国立がん研究センター(国立がん研)は10月29日、「国際がん研究組織(IARC)」が、ソーセージなどの加工肉や豚や牛などの肉(赤肉)などに発がん性がある、との報告を10月26日に行ったのを踏まえ、日本人における赤肉および加工肉の摂取量と大腸がん罹患リスクについての見解を公開した。IARCの実施した今回の評価は、10カ国、22人の専門家によるもので、その評価は全世界地域の人を対象とした疫学研究(エビデンス)、動物実験研究、メカニズム研究からなる科学的証拠に基づく総合的な判定となっている。結果としては、加工肉について「人に対して発がん性がある(Group1)」と、主に大腸がんに対する疫学研究の十分な証拠に基づいて判定されたほか、赤肉については疫学研究からの証拠は限定的ながら、メカニズムを裏付ける相応の証拠があることから、「おそらく人に対して発がん性がある(Group2A)」との判定がなされた。こうした判定は2007年にも世界がん研究基金(WCRF)と米国がん研究協会(AICR)が、赤肉、加工肉の摂取が確実に大腸がんのリスクを上げるとの評価報告を行っており、赤肉は調理後の重量で週500g以内、加工肉はできるだけ控えるように、と勧告していた。IARCの評価の基となった全世界地域の論文の赤肉摂取の範囲はおおむね1日あたり50~100gで、中には200g以上と高い地域もあったが、2013年の国民健康・栄養調査による日本人の赤肉・加工肉の摂取量は1日あたり63g(うち、赤肉は50g、加工肉は13g)で、世界的に見ても摂取量の低い国の1つにあたるという。同センターでも2011年に、国内の45~74歳の男女約8万人を対象に赤肉・加工肉摂取量と大腸がん罹患リスクについて追跡調査を行った結果を発表している。結果の内容としては、例えば、女性では毎日赤肉を80g(調理前の重量。調理後は20%程度重量が減少)以上食べるグループで結腸がんのリスクが高く、それ以下の摂取量ではリスク上昇はみられなかったほか、男性では鶏肉も含む肉全体では摂取量の最も高いグループでリスク上昇がみられましたものの、赤肉では特に関連はみられなかったとしている。また、加工肉については男女ともに関連はみられなかったともしており、結論として、大腸がんの発生に関して、日本人の平均的な摂取の範囲であれば赤肉や加工肉がリスクに与える影響は無いか、あっても、小さいと言えるとしている。また、同センターにて、さまざまな生活習慣とがんとの関連について日本人を対象とした研究を基にIARCやWCRF/AICRによる報告書の手法を準用して評価を行ったところ、加工肉と大腸がんとの関連については、「可能性あり」との判定であり、海外に比べて弱い判定結果となるとする。今回のIARCの判定は、あくまで大腸がんを主体としたものであり、健康全般を考慮した場合、赤肉はたんぱく質やビタミンB、鉄、亜鉛といった健康維持にとって有用な成分をたくさん含んでいるほか、飽和脂肪酸も摂りすぎは動脈硬化、その結果としての心筋梗塞のリスクを高めるものの、少なすぎると脳卒中(特に、出血性)のリスクを高めることも分かっており、日本においては心筋梗塞より脳卒中の罹患率の方が高いことから、総合的にみても、今回の評価を受けて極端に量を制限する必要性はないと言えると同センターではコメントしている。なお、同センターでは、生活習慣要因の判定結果を基に、現状において推奨できる科学的根拠に基づくがん予防法「日本人のためのがん予防法」を提示しており、そこで定められた健康習慣全般に気を配ることが大切であり、食事要因については「塩蔵品を控えること」「野菜・果物不足にならないこと」「熱い飲食物をとらないこと」を目標に定めている。
2015年10月29日国立がん研究センター(国がん)は10月19日、腹腔鏡手術支援ロボットの開発を行うA-Tractionを国立がん研究センター発ベンチャーとして認定したと発表した。国がんでは、同センターの役職員が得た知的財産権や研究成果などを活用するために設立したベンチャー企業からの申請に対し、研究成果の活用が期待できると判断した企業を国立がん研究センター発ベンチャーとして認定している。初めて認定されたのはがん免疫療法の研究開発を行うノイルイミューン・バイオテックで、A-Tractionは2社目となる。腹腔鏡手術支援ロボットは米Intuitive Surgicalのda Vinciがほぼ独占している状況にある。日本でも研究開発が進んでいたが、製品化までのハードルが高く大手企業が参入しにくいことなどから、製品化という点で世界から後れをとっているのが現状だ。2015年8月に設立されたA-Tractionはベンチャーというフットワークの軽さを生かして世界に対抗できる手術支援ロボットを製品化し、より質の高い手術を実現することを目的とする。今回の認定を受けて同社は「手術支援ロボットの開発を通じて、日本の腹腔鏡手術の精度と安全性を向上させ、より多くの患者さんに質の高い手術を受けていただけるよう、邁進してまいります」とコメントしている。
2015年10月19日国立がん研究センター(国がん)は9月14日、全国のがん診療拠点病院の177施設約17万症例を対象とした、主要5部位のがんの5年相対生存率を公表した。相対生存率とは、がんと診断された場合に、治療でどのくらい生命を救えるかを示す指標。5年相対生存率であれば、あるがんのうち5年後に生存している人の割合が、日本人全体で5年後に生存している人の割合に比べてどの程度低いかで表される。今回発表されたのは2007年にがん診療拠点病院で治療を開始した患者の5年相対生存率。発表によると、全がんの5年相対生存率は64.3%、各部位で見ると胃が71.2%、大腸が72.1%、肝臓が35.9%、肺が39.4%、女性乳房が92.2%だった。合わせて都道府県別のデータも発表されたが、データの安定性を高めるために、予後把握率90%以上かつ集計対象が50例以上の施設が2施設以上ある都道府県のデータのみ公表しており、単純に比較することはできない。また、年齢分布や病期なども集計しており、国がんは「年齢の分布、病期、手術の割合などで生存率は変わってくる。そうした要素を見ながら分析していただくことに今回のデータの意義がある。各都道府県が分析を通じて、例えば検診の受診率を上げるための取り組みを検討するなど、対策を立てるためのベースとしてほしい」としている。集計するにあたっての課題もあり、生存状況も把握するために地方自治体に外部照会が必要となった際に、個人情報保護などを理由に協力を拒む自治体もあったという。この点については2016年診断例からは全国がん登録が実施され、各施設での生存確認調査がより円滑になると期待されている。なお、2016年診断例の集計結果が公表されるのは2023年の予定で、2022年の発表までは現状の課題を抱えることになる。2008年症例分以降は、都道府県別では主要5部位以外も集計・公表をする方向で検討を進めているほか、施設別生存率を公表する方針だが、国がんは「施設別相対生存率では数字のばらつきがより顕著になる。数字の安定性・相対生存率の意義に関する理解を深める必要がある」としている。
2015年09月15日DeNAは8月27日、同社の子会社であるDeNAライフサイエンスが提供する遺伝子検査サービス「MYCODE」の新たなメニューとしてがんに特化した「がんパック」を追加し、同日より提供開始すると発表した。また、説明会では、提供開始から1周年を向かえた同サービスのこれまでのあゆみを振り返るとともに、今後の展望を明らかにした。「がんパック」は「MYCODE」で提供されている全てのがん38項目を対象としており、「項目数が多くて見きれない。もっと特化したものがほしい」とうユーザーの要望を実現したものとなっている。通常価格は14800円(税別)だが、9月30日までの期間限定で9800円(税別)の特別価格で販売される。なお「がんパック」を購入すれば、「MYCODE」で提供している生活習慣病をはじめとするその他の項目についても、検査後に追加購入することが可能だ。「MYCODE」では、他にもユーザーの声をきっかけとしたサービスを追加していく予定で、「結果をどう捉え、結果を踏まえてどう行動すればいいのかわからない」という意見を受けて、検査後に管理栄養士とTV電話を通じて50分の詳しいアドバイスを受けられるサービスを2980円で9月下旬から提供開始する。さらに、最新の遺伝研究に関する論文に基づいた検査結果のアップデートが今秋に予定されているほか、自分の祖先を調べることができる「ディスカバリー」の検査結果から提供しているオリジナルキャラクター「ゲノミー」を活用したエンターテイメントコンテンツの充実や、遺伝子に関わる研究を幅広く紹介する、ユーザー参加型の新コンテンツを9月中旬から提供するなど、サービス内容の拡充を今後も続けていくとした。2014年8月12日にサービスを開始しして以来、最大280項目の検査結果を提供する「ヘルスケア」をメイン商品として、その簡易版である「ヘルスケアLite」、上述の「ディスカバリー」を展開し、このラインアップに今回「がんパック」が加えられたわけだが、同サービスはまだこれからといった段階にある。そもそも、遺伝子検査市場というのは法整備の面を含めて未成熟で、その点についてDeNAライフサイエンスの大井潤社長は「今は市場の立ち上げに向けて頑張っている。競合各社と『競争』ではなく『共創』をしている段階だ」と説明する。一方、サービスそのものの品質には大きな手応えを感じており、「(検査を受ける前と受けた後で)半分くらいの人が食事を気にするようになったとアンケートに答えている。また、タバコでも10%の人が禁煙を始めた。この10%は結構高い数値で、我々の検査の意義を表している数値といえる。」(大井社長)。実際、「MYCODE」で高リスクと判定されたことがきっかけで、食道がんが見つかった例もあるという。ユーザーに気づきを与えることで健康意識を高め、さまざまな病気の予防につなげるという同サービスのコンセプトが実現しているだけに、ビジネスとして成長していくためには認知度と信頼性が重要になってくる。認知度向上のための取り組みとしては、神奈川県で来年1月末まで20歳以上の県民を対象に「ヘルスケア」と「がんパック」が4割引で購入できる事業を開始しているほか、DeNAベイスターズと連携したプロモーションを展開する。また、医療機関・スポーツクラブとの連携を通じて販売チャネルを増やすと同時に、ユーザー側の遺伝子リテラシーの向上を促進する。一方、信頼性の面ではプライバシーや分析の質、結果の科学的根拠、情報提供の方法など、消費者が安心して遺伝子検査を受けられるような環境整備が必要となる。国内では2004年に個人遺伝情報保護ガイドラインが経済産業省により制定されているほか、2006年に発足し、DeNAライフサイエンスも参画しているNPO法人個人遺伝情報取扱協議会(CPGI)が今年の秋ごろに自主基準認定制度の運用を開始する予定だ。
