島津製作所は3月7日、有機合成物や天然物などの複雑な試料中の目的化合物を短時間で自動回収できる「超高速分取精製LCシステムProminence UFPLC」を発表した。同製品は、分取から回収までの操作をすべて自動化し、従来法で8時間以上かかるところを約90分に短縮することを可能としたもの。目的化合物を分取、濃縮、精製、回収する条件は、各工程に即した専用ソフトウェアで簡単に設定でき、作業者の負担を低減することが可能なほか、繰り返しサンプルを注入して回収量を増やす場合、初回の分取で設定したパラメータをそのまま用いてスムーズに次の分取を開始できるため、分取精製のスループットを向上させることが可能だ。また、同社の精製技術トラッピングカラム「Shim-pack C2P-H」により、カラム内で目的化合物を強力に保持することができるため、移動相由来成分の除去を容易に行うことができ、試料を高純度に精製することができるほか、移動相由来成分の除去後にアンモニア水などをカラムへ送液することで、目的化合物をフリーベース(遊離塩基)として回収でき、これにより粉末化が容易になる上、医薬品候補の薬効スクリーニングや薬物動態試験など、新薬の探索研究のクオリティを改善することができるという。さらに精製された目的化合物は、揮発性の高い有機溶媒で回収されるため、蒸発乾固にかかる時間も従来比約1/10以下に短縮しているとする。加えて、分取から回収までの分取精製工程を1台で行えるため、従来製品比で約1/3に設置スペースを低減することが可能なほか、分取精製用途に合わせて、目的化合物を高純度な有機溶媒で回収できる標準システムから複数成分を高純度な粉末として回収できるアドバンスドシステムまで構築でき、従来品に比べ導入コストの低減を図ることもできるという。なお、価格は1200万円(税別、PCおよびソフトウェアを含む)からとなっており、同社では、同製品を販売することで、分取LCシステムを組み合わせた一連の分取、精製、粉末化工程のすべてにソリューションを提供し、顧客の分取精製業務の効率改善に貢献していきたいとしている。
2016年03月07日島津製作所は3月7日、超高速液体クロマトグラフ(UHPLC)分析を可能としながら、既存の液体クロマトグラフ(LC)システムとも互換性を有する一体型LC「Nexera-i MT」を発表した。同製品は、内部容量の異なる2つの分析流路を内蔵することで、1台でHPLCとUHPLCの両方での分析を実現。これにより、従来、ラボ内に設置されていた複数のHPLCやUHPLCで実施していた分析を、分析条件の変更なしに1台に集約することが可能となる。また、新開発の「ACTO(Analytical Condition Transfer and Optimization)機能」により、既存の分析法の濃度グラジェントプログラムを編集することなく、装置間のシステム容量差に合わせて試料の注入開始タイミングを補正することが可能なほか、ラボで使用しているHPLC 分析法をLabSolutions画面に読み込むだけでUHPLC分析法に自動変換することも可能だ。さらに、本体のタッチパネルディスプレイで現在使用している流路(HPLCまたはUHPLC)を含む装置情報や分析の進行状況などをリアルタイムに把握することが可能なほか、従来機種であるi-Seriesのさまざまな特長を受け継いでいるため、高い信頼性と分析業務の効率化を図ることが可能だという。なお価格は770万円(税別、PCや制御用ソフトウェア含まず)からで、同社では今後も、特定の分析ニーズに対応した専用アナライザの開発などを進めていく計画としている。
2016年03月07日島津製作所は3月7日、誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)「ICPMS-2030」を発売したと発表した。同製品では、新開発のコリジョンセルと内部機構の最適化によってスペクトル干渉を抑えるとともに、原子イオンの透過効率を向上。日米EU医薬品規制調和国際会議(ICH)「医薬品の元素不純物ガイドライン(Q3D)」の要求を満たすpptレベルの高感度を実現している。また従来、ICP-MSの分析では同重体イオンや酸化物イオンなどを把握して測定対象元素の最適質量数を選択し、さらに検量線試料濃度を決定するなどのプロセスに多くの時間とスキルが必要だったが、「開発アシスタント」機能により、分析対象元素を選択するだけで適切な分析条件を自動設定できるようになった。同じ条件でルーチン分析を行う場合も、「診断アシスタント」機能が自動でスペクトル干渉の有無など分析結果の妥当性を評価する。このほか、FDA 21 CFR Part11対応のLabSolutionsソフトウェアによって信頼性の高い試験結果を管理することが可能。価格は2010万円(税別)。発売から1年間で国内外90台の販売を計画している。
2016年03月07日『子どもはイギリスで育てたい! 7つの理由――住んでわかった。子育てと教育から見える日本へのヒント』(浅見実花著、祥伝社)の著者は、タイトルからもわかるとおりイギリス在住。大手広告代理店のマーケティング部門を退職したのち、2010年に移民として、イギリスで起業する夫を含む家族4人で移住したのだそうです。ところが暮らしてみると、日本で慣れ親しんできたものとは違うやり方や考え方に何度も出会うことになったのだとか。そしてそのたびに、「ああ、そういうものか」と思いなおし、適応するように努めてきたのだといいます。イギリスで教わった重要なことは、「あらゆることに期待しない」という人生の教訓。悲観的な意味ではなく、物事を大きすぎもせず、小すぐもせず、ありのままに捉えることなのだそうです。そのうえで実践的に行動すれば、人生が少しだけリラックスしたものになるという考え方。本書でもそこを軸として、子育てや教育の観点から、イギリス社会を個人的に深索しているというわけです。そしてそれは、子育てや教育の観点から、日本社会を深索する作業にもなるはずだといいます。きょうはなにかと気になる「お金」のトピックスのなかから、保育費の問題を引き出してみたいと思います。■保育費が高額なのに復職する母親たちイギリスにおいて、子どもを保育所に預けることは、日本でいわれるほど罪悪感に結びつかないものなのだそうです。むしろそれ以上の問題は、保育所にかかる費用がとんでもなく高額であること。なにしろロンドンで3歳未満の子どもを週5日のフルタイムで保育所に預けた場合、毎月800~1,300ポンド(約15万~24万円)もかかるというのですから驚き。そんなことになるのには理由があって、つまりは3歳未満の公的保育サービスがないから。そのため保育にかかる費用はほぼすべて、各家庭が負担することになるというのです。家庭の経済状況に応じた育児手当や、全員に与えられるわずかな無料保育日など、多少の公的支援があるとはいえ、あまりにも高額な保育費には太刀打ちできないというわけです。いっぽう、保育所への公的資金援助がある日本では、各家庭が保育所に支払う費用はずっと安いものになります。たとえば東京であれば、認証保育所にフルタイムで預ける場合、3歳未満の子どもは上限が8万円。それ以上の子どもは7万7,000円で、認証保育所はさらに低額。もしロンドンの保育所が東京の価格水準で利用できるとしたら、おそらくイギリスの親たちは、国庫に多大な負担をかけるほど保育所を使い倒すだろうと著者は推測しています。■イギリスの保育費は住宅ローン以上!いずれにせよ、いくらフルタイムで働いたとしても、毎月20万円前後の保育費を払うことは決して容易ではないはずです。事実、母親が朝から夕方まで毎日必死で働いたとしても、手取りがほぼ保育費に消えてしまう家庭は決して少なくないというのです。月々に返済する住宅ローンよりも保育費のほうが高くつくという、私たちの感覚では信じられないような話も有名な話。もちろん費用やライフスタイルのバランスをとって、どちらの親がフルタイムからパートタイムに切り替える場合もあるでしょう。しかし不思議なのは、保育費が高くついたとしても、多くの母親たちがなんらかのかたちで復職しているという事実。イギリスで労働可能な年齢の女性のうち、専業主婦は10人に1人にすぎないというのです。■なぜイギリスの母親たちは復職する?でも、母親たちはそんな状況下で、なぜ復職することを選ぶのでしょうか? それは、長い目で見たとき、収入面でプラスになるからというだけではないと著者はいいます。家庭に入るより働くほうが、充実感や満足感を得られるから。働くことによって、自分が健全でいられるから。自分の仕事が好きだから。子どもが成長したあとも、自分のキャリアを続けられるから。働くことで、子どもに手本を示したいから。などなど、復職する母親に関するさまざまな記事に目を通してみると、彼女たちの動機は実にさまざま。つまり母親たちは、復職すること・復職をやめることの、よい点と悪い点とを自分なりに秤にかけ、シビアに判断しているということです。*この話に限らず、イギリスと日本では感覚的に違いすぎることばかり。しかし、だからこそそこを直視すれば、私たちが日本で進むべき方向も見えてくるのではないでしょうか?(文/書評家・印南敦史) 【参考】※浅見実花(2015)『子どもはイギリスで育てたい! 7つの理由――住んでわかった。子育てと教育から見える日本へのヒント』祥伝社
