まやや”…内田理央、母&親友から「ぴったりじゃん!」上下ジャージ姿で顔半分が隠れるほどの前髪がトレードマークの三国志オタク“まやや”には、同じく月9ドラマ初出演となるモデルで女優の内田理央。「びっくりしました!まややは尼~ずの中でも切れ長の目で背が高く、とにかくキャラクターが激しいイメージなので、なぜ自分に…と。でも母と親友に話したら『ぴったりじゃん!いつもそんな感じだよ』と言われました、笑」と激白。大のアニメ・漫画好きとしても知られており、「私も学生時代、このような上下ジャージ姿で一歩も外に出ず、家で漫画を読んでいたオタクの時期があったので、気持ちが分かります。その時代を思い出してがんばります!」と明かしている。和物オタク“千絵子”…富山えり子「普段から目に力を入れる練習を」!?さらに、常にメガネで和装姿の和物オタク・“千絵子”には、こちらも月9ドラマ初出演で、舞台経験豊富な女優の富山えり子。「ごめんね青春!」のオーディションに合格し初のTVドラマレギュラー出演を果足して以降、大河ドラマ「真田丸」、「スーパーサラリーマン佐江内氏」など活躍の場を広げている。富山さんは、「率直に非常に嬉しかったです。前から漫画を読んでいて“髪をまとめたら、ちょっと似ているかもしれない”と感じていたので…“この容姿で良かった!”と思いました」とコメント。「千絵子は目力があるし、特徴ある目で感情を表すことが多いので、いかに近づくか…普段から目に力を入れる練習をしています、笑」とも語る。この4人が繰り広げる、なんとも不思議なオタクの「絆」は、月海(芳根さん)が新しい自分を見つける上で、時にすてきな道しるべになっていく。フジテレビ編成部の渡辺恒也氏も、「原作の再現度とキャラクターのインパクト、そしてドラマならではの現実味、という3つの要素が絶妙に組み合わさった最高のキャスティングができたと自負しています!」と自信たっぷり。原作ファンもびっくりすること間違いなし!?の彼女たちの“尼~ず”なりきり度に注目していて。「海月姫」は2018年1月、毎週月曜21時よりフジテレビ系にて放送。(text:cinemacafe.net)
2017年12月18日4月にTBS赤坂ACTシアターで上演される「赤坂大歌舞伎」。2008年に始まり5回目となる今回、初めての新作歌舞伎『夢幻恋双紙 赤目の転生(ゆめまぼろしかこいぞうしあかめのてんせい)』を上演する。その作・演出をつとめるのは、中村勘九郎・中村七之助と同世代の劇作家である蓬莱竜太。赤坂大歌舞伎 チケット情報今作を「演劇界をひっくるめての事件になれば」と熱く語る勘九郎に話を聞いた。「前々から蓬莱さんに書いて欲しいと話していたのですが、4月に赤坂大歌舞伎をやることになって『じゃあここでできるじゃん!』って」と、待ちに待ったタッグであることが笑顔から滲み出る勘九郎。蓬莱といえば小劇場のイメージもあり、先日行われた製作発表会見でも「僕が普段やってる芝居は歌舞伎とは縁遠いというイメージを持っていまして。逆にそれがどう融合するか楽しみ」(蓬莱)と話していたが、勘九郎自身は「蓬莱さんは家族や日常を…日常の変な人たちを描くのがすごくうまい。(蓬莱が脚本を手掛けた)『まほろば』を観たときに絶対に(歌舞伎でも)書いて欲しいと思ったんです」。同世代の蓬莱とのタッグは、父である十八代目中村勘三郎の言葉も背景にある。「父が言っていたんですよ、『俺はしあわせだ。同世代で野田秀樹、渡辺えり、それに串田和美さんとか、いろんな人と巡り会って新しいものを生み出してきた。お前達も巡り会えたらいいね』って。だからこれは喜んでくれると思います。ただやっただけじゃ怒られますけども」。気が弱くイマイチな男・太郎(中村勘九郎)が、愛した歌(中村七之助)を幸せにするために転生を繰り返す物語。勘九郎は「あらすじを読んですぐ電話しましたね、『天才だ!』って(笑)。ミステリーであって、喜劇のようで、笑いながら深い闇に落とされるような話です」。会見では蓬莱が「パラレルワールドみたいなもので、人格がこんなに人生に影響していくんだっていうことが描かれています」と解説。恋模様については勘九郎が「さすが蓬莱さんというような台詞が散りばめられています。(愛する女性に)これを言ったらいけないよとか、これ絶対『帰る』って言い始めるよ…って言葉がね、あるんですよ(笑)。男性も女性も覚えのあるものが表現されると思います」と話し、どこか馴染みやすさを感じさせる。会見では七之助も「リアルな描写。これを歌舞伎にしてどうなるのかなというのが楽しみです」と感想を述べつつも、演者として「役者が一生懸命やらないとダメにしてしまう作品。がんばらないと」と気合いをみせた。公演は4月に東京・TBS赤坂ACTシアターにて。チケットぴあでは2月8日(水)午前11時まで抽選先行プレリザーブのエントリーを受付中。取材・文:中川實穗