2015年08月28日味の素は8月7日、同社のがんリスクスクリーニング検査「アミノインデックス(AICS)」が、膵臓がんの早期発見に対応したと発表した。AICSは、味の素と臨床検査会社であるエスアールエルが2011年より共同で提供している検査で、血中アミノ酸濃度バランスの変化を解析・指標化し、胃がんや肺がんなどのリスクを調べることができる。検査に要する血がわずか5mlと少量なことから、体に負担の少ないスクリーニング検査となっており、2015年7月現在で956の医療機関で受診可能となっているほか、地方自治体の住民検診に採用されるなど普及が進んでいる。これまでは胃がん、肺がん、大腸がん、前立腺がん(男性のみ)、乳がん(女性のみ)、子宮・卵巣がん(女性のみ)という6種類のがんを対象としていたが、膵臓がんが新たに加えられた。これは、味の素と大阪府立成人病センターの片山和宏 副院長を中心としたグループとの多施設共同研究による成果で、膵臓がん患者360名と健康な人8372名の血中アミノ酸濃度バランスの変化を解析した結果、膵臓がん患者の血中アミノ酸濃度バランスが有意に変化していることがわかった。また、手術可能な段階の患者でも進行がん患者と同様の変化を示すことが判明し、その変化を解析する事で、膵臓がんの早期発見技術の開発が可能となった。膵臓がんは早期の発見が難しく、切除手術も長時間となり患者への負担が大きいだけでなく、腫瘍が2cmを超えると周囲へ浸潤して取りきれないことがあるなど、治療が極めて難しいがんとして知られているだけに、AICSによる膵臓がんの早期発見が可能となり、より効果的な治療につながることが期待される。
2015年08月07日国立がん研究センターはこのほど、全国のがん診療連携拠点病院409施設で2013年の1年間にがんと診断された患者の診療情報を集計し、その結果を明らかにした。同集計は2007年分から開始し、今回で7回目の集計となる。今回は、全国のがん診療連携拠点病院で2013年1月1日~12月31日までの1年間、院内がん登録された診療情報を集計した。自施設で診断または他の病院で診断された後、自施設に初めて受診した、すべてのがんおよび脳腫瘍の患者数を示す「全登録数」は、409施設で65万6,272例だった。これは日本全体のがん罹患(りかん)数の約70%にあたる。全登録数は、2009年からは毎年増加している。男女計の部位別の登録割合を見ると、最も多いのは「大腸」(14%)で、次いで「胃」(12%)、「肺」(11%)、「乳房」(10%)、「前立腺」(8%)と続いた。男女別で見ると、男性の5大がん(胃、大腸、肝臓、肺、前立腺)は、2007年の集計以来、初めて大腸が胃を上回り最多となった。女性の5大がん(胃、大腸、肝臓、肺、乳房)では、乳房と大腸が胃と肺の登録数に比べて増加の傾きが急になっている。上位10部位の登録数においては、子宮頸部と膵臓(すいぞう)が順位を上げ、肝臓と子宮頸部の順位が逆転した。また、膀胱(ぼうこう)がランク外になり膵臓が9位(前回11位)に順位を上げている。同調査の集計結果は、ウェブサイト「がん情報サービスがん登録・がん統計」でも公開している。
2015年08月06日国立がん研究センターは7月16日、肺がんの中でも特に難治性が高い肺小細胞がん110例の全ゲノム解読を実施したと発表した。同成果は同センターが愛知県がんセンターの研究グループとともに参画した、独ケルン大学が主導する16カ国の研究機関からなる国際共同プロジェクトによるもので、英科学誌「Nature」に研究成果に関する論文が掲載された。肺小細胞がんはほとんどが進行がんとして発見され、ゲノム解析に適する手術試料が得られにくい。そのため、今回の研究では、各国の研究機関からこれまでに集めた肺小細胞がんの試料を集結させて解析。肺小細胞がんで高頻度に不活性化している遺伝子群を同定するなどの成果が得られたという。今後、同研究で得られたデータを活用することで肺小細胞がんの新たな治療・診断法の開発につながることが期待される。
2015年07月17日いまや、2人に1人ががんにかかり、3人に1人ががんで亡くなる時代。しかし、実はその半分近くが予防できることもまた事実。そう明かしているのは、『がんにならないのはどっち?』(秋津壽男著、あさ出版)の著者。これまでにも『長生きするのはどっち?』(あさ出版)などのベストセラーを送り出してきた医師ですが、今回はがんをテーマに、知っておきたいことを二択の質問形式でまとめているわけです。最大のポイントは、正しい情報に基づいた予防法に取り組めば、がんの9割は予防できるということ。そのためにおぼえておきたい2つのことを、第3章「『がん習慣』のどっち」から引き出してみたいと思います。■1:「日傘をさす」と「日焼け止めを塗る」皮膚がんになる習慣はどっち?「太陽からの紫外線を浴びると、皮膚がんになる」、これは正しい情報だそうです。理由は、紫外線を浴びると、皮膚の遺伝子が傷つくから。遺伝子の傷は通常2日ほどで修復されますが、このとき遺伝子のプログラムが誤って修復され、皮膚がんになることがあるというのです。また美容面では、「肌の色が黒くなる」「長年大量に浴び続けることによってメラニンが過剰につくられ、シミやソバカスとなる」といったことも懸念されるとか。そこで美容面を気にして、日傘をさす、帽子をかぶる、日焼け止めクリームを塗るなどの対策をしている女性も多いことでしょう。しかし、これらのなかで「日焼け止めクリーム」はオススメできないと著者。なぜならほとんどの日焼け止めクリームは、それ自体に皮膚がんを起こす「酸化チタン」という成分が含まれるから。最近はこの問題が知られるようになり、自然化粧品のメーカーなどで酸化チタンや化学化合物を使用しないUVケア製品が販売されるようになったといいます。どんな成分が使われているか、しっかりチェックしたいところです。■2:「ランニング」と「ウォーキング」がんに対する免疫を下げるのはどっち?健康のため、習慣的に運動やスポーツを行なっている人も多いと思いますが、意外なことにランニングやテニスなどのスポーツは、がんを抑制するNK(ナチュラルキラー)細胞の活性を低下させる恐れがあるのだそうです。免疫細胞の仲間であるNK細胞は、体内をパトロールしながら、がん細胞やウイスルに感染した細胞を見つけると攻撃してくれる優秀なボディーガード。しかしその働きは、激しい運動のストレスによって低下してしまうのだというのです。たとえば、2時間半のランニング後にNK細胞の活性が50~60%低下したという報告もあるとか。つまり、激しい運動はからだの免疫力を低下させるということです。ただし、まったく運動をしない場合もNK細胞の活性は下がるので注意が必要。自分にとって無理のない適度なペースで、楽しみながらウォーキングする程度が、もっともNK細胞を活性化させるといいます。*このように、がんについての知識がわかりやすく解説されています。予防の意味でも、ぜひ目を通しておきたい一冊です。(文/印南敦史)【参考】※秋津壽男(2015)『がんにならないのはどっち?』あさ出版
2015年07月16日慶應義塾大学は6月25日、脂質異常症の治療薬として使用されるスタチン製剤に卵巣がんの発生や進行を抑制する効果があることを確認したと発表した。同成果は同大学医学部産婦人科学教室の小林佑介 特任助教と米Johns Hopkins大学医学部病理学教室のTian-Li Wang 准教授、Ie-Ming Shih 教授らの研究グループによるもので、6月24日付(現地時間)の米科学誌「Clinical Cancer Research」に掲載された。スタチン製剤はコレステロールの合成を阻害することから脂質異常症の治療薬として用いられている。近年、同剤ががんの発生を抑える可能性が注目されているが、卵巣がんではその効果が証明されていなかった。同研究では、卵巣がんが自然に発生するマウスにスタチン製剤を投与した。このマウスは通常、生後5週からがんが出現するが、スタチン製剤を投与したマウスではその発生や進展が抑えられていた。ヒトの卵巣がん細胞を移植したマウスでも同様に、スタチン製剤の投与によって腫瘍の発生や進行が抑えられることが確認された。また、腎機能や肝機能への影響は認められなかった。さらに、ヒトの卵巣がん細胞にスタチン製剤を添加して培養すると、増殖が抑制されるとともに、細胞が膨化したり細胞内に空胞ができることから、アポトーシスやオートファジーといったプログラム細胞死が関与していることが示唆された。実際、同剤の投与により、アポトーシスやオートファジーに関与するタンパク質の発現が細胞レベルでも腫瘍レベルでも高くなっていたという。同研究グループは「今後は本研究の結果をもとに、至適用量やその適応を十分に考慮した上で、ヒトの卵巣癌の発生や進行を実際に抑制しうるか検討が行われることを期待します。」とコメントしている。
2015年06月25日MSDは6月22日、国立がん研究センター(国がん)と「SCRUM-Japan(Cancer Genome Screening Project for Individualized Medicine in Japan:産学連携全国がんゲノムスクリーニング)」に基づく遺伝子変異スクリーニングに関する共同研究契約を締結したと発表した。「SCRUM-Japan」は、国立がん研究センターが、個々のがん患者に最適な医療を提供することを目的に、全国の医療機関、製薬企業と協力して実施するがん遺伝子異常スクリーニング事業。大規模な遺伝子異常のスクリーニングにより、希少頻度の遺伝子異常をもつがん患者を見つけ出し、遺伝子解析の結果に基づいた有効な治療薬を届けること、ならびに複数の遺伝子異常が同時に検出できるマルチプレックス診断薬を臨床応用することをミッションとしており、特定の異常が見つかった患者は、対応する治療薬の臨床試験へ参加できる可能性がある。また、患者の遺伝子情報と診療情報は、治療選択の参考として用いられるほか、匿名化処理された後にデータベースに登録され、新たながん診断・治療薬の研究開発のために2次利用される。なお、MSDでは、今回の事業参加を通じて、個別のがん患者に最適な治療薬の開発が期待されることを踏まえ、がん領域における研究・開発を推進していきたいとしている。
