コラボ商品企画スタート。発達ナビユーザー×フェリシモ座談会開催!Upload By 発達ナビ編集部フェリシモでは障害のあるお子さんと家族に向けた「チアフルスマイル」企画が購入者から好評を得て話題に!今回の第2弾の商品制作を発達ナビユーザーと進めています。2019年夏の商品化を目指すのは、発達凸凹親子のおでかけをラクにする「本当に欲しいサポートグッズ」です。2018年12月に発達ナビユーザー450名以上に協力いただいたアンケート結果を参考に、商品化するアイテム候補を絞り、さらにアンケートで同時募集したモニターの皆さんが参加する座談会を実施しました!このコラムでは、座談会の様子や、企画がすすめられている商品について紹介します。<アンケート調査対象について> 「LITALICO発達ナビ」掲載の上記コラムでリンクしたアンケートフォームにて回答いただいた発達障害の当事者455名の回答を集計しました。(調査期間:2018年12月8日~12月25日) ※設問によっては455名全員が回答していないもの、複数回答可のものがあります。 ※調査結果の構成割合は四捨五入をしているため、合計が100%にならない場合があります。2019年1月17日(木)、神戸三宮にあるフェリシモ本社で、フェリシモ×発達ナビのコラボ商品についてのモニター座談会が開催されました。出席したのは、関西・中部地方在住の発達ナビユーザーで、発達が気になるお子さんを育てる8名です。発達ナビユーザーへのアンケート結果を参考に、たくさんの候補の中から次の5つの商品に絞り込んだ上で、モニターの皆さんにサンプルや図案などを見てもらいました。そして、率直な意見やさまざまなアイデアをいただくことができました。■ヘルプマークホルダー■ネームタグのチクチクを解決するタグカバー■リュックの中のごちゃごちゃを解決するリュックインナー■レジの前でもたつかない財布■締めつけが苦手でもOKなシームレス靴下それぞれのアイテムについて、フェリシモの開発担当からのプレゼンや、モニターの皆さんとの意見交換が行われました。Upload By 発達ナビ編集部発達ナビユーザーへのアンケートでは、31%が持っていると回答した「ヘルプマーク」。ですが、持っていても実際に使っている人は約65%にとどまっています。理由はさまざまですが、使いづらい、なくしてしまう、ヘルプマーク自体の認知度が低いといった理由も目立ちました。Upload By 発達ナビ編集部・かばんにつけはずしする際に、つけにくく、はずしづらかった。症状などを記すシールをどこに貼っていいのか、どちらが裏表なのか分からなかった。周囲の認知度も低かったため自宅保管している。・子どもがすぐになくしてしまいそう。何に困ってるのかを結局は分かってもらえないし、説明が難しい。また、障害があることが分かることで、逆に犯罪に巻き込まれたりするのではないか?という危険を感じているという声も。ヘルプマークには、何かあったときに連絡が取れるよう、個人情報を記載できるシールを貼ることができますが、個人情報が外から見えてしまうことへの危惧もあるようです。Upload By 発達ナビ編集部こうした意見を受けて、ヘルプマーク用のホルダーについてサンプル案を作成し、モニターの方たちの意見を聞きました。可愛いキャラクターデザインのもの、スライド式、かばんへのつけ替えがラクなものなど、複数のサンプルを見ながら、活発な意見が交わされました。・子どもが持っても壊れにくく、防水仕様で、当たってもケガしない形状がいい・障害があることをはっきり見せたい人と、必要なとき・場所などでだけ見せたい人がいるから、それぞれのニーズにこたえられるデザインがいい・個人情報は記載しておきたいけれど、ぱっと見では分からないようなデザインの工夫が欲しい。正面からは見えるけれど横からのぞき込んでも見えないようなカバーをつけたらよいのでは?など、具体的なアイデアが出されました。アンケートでも半数以上の人が「非常に気にする」「気にする」と回答した、洋服のタグについても、話し合われました。Upload By 発達ナビ編集部洋服のネームタグを切り取ったり、上から肌触りのいい布で覆うなどの対策をしているご家庭も多く、「きれいに切り取れない」「縫いつけが大変」という声があげられました。また、隠すための布のデザインがおしゃれだといいという声も。Upload By 発達ナビ編集部座談会では、肌ざわりが確認できるよう生地のサンプルや、縫いつけが不要な生地の見本、デザイン案などの資料をもとにディスカッション。・(縫いつけるのは大変なので)アイロンで貼りつけたい。でも、ごわつく生地はダメ・肌着だけでなくアウターのタグ対策もできるように、ニットやナイロンなどの洋服にも対応できるようにしてほしい・名前が書けるといい・制服用に、可愛い色柄のものだけでなく、白・黒も必須といったアイデアも出されていました!可愛くてやわらかな肌触りで、縫いつけ不要のタグシールカバー…ぜひ実現させたいです。Upload By 発達ナビ編集部「バッグの中身がすぐ取り出せなかったり、入っているものが分からず忘れ物をしたりして、困った状況はありますか?」という問いに、460人中356人、約77%の人が「はい」と回答。トートバックより、お子さんが持つことが多いリュックの対策ができたらという声が多くありました。この「困りごと」を解決できるよう考えられたのが、リュックインナーです。座談会では、・ポケットはすべて色や形を変えてほしい。同じような色や形だとどこに何を入れたのか忘れてしまう。ポケットの中に何を入れるのかが分かるような写真カードが入れられる仕様にしてほしいというように、忘れっぽさをフォローしてくれる形状への希望がたくさんあがりました。・ペットボトルを入れる場所をつくり、防水にしてほしいという声も複数。これは、お子さんがキャップをするのを忘れてしまい、バッグの中が水浸しに…という経験から生まれた意見です。将来の自立に向けても、買い物や金銭管理を自分でできるようになってほしい…そんな保護者の皆さんの気持ちが感じられた、財布についてのご意見。Upload By 発達ナビ編集部アンケートでも「レジ前でもたつくのが改善されたらうれしい」という意見が多くあげられました。特に小銭のやり取りに苦戦することから、座談会ではお財布の形状についてのアイデアだけにとどまらず、・お札で払ってしまい小銭がたまりがち。小銭を入れておく場所が自宅にあるといいと、お財布だけでなく、セットでつかうアイテムの話まで発展。生活動線を幅広くとらえた意見も出ました。また、手先の不器用さがあってもあけやすいがま口の金具の形や、ファスナーの形状についても、具体的にヒアリングすることができました。レジ前でもたつかない財布は、子どもだけでなく、お子さん連れで買い物するときにさっと会計したい保護者にとっても便利なグッズになりそうですね。Upload By 発達ナビ編集部また、アンケートの自由回答などでも多くあげられていた「洋服の締めつけが苦手」という声に応えて開発を考えている、シームレス靴下についても意見交換がされました。座談会では、締めつけが苦手なお子さんのママから支持する声がある一方、「ゆるい靴下で、靴の中でもたつくとそこが気になってしまう場合もある」と、ぴったりフィットするほうがいいという意見も出されました。困っている人のためのアイテムを、社会のスタンダードにしたい「いろいろな局面で困りごとにぶつかったり、生きづらさはあるけれど、何かの助けがあることでまわりの環境がちょっと優しくなれたり、トラブルが減って笑顔を増やすことができると思う」(京都府ゆきゆき様)「使いやすいものをという要望を詰め込んだ機能的なものであっても、ダサい、可愛くないものは望みません。フェリシモならではの+可愛さはすべての商品においてあってほしい。ユニバーサルデザインで障害がある人に寄り添ってつくったものが、他の多くの人にとっても便利なものになり購入してもらえるのは、大企業のなせる業で素敵だなと感じました」(兵庫県くるみちょこ様)これは、座談会に参加してくれた発達ナビユーザーから、座談会後に寄せていただいた言葉です。便利で快適を目指す服飾雑貨を広く手掛けるフェリシモとのコラボだからこそ、さまざまな意見を反映したバリエーション豊かな商品づくりができる。そしてその商品は障害や特性がある人だけでなく、どんな人にとっても「ちょっと便利」「使いやすい、着やすい」アイテムとなって、世の中のスタンダードとして広まっていくといいなと改めて感じることができました。発達ナビユーザーの声を、もっともっと聞かせてください!フェリシモとのコラボ企画の進捗は、今後も随時コラムやSNSで紹介していく予定。4月頃には、サンプルモニターの報告などを発達ナビやフェリシモのFacebookやインスタグラムなどでも随時ご紹介していきます。お楽しみに!また、今回のコラムを読んで「こういう工夫があると嬉しい!」という声があったら、ぜひ「みんなのアンケート」で教えてもらえるとうれしいです。発達ナビユーザーの皆さんと一緒に、発達凸凹による困りごとをサポートでき、毎日を楽しく・ストレスなく過ごすことができる商品を開発していきたいと考えています!取材協力・写真提供/株式会社フェリシモ便利で快適な自社企画商品を中心に、独自の視点でセレクトした国内外の商品やサービスをカタログやウェブなどの独自のメディアで販売しています。ファッションから生活雑貨、手づくりキット、美容関連、食品など幅広い商品を展開しています。ホームページフェリシモCCP(チャレンジ・クリエイティブ・プロジェクト)
2019年02月21日「訪れるどんな子どもにも、楽しんでもらえるように」。仕事体験テーマパーク・カンドゥーでのスタッフ研修Upload By 発達ナビ編集部仕事体験テーマパーク「カンドゥー」は、3歳から15歳のお子さんが、モデルや警察官、パイロットをはじめ、約30種類の仕事を体験できる施設。日々、たくさんのお子さんが遊びに来ますが、その中には障害や病気のある子もいます。また特別支援学校や特別支援学級の校外学習の場として利用されることもあります。こうした中、「訪れる子どもたちに楽しんでもらいたい」と考えながらも、障害特性ゆえの困りごとに対して、どんな関わり・サポートをすればよいのかわからずに悩むスタッフも少なくありませんでした。そこで、発達障害をより深く理解し、多様な子どもたちが安心・安全に楽しめるような関わり方を身につけられるよう、スタッフ向けの研修を実施しました。研修には、現場で実際にお子さんたちと接するスタッフを中心に約50名が参加。講義だけでなく、グループワークやロールプレイを通して、「こんなとき、どんな風に関わったらいいのか」を体感していきました。2018年7月に研修が行われてから約半年後となる12月下旬、編集部は再びカンドゥーを訪れ、カンドゥーの安武覚さん(イオンモールキッズドリーム合同会社職務執行者副社長)と研修を受けたスタッフを取材しました。Upload By 発達ナビ編集部「私自身にとって、発達障害はとても身近に存在しています。1年数か月前にカンドゥーに着任したとき、“どんな子どもたちも無理なく楽しめる場にしたい”と強く思い、研修を企画しました」と語る、安武さん。カンドゥーでは、複数の子どもたちがグループとなり、一緒にお仕事を体験します。ですが、発達障害がある子にとって一斉指示を聞いて行動することの難しさや、パニックになってしまった場合に、「もっとソフト面で対応できることがあるのではないか」と考えたのがきっかけでした。Upload By 発達ナビ編集部では、実際に研修を行って、スタッフはどんなふうに受け止め、意識やサービスはどのように変わったのでしょうか?そこで、研修に参加したスタッフに話を伺いました。「研修を受ける前までは、“ハンディ”があるお子さんにどう対応したらいいのか戸惑うこともありました。でも研修で、“ハンディではなく特性”があるんだ、と考えられるようになりました」という添野さん。「暗いところが苦手、初めての場所が苦手など、お子さんによって感じ方や苦手なことは違います。研修をきっかけに、お子さん一人ひとりの状況を見て『なにか苦手なことがありますか?』など、お子さんや保護者の方に確認することが増えました。以前は、マニュアルにないことをやってもいいのかな?と迷う場合もありましたが、そういう迷いがなくなりました。たとえば、ファッションショーのお仕事ではお子さんに衣装を選んでもらいますが、お話するのが得意ではないお子さんの場合、着たい衣装を口では伝えるのが難しかったので、指差しで選択しやすいような環境をつくり、希望を伝えてもらうなどしました」大家さんも、研修を受けて、自信をもって対応ができるようになったと言います。「私は、ラジオ局のスタッフをすることも多いのですが、ラジオ番組の台本は文章量も多く、言葉遣いも丁寧です。文字を読んだり、音読するのが難しいお子さんの場合は、無理に台本通りに読んでもらわず、簡単なセリフにアレンジしたり、(スタッフが台本の)文字を指さしながら、ゆっくり読んでもらったりします。一言でもセリフが言えると、ラジオ番組の様子を録音したCDに声が残るので、記念にもなりますから」また、お話が苦手なお子さんへ、スタッフがどのように声かけするかによって、一緒に参加しているほかのお子さんの受け止め方も変わるとも感じているそう。「みんなが大らかに楽しめるよう、引っ張っていけるスタッフでありたいと思います」安武さんはこのようなスタッフの様子に、驚いたそう。「スタッフは、決められたタイムスケジュールの中で進行し、各企業の理念や魅力も伝えるというミッションがあります。その中で、一人ひとりに寄り添おうと自発的に考えられる柔軟性を持っていることに改めて気づかされました。研修を受ける前から持っていた寄り添う姿勢を、 “自発的に動いていいんだ”“お子さんそれぞれのちがいに寄り添っていいんだ”と、研修を受けたことで背中を押すことができたのではないかと感じました」ただ、スタッフ全員が研修を受けられたわけではないし、個人差もあるという安武さん。研修の内容を他のスタッフにシェアしたり、こんなときはどうすればいいの?とスタッフの間で聞く機会が増えたりという変化が生まれ、少しずつ変わってきているという実感があるそうです。2019年度も、研修などの機会をつくり、ソフト面での配慮をより充実させていきたいと、語ってくださいました。一人ひとり違う個性を、認め合える企業へ。ミュゼプラチナムの社員研修Upload By 発達ナビ編集部2018年度、ミュゼプラチナムにおいて、社員向け研修を複数回実施しました。研修の対象は、ブロック長やマネージャー、店長など、現場をまとめるリーダー的な社員。研修では、発達障害についての知識を深めるだけでなく、障害の有無に関わらず、相手の立場に立って考えることの大切さを感じられるワークなども行いました。そして、さまざまなお客さまへの関わりかたや、スタッフ同士のコミュニケーション、チームワークについて考え、学ぶ機会として研修を活用いただきました。Upload By 発達ナビ編集部ミュゼプラチナムは全国で177店舗の美容脱毛専門サロンを展開、社員数は4,200人以上。障害者雇用にも積極的で、さまざまな障害がある90人以上のスタッフが全国の店舗で働いています。研修を企画した柳沼さんは、「障害の有無に関わらず、人は一人ひとり違うのだということを意識し、『なんでできないの?』と相手に矢印を向けるのではなく、『相手に伝わるためには自分はどういう風に話したり伝えたりすればいいのか』と自分に矢印を向けてほしいと考え、研修を導入した」と言います。Upload By 発達ナビ編集部渋谷店の店長をつとめていたときに研修を受けたという杉村さん(現在は本社勤務)は、「お客さまへのお話の仕方、接し方などを指導するときに、こうしなさいと一方的に伝えるのではなく、『自分がお客さまだったらどう思う?』とスタッフ自身に考えてもらえるようにしました。信頼関係が築けるようになると、私の伝えたいことを理解してもらえるようになり、スタッフが結果を出せるようになってきました。もともとスタッフ自身に吸収力があったので、自信がついてどんどん伸びていけたのだと思います。それを見て、店舗の他のスタッフも『すごいね、どう伝えたの?』と関心を持ってくれたり、意識してくれるようになりました。その相乗効果で、店舗のチームワークがぐっとアップしたと感じました」。チームワークが上がった店舗では、スタッフ同士でも相手をねぎらう言葉が飛び交うようになったのだそう。スタッフはインカムをつけて業務を行っていますが、インカム越しに頻繁に「ありがとう」を言うようになり、店舗のよい雰囲気はお客さまにも自然と伝わっていったそうで、お褒めの言葉をいただくことも増えました。お客さまやスタッフに対しても、「一方的に自分の思いや考えを押しつけるのではなく、相手の立場に立って考える」。これは、ミュゼプラチナムが創業当時から大切にしてきたことです。社員数も増えていく中、その信念に改めて立ち戻ろうと導入した研修は、その狙い通りに参加した社員一人ひとりの中に浸透したようです。どんな人も、「ちがい」を認め合い、相手の立場を考えて行動できるようになったら、社会の中にある障害は、きっとなくなっていく――こうした取り組みがあちこちで行われるようになったら、どんな人も、より暮らしやすい社会につながっていくのではないかと感じられました。Upload By 発達ナビ編集部ミュゼプラチナムは、多くの女性に支えられている企業だからこそ、もっと女性が活躍できる社会にするための活動を行っています。ピンクリボン活動や、女性特有疾病の理解・予防を促すセミナーの開催などを、ミュゼハッピープロジェクト(MUSEE Happy Project)」として実施しています。その一環として行っている「乳がん啓発」では、各地で啓発イベントを行うほか、全国の店舗で乳がん検診体験を実施しています(毎月1回、店舗を巡回して実施)。通いなれた店舗で超音波検診を体験することで検診へのハードルも下がり、早期発見にもつながります。また、子宮頸がん啓発のための冊子も作成し、無料配布しているそうです。2019年よりテスト的にスタートする洋服のリサイクルは、店舗にリサイクルボックスを設置。実施店舗を順次増やしていく予定だそう。障害者雇用においても、働きやすい職場環境づくりなどこれまでの取り組みが評価され、東京都産業労働局が主催する「平成30年度障害者雇用エクセレントカンパニー賞」を受賞したそうです。社会に必要なこと・大切なことを積極的に取り組んでいこうという会社の姿勢があるからこそ、社員研修でのスタッフへの浸透も早く、チームワーク向上にも役立ったのではないかと、改めて感じました。参考:ミュゼプラチナムのCSR | ミュゼプラチナム2019年、障害のない社会を目指しての取り組みを、もっと進化させていきますLITALICOは、「障害は社会にある」と考え、どんな人も暮らしやすい社会となるよう、さまざまな企業の皆さまとともに取り組みを行っています。これからも研修や商品・サービス開発、イベント実施など、より幅広い企業の皆さまとのさまざまな取り組みを通して、一人ひとりのちがいを認め合い、支え合える「障害のない社会」を実現していきたいと考えています。2019年3月26日(火)には、「子育てフェスタ」も開催。専門家による講演やワークショップのほか、発達が気になるお子さんの生活に役立つ商品やサービスに取り組む企業の皆さまのブースなども予定しています。仕事体験テーマパーク「カンドゥー」の体験プログラムも「子育てフェスタ」に出張予定です!発達の気になるお子さんたちにも分かりやすく参加しやすい体験プログラムを特別にご用意いただくことになりました。ぜひご来場ください!撮影/近藤 誠、鈴木江美子
