連載『住まいと安全とお金』では、一級建築士とファイナンシャルプランナーの資格を持つ佐藤章子氏が、これまでの豊富な経験を生かして、住宅とお金や、住宅と災害対策などをテーマに、さまざまな解説・アドバイスを行なっていきます。○あらためて「資産」とは何? - 資産の意味を考えれば住まいが分かる!機会あるたびに「住宅を資産としてもしっかり捉える必要がある」ことを唱えてきました。もちろん住まいを金銭だけで捉えることもまた問題ではあります。住まいは家族の夢を実現する場であり、家族の生命と財産を守る器であり、自己を表現する場であり、かつ資産でもある…なのです。それでは資産とはそもそもどういうものなのでしょうか。会計上の正式な用語の使い方は別として、資産とはいつか使う予定のための、あるいは活用するための、あるいは収益を上げるための預貯金や動産・不動産などです。換金できないものや活用できないものは資産とは言えないでしょう。家電製品や家具はどうでしょうか。10年程度で耐用年数が来る家電などは消耗品の部類かも知れません。何代にもわたって使い続けられるしっかりした家具などは、換金できるかどうか分かりませんが、絶対に必要なものであれば、買えば相当な金額となるので「資産」の部類に入れられるかもしれません。では住まいはどうでしょうか。消耗品でしょうか。今までの日本では住まいの耐用年数は20数年と短く、消耗品的な扱いを受けてきた面は否めません。高度成長期においては住宅ローンで家計が破綻するケースは少なく、住まいを活用する必要性は、さほど認識していなかったかもしれません。しかし数千万円の費用を費やし、ローン総返済額はさらにそれよりも多くなる住まいが「資産」でなく消耗品であるとすれば大浪費でしょう。今の住まいは維持管理さえしっかり行えば、100年は優に使えます。住まなくなれば売却して換金も可能です。住まいは最大の資産で、長持ちさせなければならず、そのための労力を惜しんではならないのです。○生涯住居費は持ち家・賃貸どちらが有利?住まい関係の雑誌等で、この話題は数10年にもわたって、その折々に話題に登場してきました。そもそも価値観の異なるものを同じ土俵に上げること自体、意味のないことなのですが、何度も話題になるのにはそれなりの理由があるはずです。日本の持ち家率は年代が進むにつれて高くなり、70代では80%以上となっています。つまり持ち家が日本人の基本路線であり、生涯賃貸で過ごすという意思を持つには、確固たる理念があるはずです。実際は、堅実な人生設計や貯蓄がなされなかったり、やむを得ない諸事情で、持ち家を断念せざるを得なかったりするケースということではないでしょうか。持ち家を購入する能力がありながらの"積極的賃貸派"は独自のしっかりした人生設計が必要で、そのようなケースは日本人の中にはさほど多くはないと思います。それにもかかわらず、度々話題に取り上げられるのは、バブルで持ち家を断念せざるを得なかった時期、低成長時代に突入して、若者世代に漠とした不安が広がっている時期などに、マスメディアが迎合している結果のように思います。実際比較検討した場合の生涯収支は、どの時代も共通してほぼ同じという結果となっています。しかし仮定の理論とは別に、実際は住む地域、戸建かマンションか、立地条件や市場性、建物の耐用年数などで大きく変化すると思われます。政府が推奨する長期優良住宅の場合は、単世代で採算の是非を論じること自体に意味がありません。住まいの選択は生涯収支の有利不利よりも、自分達の価値観や万一の時にどう活用できるかのリスク回避の面で考えるべきでしょう。○持ち家と賃貸、メリット・デメリット下記に持ち家と賃貸のそれぞれのメリットを挙げてみました。そのほかにも個々にリストアップしたい項目があると思います。一度家族でリストアップしてみて、どのメリットが重要か、反対にデメリットに対する対策は何があるかなどを考えてみると、自分たちにとってどちらが良いかが浮かび上がります。書き出してみる手法は、ファイナンシャルプランニングの手法の一つで、本格的に行ってみると、思わぬ結果に驚くことも少なくありません。持ち家のメリット資産が残る家賃を払わなくても済む自由に自分を表現できる子供にとって思い出の家が存在する幸福感が得られる賃貸のメリットローン負担がない身軽に好きな町や地域に転居できる災害で家という資産を失うリスクがない転勤や転職で家の対策を考える必要がない○リスク対応力はどちらが強い?生涯住居費が地域性などの条件によっては大きく異なるとは言え、人生の岐路に立った時に、持ち家と賃貸でどちらが安全か、どちらが有利か、が問題となります。ローンで破綻する、あるいは災害等で住まいを失うが持ち家の最大のリスクだと思います。失業・病気・死亡などによってローンの返済が困難になる場合を考えてみましょう。これからの時代、一生同じ会社にいられる確率は少なくなりつつあります。従ってローンを組む時はその対策をたてて組む必要があります。しかしその気になれば失業してもまったく職がないということはありません。配偶者が働くこともできますし、最低収入はある程度確保はできるでしょう。生活をある程度は絞ることも可能でしょう。重要なのは、ローンが支払えなくなった時に、それまでの意識を変えられるかどうかなのです。ローンの借り入れ時にはほとんど団体信用生命保険に加入しますので、死亡の場合や一定の障害を負った場合はその後の返済は免除されます。また、ローンの残債よりもその時々の売却価格が高いような資産として目減りのしない物件であることも重要です。つまり、人生設計をしっかり立てて、リスクに対応する措置をとれば、万一の場合でも家賃を払っていかなければならない賃貸のリスクの方が大きいと思います。ただし、災害リスクの高い地域やエリアに住まいを所有するリスクは大きいので、地域を選ぶか建物の構造や保険などの対策が重要となります。日本は地震国ですので、持ち家、賃貸にかかわらず、リスクの大きい地域やエリアに住むこと、地震に弱い建物に住むことには最大のリスクです。<著者プロフィール>佐藤 章子一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。