2015年06月23日先日、俳優の今井雅之さんが大腸がんで、漫才師の今いくよさんが胃がんで亡くなりました。がんは日本人の2人に1人がかかると言われる病気。40歳を過ぎたらがんにかかるリスクが高くなる…とよく耳にしますが、健康な人のがん検診率は20%足らずとか。まだ大丈夫だから、と検診しないでいて、いざ見つかったら大騒ぎ…とならないよう、アラフォー女子が今、本当にやっておくべき「がん検診」についてまとめてみました。お話を聞いたのは、ピンクリボンブレストケアクリニック表参道の島田菜穂子先生です。島田菜穂子先生ピンクリボンブレストケアクリニック表参道 院長。2000年、乳がん啓発団体・乳房健康研究会を発足させ、乳がん啓発団体として日本初のNPO法人認証を受ける。同副理事長。乳がん認定医、放射線科専門医、認定産業医、日本体育協会認定スポーツドクターなどの認定医資格も持つ。乳がん関連の著書、監修が多数。最近の監修は「乳がんから自分をまもるために、知っておきたいこと。」(日本医療企画)。ピンクリボンブレストケアクリニック表参道 「乳がん」のリスクが高い人は、20代からでも検診を!「アラフォー女性が忘れてはならないのが、第一に乳がん。女性が一番かかりやすいがんで、年間に約9万人弱の女性が新たに乳がんになっています。他のがんに比べて、30代や40代といった若い年代からかかる方が多い多いのも特徴で、絶対に検診を早くから習慣として受けてほしいのです。乳がんほど、早期に見つけて治るがんはないのですから」と島田先生。自治体が行う乳がん検診のガイドラインでは、「乳がん検診の対象者は40歳以上の女性、頻度は2年に1度、医師による問診と視触診+マンモグラフィ」となっていますが、早期発見を目的とすれば、40歳未満でも受けるべきだと先生は言います。島田先生が提案する「乳がん検診」のガイドラインは…▼20代でも検診を受けてほしい人・家族、兄弟姉妹、伯父叔母、いとこなど2名以上が特に閉経前に乳がんや卵巣がんにかかったことがある人・家族歴はなくてもピルを長期間使用したことがある人・家族歴はなくても長期にわたって不妊治療をした人▼30代半ばになったら検診を受けてほしい人・女性全員★乳がん検診の重要性と、検診の詳細についてはこちらにまとめました↓「子宮頸がん」「子宮体がん」もしっかり検診をそして20代から気をつけなければならない子宮がん。子宮がんには、主に「頚がん」と「体がん」の2種類があり、若くてもリスクが高いのは子宮頸がんのほう。感染によって発病するため、男性経験がある人なら年齢にかかわらず、必ず検診を受けておきましょう。子宮体がんのほうは、主に閉経後に増えてくる病気です。【子宮頸がん・子宮体がん】「子宮がん検診は、20代以降の女性に2年に1回、自治体でも受診券を配布している検診で、問診・内診・細胞診がセットになっています。柔らかいヘラまたはブラシのような器具を腟内に挿入して、 子宮頸部の表面を軽くなでるようにしながら細胞を採り、検査に回します。ほんの少し出血することはあっても、痛みを感じることはほとんどないので、婦人科に慣れていない人も怖がらずに受けましょう」(島田先生)発見が遅れがちな「卵巣がん」こそ、進んで検診へ!女性特有のがんには卵巣がんもあります。それほど頻度は高くなく、患者数統計の上位には上がっていません。が、卵巣がんは見つかりにくく、見つかったときには怖いサイレントキラーです。卵巣は、さまざまなタイプの腫瘍ができる臓器。85%は良性腫瘍ですが、中には悪性腫瘍もあり、その判別が難しいもの。卵巣がんは早期発見が難しく、痛みもなく大きくなり、腹水が溜まっておなかが張ることでやっと気づく場合が多いため、進行するまでなかなか見つからないケースがほとんどです。しかも、卵巣がんは乳がんとともに家族歴がリスクファクターとなる病気。近い親類(母親、姉妹など)が卵巣がんになった人は、同じく発症するリスクが高くなります。また、若い年齢で家族が卵巣がんと診断された場合はさらにリスクが高まります。【卵巣がんのリスク要因】●家族に閉経前乳がん、卵巣がんになった人がいる●妊娠回数が少ない●出産経験がない、または少ない●授乳経験がない、または少ない●乳がんを経験した●肥満●排卵誘発剤の使用●ホルモン補充療法の長期使用など「家族歴が当てはまる人は、30代になったら必ず一度は卵巣がん検診を受けていただきたいです。でも、残念ながら卵巣がんは、厚生労働省によるがん検診の対象にはなっていません。卵巣は骨盤の奥深くに位置することから、痛みを感じにくく、しこりや腫瘍ができても気がつかず、自覚症状がなかなか現れないんです。進行するとかなり大きくなって、周囲の臓器を圧迫するほどの大きさに腫れることがありますから、他の部分は太らないのに腹部だけがぽっこりふくらんでいる、腹部に圧迫感がある場合などは、検診ではなく、婦人科を受診することをおすすめします」(島田先生)卵巣がんの検診は、内診と経膣超音波で行われます。卵巣は外部と接触していないため、子宮のように検査器具を挿入し、細胞や組織を採取する病理検査は行うことができません。内診は、腟内に片方の手指を挿入し、もう片方の手をおなかの上に置き、子宮と左右の卵巣の大きさや形、位置、腫れの状態などを診ます。超音波検査は、細長い器具を腟内に挿入し、子宮内や卵巣のようすを至近距離から映像で見ることができます。これは、卵巣がん検診だけでなく婦人科では日常的に行われる検査です。「卵巣がんの検査は単独ではなく、『経膣超音波検査』として女性検診メニューに入っていることが多いものです。これは、卵巣がんだけでなく、子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣嚢腫など、子宮と卵巣を両方診てもらう検査。通常はこれで十分だと思います。婦人科では、子宮がん検診と経膣超音波検査がセットになっている検診メニューもあるので、アラフォーになったら一度はこれを受けることをお勧めします」(島田先生)「大腸がん」「肺がん」「胃がん」…アラフォーでやっておくべき検診はどれ?乳がんをはじめとする女性特有のがんがクローズアップされるのは、罹患率(がんと診断された人の数)がとても高いため。でも、乳がんは早期に発見することで治る確率が高いので、死亡率は1位ではないのです。国立がん研究センターが公表した2015年のがん統計予測では、大腸がんはこれまでトップだった胃がんを抜いて、男女合わせて最も患者数が多いがんということに。大腸がんは女性より男性に多いのですが、2013年には全年齢層で女性のがんで最も死亡数が多かったのも大腸がん。2015年のがん統計予測【がんの罹患数(新たにがんと診断されるがんの数)】【がんの死亡数(がんで亡くなる人の数)】*資料:ともに2015年 国立がん研究センター働き盛り年代の女性に限定すると死亡率が最も高いのは乳がんですが、65歳以上の女性も加えると女性の命を最も奪っているがんは大腸がんや肺がんということになります。このように年齢によって、検診に力を入れるべき臓器が変わってくるのも女性のがんの特徴です。年齢が上がるとともに、いくつものがんのリスクが高くなるため、厚生労働省は、胃がん、肺がん、大腸がん、乳がん、子宮頸がんのがん検診を推奨しています。住んでいる市町村によって、多少内容が違いますが、対象年齢になると、自治体からがん検診のお知らせが届くようになります。 例えば、東京都港区を例に挙げると、対象年齢の人には受診券が送付され、以下のようながん検診が無料で受けられます。【女性対象のがん検診(港区の場合)】「頻度など個々のリスクによっては十分ではない場合もありますが、自治体が安価にあるいは無料などで提供してくれる検診は、意外に多くありますよね。ただ、こんなに素晴らしいサービスがあっても、きちんと受診している人は圧倒的に少ないのが現実。利用しないのは本当にもったいないことです。この他に受けたい検診としては、40歳を過ぎたら、胃がん検診のひとつとしてピロリ菌検査も一度は受けたほうがいいですね」(島田先生)アラフォーで、肺がん検診を受けるべき人とは?また、声を大にして言いたいのは、女性の喫煙者の方に対して。男性の喫煙者は減りつつあるのに、女性は横ばい。喫煙は百害あって一利無しです。乳がんのリスクが上がるだけではなく、喫煙はエイジングを加速することになります。「いつまでもキレイで若々しくいたいと、一生懸命に高価な美容液を使ったり、エステや美容外科にお金を払っても、タバコを吸っただけでフリーラジカルが増え、一気に老化。肌年齢も臓器年齢も上がっていきます。すべてが水の泡です。そう、がんも老化による細胞のコピーミスが原因といわれています。喫煙者はまずは禁煙することが何より大切ですね」(島田先生)どうしてもタバコがやめられない人、家族に家の中で喫煙する人がいる場合は、アラフォーなら100%肺がん検診を受けるべき。「日本人女性は、他国の女性より健康意識は高いイメージがあります。サプリメントを飲もう、自然食品を食べようとか、こぞって気を使いますよね。なのに、がん検診には意識が向かない。逆におじさんにしか必要ないような盛りだくさんの項目の血液検査から何でもかんでも画像検査までを取りそろえた、絢爛豪華な人間ドックなどにかかってみたり…。それは全然賢明じゃない。がんにかかったことのない人や、若年の脳出血の家族歴がない女性が、30代で毎年脳ドックやPET検査、全身のMRI検診を受けたりするのも何とももったいない話。検査について、よく必要性を理解していないと、こんなおかしなことも起こります。『毎年遺伝子検査受けてます』って…、遺伝子は一生変わらないですからね(笑)! 1回受ければ充分なのに、知らないとこんな感じで本当に無駄なことをしてしまうことになります。正しい情報や知識をもって自分の年齢やリスクにあった検診を選ぶことが大切。賢く健康を管理することが大事なんです!」(島田先生)私たちに必要なのは、適切で無駄のないがん検診。「時間がないから」「お金がない」から」と理由をつけて、検診に全く行かない人もいますが、病気になるともっとお金も時間もかかります。だからといって検診に何十万円もかける必要もありません。自分に必要な検診だけが無駄なくできる医療機関を見つけるのが先決。なんとなく敷居が高ければ、比較的安価で身近に受けられるサービスから探してみるのもいいでしょう。自治体の検診なら、該当年齢であれば無料もしくは500円、1,000円などの検診料です。それで不十分なら自分に必要な項目を追加して、リスクのある病気だけ忘れずに検診しておく。それだけで安心感が違います。「アラフォー世代になったら、もう自分で自分の体を病気から守るべき。検査も自分で選べるようになってほしいですね。もちろん、体調が悪い、何らかの症状がある場合は検診ではなく”受診“ですよ。検診とは、何も異常を感じない人から、わずかな異常がないか探すのが目的。調子が悪いからと検診を受けるのは間違いです。何か心配な症状や不調があるときは、検診ではなく、その不調を明らかにするために医療機関をすぐに受診をしてください。検診のもう一つのコツは、信頼できる医療機関が見つかったら、毎年同じ医療機関で検診をして、データを蓄積してもらうこと。昨年と違うことは何かなと比較し検討してもらうのが理想です。健康の変化の傾向をすることも出来るし、より軽微な異常を見つけることができます。早く、信頼できる医療機関を見つけて、賢く検診を受けていただきたいと思います」(島田先生)