2019年01月28日広がる発達障害への認知、より求められる個別のサポート出典 : テレビや新聞などで取り上げられる機会もグッと増え、世の中全体の、「発達障害」に対する認知はずいぶんと高まったように思います。社会全体の認知が広がる一方、発達が気になるお子さんのいるご家庭からは、自分たちの具体的な悩みや困りごとに対して、「じゃあどうすれば良いのか?」というお声も数多くいただきます。ここ数年で開設数も激増した放課後等デイサービスや児童発達支援。「支援の質や、自分の子どもに合う合わないはどうやって見極めれば良いの?」学校や地域でともに過ごす人たちとのコミュニケーション。「自分の子どものことを、どのように説明すれば良いの?」学年が上がるにつれて考えざるを得ない、子どもの将来のこと。「進学や就職の選択肢は?子どもの自立に向けた見通しがほしい」みんなでつくる発達障害ポータルサイトとして2016年1月26日にスタートしたLITALICO発達ナビ。3年目となったこの1年間は、そういった保護者の方々の個別具体的なニーズに応え、発達が気になるお子さんやご家族の育ちを支えるための社会全体の環境を整える挑戦でした。子どもの育ちを支える、全国の発達支援施設のネットワークをつくる全国約18,000の児童発達支援・放課後等デイサービスの情報を検索・問い合わせできる「施設情報」コーナーでは、1600以上の施設がLITALICO発達ナビのパートナー施設として、支援のコンセプトやプログラムの内容について、詳しい情報を発信してくださっています。Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)新たにスタートした「施設ブログ」コーナーでは、それぞれの施設の「日常」の様子を、より詳しく覗いていただくことができるようになりました。また、編集部による「施設インタビュー」特集では、素晴らしい支援を行っている全国のさまざまな施設を取材しました。放課後等デイサービスと就労移行支援を併設することで、ワンストップで子どもの自立をサポートしている施設。地域や学校との連携に力を入れ、地域に関わる人みんなで子どもを見守り支えるネットワークをつくっている施設。それぞれにさまざな特色やこだわりがあり、同じ児童発達支援や放課後等デイサービスという制度の中でも、さまざまな可能性があるのだということを教えていただきました。※全てのインタビュー記事はこちらのコーナーからご覧になれます。施設インタビュー保護者の方々の施設探しのサポートだけでなく、支援施設を運営する方々や、施設で働く方々を支えるサービスもスタートしました。日々忙しく働いているなか、なかなか人材採用や教材開発に時間をつくることができない…もっと良い人材を集めて、プログラムを充実させて子どもたちにより良い支援を提供したいのに、今の状況ではなかなか難しい…施設を運営する方々からはそんなお声もお聞きしてきました。支援の現場の困りごとに対し、LITALICO発達ナビがサポートすることで、より良い人材が集まり、働く人たちが成長し続けられる環境を一緒につくっていきたい。そんな思いから、施設運営者やスタッフの方々向けに、求人検索サービスと研修・教材サービスも提供しています。・支援施設を運営する方々と、児童福祉現場で働きたいと思っている求職者との出会いをつくる「求人検索サービス」・施設で働くスタッフが日常のプログラムで使用できる教材や、支援に必要な視点やノウハウを得る「研修・教材サービス」プレスリリース: 「LITALICO発達ナビ」の福祉施設向け業務支援サービスに新機能 業界全体の支援力向上へ、「研修・教材サービス」を提供開始全国各地の児童発達支援・放課後等デイサービスへのサポートを通しても、子どもたちの育ちに貢献していきたいと思っています。「子どものために何かをしたい」保護者の声を社会に届けていくために「子どものために、今、自分に何ができるか知りたいんです」発達ナビを利用される保護者の方々からは、子どものために何か自分でアクションを起こしたいというお声も多くいただきました。「ペアレントメンター」として、自分と同じように子育てに悩む保護者の方々をサポートする活動を始められた方、自分の子どもだけでなく、後に続く親子のためにと、学校の先生との対話に臨まれた方、連載ライターさんのコラムの中でもさまざまなエピソードを寄せていただきました。きっと全国にいる発達ナビ会員の皆さんの中にも、それぞれの地域で、学校で、「自分にできることを」とアクションを起こされている方も多くおられるのだと思います。そうした保護者の方々の声や経験を、社会全体へと繋げていくべく、発達ナビではさまざまな企業の方々とのコラボも実施しています。昨年は、発達が気になる子どもと家族のために、企業に何ができるのかを考えるワークショップを定期開催。参加者の中には、自身も発達ナビ会員であり、子どもに発達障害がある、と話される方も少なくありませんでした。お子さんや保護者の声を生かし、発達が気になる子どもをサポートする新しい商品やサービスを開発したり、イベントやツアーを企画したり、さまざまな取り組みが生まれてきています。学習やコミュニケーション、食事や健康、お出かけや旅行など、生活場面全体を見据えて、サポートを広げていければと思います。一人ひとり違う子どもの発達。それぞれのご家庭にピッタリのサービスを目指してUpload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)4年目を迎えるLITALICO発達ナビ。目指すのは、一人ひとりの会員さんにとって、「わたし」にピッタリだと思えるサービス。お子さんの発達の仕方にも一人ひとりの個性があり、それぞれのご家庭、地域環境もさまざまだからこそ、どんな境遇・どんなお悩みに方が発達ナビを訪れても、「今、できること」が見つかるように。また、長く使えば使うほど、そのご家族の歩みが蓄積され、振り返ることができるように。次の一年でも、新たなサービス開発や機能の改善に取り組んでいきたいと思います。近日、発達ナビ会員の方々に向けた、年に一度のユーザーアンケート・ユーザーインタビューも実施予定です。ぜひこの機会にみなさんのお声をお寄せください。3月26日には、春休みのイベント企画「LITALICO発達ナビ子育てフェスタ2019」も開催決定。ぜひお越しくださいね。4年目のLITALICO発達ナビも、どうぞよろしくお願いいたします。
2019年01月25日「昨年末で司法研修所での勉強を終えています。今は裁判所、法律事務所などでの研修が始まっています。司法修習生仲間もできて、先日は飲み過ぎてしまいました。研修後、法律事務所への就職活動は大変だと思いますが、この人に依頼してよかったと思われる弁護士になりたいです」笑顔で語るのは、昨年9月、最難関の国家試験といわれる司法試験に、2度目の挑戦で合格した板原愛さん(28)だ。弁護士といえば、法廷で分厚い書面や六法全書を駆使しながら立ち回る姿を思い浮かべるが、愛さんは、角膜変性症という重度の視覚障がいがあり、視力は0.02~0.03で、視野も30度程度と狭い。文字を読むのも困難なのだ。「父(克介さん・70)も同じ視覚障がい者ですが、複数の福祉施設を営む社会福祉法人の理事長として、晴眼者と同じように社会生活を送っているので、私も社会に貢献できるはず。文章を読み上げるパソコンソフトや点字機器、記憶、そして熱意を武器に、優れた弁護士になるため研修に励んでいます」障がいがありながらも、人生の試練をくぐり抜けてきた愛さんは、勇壮なだんじり祭で有名な、大阪府岸和田市で生まれ育った。母親の和子さん(66)はこう振り返る。「外出するとき、人目が気になったことはあります。でも“親の私が引きこもっていては絶対ダメだ”と。障がいがあっても、堂々と外に出て、やりたいことを挑戦させようと、夫婦で決めていました」心配はつきなかったが、ほかの子どもたちと同じ体験をさせたい一心で、愛さんに自転車を与えたことも。車の交通量が少ない郊外とはいえ、ときには畑や溝に落ちたりしてしまったこともあったと愛さんは笑いながら振り返る。「普通の小学校に通いたいと言ったときは、教育委員会に交渉してくれたし、両親は私の挑戦を必ず応援してくれる。でも、始めたことは“やり遂げるまで諦めるな”と厳しく育てられました」(愛さん)小学校では、拡大文字の教科書を使用していたが、学年が進むにつれ、扱う文章も長くなり、拡大文字ではスムーズに読み進められない。勉強に遅れが出ないよう、中学校は東京の視覚特別支援学校へ入学。親元を離れての寮生活を始めた。「このとき、初めて弱視や全盲の人たちと触れ合いました。1人で外出できない仲間もいたし、後ろから声をかけても、見えないからと、振り返らずに前を向いたまま会話する子がいたのは、ショッキングでした」そういった環境に身を置きながら、愛さんはあえて繁華街へと出かけていった。「入学早々、寮の風呂場で髪の毛を茶髪にして、超ミニスカートとハイヒール姿で、門限ギリギリまで遊んでいたんです。たいして好きでもない男の人を彼氏にしたりして(笑)。きっと“自分は普通”と思いたかったのかもしれません」夜更かしした分、授業中は寝てばかり。勉強全般は嫌いだったが、生活と関わりのある政治・経済や、法律などには、興味が持てた。「中学時代、分厚い点字の憲法の本に夢中になり、修学旅行にも持参したりして(笑)。次第に司法に関わる仕事をしたいと考えるようになって、周りには『弁護士になる』と宣言していました」ところが、高等部への進学すらも危ぶまれるほど、成績は落ちていった――。「『あんたみたいな勉強嫌いが弁護士になりたいなんて、弁護士に失礼』なんて笑われたり。確かに偏差値30台の劣等生。先生からも『現実を見なさい』と叱られる始末で……」このとき、愛さんの夢を理解し、背中を押したのは、両親だった。「これまで、“見えないから”と何かを諦めることはさせなかったし、たとえ弁護士になれなくても、その努力は役立つと思い、“どの大学の法学部に行くの?”とすぐに娘と話し合いました」(和子さん)「障がいを持っていても、私は社会に貢献できるはず!」。そう信じて、見事に弁護士への切符を手にした愛さん。彼女を支えたのは、厳しくも温かい両親の言葉だった。
2019年01月17日「父(克介さん・70)も同じ視覚障がい者ですが、複数の福祉施設を営む社会福祉法人の理事長として、晴眼者と同じように社会生活を送っているので、私も社会に貢献できるはず。文章を読み上げるパソコンソフトや点字機器、記憶、そして熱意を武器に、優れた弁護士になるため研修に励んでいます」そう話すのは、昨年9月、最難関の国家試験といわれる司法試験に、2度目の挑戦で合格した板原愛さん(28)。弁護士といえば、法廷で分厚い書面や六法全書を駆使しながら立ち回る姿を思い浮かべるが、愛さんは、角膜変性症という重度の視覚障がいがあり、視力は0.02~0.03で、視野も30度程度と狭い。文字を読むのも困難だ。「昨年末で司法研修所での勉強を終えています。今は裁判所、法律事務所などでの研修が始まっています。司法修習生仲間もできて、先日は飲み過ぎてしまいました。研修後、法律事務所への就職活動は大変だと思いますが、この人に依頼してよかったと思われる弁護士になりたいです」障がいがありながらも、人生の試練をくぐり抜けてきた愛さんは、勇壮なだんじり祭で有名な、大阪府岸和田市で生まれ育った。「普通の小学校に通いたいと言ったときは、教育委員会に交渉してくれたし、両親は私の挑戦を必ず応援してくれる。でも、始めたことは“やり遂げるまで諦めるな”と厳しく育てられました」(愛さん・以下同)小学校では、拡大文字の教科書を使用していたが、学年が進むにつれ、扱う文章も長くなり、拡大文字ではスムーズに読み進められない。勉強に遅れが出ないよう、中学校は東京の視覚特別支援学校へ入学。親元を離れての寮生活を始めた。「中学時代、分厚い点字の憲法の本に夢中になり、修学旅行にも持参したりして(笑)。次第に司法に関わる仕事をしたいと考えるようになって、周りには『弁護士になる』と宣言していました」一浪して入学した青山学院大学法学部では、友人とダーツやビリヤードも楽しんだ、と笑顔で振り返る愛さん。卒業後は、本格的に司法試験に臨むため、法科大学院へ進学した。「早稲田大学の大学院法務研究科を選んだのは、司法試験の合格率が高かったこと、それに日本の大学では数少ない、障がい学生支援室が設置されているためです」愛さんのために板書が読み上げられるほどサポートは手厚く、教科書を作った出版社の協力もあって、文章を音声に変換することができた。同級生たちのなかには名門校出身も多く、刺激になったが、「優等生だったことが一度もない」という愛さんにとっては、気後れすることも多かった。そんなとき、希望の光となったのは、日本で初めて視覚障がい者として弁護士になった、野村茂樹氏が所属する奥野総合法律事務所に、計3週間、インターンとして受け入れてもらったことだ。「野村先生は、所長の奥野(善彦)先生に『弁護士に必要なのは書類を読むことよりも、判断力だ』と言われて、弁護士になることを決意したそうです。その話は、私にとって強い励みになりました」1度目の司法試験は不合格。くじけそうになったが、父親からは電話で「刀折れ、矢尽きるまで戦う覚悟で挑め」と励まされた。司法浪人としての1年間は、全力を尽くすことだけを考えた。「布団に入ると、『今日は勉強が少なかった』と不安になってしまう。だから、そんな余裕もないほど疲れ切るまで勉強しました。それで2度目の挑戦は、合格者の中で上位17%に入る成績でした」現在の研修生活が終われば、晴れて弁護士となる愛さん。「弱視の人は、多少は目が見える。そのため社会に出ると、頼まれた書類仕事などでオーバーワークになり、症状が悪化したり、休職・復職を繰り返すケースもあります。障がい者の人たちを助けるため、私だからこそできる活動をしたい。でも、これまで長く仕送りで生活してきたので、まずは、しっかりと一人前の弁護士として、自立して稼いでいきたいですね!」父と母から教え込まれた“諦めない”という強い気持ちが、愛さんからはあふれていた。
2019年01月17日発達が気になる子どもにかかわる仕事って?必要な資格や仕事内容、働く人の本音まで知ることができる!2019年1月27日(日)に、発達が気になる子どもにかかわる仕事について「資格要件・仕事内容などの基礎を学べる」「保育士から発達支援にキャリアチェンジした人の本音トークが聞ける」「大手法人と、仕事内容やキャリアに関してフランクに話せる」という、魅力たっぷりのイベント「LITALICO発達ナビしごとフェスタ」を開催します。出典 : イベントでは、関東近郊で児童福祉の事業所を運営する大手法人が個別ブースを出展。気になる法人と仕事内容・働き方・キャリアに関してフランクに話をすることができます。同時に「業界に関する知識がなくて不安」「未経験でも大丈夫?」という声にこたえ、児童福祉分野で働くうえでの基礎知識がわかる「児童福祉の仕事まるわかりセミナー」や、「保育の現場から児童発達支援へ転職した方のトークセッション」といった、どんな方にもきっと役立つプログラムも実施!会場には児童福祉分野に詳しいキャリアアドバイザーによる無料相談コーナーを設けるほか、児童福祉業界での働き方に関心がある方と気軽につながることができる交流会も開催します。現在児童福祉業界(児童発達支援・放課後等デイサービス)で働いている方、保育や教育・福祉の経験を発達支援に活かしてみたい方、児童福祉業界での働き方を知りたい方はぜひこの機会に、話を聞いたり、相談してみたりしてはいかがでしょうか。参加希望の方は、以下の概要を確認のうえ、申し込みフォームからお申し込みください。「LITALICO発達ナビしごとフェスタ」開催概要【日程】1月27日(日)13:00~18:00(開場12:45)※途中参加・途中退場可【会場】fabbit Global Gateway “Otemachi”東京都千代田区大手町2-6-1 朝日生命大手町ビル2階(東京駅・大手町駅直結)明るくお洒落なスペースを貸し切っての開催となります!【参加費】無料参加者全員にQUOカード1000円プレゼント!「LITALICO発達ナビしごとフェスタ」の見どころ紹介発達が気になる子どもの支援事業(児童発達支援・放課後等デイサービス)を運営する大手法人が、支援の特徴や、仕事内容、職場環境等について、説明いたします。アットホームな雰囲気の中、法人の担当者の方とフランクに話すことができます。参加法人(一部抜粋)・有限会社エスエヌ企画(ライズ児童デイサービス)・アース・キッズ株式会社(スタジオそら)・株式会社SKY(みなそら園)・ハッピーテラス株式会社・株式会社LITALICO(LITALICOジュニア)ほかみなさまの知りたいことに合わせた約30分のセミナーを開催いたします。【1】福祉の仕事まるわかりセミナー(13:00~13:30)児童福祉業界について、知識・経験がない方もご安心ください。・発達が気になる子の支援の仕事とは・「児童発達支援」「放課後等デイサービス」とは・指導員のなり方など、わかりやすく解説します。【2】保育の経験を活かして発達支援へ(14:00~14:30)元保育士で、児童福祉業界に転職した方をゲストに迎え、転職理由や、転職前後のギャップ、転職してよかったことなどを話していただきます。「保育・教育の資格や経験を発達支援に活かしたいが、実際のイメージがわかない」「発達障害の子どもへの支援ができるか不安」そんな方必見のトークセッションです。※各回定員30名(先着順)となります。※内容は変更になる可能性がございます。福祉の仕事全般に関する疑問点、転職の不安・悩み等、ぜひ何でもご相談ください。「私でも発達支援の仕事ってできるのかな?」「これまでの経験を活かしてキャリアアップしたいけどどうしたらいいかわからない」そんなあなたの悩み・不安・疑問をスタッフが一緒に解消します。軽食をとりながら、参加事業所の職員の方々とざっくばらんに話したり、他の参加者の皆さまと情報交換したりできます!事業所ブースをまわる中で特に気になった事業所の職員の方に、発達支援の仕事のリアルを聞いてみたり、児童福祉分野に興味のある参加者同士で情報交換してみてはいかがでしょうか。【同時開催】障害のある方の「働く」を支援する仕事についても知ることができる!Upload By 支援のひろば本イベントでは、お子さまへの支援だけでなく、”障害のある方の「働く」を支援する仕事”についても知ることができます。関東近郊で就労支援の課題解決に取り組む大手法人から、具体的な取り組みや働き方について詳しく聞けるブースの設置や、大手企業(GREE(グリー)株式会社)の障害者雇用担当者による「就労支援」の現状や期待を本音で語るトークセッションなども、同じ会場で実施予定。障害がある大人を支援する仕事について興味がある方も、ぜひご参加ください。※障害のある方の「働く」を支援する仕事に関して、どんなことがわかるの?という方は以下ページをご覧ください。以下ページからもイベントのお申し込みが可能です。障害のある方の「働く」を支援する仕事について、LITALICOしごとフェスタでわかること「LITALICO発達ナビしごとフェスタ」は、発達が気になるお子さまへの支援にかかわる仕事はもちろん、障害がある方の「働く」を支援する仕事についても知ることができるイベントです。ぜひご来場ください!【本イベントに関する問い合わせ先】LITALICOキャリア事務局(児童福祉・障害福祉分野に特化した就職支援サービス)info_event@litalico-c.jp
2019年01月10日あけましておめでとうございます!Upload By 発達ナビ編集部LITALICO発達ナビユーザーの皆さまあけましておめでとうございます!発達ナビは、2019年も発達障害に関するさまざまな記事をお届けしていきます。どうぞよろしくお願いいたします。また、ユーザーの皆さまにもっと手軽に、最新の情報を受け取っていただけるよう、SNSアカウントでの情報発信も行っています。そこで、各SNSとその特徴をご紹介します。2019年は、ぜひSNSもご活用いただけたらと願っています!Facebook・Twitter新着コラムのお知らせや、今まで公開させていただいてきたコラムからピックアップしたものを、毎日配信しています。最新の子育てエッセイや、発達障害にまつわる障害や支援にまつわるイベント情報などをいち早くお知らせするほか、発達障害にまつわる専門的な内容をわかりやすくお伝えする「発達障害のキホン」シリーズのコラムなどをご紹介しています。りたりこ)発達ナビFacebookりたりこ)発達ナビTwitterInstagram2018年11月から本格スタートしたInstagram。新着コラム情報に加え、コラム記事制作の裏側や取材の様子など、ここでしか見られない情報もお届けしていく予定です。発達ナビInstagramLINE@友達追加をしていただけると、新着コラム情報をお届けするほか、位置情報や市町村名から、発達が気になるお子さまが利用できる発達支援施設などを検索することも可能です。発達ナビLINE@Pinterest子育てでの困りごとへの対応方法を、わかりやすいイラストで解説する「親子のヒント」や、子育てにまつわるコラム・エッセイまで掲載しています。発達ナビPinterest