2016年03月02日こんにちは、金融コンシェルジュの齋藤惠です。以前のコラムで“児童手当”について書かせていただきましたが、それとは別に“児童扶養手当” という大変紛らわしい名前の制度が存在することを、皆さんはご存じでしょうか?“児童手当”は申請すればほとんどの方がもらえる助成なのに対し、“児童扶養手当”はシンママ&シンパパのためにつくられたお助け制度なのです。●ひとり親家庭のための制度児童扶養手当は、離婚・未婚の出産・両親のどちらかが早世または重度障害(身体障害者手帳1・2級)がある・両親のどちらかが行方不明で1年以上仕送りや連絡がないなどの理由で、ひとり親家庭になってしまった18歳以下の子どもの親、または祖父母などの養育者 が受け取るものです。●どうすればもらえるの?まず、所得制限などの条件を自治体に確認しましょう。児童扶養手当は申請する人の所得額によってこまかく支給額が決められています。もらえるとわかったら、・戸籍謄本・印鑑・預金通帳・健康保険証・住民税課税証明書などの必要なものを用意して役所へ申請してください。一つ注意していただきたいのは、この手当の年度は8月から翌7月までと設定されていること !例えば、今が平成28年7月であれば、児童扶養手当の手続き上は“平成27年度”ということになります。前年の12月31日時点の所得と扶養家族数で支給対象になるかが判断され、支給対象であれば申請の翌月から受け取ることができます。●一部の自治体には“児童育成手当”という制度も!すべての自治体が行っているわけではありませんが、例えば練馬区のホームページには「児童育成手当には育成手当と障害手当があります。原則として申請した月の翌月分から支給します」と記載があり、その下に詳しい制度の内容や条件が提示されています。“児童育成手当” は“児童扶養手当”と大変内容が似ている制度なのですが、手当の額やその他のサポートが自治体によって異なります。またこれ以外にも、子育てや就業に関してなど、自治体によってさまざまなひとり親家庭へのサポートを用意している場合がありますので、児童扶養手当の利用を検討している方は他にどんなサポートが受けられるのか、自治体に相談してみてください!【参考リンク】・児童育成手当 | 練馬区HP()●ライター/齋藤惠(金融コンシェルジュ)
2016年03月01日神戸製鋼所は3月1日、同社機械事業部門の生産拠点である高砂製作所内に「水素ステーション総合テストセンター」を新設すると発表した。同テストセンターは、水素ステーションの実運用に近い形でさまざまな運転パターンや充填シミュレーションの検証を行い、市場ニーズに合った製品開発を進めることを目的としたもので、燃料電池自動車への充填、圧縮機、冷凍機、高圧容器などにおける各設置機器の運転データの収集、水素圧縮機の各種試験などが実施される。敷地面積は約700m2で、投資額は約5億円。完成予定は今月中旬を予定している。同社によると、将来的にはシステム全体の検証を実施するために、水素製造設備の設置も検討する方向だとしている。
2016年03月01日共働き家庭にとって、認可保育所に子どもを入れられるかどうかは、仕事の上でも家計を維持するためにも重要な問題だ。2月には多くの自治体で第1次結果の通知が始まり、親たちは内定結果にほっとしたり、内定が出ず苦しんだりしている。このうち2015年、東京都の中で2番目に待機児童数が多かった板橋区では、どのような状況になっているのだろうか。担当者に問い合わせた。○約4割の希望者、認可保育所の入所決まらず2015年、東京23区の中で2番目に多い378名の待機児童を出した板橋区。この問題を解決しようと、平成28年4月入所の時点で562名の定員(認可保育所)を確保した。内訳は、認可保育園4カ所の新設(346名)、小規模保育所6カ所の新設(114名)、事業所内保育所2カ所の新設(53名)。それに既存の保育所を改修するなどして増やした49名分をあわせた数となる。その結果、どれだけの人が認可保育所の内定を得ることができたのか。1次募集における入所希望者数は4,039名。一方で、内定を得たのは2,405名となった。現時点で応募者数の約4割にあたる1,604名について、入所を果たせていない状況だ。○さらに608名の増員を検討それでは平成28年度以降、同区はどのような政策を打っていく予定なのだろうか。予算案によれば、さらに608名の定員増を図りたいという。区の計画では、保育所の新設や既存施設の改修などを行い、6月に171名、7月に35名、9月に19名、平成29年4月には383名の定員を確保する見込みだ。保育需要の高まりに対応し切れているとは言えない同区の状況。2次募集における調整の結果、最終的な「不承諾通知」を受け取る親はどれだけの数にのぼるのだろうか。今後の行方が注目される。※写真はイメージで本文とは関係ありません
2016年02月29日NPO法人全国小規模保育協議会はこのほど、「小規模認可保育の経営課題調査」の結果を発表。調査は2015年10月~11月の期間にインターネット上もしくは郵送により行われ、小規模認可保育所を運営する102の事業者、148園から回答を得た。はじめに「小規模認可保育所を運営する上での主な課題」を聞いたところ、最も多かったのは「早朝・夜間の人員配置が難しい」だった。次いで「十分な人数の保育士・保育者を採用するのが難しい」「3歳以降の受け皿としての連携施設がみつからない」が続いた。同協議会は保育士不足の要因として「給与の低さ」を指摘している。厚生労働省の調査によれば2013年時点の保育士の平均月収は20.7万円で、全産業平均の29.5万円を大きく下回っているという。また小規模保育所が自治体による認可施設になったことにより、開所時間が規定され、土曜日の開園が義務づけられたことも要因の1つということだ。小規模認可保育所は、受け入れる子どもの年齢が0~2歳児となっているため、卒園後(3歳以降)の受け皿となる連携施設を確保しなければならない。そこで、「連携施設の設定状況」についても調査した。結果は53%が連携施設として「認可保育所を設定している」と回答。一方で32%が「まだ連携施設を設定できていない」と答えた。同協議会は、「小規模認可保育所に子どもを預けようとする保護者にとって、3歳以降の預け先がはっきりと決まっていないことは最大の懸念事項」と指摘。「連携施設問題は、小規模保育が普及していく上で大きな障壁となりかねない」と警鐘を鳴らした。調査結果を受けて「小規模保育の特性に合わせた職員配置基準」「自治体の理解促進・認識向上」などを行政に提案していきたいとした同協議会。「より良い小規模保育の普及、ひいては待機児童問題の解消に努めてまいります」とコメントしている。