2015年06月19日肥満の人と、10年間喫煙を続けた人。どちらががんになりやすいと思いますか?答えはなんと、肥満の人なのです!がんの最大の原因は、あと10年で喫煙よりも肥満になるだろうと専門家は予測しています。がんの研究者は、抗がん剤に頼る化学療法だけではなく、食事や運動療法によって予防に努めるべきだと主張。肥満はがんを発症するリスクを高めるだけではなく、死亡率さえ高めます。それにも関わらず、WHOは英国の成人肥満率が2030年までに、1/4から1/3まで上昇すると予測しています。こうした肥満の恐ろしさについて、イギリスのニュースサイト『Daily Mail Online』の記事を参考にまとめました。■肥満はがんの死亡率を上げるボストンのハーバード・メディカル・スクールの研究員、ジェニファー博士が率いる研究チームは、肥満とがんとの関連を3年にわたって研究しました。すると20年前の生活と比べると、がんの原因において肥満が占める率が上昇していることがわかったのです。これは人々が、肥満が心臓病や糖尿病にリスクがあることは知っていても、がんのリスクやがんの死亡率を上げていることは認識していないためだと指摘されています。■肥満対策はまだ不十分な状況政府は過去10年間で、タバコ税の引き上げや公共施設での喫煙を禁止するなど、喫煙については幾つもの対策を取ってきました。しかし肥満についての対策は根付いているとは言えません。がんに対する喫煙対策は万全でも、肥満対策はまだ不十分と言えるでしょう。ハーバード大学の研究者は、肥満は乳がん、前立腺がん、大腸がん、子宮頸がんを含むさまざまな腫瘍のリスクを上昇させていると言います。彼らの研究によると、がんと診断された時に肥満であった女性患者は、乳がんの死亡率が75%であることがわかりました。また、肥満率がとても高い女性は、子宮がんを発症する確率が普通の女性の6倍以上でした。別の研究では、がんと診断された後でも積極的に運動をして脂肪を落とした患者は、生存率が2倍にアップしたことがわかっています。以上の結果から、研究者は、人々には基礎的な食事療法と運動プログラムこそ重要であると主張しているのです!■喫煙よりも肥満を改善すべきニューヨークのマウントサイナイ病院のパメラ・グッドウィン博士も、喫煙よりも肥満ががんの原因となっていると主張しています。肥満は体内のホルモン量を変化させてしまい、結果としてがんになりやすい体になってしまうというのです。実際に肥満ががんの治療を妨害し、患者の回復を妨げているとグッドウィン博士は言います。次世代のがんの原因は、肥満ではなく喫煙であると確実に言えることでしょう。喫煙者がタバコをやめるのは重労働ですが、肥満にならないために食事の改善をするのは容易いことです。がんは恐ろしい病気。がんの発症率を確実に上げてしまう肥満体にならないように、今できる食生活の改善から始めましょう。甘いものを摂りすぎず、適度な食事量を守りましょう。適度に運動もできれば、より健康な生活を送れますね。(文/和洲太郎)【参考】※Obesity will cause more cancers than smoking in ten years-Daily Mail Online
2015年06月15日国立がん研究センター がん予防・検診研究センターはこのほど、健診ツール「5つの健康習慣によるがんリスクチェック」をホームページで公開した。○チェック後は改善シミュレーションも可能「がんリスクチェック」は2011年4月に開設。「がんと循環器の病気リスクチェック」を公開して以降、男性を対象とした「大腸がんリスクチェック」「脳卒中リスクチェック」を公開。今回新たに5つの健康習慣によるがんリスクチェックを加え公開した。いずれのチェックも10問以内の簡単な設問で構成され、短時間でチェックすることができる。5つの健康習慣によるがんリスクチェックは、45歳から74歳の男女が対象。「禁煙」「節酒」「塩分控えめ」「運動習慣」「適正BMI」の5つの健康習慣をどれだけ守っているかを診断し、今後10年の間にがんに罹るリスクを算出する。チェックを進める中で5つの健康習慣の知識が得られ、リスクチェックの後に改善シミュレーションにもトライできる。
2015年06月15日国立がん研究センター(国がん)がん予防・検診研究センターは6月12日、2011年に開発しWeb上で公開していた、生活習慣などに関する質問に答えることでがんなどの発生リスクを算出する診断ツール「がんリスクチェック」に、新たに「5つの健康習慣によるがんリスクチェック」を追加したと発表した。がんリスクチェックは、チェックを進める過程で、生活習慣の改善によるがん予防の実践への動機づけを行い、がん罹患率の減少を目指すことを目的に開発、公開されているもの。新たに追加された5つの健康習慣によるがんリスクチェックは、45歳から74歳の男女が対象で、「喫煙」、「飲酒」、「食習慣(塩分)」、「運動習慣」、「肥満度(適正BMI)」の5つの健康習慣について、現在の習慣を続けた場合、今後10年の間にがんに罹るリスクを算出するというものとなっている。チェックを進める中で、5つの健康習慣の知識が得られるほか、リスクチェックの後に、改善シミュレーションにもトライすることもできるという。
2015年06月12日卵巣に小さな嚢胞が多数できて、排卵がなくなったり遅れたりする「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)」。前回の「症状編」では、生理不順のほかヒゲや多毛、ニキビ、肥満といった症状が見られることをお話しました。それでは多嚢胞性卵巣症候群であることがわかったら、どんな治療を受ければいいのでしょうか。今回は、治療方法について解説します。○薬などで排卵を誘発する治療が一般的多嚢胞性卵巣症候群は、ひとつの体質と考えられおり女性ホルモンレベルが良好に保たれていれば、経過観察していても問題ありません。しかし多嚢胞性卵巣症候群での排卵障害は年齢とともに進行するため、妊娠希望の場合は治療を開始するのが早ければ早いほど妊娠できる可能性は高まります。若い女性などで当面は妊娠を考えていない場合であれば、ホルモンレベルが良好になるように女性ホルモン剤を用いた治療をします。生理不順の程度によって使用する薬剤や服用方法が異なりますが、まず周期的にプロゲステロンのみを投与する「ホルムストローム療法」やエストロゲン・プロゲステロン投与の「カウフマン療法」によって女性ホルモンを整えます。そして3周期ほど服用したのちに服用を中止すると、脳下垂体から卵巣ホルモンの連携が復活して正常排卵に至るという、いわばショック療法のような治療をします。一方、すぐにでも妊娠を望む場合は妊娠したいときのみ排卵を起こすという医療処置が行われます。治療ではまず内服するタイプの排卵誘発剤が用いられますが、それで反応がない場合は他の薬を併用したり注射で排卵を誘発したりします。薬で排卵が起こらない場合には、排卵が起こりやすくなるよう、卵巣に穴を開ける腹腔鏡手術を行う場合もあります。また近年、多嚢胞性卵巣症候群には、インスリン抵抗性が排卵を妨げている可能性があると考えられています。そのため糖尿病の検査や治療が勧められる場合もあります。○重度だと、体外受精を行うことも多嚢胞性卵巣症候群という難しい病名を聞くと、「もう妊娠できないのでは? 」と不安に思う人もいるでしょう。でも軽度であれば、大抵は上記のような治療を行えば妊娠できることがわかっています。ただし多嚢胞性卵巣症候群は、排卵誘発による副作用が出やすい傾向があるので、排卵誘発剤による治療が困難な場合には、医師から体外受精のような高度な不妊治療をすすめられることもあるかもしれません。多嚢胞性卵巣症候群の症状や度合いは人それぞれ違い、また妊娠できるかどうかにはその人の年齢も大きく関わってきます。信頼できる専門医と相談しながら、自分のペースで治療を進めることが大切です※画像は本文と関係ありません○善方裕美医師日本産婦人科学会専門医、日本女性医学会専門医1993年高知医科大学を卒業。神奈川県横浜市港北区小机にて「よしかた産婦人科・副院長」を務める。また、横浜市立大学産婦人科にて、女性健康外来、成人病予防外来も担当。自身も3人の子どもを持つ現役のワーキング・ママでもある。主な著書・監修書籍『マタニティ&ベビーピラティス―ママになってもエクササイズ!(小学館)』『だって更年期なんだもーん―なんだ、そうだったの?この不調(主婦の友社)』『0~6歳 はじめての女の子の育児(ナツメ社)』など
2015年06月09日乳がんにかかる女性は30代から40代にかけて急増すること、知っていますか? アラフォー女子と乳がんは切っても切れない関係。私たちは何をどう気をつければいいの? 乳がん検診の必要性は? 自分のカラダに関わる大切な問題、しっかりと目を向けていきましょう。乳がんは怖くない病気、必要以上に恐れなくてもいい病気今回教えていただいたのは、同世代の乳がんサバイバー(がんを経験した人)であり、モデルの藤森香衣さん。そして、乳腺専門医で乳がんの知識や検診の普及に長年尽力している島田菜穂子先生にもお話をうかがいました。藤森香衣さん1976年生まれ。モデル。11才からモデルを始め、広告を中心に活動。出演したCMは70本を超える。長年の経験で培った知識や感性を活かし、ユーザーの目線に立った様々なプロデュースを展開。2013年4月、乳がんにより右乳房を全摘出。同時に乳房再生治療を受ける。がんについての知識を広めるため、手術と同時に病気を公表。がん全般の啓蒙活動にも積極的。オフィシャルブログ「白花の薫り」、Doctor’s Me「藤森香衣のがんコラム」 「日本女性の16人に1人が乳がんにかかる」と言われていたのは数年前。それが「14人に1人」に変わり、最近ではもう「12人に1人」と修正されています。「10人に1人」になるのは時間の問題でしょうか?「みなさん、知り合いや身内に、乳がんにかかった人が1人か2人いますよね。私は祖母がそうでした。しかも20代の友人を乳がんで亡くしました。そしてその翌年、私自身、自分の胸にしこりを見つけたんです」淡々と話す藤森さん。乳がんにより2年前に右乳房を全摘出したことが、嘘のようなキラキラした笑顔が印象的です。しこりを見つけた当時、藤森さんは35歳。乳がんにかかるのは40代や50代だけなんて言われていたのは以前の話。確かにピークはそうですが、残念ながら年代にかかわらず、20代30代40代…各年代まんべんなく乳がん患者が増えているのが現状です。乳がんは、日本を含む先進国で増えている病気。昔ながらの生活を営む開発途上国では患者数がさして増えていません。食生活が豊かで、発育や健康状態がよくなったこと、出産・授乳経験が少なくなったことなど、生活様式の変化が乳がん増加の原因になっていることは確かなようです。 さて、藤森さんが自分の右胸にしこりを見つけたのは、亡くなった友人の『ちゃんと検診を受けてほしい』という声がまだ記憶に新しかった時期。すぐに近くの乳腺科を受診しましたが、乳がんではないとの診断。ただ、しばらくするとしこりが大きくなっているような気がして、翌年別のクリニックで検診を受けました。そこで「0期の非浸潤がん」と診断されたのです。その時がんを見つけたくれたのが、ピンクリボンブレストケアクリニック表参道の島田菜穂子先生でした。「ご自分で触って見つけた乳がんが、藤森さんのように0期というのはなかなかないこと。セルフチェックを真面目にされている方でも、発見するのは大抵2cmくらいになってからなんです。早期であれば90%以上、限りなく100%に近く治ります。乳がんは他のがんと比べても、怖いものではないということ、だから早期に発見すべきだということを、もっとみなさんに知ってもらいたいですね」と島田先生。【 乳がんの病期(ステージ)分類 】 Tis:乳管内にとどまるがん。非浸潤がん(超早期)0期:しこりや画像診断での異常な影を認めないものⅠ期:2cm以下のしこりで、リンパ節への転移がないと思われるものⅡ期:2cmを超える5cm以下のしこりがある、もしくはリンパ節への転移が疑われるものⅢa期:しこりが5cmを超えるものⅢb期:しこりが皮膚などに及んでいるものⅣ期:しこりの大きさを問わず、他の臓器に転移がみられるもの乳がんて何? 