2019年01月01日発達障害と個性はどう違う?私はこれまで、発達障害の当事者やそのご家族の方たちから、こんな質問をよく受けてきました。「発達障害と個性」「自閉スペクトラム症とオタク」「注意欠如・多動症とうっかり屋」…これらはどう違うの?と。私はその違いについて、詳しくは『発達障害生きづらさを抱える少数派の「種族」たち』という本にまとめました。まずは、簡単に発達障害の特性について説明しましょう。発達障害には、自閉スペクトラム症や注意欠如・多動症、学習障害などの種類があります。自閉スペクトラム症には「対人関係が苦手」で「こだわりが強い」という特徴があります。そういう特徴を講演会などで説明すると、話を聞いた方のなかには、「私のまわりにそういう人がいます。こだわりがとても強い人ですが、その人のこだわりは障害というより、個性だと思います。発達障害と個性はどう違うんでしょうか?」と質問をくださったりします。ときにはもっと具体的に「自閉スペクトラム症の人は、個性的な人、たとえばオタクとは、どう違うんですか?」と聞かれることがあります。また、注意欠如・多動症には「不注意」と「多動性・衝動性」の特性があります。「不注意」は「気が散りやすい」に、「不注意」は「うっかり屋」に言い換えができそうです。発達障害は、個性とどう違うのでしょうか?次から、その違いについてご説明していきましょう。Upload By 本田秀夫発達障害と「オタク」の違いって?出典 : ここでは、ゴルフ好きな男性を例に解説しましょう。彼は休日になると、同僚や取引先の人たちとゴルフの練習やコースに出かけて、楽しんでいます。テレビのゴルフ中継やゴルフ雑誌、ゴルフ関係のインターネットを見るのも好きです。ゴルフ好きな友人と食事やお酒を共にして、熱い「ゴルフ」談義をすることも増えてきました。最近では周囲に「ゴルフ好き」として知られ、「接待ゴルフ」にも呼ばれるようになりました。熟練の腕前で、相手に合わせてレベルを調節することも、お手のものです。この方は「ゴルフオタク」と呼んでもけっして間違いではないでしょう。しかし、自閉スペクトラム症の特徴が見られるかというと、それは見られなさそうです。確かにゴルフにある種の「こだわり」を持っているようですが、この方はゴルフ仲間と良好な関係を築いています。「対人関係が苦手」な様子は見られません。じつはこの方のように、ある種のこだわりをもっていても、それを対人関係のなかで柔軟に調整できる場合には、むしろ「対人関係が良好」だったりします。この「対人関係」に着目すると、自閉スペクトラム症の人と「個性的な人」(いわゆる「オタク」)との微妙な違いが浮きぼりになっていきます。自閉スペクトラム症の人は、こだわりと対人関係を天秤にかけたとき、こだわりを優先する傾向があります。対人関係のために、大好きなことの優先順位を下げることには抵抗があるのです。そのため、「対人関係が苦手」で「こだわりが強い」という様子が見られるわけです。しかし、先ほど「微妙な違い」と表現したように、とても微妙な話です。発達障害の特性と個性の間に、境界線はない対人関係やこだわりの調整は「できる」「できない」の2つにはっきりと分けられるものではなく、あいまいなものです。調整できることが多ければ「個性的な人」や「オタク」に近く、調整の難しいことが多ければ自閉スペクトラム症の特徴に近いというふうに考えるのが自然かもしれません。発達障害と個性、自閉スペクトラム症とオタクには、明確な違いはないといってもよさそうです。私は、「個性」や「オタク」、発達障害は地続きのもので、そこには境界線はないと考えています。発達障害の特性がある人の交流スタイル出典 : 私はNPO法人などで、幼児から成人まで、発達障害の方たちの余暇活動を支援しています。そこに集う方たちの活動には、一般的な交流とは違った様子がみられることがあります。たとえば、アニメが好きな人たちの集いでは、みんなで集まってアニメをみたりアニメの話をしたりして、時間になったらそれぞれに帰っていきます。趣味についてはよくしゃべりますが、趣味以外の話や交流は別にしなくてもよいというつき合い方をしているのです。同じアニメを好きな人どうしが、アニメ映画をいっしょに見にいくということはあります。でも、そういう人たちが「今度いっしょにお茶でもしようよ」と誘いあう姿は、あまり見たことがありません。発達障害(とくに自閉スペクトラム症)の特性がある人たちの社交の仕方は、そういうスタイル――微妙な対人関係よりも自分の関心、やり方、ペースの維持を最優先させたいスタイルだとしかいいようがありません。あるとき、自閉スペクトラム症の人から「親友がいる」と言われたことがあります。親友どうしはいっしょに映画を見にいくのですが、映画館までの道すがらは無言だそうです。別におしゃべりをしていなくても仲間なのだから、それでいいのだそうです。一般の人は、映画を誰かといっしょに見にいったとき、相手がまったくしゃべらなかったら、親近感がないように受けとり、相手とよい関係が築けていないと不安になるかもしれません。でも、自閉スペクトラム症の特性がある人は、そのような不安をもたずに仲間と交流しています。そしてこれは,どちらがよいか悪いかという話ではなく、それぞれにスタイルがあるということなのです。もうひとつ、余暇活動のなかで「黒ひげ危機一発」で遊んだときのエピソードを紹介しましょう。「黒ひげ危機一発」というと、一般には「誰が刺したときに、黒ひげが飛び出すだろうか?」というスリルを共有して楽しむゲームです。この「黒ひげ危機一発」を使って、自閉スペクトラム症の子どもたちが、ユニークな遊び方をしていたことがあります。ひとりずつ順番に剣を刺すのではなく、ひとりが剣を刺し続け、人形が飛び出したら次の子に渡すという遊び方です。その子たちが興味をもったのはゲームのしくみであり、ほかの子とスリルを共有することは、二の次だったのでしょう。一般の人からすると、ひとりだけが剣を刺し、まわりではそれぞれ好きなことをしている光景は、楽しそうにみえないかもしれません。でも、子どもたちは「みんなで『黒ひげ危機一発』ゲームをして楽しかった!」と語り合っていました。では、「黒ひげ危機一発」の独特な遊び方をしているときに、ひとりだけ、「ふつうのやり方で遊ぼうよ!」と提案する子がいたとしたら、どうでしょう?そのひとりは、居心地が悪かったかもしれません。通常とは違う遊び方で「黒ひげ危機一発」ゲームを楽しんだからといって、別に「通常のやり方を楽しむ能力の欠損」とはいえません。ましては、能力が劣っているわけでもありません。もしも、楽しみ方に優劣があると考える人がいるとすれば、それは多数派のおごりでしょう。自閉スペクトラム症の人たちの楽しみ方は、ただ少数派というだけです。発達障害の特性を「選好性」としてとらえる少し専門的な話になりますが、私は発達障害の特性を「〜が苦手」という機能の欠損として考えるよりも、「〜よりも〜を優先する」という「選好性の偏り」として考えたほうが、自然なのではないかと思っています。ここでいう「選好性」とは、Aというものではなく、Bというものを選ぼうとする生来の志向性のようなもの。好き嫌いの「嗜好性」ではなく、心が特定の方向に向かうという「志向性」です。たとえば「雑談が苦手」という特性を「雑談よりも内容重視の会話をしたがる」という選好性としてとらえることができます。ほかにも、「対人関係が苦手」という特性を「対人関係よりもこだわりを優先する」、また、注意欠如・多動症の特性を「じっとしていることが苦手だが、それは思い立ったらすぐに行動に移せるという長所でもある」といったとらえ方ができます。発達障害は、少数派の「種族」私は、発達障害の人が向き合う困難は、マイノリティ問題と共通していると考えています。人種や民族、性的志向などの少数派(マイノリティ)といわれる人たちは、偏見や差別の目にさらされることがあります。では、なぜ偏見や差別が生じるのかというと、マイノリティの人たちがマジョリティ(多数派)を知るほどには、マジョリティはマイノリティのことを知らないという現実があるからです。発達障害は、病気というよりも、少数派の「種族」のようなものと考えるべきです。多数派が少数派のことを理解して、お互いに助け合っていくことによって、偏見や差別が少しでも減らせるのではないかと思います。そうすれば、自閉スペクトラム症や注意欠如・多動症の特性があっても「障害」とは言わなくてよい人たちが、今よりも増えていくのではないでしょうか。このコラムによって、少しでも多くの方たちが、発達障害に関心を持ち、理解を示すことにつながれば幸いです。
2018年12月26日アイドルグループのKis-My-Ft2がパーソナリティを務める、ニッポン放送特番『第44回 ラジオ・チャリティ・ミュージックソン』(12月24日正午~25日まで24時間生放送)。メンバーは、目の不自由な方々をとりまく現状への理解を深めるために事前取材を行い、放送内でレポートした。同特番は75年にスタートし、目の不自由な方が安心して街を歩けるように「音の出る信号機」を設置する基金を募るチャリティ・キャンペーンだ。「君と僕のありがとう物語~キスマイグッドセブン~」と題して、番組冒頭では、千賀健永が筑波大学附属視覚特別支援学校の音楽の授業に飛び入りし児童たちと交流した模様をレポートした。そして千賀は生放送の中で彼らの歌のピアノ伴奏を行うとのこと。さらに横尾渉は、視覚障がいとバリアフリー、ユニバーサル・デザイン研究の第一人者である慶応大学の中野泰志教授を取材し「視覚障がい体験」を。藤ヶ谷太輔は筑波大学視覚特別支援学校の児童に聴いた学校生活の現状を、宮田俊哉は高田馬場にある日本最大の点字図書館を取材し、視覚障がい者にとっての読書の楽しみ方を伝えた。後半では、玉森裕太、二階堂高嗣、北山宏光のレポートが行われる予定となっている。番組では萩本欽一やゆずがゲスト出演。ゆずはスタジオで「いつか」の生歌を披露した。24日の深夜にはKis-My-Ft2のクリスマススペシャルライブなどが行われる予定だ。
2018年12月24日「ピアジェの心理学を知れば、子どもの発達がよく分かる!?有名な『4つの発達段階』をまとめてみた」でもお伝えしたように、人間にはいくつかの「発達段階」があると考えられています。心理学者ジャン・ピアジェ (1896~1980)の場合、「感覚運動期」「前操作期」「具体的操作期」「形式的操作期」という4つでした。発達段階の区分や名称は、学者によって異なります。心理学者エリク・H・エリクソン(1902~1994)は、「乳児期」「青年期」「成人期」など8つの発達段階を提唱しました。こちらのほうがなじみ深く、イメージしやすいかもしれませんね。エリクソンによる発達段階論は、教員志望者だけでなく、保育士を目指す人たちにも学ばれています。保育士試験で頻出のためです。保育士志望者はなぜ、エリクソンの理論を学ぶことを求められているのでしょう?それは、子どもならではの特性を理解し、発達段階を意識して接する必要があるから。もちろん、子どもを持つ皆さんにとっても有用な知識です。我が子だけでなく、自分の発達段階も意識することで、人生観が新たになるかもしれません。今回はエリクソンの発達段階論を、できるだけ分かりやすくご説明しましょう。心理学者エリクソンの人物像エリク・H・エリクソンは1902年、デンマーク系ユダヤ人の母親からドイツで生まれました。父親は不明。エリクソンが3歳になると母親は小児科医と結婚し、彼が実の父親だと伝えましたが、エリクソンは信じられなかったそうです。また、エリクソンは実の父親に似たのか金髪に青い目で、母親夫婦とは異なる見た目だったそう。そのためユダヤ教会では「異邦人」、地元の学校では「ユダヤ人」と呼ばれ、アイデンティティーに苦しんでいたようです。この頃の経験が、心理学者としての研究に影響しているのかもしれません。学校を卒業後、エリクソンは画家を目指しましたが、やがて挫折。失意のうちに過ごしていたとき、ウィーンに学校を設立しようとしていた親友に呼び寄せられます。そこでエリクソンは教師として活躍し、周囲の人から才能を認められ、児童分析家となりました。1933年にドイツでヒトラー内閣が成立すると、反ユダヤ主義を恐れてエリクソンは米国に渡ります。そこで彼は次々と成果を挙げ、精神分析家・児童分析家として名声が高まりました。イェール大学の人間関係研究所では文化人類学者たちと交友を深め、精神分析に文化人類学を取り入れることを思いつきます。その成果が、1950年に出版された『Childhood and Society』(『幼年期と社會』全3巻、日本教文社、1954~1956年/『幼児期と社会』全2巻、みすず書房、1977~1980年)に反映されているといえるでしょう。この本は発達心理学の古典的名著として知られています。また、現代で「アイデンティティー」「モラトリアム」という心理学用語が一般的に使われるようになったのも、エリクソンの影響といえるでしょう。エリクソンの「心理社会的発達理論」とはエリクソンが提唱した論は、「心理社会的発達理論(psychosocial development)」と呼ばれています。人間の心理は、周囲の人々との相互作用を通して成長していくという考えです。その特徴は以下のとおり。-人間の発達段階を8つに分けている。-各発達段階に「心理社会的危機(psychosocial crisis)」がある。-人間は心理社会的危機を乗り越えることで、「力(virtue)」を獲得する。「発達課題(development task)」と呼ばれることもある心理社会的危機は、「〇〇対△△」というかたちで表されます。たとえば、18~40歳にあたる「初期成人期(young adult)」の心理社会的危機は「親密対孤立(intimacy vs. isolation)」。この時期、多くの人は、家族以外の他者との長期的で親密な関係を形成しようとします。うまくいけば、「力」として「愛情(love)」を獲得できるでしょう。愛は人生を豊かにします。結婚生活にもかかせないものです。しかし、他者との関りを避けたりコミュニーションを適切にとれなかったりすれば、この発達段階における心理社会的危機を乗り越えられず、孤独に陥る、ということになります。では、心理社会的発達理論における8つの段階を順に見ていきましょう。エリクソンの発達段階1:乳児期「乳児期(infancy)」という発達段階は、およそ0歳~1歳半にあたります。この時期に直面する心理社会的危機は「信頼感対不信感(trust vs. mistrust)」。人間の赤ちゃんは無力で、一人では生きていくことができません。そこで、泣くことで助けを求め、母親をはじめとする周囲の人から世話されることで育ちます。このとき、周囲の人から適切なケアを受けられれば、赤ちゃんのなかで世界に対する信頼感が構築されます。「みんなは自分を助けてくれる」という気持ちです。うまくいけば、「期待(hope)」という力を得ることができます。しかし、泣いても誰かが来てくれるわけでもなく、世話してもらえないとしたら?赤ちゃんは世界に対する不信感を抱き、「誰も自分を助けてくれない」と思うようになります。そのため、赤ちゃんに対し適切なケアが行われないと、その子の人生観に大きな悪影響を与えてしまうと考えられています。エリクソンの発達段階2:幼児前期「幼児前期(early childhood)」は、およそ1歳半~3歳にあたります。直面する心理社会的危機は「自主性対羞恥心(autonomy vs. shame)」。この時期の子どもは、歩いたりしゃべったりするようになります。とても活発な子もいて、親の手を振りほどいて走り出したり、何に対しても「イヤ」と言ったり……などは、よく聞かれる話ですね。子どもは積極的な挑戦や親のしつけを通し、排せつや着替えなど、赤ちゃんの頃は周りの人にやってもらっていたことを、一人でできるようになっていきます。親が子どもに、自分でやってみる機会を与え、適切なタイミングで手伝ってあげれば、子どもは自信をつけて、さらにいろいろやってみようという気持ちになれるでしょう。その結果、「意欲(will)」という力を獲得します。しかし、親が子どもに先回りして何でもしてあげたり、挑戦して失敗した子どもを過度に叱ったりすればどうでしょう?子どもの自主性は育たず、むしろ羞恥心を覚えてしまい、新しい物事に挑戦しようという意欲は生まれづらくなります。エリクソンの発達段階3:遊戯期3~5歳頃は「遊戯期(play age)」。「自発性対罪悪感(initiative vs. guilt)」が心理社会的危機です。保育園や幼稚園で、友だちと活発に遊ぶ時期ですね。世界に対して強い興味を持ち、「どうして○○なの?」という質問を連発したり、ごっこ遊びをしたりします。とにかくエネルギーがあり余っている状態といえるでしょう。このような子どもらしい様子に対し、親がうっとうしがる態度を見せたり、過度に厳しいしつけを施したりすると、子どもは罪悪感を覚えてしまいます。もちろん、公共の場所での適切なふるまいを教えるなど、適度なしつけは大切です。自発性と罪悪感のバランスがうまくとれれば、子どもは心理社会的危機を克服し、「目的意識(purpose)」という力を獲得できます。エリクソンの発達段階4:学童期およそ5~12歳は「学童期(school age)」です。克服するべき心理社会的危機は「勤勉さ対劣等感(industry vs. inferiority)」。小学校に通いはじめ、勉強の楽しさを知る時期です。学期中や夏休みにこなすべき宿題が次々に出されるので、「計画的に課題を仕上げ、提出する」ということを覚えます。それを繰り返すことで自信がつき、自分には「能力(competency)」があるということを理解するのです。しかし、勉強が最初から得意な子どもばかりではありません。数の概念が理解できなかったり、計画的な勉強のやり方がわからなかったりして困っている子もいます。そのような状況に対し、周囲の大人が適切にサポートせず、ただ叱っているだけでは、問題は解決できません。子どもは「自分にはできない」と劣等感を抱き、その影響はのちの人生に暗い影を落とすことでしょう。子どもが劣等感を抱かず、かつ傲慢にもならないよう、適度に褒めたりアドバイスをしたりする必要があります。エリクソンの発達段階5:青年期12~18歳頃は「青年期(adolescence)」です。立ち向かうべき心理社会的危機は「アイデンティティー対アイデンティティーの混乱(identity vs. identity confusion)」。思春期にあたるこの時期は、「自分って何だろう」「将来、どうやって生きていこう」など、自身について特に思い悩むときです。皆さんも「自分は何がやりたいんだろう?」「『自分らしさ』って何?」など、さまざまなことを考えた経験があるのではないでしょうか。「自分はこういう人間だ」とある程度確信できるようになれば、アイデンティティーが確立されたといえ、「忠誠(fidelity)」という力が得られます。自分で選んだ価値観を信じ、それに対して貢献しようとすることです。たとえば、「○○の国民として義務を果たそう」「地球に住む生き物として、自然環境を守らなければ」などと強く思い、行動することが該当します。一方で、アイデンティティーが確立できないと、「自分は何なのだろう」「何のために生きているのだろう」と悩みつづけることになります。共同体のなかに自分の居場所を見つけることが、アイデンティティーの確立につながるでしょう。エリクソンの発達段階6:初期成人期18~40歳頃は「初期成人期(young adult)」と呼ばれています。乗り越えるべき心理社会的危機は「親密対孤立(intimacy vs. isolation)」です。生まれた家庭や学校を離れ、多くの人との関係を築く時期です。恋愛を経て結婚に至る人も多いでしょう。新たな家族や友人との長期的・安定的な関係を通し、「愛情(love)」という力を獲得します。幸福な人生を送ることにつながるでしょう。しかし、他者に積極的に関わることをためらったり、長期的な人間関係を築くことを怠ったりすると、人間は孤独になります。家庭を持つことが難しくなってしまうでしょう。エリクソンの発達段階7:壮年期40~65歳頃は「壮年期(adulthood)」です。克服するべき心理社会的危機は「ジェネラティビティー対停滞(generativity vs. stagnation)」。ジェネラティビティーとはエリクソンによる造語で、「次世代育成能力」などと訳されます。子どもを育てたり、職場の後進を育成したりなど、自身が属する共同体において後の世代に貢献することです。自分の時間やエネルギーを子どもや若者に使うことで生きがいを感じるという人も多いのではないでしょうか。これにより、私たちは「世話(care)」という力を獲得します。一方、共同体に関与せず常に自分のことだけ考えて生きている……このような状況は「停滞」と呼ばれます。この年齢になると、「世界に自分の足跡を残せただろうか」と考える人もいるのではないでしょうか。次の世代に何も残せず「停滞」していると感じると、このあとの「老年期」で辛くなるかもしれません。エリクソンの発達段階8:老年期最後は、およそ65歳以上を指す「老年期(mature age)」です。乗り越えるべき心理社会的危機は「自己統合対絶望(ego integrity vs. despair)」。多くの人が仕事を定年退職し、老後の生き方を模索していることと思います。寿命を前にして、これまでの人生を振り返ることもあるでしょう。それぞれの発達段階において、心理社会的危機を乗り越え、「力」を獲得できたでしょうか。満足のいく人生だったでしょうか。自分の死後に残るものはあるでしょうか?これらの質問に納得がいったならば、最後に「賢さ(wisdom)」を得られるでしょう。しかし、自分の人生に満足がいかず、多くの後悔を抱えていたらどうでしょうか?子どもの頃や青春時代、大人になってから……それぞれの発達段階に対し「こんなはずじゃなかった」という気持ちが強いと、人生をやり直したくなるかもしれません。しかし、時間を巻き戻せるわけはなく、寿命が迫っています。絶望的な気分となり、穏やかに余生を送る、というのは難しそうです。***エリクソンの発達段階論を知ると、子どもへの接し方だけでなく、親である自分の人生にも思いを巡らすことになるのではないでしょうか。読者の皆さんの多くは、6段階目の「初期成人期」にいることと思います。それまでの6つの段階における心理社会的危機をクリアできていたか振り返りつつ、お子さんの心理社会的危機についても考えてみてください。(参考)StudyHackerこどもまなび☆ラボ|ピアジェの心理学を知れば、子どもの発達がよく分かる!?有名な「4つの発達段階」をまとめてみた東京工芸大学学術リポジトリ|教育心理学的視点からエリクソンのライフサイクル論及びアイデンティティ概念を検討するJ-STAGE|E. H.エリクソンの心理社会的発達理論における「世代のサイクル」の視点慶應義塾大学学術情報リポジトリ|エリクソンの発達論に関する一考察 : その基本的視座について京都大学学術情報レポジトリ|E. H. Erikson のアイデンティティ理論と社会理論についての考察東京国際大学|アイデンティティ概念の理論的背景と問題点について―精神分析的観点による再検討のために―Simply Psychology|Erik Erikson’s Stages of Psychosocial DevelopmentPoole, Sarah and John Snarey (2011), “Erikson’s Stages of the Life Cycle”, Encyclopedia of Child Behavior and Development, Vol. 2, pp.599-603.