2017年02月03日“SF映画の原点にして頂点”と評される同名の傑作映画が原作の舞台『メトロポリス』が、11月7日(月)に東京・Bunkamuraシアターコクーンにて開幕した。演出・美術は串田和美。松たか子、森山未來、飴屋法水らが出演する。舞台『メトロポリス』チケット情報ゴシック調の摩天楼がそびえ立つ未来都市メトロポリス。高度な文明によって平和と繁栄を得た都市の実態は、摩天楼の上層に住む指導者階級の生活を、地下の労働者階級が過酷な労働によって支える徹底的な階級社会であった。ある日、地下に降りた指導者階級のフレーダー(森山)は労働者階級の娘・マリア(松)と出会う。ふたりは惹かれあい、マリアはフレーダーが支配者階級と労働者階級の調停者になる存在であることを見抜く。労働者達にストライキの気運が生じると、フレーダーの父であり支配的権力者のフレーデルセンは危機感を抱き、マリアに似せたアンドロイドを地下社会へ送りこみ、労働者たちの団結を崩そうとする…。初日を迎えるにあたって串田は「この芝居に限らず、表現の幅を広げたいという思いが僕の根底に絶えずあります。演劇って、人によって見方が様々だから『こんなの演劇じゃない』と言う人もいるかもしれません。でも、今回の表現そのものを素直に見てもらいたいと思っています。カットアウトで時空がズレる感覚とか、ひとりの人物を何人かで演じることで人間の多様性を表現できないかとか、できるだけ幅広く表現の方法を探りたい。それはただの手段かもしれないけど、手段そのものにも意外と力がある」と本作の表現へのこだわりをコメント。松は自身の役について「マリアは謎に包まれた存在。メトロポリスの人々の拠り所になれば」と語り、さらに「森山くんはアイディアを構築し、かつ自らやってみせることができます。先輩達も頼もしく、自分にないものを持つ方々と過ごす時間は、とても充実しています。串田さんが稽古始めに『勇気を持ってこのホンに取り組む』とおっしゃったんです。私も勇気を持ってこの世界に飛び込み、とことん生きて、漂っていたいと思います」と意気込み。森山は「フレーダーという役にこだわらず、たとえば松さんとやるときは、松さんと僕の関係性で何ができるかを探したい。僕自身、単純にここにある事象を楽しみたいし、楽しむ自分が観客に伝わったほうがいいような気がする。フィクションということを意識しすぎないほうがいいんじゃないかと思っています」とコメントした。個性豊かなキャストとスタッフによって舞台上に現れる未来都市。その表現に注目したい。公演は11月30日(水)まで東京・シアターコクーンにて。チケットは発売中。
2016年11月08日SF映画の原点にして頂点と言われる作品を原作として作られる舞台『メトロポリス』。佳境に入った稽古場を訪ね、キャストの松たか子、森山未來、演出・美術を手がける串田和美に話を聞いた。90年前の映画が描いた100年後は、今どう表現されるのか。稽古場からは、想像し創造する演劇の豊かさが感じられた。舞台『メトロポリス』チケット情報描かれるのは未来都市メトロポリス。支配者階級と労働者階級に二極化した世界で、支配者の息子フレーダー(森山)と労働者階級の娘マリア(松)が出会い惹かれ合う。やがて、ふたりの交流に危機感を抱いた支配者が、マリアに似せたアンドロイドを作り、労働者たちのもとへ送り込むのだが──というのがとりあえずのあらすじである。が、この舞台で見せようとしているのは話ではないようだ。何しろ冒頭のシーンから、キャスト全員でダンスとは言い切れない不思議なパフォーマンスを見せていく。山田うんの振付で、それぞれが、歩いたり、転がったり、つながったり、人に登ったり。全員で作り出す複雑で意味ありげな動きにただただ見入るばかりである。