正しい知識を身につけたい乳がんは乳腺(母乳をつくるところ)にできる悪性腫瘍のこと。初期には食欲が減ったり、体調が悪くなるなどの全身症状はほとんどありません。唯一の変化、乳房の異変に気付かずに放置しておくと、乳腺の外にまでがん細胞が増殖し、血管やリンパ管を通って全身へと広がっていきます。乳房のわずかな変化を見逃さないことが何より大切です。しこりは、1cm〜2cmくらいの大きさになると、自分で注意深く触るとわかります。ただ、しこりがあるからといって、それが必ず乳がんであるというわけではありません。がん細胞が増え始めてからの症状としては、痛み、血液が混じったような分泌物が出る、乳首のただれ、皮膚のくぼみ、赤く腫れたりオレンジの皮のように毛穴が目立つ、脇の下のしこり、などさまざまなものがあります。藤森さんは結局、乳がん摘出手術をするための精密検査によって、同じ胸にあと2つしこりが見つかり、右胸を全摘出する決心をします。自分を奮い立たせ、手術では乳房の同時再建をしてもらおうと気持ちを切り替えました。「落ち込んでいるだけでは何も始まらない。これからどう生きていくかを考えることのほうが重要」だと気がついて。「もちろん怖かったですよ、ずっと。私は仕事柄もあって、以前から女性の体と健康、病気などについては調べているほうだったと思います。それでも、祖母が乳がんによって両胸をなくしていたこともあり、小さいときからがんを怖がっていました。それに、テレビドラマなんかだと、どうしても死んでしまうイメージが強いじゃないですか。でも実際は、早期に発見された乳がん患者の大半は生存しています。正しい知識を持っていれば、必要以上に怖がらなくて済みますし、早期に発見できるようにきちんと乳がん検診を受けておこうと考えるようになると思います。病気に関わる知識は理解するのがなかなか難しいものですが、間違った情報に一喜一憂しないよう、きちんと覚えておきたいものです」(藤森さん)乳がんになりやすい「リスク」を調べて、立ち向かう勇気を「近親者に乳がんになった人がいる人は自分もかかりやすい、と聞いたことがあると思います。研究が進むにつれて、乳がんのかかりやすさはもう少し詳しくわかってきました。乳がんについては日々、情報もアップデートされるので、今わかっていることだけでも知っておきましょう」(島田先生)乳がんの「リスク」、本当のところこれまでの研究で、乳がんに関係すると考えられる危険因子は徐々に明らかになってきています。特に、乳がんの発症は女性ホルモン(エストロゲン)の分泌と密接な関係があり、月経の回数の多さが影響していると言われます。初潮が早くて閉経が遅い人、出産・授乳経験がない人は自ずと回数が多いということになります。□ 母親、姉妹など家族にがんになった人がいる□ 授乳経験がない□ 乳がんや良性の乳腺疾病になったことがある□ 初産年齢が30歳以上 □ 身長が高い□ 閉経後、肥満になった□ 初潮年齢が早い□ 閉経年齢が遅い□ 生まれたときの体重が重い□ たばこを吸う日本乳癌学会編「科学的根拠に基づく縫う右岸治療ガイドライン2 2013年版」よりその他、家族歴はなくてもピルを10年程度使ったことがある人、不妊治療をされた女性などもリスクは上がることになります。でも、このような危険因子に当てはまる項目が多いからといって、必ず乳がんになるというわけではなく、逆に全く当てはまらないからと言って絶対に安心とも言えません。どんな人にも可能性はある、と捉えるのが賢明です。リスクファクターのうち、家族歴は特に気になるところ。お母さんや姉妹が乳がんになった女性は一般の人に比べて2倍以上、乳がんになるリスクが高いという調査報告があります。乳がんという病気そのものが遺伝するわけではないのですが「なりやすい体質」が遺伝すると考えられています。でも、がんは遺伝要因だけでなく、環境要因も大いに関係があります。環境要因というのはその人の食生活や喫煙、過度の飲酒、ストレス、生活環境など。環境要因と遺伝要因のかけ算の結果によって、発症リスクが上がると考えましょう。やはり気になる「遺伝性乳がん」近年、注目されているのが「遺伝性乳がん」。これは、正常な細胞がガン化するのを抑える「がん抑制遺伝子」が欠如したり変異したりするがんで、両親のどちらかから遺伝します。既に発見されているのは「BRCA1」、「BRCA2」と呼ばれるがん抑制遺伝子で、このどちらかの遺伝子に異常がある女性の7~8割が乳がんになるとい言われています。遺伝性乳がんの特徴は・・・◎若い年齢で発症しやすい◎乳がんと卵巣がんを併発しやすい◎男性が発症することもあるなどです。≪遺伝性乳がんの可能性チェック≫血縁者に乳がんの人がいて、次の項目にひとつでも当てはまると、一般の人よりも乳がんの遺伝子を持っている可能性が高くなります。□ 40歳未満で乳がんを発症した人がいる□ 年齢を問わず、卵巣がんを発症した人がいる□ 男性で乳がんを発症した人がいる□ 父方・母方どちらか一方の家系内で2人以上、乳がんや卵巣がんを発症した人がいるこういったチェックからBRCA遺伝子の変異が疑われる場合には、遺伝子検査が検討されることもあります。ただ、現在は健康保険適用外で、実施している医療機関は限られ、検査の前には「遺伝カウンセリング」を受けることも必要で、費用も高額になってしまいます。遺伝性がんと言えば、アンジェリーナ・ジョリーさんが、乳がんを予防するため両乳房を切除したことはまだ記憶に新しいはず。これについて、藤森さんはこう語ります。「その理由を『母親ががんだったのでリスクが高いから』と単純に受け止めてしまった人は『健康なおっぱいを取るなんてやりすぎじゃないの?』と考えたことでしょう。でも、彼女の場合はBRCA1遺伝子に変異が見つかった。その結果、生涯で乳がんが発症するリスクが87%という診断を受けたそうです。それが自分だったとしたら…? 女としての決断を迫られるほど重大なこと。誰も彼女の行動を責められないと思うんです。実は、私も遺伝子検査をしました。手術の後、ドクターに勧められてしたのですが、手術費や治療費に加えて、高額な遺伝カウンセリングと検査。医療保険に入っておいて本当によかった! と思いました。遺伝子検査は自費なうえ、手術から検査までの合計金額は、医療保険がなかったらかなりの負担です。がんのリスクと保険は切っても切り離せない、それが現実。アラフォー世代は、がん保険や女性特約など、きちんと見直したほうがいいですね。病気になると精神的にも大変だから、お金のことくらいは心配しなくてもよいように。特に、お子さんがいたり、休職しなければならない人は経済的負担も大きくなりますから。これ、大事ですよね」自分の体は自分で守る! 早期発見のためにできることは “検診”早期に発見できれば、9割以上が治る乳がん。藤森さんが自ら発見したことからもわかるようにセルフケア=自己検診はやはり大事です。自分で乳房に触れたり観察して、変化がないかをチェックしましょう。「あまり難しく考えることはありません。バスタイムに石鹸がついた手でやるか、アフターバスにボディクリームなどをなじませるのを兼ねてでもいいのです。乳房の凹凸がわかるように指を動かします。毎日触っていれば、何か異常があったときにわかりますよね。検診では医師が触診しますが、普段のあなたの胸と比べることはできませんから」(島田先生)そして、医療機関で行われる乳がん検診には次のようなものがあります。【視触診】医師が乳房を診察し、しこりの有無を判断する検査。形状や皮膚の変化を目で見て、指で乳房や腋の下などに触れ、しこりの有無を調べます。【マンモグラフィ】乳房のX線検査のこと。小さながん、石灰化のある乳がんの発見に適しています。検査の精度は、約80~90%。乳房をプラスチックの板ではさんで平らにして撮影するため、多少の痛みがあります。また、乳腺密度が高い人や若い人の場合は、わかりにくいのがデメリット。X線による放射線の被曝は、東京からサンフランシスコまで飛行機で移動中に自然のなかで浴びる放射線量と同程度なので、適切な設備と撮影方法、頻度で行えば、健康に重大な影響を及ぼすことはないことがわかっています。【超音波(エコー)検査】超音波により、乳房の病変を検査する方法。医師の触診だけでは発見できない小さいしこりや、しこりの良性・悪性の診断に用いられています。乳腺が発達していてマンモグラフィではしこりと乳腺の区別がわかりにくい人でも、超音波検査なら判別ができます。放射線被曝がないので、妊娠中の方や若い人の検査にも適しています。“検診”は何歳から? その頻度は?自治体が行う乳がん検診のガイドラインでは、「乳がん検診の対象者は40歳以上の女性、頻度は2年に1度、医師による問診と視触診+マンモグラフィ」となっています。島田先生、検診は40歳になったらやればいいのですか?「いいえ。30代でも受けてほしい人はいます。家族歴や女性ホルモン剤の使用歴など、個々で乳がんのリスクは違いますから。自治体の検診は個人の乳がんの早期発見問う観点だけでなく、日本女性を集団で見たときに一番利益の高くなることを考えたガイドラインになっています。どういうことかというと…、国民全体のがん死亡率をお金をかけすぎずに、しかも病気が手遅れにならない時期に発見する方法を考えているということ。乳がんになる頻度の多い年代に対し、早期発見の効果が証明されている方法で必要最小限の費用負担で行った対策なんですね。ですから、40歳未満であっても『多かれ少なかれ誰にでも乳がんのリスクがある。また乳がんのリスクや、乳がんを発見するために必要な検査は人によって違う』と知った人は、ぜひ乳がん検診を受けてほしいのです」(島田先生)島田先生が提案するガイドラインは…▼20代でも検診を受けてほしい人・家族、兄弟姉妹、伯父叔母、いとこなど2名以上が特に閉経前に乳がんや卵巣がんにかかったことがある人・家族歴はなくてもピルを長期間使用したことがある人・家族歴はなくても長期にわたって不妊治療をした人▼30代半ばで検診を受けてほしい人・女性全員「国の指針はあくまでの国民全体の利益を考えたものですので、稀ながんや、通常だと頻度の少ない年代のがんの検診は、国の健康対策として税金をかけて行うのは難しいでしょう。限られた大切な税金ですから、個々のリスクに対するサポートを国に求めるのが難しいのは、国民も理解しなけばいけないところです。だからこそ、私たちは一人一人が病気に対しての関心と知識をもって、自分に必要な検診があれば、自ら進んで早くからスタートすべき。家族に遺伝性がんの人がいる場合は、20代でも半年~1年に一度は、医師による視触診や適切な画像診断(マンモグラフィや超音波検査、MRIなど)を受けることが望ましいと思います。また、30代半ばで検診を受けてほしいと思うのには理由があります。現在発見される乳がんの平均径は2cm前後のしこりで発見されることが多いのですが、2cmになるまでには約10年かかります。そして現在もっとも乳がん発症が判明する年代は40代半ば。つまり、10年前、30代半ばでがん細胞が発生している方が多くいるということです。そうすると、できるだけしこりを作る前の早期の乳がんを発見するには、少なくとも30代半ばからは、コツコツと定期的な検診を続けることが必要なんです」(島田先生) また、自治体の検査が「2年に1回に視触診+マンモグラフィ」というのはなぜ? 