2018年12月10日「発達障害とは何か」 を考えるスペシャル番組ここ数年、発達障害について取り上げるテレビや書籍、ネットニュースなどが増えました。LITALICO発達ナビのユーザーの中にも、認知度が上がってきたと感じている人もいるでしょう。ですが、当事者が身近にいない人にとっては、発達障害という言葉を聞いたことがあっても「発達障害とは実際のところどういうものか?」よくわからないのかもしれません。NHKでは11月から「発達障害って何だろう」をテーマにしたキャンペーンを行っています。今まで関心のなかった人にも届くよう、さまざまな角度で発達障害について取り上げています。約20の発達障害に関連する番組が集中的に放送される中で、24日(土)には「発達障害って何だろうスペシャル」が放送されます。出演者は各界で活躍する発達障害の当事者Upload By 発達ナビニュース出演者は各界で活躍する発達障害の当事者の皆さん。エッセイストの小島慶子さんは、今年、軽度のADHD(注意欠如・多動症)があると診断されました。落語家の柳家花緑さんは、子どもの頃から読み書きに苦手があり、40歳を過ぎてからLD(学習障害)の特性を指摘されました。11月からスタートした2分アニメシリーズ「ふつうってなんだろう?」でも自身の経験を紹介してくれています。『透明なゆりかご』などの作品で知られる漫画家の沖田×華(ばっか)さんは、小学生のころにLDとADHD、中学生のころにアスペルガー症候群(現・自閉スペクトラム症)の診断を受けました。日常生活での経験を漫画で描いています。それぞれのプライベートに密着し、自身の「苦手」とどう向き合い、どう折り合いをつけているのか、たっぷり語っていただきます。また、LITALICO発達ナビでもコラムを執筆している吉川徹先生も出演されます!「周囲の人は何ができるのか」工夫を紹介する発達障害は外見からは見えにくく、周りから理解されづらいと言われています。発達障害の特性から、周囲の人と軋轢を感じ、困りごとを抱えてしまうこともあります。発達障害のある人自身、自分の特性を理解してソーシャルスキルトレーニングをしたり、トラブルにならないよう困りごとを減らす対処法を行ったりしている人もいます。また、本人の努力だけでは解決しない時、環境調整をしたり、周りの人のサポートを受けることで、うまくいく場合があると言われています。ですが、実際に何ができるのか、どうしたらサポートできるのか、周囲の人にとってはよくわからず、戸惑うこともあるでしょう。番組では発達障害のある人を多く雇用している企業の工夫もご紹介します。「周囲の人は何ができるのか」を考えるためのヒントがあるかもしれません。一緒に考えることで、サポートの輪が広がるUpload By 発達ナビニューステレビ番組は広く多くの人に届けることのできるメディアです。発達障害は自分とは遠い、関わりのないことだと感じている人にも、見てもらいやすいと言えるでしょう。また、映像で、当事者の方のリアルなケースを紹介することで、イメージしやすく理解を助けてくれるはずです。発達障害のある人がどんな風に暮らし、どんなことに悩んでいるのかを知る良い機会として、多くの方が、「発達障害って何だろうスペシャル」を見たならば。学校のママ友、電車でたまたま乗り合わせた乗客同士、よく行く商店街のお店の人…。地域で暮らしている多くの人たちが、発達障害について知っていたら、当事者にとっても心強いのではないでしょうか?発達障害のある人や、周りで暮らす人がどうしたら生きやすくなるのか、できることは何か。ぜひ、周りの人と番組を見て、一緒に考え、対話するきっかけにしませんか。・「発達障害って何だろうスペシャル」(NHK総合)2018年11月24日(土)21:00~21:49・出演者【司会】千原ジュニア、南沢奈央、塚原愛アナウンサー【ゲスト】小島慶子、柳家花緑、沖田×華【専門家】吉川徹発達障害って何だろうスペシャル【キャンペーン】発達障害って何だろう
2018年11月22日「発達障害って何だろう」。テーマは、発達障害を多くの人に知ってもらうことUpload By 発達ナビニュースーーNHKでは、昨年から継続的に、発達障害について取り上げています。今回のキャンペーンでは、11月中旬を中心に、さらにたくさんの番組が放送されると伺いましたが、どんな番組がありますか?NHK 齋藤真貴さん(以下齋藤さん):「今回は、11月の中旬から、約20の番組を集中して放送します。NHKラジオ第一の「すっぴん!」や、「所さん!大変ですよ」「今夜も生でさだまさし」など、バラエティ豊かな番組で、発達障害を取り上げていきます。」ーー特集番組や「あさイチ」や「ハートネットTV」などで今までも発達障害について取り上げてきたNHK。今回のキャンペーンであえて「発達障害って何だろう」をテーマとして選んだ理由は?齋藤さん:「改めて原点からスタートしようと考えました。まず、多くの人に、『発達障害とはどんなものなのか』を知識として知っていただきたいということ。そして、知ったうえで、『発達障害って何だろう』ということを考えるきっかけになれば…という思いです。」ーーLITALICO発達ナビのユーザーさんは当事者や、家族、支援者が多いのですが、発達障害を取り上げる番組があると、たくさんの方が視聴し、感想をタイムラインにあげている実感があります。齋藤さん:「これまで発達障害に関する番組を放送すると、当事者の方々やご家族から大きな反響をいただくこともあり、大変ありがたいと思っています。しかし、当事者の方の「生きづらさ」を軽減するためには、「あまり発達障害を知らない」という周囲の人に、いかに理解をしてもらうかが大切です。そこで、今回は、普段、発達障害に関心がないという人にも、幅広く知っていただくことに挑戦したいと考えました。そうした人に、いろいろなタッチポイントを作って、何らかの形で「発達障害」に触れていただき、考えるきっかけになれば…。キャンペーンのテーマでもある「発達障害って何だろう」と考える過程に、意味があると思っています。そのために、あえて今回は一般の当事者だけでなく、エッセイストの小島慶子さんや、落語家の柳家花緑さんなど、多くの著名人に番組に参加していただいています。そういった方々の力も借りて、より多くの人たちに、繰り返しでも地道に発達障害について伝えることが重要だと考えています。」テレビ番組は、まだよく知らない、関心がない周りの人の認知度をあげて、一緒に暮らしていくために何が必要かを考えるための接点となりやすいと言えます。確かに発達障害のある方の困りごとは、本人の努力では解決しないことも多い。周りの人が知らないことで、軋轢が起きているケースもあるのではないでしょうか?困っている人を街中や職場、学校で見かけたとき「テレビで見たあの特性で困っているのかもしれない」と思い当たることができれば、どうしたらよいか、その糸口になるかもしれません。そしてそんな人が社会に増えることは、発達障害のある人にとって支えとなる場合もありますね。キャンペーンの見どころは?Upload By 発達ナビニュース番組は、キャンペーンに参加する各番組の制作チームが企画しているとのこと。キャンペーン事務局でも企画の相談を受けたり、情報を紹介したりしますが、それぞれの番組らしい切り取り方も楽しみの一つです。テレビ番組を集中的に編成することで、幅広い視聴者に出会っていただける可能性が高くなります。ひとつの番組だけでなく、様々な角度から「発達障害について」知るチャンスは貴重です。齋藤さん:「このキャンペーンは、一時的なものではなく、息の長い取り組みを目指しています。11月に集中的に番組を放送するのは、言ってみればキャンペーンのスタートをお知らせする「号令」のようなものです。その後も、例えば、2分アニメシリーズ「ふつうってなんだろう?」などは、スポット的に放送されるので、いろいろな曜日、時間帯で目にするかもしれませんね。インターネットやイベントなどでも、NHKの番組や取り組みに触れていただき、それをきっかけに、みなさん一人ひとりが、発達障害について考えていく、というようなキャンペーンにできたらいいなと。これからも多面的にキャンペーンを展開していきたいと思っています。」発達障害は外見からはわかりにくいと言われています。特に、関心や接点のない人の理解を得ることは簡単ではありません。そんな時、テレビ番組で多様な角度から発達障害について映像で伝えてくれたなら…「発達障害とは何だろう」その言葉は、きっと多くの人の考えるきっかけとなってくれるのではないでしょうか。キャンペーンの概要Upload By 発達ナビニュース24日の特番「発達障害って何だろうスペシャル」を始め、さまざまなラインナップで番組が放映されます。番組放送日時はリンクからご覧ください。Upload By 発達ナビニュース放送予定・ハッシュタグで感想をつぶやこうツイッターのハッシュタグ「#発達障害って何だろう」も展開しています。Twitterをご利用の方は、ハッシュタグ「#発達障害って何だろう」でぜひ感想をご投稿ください。・発達障害の情報を集めた特設ページも開設発達障害の情報を集めたウェブサイトも展開しています。発達障害の基礎的な情報や、当事者から集めた困りごとの対処法「困りごとのトリセツ」を紹介。その他関連番組の放送予定や番組内容の詳細についても情報を掲載しています。【キャンペーン】発達障害ってなんだろう(1)「発達障害って何?」Upload By 発達ナビニュース「困りごとのトリセツ」キャンペーンや関連番組の詳細は今後も随時決定していくとのこと。最新情報は上記ウェブサイトに更新されます!どうぞお楽しみに!画像提供:NHK
2018年11月20日気温がぐっと低くなり冷え込んでくると、風邪や季節性の病気が流行しやすくなります。そこで、予防として大切になってくるのが「手洗い」と「うがい」の徹底です。手洗いはできても、うがいがなかなか上手にできないという小さな子どもを“うがい上手”にする方法を、2歳の次男の実体験をまじえて紹介します。「ブクブクうがい」と「ガラガラうがい」の違いブクブクうがいは口の中の洗浄、ガラガラうがいは喉の洗浄のために行うもの。ウイルス対策には、ガラガラうがいの方がベストですが、ブクブクうがいでも多少の効果はあるので、やってみることがおすすめです。個人差はありますが、うがいは2~3歳でできるようになり、ブクブクうがいから先にできる子どもが多いと言われています。まずは、歯みがきのあとにするブクブクうがいをマスターしてから、ガラガラうがいの練習をするとスムーズです。うがいを練習する前に準備しておくことわが家では、うがいの実践に入る前に、まずは「うがい」ってなに?ということを理解してもらい、子どもの意欲を刺激することから始めてみました。・絵本や歌からのアプローチうがいに特化した絵本は少ないものの、歯みがきの絵本なら多くあります。絵本の中の歯みがきシーンでは必ずと言っていいほど、磨いたあとのブクブクうがいが登場するため、絵本の読み聞かせの中で、うがいの習慣を身近にしておきました。また、絵本以外には教育テレビで扱っている『はみがきじょうずかな』や『カエルのうがい』の歌がおすすめです。・好きなキャラクターのコップを選んでもらううがいを練習する年齢の子どもは、なんでも自分でやりたい期です。うがい用のコップは、好きなキャラクターや色のものを“自分で”選んでもらうと練習する意欲を楽しみながらもってもらえると思います。保育士さんがやっている方法を聞いてみました現役の保育士さんに、子ども達にうがいを教えるときはどのようにしているのかを聞いてみたところ、歯みがきからの流れで前述の『カエルのうがい』を歌うことや、ガラガラという音だけでなく、声の高さや大きさを変えながら抑揚をつけて楽しさを取り入れる方法で行っているとのこと。やはり、子どもに何かを教えるときには楽しみながらということがポイントのようです。お兄ちゃんをお手本に、いざ実践!のんびりマイペースなわが家の次男は2歳4か月。風邪やインフルエンザが流行する季節を迎える前にうがい上手になってもらうべく、練習開始です。すでにうがいマスターの5歳の長男にお手伝いをしてもらい、チャレンジしました。1.コップに水を入れずに、うがいのマネをするブクブクうがいは、口の動きをよく見せ(長男は「お水をむしゃむしゃするんだよ」という表現で教えていました)、ガラガラうがいは顔を上に向けて声を使ってマネをして見せます。2.ブクブクうがい→ガラガラうがいの順にお手本を見せる3.コップに水を入れて、口に含んで吐き出すことを一緒にやる4.(ブクブクうがいができるようになったら)ガラガラうがいは色々な声や音で変化をつけて、飽きずに繰り返し練習できるようにする※慣れるまではお風呂に入るときにやると濡れてしまうストレスから回避できます大人がやってみせるよりも、年齢が近い5歳のお兄ちゃんにお手本になってもらう方が効果的でした。練習を始めるまでは口に含んだ水を飲んでしまっていた次男でしたが、意外なことに1日目の数回の練習でブクブクうがいをマスターし、ガラガラうがいは3日目でできるように!予想以上に早く身についたことに驚きました。うがいが上手にできるようになると、病気にかかるリスクが少しでも軽減されると思います。親子で楽しみながら練習をしてみてくださいね!
2018年11月06日発達障害のある人が気をつけたい「二次障害」とは出典 : 発達障害は、注意欠陥・多動性障害(ADHD)や、自閉症スペクトラム障害(ASD)、学習障害(LD)などの先天的な脳機能の障害のことを言います。これらの障害のある人の中には、その人にあった支援やサポートが受けられない、自分の特性に合わない環境などの影響によって、二次的な合併症や行動の問題に至ってしまうことがあります。心身の症状や精神疾患、不登校や引きこもりなど、どんな二次障害が起きるかは人により異なります。また、大人になってから二次障害がきっかけで発達障害と診断されるという場合もあります。発達障害の二次障害が起きる原因出典 : 発達障害の二次障害は、家庭や学校、職場などの環境とのミスマッチによるストレスが原因で起こるものと考えられています。発達障害のある人は、その特性をまわりに理解してもらえないことが珍しくありません。そのため、発言や行動に対して、叱られたり否定的な対応をされたりすることもあります。また、感覚過敏やコミュニケーションの障害などがある人は、合わない環境で我慢を強いられたり、日常生活でも大きなストレスを感じていたりする場合もあります。このような対応が積み重なると、発達障害のある人が自分に対して否定的な考えを持ってしまったり、自尊心を低下させたりしてしまいます。それが原因で、気分の落ち込みや不安、引きこもり、暴力的な行動などが二次障害として現れることもあるのです。発達障害のある人すべてが二次障害を発症するわけではありませんが、あまりにストレスが大きかったり、ストレスへの対処がうまくいかなかった場合に発症しやすくなります。発達障害の二次障害、具体的な症状は?出典 : 二次障害の具体的な症状としては、引きこもりや暴力といった行動面の問題、不安や抑うつなどの精神的な問題、身体の不調として現れる心身症などが挙げられます。これらの症状は、「内在化障害」と「外在化障害」の2つに大きく分類されます。それぞれ詳しく見ていきましょう。自分に対するいら立ちや精神的な葛藤が、自分に向けて表現される症状のことを言います。分離不安障害、気分障害、強迫性障害などが典型的なケースとしてあり、具体的には、以下のような症状が当てはまります。・不安・抑うつ・引きこもり・対人恐怖・心身症中でも抑うつ症状は、発達障害がある青年にもっとも多い二次障害だといわれています。また、義務教育を終えた年代以降で引きこもりを続ける人には、発達障害が隠れている場合が多いことも指摘されています。これらの精神的な葛藤や問題が不登校などにつながることもあります。精神的な葛藤などが他者に向けられる形で現れる症状のことを言います。反抗や暴力、家出、ときには非行などの反社会的な行動として現れることもあります。特徴としては、思春期になってからこれらの問題を起こす子どもよりも、比較的小さいうちからそうした行動が目立つ子どものほうが多いことです。小学校低学年の頃から、他者への反抗が目立ったり、家出などを繰り返したりする子どもが一定数いるといわれています。発達障害の二次障害は、年代によって出やすい症状が異なるといわれています。・幼児期:軽度な適応行動の問題が見られることもある。・学童期:適応行動の問題が中心。学業面での問題、集団活動や対人行動における問題が目立つようになる。その他、情緒面の不安定さなどが見られることもある。・青年期:情緒面の不安定さ、精神面や行動面の問題、心身症が中心となる。適応行動の問題も見られる。・成人期:適応行動の問題、精神面や行動面の問題が中心。情緒面の不安定さなどが見られることもある。学童期において、対人関係などの問題が現れ始めた時点で適切な対応が得られないと、思春期以降になって二次障害としてさまざまな問題が前面に出やすくなると考えられています。参考書籍:齋藤万比古 (著)『発達障害が引き起こす二次障害へのケアとサポート』(学研プラス,2009)発達障害の二次障害は予防できる?出典 : 発達障害の二次障害を予防するためには、まずはまわりにいる人が発達障害に対して理解をすることが大切です。二次障害の原因となるストレスの多くは、家庭や学校、職場といった環境やそこでの人間関係から発生しています。そうしたストレスを軽減するためには、発達障害そのものの一般的な知識や、その人の特性、対応方法などを周囲が知っておく必要があります。また、本人が過ごしやすいよう環境調整を行うことも大切です。このような周囲の理解が、小学生までの早い段階で得られることによって、二次障害の予防につながるのではないかとされています。小学校に進学すると、学校の教員がどう対応するかも大きな影響を与えます。家庭だけでなく、学校の担任教員にも理解を求めることが重要です。しかし、どんなにまわりが丁寧に対応したとしても、すべてのストレスをなくすことはできません。本人の心の発達をサポートすることも大切です。・まわりの人たちに受け入れられているという安心感や信頼感を持てること・他者と接する中で学びの機会を得ること・トラブルへの対処方法を学ぶこと・自分自身の障害の特性について知ることこれらのサポートを早い段階から周囲が行っていくことで、ストレスに柔軟に対応できるようになり、二次障害も起こしにくくなるといえます。発達障害の二次障害は治るのか?出典 : 発達障害は先天的な脳機能の障害であるため、発達障害そのものを治すことはできません。しかし、生育環境によって引き起こされた二次障害については、症状に合わせて医療機関などで治療を行う場合もあります。抑うつや不安といった内在化障害の場合、認知行動療法や精神療法といった心理療法、家族に対する家族療法、薬を使った薬物療法などが、必要に応じて行われます。また、暴力などの外在化障害に対しても、攻撃性をコントロールするために薬物療法が行われることもあります。状況によっては、入院して治療する場合もあります。しかし、医療機関だけで二次障害をすべて解決できるわけではありません。家庭や学校、児童福祉機関などで連携して対応していくことが必要です。発達障害の二次障害のある人や家族が利用できる相談先出典 : 発達障害の二次障害の症状や対応について、本人や家族が誰にも言えずに悩んでいることも少なくないかもしれません。そうしたときに利用できるサポートがいくつかありますので、ご紹介しましょう。まずは相談先として、以下のような支援機関があります。・精神保健福祉センター・児童相談所・子育て支援センター・発達障害者支援センターなど各機関では、本人や家族から発達障害や育児全般に関する相談を受けたり、必要時には医療機関を紹介したりもしています。このほか、各自治体では、引きこもり・不登校に対して相談や家庭訪問を行っていたり、教育委員会でも不登校に対する教育相談を実施したりしています。また、障害者福祉施設では、強度行動障害に関する研修を終えた相談支援専門員が、相談を受けつけている場合もあります。まだ医療機関にかかっておらず、発達障害と診断を受けていない場合、医療機関に行くのはハードルが高いかもしれません。まずはこのような場所で、困っていることについて相談してみると良いでしょう。また、症状によっては障害者手帳の交付を受けたり、障害福祉サービスが受けられたりする場合もあります。地域によっては、発達障害の当事者の会や保護者の会がありますので、そうした場所で交流したり、情報収集したりするのも良いかもしれません。発達障害の二次障害がある人への対応方法出典 : では、二次障害がある人には具体的にどのように対応したら良いのでしょうか。家庭と学校、それぞれで必要な対応について見ていきましょう。親が子育てに対する自信や、子どもへの愛情を持てなくなる場合もあります。そのまま子育てに対する意欲を失ってしまうと、子どもは親から見捨てられたように感じ、二次障害から不登校などにつながっていくことも考えられます。また、子どもが自分の行動によって親や周囲の大人をコントロールできるという感覚を抱き、それが外在化障害につながる場合もあります。こうした問題に対応する方法として行われているのが、ペアレントトレーニングです。ペアレントトレーニングでは、親が子どもとの関わり方やその子の特性に合った子育ての方法を学びます。これが、子どもの過ごしやすい環境や、人間関係づくりに役立ち、二次障害の防止になるといわれています。学校での対応については、担当する教員だけではなく、他クラス・学年の教員や保健教諭、カウンセラーなど学校全体で連携して、支援を行っていくことが大事です。・本人に対し問題行動以外の部分に注目するつい問題行動ばかりに目がいってしまい、叱責が多くなることも少なくないでしょう。しかし、叱責ばかりが増えると自己評価の低下につながってしまいます。できていることをそのまま伝えたり、ほめたりすることも大切です。それによって、望ましい行動が増えたり、信頼関係を得たりすることにつながります。・本人以外の学級全体にも配慮する発達障害のある子どもが学級にいると、その子にばかり注意が向いてしまいがちになります。そうすると、ほかの子どもが不満を抱き、さまざまな問題が生じるきっかけとなることもあります。ほかの子どもにも、きちんと目を向けていることが伝わるような関わりを普段からしておくことが大切です。・学校全体で取り組む対応方針を教職員全員で共有し、実施していくことが重要です。一部で方針が違う対応をしてしまうと、本人の状態を悪化させたり、関係性が悪くなったりしてしまいます。・いったん対応方針を決めたら、しばらく続ける支援する方針を決めたら、効果を見るためにも2〜3週間は続けることが大事です。まわりの対応方法が変わるということは、本人にとってストレスであり、一時的に問題行動が増えてしまうこともあります。しかし、慣れればそうした行動が少なくなってくる場合もあるので、子どもの状態を見ながら継続するようにしましょう。対応方法について、ときには専門家に意見を求めることも大切です。まとめ発達障害の二次障害は、さまざまな形で現れますが、それらの多くは家庭や学校など周囲の人との関わりの中で生まれるものです。周囲の関わり方によって発生を予防していくことがまずは重要です。また気づいた段階でできるだけ早期に適切な対応を取ることができれば、悪化を防ぐことも可能だといえるでしょう。しかし、なかなか発達障害に気づくことができず、二次障害を発症して診断に至る人もいます。医療機関や支援機関などを利用しながら、日常生活における対処方法を学んだり、適切な生活環境を整えたりしていくと良いでしょう。宮本 信也 (編集), 日本発達障害福祉連盟 日本発達障害学会『発達障害医学の進歩〈23〉発達障害における行動・精神面の問題―二次障害から併存精神障害まで』(診断と治療社,2011)齋藤万比古 (著)『発達障害が引き起こす二次障害へのケアとサポート』(学研プラス,2009)古荘純一 (著, 編集), 磯崎祐介 (著)『神経発達症(発達障害)と思春期・青年期――「受容と共感」から「傾聴と共有」へ』(明石書店,2014)