2016年02月24日2月に入り、認可保育所の4月入所可否の通知が届き始めている。保育所の定員を増やすなどの取り組みを続けてきた各自治体では、どのような結果が出ているのだろうか。今回、東京都の中でも、待機児童数(2015年)が多かった区の状況を調査。入所希望者数や入所内定者数を公表した区のうち、目黒区の現状をお伝えする。○約半数の入所希望者、認可保育所の入所決まらず2015年、東京23区の中で5番目に多い294名の待機児童を出した目黒区。待機児童の解消に向けて、第1次募集の時点までに認可保育所を3カ所、小規模保育所を2カ所増やし、2016年4月入所に向けて168名の定員を新たに確保していた。しかし保育需要の高まりは、定員確保の努力に到底及ばなかったようだ。4月入所の希望者数は1,954名だった去年から、95名増の2,049名。このうち入所の内定が出たのは1,025名、「不承諾通知」を受けたのは1,024名となった。「不承諾通知」を受けた人数は、認証保育所などに入所する人数なども含むため、それらを除外した待機児童数とは開きのある数字となるが、結果としては約半数の入所希望者について、現時点で認可保育所の入所が決まらないという結果になっている。同区では既に、4月入所希望の2次募集を開始している。2次募集の時点で新たに2カ所の小規模保育所を増やし38名分の定員を確保しているが、担当者いわく「内定辞退などの数と合わせても(入所希望者の数には)追いつけない」とのことだ。○用地の確保、近隣住民の理解に課題保育所の整備に関して、同区の課題は大きく2点ある。1つは「近隣住民の理解が進まない」という点だ。騒音などの問題から新設の認可保育所の開園期日が延期されているといった事情があるそうだ。またもう1つは「用地確保の困難さ」があげられる。同区では保育所運営の事業者を募集する際、用地確保の見込みがたっていることを条件としているが、同区内の土地代は他区と比べて高額なため、ネックになっているという。同区では2016年度から、中学校の跡地や総合庁舎の駐車場、それに小学校内の用地を確保し、保育所を整備していく見込み。保育所の開設や、保育士宿舎の借り上げに補助を出す施策も打ち出している。自治体の努力と、親たちが「不承諾通知」におびえなければならない状況は当面続きそうだ。※写真はイメージで本文とは関係ありません
2016年02月18日村田製作所は2月17日、150℃を超える高温環境でも使用できる導電性接着剤対応の積層セラミックコンデンサ「GCBシリーズ」を開発したと発表した。同シリーズは、自動車のエンジンルーム周辺など過酷な温度環境に搭載される機器向けに開発されたもの。最高使用温度が200℃の製品がラインアップされている。外部電極に新たに開発されたNi/Pd電極を採用することで、高温環境下においても導電性接着剤との高い接合信頼性が得られた。また従来品と比較して、端子電極の耐腐食性が向上。同社はすでにサンプル出荷を開始しており、2016年中に量産を開始するとしている。
2016年02月17日日本IBMは2月16日、日本取引所グループと共同で低トランザクション市場を想定したブロックチェーン技術に関する実証実験を3月より支援することで合意したと発表した。両社は、ブロックチェーン技術の特性を長短所の両面から早期に把握し、ブロックチェーン技術の評価と低コストでの運営可能性を検証する。実証実験では、業界標準として広く普及する可能性、各種認証方式やプライバシー要件、複数資産カテゴリー、複雑な業務処理への適用を勘案し、オープンソース・コミュニティ「Linux Foundation」が提唱するハイパーレジャー(Hyperledger)プロジェクトのフレームワークを利用する予定。日本IBMは今回の実証実験で、IBM東京基礎研究所を含むIBMリサーチとの連携や、金融機関を含む60社を超えるグローバルでの顧客との検討実績といったグローバルのネットワークを生かし、支援を推進していく。
2016年02月16日富士ゼロックスは2月15日、同社のドキュメントハンドリング・ソフトウェア「DocuWorks」を活用し、中小規模事業所における各種申請や報告業務を効率化するための「申請・報告ソリューション」を提供すると発表した。同ソリューションでは、申請書・報告書のフォームを一元管理し、従業員による申請・報告から受付部門の受理までを迅速に行えるという。DocuWorksの「お仕事バー」を使った簡単な操作で、必要なフォームの取り出し、申請書・報告書の作成、捺印、文書トレイを通した受付部門へ提出といった一連の業務を電子化する。全従業員が必要な申請・報告業務を電子文書で行うことにより、オフィスのペーパーレス化の促進につなげる。同ソリューションでは、業務改善ノウハウをまとめた業務マニュアル、業務改善ツールとしてのソフトウェア「DocuWorks」、ソフトウェアの設定サービスを組み合わせて提供することで、申請・報告業務のプロセスの見直しが進んでいない顧客やシステム導入に不慣れな顧客でも、手軽かつ迅速に業務改善を進められるよう支援する。同ソリューションの価格は、「DocuWorks 8 日本語版(トレイ 2同梱)5ライセンス」「設定サービス」「業務マニュアル」がセットで30万2800円。
2016年02月15日米国の重力波観測所「LIGO」の観測チーム、カリフォルニア工科大学、マサチューセッツ工科大学は2月8日(現地時間)、2月11日に「重力波の探索に関する新しい情報を発表する」と明らかにした。発表内容は不明だが、アルベルト・アインシュタインが100年前にその存在を予測するも、未だ発見されていない「重力波」の検出に成功したという発表なのではないかという見方が強まっている。発表は日本時間2月12日0時30分(米東部標準時2月11日10時30分)から、米ワシントンD.C.にあるナショナル・プレス・クラブで実施される。発表文には「今年はアルベルト・アインシュタインが重力波の存在を予測してから100周年となります。それを記念し、現在も行われている重力波の観測に向けた挑戦について話します」とのみ記載されており、具体的な発表内容については明らかにされていない。また、LIGOと共同観測を行っている欧州の重力波観測所「VIRGO」も、同所にてLIGOと同時に会見を開くとしている。重力波は別名「時空のさざ波」とも呼ばれ、重力は時空を歪ませており、その重力をもつ物体が動くと、その歪みが光の速度で周囲に伝わっていくとされる現象。今から100年前にアルベルト・アインシュタインが発表した一般相対性理論の中でその存在を予測し、これまで間接的に証明されたことはあるものの、未だ直接には検出されていはいない。もし検出に成功すればノーベル賞級とされるほか、重力波を使ってブラックホールや中性子星、超新星爆発など、さまざまな天体や宇宙現象を観測することで、これまで知られていた宇宙の現象に、また別の姿が見られたり、あるいは想像を超えるまったく新しい現象が見つかったりするかもしれないと期待されている。米国や欧州、日本では1990年代から重力波を検出するためのレーザー干渉計の開発を進め、試験的な観測を実施しているが、現在まで検出はできなかった。その後、性能向上の改良を経て、昨年から再び観測が本格化しつつある。先月には、物理学者のローレンス・クラウス氏がTwitterに「LIGOが重力波の検出に成功したようだ」と書き込んだことで大きな話題となった。その後、別の物理学者も、重力波の検出成功に関して書かれた論文を盗み見たと証言するなどし、その信憑性が増しつつある。なお、LIGO、VIRGOは、このうわさに対して沈黙を続けている。○重力波の検出への挑戦重力波の検出をめぐっては、1965年に米メリーランド大学の科学者ジョセフ・ウェーバーが、巨大なアルミニウムの円柱をぶら下げて設置し、重力波が通過した際に円柱がゆがむのを検出することで重力波の存在を証明しようとしたのがそのさきがけである。1968年から69年にかけて、この2台が同時に「検出に成功」したとされるが、その後、第三者による追試など検証が行われた結果、何かの間違いだったと考えられている。レーザー光を使って空間のゆがみを検出する「レーザー干渉計」という観測機器の実用化の目処が経ち、1992年から米国で「LIGO」(ライゴ)という計画がスタートした。LIGOはワシントン州のハンフォードと、ルイジアナ州のリヴィングストンの2か所にレーザー干渉計を設置して同時観測するというもので、2005年から観測が開始された。