超音波(エコー)検査はしなくてもいいの? 島田先生、実際はどうなのでしょうか?「最初はマンモグラフィも超音波も、両方受けてほしいです。家族歴やリスクなども医師と共に見直して、濃い検査を受けてみてもらいたい。そうすれば、次にいつどんな検査が必要かも、自ずと決まってきます。2回目からは、個々の乳房のコンディションやリスクに応じてできるだけ無駄を省いて必要な検査を絞ることもできます。検診を続けるには、無駄に時間やお金をかけすぎるのはもったいないですからね。40歳になれば、自治体から検診の案内が来ます。無料〜3,000円くらいなので、これはぜひ受けましょう。それと併用して、自分に必要な検査があれば自費の検診を賢く受け続けていくことが、早期発見、自分の体を乳がんから守ることになるのです」(島田先生)職場で、友達同士で乳がんを話題にしよう。乳がん検診に行こう!「乳がんで亡くなった友達のメッセージは『とにかく検診を受けて』それに尽きます。0期で発見された私が、自分の経験を公表してみなさんへ伝えていけるのも、同じく検診の大切さなんです。現に私は、最初の受診でがんではないと診断されましたから。自ら進んで2度目の検診に行かなかったらと考えると…、検診の重要性がわかってもらえると思います。それなのに、乳がん検診を受ける人の数はあまりにも少ないんです。ピンクリボン運動は知っている、さらにピンクリボンのキャンペーンやイベントに参加もしているのに、乳がん検診に行っていない、そんな人もいるのが現実。悲しいですよね」(藤森さん)ピンクリボンキャンペーンの認知度が高くなり、乳がん検診受診率も上がったといわれますが、実はまだ30数%。諸外国に比べると、日本の検診受診率がいかに低いかがわかります。 「どうして行かないのか聞いてみると、『私はまだ大丈夫』という人も少なくありません。アラフォー世代は、まだ子供も手がかかるし仕事も頑張る時期。『忙しくて自分のことなんてかまっていられないから』という人もいます。ひどいと『もし乳がんだったらコワイから』なんていう人も! 怖いから行くんですって!」(島田先生)確かにこんな調査もあります。【 なぜ検診に足が向かないのか、その理由 】 1位 受診する機会がなかったから 39% 2位 何の症状も心配なところもないから 36% 3位 撮影中痛かった(痛いらしい)から 26% 4位 費用が高いから 24% 5位 家族に乳がんの人がいないから 22% 6位 時間がないから 22% 7位 仕事が休めないから 22% 8位 どこで受けられるかわからないから 14% 9位 面倒だから 13%10位 医師や技師が男性だとハズカシイから 9%【乳房健康研究会が2013年に行ったアンケート調査】よりでも、いまこれを読んでいる人は、上のような理由で「検診に行かない」とは言えないはずです。行動を起こしましょう。検診が受けられる場所を探しましょう。▼乳がん検診が受けられる場所 By 認定NPO法人 乳房健康研究会あなたの町の乳がん検診実施状況 ▼乳がんの検査設備の整った施設リスト By 認定NPO法人 乳房健康研究会 ▼乳がん検診無料クーポン券の配布対象者 By 厚生労働省乳がん検診無料クーポン券は前年度(去年4月2日から今年の4月1日までの間)に40歳、45歳、50歳、55歳、60歳になった女性のみなさんを対象に、お住まいの市区町村から送付されます。※市区町村により、配布内容は異なります。詳しくは市区町村のがん検診担当窓口にお問い合わせください。市区町村ごとの問い合わせ先を探す↓ 島田菜穂子 先生ピンクリボンブレストケアクリニック表参道 院長。2000年、乳がん啓発団体・乳房健康研究会を発足させ、乳がん啓発団体として日本初のNPO法人認証を受ける。同副理事長。乳がん認定医、放射線科専門医、認定産業医、日本体育協会認定スポーツドクターなどの認定医資格も持つ。乳がん関連の著書、監修が多数。最近の監修は「乳がんから自分をまもるために、知っておきたいこと。」(日本医療企画)。ピンクリボンブレストケアクリニック表参道
2015年05月22日東京海上日動あんしん生命保険はこのたび、7月2日より新がん保険「がん治療支援保険NEO」(正式名称:がん治療支援保険NEO(無解約返戻金型))および「がん診断保険R」(正式名称:がん診断保険(無解約返戻金型)健康還付特則 付加)を発売すると発表した。昨今、医療技術の進歩により、正常細胞を傷つけにくい放射線治療や副作用の少ない抗がん剤など、がん治療の選択肢が増えるとともに、これらの治療方法を併用するケースも増えているという。同社は、このような最新の治療実態を踏まえて保障の充実を図るとともに、顧客の要望にあった自在性のあるプラン設計を可能とする「がん治療支援保険NEO」を新たに開発したという。また、発売以来好評を得ているという「メディカルKit R」と同様の仕組みをがん保険にも導入した「がん診断保険R」を開発した。この商品は終身にわたって保険料を払込むことで月々の保険料負担を抑えつつ、70歳までの保険料合計額から診断給付金合計額を差し引いた残額を契約者に戻す機能を備えており、業界初という商品としている(5月同社調べ)。同社は、2007年9月発売の「がん治療支援保険」の発売以来、経済的な支援にとどまらず、予防から罹患時の心のケアまで顧客を総合的にサポートする「お客様をがんからお守りする運動」を展開しきたという。同新商品の発売により、これまで以上に「お客様をがんからお守りする運動」を強化していくとしている。○商品の特長がん治療支援保険NEOa.抗がん剤治療特約の改定:抗がん剤治療は、治療期間が長期にわたるケースが多く、がん治療の中でも金銭的な負担の大きい治療方法。昨今では副作用の少ない抗がん剤が増え、抗がん剤治療を受ける患者様も増えている。そのためこのたびの改定では、万一の際に、より多くの顧客が金銭的な不安なく、抗がん剤治療を受けられるよう、対象となる抗がん剤の範囲を拡大し、保険料を引き下げたb.悪性新生物初回診断特約の新設:初めて悪性新生物(上皮内がんは対象外)と診断された場合、診断保険金を支払う。最新の治療方法は高額なものもあり、複数の治療方法を組み合わせるケースも増えている。金銭的な不安を抱えずに、最良の治療方法を選択できるよう、初回のがんに対する保障を低廉な保険料で手厚くカバーできるc.上皮内がんの診断給付金支払の改定:最新の治療実態を踏まえたa.b.の特約により、金銭的負担の重いケースに備えることができる改定を実施した上で、高額な治療費がかかることの少ない上皮内がんについては、診断給付金の支払いを保険期間を通じて1回とする(支払う診断給付金額は100%)がん診断保険R同商品は同社が2013年1月に発売した医療保険「メディカルKit R」と同様の仕組みを、がん保険にも導入した新商品。なお、「メディカルKit R」は、発売以来、販売件数40万件を突破した(3月末現在)a.70歳までの保険料がリターン(Return):70歳まで、診断給付金の支払いがない場合、払込みした保険料が全額、健康還付給付金として戻ってくる。70歳までに、診断給付金の支払があった場合でも、払込みした保険料が支払った診断給付金の金額を上回るときは、その差額が戻ってくるb.一生涯のがん保障を加入時のお手頃な保険料でリザーブ(Reserve):診断給付金の支払いがなく、払込みした保険料を健康還付給付金として全額受け取った場合、万一がんと診断確定され診断給付金を受け取った場合、いずれも保険料は加入時の金額のまま変わらず、保障を一生涯続けることができる○商品概要保障内容がんに対する保障を確保する。また、各種特約を顧客のニーズにあわせ付加できる保険料例
2015年05月19日武田薬品工業(武田薬品)と国立がん研究センター(国がん)は5月8日、研究開発に関する契約を締結したと発表した。両社は今後、研究者や医師の交流を促進し、がんの発症メカニズムなどの基礎研究を進展させ、得られた成果を臨床開発研究へ応用していくことで新たな治療オプションの探索を進めていく。また、武田薬品は、国がんが進めている産学連携全国がんゲノムスクリーニング事業「SCRUM-Japan」に参画する。「SCRUM-Japan」は全国の医療機関と製薬企業とが協力して実施するがん遺伝子異常スクリーニング事業。同事業で構築される遺伝子情報と診療情報を合わせたデータベースにアクセスすることで、新たな医薬品の研究開発を加速させることができるとしている。武田薬品は「国がんの臨床研究における知見と、当社の保有する技術基盤を融合させることで、より早く、革新的な治療を患者様と医療関係者の皆様にお届けできるものと期待しています」とコメントしている。
2015年05月11日国立がん研究センターはこのほど、コーヒーと緑茶摂取に関する全死亡リスクおよびがんや心疾患、脳血管疾患などの死亡リスクとの関係について明らかにした。同センターは、コーヒーと緑茶摂取と死亡リスクについて検討するため、多目的コホート研究を実施。多目的コホート研究では、40~69歳の男女約9万人を対象として1990年または1993年から2011年まで追跡調査した。調査から得られた結果をもとに、緑茶とコーヒーの習慣的摂取と全死亡およびがんなどの主要死因死亡リスクとの関連を調べたという。約19年(平均)の追跡期間中に1万2,874人が亡くなったが、その内訳は5,327人ががん、1,577人が心疾患、1,264人が脳血管疾患、783人が呼吸器疾患、992人が外因による死亡だったとのこと。結果を解析したところ、緑茶を一日1杯未満飲むグループを基準として比較した場合、一日5杯以上摂取したグループの全死亡リスクは、男性が「0.87」、女性が「0.83」となっており、それぞれ13%、17%もリスクが低下していることになる。また、摂取量が増えるにつれてリスクが下がる「負の相関」が見られていた。死因別では、がん死亡との関連は男女とも見られなかったが、心疾患による死亡は男女ともリスクが低くなっており、脳血管疾患と呼吸器疾患については男性でのみ低いという結果だった。緑茶摂取で心疾患などによる死亡リスクの低下が確認された理由について、同センターは緑茶に含まれ、血圧や体脂肪、脂質の調整作用があると言われる「カテキン」の効果によるものではないかと推定している。コーヒー摂取と死亡リスクの関連についても、同コホート研究による追跡調査から明らかになっている。研究開始時のコーヒーを飲む頻度に関する質問への回答から、調査対象者をコーヒーを飲む量に応じて5グループ(「ほとんど飲まない」~「一日5杯以上飲む」)に分類し、その後の全死亡およびがんや心疾患などによる死亡との関連性を調べた。その結果、コーヒーをほとんど飲まないグループを基準として比較した場合、一日3~4杯飲むグループの全死亡リスクが最も低くなっていた(0.76)。すなわち、コーヒーを1日3~4杯飲む人の死亡リスクは、全く飲まない人に比べ24%低いことになる。また、飲む量が増えるほど死亡リスクが下がる傾向があることも統計的に有意だった。死因別についても心疾患、脳血管疾患、呼吸器疾患については、コーヒー摂取による有意なリスク低下が見られた。同センターは、血糖値を改善し、血圧を調整する効果があるとされているクロロゲン酸や、血管内皮の機能を改善する効果があるとされているカフェインがコーヒーに含まれていることが、今回の結果につながったのではないかと推測している。ただ、同センターは「一日4杯までのコーヒー摂取は死亡リスク低下と有意な関連があることが示唆されました」とする一方で、「この研究で用いた質問票では、缶コーヒー、インスタントコーヒー、レギュラーコーヒーを含むコーヒーの摂取頻度を尋ねており、またカフェインとカフェイン抜きコーヒーを分けてはいませんので、この点をご留意ください」としている。なお、詳細は国立がん研究センターのホームページで確認することができる。※画像はすべて国立がん研究センターより