2015年05月11日連載『住まいと安全とお金』では、一級建築士とファイナンシャルプランナーの資格を持つ佐藤章子氏が、これまでの豊富な経験を生かして、住宅とお金や、住宅と災害対策などをテーマに、さまざまな解説・アドバイスを行なっていきます。○不要品の整理で家具転倒リスクを軽減 - リフォーム時がチャンス!阪神淡路大震災では多くの方が家具の下敷きになって亡くなられました。日本の住まいはモノにあふれすぎています。私の子供の頃は、茶の間には茶箪笥と座卓くらいしかありませんでした。寝室にはほとんど何もなく、あったとしても鏡台や整理ダンスくらいでした。建物さえ倒壊を免れれば、家具の転倒の下敷きになって命を失うリスクは比較的少なかったと思います。しかし、現代の住環境はどうでしょうか。リビングダイニングを考えれば、ダイニングテーブルと椅子・ソファー・サイドボード・食器棚・テレビ・オーディオ機器などがあるのではないでしょうか。背が低いものでも安全というわけではありません。モノが室内にあふれていればいるほど、地震による被害のリスクは高まります。耐震リフォームの際は、不要品を徹底的に処分し、既存の押入やクローゼットの中に空き空間を確保し、できるだけ室内にモノを出さないように収納の中に納めるように考えてください。徹底的に不要品を処分しても収納が不足するのであれば、新たな収納を増設するか、そのスペース的余裕がなければ、貸し倉庫やコンテナの利用も考慮に入れてモノの管理を徹底してください。家具の固定などはその先の問題です。○収納の見直し - 工夫次第で既存収納の収納力倍増!リフォームや建替えを決心した理由として最も多いのが収納の不満だそうです。しかし元々さほど広くはない日本の住まいに新たに収納スペースを確保するのはかなり困難な問題です。そこで押入やクローゼットの中をより効率的に改造して、室内にあったモノをできるだけ多く取り込んで、すっきりと生活することも立派な耐震リフォームです。特に押入の天袋やクローゼットの枕棚は使いやすいとは言えません。マンションの収納などは、工場で効率的に生産するための規格化と、輸送面、施工面を考えて高さ2m以下の箱タイプがほとんどで、上部に枕棚があってその下にハンガーパイプのスタイルが大半ではないでしょうか。わが家も同様でした。わが家ではリフォームに際して、この枕棚を撤去し、天井に直接ハンガーパイプを取り付け上下二段にしました。奥行も85cmと深かったので、前後二列にして、合計3本のハンガーレールとしました。デッドスペースがなくなり、これだけで収納量は3倍です。季節の入れ替えからも開放され、住まい全体の既存の収納は満杯どころか空きスペースもできたくらいです。○家具のレイアウト - 明暗を分ける家具のレイアウト地震がどのように揺れて家具がどのように動くかは、起きてみないと分かりません。地震の威力は想像以上で、大きな箪笥も宙を飛んでくると思わなくてはなりません。それでも被害を最小限にするためには家具の配置は大切です。耐震リフォームの際は、家具は納戸やウォーキングクローゼットの中に仕舞うようなリフォームを心がける事が一番ですが、室内空間に配置する場合は箪笥がそのまま寝ている位置に倒れ込まないように、特に頭を直撃しないように配置してください。簡易的な転倒防止金物は万全とは言えません。先ずはレイアウトで極力被害を少なくする工夫を考えてください。○家具の固定 - 転倒防止金具だけではない、家具の固定方法阪神淡路大震災に続き、東日本大震災を通じて防災意識も高まり、家具の転倒防止の必要性も認識されていると思います。転倒防止金物も広く認知されていると思いますが、皆様のご家庭ではいかがでしょうか。狭い日本の間取りでは、家具は倒れたら必ず家族を直撃することは避けられません。しかし、転倒防止金物の多くは見栄えも悪く、また本格的に固定しようと思えば大切な家具にビスなどの穴を開けることになります。高価な桐ダンスや婚礼家具セットなどは、人命第一とは思っても少々残念な気持ちにはなるでしょう。そこで、そうした金具を使わずにスマートに耐震リフォームする方法を考えて見ましょう。下記の写真はわが家のダイニングとキッチンを分ける食器棚です。もともとリビングダイニングとキッチンがワンルーム形式の間取りで、キッチンとリビングダイニングを分けるために両面使いの食器棚をおいていました。当初は食器棚の上部の壁はなく、食器棚は自立していて、天井面との間に突っ張り形式の転倒防止金物を設置していました。側面は日曜大工で作った天井までのL型の壁で冷蔵庫を隠していました。東日本大震災の時は、そのためか幸いにも家具は転倒せず、中にあった食器も不安定なワイングラスを中心に一部の食器が転落して割れた程度でした。わが家も昨年リフォームしたのですが、本格的に耐震性を確保するために、天井から食器棚の上面までの壁を設置しました。壁の裏側(キッチン側)は棚になっていて、モノを収納する事ができます。食器棚を棚の面で固定しますので、壁が破壊されない限り食器棚は倒れる事がありません。食器棚をセットする都合、食器棚と棚にはわずかな隙間が必要ですが、念のためにゴムのピースを差し込んであります。リビングダイニングからの見栄えもよくなり、耐震性能も向上し、収納も増設されました。また図のように家具の上面に色調や雰囲気を合わせた材質で丈夫な棚や新たな収納を新設して、家具を固定する方法もあります。耐震性を高めるとともに収納量のアップも期待できます。家具の転倒防止金具やグッズは様々なものがあります。適材適所、使用注意書きをよく読んで使用してください。組み合わせによっては、互いに力が反対に作用し、逆効果の場合もあります。<著者プロフィール>佐藤 章子一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。