しかし検出はできず、2010年にいったん観測を停止して改良工事を実施。そして検出能力を10倍にまで高めた「アドヴァンストLIGO」が完成し、昨年9月から運用が始まっている。またフランスとイタリア、オランダは、イタリアのピサに「VIRGO」(ヴィルゴ)を建設。VIRGOもLIGO同様、検出はできず、2011年に観測を停止し、検出能力を10倍も高くする「アドヴァンストVIRGO」への改良が進んでいる。英国とドイツは、ドイツのハノーファーに「GEO 600」(ジー・イー・オー)を建設し、こちらも検出能力を高めた「GEO-HF」に生まれ変わっている。また日本でも、1991年ごろから宇宙科学研究所(現JAXA/ISAS)や東京大学、国立天文台に実験的なレーザー干渉計が作られ、やがてより大型の「TAMA300」という干渉計による試験を経て、現在はニュートリノの観測でも知られる岐阜県飛騨市の神岡鉱山跡に大型低温重力波望遠鏡「KAGRA」(かぐら)が建設されている。すでに重力波の観測に必要な最低限の工事は終わっており、2015年度中に重力波の試験観測を始め、また施設全体が完成する2017年度からは本格観測を開始する予定となっている。参考・LIGO Scientific Collaboration - Media Advisory for Feb 11, 2016・FEBRUARY 11th: Scientists to provide an update on the search for gravitational waves - Advanced Virgo・真貝寿明. ブラックホール・膨張宇宙・重力波 一般相対性理論の100年と展開. 光文社, 2015, 340p.・特集 重力波天文学が拓く宇宙 - 国立天文台・重力波とは? « KAGRA 大型低温重力波望遠鏡
2016年02月10日政府が整備を進めている「事業所内保育所」。平成27年度からは従業員以外の子どもを受け入れるなどの条件付きで、国から給付金が支給される制度が導入。さらに、次年度の予算案の中にも、企業が保育施設を整備するための補助金が新たに盛り込まれている。しかし、子どもを預ける立場の親にとって、本当にニーズがある施設なのか。託児付きサービスを提供している「ここるく」の代表取締役で、保活事情に詳しい山下真実さんに伺った。○企業が設ける保育施設で約5万人の受け皿を確保事業所内保育所とは、企業が主体となって開設する従業員向け託児所のこと。国は平成27年度から、従業員以外の子どもにも保育を提供する事業所内保育所に対し、市町村の認可事業として財政支援を行っている。さらに、平成28年度の予算案には「企業主導型保育事業」と呼ばれる取り組みにも補助金が投入されている。この制度は、市区町村の関与なく、1つもしくは複数の企業が企業内やその周辺などに保育施設を設置した場合、整備費や改修費、賃借料などを国が支援するというもの。利用日数や時間帯、それに地域枠なども自由に設定できる。政府は「事業所内保育を主軸とした企業主導型の多様な就労形態に対応したい」として、これにより、約5万人分の保育の受け皿を確保したい考えだ。○会社の近くは一見便利そうだけど……ますます整備が推進されている事業所内保育所。果たして子どもを育てる親にとってニーズの高い施設と言えるのか。山下さんによれば、働く女性に対してコンサルティングを行う中で、出産・育児を経験していない女性からは、将来的に「利用したい」という声が多く聞かれるという。一方で、双方を経験した女性では「できれば利用したくない」という意見が大半を占める。それはどうしてか。事業所内保育所は、都心の企業の中、もしくは周辺に開所されていることが多い。出産・育児を経験している女性は、通勤ラッシュの中、子どもを保育所に通わせるのは厳しいという現実が容易に想像できるからだという。「預け先がないよりは、あった方がいいという回答になると思う」とした上で、企業のある都心ではなく、「ベッドタウンのような場所に保育所を設けるというのが賢い手なのではないか」と提言した。○自分の目で見極めをしかし、デメリットばかりではないと山下さんは続ける。メリットとしてあげられるのが、子どもが熱を出したとき、または災害が起きたとき、すぐに駆けつけられることだ。「震災の時には、子どものお迎えが地震の翌日になってしまった人もいた」という。特に勤務先と自宅が離れている人にとっては、働いている場所の近くに子どもがいるのは大きな安心材料となるだろう。山下さんは最後に、「どんな形態の保育所であっても、保育の質を親の目でしっかり見極めることが大切だ」とアドバイスしてくれた。厚生労働省では平成29年度末までに50万人分の保育の受け皿を確保していく方針で、今後も保育所の数は増えていくだろう。事業所内保育所をはじめ、認可保育所や認証保育所など、さまざまな形態の保育所が整備されていく中で、大事なのはその形態ではなく、保育の中身。自分たちの生活や働き方にあった保育施設をぜひとも選んでほしい。
2016年02月04日ウエストエネルギーソリューションはこのほど、ヤフーが運営するインターネットオークション「ヤフオク!」に太陽光発電所設備を出品することを発表した。太陽光発電所設備そのものがインターネットオークションに出品されるのは、国内初。この太陽光発電所設備は、広島県三原市大和町に同社が保有する500kw相当の施設。2014年度「設備認定」取得済で、新設。電力買取価格は1kwhあたり32円(税別)。ヤフオク! 内の参加者限定型オークション「メンバーズオークション」にて、2016年2月12日から19日までの8日間の日程で入札者を募る。開始価格は1.61億円(税別)。オークション開催者(ウエストエネルギーソリューション)に資料請求し、審査(買取人として適格かどうかを確認)された後、詳細な資料が送付される。入札開始日以降に、オークションに参加(入札)できる。同社は今後も同様の「メンバーズオークション」を定期的に開催することで、ヤフーとともに既存の太陽光発電所設備の流通を推進していくという。○設備認定を受けている太陽光発電所の購入ニーズ2012年7月に、政府が推し進める再生可能エネルギー発電政策の一環として、発電した電気を電力会社に一定価格で買い取らせることを国が補償する「固定価格買取制度」が開始されたことに伴い、自宅や遊休地にソーラーパネルなどの太陽光発電所設備を備える個人や事業者が増加している。また4月にはいわゆる「電力自由化」の開始が決まっており、太陽光発電所設備で発電した電気だけを販売する事業業者も登場。「固定価格買取制度」における買取価格の単価は、経済産業省へ申請する「設備認定」を基準としているため、一例として2013年4月以前に「設備認定」を受理された施設で発電された電力は、2012年当初の「1kwhあたり40円(税別)」と、2013年5月以降の施設よりも高い単価での買取価格が20年間固定されるという制度設計になっている。「固定価格買取制度」は、電力会社が買い取る費用を電気を利用する国民が賦課金として負担し成立する制度設計となっているが、政府による国民負担の軽減を目的として、買取価格の平均単価は年々下落している状況とのこと。例えば2015年7月1日~は、1kwhあたり27円(10kwh以上の設備、税別)。そのため、新たに経済産業省に申請した上で太陽光発電所設備を建設するのではなく、すでに「設備認定」を受けている施設の購入ニーズが事業者間で高まっているという。
2016年02月03日島津製作所は1月26日、同社のフーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)用に、熱によって劣化したプラスチックの定性を行うのに特化したデータを収録した「加熱劣化プラスチックライブラリ」を発売すると発表した。価格は15万円(税別)。同製品は静岡県工業技術研究所の浜松工業技術支援センターで測定・取得したスペクトルをライブラリ化したもので、13種のプラスチックについて、未加熱もしくは加熱温度200度~400度まで平均6条件で測定した111データを収録している。従来のライブラリで加熱履歴を持つ物質を定性する場合、加熱された実サンプルのデータとライブラリに登録された未劣化の物質のデータをユーザー自身が見比べて判断する必要があったが、今回のライブラリの導入によって、加熱履歴を持つプラスチックスペクトルと実サンプルのスペクトルをそのまま照合可能となるため、定性作業やスペクトル比較を効率化することができる。また、異物やポリマー、食品添加物などを含む計約12,000点の標準物質のライブラリと、異物解析専用のプログラムが実装されている同社のFTIR制御用ソフトウェア「LabSolutions IR」に「加熱劣化プラスチックライブラリ」を始めとするさまざまなライブラリを用途に応じて追加していくことで、未知試料の定性に優れたシステムを構築することが可能となる。