その舞台ならではの表現について森山は言う。「映画の摩天楼の壮観さとか労働者の数とかをそのまま舞台で見せるのは不可能。じゃあ、ひとりでも群衆を感じさせるとか、舞台上と客席がお互いに想像力を広げられる描写はどうしたらできるのか。それを模索をしている状態なんです」。松もその模索を楽しんでいる。「(森山)未來をはじめ、身体能力という具体的に優れたものを見せてくれる人たちもいれば、どんなことでも何とかするぞっていう頼もしい先輩たちもいて、それぞれがとことん掘っていくのを見ているだけでも面白いんです。そしていつか“これだ”っていう瞬間がくるのを楽しみにしています」。演出の串田自身、どこに辿り着くかまだ見えていない。いや、あえて決めていないのだ。「自分も含めてですけど、演劇ってもっと可能性があるのにここまでしかやれていないっていつも思うんです。だから今回も、限りない表現を探してます。たとえば、言葉と歌の間にあるものとか、もっと突き抜けた先にあるものを。そうして、“これって何だろう”と楽しんでもらえるものを表現できたらというのが、僕の望みなんです」。まさに見たことのないものが、舞台の上で繰り広げられることだろう。最後に「そこで人が何かやってるのを目撃するっていう面白さが舞台にはあると思うので、別にお芝居が大好きじゃなくても、観に来てもらえたらなと思います」と松。本来の観る楽しさが堪能できるに違いない。公演は11月7日(月)より東京・シアターコクーンにて開幕。チケットは発売中。取材・文:大内弓子
2016年10月27日11月7~30日(10、17、24日は休演)に東京・渋谷のBunkamuraシアターコクーンで公演される舞台『メトロポリス』の取材会が11日、都内で行われ、松たか子、森山未來、演出家の串田和美が出席した。SF映画の原点とも呼ばれているフリッツ・ラング監督の名作『メトロポリス』(1926年公開)を90年の歳月を経て串田和美ならではアイデアでアレンジした同舞台。ゴシック調の摩天楼がそびえ立つメトロポリスと呼ばれる未来都市を舞台に、指導者階級と労働者階級の姿を描きだす。松は「映画を見ましたが、当時これを作ろうとした現場の熱気がすごかったのでは、と想像しながら見ていました。当時の人たちのパワーをいただきながら臨んでいきたいですね」と話し、森山も「僕は手塚治虫さんが描いた漫画の印象が強いです。その原点がこの映画でSF映画の金字塔とも言われているぐらいですから、それから90年後の2016年にどうできるのか、チャレンジでもあり楽しみでもあります」と意欲を見せた。これまで何度か共演している松と森山。現在は同舞台の稽古中だが、松について森山は「松さんはマリヤとアンドロイドの二役をやられるんですが、本当に君臨していて、都市の上に君臨するイメージそのままですね(笑)」と何度も"君臨"というワードを連発して松は苦笑い。続けて「すごく柔らかいんですけど、ずっしりしているので、その象徴としてそこに彼女が居てくれるんですが、僕らが動いていても説得力があります。そういったものを日々感じていますね」と存在感に太鼓判を押していた。
2016年10月11日歌舞伎の様式美に現代的なセンスを加え、古典の新たな魅力を創造している「コクーン歌舞伎」。今回上演されるのは“お岩さん”でおなじみの『四谷怪談』。お岩と夫・伊右衛門、お岩の妹・お袖と直助の悲劇を軸に忠臣蔵のドラマが絡んでいく。「15歳で東京バレエ団に入団した時、最初に出た舞台が、忠臣蔵を題材にしたモーリス・ベジャールさん振付の『ザ・カブキ』という演目でした。それから18年を経て、退団する時に最後に踊ったのもこの作品。そもそも自分が、歌舞伎の舞台にお誘いを受けたこと自体が予想外すぎたので、思い切ってそんな縁を繋げて、エイッてお引き受けしました」バレエダンサーながら、近年は現代劇や映像でも活躍中の首藤康之さんも、さすがに歌舞伎でのオファーは驚いたそう。「稽古が始まったいまも、まだ緊張が解けない」とか。「皆さんのセリフを聞いたら圧倒されて、古典の偉大さと、そこで生きてこられた方々の力強さを実感しました。バレエもそうなんですが、古典をやりこなすには、積み重ねたものがベースにないと難しいんですね。