2015年04月23日連載『住まいと安全とお金』では、一級建築士とファイナンシャルプランナーの資格を持つ佐藤章子氏が、これまでの豊富な経験を生かして、住宅とお金や、住宅と災害対策などをテーマに、さまざまな解説・アドバイスを行なっていきます。○支援制度活用のポイント - 耐震診断は信頼できるところに!高齢者世帯などの被害が多い悪徳リフォームの事例として、補強金具の類が意味のない位置に、意味のない形で取り付けられているケースがよく報道されていました。耐震補強金具は取り付ければよいというわけではなく、有効に働くように建物全体のバランスを見て、正しい位置に、正しい方法で取り付けなければ意味がありません。取り付け位置や方法によっては、意味がないどころか、全体のバランスが悪ければ、建物にいびつな力が働き、地震への対応力を弱めて結果になりかねません。無駄なお金を使わないためにも、いきなり耐震工事をするのではなく、しっかりとした耐震診断を依頼してください。できれば工事会社と診断会社は別の方が公平を期待でき、安心です。耐震リフォームの支援制度は、情報・補助金・融資・税制などがあります。どうすれば安心できる耐震改修リフォームとなるのか、先ずは情報収集から利用しましょう。大半の都道府県は耐震診断・改修設計・改修工事すべてに支援制度を設けていますが、改修設計や改修工事については支援を行っていない都道府県もあります。詳細は管轄の地方自治体へ問い合わせください。また、住まいが幹線道路等に面している場合は、耐震診断が義務付けられている場合があり、支援も別途設定されています。○耐震改修補助金制度 - 耐震改修事例を多く入手しよう管轄の市区町村で、耐震診断や工事の依頼先がリストアップされています。診断方法や耐震設計、耐震改修工事の実績などを担当者に相談してください。建物の設計図などを持参すると相談しやすいと思います。最初の診断の相談の時に設計や工事までの流れと仕組み等を一気に把握することをお薦めします。どのような診断をして、どのような工事を行うのか。おおよその費用はどの程度かなどを把握し、補助金制度の有無と併せて、支出しなければならない費用を算出します。補助金の割合は下記の表となっています。詳細は地方自治体にお問合せください。○融資の支援制度 - リフォーム融資の制度は耐震リフォームが要住宅金融支援機構の業務は、一般の住宅ローンについては「フラット35」のように民間住宅ローンを証券化する役割となっていて、支援機構自体は直接の融資を行っていません。しかしリフォーム等については独自の融資制度があります。一般的な改修工事も融資の対象とはなりますが、必ず耐震改修工事を併せて行う必要があります。(※参考:その他に、返済が利子相当分だけで済む高齢者向け返済特例制度もあります。詳しくは住宅金融支援機構にお問い合わせください。『住宅ローンとの賢い付き合い方(3) - リフォームローンにもある減税制度』でも解説していますので参照ください)○税制上の優遇制度 - リフォーム減税制度のメインは耐震改修政府が設けている制度は、当然ながらその目的や狙いがあります。住宅の分野の政策は、住まいが衣食住のひとつで生活上必要なものであること、金額が大きく関連産業の裾野も広いことなどから、経済の活性化の目玉として位置づけられてきています。それに加えて耐震リフォームは、生命と財産を守るという役割の大切さや、一旦地震が発生したならば、二次災害を含めて被害は膨大になり、国の支出も膨大に膨らむことから一般のリフォームやバリアフリー、省エネリフォームよりも重要な位置付けにあり、優遇制度の要となっています。(※参考:リフォームに関する減税制度については、『住宅ローンとの賢い付き合い方(3) - リフォームローンにもある減税制度』を参照ください)<著者プロフィール>佐藤 章子一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。
2015年04月16日連載『住まいと安全とお金』では、一級建築士とファイナンシャルプランナーの資格を持つ佐藤章子氏が、これまでの豊富な経験を生かして、住宅とお金や、住宅と災害対策などをテーマに、さまざまな解説・アドバイスを行なっていきます。○地震に対処する3つの方法 ~電車のつり革の役割は免震? 制震? 耐震?~免震・制震・耐震構造の違いを説明する時は、いつも電車の車内の状況を使って説明しています。電車に乗っていて急発進や急停車した時に、つり革につかまっていた状態はどうなっているのでしょうか。体は大きく揺れますが、つり革につかまっている腕の力でそれ以上は倒れません。腕をグィッと引いて体を元に戻すでしょう。もしつり革が強力なバネでできていたら、体はバネの力で元の状態に揺れ戻されます。この腕が引き戻す力やバネの動きの仕組みが「制震」構造と言われるものです。一方、今回のテーマの「耐震」構造は自らの耐力を向上させて揺れに対応するもので、電車の車内であれば、座席や手摺に体を固定して、電車の揺れに備える場面をイメージしてみてください。ただ単に立っているより、遥かに電車の揺れに対して安全です。「免震」構造を説明するのは少し難しいですが、ローラースケート靴を履いた状態で電車に乗っていることをイメージしてみてください。揺れに対して体は滑っていきますが、ローラースケート靴と体が一体であれば倒れることはありません。しかし車内をどこまでも滑っていってしまっては問題ですので、元の位置に戻す制震構造と組み合わせるのがベストです。住宅の地震に対応するリフォームは「耐震」が中心ですが、制震金具を取り付ける方法や、まれではありますが免震的な対処方法もあります。しかし地震に強くするためには、ただ単に金具で固定すればよいというものではなく、バランスが重要です。また組み合わせ方によっては逆効果になりうる場合もあり、どの方法を採用するかは個々のケースで判断する必要があります。○地震に対処する4つのポイント ~砂上の楼閣とならないためには~建物は地面に支えられています。地面が軟弱であれば、地上の建物がどれほど強くても意味がありません。地震の揺れで起きる液状化現象により、建物が傾いた事例は東日本大震災でも多く報告されています。また地盤だけでなく、地震が原因の火災や津波、堤防の決壊などによる洪水なども視野に入れておく必要があります。東日本大震災では、地震そのものでは無傷の建物が津波で流されている映像を目の辺りにしました。阪神淡路大震災でも多くの建物が二次災害の火災で延焼しました。ポイント1:派生する二次災害への対処今回のテーマではありませんが、実際は直接的な建物の倒壊より、より多くの人命が失われるのが二次災害です。この点も頭に入れて地震対策を考えてください。ただし、移転したり耐火構造にしたりと、簡単に解決できるものではないケースがほとんどでしょう。何度も繰り返しますが、リスクはゼロにはできません。どれだけ少なくできるかだけです。考えすぎて対処が遅くなるよりは、当面建物だけの範囲の耐震化に特化することもリスクを少なくする上では大切です。ポイント2:地盤は地震の際に建物を支えられるか地震がなくても、埋立地は地盤の沈下が置きやすい場所です。