2018年11月06日発達障害という言葉がずいぶん浸透してきたと感じますが、私は複雑な心境です。当事者として、思いを発信してきました。発達障害当事者も、そうでない人も、お互いに理解し合える世界を望んでいました。今の状況は、果たしてそういった世界なのでしょうか……。文・七海日常生活で ”発達障害” の使われ方が変わったネット上でもそうなのですが、私のもっと身近なところ、日常生活でも変化を感じるようになりました。ひと昔前まで、発達障害者は ”腫れ物扱い” されている印象がありました。さらにいえば、発達障害だということをカミングアウトしても、その単語自体を知らないという人もいました。今では発達障害という言葉を聞いたことがない人のほうが稀なのではないでしょうか。コミュニケーションが上手でない人を、”アスペ” と揶揄することすらありました。当人が当事者であるかどうかは別にして、差別用語として使用されていた認識です。今では、「もしかしたら私も発達障害かも……」「あの人は発達障害だから仕方ないよね」といった発言が見受けられます。以前まででも全くなかったわけではないのですが、こんなに多くなったように感じるのです。さらにいえば、ニュアンスも異なるように思います。差別用語としてではなく、ある意味 ”個性” として受け入れられている面はあるのかもしれません。錯綜する情報、発達障害の ”せい” にする人たち発達障害という単語が浸透したうえで感じるのは、情報が混乱しているというもの。主にADHDとアスペルガー症候群が取り上げられているように感じます。その2つを取っても、情報がごちゃ混ぜになっていると感じる場面が多々あるのです。例えばADHDの特徴として、長時間ひとつのことに集中できないといったものが挙げられます。いっぽう、アスペルガー症候群の特徴の中には、言葉を額面通りに受け取るといったものがあります。もちろんこれは一例で、症状はさまざま。その症状の出方も人それぞれです。上に挙げた例を見ると、どちらも社会生活を送るうえで不便をきたす可能性があります。しかしながら、ADHDとアスペルガー症候群は別物です。併発している方も確かにいますが、「集中力がないし空気を読めないから発達障害である」と決めつけるのは少々安直な考えに感じます。私はアスペルガー症候群当事者ですが、集中力がないときはないですし、不注意からミスをすることだってあります。だけど、ADHDの診断は降りていません。また、発達障害は、ADHDとアスペルガー症候群だけではありません。読み書きや計算などの能力のうち、習得や使用などに著しい困難を示す ”学習障害” も、発達障害のひとつです。よく聞くアスペルガー症候群は ”自閉症スペクトラム障害” のひとつであり、そのほかには知的障害や運動能力の遅れを伴うものなどもあります。発達障害は本来さまざまであるものの、情報が錯綜しているが故に「ADHDとアスペルガー症候群の症状の一部があるから発達障害だろう」と憶測する人も少なくないように思うのです。発達障害という言葉が浸透しているぶん、「自分は発達障害だ」「あの人は発達障害だ」と決めつけると楽になる気持ちもよくわかります。生きづらかった原因は障害の ”せい” だったのだ、と安堵した経験は私自身にもあるからです。偏見は確かに少なくなったかもしれない。だけど…前述した通り、ひと昔前はもっと偏見にあふれていたように感じます。アスペルガー症候群でいうと、”コミュニケーションができない人” というレッテルを貼られるような感覚です。しかし、私には接客経験があります。接客でいうと、クレーム処理が得意なほうでした。他の人のクレーム処理も任されていたので、そういった認識です。アスペルガー症候群と聞くと、クレーム処理が苦手なイメージがありませんか? 実際、私は真逆なのです。発達障害といっても、本当にさまざまなのです。「○○だから発達障害」というストレートな考え方は、今の状況だと少し危険だなと思います。発達障害の情報が錯綜しているぶん、「私(あの人)は発達障害だからこれもできないだろう」と、勝手な諦めも出てしまうかもしれないからです。憶測だけで自分や他人の可能性を潰すのは、非常に残念に思います。ひと昔前に比べて偏見は少なくなったと思います。偏見や差別意識をなくせれば、そういった思いもありました。その点で言えば、私の願った世界に近づいたのかもしれません。だけど、強い違和感を覚えるのはなぜなんだろう。何度も自問自答しました。今の結論では、発達障害自体が拠り所になっているだけの人が多くいるように感じるからです。発達障害は ”個性” という捉え方で良いのだと、私は思います。程度の差はあれど、みんなで手を取り合って生きていければ良いのでは、と。そういったポジティブな世界を望んでいたのだと思います。今は発達障害の ”せい” にする風潮が強すぎるのかな、と感じます。多少の安堵感は良いと思うんです。しかし、発達障害の ”せい” にして、可能性を摘んでいるような状況が、ネガティブな浸透の仕方のように感じています。当事者も、当事者であろう人も、そうでない人も。みんなが生きやすい世界が私の理想です。せっかく浸透するのであれば、わかり合い、助け合い、プラスを生み出せるような世界になるよう願っているのが、私の真意です。©PaulaConnelly/Gettyimages©fizkes/Gettyimages©praetorianphoto/Gettyimages
2018年11月05日企業のチカラで、発達障害のある子どもと家族、当事者のためにできることを考える場・ミートアップUpload By 発達ナビ編集部「LITALICO発達ナビ」では、発達障害に関するコラムの発信や、施設情報の提供などを通して、発達障害のあるお子さんや、保護者の方々の生活を取り巻く困難の解消に取り組んできました。現在は、月間300万人以上の方がサイトを訪れています。多くのユーザーの方にとって、必要な情報と出合ったり、同じような悩みを持つ仲間との交流ができる場となっています。一方で、発達ナビの力だけでは解消できない困難が多いことも事実です。そこで、発達障害にまつわるより多くの困りごとを解消していくため、さまざまな分野の企業とのコラボ企画・協業を進めています。「LITALICO発達ナビ ミートアップ」では、ゲストスピーカーをお招きし、講演や参加者の皆さんとLITALICOスタッフでのディスカッションを行っています。5回目のミートアップでは、株式会社ミュゼプラチナムでCSRを推進する柳沼政樹さんに登壇いただきました。ミュゼプラチナムでは、昨年度より社員向け研修を実施。さまざまな特性がある人にとって、働きやすい環境を推進するため、発達ナビの編集長・鈴木による研修を、全国8カ所で行い、すでに約300名の社員が参加しました。ミートアップの様子をレポート!Upload By 発達ナビ編集部今回のミートアップでは、発達障害にまつわる状況などを編集長の鈴木から紹介した後、ミュゼプラチナムの社長室広報PR課 課長とCSR推進室長をつとめる柳沼政樹さんから、発達ナビとコラボレーションして行っている社員向け研修について事例の紹介をいただきました。ミュゼプラチナムは、全国に175店舗を出店する脱毛サロンで、業界ナンバーワンシェアを誇ります。エステ業界には、ノルマのための強引な勧誘などのイメージがありますが、それを排除し、店舗というチームで評価する体制をとっています。チームで目標を達成していくためには、管理職は部下の個性を知り、個性を伸ばし、店舗の成績につなげるためにスタッフをどう導くかを柔軟に考えられる力が求められます。ですが、多忙かつ1店舗あたり多いところでは40名以上となるスタッフをまとめあげることは簡単ではありません。そこで、管理職向けの研修を全国で実施することになりました。発達ナビとコラボレーションした社内の管理職向け研修では、まず「人との違い」を意識させます。自分と他人では考え方も感じ方も違います。それを、講義だけでなくワークを通して体感してもらいます。研修のテーマは、「発達障害を知ることで、個人の凸凹を理解する」。相手に矢印を向けるのではなく、自分に矢印を向ける。何かあったときは人のせいにしない。部下のミスは自分の伝え方が悪いのではと自分を振り返る機会に――みんなが活躍できる、寛容な職場環境を作れるよう導きます。耳栓と小さなメガネのワークでは、「耳が聞こえにくいと相手の口元を見ないと何を話しているか分からない」「視野が狭いと誰が話しているか分からない」ということに気づきます。そうすることで、今まで思っていた「自分にとっての当たり前」が常識ではなく、相手がどういう思いで物を伝えようとしていたかに気づけるようになります。そして「自分だったらどうするか」という気持ちで動けるようになります。研修後には、社員からさまざまな感想が寄せられているそう。「求めているレベルの伝え方をちゃんと考えなくてはいけないと気づいた。今までは、伝わらなければ、その人はこの仕事に不向きだと判断してしまっていた」「部下に”なんでできないの”と、できない人だとレッテルをはってしまっていた。でも、自分の伝え方が悪いのか、と気づけた」柳沼さんは、「今まで多数派中心の考え方だったのが、さまざまなとらえ方をする人がいることに気づき、相手のために自分はどう伝える・行動すべきなのかと考えるきっかけを与えられる研修となった」と言います。発達ナビ編集長・鈴木からは、「一人ひとりが違うことを普段意識していない人にどう意識してもらうか」ということを体感してもらうことを目的に、ミュゼプラチナムと二人三脚で作り上げたプログラムだと説明がありました。ケーススタディを同じテーブルの参加者同士でディスカッションUpload By 発達ナビ編集部ゲストによる講演の後は、参加者が3つのグループに分かれ、次のようなケーススタディを行いました。・自閉症スペクトラムの高校生の進路選びについての悩み・帰省のため空港利用時にレストランでかんしゃくをおこしてしまった子どもへの対応についての悩み・アスペルガー症候群・ADHDのある男性の職場での悩みUpload By 発達ナビ編集部各グループで、それぞれ1つずつのケースを掘り下げ、原因や対応策、所属する会社や団体などの力で解決できることはないかをディスカッションし、発表を行いました。サービス開発だけでなく、企業のニーズに合わせたさまざまな研修を実施ミュゼプラチナム以外の企業でも、それぞれの課題・サービス内容に合わせた研修をオリジナルで作り、提供しています。例えば、店舗に発達障害のある子どもたちが訪れる機会がある企業では、実際にお客さまに対応する施設スタッフ向けに「具体的にどのように関わったらいいのか」を分かりやすく伝える研修も行っています。商品の開発や発信だけでなく、発達ナビでは、企業・団体向け研修などを通じ、より「障害のない社会へ」近づいていきたいと考えています。興味のある企業・団体のご担当の方は、ぜひ気軽にご連絡ください。◆研修に関するお問い合わせ先発達ナビ運営事務局:info@h-navi.jp◆メール送付の際は件名に下記をご入力ください。企業アライアンス宛
2018年09月15日発達障害とは?発達障害は、発達障害者支援法では「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」と定義されています。具体的にわかりやすく言うと以下のような状態です。Upload By 発達障害のキホン発達障害はその発達過程やライフステージなどで困りごとや特性が強く現れ、初めて分かるケースがほとんどです。外見からはわかりにくく、大人になっても気づかない人もいます。その特性から「困った子」と捉えられてしまうこともありますが、その子が「困っている」ことに早く気づき、周りが理解し、一人ひとりに合った対応をすることがとても大切です。発達障害は特性や現れる困りごとによって、大きくASD(自閉症スペクトラム)・ADHD(注意欠陥・多動性障害)・LD(学習障害)の3つのタイプに分けられます。Upload By 発達障害のキホン発達障害の症状・特性と困りごとUpload By 発達障害のキホン診断基準によっては広汎性発達障害・自閉症・アスペルガー障害などの名前で呼ばれることもあります。知的障害や、言葉の遅れ、感覚過敏・鈍麻がある人もいます。子育ての違和感や園や学校、乳幼児健診での指摘で気づくケースが多いと言われています。自閉症スペクトラムについてもっと詳しく知るUpload By 発達障害のキホンこれらの特性は、幼い子どもには多く見られますが、成長するにつれ同年代の子に比べて特性が目立つようになります。そのために園や学校での集団生活が難しくなってしまったり、本人の努力不足や親のしつけの問題と誤解されることも少なくありません。についてもっと詳しく知るUpload By 発達障害のキホン全体的な知的発達に比べて、学習面で大きく目立って不得意なことがあります。読めるのに書けないなど、一部だけに困りごとが表れることもあります。授業についていけなくなる、宿題をこなせないなど、小学校に進学し学習が始まって明らかになるケースが多いと言われています。学習障害についてもっと詳しく知る発達障害は、その特性や症状が一人ひとり大きく違うことが特徴です。特性や疾患、合併症が重なっていることもあります。Upload By 発達障害のキホン上記のほか、てんかん、チック、トゥレット症候群、場面緘黙、吃音などが合併することもあります。「感覚過敏があって、音に耐えられず教室を飛び出してしまう」「言葉の遅れがあって気持ちをうまく伝えられず、癇癪を起こしてしまう」など、これらの合併症と特性は密接に関係し重なり合い、困りごととなってしまうこともあります。発達障害と定型発達の境目は明確にはありません。そのため診断基準は満たさない、あるいは未診断だが発達障害の傾向のある「グレーゾーン」と呼ばれる人もいます。診断がつかない=症状や困りごとも軽度だと考えられがちでが、明確な診断名がなく、外見からもわかりにくいので、理解や支援を受けにくいこともあります。分類や定義、診断の有無にこだわらず、一人ひとりの特性の傾向を知り、本人の生きづらさを減らすことに注力できるとよいでしょう。グレーゾーンについてもっと詳しく知る発達障害の原因は?発達障害は、生まれつきの脳の機能障害が原因となって現れると考えられます。以下に、発達障害に関係のあるのではないかと考えられている脳の機能を紹介します。Upload By 発達障害のキホン発達障害のある人の脳の場合、これらの部位が小さかったり、血流が弱かったりしてうまく機能しない傾向が報告されています。この機能障害を引き起こすメカニズムは、まだはっきりとは分かっていません。発達障害に関連がある遺伝子の発見や研究も進められています。ただし、遺伝子を持っていても必ずしも発症するわけではありません。また、親から子へ必ず遺伝するものでもありません。現在「様々な遺伝的要因と環境要因が相互に影響しあって発達障害の症状が表れる」という説が有力で、すべての方にあてはまるようなただ一つの原因はないといわれています。「親のしつけ方・育て方が悪い」「親の愛情不足」といった心因論も医学的に否定されています。発達障害かもと思ったら?症状チェック・検査・診断までの流れ発達障害のサポートは、家族や本人、周りの人が「特性のために困っている」「違和感がある」などに気づくことが、最初のきっかけになります。Upload By 発達障害のキホン専門機関の中には発達検査を行っているところもあります。相談や医療期間受診の後、療育的なサポートを受けたり、医療機関で治療を受けたりするなど、必要に応じた個別の専門的なサポートを受けることになります。診断を受けなくても発達相談や子育て相談、発達支援やペアレントトレーニングなどを受けることもできます。全国の相談窓口の情報を調べる|発達障害・支援センター発達障害診療医師名簿|一般社団法人 日本小児神経学会・子育ての違和感や子どもの困りごとに早く気付くことで、より早い支援につながる・自己診断は絶対にNG。その先の対処法や支援を知るためにもまずは専門家に相談を・専門機関に相談することで、必要であれば医療機関につないでもらえる・もし発達障害ではなかったとしても、子育て相談や発達相談などの支援を受けることもできる・検査で子どもの苦手と得意を把握することで、その子にあった対処法が見つかることがある・発達支援や療育を受けることで、症状や困りごとが改善する可能性がある・診断は必須ではないが、診断があることで受けられる公的サポートもあるなどが挙げられます。発達障害は治るの?発達障害は現在、根本から治療することは難しいとされています。ですが、症状を和らげるための薬物療法や、対処法を知るための応用行動分析学に基づく療育的アプローチなどを受けることで、困りごとが改善する可能性があります。発達障害を完全に治す薬はありませんが、症状を和らげるための薬がいくつかあります。人によって合う薬と合わない薬もあり、副作用などもあるなど、現在のところ、すべての人に必ず効果があるような薬はありません。また処方は6歳以上で、成人には認可されていない薬もあります。そのため、薬物療法を進めるときは医師の判断のもと、その人の症状や状態を慎重に見ながら行うことになります。薬で症状が和らいでいる間にスキルトレーニングなどを合わせて行うとよいでしょう。Upload By 発達障害のキホン子ども自身が何に困っているかやその背景などを探り、トレーニングをしてうまくいく方法を見つけ、得意な部分を生かします。また周囲の人の理解や環境の工夫によって、症状や困りごとの改善を図ります。そうして失敗体験を減らし、成功体験を増やして適応能力を伸ばしていきます。療育方法は様々なものがあります。子どもの場合、クリニックや発達障害外来などのほか、児童発達支援や放課後等デイサービスなどで療育的支援を受けることもできます。発達が気になるお子さまが利用できる施設を調べる|LITALICO発達ナビ施設情報発達障害の生きづらさと二次障害発達障害の特性が理解されないまま生きづらさが強くなると、心の病や行動の問題など、二次的な障害を引き起こすことがあります。以下に二次障害に陥りやすいプロセスをご紹介します。Upload By 発達障害のキホン二次障害を引き起こさないためにも、その子が困っていることに早く気づき、専門機関やサポートにつながることが大切です。発達障害の特性を理解し、その子に合った対処法と過ごしやすい環境を考えサポートしていきましょう。発達障害をもっとくわしく知るリンク集発達障害の診断・検査について知る発達障害の原因について知る障害者手帳の取得法、利用できるサービスを知る障害児が受けられる福祉サービスを知る障害者が受けられる福祉サービスを知る合理的配慮の受け方、具体例を知る親子のヒント参考:発達障害とは|LITALICOジュニア参考書籍:『DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引』(医学書院)参考書籍:『ICD-10精神科診断ガイドブック』(中山書店)
2018年08月28日発達障害のある子どもや家族の困りごとを知り企業ができる可能性を探る!7月のミートアップ「LITALICO発達ナビ」では、発達障害に関するコラムの発信や、施設情報の提供などを通して、発達障害のあるお子さんや、保護者の方々の生活を取り巻く困難の解消に取り組んできました。現在は、月間300万人以上の方がサイトを訪れる規模となりました。多くのユーザーの方にとって、必要な情報と出合ったり、同じような悩みを持つ仲間との交流ができる場となっています。一方で、LITALICO発達ナビの力だけでは解消出来ない困難が多いことも事実です。そこで、発達障害にまつわるより多くの困りごとを解消していくため、さまざまな分野の企業とのコラボ企画・協業を進めていこうとしています。その一環として、始まったのが「LITALICO発達ナビ ミートアップ」。毎回、異なるゲストスピーカーをお招きし、講演や参加者の皆さんとLITALICOのスタッフでのディスカッションなど行なっています。4回目のミートアップは、2018年7月25日(水)に実施されました。LITALICO発達ナビ ミートアップの様子をレポート今回のミートアップにも、小売店、飲食店、メーカーなどから、自治体に勤務されている方まで、さまざまな業種の企業・団体などで働く方の参加がありました。4回目となった今回はゲストスピーカーとして、大人の「生き方」研究所 Hライフラボの岩本友規さんをゲストにお招きしました。Upload By 発達ナビ編集部講演に先立って、LITALICO発達ナビ編集長の鈴木悠平がLITALICOや「発達ナビ」のこれまでの取り組みとこれからについてを解説。ミートアップを開催する目的についても紹介しました。Upload By 発達ナビ編集部岩本さんは、3回の転職を経て携帯通信キャリアに勤務していた33歳のときにADHDとアスペルガー症候群の診断を受けました。その翌年から外資系企業でシニアアナリストとして活躍され、複業で発達障害のある人の「自立」や「主体性」獲得プロセスの研究や普及のための執筆、講演活動を行なっています。LITALICO発達ナビでは、以前インタビューさせていただいたこともあります。この日は、「〜いま伝えたい発達障害の私の生き方と研究〜」と題して、子どものころの発達障害による困りごとや社会人になってからの経験、現在の研究についてご講演いただきました。岩本さんの研究テーマは、自身が障害者雇用の枠で採用され、仕事する中で感じたことにありました。「配慮を受けているんだから」と言われると仕事を断れず、どんどん業務がたまってしまったそうです。配慮そのものへの疑問を抱き、「配慮がある社会」から配慮が当たり前になり、「みんながフラットに、お互いさまの精神で働く社会」になるための研究をしています。発達障害の「生き方」研究所|Hライフラボ発達障害の特性を自覚することなく過ごしてきた岩本さん。社会人生活がスタートしたとき、電話の対応でつまずきました。話を聞きながらメモをとることができなかったのです。先輩からの引き継ぎでも、メモを取れず、分からなくても聞き直したり、話しかけたりすることができないという困りごとに直面しました。疲労がたまり、うつ病で1年間休職することになります。当時は、発達障害の診断前。主治医が変わったことでうつ病ではなく、発達障害向けの薬を処方され、そこでようやく自分の状況を理解しました。しかし、「支援を受けましょう」「工夫して仕事をしましょう」というアドバイスしかなく、手探りの対策ではうまくいきませんでした。発達障害を周囲に開示していたものの、一般雇用だったこともあり、電車に乗れなくなるほど精神的に追い詰められました。このままではいけないと、「働かなければいけない」「こうであるべき」といった社会の価値観で行動するのではなく、自分にあった生き方を選択するために、障害者雇用枠で転職。「自立」「主体性」が発達障害の二次障害を防ぐという研究の目標は実体験から得たものでした。「いろんな人が、頑張って無理して一般社員として働いている。それを『おたがいさまだよね』と自然体で働ける社会をつくりたい」と発達障害がある大人の当事者が置かれている現状を変えようとしています。「『私とは違う人をどう理解するか』のスキルがあると、自分のこともよく分かる。自分のことが分かると、強み、何がやりたいかが明確になり、主体的になれて、クリエイティブになれたり、社会課題に目覚めたり…といった変化が出てくる」発達障害の有無にかかわらず、誰にでも必要とされるスキルであると考え、研修プログラムにできないかと、模索しているそうです。あったらいいサービスや商品は?各企業・業界の強みを振り返ってディスカッション!Upload By 発達ナビ編集部岩本さんの講演後は、参加者がグループワークに取り組みました。ディスカッションの前には、これまでコラムでも掲載してきた発達ナビと企業のコラボレーションの実績について事例を紹介しました。■非日常の状況でパニックを起こしやすいお子さんが、安心して空の旅を楽しめるサービス紹介の例発達が気になる子どもが安心して飛行機に乗るには?JALの子ども向けサービス活用法を徹底紹介!■服薬をしているお子さんが多く、服薬管理が大変だという声から、どのようなサービスがあるとよいかについてモニターによる意見を募集した例発達障害の薬物療法の疑問・悩みに応える情報提供を!電子お薬手帳harmo(ハルモ)×発達ナビ共同企画■さまざまな状況で迷子になる可能性があるお子さんの安心、安全のためのGPSサービス、対処法を紹介した例みんなの迷子の悩み・工夫をご紹介!迷子対策みまもり「GPS BoT」の抽選プレゼントも実施!■多様性を踏まえたマネジメントができるよう、社員向けに研修を行った例多様性を踏まえたマネジメントができるよう、社員向けに研修を行った例ワークは、会場を4つのグループに分けて実施。最初に「自社でできること・目指していること」を再確認するために、発達障害のあるお子さんや保護者が抱える課題を想定しながら理念、強み、注力領域を付箋に書き出しました。続いてグループ内で、一人ひとりが書き出した付箋を模造紙に張り出しながら、共通の課題などをグルーピングし、解決するためのアイデアをディスカッションしました。各グループでは、さまざまな業種、職種の参加者が、支援者側、当事者側からの意見を活発に交わしました。自社の商品やサービスの中に、今まで気づいていなかった価値があることに気づけたり、大人の当事者が働きやすい職場づくりの意識が高まったりしていました。LITALICO発達ナビ ミートアップは、毎月開催予定!Upload By 発達ナビ編集部ディスカッションで出た解決案について、各グループの代表者が一つずつ発表しました。「社内で発達障害の知識がないことが課題。そこが進めば個に合わせたコーチングができる。まずは上司の立場にあり、発達障害の認知ができていない人に対して、VRなど発達障害を疑似体験できるものを使いながら理解を広げられたらいいと考えた」「ファストフードなどの店舗の利用が初めてだったり慣れない人に対して、注文方法を図や動画で案内するツールがあれば安心できる。メーカーであれば、自分たちがつくっている商品を一緒につくる機会を設けることで、安心して使ってもらえるという意見が出た」全く違った分野の業界の人たちと言葉を交わしたことで、お互いにさまざまな気づきが生まれていました。LITALICO発達ナビは企業や団体の皆さんとつながり、新しいサービスや商品を作り出していきたいと考えています。また、実際にコラボレーションが実現した企画についても、LITALICO発達ナビ上で発信をしていきます。「LITALICO発達ナビミートアップ」は、これからも毎月開催予定です。それぞれの企業や団体が持っているサービスや商品の力で、社会をもっと生きやすいものにしたい!熱意のある人たちとディスカッションをしたい!という方は、ぜひご参加ください。Upload By 発達ナビ編集部次回のゲストは、株式会社ミュゼプラチナム社長室広報PR課、CSR推進室の柳沼政樹さまです。LITALICO発達ナビとミュゼプラチナムでは、昨年度より、「発達障害について正しい理解をすることで、日々のチーム運営、店舗運営に貢献する」を目的に、発達障害の理解と、一人ひとりの多様な特性のちがいをふまえたコミュニケーションのあり方について学ぶ、管理職向け勉強会を全国で実施してきました。ゲストトークでは、ミュゼプラチナムがなぜ発達ナビとの合同勉強会を実施するに至ったか、多様性理解に向けた企業としての思いや取り組み、勉強会を実施したあとの受講者の反響などをお話いただきます。実際に発達ナビとのコラボ企画実現に至った企業さまからの実践報告として、参加者の皆さんにご参考にしていただける点も多くあるかと思います。ぜひご参加ください!次回のミートアップは、8月29日(水)に開催します!【日時】8月29日(水) 19:00-21:30【場所】株式会社LITALICO東京本社〒153-0051東京都目黒区上目黒2-1-1中目黒GTタワー16F【交通案内】東京メトロ日比谷線・東急東横線「中目黒駅」東口より徒歩1分【対象】企業にお勤めの方で、発達障害のあるお子さまや保護者さまの抱える困りごとの解決に関心をお持ちの方、発達ナビとのコラボレーション企画を希望される方【参加費】2,000円※発達ナビに会員登録されている方は1,500円【プログラム】①発達ナビのこれまでの取り組みと今後の展望紹介②ゲスト講演:株式会社ミュゼプラチナム 柳沼政樹さま③質疑応答④企業の力で発達障害の課題解決を考えるワークショップ⑤参加者同士の交流・懇親会(ドリンク・軽食あり)【お申込み締切】2018年8月15日(水)15:00※応募者多数の場合、抽選とさせていただく場合がございます。※締切後、8月16日(木)〜8月20日(月)の間に参加可否の結果ご連絡をいたします。多くの方のご参加をお待ちしております!イベントは毎月開催しているので、8月の参加が難しい場合も9月以降のご参加お待ちしております。また直接イベントには参加できないけれど、「ビジネスの力で発達障害のある子どものために何かしたい!LITALICO発達ナビとこんなことができるのではないか?」という方は、ぜひ下記メールアドレスにお問い合わせください。◆お問い合わせ先info@h-navi.jp◆メール送付の際は件名に下記をご入力ください。企業アライアンス宛