それを皆さんの佇まいから少しでも取り入れられたらと思います」コクーン歌舞伎の演出を長年手がけてきた串田和美さんからのオファー。あえてダンサーの首藤さんを歌舞伎の舞台にキャスティングした狙いがきっとあるはず?「どうでしょう…串田さんに伺っても、なかなか手の内は明かしてくださらないので(笑)。でも、こちらが聞いてもお話しされないのは、僕に余白を与えてくださってるんだと思うんです。これまでお仕事でご一緒してきて、串田さんのお作りになる世界を信頼していますし、それを拠り所に頑張りたいと思っています」◇6月6日(月)~29日(水)渋谷・Bunkamura シアターコクーン作/四世鶴屋南北演出・美術/串田和美出演/中村獅童、中村勘九郎、中村七之助、首藤康之、笹野高史、片岡亀蔵、中村扇雀1等ベンチ席1万3500円~3等席4000円当日立見券3500円・2500円あり(すべて税込み)チケットホン松竹TEL:0570・000・489◇しゅとう・やすゆき9歳からバレエを始め15歳で東京バレエ団に入団。’04年の退団以降は、現代劇、映像へも挑戦。現在放送中のドラマ『99.9』(TBS系)にも出演。◇首藤さんが演じるのは、病に臥せる小汐田又之丞。彼への忠義一心で薬を盗んだ小平は、伊右衛門に殺され、お岩同様に亡霊となって現れる。復讐劇の鍵を握る存在だ。※『anan』2016年6月8日号より。写真・津留崎徹花インタビュー、文・望月リサ
2016年06月03日今ノリにノっている劇作家・演出家ケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下、KERA)の最新作が、2017年2月、渋谷・Bunkamura シアターコクーンにて、「シアターコクーン・オンレパートリー+キューブ 2017」として上演されることが決定。主演には井上芳雄、ヒロインには小池栄子が出演することも明らかになった。今年に入り、「第23回読売演劇大賞」最優秀作品賞及び優秀演出家賞を受賞、さらに「第66回芸術選奨」文部科学大臣賞を受賞し大注目を集めるKERAさんが、作・演出を手掛ける新作舞台。KERAさんは、「劇団ナイロン100度」の主宰であり、サブカルチャーから文芸作品まで幅広く作・演出。音楽、美術、演出と独特なセンスで華やか且つ新感覚でこれまで挑戦的な作品を多く産み出してきた。“ナンセンスコメディの旗手”とも言われ、会話のトーンやズレによって、笑いや独特な空気感を生み出す緻密な演出が特徴で、演劇界でもキャストの技量が要求される演出として知られている。主演には、“ミュージカル界のプリンス”として「モーツァルト!」「ハムレット」など多数のミュージカルで主演を務め、近年は蜷川幸雄、串田和美、栗山民也などとも組み、ミュージカル以外の演劇作品でも確かな演技力で評価を得る井上さんが好演し、ヒロインには、KERA上演台本・演出の「グッドバイ」でヒロインを演じ、「第23回読売演劇大賞」最優秀女優賞を受賞したばかりの小池さんが出演する。今回の決定にキャストの2人はこう語る。初めてKERA作品に出演することになる井上さんは、「KERAさんに『何か一緒にできれば』と仰って頂き、一見接点がなさそうな僕に興味を持って下さった事に、半信半疑というか嬉しい驚きでした。今、自分の中で“ミュージカル”と “ストレートプレイ”の垣根がどんどん無くなって来ています。その決定打として『こいつ本当に芝居をやりたいんだな』と思って頂ける作品になればと思います」と抱負を語り、共演の小池さんについては「自分を高めて今がある本物、恐いくらい演技力のある女優さん、という印象です。胸を借りるくらいの気持ちでご一緒したいと思います」と期待を寄せている。一方の小池さんも、「『グッドバイ』に続き大好きなKERAさんの演出を受けられる事、しかも初めてのシアターコクーン、そしてお相手は才能溢れる王子様、井上芳雄さん。今から興奮で鼻血が止まりません (笑)アドレナリン出まくりです。いつも通り『やれるべき事を全力でやる』のみ」とコメントし、公演を心待ちにしている様子だ。さらにKERAさんは、2人のキャスティングについて、「もう何年も前に井上芳雄くんにオファーしました。ストレートプレイだということ以外にはまったく、何一つ、共演者すら誰ひとりとして決まっていないにも拘わらず、彼は快諾してくれました。