特に元の地形が斜面である場合は、斜面の低い部分の沈下の度合いが大きく、不同沈下を起こし、建物が傾く要因です。新築時に地盤の状況に見合った対策(杭・地盤改良・基礎の巾の拡大)を行っていない場合は、基礎や地業(※)の補強が重要課題です。(※ 地業とは、基礎を支える地盤面以下の部分のことを指します。地業工事とは基礎底の下に設置する割栗石、杭、地盤改良等の工事で、基礎を支える地盤面を強化したり、基礎をしっかり支えたりする役割を持ちます)ポイント3:建物を堅固にするには前回紹介した『誰でもできるわが家の耐震診断』(国土交通省監修)の後半に、木造住宅の主な補強方法が解説されています。下記に基本的な考え方をまとめておきます。ポイント4:家具や屋外の塀等の転倒防止対策阪神淡路大震災では建物だけでなく、家具の下敷きで多くの方が亡くなりました。家具や屋外工作物の対処方法は後日「耐震リフォーム(4)」で詳しくまとめてみる予定です。○地盤の強化 ~後からの工事では限られる耐震補強方法~地盤を強化する地業工事は本来建物が建つ前に行うものであり、様々な方法がありますが、建物が建っている状態での地盤の強化はかなり難しくなります。住宅に使用される地盤補強方法は次のようなものがあります。目的が耐震補強なのか、液状化対策なかで、適した工法が異なります。また軟弱地盤の深さ、地下水位や周囲の地形なども考慮に入れる必要があり、かなり難しい判断を必要とします。杭…固い地盤面まで杭を到達させて、その上に基礎を載せる方法です。価格は高めですが、確実な方法です。建物が建った後ではほぼ不可能です。地盤改良(1)…表層の軟弱地盤を強化する方法と、基礎の下をいくつも円筒状に掘削してセメントミルクなどを混ぜて、柱状に固める柱状改良があります。いずれも建物がある場合は難しくなります。地盤改良(2)…土に石灰や膨張性樹脂などを注入し、土の中で膨らませて建物の下の土の密度を高める方法です。建物が存在しても比較的容易に工事ができるのが特徴です。各社独自の方法があり、実績等を充分にチェックして判断ください。擁壁等の強化…道路や隣地と高低差がある場合は、土止めの擁壁があります。擁壁には鉄筋コンクリート造や加工された石材=間知石積みのものなどがあります。しかし違法なコンクリートブロック積みのものも少なくありません。擁壁の構造は建築基準法で定められていて、例えば鉄筋コンクリート造の場合、一定間隔で水抜き穴等が必要です。この水抜き穴のない違法のものも多く見られます。またコンクリート面が膨らんでいたら、中の鉄筋が錆びている可能性があり、擁壁としての性能が低下している可能性があります。○建物を強化する ~使い方を間違うと逆効果の耐震補強~阪神淡路大震災では多くの建物が倒壊しましたが、中には本来地震に強くするための筋交いが梁を押し上げて梁が柱から外れて破壊されたケースも見られました。筋交いの取り付け方、金物の取り付け方などで、逆効果の場合もあるのです。構造材の固定…基本は基礎・土台・柱・梁・屋根のそれぞれの連結部分を金具等で固定強化していきます。基礎と土台はアンカーボルトで固定されていますが、柱が土台から抜けてしまって倒壊につながった事例が多くありました。そのために最近は土台と柱を固定する金具を取り付けたり、直接基礎と柱を連結するホールダウン金物で柱を固定したりします。本来新築時に取り付けるものですが、耐震補強用の後付タイプもあります。壁の補強…耐力壁とは、通常の壁とは違って、所定の太さの筋交いが入っていたり、構造用合板で固められていたりする壁のことです。壁をそのような構造に補強するほか、壁そのものがなければ、壁を追加して補強します。どうしても外部への視界を維持したい場合は、強化ガラスなどで耐力壁を作った例も報告されています。屋根の軽量化…屋根が瓦葺きの場合は、屋根材を軽い素材のものに葺き替えると耐震性が向上します。公共の建物などは上層階を解体減築して耐震性を高めた事例もあります。(※写真画像は本文とは関係ありません)<著者プロフィール>佐藤 章子一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。
2015年03月24日連載『住まいと安全とお金』では、一級建築士とファイナンシャルプランナーの資格を持つ佐藤章子氏が、これまでの豊富な経験を生かして、住宅とお金や、住宅と災害対策などをテーマに、さまざまな解説・アドバイスを行なっていきます。○考えよう! 住まいの役割とはなにかを! ~住まいは生命と財産を守る器~家族の生命と財産以上に大切なものはありません。「住まい」は、それを守る器です。明日にも起きるかも知れない大地震に対して、親として子供を守らなければなりません。住まいの耐震性能が問題ありと思うのであれば、直ちに詳細を把握して対処しなければならないはずです。『住まいと防災』シリーズの第1回に、災害の種類を表にしてあります。皆様の住まいが受けるかも知れないと想定される災害はどれとどれでしょうか。自然環境だけでなく、社会環境の項目にも地震と関係するものが多くあります。この災害リスクに対する住まいの性能が充分でなれければ、改修が必要となります。改修には費用がかかりますが、生命ほど重要なものはないはずですので、住まいの性能に対する状況把握とともに、徹底的に節約してでも費用の捻出をしなければなりません。補助金の有無等も確認ください。(※参照:住まいと安全とお金 第1回『住まいと防災(1)--考えなければならない防災とは?』)○国や自治体がネット上で提供している情報は貴重~情報はできるだけ生のものを~ネット上には政府や自治体、外郭団体等による防災データがいろいろ掲載されています。防災の心構えから詳細のデータまで様々ですが、このコラムを通じて最終的には是非、直接生のデータに触れてください。このコラムはそのための水先案内人だと思っています。現代はいろいろな情報があふれています。雑多な情報が飛び交う中、とかく末端の情報に左右されがちです。大切な事柄に関しては、できるだけ直接的なデータに触れる事を習慣付けてください。新聞で気になる情報を見つけたら、図書館等で数紙を比較してみてください。さらにデータ元のHPを検索して、より詳細の情報をチェックしてみてください。