2018年08月09日自分の好みや体型に合ったファッションを、思い切り楽しみたい――。こんなありふれた願いを、「身体に障がいがある」という理由で諦めなくてはいけない人たちがいます。「障がい者用のダサい服は、もう着たくない」そんな声を聞いて立ち上がったのが、ファッションデザイナーで「a.ladonna.(アラドナ)」の代表、加藤千晶(かとう・ちあき)さん。ファッションブランド「a.ladonna.」の代表を務める加藤千晶さん。「障がいのある人のために服を作ろうとすると、どうしても“介護者に寄り添った服”になってしまう。それは機能的なだけで、デザインとしてはダサいことが多いんです」加藤さんはこう話します。その現実を目の当たりにしたとき、培ってきた自身のデザインが役に立てるかもしれないと一念発起。“障がいのある方と共に着られる服”をテーマに、新しいライン「a.ladonna.+(アラドナプラス)」を立ち上げました。ここでは、そんな加藤さんの怒りを抱えながら疾走したアパレル時代、人から必要とされる喜びに目覚めた今、そして一歩先に描いたビジョン……など、彼女のヒストリーに迫ります。■“怒り”が仕事への原動力だった——加藤さんが幼い頃から描いていたというデザイン画を拝見したのですが、「本当に子どもが描いたの?」とつっこみたくなる完成度の高さでした。ちゃんと描き始めたのは小学校4年生くらいの頃です。“お絵描き”という感覚ではなく、ちゃんと“デザイン”というものを意識していたのを憶えています。デザインの背景にあるストーリーまで鮮明に思い描いていましたね。加藤さんが小学生時代に描いていた、洋服のデザイン画。「このデザイン画が、私の今の仕事の原点になっています」と話しながら見せていただいた。「こんな髪型のこんな人が、こんなポージングで着ているんじゃないか」というような(笑)。——視点がもはやプロ並みですね。デザイナーさんはやはり、そういう感覚でお仕事をされている方が多いのでしょうか。「こんな人が、こんな風に身にまとってくれたら素敵なんじゃないか」というところからデザインするのが理想の姿だと私は思っています。でもファッション業界も大きく変わってきていて……。ファストファッションが大量に入ってきてからは、やはりブランドからそんな余裕がなくなってしまったように見えます。去年売れたデザインをアレンジするとか、他社で売れているデザインをコピーするとか、そんな方法が一般的になったのかな。——そうしたファッション業界の変化を、加藤さんはどのように捉えていたのでしょうか?職人の技術によってつくられるファッションに憧れを持って飛び込んだからこそ、20代は本当に苦悩の日々でした。業界に対しても、自分の会社に対しても、世の中に対しても、とにかく不満だらけ。怒りを原動力にしてデザインを描いていました。特に疑問に感じていたのは、「技術はないけれど価格が安い」という理由で縫製がどんどん海外へ発注され、日本の職人さんたちがことごとく食べていけなくなったこと。今日履いているこのブーツ、何度も修理し直しているんですが、20代の頃お世話になった職人さんに作ってもらった当時のブランドのサンプルなんです。加藤さんが職人さんに作ってもらったブーツ。20代の頃からメンテナンスをしながら履き続けている。——素敵ですね。とても味があるというか。当時、私が任されていたブランドの靴を作っていた方の作品です。小さなブランドでしたけど、親身になってどんなお願いにも答えてくれて、アドバイスもしてくれて……。でもある日その方から電話がかかってきて。「加藤さん、来年の展示会の分、作れなくなった。もう、(店が)回らんわ」と言われました。業界のコスト削減の煽りをモロに受けてしまったんですよね。その後その工場は倒産して、連絡が取れなくなってしまった。そのとき、私の中で糸が切れちゃったんです。こんな正直者がバカを見る世界、嫌だなって。それでポーンと会社を辞めてしまいました。■たどり着いたのは“身体障がい者の方と共に着られる服”——ご自身のブランドである「アラドナ」を立ち上げられたのは、どんなことがきっかけだったんですか?他業界に転職しようと思ったんですけど、やっぱり経験がないからことごとく面接で落とされてしまって。貯金が千円もなくなって「あ、死ぬな」って思ったときに、もう一度自分にじっくり向き合ってみたんです。そこで気づいたのは、私は決して洋服が嫌いになったわけじゃないということ。自分の置かれた環境が許せなかったけど、小さい頃からあんなに大好きだった服を、結局は嫌いになれないということでした。だけど会社に戻る気にはなれない。それならつくってしまおう、と。——貯金千円以下のところから会社を立ち上げるのは大変だったのでは?まずは商社と契約をして、フリーデザイナーとしてデザインを売ることから始めました。2年間で資金を貯めて、以前お世話になっていた工場や職人さんに連絡をして。「ひとりで会社をつくろうと思うんですけど、予算もないし、手広くもできないんです」ということを正直に伝えたところ、何人かの方が力を貸してくれて、なんとか立ち上げることができました。今から10年前、29歳のときです。——その10年の間に加藤さんがたどり着いたのが、“身体障がい者の方と共に着られる服”だったのですね。そうなんです。ブランドを立ち上げて、細く長くデザインをつくり続けていくうちにたどり着いたのが、流行にとらわれず使い捨てでもない、男女問わず自由気ままに着られる服でした。どんな体型の方も着こなせるようにファスナーの代わりにゴムのデザインバリエーションを増やしたり、肌触りの良い素材を使用していたのですが、その発想がバリアフリーとしての機能と合致して。たまたま私がつくっている服を見た福祉関係の知人が、「これって障がいのある人でも着られそう。そういうラインつくれないの?」と声をかけてくれて、3年前に“身体障がい者の方と共に着られる服”「アラドナプラス」として発足。そこからは、生地屋さん、縫製屋さん、モニターの皆さんと何度も意見を交わしパターンを引き直しながら、ようやく最近、最初のサンプルが完成したんです。■介護者のためだけに作られた服に、一石を投じたい——これまで普通のアパレルしか経験のない中で、難しい挑戦だという感覚はありませんでしたか?むしろ「自分こそ役に立てるかもしれない」と思いました。ユニバーサルデザインではなく通常のアパレルで経験を積んでいて、ハイファッションまで網羅する技術もある。着やすくてスタイリッシュな服なら、私に任せて欲しい!と思ったんです。着る人ではなく、介護する人のためだけに考えられたデザインって例えば、(脱がしやすくするために)洋服に巨大なファスナーリングがついていたりする。私だったら絶対にそのようなデザインにはしませんから。——巨大なファスナーリング、たしかにデザイン的にはいけてないですね……。やはり障がいのある方の中には、服に対して不満を抱えているケースが多いですか?多いですね。特に女性でユニバーサルデザインの服を好んで着ている方って、本当に少ないんですよ。理由はひとつ。とにかく「ダサい」から。こんな服を着るくらいなら、着にくいけれど一般の市販服を我慢して着たほうがいいという方が多いんです。特別扱いして欲しくない、健常者と同じ服が着たい、と。——おしゃれを楽しみたい人にとって、選べる服が少ないのは悲しいですよね。今回ブランドのモデルを務めてもらった女性は、右半身麻痺の障がいがある方なんです。「アラドナプラス」では、クラウドファンディングにて資金を募っている。ブランドのモデルを務めている女性も当事者のひとり。もともとおしゃれが大好きだったのに、「車椅子に座ってしまったら、どうせデザインなんて見えない」「普通の服を買ってもひとりでは着られない」といった理由で買い物にも行かなくなって、どんどん閉鎖的な性格になってしまったそうなんです。そうやって諦めなくてはいけないことが増えていくのって、すごく悲しいなと思って。気に入ったものを身につけている時って、本当に気分がいいじゃないですか。そういう、ささやかだけどすごく大切な喜びを取り戻してもらうための架け橋になりたいな、と。■“自立服”の確立を目指して——怒りが原動力だった20代の頃と比べると、ずいぶん仕事へのスタンスが変化したのでは。そうですね。ずっと「打倒・ファストファッション!」みたいな反骨精神でやってきたんですけど、最近やっと“競争”じゃなくて“共存”なのかな、と思えるようになりました。マジョリティが必要とするところじゃなくて、そこからこぼれたところで求めてくれている人たちがいるなら、そこを埋めていくのが私の役割なんだと今は思います。あとはやっぱり、助けてくれた職人さんたちへ恩返しがしたいという気持ちが強いですね。——「アラドナプラス」への挑戦が、自分のビジョンを明確にしてくれたんですね。そうですね。今クラウドファンディングで出資を募ってるのですが、なかなか一筋縄にはいかないと感じることもあります。でもすべて自分で決めてやっているし、我慢だとは思っていません。長期戦になるとは思うけれど、待てるようになりました。実は、挑戦してみたいことがもうひとつあって。「アラドナプラス」には“自立服”という側面もあるんですけど、高齢者の方にもどんどん着ていただきたいと思っているんです。障がいのある方と同じように、“自分で選んで自分で着られる”という体験が、高齢者の方が自分らしくおしゃれを楽しむことができるきっかけにも繋がるはず。高齢者数がピークを迎える2025年までに、この自立服というジャンルを確立させることが今の目標なんです。こうやって新しいビジョンを描いては、逆算しながら生きている。それが私らしい生き方なのかな、と今は思います。クラウドファンディングは7月31日まで実施中です。支援はこちらから!取材・Text/波多野友子Photo/小林航平加藤千晶プロフィールファッションデザイナー・衣裳作家/a.ladonna.合同会社代表/一児の母ブランド名:CHIAKI-a.ladonna.JAPAN/ a.ladonna.+“ひとりからみんなへ 日本から世界へ” 環境や労働問題などを解決するため、ALL-WINの価値観でファッション業界から新たな基準を創り、未来の子供たちに美しい地球と心身を残していくことをミッションとしている。同じ価値観の企業とも契約を交わし、イノベーションやプロジェクトを生み出し中。 webサイト:
2018年07月27日『グッド・ドクター』(フジテレビ系)第1話が7月12日に放送された。山崎賢人が、自閉症スペクトラム障がいでコミュニケーションに障がいがある一方、サヴァン症候群で驚異的な暗記力を持つ小児外科医・新堂湊を演じる本作。湊は子どもを助けるために一生懸命だが、人の気持ちを推し量ることができない。「僕は人と違います」。胸が締め付けられるようなセリフは、たくさんのことを私たちに問いかけた。■サヴァン症候群で小児科を目指すことができるか幼いころから小児科医になることを夢見てきた新堂湊(山崎)は、レジデントとして小児外科の世界に飛び込むことになる。期待に胸を弾ませて迎えた初出勤。湊は途中で事故に遭遇するが、暗記している膨大な医療データから最良の方法でケガをした子どもに応急処置を施し、なんとか東郷記念病院にたどり着く。救出した子どもの母親からは深く感謝される湊だったが、指導医の瀬戸夏美(上野樹里)とともに小学1年生の将輝の病室を訪れた際、ある問題を起こしてしまう。横紋筋肉腫が再発した将輝に対し、両親の意に反して真実を打ち明けてしまい、母親から「二度と近づかないで」と非難されてしまったのだ。夏美からの「カルテには書かれていないそれぞれの事情がある。ご両親の気持ちがわからないの?」という問いに、「わかりません」と即答する湊。事故現場での正確な対応といった医師としての優れた能力が明かされた一方で、コミュニケーションが苦手である湊に立ちはだかる壁が、早くも浮き彫りになったかのようにみえたのだが…。■湊と子どものピュアな心に、あふれる涙その後、将輝の容体が急変。居合わせた湊は「早くオペしないと死んでしまいます」と、一刻も早い手術を望むが、「触らないでください。ほかの先生を呼んでください」と声を上げる母親。しかし湊は苦しむ将輝を前に居ても立っても居られない。結果として看護師・橋口(浜野謙太)の協力もあり無事に高山(藤木直人)が手術することとなり、将輝は一命を取り留めた。手術を終え、湊に対して「先生が気づいてくださらなかったら、今頃あの子は。それなのに私、大変失礼なことを。本当にごめんなさい」と頭を下げる母親。だが湊はそんな母親に「僕は人と違います。慣れています」とほほえむ。さらに息子がかわいそうだと話す母親に「かわいそうじゃありません。かわいそうなのは、病気であることです」とまっすぐに伝えるのだった。ドラマの最後に明かされたのは、将輝が退院を待ち望んでいた理由。それは早く小学校に行くことではなく、ママの誕生日をおうちで祝ってあげたいということ。つらい状況でも、母親のことを思う子ども。そして、そんな子どもの本音に寄り添う湊のピュアな思いに心が温まるが、同時にさまざまな感情が交錯し、溢れる涙を抑えることができなかった。■自分の子どもが病気だったら…親に突き付けられる難題終始、胸が苦しくなるようなセリフの連続だった第1話。なかでも印象的だったのは「先生たち、自分の子どもを“ああいう人”に任せられますか?」というセリフ。これは、湊が将輝に再発を勝手に告知してしまったことに激怒した母親が、担当医に発した言葉だ。辛辣(しんらつ)な言葉だが、親であれば気持ちがまったく理解できないわけではないから、心苦しい。子どもが命に関わる大きな病にかかったとき、どんな医師に診てもらえたらが安心かといえば、腕もよく、親の気持ちを理解してくれる医師なのかもしれない。けれども、もしも逆の立場だったら? 自分が湊の母親だったら? そう考えると、より一層胸が痛む。そして、そんな行き場のない切なさを癒やしてくれるのもまた、湊の優しさにほかならない。患者より接待ゴルフを優先する医師、規則に縛られ担当医の指示だけに従う医師、障がいがあるというだけで切り捨てようとする医師、はたまた「大人になれない子どもをなくしたい」と切に願う医師。一体、名医=グッド・ドクターとは何だろうか。視聴者は多くのことを自問自答しながら、ドラマと向き合っていくことになりそうだ。■役者・山崎賢人が語る大きな使命とは山崎が自閉症スペクトラム障がいの医師を演じるということで、放送前から注目を集めていた本作。第1話が放送されるやいなや、演技を絶賛する声がSNSに上がった。山崎は、特徴的な手や視線の動き、こわばった表情などを細やかに表現。一方で、子どもに頬をつねられたり、子どもと一緒に絵を描いたりするシーンで見せる、柔らかな表情も絶妙だった。小児外科医は医師全体の0.3%しかいないというセリフがドラマ内であった。山崎は番組の公式インタビューで「このドラマで小児外科の現状を知っていただいて少しでも良い方向に向かえば…小児外科医を目指す方が少しでも増えたらうれしい」と話すなど、大きな使命を持ってこの作品に挑んでおり、その決意が伺える幕開けとなった。次回描かれるのは、未受診妊婦の女子高校生。破水からの緊急出産となるが、生まれてきた赤ちゃんは大きな問題を抱えていて…。『グッド・ドクター』第2話は、7月19日よる10時から放送。木曜劇場『グッド・ドクター』木曜よる10時から※山崎賢人の「崎」は、正しくは「たつさき」
2018年07月19日男の子の思春期とは?出典 : 思春期とは、子どもから大人への変化期間で、男の子の場合は11~18歳頃を指します。この時期の変化は大きく分けて、「体、心、社会的役割」の3種類となります。第二次性徴、と称される体の変化から始まり、精神面にも、社会で担う役割にも変化が訪れ、考え方や行動を改めていく必要が出てくるのです。発達障害のある子どもにとっては、この変化が怖く感じられることもあるでしょう。そして、混乱から困った行動につながってしまうこともあるかもしれません。思春期の混乱によって出てきた困った行動には、その背景要因や個人差に加え、男女のちがいも含まれます。異性である母親にとっては、どのように関わったらいいか迷う場面も増えることもあるでしょう。体の成長への対応、勉強や交友関係、ゲームとの関わりなど、発達ナビで行った「みんなのアンケート」でもさまざまな声が挙げられました。成長段階、性別、発達障害、環境など、さまざまな要素が絡むことで、問題が複雑に見えるかもしれません。ですが、この時期ならではの変化について学んでおくことで、状況の理解が進み、対処がしやすくなります。そこで、次の章から、思春期を迎えた男の子に起こる変化の内容や対処法について説明していきます。思春期の男の子に起こる変化出典 : 思春期には、体、心、社会的役割に変化が訪れます。一般的な特徴を次に示します。思春期に起こる体の変化を、第二次性徴と呼びます。生まれてすぐわかる男女の性器にみられる特徴(精巣や陰茎、女性の子宮、卵巣)が第一次性徴であり、第二次性徴は、性器以外の身体の各部分にみられる男女の特徴のことを指します。具体的な内容を、起こる順番と共に紹介します。Upload By 発達ナビ編集部胸のふくらみや生理が始まる女性と比べ、男性の体の変化は目立ちにくいとされていますが、全体的にがっしりし、体毛が濃くなることが特徴です。心の変化として代表的なものは、自意識の芽生え、恋愛感情を覚えること、イライラや不安を覚えやすくなるという点です。社会的な役割に変化が出てくることで「自分は一人の人間なんだ」という自意識が芽生えます。また、第二次性徴による体の変化に伴い「異性」「同性」という概念をより意識することで恋愛感情が生まれます。このような変化を受け、子どもの心は複雑になっていきます。心が複雑になることで、自分の中では扱いきれないテーマや感情を抱えるようになることも増え、精神が不安定になったり、イライラを覚えたりするのです。発達障害がある子どもの場合、このような変化に認知の特性が加わることで、極端な感情を持ったり、行動にうつしてしまうことがあるかもしれません。自分の内外における変化の複雑性に耐え切れず、不安定になっている点が思春期の特徴です。ライフステージが上がるごとに、社会から与えられる役割はより複雑になります。例えば、以前なら許されていたわがままも「もう大きいんだから我慢しなさい」と、とがめられたり、他人、特に異性である女性との距離感を調節する必要が出てきたりします。このように、年齢、性別、自身の性格によって社会的な役割が複雑になっていくことを認識し、それに見合った行動を取ることが求められるのです。男の子の思春期、困りごとは?男女差や個人差はある?出典 : 思春期は、自立心の芽生えから自己主張が強くなり、大人の指示に対して反発することが目立ちはじめます。思春期の男の子を育てる保護者からは「人間関係、家庭内での暴言・態度ゲーム・ネットへの依存」などにまつわる悩みが多くあげられています。発達ナビの「みんなのアンケート」でも、男の子の思春期についてさまざまな悩みや不安が寄せられました。みんなのアンケート第二次性徴による心と体の成熟のスピードなどはそれぞれ異なります。心と体の成熟スピードのアンバランスさから困難を感じている場合もあります。体は大きく成長しているのに心は幼い場合や、体の成長に対して心がませている場合もあります。男女差だけでなく、子どもに起きているトラブルの背景に何があるのかを、保護者や支援者はしっかりと見極め、無理をさせすぎないよう留意しながら年齢相応な行動ができるよう、対応していく必要があります。次に、どのように対応すればよいのかについて紹介します。思春期を迎えた男の子への対応ポイントとは?出典 : 思春期のお子さんを育てる保護者の方が感じやすいであろう悩みの背景に、「今までのわが子とちがう」という点があるのではないでしょうか。また母親の場合、異性である息子の成長に戸惑い、対応の仕方に迷いが生じて、叱ってばかりになったり、はれ物に触るように対応したりなど、コミュニケーションがうまく取れなくなる場合もあるでしょう。「勉強するゾーンと趣味のゾーンを分ける」「忘れ物しないよう置き場所を決めておく」など、環境を整えることで、子どもにとって刺激が少なくなったり、行動の切り替えがスムーズになります。そのため、ストレスや衝動的な言動を減らすことができます。自立心が芽生えはじめた子どもに対しては、今までのような「指示」する方法でのコミュニケーションは難しくなってきます。自立心の芽生えはじめた子どもにとって思春期は◇意思を示す: 自分の主張や考えの認識・表出◇考える: 自分の主張や考えを他者と調整◇解決する: 解決・妥協するという力をつけていく時期にあたります。保護者には、意思を示した子どもに対して、「考える」サポートをすることで、解決に導いていくことが求められます。この時に「気持ちを尊重して聴く」ことが、子どもが自分で自分の考えを整理し動き出す、サポートとなります。「聴く」ときのポイント・すぐに否定せず「そう」「うん」などの言葉で気持ちをいったん認める・子どもの気持ちを代弁する・どうする?どうすればいい?など、考えをたずねる気持ちを認め、代弁することで、コミュニケーションができる関係性をつくり、反発・拒否だけで終わらず、どうすればいいのかを自分で考えられる時間をつくるのです。食事中のスマホ利用がやめられない場合【指示のコミュニケーション】保護者「ごはんだよ」子ども「分かってる」保護者「分かっているなら早くスマホ見るのをやめなさい」子ども「うるせぇなぁ!」(分かってるって言ってるじゃん!)▼【聴くコミュニケーション】保護者「ごはんだよ」子ども「分かってる」保護者「そう。メールが気になるの?」子ども「…うん」保護者「何分くらいかかりそう?」(時間をおいてから)保護者「〇分たったよ。メール終わった?」「メールが気になるの?」と子どもの気持ちをいったん認めたうえで、何分くらいかかりそうかたずね、自分で考えさせるのがポイントです。思春期の子どもは、小さいころと同じようにほめられると子ども扱いされたような気持ちになることもあります。子どもの心の発達に合わせたほめ方が必要になります。ほめられることで適切な行動が増え、親子のコミュニケーションも向上します。「ほめる」ときのポイント・できないことではなく、できていることに着目する・結果ではなく努力(プロセス)に着目する・感謝や敬意を伝える・さらりとほめる◇できていることを認める例(部屋は散らかっており、お菓子をたべながらではあるが宿題をしている状況)保護者「部屋を片付けてから勉強しなさいよ!」子ども「うるせーなー」▼保護者「お、何かやってるじゃない」子ども「うん」◇子どもの年齢にふさわしいやり方で、感謝や敬意を伝える例(子どもが買い物に行ってくれたとき)保護者「わー、買い物してきてくれたのね。えらーい!」子ども「…」▼保護者「手が離せなかったから、買い物に行ってくれてほんと助かったわ。ありがとう」子ども「うん」子どもの心の発達に合わせたほめ方を心がけましょう。小さいころのように「えらーい」「すごーい」と言われると、馬鹿にされたような気持ちになることもあります。さりげなく敬意を伝えることがポイントです。また、聴きたいことがあるときは、最初から聴き出そうとするのではなく、子どもが興味のある・話したいと思っている内容をまず聴くことが大切です。大人にとって都合のいい話ばかりをさせたがると、大人と話すことに意義を感じられなくなってしまいます。ゲームやテレビ、勉強の時間など、保護者と子どもで目標となる行動を決めて紙に書きます。約束が守れたら印をつけ、記録します。ポイントがたまったら決めておいたものや好きな活動を交換できるシステムです。約束しておくことで、行動を促す際にスムーズになります。行動契約づくりのポイント・保護者が一方的に押し付けるのではなく、子どもの気持ちを受け止め、意見を聴いてからつくる・ハードルは高くせず、やればできるけれど、「継続・定着」が難しい行動を目標にする・評価のポイントを明確・具体的にする・できなかったときのリカバリー策も設ける行動契約のメリット・自己コントロールが育つ・自分の頑張りや努力が目で見て分かる・将来就労したときに給料の仕組みを理解しやすくなる異性との関わり方、距離感の教え方は?出典 : 異性との関わり方や性的なことについて、親からの自立をしようとしはじめる思春期に入ってから急に教えるのではなく、小学生のころから少しずつ教えていくと、混乱を減らすことができます。思春期に入る前から、どのように行動したらいいかを、まず家族が実践して見せることが大切です。例えば、次のようなことを家庭内で心がけるだけで子どもの理解を助けることができます。・(入浴介助が必要な子どもの場合)異性の保護者は洗い場で服を着たままで介助する・家族全員が、お風呂あがりに裸で部屋の中をうろうろしない。着替えは脱衣所か自分の部屋で行う・子どもの精神的な発達に応じて、抱っこなどのスキンシップは徐々に減らし、年齢相応のボディタッチ(肩をポンと叩くなど)に移行していく人前で裸にならない・見せないなど、自然に性を意識させていくことが大切です。また、子どもが一人になれる「マイスペース」を確保してあげましょう。部屋が難しい場合は仕切りをつくるのでも大丈夫です。着替えなど、プライベートなことはそこで行うようにします。まとめ思春期、男の子、発達障害、と関わる要素が複雑で不安を感じやすい時期なのではないでしょうか。悩みに向き合うたびに「これは時期によるものなのか、障害によるものなのか、男の子だからなのか、それとも?」と見通しの立たない不安を感じる方もおられるかもしれません。子どもの意思を尊重したコミュニケーションの取り方によって問題行動を減らしたり、性的な意識づけは家庭内で少しずつ実践を行うことで性的トラブルが起きないよう子ども自身理解を深めることができます。お子さん一人ひとりの成長を見つめながら、その時々にあった関わり方を探していけるとよいですね。