僕はそういう俳優さんが大好きです。ミュージカル界のプリンスと称されてきた井上くんですが、しかし、一方で非常に生活感を感じます。僕にとってはそこが魅力的」と井上さんとのタッグを熱望していたと話し、小池さんについては、「昨年秋の『グッドバイ』で強烈なキャラクターを演じてもらいました。あの役は、書いた僕が言うのもなんですが、意外性に富んだ当たり役だったと思います。今回はもっとずっと複雑な女性を演じてもらうことになるでしょう。難役をあてがいたくなるのは抜群に上手いからです」と絶賛している。タイトルもストーリーも未発表でその多くがベールに包まれたままの本作は、公演を来年2月、チケット発売は11月を予定しているとのこと。KERAさんとは初タッグの井上さんと黄金タッグの小池さん、この3人が組むことでまた新たに演劇界を賑わせることは間違いなしのようだ。今後明かされる共演者など作品の全貌に期待していて。(cinemacafe.net)
2016年04月08日昭和の人気人形劇を初めて舞台化する『漂流劇 ひょっこりひょうたん島』が12月、井上芳雄、安蘭けいの出演で上演される。原作は1964年から69年の5年間、NHK人形劇シリーズとして放送され、個性的な登場人物、奇想天外な物語で人気を博した大ヒット作。故井上ひさしが脚本に携わったことでも知られている。舞台版の脚本は宮沢章夫と山本健介が書き下ろし。演出と美術を串田和美が手がける。ギャングのマシンガン・ダンディ役に井上芳雄、こどもたちを率いるサンデー先生役に安蘭けい。そのほか、山下リオ(博士役)、小松和重(テケ役)、山田真歩(プリン役)、内田紳一郎(ダンプ役)、小松政夫(トラヒゲ役)、白石加代子(ドン・ガバチョ役)らが出演する。公演決定にあたり串田は「『ひょっこりひょうたん島』はひょっこり現れて、ひょっこり消えていったような気がする。それがみんなの心に残っている。観なかった人たちの心にも。まだ生まれていなかった人たちの心にも。それは気づかぬうちにそっと、しかし、したたかに成長しているような気もする。再会するのが楽しみな、成長する記憶のような舞台をつくってみたい。それは飛びっきり楽しく、飛びっきり贅沢な芝居の姿になるだろう」とコメントを寄せている。公演は12月15日(火)から28日(月)、2016年2月3日(水)から11日(木・祝)まで、東京・渋谷のBunkamura シアターコクーンにて。12月公演のチケット一般発売は9月26日(土)より。
2015年07月08日3月29日に公開される特撮映画『平成ライダーVS昭和ライダー 仮面ライダー大戦 feat.スーパー戦隊』の主題歌が、串田アキラ&仮面ライダーGIRLSによる「ドラゴン・ロード 2014」に決定した。「ドラゴン・ロード」は、1982年にリリースされた串田のシングルで、『仮面ライダーZX』のイメージソングとともに、特撮TVドラマ『10号誕生!仮面ライダー全員集合!!』のオープニングテーマに起用された楽曲。串田×仮面ライダーGIRLSによって新たに生まれ変わった「ドラゴン・ロード 2014」は、串田のオリジナルのボーカルデータと仮面ライダーガールズのボーカルがバトルするという映画にちなんだ"平成vs昭和ソング"で、ハードテンポな曲にアレンジされているという。同曲は、仮面ライダーGIRLSが3月19日にリリースするニュー・アルバム『exploded』に収録される。今回の「ドラゴン・ロード 2014」について串田は「『ドラゴン・ロード2014』はオリジナルの『ドラゴン・ロード』のマルチテープのボーカルトラックを使用してリミックスされています。以前の歌を新しい形にして皆さんに聞いていただくのは不思議な気持ちもしますが2014年版を楽しんでいただき、そして改めてオリジナル版も楽しんでいただけたらと思います」と語りつつ、映画『平成ライダー対昭和ライダー 仮面ライダー大戦 feat.スーパー戦隊』についても「素晴らしい仕上がりになっているそうなので私も観るのを楽しみにしています」と期待を寄せている。また、串田とタッグを組んだ仮面ライダーGIRLS代表の吉住絵里香は、「串田アキラさんが力強く歌われ、当時から多くの方に親しまれてきた楽曲『ドラゴン・ロード』が時代を超え、現代風のアレンジを加えてパワーアップしています。記念すべき映画の主題歌として発表できること、そしてKAMEN RIDER GIRLSとしてこの楽曲への参加を誇りに思います」と語っている。