命にかかわる情報が最も重要な情報なはずで、一生の中で、そのような重要な情報はそれほど多くはありませんので、その時くらいは徹底的に情報収集ができるはずです。○住まいの性能は何で決まる? ~住まいの性能は最も弱い部分で決まる!~国の性能表示制度では、性能評価は10項目あります。耐震性能に直接大きくかかわるのは以下の築年数、地盤、構造体、管理の4つの項目です。弱い地盤に適切な事業や基礎が施されていなければ、その他の性能が高くても意味を成しません。過去にリフォームが行われている場合、壁や柱を撤去していることが少なくありません。阪神淡路大震災では、隣り合わせに建っていた全く同じ間取りの分譲住宅が、その後のリフォームの違いにより、倒壊と補修で済む状態の明暗を分けた事例が報告されています。建物の性能のチェック項目○ネットで簡単チェック! 我が家の耐震性能~簡単な事から動き始めよう!~我が家がどの程度の耐震性能があるかの判断は、なかなか難しいものです。地方自治体では診断の補助や診断機関の斡旋を行っているところもありますが、ますは自分で診断してみましょう。国土交通省監修の『だれでもできるわが家の耐震診断』は、文字どおり誰でも簡単に自分の家の耐震性能をチェックできます。リーフレットになっているものと、ネット上で診断するタイプの二通りあります。診断項目は10項目で、どのような部分が耐震性能に影響するのかがわかりますし、簡単なチェックでおおよそ自宅の耐震性能がどのレベルかが分かります。専門家に依頼する前に自己診断しておくと、建築士の説明も理解しやすいと思います。あまりに結果が悪ければ、耐震リフォームが待ったなし! と言うことも理解できます。また余談ですが、中古住宅などを購入する時に、図面などから耐震性能を診断するのにも利用できます。誰でもできるわが家の耐震診断国土交通省監修誰でもできるわが家の耐震診断(国土交通省インターネット版)<著者プロフィール>佐藤 章子一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。
2015年03月16日連載『住まいと安全とお金』では、一級建築士とファイナンシャルプランナーの資格を持つ佐藤章子氏が、これまでの豊富な経験を生かして、住宅とお金や、住宅と災害対策などをテーマに、さまざまな解説・アドバイスを行なっていきます。今回は趣向を変えて、あまり知られていないローン形態や住宅ローンの背景にある社会経済なども交えて雑学的に綴ってみたいと思います。日本人の多くが利用する住宅ローンですが、誰もが利用しているものだからと安易に事を運んでは、取り返しのつかない局面に陥らないとは言えません。ほんの少し、取り巻く社会体制や契約の仕組みなどを知っておくだけで、危険を回避できる場合もあります。年収の数倍の借金であることを忘れてはいけません。○住宅ローンの金利と社会経済 ~風が吹けば桶屋が儲かる~消費金額が大きいことと、関連産業の裾野が広いがために、住宅政策は長年政府の景気テコ入れの目玉として扱われてきました。「住宅ローンとの賢い付き合い方(2)」の文末で、住宅ローンの適正金利は6%程度と言われていると述べました。ローンを借り入れる時には少しでも金利が低い方が助かります。しかし本当に金利は低いままが理想的なのでしょうか。適正金利の意味合いは、金利が6%程度であれば、社会経済が活性化し、健全な成長が生まれ、所得も増え、資産価値も増し、相対的に返済の負担が減っていき、その事が消費を促し、さらに経済が安定していく循環を生み出すと言うことです。今は低金利であっても不安がいっぱいかもしれませんが、高度成長期の高金利時代の方が、気持ち的な余裕があったと思います。まさに「お金は天下のまわりもの」なのです。サブプライムローン(※)の破綻が世界の経済を大きく左右したことは記憶に新しいところです。「低所得者でも家が持てる」というメリットだけに目を向けて、そのリスクに目を向けなければ、大きな問題となります。個人として身を守るためには、現在の低金利に安穏とせずに、お金がまわらない社会のリスクにも目を向けて、ローン管理する事が肝要です。※ サブプライムローン…米国で低所得者に高めの金利と住宅を担保にして提供される住宅ローンです。ローンを借りた債務者は、万一破綻すれば住宅を放棄すれば債務は残りません。好景気で不動産価格が上昇していれば、ローン残高を上回った価格で取引され、投資家の損失はありませんが、景気が低迷するとリスクは大きくなります。米国のサブプライム問題は経済破綻の要因として取り上げられていますが、お金がまわらなくなった要因は、「適正」でない金利や仕組みであり、「適正」であることは経済の安定に非常に重要なのです。プライム(=優れた)にサブがつくと信用度が低いとなります。信用度が低いために証券化して投資家にリスクを転化させているのですが、証券化された証券を繰り込んだファンドをさらに組込んだ商品を開発し、そのまた商品を組込んだ…と細分化されていき、リスクの高い証券が拡散していきました。○出来高払いの住宅ローン ~工事中の建物は誰のもの?~町の工務店に工事を依頼するときに心配なのが、規模が小さいが故の工務店の倒産です。よほど信頼できる会社でないかぎり、手抜き工事の不安もあります。本来は長年その地域信頼を勝ち得てきた工務店は、建てた後も住まいの主治医として何かと面倒を見てもらえる存在です。しかし昨今、大会社も社会の変化に対応できずに倒産するケースは少なくありません。工事途中に倒産した場合、工事中の建物は誰のものでしょうか。着工金や中間金の支払いを済ませているので、当然施主は自分のものだと思いがちです。しかし、工事中の建物は等しく債権者の物です。もちろん施主も債権者ですので、工事中の建物の権利の一部は有しています。以前は他の債権者が工事中の建物から金目のモノを持ち去ってしますことが少なくありませんでした。それを防ぐには24時間見張っている必要がありますが、ほぼ不可能でしょう。「出来高払いの住宅ローン」は、建築工事着工前に住宅ローンが実行され(一般のローンは完成後の登記後に実行される)、つなぎローンが必要ありません。工事中は工事の進捗に応じて融資が実行されますので、基本的に建物のできたところまでは自分のものとして引渡しを受けたと同様に認識でき、工事会社が倒産しても建物の完成した部分を自分のものとして主張しやすくなります。住宅完成保証(※)とセットになっていれば、より安心です。