2018年07月15日読み書きが苦手な人への支援のポイントがまとまった『ディスレクシア 発達性読み書き障害 トレーニング・ブック』医学博士の平岩幹男先生が、ディスレクシアのある子どもの「読み」「書き」の困難を改善させる効果があると考える学習方法を集めたトレーニングブックです。前半は「どうして診断と対応が必要か」「フォントのさまざま」など前置きとして知っておきたいことが解説されています。そして、ひらがな、カタカナ、ローマ字を読むための練習方法を例題として段階的に紹介。後半は、ひらがなの単語の音読から文章を読み、文脈を読み取るといった練習シートもあります。例題のページに練習の進め方のポイントもきちんと記載されているので、家庭でも気軽に取り組めそうです!また、この本自体が、読むことに苦手がある子どもにも読みやすいよう、書体をはじめ文字サイズや単語の選定といった細部に配慮を施しています。最初にそれが紹介されているので、支援する人にとっても、どんな配慮が必要か、課題が何なのかをイメージして読み進められそうですね。(発行: 2018年7月5日)スモールステップで自信をつける『誤学習・未学習を防ぐ! 発達の気になる子の「できた!」が増えるトレーニング』金銭トラブルやスケジュール管理といった生活面で、発達障害のある大人の人が壁にぶつかることがあります。これは子どものころの「誤学習」(間違ったやり方で覚える)や、「未学習」(知らない、教わっていない)があることが考えられるといいます。この本では、約30年の間、療育現場に携わる橋本美恵さんと成人の当事者支援をする鹿野佐代子さんが、「誤学習」「未学習」を防ぎ、子どもたちの「できた!」を増やすトレーニングを紹介!対象は主に幼児から小学生までで、「あいさつをしない」「好きなものだけを食べてすぐに席をはなれてしまう」といった具体的な困りごとに対し、どうしたらできるようになるかを、イラストも交えて分かりやすくまとめています。紹介されている方法が「うちの子には難しい」という場合でも、工夫のポイントが解説されているので、その子に合ったトレーニングを探してみてください。(発行: 2018/5/21)子どもの発達障害とは違った問題があるーー大人の発達障害の"今"を医師が語る『大人の発達障害ってそういうことだったのか その後』5年前に発行された『大人の発達障害ってそういうことだったのか』の続編です!一般精神科医である宮岡等先生(北里大学精神科学主任教授)と児童精神科医の内山登紀夫先生(よこはま発達クリニック院長)が自閉スペクトラム症やADHDといった大人の発達障害について対談形式で意見を交わしています。「大人」と一言で言っても大学生から高齢者まで幅広く、診断や治療は複雑。子どもの発達障害については、診断や治療についてある程度、精神医学としてまとまりつつある一方で、大人になってからの診断については議論の途中だといいます。当事者だけでなく、家族や職場なども巻き込んで、不確かな情報が一人歩きしていることも。前著以降の国内外の動向や最新事情を踏まえながら、過剰診断や過小診断、支援をめぐる混乱など浮き彫りになってきた問題点にも踏み込んでいます。大人の発達障害の今の課題を知り、これからの支援を考えるためにも手に取りたい1冊です!(発行: 2018年7月1日)当事者はもちろん、企業の工夫や大学の支援まで!インタビュー満載『発達障害の人が就職したくなる会社: 発達障害者の自立・就労を支援する本2』『発達障害と仕事』に続くシリーズの新刊です!特集1「特性と困難さを理解してサポートしている働きやすい職場の条件」では、当事者が悩んでいた過去や職場で行った働きかけを率直に語っているほか、企業側などの生の声をインタビュー!障害者を雇用するための専門の部署を設けたり、発達障害のある職員のキャリア支援に力を入れていたり、勤務時間の配慮をしたりとさまざまなな取り組みをしている企業の紹介も充実しています。また、特集2の「発達障害の学生が安心して学べる優しい大学」では、発達障害のある学生にまつわる全国の統計から、学生の大学生活を支援する組織・プロジェクトの具体的な実例までを掲載。ほかにも、ハローワークが行なっている取り組み、法律から見た発達障害がある人と働くためのポイントなど、あらゆる視点でまとめられています。就職活動中の人から雇用する企業、支援する学校など多くの人にとって学びと発見がありそうです。(発行: 2018年6月30日)
2018年07月11日発達障害のある子どもや家族の困りごとに対してできることは?6月もミートアップを開催「LITALICO発達ナビ」では、発達障害に関するコラムの発信や、施設情報の提供などを通して、発達障害のあるお子さんや、保護者の方々の生活を取り巻く困難の解消に取り組んできました。現在は、月間300万人以上の方がサイトを訪れる規模となりました。多くのユーザーの方に、必要な情報と出合ったり、同じような悩みを持つ仲間との交流ができる場となっています。一方で、LITALICO発達ナビの力だけでは解消出来ない困難が多いことも事実です。そこで、発達障害にまつわるより多くの困りごとを解消していくため、さまざまな分野の企業とのコラボ企画・協業を進めていこうとしています。その一環として、始まったのが「LITALICO発達ナビ ミートアップ」。毎回、異なるゲストスピーカーをお招きし、講演や参加者の皆さんとLITALICOのスタッフでのディスカッションなど行なっています。3回目のミートアップは、2018年6月28日(木)に実施されました。LITALICO発達ナビ ミートアップの様子をレポート今回のミートアップにも、小売店、メーカー、セキュリティ会社などから、自治体に勤務されている方まで、さまざまな業種の企業・団体などで働く方の参加がありました。3回目となった今回はゲストスピーカーとしてBranch(ブランチ)代表 中里祐次さんをお招きし、スタート。Upload By 発達ナビ編集部講演に先立って、LITALICO発達ナビ編集長の鈴木が「発達ナビ」のこれまでの取り組みとこれからの展望についてを解説。ミートアップを開催する目的についても改めて紹介しました。Upload By 発達ナビ編集部Branchでは、生物、折り紙、数学、絵など様々な得意分野を持った東大の学生や専門知識を持った大人のメンターを発達障害のある子どもとマッチングし、好きなことを見つけ、伸ばしていていくことに特化したサービスを展開。「好き」で自信を創り、「好き」で社会とつながることをビジョンに掲げています。発達障害のある子どもたちは、独特な感性で興味関心のあることにとことん集中して、知識や技術を高めたりすることができたりします。一方で、その好きなことについて、友達や家族など周囲の人となかなか話が合わないこともあります。そんな子どもたちの「好き」に応えられるメンターをつないで、家庭への訪問やビデオチャットで1対1の交流を行っているのです。子どもたちは、発達障害の特性からコミュニケーションの課題や興味のあること以外の苦手が強く出ることなどで、自信をなくしてしまうこともあります。ですが、好きなことを突き詰めて話し合えたり、伸ばしてもらえる人との出会いによって、自尊心を育むことができると中里さんは語ります。講演は、「なぜやろうとしたか」「どんな相談がくるのか」「利用後の保護者の方の声」といった9つの項目がスクリーンに映し出され、参加者が聞きたいものを選んで、中里さんが回答していくスタイルで進行されました。Upload By 発達ナビ編集部Branchの構想は、アスペルガー症候群・ADD(注意欠陥症)と診断された中里さんの息子さんが、レゴが大好きで、東大レゴ部の学生と大学祭で交流して喜んでいたことで「これを自分たちが得意なインタネットサービスで開発しよう」と思い立ったのがきっかけでした。その後、発達障害のある子どもを育てる保護者、約100人に会って話を聞いたそうです。すると子どもが社会に溶け込むためのトレーニングを行っている人は多いものの、その子の突出した好きなことを伸ばす環境をどうつくればいいのか、どう自信を持たせてあげたらいいのかというところに課題を感じている人が多かったといいます。サービスを利用する保護者からは「好きなことを伸ばす」だけでなく、「好きなことを見つけて欲しい」といったことから相談が寄せられることも。最初から特別に突出した「好き」がなくても、一緒に好きなことを探していることから始めてくれます。また、利用者の子どもの中には学校でトラブルを抱えていることもあるそうですが、メンターとの交流を重ね、表情が硬かった子の笑顔が増えたり、好きな折り紙を極めていく中で学校でも折り紙好きな友達ができたりといった変化があった事例を紹介しました。「今は子どもとお兄さん、お姉さんのつながりだけど、同じ『好きなこと』を持っている子どもが東京と兵庫にいるといったことは分かっているので、いずれ離れた場所にいる子ども同士をつなぐこともできるな、と思っています」とこれからの展開についても語ってくれました。 公式サイト発達障がい児の孤独をなくし、「好き」で可能性を伸ばす:Branchのサービスについてあったらいいサービスや商品って?各企業・業界の強みからアイデアをディスカッション!Upload By 発達ナビ編集部ワークの前に、発達ナビと企業のコラボレーションの実績について事例を紹介しました。■非日常の状況でパニックを起こしやすいお子さんが、安心して空の旅を楽しめるサービス紹介の例発達が気になる子どもが安心して飛行機に乗るには?JALの子ども向けサービス活用法を徹底紹介!■服薬をしているお子さんが多く、服薬管理が大変だという声から、どのようなサービスがあるとよいかについてモニターによる意見を募集した例発達障害の薬物療法の疑問・悩みに応える情報提供を!電子お薬手帳harmo(ハルモ)×発達ナビ共同企画■多様性を踏まえたマネジメントができるよう、社員向けに研修を行った例ミュゼプラチナム×発達ナビ 発達障害への理解を深める勉強会を開催!ワークは、会場を5つのグループに分けて実施。最初に「自社でできること・目指していること」を再確認するために、理念、強み、注力領域などを一人ずつ付箋に書き出しました。「行動面」「他者とのかかわり」「過敏さ」といった発達障害のある子どもや保護者の課題の課題を確認し、どの分野に働きかけることができるか最初に書き込んだ付箋を貼りながらそれぞれの意見を交わしました。さまざまな業種、職種の参加者が、メーカー側、支援者側、当事者側からの意見などが活発に出され、自社の商品やサービスの中に、今まで気づいていなかった価値があることに気づけたり、温めていた構想の実現に気持ちを新たにする場面もありました。LITALICO発達ナビ ミートアップは、毎月開催予定!Upload By 発達ナビ編集部最後は各グループの代表者がディスカッションの内容を発表しました。「講演の事例を聞いて、『安心できる居場所』をつくってあげたいと思った。道路での飛び出し事故や思わぬけが、もしくは他害も大きな心配の原因。そうしたことを未然に防げるような場所を増やしていく必要があると思いました」「他者とのかかわりについて、大人数でのコミュニケーションが難しい子も1対1からなら始められそう。ITを活用したコミュニケーションは最初のステップとして有効なんじゃないかと考えました」全く違った分野の業界の人たちと言葉を交わし、お互いにさまざまな気づきなどが生まれていました。LITALICO発達ナビは企業や団体の皆さんとつながり、新しいサービスや商品を作り出していきたいと考えています。また、実際にコラボレーションが実現した企画についても、LITALICO発達ナビ上で発信をしていきます。「LITALICO発達ナビミートアップ」は、これからも毎月開催予定です。それぞれの企業や団体が持っているサービスや商品の力で、社会をもっと生きやすいものにしたい!熱意のある人たちとディスカッションをしたい!という方は、ぜひご参加ください。次回のゲストは、大人の「生き方」研究所Hライフラボ代表の岩本友規さまです。岩本さまは、33歳のとき発達障害の診断を受け、翌年から外資系企業でデータアナリストとしてご活躍された後、現在は精神的「自立」や「主体性」獲得プロセスの研究、普及のための執筆、講演活動をされています。イベントでは、発達障害の当事者というお立場から、多様性が活きる社会に向けてお話いただく予定です。LITALICO発達ナビでは、以前インタビューさせていただいたこともあります。■ゲスト紹介:岩本友規さまUpload By 発達ナビ編集部中央大学法学部卒業。3回の転職を経て、携帯通信キャリアに勤務していた33歳のとき発達障害の診断を受ける。翌年からレノボ・ジャパン株式会社のシニアアナリストを勤めつつ、複業で発達障害のある人の「自立」や「主体性」獲得プロセスの研究や普及活動を行う。2017年度厚生労働省委託事業「発達障害者就労支援者育成事業(南関東)」支援者向け交流会コーディネーター。2018年から明星大学発達支援研究センター研究員。日本LD学会正会員。著書に『発達障害の自分の育て方』(主婦の友社)。次回のミートアップは、7月25日(水)に開催します!【日時】7月25日(水) 19:00-21:30【場所】株式会社LITALICO東京本社〒153-0051東京都目黒区上目黒2-1-1中目黒GTタワー16F【交通案内】東京メトロ日比谷線・東急東横線「中目黒駅」東口より徒歩1分【対象】企業にお勤めの方で、発達障害のあるお子さまや保護者さまの抱える困りごとの解決に関心をお持ちの方、発達ナビとのコラボレーション企画を希望される方【参加費】2,000円※発達ナビに会員登録されている方は1,500円【プログラム】①発達ナビのこれまでの取り組みと今後の展望紹介②ゲスト講演:大人の「生き方」研究所Hライフラボ代表 岩本友規さま③質疑応答④企業の力で発達障害の課題解決を考えるワークショップ⑤参加者同士の交流・懇親会(ドリンク・軽食あり)【お申込み締切】2018年7月16日(月)15:00※応募者多数の場合、抽選とさせていただく場合がございます。※締切後、7月17日(火)〜7月18日(水)の間に参加可否の結果ご連絡をいたします。多くの方のご参加をお待ちしております!イベントは毎月開催しているので、7月の参加が難しい場合も8月以降のご参加お待ちしております。また直接イベントには参加できないけれど、「ビジネスの力で発達障害のある子どものために何かしたい!LITALICO発達ナビとこんなことができるのではないか?」という方は、ぜひ下記メールアドレスにお問い合わせください。◆お問い合わせ先info@h-navi.jp◆メール送付の際は件名に下記をご入力ください。企業アライアンス宛
2018年07月07日【イベント】車いすバスケにハンドアーチェリー、ボッチャなどパラスポーツの魅力を発信する体験会が開催!(茨城県)出典 : 年に茨城県で国民体育大会(国体)とともに開催される全国障害者スポーツ大会「いきいき茨城ゆめ大会」を前に、つくば市でパラスポーツ体験会が開かれます!つくば市が会場となっている車いすバスケットボールやハンドアーチェリーをはじめ、5種目の体験ができます。種目は、車いすバスケットボール、ハンドアーチェリー、ボッチャ、卓球バレー、ブラインドサッカー(シュートのみ)です。見たり聞いたりしたことがあるものから、「どんなスポーツなんだろう?」というものもあるかもしれませんね。パラスポーツに親しむ絶好の機会です!体験した種目を来年の大会で応援しに行くという楽しみもできそうですね。車いすバスケのみ事前申し込み制ですが、ほかの種目は当日参加自由ですので、気軽に会場に足を運んでみてください。【日時】2018年7月15日(日)13:00〜16:00【会場】桜総合体育館(茨城県つくば市金田1608番地)【内容】車いすバスケットボール、ハンドアーチェリー、ボッチャ、卓球バレー、ブラインドサッカー(シュートのみ)【持ち物】運動のできる服装、タオル、飲み物、体育館シューズ、熱中症対策に「凍らせたペットボトル」など【参加費】無料(車いすバスケのみ100円)【対象】障害の有無は不問(申込時に障害内容を確認)、車いすバスケのみ小学生以上【定員】参加自由(車いすバスケのみ定員50人、定員になり次第締め切り)【申し込み】申し込みフォームもしくは、国体推進課窓口にて直接申し込み(車いすバスケのみ)【問い合わせ】つくば市 市民部 国体推進課TEL: 029-883-1111FAX: 029-828-4966クリックするといばらき電子申請・届出サービスのページへ遷移しますつくば市パラスポーツ体験会いきいき茨城ゆめ国体・いきいき茨城ゆめ大会【ニュース】偏食や食物アレルギーなどがある子どもたちの栄養をサポート!「チョコレート味のサプリ」をつくるクラウドファンディングがスタートUpload By 発達ナビニュース発達ナビでも以前、コラムで紹介した「こどものサプリmog」が、チョコレート味のサプリメント開発に挑戦するため、クラウドファンディングを2018年7月29日まで実施しています!mogのサプリメントは、極度の偏食や除去食(アレルギーや代謝障害)、摂食障害(小食や嚥下困難)など、食事で十分な栄養をとることが難しい子どもたちのためにつくられたもので、現在はパイナップル味を製造・販売しています。食べられるものが限られ、栄養補給をサプリメントに頼らざるを得ない中で、パイナップル味の酸味が苦手という子もいました。しかし、そういった子どもでもかなりの確率で「チョコレートは食べられます」という声があったそうです。そして、より多くの子どもたちの栄養をサポートするため、今回のチョコレート味の開発が立ち上がりました!今回のクラウドファンディングで集まった資金は、開発に必要な実機試作の費用に充てられます。リターンは、応援のタイプによって6種類のコースを用意。実機試作で製造するサンプルなどがいち早く届けられます。「こんなのが欲しかった!」という人から「食事で栄養を摂るのが難しい子どもたちを応援したい」という人まで、プロジェクトを支持する人が集まって実現するといいですね。※クリックするとクラウドファンディングサービス「GoodMorning」のページへ遷移しますこども用サプリ【mog(モグ)】で、持病のある子に笑顔を!パパママに安心を!【イベント】自閉症、ダウン症などの最新の研究内容や音楽療法を紹介!NPO法人ヘルシーチルドレン・ヘルシーライブスが設立1周年記念講演会を開催出典 : 医師がレクチャーするキッチンワークショップのほか音楽療法、療育などを展開するNPO法人ヘルシーチルドレン・ヘルシーライブスの設立1周年を記念した講演会が開かれます。同NPO法人は「こどものときからの病気予防」をテーマに統合的なアプローチで活動を⾏うことを目的に、昨年7⽉に設立。当日は、小児科医・公衆衛生専門医の伊藤明子さんと音楽療法士の濱谷紀子さんが講師を務め、子どもの発達に関する医学的な最新情報や音楽療法について紹介してくれます!伊藤さんは、軽度から重度まで、発達にさまざまな課題のある子どもの体と脳の状態について、学術研究に基づいて紹介。また、自閉症スペクトラムについての脳の研究、ダウン症についての代謝系の研究など、最新研究の情報も解説してくれるそう。濱谷さんは心理的援助といった視点からも評価される音楽療法について、実際の事例に触れながら紹介します。発達が気になる子どもの支援に関わる医療者や福祉関係者、教育関係者、また保護者の方にオススメのイベントです。【日時】2018年7月15日(日)13:00〜16:00【会場】TKP赤坂駅カンファレンスセンター ホール13B(東京都港区赤坂2丁目14−27 国際新赤坂ビル 東館 13F)【参加費】3,000円【対象】医療、教育、福祉従事者、お⼦さんの発達に関して興味のある⽅【定員】180人【内容】伊藤明子氏「脳の発達・身体機能の強化と栄養」~発達障害・自閉症・ダウン症児の病態についての最新知見と対策~濱谷紀子氏「発達を助ける音楽療法」~心と身体、コミュニケーションに深くかかわる音楽療法~【申し込み】ホームページから申し込み可能【問い合わせ】NPO法人ヘルシーチルドレン・ヘルシーライブスTEL: 03-5562-8825FAX: 03-5562-8826Eメール: info@hchl.org※クリックするとNPO法人ヘルシーチルドレン・ヘルシーライブスのページへ遷移します法人ヘルシーチルドレン・ヘルシーライブス【ニュース】世界で初めての合同会議が広島で開催!「吃音・クラタリング世界合同会議 in Japan 2018」出典 : 「科学と吃音コミュニティ:ことばがつなぐ一つの世界」をテーマに世界で初めての吃音とクラタリング(早口言語症)の合同会議が日本の広島で開かれます!国際クラタリング学会、国際流暢性障害学会、世界吃音者連盟、日本吃音・流暢性障害学会、NPO法人全国言友会連絡協議会が主催。世界各国から研究者や当事者といった関係者が訪れて4日間にわたり、基調講演、交流会などが行われる予定です。ある複数の組織が吃音やクラタリングの体験や感覚、態度、認識などを共有し、効果的な連携の実現を目指すという画期的な取り組み!この合同会議によって、研究者主体の学会だけでなく、当事者団体を含む3つの国際組織と2つの国内組織による新しい連携が生まれることが期待されます。この会議は一般からの参加も可能となっています。最新の知見や海外の事例などこれまでになかった情報を得られる機会になりそうです。【日時】2018年7月13日(金)〜2018年7月16日(月)【会場】広島国際会議場(広島県広島市中区中島町1−5)【参加費】1日14,000円、4日間40,000円【基調講演】「癒しの社会基盤」Bruce Wampold博士「クラタリングの概念化に向けた3方面からのアプローチ(TPA-CC)」Florence Myers博士(ニューヨーク州ガーデンシティのアデルフィ大学)、Charley Adams博士(サウスカロライナ大学で臨床助教授)、Susanne Cook博士(吃音セラピスト)「吃音のある青年・成人に対する集団CBTアプローチの適用について」森浩一博士(国立障害者リハビリテーションセンター病院第三診療部長)「吃音・クラタリング当事者・臨床家・研究者間の協力・連携関係の育成」Annie Bradberry氏(国際吃音連盟会長)、Mitchell Trichon博士(米国音声言語聴覚協会 認定言語療法士)【申し込み】当日参加可能【問い合わせ】TEL:082-424-7179Eメール:registration@jointworldcongress.org世界合同会議ホーム【ニュース】病と向き合う子どもたちの姿に何を感じる?ドキュメンタリー映画「子どもが教えてくれたこと」が2018年7月14日に公開!Upload By 発達ナビニュース病と向き合いながら生きるアンブル、カミーユ、イマド、シャルル、テュデュアルという5人の子どもたちに密着したフランスのドキュメンタリー映画が今月、日本で公開されます!5人は動脈性肺高血圧症、神経芽腫、腎不全、表皮水疱症といった病をそれぞれ患っています。一人ひとり自分の病気についてよく理解し、そしてどう生きるかをその小さな体で考え、体現しています。懸命に日々を生きる姿から、家族や友人と過ごす時間がかけがえのないものだと改めて考えさせられます。監督はフランスの女性ジャーナリスト、アンヌ=ドフィーヌ・ジュリアン。監督自身、2人の娘を病気で亡くした経験があります。今作品は、伝統ある世界最大規模の子ども映画祭「ジッフォーニ映画祭」のGEx部門で作品賞を受賞しました。監督は作品について次のようにコメント。人生を一変させる試練というものは、自ら選んだものではないけれど、そうした試練をどのように生きるのかは自ら選ぶことができる。なぜなら人生をどのように導くか、決めることができるのは自分でしかないのだから。これもまた、彼らが気づかせてくれたことです。人の子どもたちが、見た人たちにきっと生きることへの気づきや新しい価値観を与えてくれるのではないでしょうか。(c)Incognita Films – TF1 Droits Audiovisuels【公開】2018年7月14日シネスイッチ銀座ほか全国順次公開【作品データ】監督: 脚本:アンヌ=ドフィーヌ・ジュリアン出演: アンブル、カミーユ、イマド、シャルル、テゥデュアル配給: ドマ/宣伝: VALERIA後援: 在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本日本語字幕 : 横井和子字幕監修: 内藤俊夫2016年/フランス/フランス語/カラー/80分/ヴィスタサイズ/DCP原題: 『 Et Les Mistrals Gagnants 』映画『子どもが教えてくれたこと』公式サイトまとめさまざまなジャンルの話題を紹介しましたが、気になるニュースはありましたか?障害の有無に関わらず参加できるパラスポーツ体験会をはじめ、子どもたちのためのサプリメントの開発や、保護者にも開かれた講演会など…。こうした取り組みが盛り上がることで障害のある人のことを考えたり、誰もが暮らしやすくなるための活動が全国に広がるといいですね。今後も、毎月の発達障害などに関するニュースやイベントを紹介していきます。8月に全国各地で開催されるイベント・講演会などを募集します。ぜひ情報をお寄せください!