2014年03月07日信州・まつもと大歌舞伎『天日坊(てんにちぼう)』が上演中の長野・松本市で、7月15日、中村勘九郎、中村七之助、中村獅童ら歌舞伎俳優と、演出の串田和美が市内から松本城まで人力車で練り歩く登城行列を行った。中村勘九郎チケット情報登城行列は「松本城市民ふれあい座」と題し、まつもと歌舞伎を盛り上げようと市民らが名乗りをあげ行われたイベント。この日、沿道には38,000人(主催発表)が集まり、市内の松本郵便局前から出発した俳優に、盛んに声援や拍手を送っていた。勘九郎らも市民からの熱烈な歓迎ぶりに満面の笑みを見せ、握手やサインにも気軽に応じていた。松本城本丸庭園内に設置された特設舞台前には5,000人の市民が詰めかけ、「おめでとう 六代目勘九郎襲名」のアドバルーンが上がると、壇上から勘九郎も「すごい」とびっくり。司会進行役の串田が「(六代目襲名後の)勘九郎さんではまつもと歌舞伎は初めてです」と紹介すると「串田さんに言われるまで気づきませんでした」と勘九郎はすっかり松本に馴染んだ様子で語った。七之助は「みなさまの温かさを身にしみて感じています。松本はみなさんが(自分達と)一緒に芝居をやっているという感じです、心からそう思っています」と挨拶。獅童は「歌ってもいいっすかー?」と会場を盛り上げるも「今日は止めときます」とトーンダウン。すかさず串田が「きっと千秋楽の舞台で歌うんだと思いますね」とフォローし笑いを誘っていた。信州・まつもと大歌舞伎は、2008年、2010年に続き今年で3回目。『天日坊』は、河竹黙阿弥が初期に書いたと言われる『五十三次天日坊』をもとに、人気脚本家の宮藤官九郎が渋谷・コクーン歌舞伎第十三弾に書き下ろした脚本での上演となる。ぴあの取材に応じたまつもと市民芸術館・芸術監督も務める串田は「観客や観客のいる街が一緒になって作る演劇がはっきり見えるのがすごい」と話す。また出演俳優が若いことや、宮藤の脚本目当てで「若い人たちがものすごく増えた」そうだ。串田は「歌舞伎の力って、古典だとかそういうのを超えて血の中にある芸能とかお祭りのようなもの。見た事がない人でも、知らない人でも騒ぎたくなっちゃう、知識と関係なく、ある敷居をとった時に突然自分たちのものになる。庶民が江戸時代に作った文化なんだなとここに来るとはっきりします」と力を込めて語った。公演は長野・まつもと市民芸術館主ホールにて7月18日(水)まで開催。
2012年07月17日歌舞伎俳優の・中村勘九郎、中村七之助、中村獅童が出演する「渋谷・コクーン歌舞伎第十三弾『天日坊(てんにちぼう)』」の公開稽古が6月14日、東京・渋谷Bunkamuraシアターコクーンで行われた。コクーン歌舞伎『天日坊』チケット情報本作は、河竹黙阿弥が1854年に書いた『天日坊』をもとに、人気脚本家の宮藤官九郎が新たに脚本を執筆。それを串田和美の演出・美術により、実に150年ぶりに現在の歌舞伎として上演するもの。物語はふとした野心から将軍・源頼朝の落胤になりすました法策=後の天日坊(勘九郎)を軸に展開。悪事を重ねながら鎌倉を目指す法策は、旅の途中で出会った盗賊・地雷太郎(獅童)とその妻・お六(七之助)から思いもよらぬ自分の運命を知ることになる。宮藤の書いたセリフには「マジかよ」などの現代語と黙阿弥の七五調が混在し、その状態をさらにセリフでつっこんだりと、飽きさせない工夫が随所にある。また黙阿弥お得意の因果話に加え、化け猫退治や東海道への旅など盛りだくさんの要素をわかりやすくまとめている。串田の美術は整ったものではなく、手作り感を生かしたようなセット。衣裳やかつらは今までの歌舞伎で見慣れたものとはひと味違うデザインで面白い。音楽は歌舞伎で使う下座音楽は使わず、全編トランペットとエレキギター、ベースを使用。トランペットの音色と法策の心情がシンクロするような場面もあり、従来の歌舞伎では見られない新しい演出効果になっていた。この日の稽古前には会見も行われ、勘九郎、七之助、獅童と串田が登壇。勘九郎は「父(勘三郎)が18年前にコクーン歌舞伎を始めた時は“勘九郎”でしたから、その名でここに立てることはプレッシャーもあり、誇りに思っています」と挨拶。