2016年01月26日村田製作所は1月26日、サイバーエージェント・クラウドファンディングと連携し、ハードウェア製作支援プログラム「IoTアイデアコンテスト」を開催すると発表した。同プログラムは、村田製作所のセンサと無線通信モジュールを活用したハードウェアの開発を目指す企業・個人を対象としたもので、審査通過者に対して試作品製作段階におけるセンサ、無線通信モジュールなどのサンプル提供や技術サポートを行う。また、審査を通過した対象者は、サイバーエージェント・クラウドファンディングが運営する「Makuake」において、クラウドファンディングプロジェクトを実施することが可能。これにより、クラウドファンディングによって集めた資金を、製品の開発・改良にあてることができるほか、試作品開発段階でプロジェクトに支援をしたサポーターの意見を聞くことができる。募集期間は1月26日~2月29日。その後、書類による一次選考、ヒアリングによる二次選考を経て、4月22日に審査通過者が発表される。審査通過者は5月31日までにプロトタイプの開発を完成させ、6月にクラウドファンディングを開始させる予定となっている。なお、最優秀賞1組には賞金100万円、優秀賞2組には賞金50万円が授与される。
2016年01月26日村田製作所は1月25日、超小型0402サイズ(0.4×0.2mm)のフィルムタイプ高周波チップインダクタ「LQP02HQシリーズ」の量産を開始したと発表した。同製品は、同社製0402サイズのインダクタ「LQP02TQシリーズ」よりもさらにQ特性を向上させたもの。水平方向ではなく高さ方向に寸法を拡大することで、同社0603サイズの「LQP03TN_02」シリーズと同等のQ特性を有している。また、同社独自の最新微細加工技術を用いて最適なコイルパターンとL字電極構造を採用。さらに、高精度な積層加工技術を用いることで、世界最小のインダクタンス偏差±0.05nH(0.4~1.5nH)にも対応。ラインアップは0.4nH~22nHまでの57アイテム。同社は今後、インダクタンス値の拡大を進めていくとともに、さらなる小型化、High Q品の開発にも注力していくとしている。
2016年01月25日○若手社員のコミュニケーション力低下に危機感東京都杉並区、西武新宿線井荻駅から歩いて数分の場所にある遊歩道沿いの大きな家。ここが、「楽しみながら人間力のある子を育てる」がモットーの民間学童保育「いおぎみんなの学校」だ。この場所に開校したのは2012年である。代表を務める高橋和の助さんは以前、広告代理店に勤務していた。武士道を通じて道徳やマナーが学べる子ども向けのコンテンツ開発に従事し、武士道に関する本も出版。そんな彼がサラリーマン時代に年々感じていったのが、若手社員のコミュニケーション力低下だった。与えられた業務は完璧にこなすが、同僚や上司との接し方が分からず、目も合わせない。部内の電話が鳴っても出ない。「社会に出る前に、勉強だけではない人とのつながりや総合的な人間力を育む場が必要なのでは? 」と危機感を募らせていたという。そんな折、社のCSRの一環として、東日本大震災の被災地を訪れて遊び場を失った子どもに本やおもちゃを提供するプロジェクトに参加。子ども達の嬉々とした表情を間近で見て、子どもにとっての遊び場の重要性を再確認した。「遊びながら楽しくコミュニケーションスキルや人間力を鍛える場を提供できないか」と目を付けたのが、放課後時間。実は学童保育で過ごす平日の放課後や長期休暇等の時間を合計すると、学校にいる時間よりも長いというデータもある(「全国学童保育連絡協議会学童保育の実施状況調査(2014年)結果」より)。同校では現在、小学1年生から3年生までの児童50名が、学童タイムに提供されるさまざまなプログラムを楽しみながら、社会を生き抜く力をはぐくんでいる。○500を超える多彩なプログラム同学童の特徴は、何といっても500を超えるという充実したプログラム。月15回は外部講師を招き、毎回ワクワクするような体験を通じて、座学だけでは身に付きにくい子どもの考える力やコミュニケーション力を伸ばすのが狙いだ。例えば「デザインとコミュニケーション」のプログラムでは、第一線で働く現役デザイナーが講義を務めた。子ども達は「爽やかな飲み物は青系のパッケージ」などの具体例から色に込められた意味を学び、最後はさまざまなマークや図柄を色で意味づけする課題にチャレンジ。また「統計学入門」では、「大きな鍋で作ったカレーでもスプーン1杯で味見ができる」と、統計の基礎を小学生にも分かるようかみ砕いて説明。その後、学童施設周辺で通行人を年齢別にカウントし、日本の人口ピラミッドと整合性が出るか? というフィールドワークを行った。講師は当初、高橋代表が広告マン時代に得たコネクションなどを通じ集めていたが、講師がまた別の講師を紹介するなど縁が広がり、年々プログラムの種類が充実。翻訳家が担当する英語のコミュニケーション講座や、ランニングコーディネーターによる速く走る講座など、大人でも興味をそそられる内容が多数。料金は月額で、週1回利用の1万3000円から週5回の4万7000円と公立学童と比較すると決して安くはないが、見学会後の保護者からは「とにかく楽しそう!」との声が多く聞かれ、中には「この学童に入れるのであれば引っ越してきます」という人もいるそうだ。後編では実際に子ども達がプログラムを楽しむ様子をレポートする。
2016年01月21日前回に引き続きご紹介するのは、家庭的な預かりで最上級の保育を目指す「環優舎」(東京都・南麻布)。洗濯やお弁当作りなどもする親代わりのきめ細やかさで、仕事が忙しい保護者からの信頼が厚い。○子どもの口に入る食材は妥協しない環優舎代表、吉川まりえさんのもう一つのこだわりは、「食」だ。環優舎ではほぼ全員の子が夕食まで済ませていくが、この夕食は毎日専任の調理師がキッチンで手作りしている。利用料金の多くは食材にかけているというほどこだわっており、子どもの口に入るものは米から調味料に至るまですべて厳選。現在は西日本が産地の食材と産地が明確な輸入食材を取り寄せ、飲用はもちろん調理にもすべてハワイから輸入したミネラルウォーターを使用している。食器も妥協しない。便宜性重視でプラスチックの食器を使ったりはしない。磁器の茶碗、漆塗りの椀、天然木を使った箸はどれも子どもの手に合ったサイズを揃えている。カトラリーも銀製を使い、重さを体感させるなど"本物"を教える。また食事中のマナーが自然に身につくよう、大人も同じテーブルについて一緒に食べる。家庭での風景そのものだ。○子どもにとって居心地のよいコミュニティを環優舎の子ども達は一人っ子が多いというが、長時間一緒にいる中で子ども同士の摩擦はないのだろうか。吉川さんによると、子どもにとって居心地のよいコミュニティであり続けるために、スタッフを忙しくさせ過ぎないよう非常に気を配っているのだという。保育スタッフは吉川さん以外に2名。さらに専任の調理スタッフと英語を教えてくれる外国人の先生がおり、大人の手が十分にあるので子ども一人一人にゆったりと対応できる。このゆとりがよい影響を与えているのか、異年齢の子が複数いるのに部屋の中はとても穏やかで落ち着いた空気に満たされていた。細かいところにも配慮が行き届いている同施設だが、実際の利用者に環優舎を選んだ決め手を聞いてみた。小学2年生の女の子を通わせている保護者は、「夫はコンサルタントとして顧客先に勤務、私も海外とのやり取りが夜になるため早い時間の退社はできません。そんな中、娘にはできるだけ自宅にいるのと同じような環境で放課後を過ごさせたかった。環優舎は読書をしたり、工作をしたり、ごっこ遊びをしたり、子どもが子どもらしく過ごせる時間を大切にしてくれます。また誕生日、ハロウィン、クリスマスといったイベントにも楽しい時間を作ってくれる。おかげで育児が制約事項になることなく責任ある仕事を引き受けられ、親にとっても本当にありがたいことです」。子育ての時間というのは案外短い。子どもか、キャリアか、といった2択ではなく、子育て期に自分たちの働き方に合った保育サービスを見つけて上手に利用することで、子どもの育ちも仕事のキャリアもあきらめないという第3の選択肢が生まれればよいと感じた取材だった。