2015年05月07日国立がん研究センター がん対策情報センターはこのほど、2015年のがん罹患(りかん)数と死亡数の予測を明らかにした。がん情報の総合サイト「がん情報サービス」で公開している。同予測の「罹患数」とは、新たにがんと診断されるがんの数のことで、「死亡数」はがんで亡くなる人の数を指す。同センターでは、2015年の予測がん罹患数は98万2,100例(男性56万300例、女性42万1,800例)で、2014年の予測値より約10万例増加すると予測した。部位別で見ると、大腸がんと前立腺がんの罹患が増加し、男性では前立腺が最多となっている。同センターでは、2014年予測値と比べて罹患数が増加した要因として、高齢化とがん登録精度の向上を挙げている。前立腺がんの増加も、PSA(prostate specific antigen: 前立腺特異抗原)検診の普及が寄与していると考えられている。死亡数は、37万900人(男性21万9,200人、女性15万1,700人)。2014年の予測値より約4,000人の増加で大きな変化はないという。部位別で見ると、全体では大腸の順位が上がっているが、男女別での順位変動はなく2014年と同様の傾向にある。1980年頃からのデータと比較すると、罹患数、死亡数とも胃がんと肝臓がんの順位が下がり、肺がんと大腸がんの順位が上がっている。胃がんは高齢化の影響を除くと罹患数・死亡数は少ない傾向にあるが、高齢化の影響で増加または横ばいとなっているという。前立腺がんとともに、女性の乳がんの罹患率も高い(乳がんのデータは2003年以降)。なお、予測精度は主要部位の5年間の予測について、実測値と比較することで検証されているが、予測不能な要因などにより誤差が伴う場合もある。また、前立腺がんの罹患は、検診の動向などによって変動がありえるとのこと。
2015年04月30日国立がん研究センター(国がん)は4月28日、2015年に新たにがんと診断される患者の数(罹患数)と死亡数の予測を発表した。この予測値は地域がん登録数による1975~2011年の推計、人口動態統計がん死亡数1975~2013年の実測値、および将来推計人口をベースに算出されたもので、2014年より公開されている。まず、予測がん罹患数は98万2100例(男性:56万300例、女性:42万1800例)で、2014年予測値より10万例増加した。部位別罹患数では、大腸がん、前立腺がんの罹患が増加し、男性では前立腺がんが最多となった。国がんは罹患数の予測値が増加した要因として、高齢化やがん登録精度の向上などを挙げた。一方、死亡数については37万900人(男性:21万9200人、女性:15万1700人)と予測され、2014年の予測値から約4000人増、2013年の実測値からは約5000人増となった。部位別では肺、大腸、胃、膵臓、肝臓の順に死亡数が多いという予測となった。
2015年04月28日国立がん研究センターは4月2日、乳がんの脳転移にがん細胞から分泌される微小な小胞エクソームが関わっていると発表した。同成果は分子細胞治療研究分野の富永直臣 研修生、落合孝広 分野長の研究グループによるもので、4月1日付けの米科学誌「Nature Communications」電子版に掲載された。乳がんは比較的予後の良いがんとして知られる一方、治療後、長期間を経て脳転移が認められることがある。脳への転移は予後に大きな影響を及ぼしQOLを著しく低下させるが、そのメカニズムについてはわかっていなかった。同研究では、がん細胞が分泌する直径約100nmの顆粒(エクソーム)が、脳血管で物質透過を制限しているBBBという生体バリア構造を破壊していることを突き止めた。エクソームに含まれるmiR-181cというマイクロRNAがBBBの構造を変化させた結果、バリア機能が失われ、がん細胞が容易にBBBを通過し、脳転移を引き起こしていると考えられるという。がんの脳転移メカニズムを明らかにした今回の成果は今後、早期発見および新規治療法の開発への応用が期待される。
2015年04月02日国立がん研究センターはこのほど、日本のがん罹患(りかん)数・率の最新推計値を公表した。同推計値は、国立がん研究センター がん対策情報センターが2011年にがんに罹患(りかん)した全国推計値を算出したもの。集計元のデータは、地域のがん対策に役立てるため、都道府県が1975年より登録している「地域がん登録」のデータで、2011年分においては40県(2010年は30県)が登録を行ったという。この登録数の増加と登録精度の向上により、従来の罹患数・率だけではなく、各都道府県における主要部位の標準化罹患比(※)および標準化死亡比(※)を算出し、それを地図上に示す試みを今回初めて実践したという。※年齢構成の異なる集団間の罹患数・死亡数の比較に用いられる方法で、標準とする人口集団と同じがん罹患率であるとしたら、その集団で何人のがん患者が発生するかを予測し(期待値)、実際の罹患数(死亡数)をその期待値で割ったものが、標準化罹患(死亡)比となる。集計結果による2011年の全国のがん罹患数は下記の通り。■男性49万6,304人■女性35万5,233人■合計85万1,537人同センターによると、2010年の推計と比較した各部位の罹患数は、男性のみ変化があったという。2010年時に4位だった「前立腺」が今回は2位となっている一方、女性は順位変動がなかった。各部位の標準化罹患比は下記の通り。厚生労働省の「平成23年人口動態統計月報年計」において、男性の「死亡数・死亡率」(人口10万対)が最も高かった「肺がん」。今回の集計では、男性では北海道と青森県、また近畿圏で、標準化罹患比と標準化死亡比ともに高く共通した分布が見られた。 女性では男性ほどの偏りは見られなかったが、北海道および近畿以西で罹患、死亡ともに多い点は共通していた。男女共に一定規模で死亡数が多い「胃がん」に関しては、標準化罹患比は、男女共に日本海側の県に集中している傾向が見られた。 標準化死亡比よりも、標準化罹患比においてその傾向が強く出ていた。女性に多い乳房および子宮がんのデータも公表された。女性の乳房に関しては、はっきりとした地域の偏りは見られなかった。罹患数が増えているという前立腺も、地域による偏りは確認されなかった。同センターは今回の発表について、「罹患比と死亡比との差異や、地域差を観察することで予防、早期発見、治療を含む都道府県がん対策に役立てられます」としている。なお、詳細は同センターでも公開している。
2015年03月27日アンジェリーナ・ジョリーが3月24日(現地時間)、「ニューヨーク・タイムズ」紙に寄稿、卵巣と卵管の切除手術を受けたことを公表した。遺伝子検査を受けた際、がん発症リスクが高いことが判明したことから、2年前に乳房切除手術を公表したアンジェリーナ。乳がんのリスクは87%、卵巣がんは50%だったが、母親と祖母、叔母をがんで亡くしていることから、決断したという。2週間前、年に1度受けている血液検査で気になる点があった。PET/CT検査を受けた結果、異常なしだったが、この時に決意し、1週間前に手術を受けた。同様のリスクを抱えた女性たちと情報を共有したいと考えていたアンジェリーナは、術後の自分に更年期の症状が訪れていることや、肉体的な変化が起きるだろう、と綴っている。切除手術以外にも選択肢はいくつかあることを強調したうえで、アンジェリーナは「アドバイスを求めて、選択肢について学んで、自分にとって正しい判断をすることはできます。知識は力です」と締めくくっている。(text:Yuki Tominaga)
2015年03月24日機能性食品「AHCC」の研究・製品化などを行っているアミノアップ化学は17日、女性特有の病気である「子宮頸がん」の基礎知識をはじめ、子宮頸がんの予防効果が期待できるAHCCの最新研究結果や予防方法のアプローチなどをまとめたニュースレター「AHCC通信 Vol.3」を発行した。子宮頸がんは、毎年約3,000人以上が亡くなっているといわれる深刻な病気。とりわけ、がんの中でも330代までの若い患者が多く、重症になると子宮摘出など大がかりな手術が必要となり、妊娠をすることができなくなったり、手術後の障害も多いといわれている。また、がんになっても進行するまで無症状であることが多く、予防・早期発見には若いうちから定期的に子宮がん検診を受けることが大事とのこと。子宮頸がん患者の99%は、HPV(ヒトパピローマウイルス)に感染していることから、HPVが原因ウイルスであると考えられている。HPVは女性の約80%が知らない間に感染しているといわれ、20~40代の若い年齢での感染者数が増加しているとも言われている。こうした子宮頸がんに対して、予防効果が期待されているのが「AHCC」だ。AHCC(Active Hexose Correlated Compound : 活性化糖類関連化合物)は、シイタケ属に属する担子菌の菌糸体培養液から抽出されたα-グルカンに富んだ植物性多糖体の混合物。健康食品・サプリメントとして、日本のみならず、ヨーロッパ、アメリカ、アジア、オセアニアなど広範囲で販売されており、現在では統合医療の一手段としても取り入れられている。2014年10月29日に米国・ヒューストンで行われた「第11回アメリカ癌統合医療学会(SIO2014)」においては、「ヒトパピローマウイルス(HPV)に感染した女性にAHCCを投与するとウイルスが死滅する」という研究結果も発表され注目を集めている。HPVを除去する医薬品は未だ開発されていないため、この研究では更に大規模な試験を計画しており、AHCCの作用とHPV死滅の因果関係解明が期待されている。なお、3月28日に神戸学院大学にて「ハイリスクHPV感染に対するAHCCによる治療の可能性」に関するセミナーが行われるほか、大阪大学にて「サプリメントの臨床応用への薬剤師の役割」に関する講演が29日に実施される予定となっている。
2015年03月23日リプロセルは3月9日、国立がん研究センター(国がん)とヒト正常上皮細胞とがん細胞の培養試薬に関する共同研究契約を締結したと発表した。同研究では、これまで樹立や培養が困難だった各種がん細胞および正常上皮細胞を安定的かつ高効率に培養することが期待される。同社は「上皮細胞向けの培養試薬は身体のさまざまな部位に存在する、あらゆる上皮細胞を対象としております。また、がん細胞向けの試薬も、がん研究の障害であった培養の困難を克服する画期的なものであります」とコメント。次世代シーケンサーを用いた臨床検査事業におけるがん診断サービスへの取り組みに着手しているとした。