弟の七之助も「うちの父が『面白い!出来てるじゃん』って言ってました」と父・勘三郎も驚いたことを明かした。これを受け串田も「稽古場でやけに笑う人がいるな~、誰だよ」と勘三郎が様子を見に来たときのエピソードを披露。また、獅童は「僕は盛り上げ役ですから」と謙遜しながらも「七之助さんと毎日一緒にご飯を食べて、恋愛や芝居の悩みを相談してます。人生ってのは楽しいですよ」と話し、場を和ませていた。東京公演は同所にて6月15日(金)から7月7日(土)まで上演される。その後、「信州・まつもと大歌舞伎『天日坊(てんにちぼう)』として長野・まつもと市民芸術館主ホールにて7月12日(木)から18日(水)まで開催。チケットはいずれも発売中。
2012年06月15日臨場感のある演出や新しい趣向を取り入れ、毎回話題となっている「コクーン歌舞伎」。これまでも本火、本水、泥沼を使う演出や、椎名林檎の音楽、いとうせいこうのラップといった、従来の歌舞伎にはなかった要素が演劇的興奮を高め、多くの観客に支持されてきた。第13弾となる今年、河竹黙阿弥原作の『天日坊』を、人気脚本家・演出家の宮藤官九郎の脚本で上演する。『天日坊』は黙阿弥の初期の作品で、ふとした野心から将軍・源頼朝の落胤になりすました天日坊が、東海道を下る途中、出会った盗賊夫婦によって思いもよらぬ自分の素性を知ることになるという話。化け猫退治や盗賊たちの活躍も描かれ、当時の世相ともマッチし大当たりをとった舞台。幕末に初演されてから実に約150年ぶりの上演となる。4月27日、制作発表会見が行われ、出演の中村勘九郎、中村獅童、中村七之助と、演出・美術の串田和美、宮藤が登壇した。天日坊を演じる勘九郎は「初演からコクーン歌舞伎を支え、闘ってくれている串田監督、そして宮藤さんとご一緒出来るのは凄く嬉しいです。本当に賛否両論、大嵐の作品になると思いますが、それを楽しんでやりたいと思います」と挨拶。もうひとりの“カンクロウ”である宮藤は「今日は“カンクロウさん”と言われても、あっ俺じゃないなと思い、不思議な感じです」と場を和ませ、続けて「今回は150年位演じられていない歌舞伎が原作なので、これはいいなと。駄目だったら(原作の)黙阿弥のせいにできるなと(笑)。良いところは『そこ、僕変えたんです!』と言えるし」と相変わらずの宮藤節で笑いを誘った。コクーン歌舞伎に9年ぶりの参加となる獅童は「(今までは)現場で叱ってくれた勘三郎さんがいらっしゃいませんが、僕らの世代で引っ張って行かなくてはいけない。なんとしても面白くしたいと思います」と意気込みを語った。宮藤が初監督した映画『真夜中の弥次さん喜多さん』に出演経験のある七之助は「16歳で初めてコクーン歌舞伎に出させていただいた時に、手取り足取り教えてくださった串田さんと、映画でずっと一緒だった宮藤さん、ふたりの育ての親に囲まれてとても楽しみです」と話していた。「渋谷・コクーン歌舞伎第十三弾『天日坊(てんにちぼう)』」は6月15日(金)から7月7日(土)東京・シアターコクーンにて開催。チケットは発売中。また、「信州・まつもと大歌舞伎『天日坊(てんにちぼう)』は7月12日(木)から18日(水)まで長野・まつもと市民芸術館主ホールにて上演される。チケットは5月5日(土・祝)より一般発売開始。
2012年05月01日4月2日、東京・隅田公園内の仮設劇場・平成中村座にて中村勘三郎が出演する『四月大歌舞伎』が開幕した。江戸の芝居小屋を再現した同劇場だが、昨年11月からのロングラン公演も残すところあと2か月となった。平成中村座『四月大歌舞伎』チケット情報『四月大歌舞伎』の第1部は待望の『法界坊』を上演する。平成中村座が誕生した2000年の第1回公演で上演されたもので、隅田川を舞台に繰り広げられるご当地ものは、まさに平成中村座の代表作。大阪、ニューヨーク公演と上演を重ね、進化を続けた演目だけに、勘三郎の気合も充分。病気復帰以来、初の『法界坊』となったが、アドリブも満載で、場内を走りまわるなど大熱演だった。さらに終盤の舞踊『双面水照月』では、舞台の奥が開き、現実の世界が登場。舞台の向こうに見える東京スカイツリーをバックに、桜吹雪の中での立回りという演出に、観客は大きな拍手と大歓声を送っていた。