※ 住宅完成保証制度…日本の法律では、新築住宅の請負人または売主は引渡しから10年間、瑕疵担保責任を負い(「新築住宅の請負契約または売買契約における瑕疵担保責任の特例」)、かつ円滑に履行されるための法律(「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保に関する法律」)により保険の加入等が義務付けられていますが、引渡し前の工事中の建物を守る法律はありません。個人として対処するには住宅完成保証制度に加入する方法があります。※ 建築中の災害(地震や津波)で建物が損失した場合の責任は?…地震国の日本では普通に起こりうるリスクで、実際に阪神淡路大震災や東日本大震災でも、こうした事態が発生していると思います。通常、建築会社は工事中の建物に火災保険を掛けます。しかし、地震が原因の火災には対応していないケースがほとんどです。地震保険もあるようですが、現実的には保険会社が引き受けるとは限りません。請負契約は本来完成品を引き渡すことを目的としています。従って引き渡し前の損失は工事店が責任を負うのが本来ですが、一般的に使われている旧四会連合協定の工事請負約款には、自然災害の地震や津波などの不可抗力による重大な損失は施主がその責任を負うと記されています。○預金連動型住宅ローンとは ~金利が0%? 預金連動型住宅ローン~預金連動型住宅ローンは、普通預金額に相当する分の利子が軽減されるタイプの住宅ローンです。住宅ローンの借り入れ金額と同等の普通預金があれば、金利はほぼ0%に近づける事が可能です。長期の固定金利商品がなく、当初の金利も高めですが、「住宅ローンとの賢い付き合い方(2)」で頭金の額について述べたように、万一の場合に使える現金を残しておく必要がある場合は便利です。変動金利のリスクもあるので、預貯金は温存したいけど短期で繰上げ返済可能な共働き夫婦などは検討しても良いでしょう。東京スター銀行が開発した商品で、扱っている銀行は少ないので、事前に確認ください。○上限金利付変動金利型ローン ~固定金利期間選択型のローンとどう違う?~キャップ付き住宅ローンとも言われ、扱っている金融機関は多くはありませんが、労働金庫で商品化されています。キャップ期間といわれる特約期間(5年、10年)は、上限金利を上回りません。上限金利内で変動するだけです。特約期間が過ぎれば、金融機関によって異なりますが、変動金利や固定金利、上限金利付変動金利などを選択できるのが一般的です。<著者プロフィール>佐藤 章子一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。
2015年02月23日連載『住まいと安全とお金』では、一級建築士とファイナンシャルプランナーの資格を持つ佐藤章子氏が、これまでの豊富な経験を生かして、住宅とお金や、住宅と災害対策などをテーマに、さまざまな解説・アドバイスを行なっていきます。住まいを新規に取得する時の住宅ローン減税等については様々な情報が提供されていて、各種優遇措置や減税などについても広く周知されています。ところが意外に知られていないのがリフォームローンに対する優遇措置や減税制度です。政府は環境保全の観点から住まいをできるだけ長持ちさせるための耐震性能と長く住み続けられるためのバリアフリー仕様にリフォームする場合などには優遇措置を強化しています。住まいは安全であることはもちろんですが、長く暮らし続けられることが、生涯収支を向上させます。またメンテナンスは早い段階で対応する方が少ない費用で済みます。必要に応じてリフォームローンを賢く利用する方法を考えてみましょう。○リフォームローンにもある減税制度 - 耐震・バリアフリー・省エネがポイント冒頭にも述べた通り、政府は安全な住まいを長く使ってもらうことをめざしています。従って、リフォームの優遇措置は、「耐震」、「省エネ」、「バリアフリー」が主軸となります。一般に認知されている住宅ローン減税は増改築(リフォーム含む)工事も対象となりますが、リフォーム専用の「ローン型減税」と「住宅ローン減税」の違いに注目ください。どちらを利用すれば有利かは個々に異なります。また、耐震リフォームの投資型減税に限り、住宅ローン、バリアフリーリフォーム・省エネリフォームのローン型減税も併用できます。リフォームに対する減税制度の概要該当するケースや組み合わせ等が煩雑なために、下記URLの組み合わせ表を参照ください。公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センター○投資型減税とは - ローンを使わなくても利用できる! 所得税額の控除「投資型減税」は耳慣れない言葉かも知れません。住宅ローンを借りないで住まいを取得したり、リフォームしたりする時は、通常住宅ローン控除は使えません。自己資金でまかなうと言っても資金に余裕があるケースばかりとは限りません。高齢者の場合はローンを組みにくいですし、老後の生活ために貯蓄した資金を取り崩す不安もあると思います。政府はこうした状況下で、積極的に住まいの質を改善し、健康的に長く住み続けてもらうと共に、高齢者の貯蓄をリフォーム工事に拠出することにより、経済の活性化を図るために、ローンを組まずに住まいを取得したリフォームしたりした場合の減税措置を設けています。投資型減税の主な要件(平成26年4月25日作成 佐藤章子)○高齢者向け返済特例制度 - 年金生活者でも大丈夫! 利子分だけ返済の優遇制度住み慣れた我が家で高齢期を迎え、同時に住まいも老朽化しつつあるケースが多いと思います。現役時代にリフォームを済ませておくのがベストですが、まだ子供が独立していなかったり、バリアフリーの必要性をまだ感じていなかったりで、気がついたら日々の生活が不便という状態ということも少なくないでしょう。ようやくリフォームしようと思っても、ローンを借りる年齢ではないし、貯蓄を拠出するのも今後のことを考えれば不安という状態になっていることが少なくありません。こんな時に便利なのが住宅金融支援機構の高齢者向け返済特例制度です。返済は利子分だけで済み、元金返済は借入者全員が死亡した時ですので、リフォームの資金があったとしても、手持ち資金を温存できるメリットもあります。相続人が現金又は住まいを売却して返済します。高齢者向け返済特例制度<著者プロフィール>佐藤 章子一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。