2016年01月14日島津製作所は1月7日、傾斜透視撮影とCT撮影をワンパッケージ化したマイクロフォーカスX線検査装置「Xslicer SMX-6000」を発売した。同製品は発生点を非常に小さく絞ったX線をワーク(サンプル)に透過させて透視画像を表示するマイクロフォーカスX線検査装置の新製品で、別置きユニットや複雑な手順を必要とせずにワークの断面画像を得られるCT撮影を標準で行うことができる。高速演算処理を実現する独自アルゴリズムにより、CT撮影開始から最短3分で断面画像の表示ができ、傾斜透視撮影からスムーズに切り替えを行うことが可能となっている。また、校正不要で容易な撮影や優れた操作性など、従来製品で好評だった特長も引き継いでおり、効率的な非破壊検査をサポートするとしている。価格はソフトウェア込みで4650万円(税別)。同社は、「Xslicer SMX-6000」について国内およびアジアのエレクトロニクス業界を中心に拡販・浸透を図るとしており、発売から1年間で国内外で20台の販売を計画している。
2016年01月07日○親の代わりにできることはすべて学童で東京メトロ日比谷線の「広尾」駅からほど近く。緑豊かな公園と大使館に囲まれた閑静なエリアに立地するマンションの1室に「環優舎」はある。大きな看板は出ておらず、インターホンにも代表者の名前のみ。ここは「家庭的な預かり」を掲げる定員15名の小さな学童保育だ。まだ今ほど民間学童がなかった10年前から長時間預かりを実施し、専門職や管理職といった保護者たちから支持されている。代表の吉川まりえさんのキャリアが興味深い。もともとは外資系IT企業のワーキングマザー。責任ある仕事をする中で妊娠、出産を経験し、当時は子どもを納得して長時間預けられる施設がなく、シッターにお願いしながら、出張時は子どもを同伴するなど苦労を重ねた。しかし、「この方法も子どもが幼児になってまでは続けられない。行政が動くのを待っていたら子どもはどんどん成長してしまう。同じ悩みを持つ人のためにも自分でやるしかないと思った」と吉川さん。自分だったらどう保育してもらいたいか、預ける側の発想で環優舎を立ち上げた。働く親もわが子は手塩にかけて育てたい。その気持ちに寄り添って最上級の保育を提供しようと考えた結果、規模は大きくせず、一家庭からきちんと利用料(月額20万円)をとる形になったという。現在、環優舎には幼稚園の年中児から小学6年生まで14名が在籍。私立や公立の他、土地柄インターナショナルスクールへ通う子もいる。放課後の過ごし方はみな様々で、リビングでおもちゃ遊びをしている子どももいれば、環優舎に学校の荷物を置いてから、習い事や塾へ行く子どももいる。近くには大きな公園や設備の充実した児童館もあり、遊び場所には困らない。小さな子どもの習い事への送迎はスタッフの他、シッターを別に手配することもある。○迎えが遅くても子どもの生活リズムは変えない保護者からの要望にはできる限り応えるのが環優舎の方針だ。翌日使う体操着を家で洗う時間がなければ洗濯をしておき、頼まれれば遠足のお弁当も作る。宿題の丸つけが必要なら保護者にかわってチェックをする。驚いたことに吉川さんは、一人一人の学習進度をきちんと見た上で、その子に合った教材を選び個別に取り組ませていた。また環優舎には延長保育というメニューが存在しない。迎えが何時になっても保育料は一律だ。子ども達は学校から環優舎に帰ってくると、それぞれの予定をこなし、いつもの時間に宿題をやり、18時には揃って夕食をとる。夕食前に迎えがあった日は夕食はお弁当にして持ち帰ることができ、両親ともに残業で迎えが遅い日には、入浴まで済ませて20時30分にベッドに入り、仮眠しながら迎えを待つ。「『お迎えの時間』で親を拘束したくなかった」と言う吉川さん。一般的な学童だと急な仕事が入って迎えの時間に間に合わない場合、延長の連絡をしなければならないが、環優舎では不要だ。ここでは子どもの生活リズムを決して変えないので、いつ迎えにくるかは大きな問題ではない。すべての子を20時30分に寝かせられるようにスケジュールを組んでいるので、親もお迎えの時間が遅くなろうが帰宅後にバタバタすることもない。どんなに親が忙しくても子どもの睡眠時間はきちんと確保する。環優舎が大事にしていることの一つだ。次回の後編では、環優舎のもう一つの柱、こだわりの食事についてレポートする。
2016年01月07日シャープと芙蓉総合リースは12月28日、両社が出資する合同会社クリスタル・クリア・ソーラーが同日より福島県の「南相馬小高太陽光発電所」と栃木県の「シャープ塩谷第二太陽光発電所」の商業運転を開始したと発表した。「南相馬小高太陽光発電所」は敷地面積約5万3000m2、設置容量は約2.7MW-dcで年間予測発電量は約291万kWhとなる。この発電量は、一般家庭約808世帯分の年間消費電力量に相当する(1世帯当り3600kWhで算出。以下同)。「シャープ塩谷第二太陽光発電所」は敷地面積約6万4047m2(シャープ塩谷太陽光発電所との合計面積)、設置容量約約1.6MW-dc。年間予測発電量は約171万kWhで、一般家庭の年間消費電力量に置き換えると約475世帯分に相当する。
2015年12月28日島津製作所は12月24日、法規制対応を強化した分析データシステムLabSolutions DB/CS の最新モデル「LabSolutions DB/CS ver.6.50」を発売すると発表した。価格は150万円(スタンドアロンシステム LabSolutions DB)~。同システムは高速液体クロマトグラフ(HPLC)やガスクロマトグラフ(GC)を用いた分析操作と分析結果などを1つのレポートにまとめることで、一連の分析操作の「見える化」を実現。これにより、試験結果や分析操作の確認が容易になり、確認作業の負担を軽減し、信頼性を確保した。また、「見える化」の対象となった一連の試験結果は自動的に編集不可の状態になるため、試験結果の修正や差し替えなどの改ざんを防ぐことができるほか、「見える化」されたレポートから、それぞれの試験結果データを検索し、確認する機能も有している。さらに、PDFファイルで出力した試験結果レポートの任意の箇所にレポート確認記録を残すことができ、未確認の項目があった場合はエラー通知して確認漏れを防ぐ。同社は、同システムにより試験結果の確認に要する時間を1/2~1/3に短縮することができるとしている。