演出は串田和美。第2部は『小笠原騒動』を上演。1999年に京都・南座で復活上演を果たし、東京、名古屋、福岡と全国で喝采を浴びた話題作が、平成中村座に初登場する。こちらは、終盤の水車と本水を使った演出が見どころで、中村橋之助と中村勘九郎が豪快な立回りをみせる。第1部、2部ともに出演は、勘三郎のほか、中村扇雀、中村橋之助、中村勘九郎、中村七之助、笹野高史と平成中村座ではおなじみの顔ぶれが揃う。勘三郎は今月の上演に際し次のようにコメントを寄せた。『法界坊』については「浅草寺境内に建てたりいろいろな土地で続けてきました。外に出ると浅草だったり大阪、名古屋、さらにはニューヨークだったりするのが面白い。今回はスカイツリーが現れます。花見の季節にもぴったりなのでお楽しみに」。『小笠原騒動』については「本水をつかった演出をやるのが面白い」と語っていた。また、平成中村座の魅力は「役者とお客様の距離も近く、アットホームな雰囲気があります。“生きてる”感じが強い。だから“芝居が生きる”」と話し、「これからも平成中村座は続けていきます」と意欲を見せていた。公演は4月26日(木)まで。チケットは発売中。
2012年04月03日2月より六代目中村勘九郎襲名披露興行を行う中村勘太郎が都内で取材会を行い、現在の心境を語った。襲名興行は2月に東京・新橋演舞場にて、3月に東京・浅草の平成中村座で上演後、主要都市を回る。新橋演舞場二月大歌舞伎<中村勘太郎改め六代目中村勘九郎襲名披露>チケット情報「演舞場と中村座で襲名興行ができるのは、なんだか勘九郎らしいですね。父が19歳の時から夢見て建てた中村座で初の襲名ができる。うれしいですね」と勘太郎。父・勘三郎が勘九郎時代に築いてきた功績は数限りない。1994年よりほぼ毎年、若者の街渋谷で『コクーン歌舞伎』を上演。また、現代の作家に新作歌舞伎を創って欲しいという思いから、串田和美、野田秀樹、渡辺えり、宮藤官九郎などに演出や執筆を依頼し新たなファンを掘り起こした。2000年には中村座にゆかりある浅草に仮設劇場を建て、“平成中村座”として公演を行った。その後この一座は日本国内のみならず、世界各地で上演を行っている。そんな勘九郎の名を継ぐ重責については「とりあえず怖い」と話す。「やっぱり戦ってきた名前ですから。(中村座やコクーンでの上演は)歌舞伎を愛してもらいたい、色々な人に知ってもらいたいって。危機感をずっと持っていたんでしょうね。お客様が入ってくれなきゃ話にならないですし。ただ、新しいことをするとよく思わない人もいますよ。いいものをすることによって戦うというか。熱い魂を持って戦ってきた名前ですね」12月の中村座は勘太郎として最後の舞台出演になる。「今月はいい最後を迎える事ができるんじゃないかな。『積恋雪関扉』の関兵衛は今までの役者人生の中で一番苦心した役ですね。演じた者にしかわからない苦しみや疲れがあります。勘太郎という名前で関兵衛をやらせてもらい、偉大なる先輩方が愛した役で、同じ疲れを自分自身で体感でき、歌舞伎ってこういう楽しさもあるんだなと思いました」今年は震災はもちろん、長男の誕生、父の病気、祖父(七代目中村芝翫)の逝去と勘太郎にとっても大きな出来事が続いた。「すごい年になっちゃいましたね。(父の代役を務めた際)命を削ってでもやりますと言ってたら、本当にそれぐらい大変でした(笑)」2月興行では『土蜘』の僧智籌と、『河内山』松江出雲守、『春興鏡獅子』の弥生での出演が決定している。「『土蜘』は、今まで中村屋にあまり縁のなかった役ですが楽しいです。弥生は、祖父(七代目中村芝翫)と1対1でずっと稽古をやってました。父も祖父もすごく大事にしています。おじいちゃま(十七代目中村勘三郎)も。全員の血が入っているから大切にしなければと思いますね。3人とは体型が違うので、当時振り付けられた踊りをどうこの身長で踊るかですね」襲名興行まであと僅か。「今月の“勘太郎”最後をまずは楽しみたいです。襲名はお祭りですからね。お客様にも楽しんで頂いて、一緒に祝って欲しいです」。公演は2月2日(木)から26日(日)まで新橋演舞場で上演。その後、3月平成中村座、9月に大阪・松竹座、10月に名古屋・御園座、12月に京都・南座、2013年2月に博多・博多座で上演される。
2011年12月22日