2015年02月13日連載『住まいと安全とお金』では、一級建築士とファイナンシャルプランナーの資格を持つ佐藤章子氏が、これまでの豊富な経験を生かして、住宅とお金や、住宅と災害対策などをテーマに、さまざまな解説・アドバイスを行なっていきます。ローンの借り方は家族のライフスタイルに見合った方法を選ぶことが大切ですが、ローンは借り方だけでなく、借り入れたことによる将来起きるかも知れない様々なリスクを回避又は少なくするために、借りた後の管理も重要です。特に変動金利で借入れた場合は借り入れ後の管理は必須です。○ローンの組み方 ~生涯収支表が適正なローンの組み方を教えてくれる~生涯収支表とは、現在から目的の年まで(定年まで、ローン完済年齢まで、平均余命まで等)の収入と支出と貯蓄高の推移を示したものです。住まいを取得すると、当然ながら頭金拠出による一時支出が突出します。その分貯蓄残高が大幅に少なくなり、家計経済が脆弱になります。そのことが将来の子供の教育や老後の生活、万一の場合の治療費や生活などに、どのように影響するかも生涯収支表で見極めることができます。貯蓄がマイナスになった段階で、家計の破綻、企業であれば倒産となります。そうならないように、ローンを借り入れる際には、生涯収支表の作成が不可欠です。家族のライフスタイル別の標準的生涯収支を想定した返済パターンを下記の表にまとめてみました。返済期間の設定…返済期間が長いと月々の返済額は少なくなりますが、総返済額は多くなります。しかし、途中で自由に返済期間を変えられる場合は別ですが、当初の設定は長く設定して月々の返済額を抑えて、一時的に収入等が低下した場合のリスクに備えるのも手です。返済期間を短くすると、何らかの事情で家計が苦しくなった時に、ローン破綻するリスクが高まります。総返済額は高くなりますが、やや長めの返済期間に設定し、月々の返済に余裕が生じた差額分はまとめて繰り上げ返済すれば、期間を短くしたり、月々の返済額をさらに下げたりすることができます。頭金の額…一般的には頭金は20%が適性と言われています。実際に住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)が、返済が苦しくなり、返済方法等の相談に応じたケースは、20%の頭金が実質確保されていなかったケースが多かったそうです。以前は、融資額は購入費(又は建築費)の80%が限度であることが多かったのですが、現在はそのガイドラインは緩やかになっています。頭金の額だけでなく、貯蓄をいくら残すかも重要なポイントです。万一の時の病気や怪我での入院費が全くないと言うのは問題です。しかしこれもその家族の状況によって違ってきます。私は住まいを購入する時は、100万くらい残しましたが、入居までの内装や家具でほぼ使い切ったように思います。ただし、まだ若く病気のリスクも少なく、資格があったので仕事先の心配もそれほど必要がありませんでした。万一ローンが支払えなくなっても、月々の返済額の倍以上の金額で100%貸すことができる駅前物件であること、親も現役で仕事をしていで最後の砦とすることができる…など一通り考えて、貯金をすべて拠出することに踏み切りました。借り入れ後は大急ぎで節約して貯蓄に励んだのは言うまでもありません。○借入れ後のローン管理 ~ローン管理ができないなら固定金利の選択を~繰上げ返済の是非…頭金の拠出と預貯金の残高だけでなく、繰上げ返済を優先するか貯蓄残高の増加を優先するかは、大切なポイントです。繰上げ返済すれば、将来の金利の上昇リスクを少なくできますし、総返済額を押さえられます。しかし繰上げ返済はローン負担減という一点だけのリスクにしか対応できません。反面、貯蓄はなんにでも対応可能だという点で大きく違いがあります。期間短縮か毎月の返済額削減か…繰上げ返済には借り入れ期間を短縮する場合と返済期間は変更せずに毎月の返済額を少なくする場合があります。当然返済期間短縮の方が総返済額は少なくなります。しかし万一返済が厳しくなった場合を考えると、月々の返済額を減らしておいたほうが対応しやすくなります。月々の返済が減った差額分は別途貯蓄して、再び繰上げ返済の原資などに活用するようにすれば、リスクはさらに少なくすることができます。変動金利の場合のローン管理…変動金利で借り入れる場合の返済計画は、最低限その時期の固定金利の利率以上で返済するものと想定して計画してください。現在の低金利の変動金利でしか返済できない計画は、破綻の危険があります。固定金利での返済額との差額は定期的に繰上げ返済の原資等にプールしておきます。下記の表は、3,500万円を30年返済、変動金利で借り入れた場合のローン管理の一例です。金利は上昇していきますが、5年ごとに固定金利との返済金額の差額を繰上げ返済して、10年後に固定金利に変更しています。その時の固定金利が当初の固定金利の利率を超えても、総返済額は30万程度しか違いません。変動金利で借入れた場合はエクセル等で下記のような表を作って管理してみてください。繰上げ返済の程度によっては、金利が上昇するリスクをさらに減らすことも可能でしょう。反対に何もしなければ、負担増は大幅なものになるでしょう。簡易計算ですので誤差は生じますが、誰でも簡単にエクセルで管理できるのがメリットです。シートを替えて、いろいろな繰上げ返済方法などをシュミレーションしてみれば、ベストの返済方法が見えてくると思います。世界的に考えると、安定した経済の成長のためには、住宅ローンの適正金利は6%程度だそうです。わが国でも住宅金融公庫の金利は長く5.5%で、民間銀行の住宅ローンは7~8%でした。現在の低金利状態が正常な状態だとは考えずに、自分にあった返済方法で余裕を持って計画し、借り入れた後の管理をしっかり行えば、リスクを少なくできます。<著者プロフィール>佐藤 章子一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。