2015年12月25日全国207箇所ある児童相談所が平成26年に対応した児童虐待件数は、前年度から20.5%増加して8万8,931件。過去最多の件数です。児童虐待は、調査を始めた1990年から24年連続で増加しています。原因は貧困にも関係しています。離婚や不景気などで労働時間が増えて時間がなく、ストレスから子どもにあたってしまう事件などが急増中。胸が痛くなるような出来事ですが、海外ではどのように虐待対策を練っているのでしょうか?■北欧では小さなエリアで展開スウェーデンでは、人口12万人に対して児童相談所のスタッフ45名。デンマークでは人口8万人に対して90名のスタッフがついています。日本の東京は215万人に62名なので、圧倒的に北欧はスタッフの割合が多いのです。フィンランドでは、妊婦から就学までの切れ目ないワンストップサービスが支援されています。しかも、サービスは100%無料で利用できます。また、妊娠期から相談できるため、母親は不安を解消することが可能。大きくなるまでのワンストップサービスを重視しており、妊娠期から虐待の予防支援を実現しています。またエリアを小さく区切ることで、把握しやすい、手が届きやすい支援を行うことができます。■オープン保育でいつでも相談さらにスウェーデンでは月曜から金曜日の8:30~15:30の間、オープン保育が重んじられています。保育士2名が常駐し、子どもは遊び、親は相談もできる場所です。1日20名~25名が利用していて、5~6時間自由に過ごせます。もちろん無料。家庭での育児が煮詰まったら、いつでも相談したり、気分転換に遊びに行ったりできるのです。毎日利用してもお金もかかりませんし、歓迎されるので気軽に利用できます。しかも、0歳~12歳までの子どもとその家族で、任意の相談に応じてくれます。そのため日本の多くの母親のように、ひとりで育児の悩みを抱えなくて済むのです。ソーシャルワーカーは3名やってきてくれて、家庭訪問する職員も1名。なんでも相談に乗ってくれて、孤独な子育ての話し相手にもなってくれます。家庭訪問にも対応しており、プライバシーに配慮した状態で細かな相談ができるので、母親は虐待したくなるほど追いつめられる前に対処できるわけです。■児童虐待の通報より相談重視日本では、児童相談所への通報も大きな割合を占めていますが、スウェーデンでは、通報よりも相談を重視しています。相談しやすいような体制を、政府や自治体がつくっているのです。母親や父親が気軽に相談して、虐待にいく一歩手前で相談に乗れるよう、通報よりも相談を重視しているということ。*どうやら日本の児童虐待への対応は、「事後対応」になってしまっているようです。しかし、北欧はあくまで予防。虐待が発生する前に防止しているため、傷つく人が少なくてすむのです。そういうことが、気軽に子どもを産める環境へとつながっています。こういったところは、日本も見習わなくてはならないですね。(文/渡邉ハム太郎)【参考】※平成17年版少子化社会白書(本編<HTML形式>)-内閣府
2015年12月24日リンガーハットは12月21日、「リンガーハット 新宿神楽坂店」(東京都・神楽坂)をリニューアルオープンした。同店は、「リンガーハット」で初めて生ぎょうざ直売所「GYOZA LABO」を併設した店舗。GYOZA LABOでは、国産野菜100%の「生ぎょうざ」(10個入り/税別250円)を店頭販売を行っている。また2016年1月中旬より、経済産業省のロボット導入実証事業として「アーム型ロボット」が約3カ月限定で登場する。ロボットは、成形後の「生ぎょうざ」をピッキングし、トレーに定量で配置する作業を担当。店舗の外からは、その様子をガラス越しに見学できるとのこと。
2015年12月22日厚生労働省はこのほど、全国の児童相談所における児童虐待の相談対応件数(平成26年度)を発表。その数は過去最多の8万8,931件にのぼった。今回、件数が増えたことの背景として国があげたのが「児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力」いわゆる「面前DV」の通告数の増加だ。「面前DV」は子どもにどのような影響を及ぼすのか。そして家庭にはどのような支援が必要になってくるのか。対策に力を入れている大阪府茨木市の担当者に聞いた。○愛し方がわからなくなる子どもがいる家庭で家庭内暴力を行うことを指す「面前DV」は、児童虐待防止法に定められた心理的虐待とされている。しかしその影響は心理的虐待にとどまらない。担当者は「DVのある家庭の児童の多くは、同じ種類の虐待にあっているといわれている」と指摘。また、DV被害者は身体的にも精神的にも疲弊しているため、子どもの養育にまで気が回らず、ネグレクトになることが多いという。さらに深刻なのは、家庭内のDVが子どもの育ちに与える影響だ。DVによって家庭は安心できる場所でなくなるうえ、子どもの適切な養育が家族の重要事項でなくなる。つまり、子どもに関心が向かない、かまってもらえないという状況が生まれる。「子どもの居場所がなくなる。そして、自分は愛されている、大事にされているという体験が極めて少ないので、自尊心が非常に低い子どもが多い」と話してくれた。結果として「愛し方がわからない」であるとか、「対等な人間関係が形成できない」など、のちのちの人格形成、対人能力形成に支障をきたしてしまう。「問題解決に暴力を用いるといった行動につながることもある。DV被害者やDV加害者の成育歴を聞いていくと、DV家庭で育っていたり、被虐待児童であったりしたという方も少なくない」という。○DV担当・児童虐待担当が同席して対応「面前DV」の対応について、茨木市ではDV担当と児童虐待担当が連携して支援にあたっている。DVを担当する「配偶者暴力相談支援センター」に寄せられた相談の中で、児童虐待が見られる場合や、被害者の養育能力の低下が心配な場合などは、児童虐待を担当する「こども相談室」に報告。児童の見守りをお願いしたりしているそうだ。さらに必要があれば、DV担当・児童虐待担当が同席して同時に相談を受けることもあるとのこと。相談者の負担軽減になるうえ、支援者側にとっても同時に話を聞くので、聞いた話にズレが出ず、本人の意向に沿った支援策を検討することができるからだ。担当者は「多くの支援策があるということは、支援に幅ができ、選択肢が増えるということ。ひいてはDV被害者やその児童にとってよりよい支援策を組み合わせたり、選択できたりすることになる」と語った。「面前DV」の解決には、被害を早期に発見すること、そして各機関の連携が求められている。それでは、どうしたら被害を発見することができるのか。また、加害者を生まないためには何が必要なのか。後編でご紹介する。※写真と本文は関係ありません
2015年12月21日いま日本では、免許なしで保育士になれるようになるかもしれないと注目されています。日本の保育士は薄給で、割に合わない仕事なので人材不足なのです。では、アメリカではどうなのでしょうか?その点を明らかにするために、日米の保育士を比較してみました。■アメリカの保育士は学位が必要アメリカでは高卒の保育士も多いのですが、主任先生クラスになると学位を持っている人も少なくありません。ただしその前提として、2年制の短大や4年制の大学でEarly Childhood Educationを専攻して学位を取得する必要があります。またキャリアアップやお給料アップのために、Certificate Programという1年程度のプログラムに通う場合もあります(オンラインや夜間コースなどがあります)。アメリカでは保育士の免許はないので、学位が代わりに必要になるようです。一方、日本の場合は保育士の専門学校に通うなどして、国家資格である保育士資格の取得を目指します。幼稚園教諭とはまた免許が違って、別の試験となります。保育士の資格は専門学校に通わなくとも試験に合格できますが、幼稚園教諭になるには学校に行く必要があります。■保育士の資格取得にかかるお金学校に通う以上は、当然ながら数十万円~数百万円が必要となります。アメリカではPreschool(幼稚園)とDay Care(保育園)に分かれており、Preschoolでは大卒の先生を採用するところが大半。CDA(Child Development Associate)というコミュニティスクールで、比較的簡単に取れる保有資格者を採用する場合もあります。Day Careに多いのはCDA採用。担任の先生を補助するTeacher Assistantなら、CDAを持っていなくとも採用される可能性があります。学費なしで高卒で採用される場合もあり、CDAに通っているアメリカ人ならタダ同然だということです。なお、資格の更新料は125ドルになります。一方、日本では専門学校に通っておよそ300万円ほど。かなりの高額です。それほどまでにお金をかけて、いくらぐらい稼げるのでしょうか?■アメリカの保育士も年収は低め残念ながら保育士・幼稚園教諭は、アメリカでももっとも薄給の給与といわれており、時給は8ドル前後~9.5ドル前後。日本円にして800~950円です。駐車場係やレジ係よりも安く、小学校の先生よりも低いのです。学歴としては小学校の先生と変わりないのに、給与は1/3程度に抑えられており、問題となっています。日本では月給13万円前後。これでは暮らしていけませんよね。*日本でもアメリカでも、薄給には変わりないようです。人格の骨格をなす幼稚園・保育園の時期に関わる先生は、とても大切な存在。ぜひ待遇改善をお願いしたいですね。でも、そのために保育料が大きく上がっても困ります。だからこそ、公的資金を導入するしかないのかもしれません。こういった税金の使い方なら、大歓迎ではないでしょうか?(文/渡邉ハム太郎)【参考】※【アメリカ】 米国における保育の質研究-保育者の離職について-チャイルド・リサーチ・ネット(CRN)