2015年03月11日国立がん研究センターは3月10日、次世代シーケンサーによるマルチプレックス診断パネルを取り入れた産学連携がんゲノムスクリーニング「SCRUM-Japan」を立ち上げたと発表した。同事業は、これまで実施してきた肺がんが対象の「LC-SCRUM-Japan(2013年開始)」および大腸がんが対象の「GI-SCREEN-Japan(2014年開始)」という2つの全国規模のゲノムスクリーニングネットワークを統合したもの。実施期間は2015年2月~2017年3月31日を予定しており、4500例の登録を目指す。現時点ではアステラス、協和発酵キリン、アストラゼネカなど計10社が契約を締結済みで、今後数社増える予定だという。また、医療機関側は全国で計200施設が参加する。患者の検体からがんのドライバ遺伝子を特定し治療薬を分子レベルから検索するクリニカルシーケンシングでは、各遺伝子ごとに有効な治療薬を検索すると時間がかかる。同プロジェクトでは、米サーモフィッシャーサイエンティフィックが開発した「Oncomine Cancer Research Panel(OCP)」というマルチプレックス診断パネルを採用。OCPは140種以上の遺伝子を同時に解析できるほか、微量検体から解析することができるというメリットがある。「SCRUM-Japan」では、全国の医療機関で収集した検体を遺伝子解析し、治療の標的となる特定の遺伝子に異常を持つがん患者を発見する。異常が発見された患者は対応する治療薬への臨床試験へ参加できる可能性もあり、新たな治療機会を得ることができる。収集された患者の遺伝子情報と診療情報は、治療選択の参考として用いられるほか、匿名化された上でデータベース化され、今後のがん研究に活用されることになる。今後、「SCRUM-Japan」を通じてマルチプレックス診断薬の臨床応用の実現や、有用な治療手段のない希少な遺伝子異常を持つ患者に新たな治療選択が提供可能となることが期待される。
2015年03月11日肌のハリやシワ、髪、身のこなしなどから想像した年齢と、実年齢があまりに違ってビックリ…なんていう経験、誰にでもあるのでは? 同じアラフォー女子なのに、20代に負けない若さを保っている人もいれば、早くも老化を感じさせる人もいます。その差はどこから来るのでしょう? 「それはズバリ 『卵巣の働き』 の差です!」と答えてくださったのは、大人の女性の健康に詳しい婦人科医の小山嵩夫先生。見た目の若さと卵巣の関係について、より詳しく伺いました。小山嵩夫先生 プロフィール婦人科医。専門は生殖内分泌学、女性の健康増進。日本のHRT(女性ホルモン補充療法)の第一人者として知られる。1996年、女性の健康管理を目的としたクリニック「小山嵩夫クリニック」を銀座に開業。「NPO法人 更年期と加齢のヘルスケア」および「一般社団法人 日本サプリメント学会」理事長として、更年期前後から元気に生きるための啓発活動を行っている。著書に『遺伝子を調べて選ぶサプリメント』『女性ホルモンでしなやか美人』(ともに保健同人社)、『40歳であわてない! 50歳で迷わない!もっと知りたい「女性ホルモン」』(角川学芸出版)など。 見た目の若さは、「卵巣」の若さに比例する!「女性美はもちろんですが、若さを保つのは女性ホルモンに他なりません。これこそ最大の要。生殖に関わる器官だけでなく、皮膚や髪、骨、脳など全身に作用して、女性らしさと同時に健康と若さをキープする役目を担っています。でも、女性ホルモンはどこから来るか知っていますか? 勝手に湧いてくるわけでもどこかで作られるわけでもなく、卵巣から分泌されるものなんですよ。そう、元締めは卵巣です。卵巣が若くバリバリ働いてくれなければ、女性ホルモンを正しく分泌することはできません」と小山先生。最近「30代で子宮力が落ちる」などという言葉を耳にしますが、これは正しい言い方ではありません。「子宮力」とは、脳の指令に従って卵巣が女性ホルモンを出し、これよって子宮が妊娠の準備をしたり月経を起こしたりする、一連の動きのことを指しています。若く保つべきは、子宮ではなく卵巣なのです。閉経する年齢にかなりバラツキがあることからわかるように、卵巣の老化にも個人差があります。卵巣が老化し始めの頃は自覚症状が出ないため、うっかりしていると水面下で老化がどんどん進んでしまうことになります。まずは、あなたの卵巣がどれくらい若いかをセルフチェックしてみましょう。卵巣の老化が加速するターニングポイントは、37歳!女性の約9割は45〜55歳までの間に閉経を迎えます。そのため、一般的にこの時期を「更年期(閉経周辺期)」と呼ぶようになりました。それは卵巣の機能が目に見えて衰える時期です。ただし、更年期になって突然老化するわけではなく、30代から早くも始まっていると考えられています。さて、あなたの卵巣は元気にバリバリ働いていますか?▼若さのバロメータ「卵巣機能」をセルフチェック!以下の項目のうち、当てはまる点数を合計してください。さあ、どの程度当てはまりますか?*程度の目安 ◎=確実に当てはまる ○=なんとなく当てはまる △=ときに当てはまる ×=当てはまらない【合計点による評価】0~25点:卵巣機能は良好です。40歳を過ぎたら年1回は婦人科検診を。26~50点:卵巣機能に不安があります。生活習慣を見直してみましょう。51~65点:卵巣機能が落ち、更年期の状態です。婦人科の受診をおすすめ。66~80点:更年期症状があります。他に何らかの疾病が隠れている可能性があるので、婦人科で相談しましょう。81~100点:更年期症状の他に、心身症的な疾病の可能性もあります。長期的な対応が必要です。 「40歳前後の女性が、20代のように卵巣が若いということはほとんどありません。卵巣は肌や器官などと同じように、年相応に老けていくんですよ。どちらかと言えば、卵巣は他の器官より早めに老化現象が始まるといってもいいくらいです」小山先生によれば、卵巣はだいたい次のような段階を経て老化していき、閉経を迎えると考えられているそうです。●第1段階:31歳頃から、卵子の質が低下し始める。●第2段階:35歳頃から、活動的な卵胞の数が減少し、妊娠しにくくなる。●第3段階:41歳頃から、活動的な卵胞が30歳代の10分の1以下になり、妊娠率が著しく低下する。●第4段階:45〜55歳頃、月経不順になり、やがて閉経する(更年期)。第2~第3段階にいるアラフォー女子は、更年期のすぐ手前にいます。ルックス的にも肉体的な若さにも影響が出てもおかしくない時期。卵巣の状態が気になり始めたら、そろそろ更年期へ向けての準備を始めましょう。自分の卵巣年齢、体内年齢を知ることがとても大切さて、誰にでも訪れる更年期を前にして、アラフォー女子がしておきたいことはなんでしょう? 小山先生が教えてくれます。「大きなテーマは『健康評価』です。卵巣の老化は自然現象とも取れますが、良くない生活習慣や栄養不良などにより、老化のスピードは確実に速くなります。特に、ストレスや過度なダイエット、体脂肪過多、血液循環の不良、ストレス、喫煙は、卵巣の老化の直接の原因に。ですから、自分の体にきちんと目を向ける習慣をつけることですね。病気を見つけるためでなく、若さや健康の度合いを把握するためです。体組成計を購入して、体重、体脂肪率、それに筋肉量や水分量、内臓脂肪レベルなどを記録するだけでも大きな進歩。スポーツクラブやエステサロンなどに精密な体組成計があれば、進んで利用するようにしましょう」そして、アラフォーからは婦人科検診を受けることは必須。小山先生のクリニックのように、さらに抗加齢的な検査を加えたスペシャルなレディースドックやエイジングケアドック(老化度測定検査)を受けられる医療機関も増えているので、上手に利用したいものです。【ベーシックな婦人科検診(女性検診)の主な内容】●乳がん検査(マンモグラフィ、乳腺エコー、乳房視触診など)●子宮がん検査(子宮頸部細胞診、子宮体部細胞診、経腟エコーなど)【老化度測定検査(エイジングケアドック)のオススメ検査】加齢マーカー(IGF-1、DHEAS)、AGEリーダー(糖化度測定)、抗ミュラー管ホルモン(AMH)値測定、女性ホルモン値検査、抗酸化ストレス度測定、体組成分析老化度測定検査のうち、抗ミュラー管ホルモン(AMH)の値は、不妊治療の分野ではずばり「卵巣年齢」と呼ばれている数値。これは卵巣の中にある「卵子のもと」から分泌されるホルモンで、濃度を測定することで卵巣が何歳くらいの状態か推定することができます。専門的に知りたい人は、こういった検査を受けてみるのも手。実年齢以上に若い卵巣を目指して、そろそろ本気で自分の体と向き合いましょう。
2015年02月10日国立がん研究センターは1月29日、国際共同ゲノムプロジェクト「国際がんゲノムコンソーシアム(IGC)」において、胃がん、胆道がんのプロジェクトを新たに立ち上げると発表した。IGCは、世界各国を通じて臨床的に重要ながんを選定し、国際的な協力のもと少なくとも各500例の高解像度のゲノム解析を行い、がんのゲノム異常の包括的カタログを作成、網羅的がんゲノム情報を研究者間で共有・無償公開することでがんの研究および治療を推進することを目的としている。現在、アジア、オーストラリア、ヨーロッパ、南北アメリカの17カ国が参画し、73種のがんについてプロジェクトが進められており、日本では国立がん研究センター、理化学研究所、東京大学が共同で、肝細胞がんを対象とした研究が行われている。新たにスタートする胃がんは、日本において罹患数が最も多いがん腫で、大規模なゲノム解析を行うことで、分子治療・診断開発を目指した日本人特有のゲノム異常の同定することなどを目標とする。胆道がんは東アジアで特に頻度が高いことが知られており、国立がん研究センターでは2013年11月には新規FGFR2融合遺伝子を標的とする臨床試験が計画されるなど成果を挙げている。今回さらに徹底的な解析を行うことでさらなる治療標的の同定とその臨床開発を進めていくほか、同じく胆道がんプロジェクトが始まったシンガポールとも協力して発がん要因の解明を目指すとしている。
2015年01月29日国立がん研究センターは1月20日、肺がんの悪性化に関る新たな分子メカニズムを解明したと発表した。同成果は、同センター難治進行がん研究分野の江成政人 ユニット長らの研究グループによるもので、米国科学アカデミー紀要に掲載された。同研究では新たに、肺がん細胞から分泌される因子によってがん周辺間質の主要な細胞である線維芽細胞のがん抑制因子p53の発現が抑制されることを発見。p53の発現が低下した線維芽細胞では、TSPAN12というタンパク質が増加し、線維芽細胞とがん細胞との細胞間接触依存的に肺がん細胞の浸潤能および増殖能を促進していることが判明した。さらに、TSPAN12は分泌性因子であるCXCL6の発現を誘導し、これら線維芽細胞由来の分泌性因子も肺がん進展に協調的に働くことも明らかとなった。今後、TSPAN12およびCXCL6はがん周辺の間質の有用な治療標的となり得ると考えられ、これらのタンパク質に対する抗体、ペプチド、低分子化合物などが、既存の抗がん剤との併用で治療効果をもたらすことが期待される。
2015年01月20日