2015年01月26日連載『住まいと安全とお金』では、一級建築士とファイナンシャルプランナーの資格を持つ佐藤章子氏が、これまでの豊富な経験を生かして、住宅とお金や、住宅と災害対策などをテーマに、さまざまな解説・アドバイスを行なっていきます。住まいづくりの相談の中で、必ず聞かれるのが「変動金利と固定金利、どちらを選ぶべき?」という質問です。「迷うなら、固定金利を」を原則にアドバイスしていますが、どちらが良いかは、その家族のライフスタイルによります。住まいを取得するほとんどの人がお世話になる住宅ローンですが、借金には違いありません。住宅ローンの正確な仕組みを理解して、借金のリスクをできるだけ少なく、上手に返済できる方法を考えてみましょう。○変動金利と固定金利 ~知らないと怖い未収利息の仕組み~変動金利…現在の低金利状態の恩恵を受けられますが、金利上昇のリスクはあります。金利は半年に一度見直されますが、多くは「金利が上昇しても返済額が5年間変わらない」などと約款で定められています。変動金利ですので、金利が上昇すれば毎月の返済額が上昇するはずですが、5年間の差額分はどうなるのでしょうか。銀行が負担してくれると思ったら大間違いです。本来の返済額との差額は元金に再度組み入れられ(又は未収利息として、以前は返済終了後に一括徴収される場合もありました)、借入金が増えることになります。金利が大幅に上昇すると借入金が減るどころか増え続けるといった事態になりかねません。特に元利均等返済の場合は、最初の間は、元本はほとんど減りませんので、金利上昇には常に注意が必要です。固定金利…返済額が一定なので将来の生活設計を立てやすいですが、低金利が長く続くと利率は割高感があります。選択型…一定期間固定金利で、その後変動金利に移行するものや、一定ルールで選択できるものなど、銀行によって様々なタイプがあります。しかし金利が上昇しかけた時に、あわてて固定金利に切り替えようとしても、実際の決裁がおりて切り替わるのに相当な日数がかかります。金利の上昇は下降時に比べて変化が急激なことが一般的で、手続きの間に金利はどんどん上昇してしまう可能性があるので注意が必要です。○元利均等返済と元金均等返済 ~検討してみたい元金均等返済のメリット~元利均等返済…一般的な返済方法は元利均等返済で、金利に変動がない限り、月々の返済額は返済期間を通じて一定です。しかし左図の通り、当初は毎月の支払額の大半は利子分が占めて、なかなか元金は減少しません。元金均等返済…右図のように元金を均等に返済しますので、当初の返済額は多くなりますが、次第に月々の返済額は減少していきます。元金が早く減る分、総返済額も元利均等返済よりは抑えられます。扱っている銀行は限られますが、将来の返済を抑えたい場合は、有利な返済方法です。○証券化ローン(フラット35等)の仕組みとは ~融資の前提となる建物の性能基準や現場検査は最低限の安心~証券化ローンの代表的なものは住宅金融支援機構が行っている「フラット35」です。住宅金融支援機構は長く住宅金融公庫として長期固定金利を融資して来ました。当時は住宅金融公庫の融資と厚生年金や国民年金からの公的融資で住宅ローンはほとんどまかなえた状況でした。民間の金融機関の業務範囲を圧迫していることから、民間金融機関でも長期の固定金利の販売を可能にした仕組みです。銀行が長期固定金利の商品を販売したくても、経済全体の金利が上昇したときのリスクは銀行が負わなくてはなりません。証券化ローンとは金融機関が顧客に住宅ローンを販売し、その債権を住宅金融支援機構が買取り、証券化して投資家に販売します。金利上昇のリスクは投資家が負うことにより、民間金融機関でも長期固定金利の住宅ローンを商品化することができるようになりました。以前の住宅金融公庫時代の融資技術基準等も引き継いでいて、特徴は下記の通りです。○ローン比較のポイント ~見かけの利率だけでは判断でしてはいけない! 金利組込み諸費用の有無~利率のほかに下記の諸費用の有無と実際の金額、利率に組み込まれているのか別立てで徴収されるのかのチェックが必要です。一見、利率が高くても、いろいろな費用が含まれている場合もあります。融資手数料…一律か融資金額に対するパーセントか団体信用生命保険料…金利組み込みか別立てか保証料…有無と金額繰上げ返済手数料…一回の金額・その他条件返済方法…変動金利と固定金利・及びその組み合わせとそれに伴う手数料や条件 元利均等支払いと元金均等支払い各種優遇措置等(※写真画像は本文とは関係ありません)<著者プロフィール>佐藤 章子一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。
2015年01月22日佐藤健主演の映画『るろうに剣心』の舞台あいさつが13日に名古屋で行なわれ、佐藤と大友啓史監督が登壇した。その他の写真『るろうに剣心』は、1994年から『週刊少年ジャンプ』に連載され、コミックの累計発行部数は5000万部を突破、テレビアニメ化もされた人気作。かつては“人斬り抜刀斎”として恐れられるも、維新後に殺さずの誓いを立てた伝説の剣客・緋村剣心(佐藤)が、様々な人との出会いを通じて、自らの生きる道を見出していく姿を描く。子どもの頃、リアルタイムでテレビアニメの放送を見ていたという佐藤は「ハードルは高かったです。僕自身がこのアニメを好きだったし、誰もが知っているマンガっていうのがわかっていたので、剣心を演じるっていうのがどれだけ高いハードルかっていうのは、最初から意識していました。でも、このハードルを超えられないならやらない方が良いと思った」と役への想いを告白。大友監督は「彼は自分から高いハードルを設定していた。そこに時間や場所を用意してあげれば、どんどん吸収していっていた」と称賛した。本作には本格的なアクションシーンが多く登場するが、大友監督は「今回は、時代劇の“殺陣”ではなく、“ソード(刀)アクション”と呼んでいます。“斬り合い”というのは人間とのぶつかり合いなので、そこにはドラマがある。今回はアクション俳優ではなく、健くんはじめ、素晴らしい役者たちが練習して演じた、CGに頼らない、汗を感じる生身のアクションになっています」と語った。また司会者から、この日を心待ちにしていたファンが開場の11時間前から列を作っていたことを聞くと佐藤は「マジっすか!? 暑いなか…。お水飲んでくださいね(笑)」と声をかけ、「この映画を楽しみにしていただいていたと思いますが、みなさんに見ていただけるのが本当にうれしいです」と笑顔を見せた。『るろうに剣心』8月25日(土)全国ロードショー※8月22日(水)、23日(木)、24日(金) 先行上映
2012年08月14日