2015年12月16日厚生労働省はこのほど、保育士資格のない人でも認可保育所で保育に携わることができるよう、平成28年4月から基準を緩和する方針を固めた。児童の少ない朝夕の時間帯などに、子育て支援の研修を受けた人などが働けるというものだ。保育の質の低下につながるという批判もある今回の基準緩和について国に聞いた。○児童の少ない朝・夕の時間に対応今回の措置は、認可保育所の保育士の数が最低でも1施設あたり「2人」を下回ってはならないという厚生労働省の省令を緩和するというもの。児童数が少ない時間帯には保育士の資格保有者が1人常駐した上で、もう1人は無資格者でも対応ができるとした。8時前まででは全定員数の21.7%、17時からの1時間では15.2%、18時からの1時間では1.1%と児童数が少なくなる(平成24年度地域児童福祉事業等調査により国が作成)ことから、朝・夕の時間帯において活用が可能となっている。保育に携わることができるのは、「保育施設などで十分な業務経験を有する者」「子育て支援員研修を修了した者」「家庭的保育者」のいずれかの条件を満たした人だ。厚労省は保育の現状について、「保育士の確保が難しく、1日のうち保育士2名体制を順守した勤務シフト作成等の人事管理が困難な状況」と指摘。その上で、「園児の多い日中のコアタイムに保育士資格者を集中的に配置することが可能となり、保育所全体でみて保育の質の向上につながる」と基準緩和の意義を説明している。○保育の質の低下懸念する声も平成28年度から実施される予定の対策ではあるが、厚労省は本格的な運用を前に「保育士の確保が特に難しい地域に限り」という条件付きで、今年度から基準緩和を認めている(平成27年3月19日各都道府県等宛て厚生労働省保育課事務連絡)。実施状況を踏まえて、今後の運用のあり方を検討するためだ。国が提示した特例的な措置を、自治体はどのように受け止めたのか。厚労省が8月24日~9月4日に都道府県、指定都市、中核市に対して行ったアンケート調査によれば、89の自治体のうち13%にあたる12の自治体が、認可保育所で無資格者が働くことを認めていた。一方で、71%にあたる63の自治体は認めていなかった。さらに、今回の措置を来年度以降も延長すべきか尋ねたところ、「延長すべき」(27%)、「延長すべきでない」(29%)という意見が2つに割れている。無資格者が働くことを認めた自治体は「保育士の確保が難しく、現在、勤務している保育士の負担が過剰になるのを防ぐため」と保育士不足の深刻な状況を理由にあげている。一方で、認めなかった自治体からは「朝夕および延長保育の時間帯は、けが等の発生が多いことから、最低基準に基づく保育士の配置は必要であると判断した」など保育の質の低下に言及する意見が28件寄せられた。問題点や課題についても数々の意見が述べられている。「朝・夕の時間帯は、児童数は少ないが0歳児から5歳児までの合同保育となるため、けがや事故などが起きやすく、日中の時間帯よりもむしろ配慮が必要と考えている」「対応可能な時間帯および保育士に代わる者の保育能力について、施設長が認めるとしているところだが、自治体としてその適否を判断する方法が明確ではない」といった内容だ。○「無資格の人が働くのは怖い」「給料上げるのが先」今回のニュースはTwitter上で大きな話題となった。保育士と名乗る男性は、「命を預かるお仕事なので無資格の人が働くのは怖いですし私らの努力がなんの意味もなさなくなるのは悲しいです」とコメント。「人が足りなければ給料上げたり待遇良くするのがセオリーだと思う」といった声も相次いだ。今回の基準緩和では、朝・夕の時間帯に関わらず、保育士が研修中で不在の場合も対応が可能としている。さらにすべての時間帯において、幼稚園教諭や小学校教諭でも認可保育所で働けるとした。これについては、検討会の構成員や各団体から「現実的には、保育士側が嫌がるので小学校教諭は難しいのではないか」「単独でなく、複数の職員で保育する場合に限るなど、慎重な対応が必要ではないか」という見解が述べられている。一方で「多様な人材の活用は、むしろ保育の質を高めることにつながるのではないか」という前向きな意見もあった。国はこれらの意見を踏まえ、「実施自治体・事業者の事例等を十分把握した上で、保育の質への影響を継続的に検証していく」としている。今回の試みが保育の現場にどのような結果を生むのか。今後の動きが注目される。
2015年12月15日○体育館や菜園もある民間学童都会にいてもできれば子どもには、「広々とした敷地で、のびのび放課後を過ごしてほしい」。そんなふうに思う親は少なくないだろう。一般的に都会の学童は敷地の広さにどうしても限界があるが、中には驚くほど広く、施設が充実しているところもある。川崎市中原区、JR武蔵中原駅から徒歩約10分の住宅街にある「内藤アカデミー」もその1つ。民間学童でありながら、小学校さながらの教室に体育館、さらに屋上広場や菜園まであるのだ。内藤アカデミーは小学1年生~3年生までを対象にした民間学童だ。施設内では小学4年生~高校3年生を対象にした学習塾も行われており、「内藤アカデミーでの一貫教育」をモットーにしている。学童から通い始め、高校3年生まで12年間にお世話になる人も少なくないそうだ。学習塾に併設された学童というと、勉強色が強い学童をイメージするかもしれないが、ここはそうではない。「たくましい 子どもらしい 子どもの育成」を目標に掲げ、文武両道に沿った活動を実施。多彩な施設をいかして、さまざまな体験をさせてくれる。まず、敷地内に菜園がある学童も珍しいだろう。春から夏にかけては、学年ごとの畑で、ナスやピーマン、トマトといった夏野菜、それに人参のように種から育てるものをみんなで育てる。日々の活動の中で、種まきや水やり、草取りなども行い、収穫したら庭で天ぷらパーティーを開いているそうだ。庭には柿やミカンの木もあり、秋には子どもたちのおやつになる。ちょうど取材日には、庭のミカン狩りが行われており、子どもたちは目をキラキラ輝かせながら、「見て! こんなに大きい! 」「上手に採れたよ~」と元気な声を響かせていた。採った後は、みんなでミカンの木に向かって「ミカンさん、おいしいおやつをありがとう! 」とお礼を一言。こうした活動を通じて、「食べ物に感謝する」という気持ちもより育まれていくのだろう。わざわざ観光農園に行かなくても、施設内で旬の果物狩りが楽しめるというのは、特に都会に暮らす子どもにはとてもぜいたく。先日はさつまいも堀りもしたところだという。○「ただいま」「おかえりなさい」が似合う家庭的な雰囲気周辺にある4つの小学校から子どもたちが通っている内藤アカデミー。午後3時を過ぎると、「ただいま~」といいながら続々と子どもたちがやってきた。それをスタッフが「おかえりなさい」と温かい笑顔で出迎える。とても家庭的な雰囲気だ。教室長の内藤幸彦さんは、みんなから"おとうさん先生"と呼ばれ、慕われている。体育館では小学1年生~3年生まで全学年一緒になって遊ぶことも多く、みんな兄弟のように仲がいい。上の学年の子は下の子の面倒を自然とみるようになるそうだ。勤続年数が長いスタッフが多く、働いている人も職場に愛情を持っている人ばかり。そんな愛情たっぷりの雰囲気もあって、子どもたちにとっても第二の家のような存在らしく、卒業後「就職が決まりました」「結婚しました」など人生の節目の報告にくる人も少なくないという。また、開校38年目を数えるので、いまや自分が通ってわが子にも通わせる人、つまり2世代で通う人もいるそうだ。次回は保護者から、絶大な評価を集める多彩なプログラムを紹介する。
2015年12月10日