2018年07月01日「あれ?ひょっとして音読できない…?」長女の発達が気になり、いつもの小児科へ…出典 : こんにちは。『発達障害&グレーゾーンの3兄妹を育てる母のどんな子もぐんぐん伸びる120の子育て』著者・楽々かあさんこと、大場美鈴です。今回は、グレーゾーンの娘のお話をしますね。小学校入学を心待ちにしていた娘。勉強もやる気まんまんで、ひらがなの練習も自ら進んでしていました。ところが、入学してしばらく経ったころのこと。宿題の教科書の音読が、ひらがな文があやふやで、ひと文字ひと文字拾い読み。「あれ?ひょっとして音読できない…?まあ、まだ小さいから、ひらがな読めない子も他にもいると思うケド…」なんせ、うちには字が書けない・漢字が覚えられないことで、本当に学習面でしんどい想いをしてきた長男がいます。もしかして、長女にもLD(学習障害/学習症)のうちの「ディスレクシア(読字障害/発達性読み書き障害)」の傾向があるのかもしれない…という不安が私の頭をよぎりました。そこで、まずは、「いつもの小児科」へ。うちでは、余程のことがなければ、子どもたちの発達面で気になることは、「いつもの小児科」で、カゼやアレルギー症状での受診のついでに、3人まとめてこまめに相談しています(そして「余程のこと」がある場合には、先生から専門病院に紹介状を書いて下さいます)。小さなころから娘の成長を見守り続けてくれた「いつもの小児科」の先生は、今までの成長の過程や、普段の娘の様子、他の病気との関連なども合わせて判断することができます。また、併設の内科で私も夫も時折診て頂くため、家族関係などもよくご存知の上、数多くのタイプのお子さんたちを毎日診続け、総合的な診察ができるので頼りになります。長女のように、乳児健診などで発達について特に何も言われなかった場合でも、もしも日頃のお子さんの様子から「あれ?」と疑問や不安を感じたら、まずは「いつもの小児科」で、気軽に相談してみるのがいいのではないでしょうか。「子どもの心の診療ネットワーク事業」国立成育医療研究センター娘は「発達の時差」があるだけなのかも…出典 : 「いつもの小児科」の先生は、「ひょっとして、娘にLDがあるのでは…?」という私の不安に対して、その場で絵本を読ませたり、口頭で簡単な計算問題などを出して、長女の様子(目の動かし方や、考える時間、話し方など)を観察し…「お母さん、これはね、全然大丈夫。心配いらないよ」と断言して下さいました。要するに、「これくらいであれば、通常の成長の個人差の範囲内」ということのようです。そして実際に、数ヶ月経った夏休みの最中に、娘はある時すっと、ひらがな文の音読がすらすらできるようになりました。娘は学習面では万事この調子で、「あれ?ココができないなあ」と思っても、成長を少しの間待てば、ゆっくり部分の発達も自然と育つことができるタイプのようでした。長女の発達のしかたは、発達の凸凹差が大きく「障害物」になっていた長男とはまた違っていて、部分的にほんの数ヶ月だけ、平均的な発達との間に「時差」があるだけなのかも…私はそう思うようになりました。これは、小さなころは同学年の4月5月生まれの子より、例え健全に成長していてもなんとなく2月3月生まれの子を幼く感じてしまう、「早生まれ・遅生まれ」の差に、似ているのかもしれませんね。だから、私は「自然な成長を待てば、娘の場合は問題なし!」と、気楽に構えることにしました。ところが娘自身は、次第に学習に対する自信と意欲を失いかけていったのです。その理由は、「定型発達(ニューロティピカル)」に合わせた、学校の授業進行にありました。「定型発達症候群って何?」NHK発達障害プロジェクト「こんなハズじゃないのに…」学校でできない体験を積んでしまう娘出典 : 親バカな私から見れば、娘はよく機転が利く、しっかり者の利発な子です。言葉も達者で話がとても分かり易いし、観察力が鋭く、うっかり屋の私や長男が探し物をしていると、「あ、それ、ゲンカンに落ちてたよ」なんて、いつも教えてくれます。ですから、決して「勉強のできない子」ではないと思っています。…ところが学校では、ゆっくり部分が育つまでの「発達の時差」の間に、長女は「できない体験」を積み重ねてしまいます。大半の子がひらがな文をスラスラ読めるころでも、つかえつかえ、シドロモドロになって、悔しくて泣き出してしまう。それが自然とできるころには、クラスは漢字学習に入っていて、また「漢字混じりの文が読めない」となってしまう。"それができるころ"には、みんなはまた次の学習に…常にこの繰り返し。算数も同様に、数唱も、足し算も、繰り上がりも、みんなからワンテンポ遅れた「時差」がありました。出典 : テストでも、ひらがな文が音読で読めるようになってからも、どの教科もトンチンカンな答えでペケばかり。「こえに出してよめば、イミは分かるんだけど、テストのときは、おハナシしちゃダメでしょ。でも、アタマの中でこえを出すのが、◯子、まだむずかしいから、えを見て『たぶん、こうかな?』って、こたえかいてるの…」と、娘は半ベソで訴えます。私は、長男の経験から、テストが何点でも本人を責めないようにしていますが、それでも「こんなハズじゃないのに…ホントはもっとできるのに…」と、負けず嫌いな彼女はどこか納得いかずにいる様子。6歳の娘にだって、小さなプライドはあるのです。ほんの数ヶ月待てば自然とできるのに、「ティピカルな発達」に合わせた教科書どおりの一斉授業では、いつまで経ってもクラスの中で「できない体験」が続いてしまいがちです。大人になれば、100歳も101歳も大した違いではありませんが、小さな子にとっては、ほんの数ヶ月の部分的な「発達の時差」が、大きな違いに感じられてしまいます。実は、「障害」という診断がつく程ではなくとも、この「発達の時差」によって、娘のように人知れず、悔しい想いやできない体験を積み重ねてしまうお子さんは、通常学級の中にも一定の割合いるようです。私にはむしろ、なんでもまんべんなく、平均的に育ってゆく子のほうが貴重だとすら思えます。そしておそらく、娘のこの「発達の時差」は、同級生たちが成長期の終わりを迎えるころには、ほぼ自然に解消されるものと予想されますが、その間の10数年、「できない自分」というイメージを抱えたままになってしまうのは、なんとか避けたいところです。そのために、私は「今」何ができるのでしょう。ほんの数ヶ月の「発達の時差」の間にできること出典 : まず、大事なのは娘が「自分に対する自信と、勉強に対する意欲を失わないこと」です。ここを護ってあげないと、自分に否定的なイメージができたり、本来理解力のある子であっても、勉強に対する苦手意識ができてしまったり、興味が持てずに学習機会自体が減ってしまい、本当の「学力低下」へとつながってしまう可能性があるからです。これは、グレーゾーンの子であっても起こりうる、学習面での「二次障害」だと、私は思います。経験上、これだけはなんとしても回避したいところ。そのために…出典 : まず、担任の先生が、長女のテストの点などの印象だけで、「勉強ができない子」「サボっている子」などのマイナスイメージを持たないように、私は保護者面談などで、次のように伝えました。「◯◯クリニックの先生に診察していただいたところ、娘は発達面での心配はないとおっしゃっていました。一学期はできなかったひらがな文の音読も、自然とできるようになりました。、本人も勉強に対する意欲が強く努力家なので、テストや宿題の直しもイヤがらずに家でも頑張っています。◯子は、こういう成長のしかたをする子のようです」お子さんの発達の特徴については、「お医者さんがこう言っていた」「検査結果ではこうだった」「臨床心理士さんのお話では…」など、お医者さんや専門家の意見や、客観的な「証拠」があると、理解してもらいやすくなると思います(必要に応じて文書化すると良いでしょう)。また、親の感情ではなく「事実」を伝え、できないことや心配なことよりも、できるようになったことや本人の意欲など、ポジティブな情報のほうが多くなるように伝えます。そして、診断がつく程でもないグレーゾーンの子であっても、「こういう成長のしかたをする子です」と伝え、それが「本人の努力不足」や「親の育て方のせい」などではなく、個性の一部であることを分かってもらえるまで、丁寧に説明するのがいいでしょう。出典 : また、ゆっくり部分に「発達の時差」がある間、本人は宿題にすごく時間がかかったり、今の学習単元の内容が難しく感じられると思います。この負担を減らすために、長男同様、長女の場合も「一時的に」ツールを使い、私も宿題サポートをしています。こういった、補助的なツールやサポートは、負担の大きな時期だけして、できるようになったら卒業すればいいのです。例えば、宿題の音読の負担が大きな時は、長女は「耳からの情報」は良く受け取れるので、・最初は私が文を一節ずつ読み、その後を長女が復唱する。慣れてきたら文章を次第に長くしていき、最終的には全部一緒に読む。(例:母「むかしむかし」娘「むかしむかし」→母「あるところに」娘「あるところに」→…)・よく読み間違えるところにラインを引いたり、単語を◯で囲ったりする(娘の好きな色でOK!)…など。この場合のポイントは、教科書の文字をペンや指でなぞりながら「文字と音をセットで入力し、体感して読む」ことだと思います。長女が字を目で追わずに、私の声だけを頼りに読んでいたなら、手を添えたり、「字も一緒に見てね」と声かけしました。お母さんやおうちの方が一緒に読んでくれるだけでも、負担感がずいぶん違うと思います。Upload By 楽々かあさん同様に、計算ドリルの宿題も、指やブロック、お菓子、ビーズなどは好きなだけ使って良いことにし、必要があれば、私の両手も両足も、その辺に寝転がっている次男の足の指も使いました(笑)。LDのある子に限らず、小さな子は数や量の感覚が未発達なことが多いので、「その子のタイミング」が来るまで、実物を見て、触って、確かめながら考えればいいんです。そして、長男の時の反省を活かし、長女が「宿題イヤだな、つらいな」とならないよう、「なるべく」明るく楽しいイメージでできるように心がけました(とはいえ、私もいつもニコニコしながら気長につき合えた訳ではありませんので、ご安心下さい)。そうしているうちに、「きょうは1人で読めるよ」「あ、これはユビつかわなくても、◯子わかる!」が増えてきました。出典 : そして、私の想像上の生き物である「フツーの一年生」とではなく、長女自身との比較で、「その子なりに」できるようになったこと、頑張れていること、小さな進歩などを、キモチ大盛り気味で伝えています。「最近、漢字が入ってる文も、読めるようになってきたね」「テスト、よくがんばったね。ペケのとこも意味は合ってるモン、かあちゃんならマルにしちゃう(長女の手のひらに◯)」「◯子は本当に丁寧でいい字を書くね。かあちゃん、この字大好き!」…とか。そして、学習以外のところでも、「◯子は本当に細かいことによく気がつくね。観察力がある証拠だね」「なるほど〜、さすが◯子の話は分かりやすい!賢いなあ(ナデナデ)」「◯子は踊りをすぐ覚えちゃうね。身体の動きの記憶力がいいんじゃない?」…などと、学校のテストや成績表には反映されにくい、長女のいいところ、すごいところ、素敵なところを、できるだけその都度言葉にして伝えるようにしています。長女が自分のことを肯定的に思え、好きでい続けられるのなら、私は喜んで親バカになります。たった一度の、わが子の育児です。謙虚さや奥ゆかしさが「美徳」とされる国であっても、親がわが子の素晴らしさを本人に伝えるのに、誰に遠慮することもありません。大人たちには「今」何ができるだろう出典 : 長女は今、宿題に進んで取り組み、教科書以外の勉強も自分で沢山発見しては、私に教えてくれます。それでも、「きょうはつかれてるから、がっこう休みたい。ママといっしょにいたい」と、くっついて離れないときもあります。学校のテストや成績表だけで、子どもが「自分は勉強ができない」と思い込んだり、進学を諦めたり、将来の夢が消えてしまったり、大人になっても「勉強=つらくて苦しいもの」と苦手意識を持ってしまうのは、あまりにもモッタイナイことだと、私は思います。「成長のしかたの違い」だけで、無限に広がるその子の可能性の芽が間引かれていかないように…。「個性の違い」だけで、未来を担う子どもたちのキラキラした瞳が曇らないように…。私たち大人には「今」何ができるでしょうか。
2018年06月21日最近は発達障害の情報が多く提供されていることから、「我が子も?」と心配なママも多いのではないでしょうか?発達障害の症状や、診断された場合親が注意すべき点、改善のためどんなことが出来るのでしょうか。発達障害がありながら活躍している人も沢山います。子どもの可能性を広げるために親が出来ることは?専門家にお話を伺った「ママテナ」の記事からまとめました。その1●発達障害とは?おもな発達障害は自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠如・多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)、発達性協調運動障害の4種類があります。それぞれの症状を詳しく解説しています。また「発達障害かな?」と心配になった時の相談先を紹介しています。▼続きはこちら▼その2●「グレーゾーン」と診断された時親が注意しなくてはいけないこと最近は「グレーゾーン」と診断されるケースも増えています。専門家に、この背景や、「グレーゾーン」と診断された時にとってしまいがちな親の行動や注意点を伺いました。発達障害であることを受け入れられず、特別支援学級ではなく、通常学級に通わせることで、問題が複雑化するケースもある、と言います。▼続きはこちら▼その3●発達障害改善のための方法発達障害と診断された場合、「療育」という障害をもつ子どもが社会的に自立することを目的として行われる治療と保育があります。医師の診察後、検査などでお子さんの状態を把握し、診断が出てから、作業療法士や言語療法士などによる訓練を療育センターで受けることになります。また習い事は改善に効果があるのか、専門家に聞きました。また学校で身近な「道具」を使う事で子どもの負担が軽減する方法もあります。▼続きはこちら▼その4●子どもの可能性の芽を摘まないためにできることアインシュタイン、トム・クルーズ、スティーブン・スピルバーグ、ジョン・レノン、これらの有名人の共通点は、知的には問題ありませんが、読み書きに著しい困難がある学習障害「ディスレクシア」として知られている人たちなんです。学習障害と診断された場合、子供の可能性を親はどのように育ててあげればいいのでしょうか?専門家にお聞きしました。▼続きはこちら▼
2018年06月16日子どもから大人まで。自閉症のある人が、幸せな人生を生きるためのサポートをUpload By 発達ナビ施設インタビュー仙台市の放課後等デイサービス「発達トレーニングジムしゃ〜れ」(以下、しゃ〜れ)は、就労移行支援事業所「Schaleおおまち」、さらにカフェと厨房を併設する施設です。カフェのイートインは現在お休み中ですが、クッキーやお菓子を販売しています。自閉症に特化した支援を行っており、利用者の9割がASD(自閉症スペクトラム)のある人です。現在、放課後等デイサービスに子ども36人が登録、成人は、就労移行支援に8人、自立訓練に11人が登録しています。「しゃ〜れ」を運営する「一般社団法人ぶれいん・ゆに〜くす」の歩みは、代表の伊藤あづささんと自閉症のある息子さん、親子2人の歩みでもありました。自閉症のある人のライフステージごとに必要な支援とは何か、本人と家族が地域で幸せに生きるためには何が必要か。考え抜いてサポートを続けてきた、ぶれいん・ゆに〜くすと「しゃ〜れ」の取り組みをご紹介します。「働く大人」になるために、生きる力をつける実践的な発達支援Upload By 発達ナビ施設インタビューしゃ〜れは、「発達支援トレーニングジム」と冠して、自閉症のあるお子さんが「働く大人」になるための発達支援を目指しています。アメリカ・ノースカロライナ州ではじまった、ASD(自閉症スペクトラム障害)の当事者とその家族を対象とした支援である「TEACCH」の理念を基盤に、プログラムを設計。「一人でできること」を積み上げていくために、一人ひとりの特性を自閉症eサービス開発の評価キットやTTAP(ティータップ)を使用してきめ細やかなアセスメントを行っています。その結果をもとに、その子の強みを活かした個別のプログラムを組んでいるそうです。児童指導員の引地さんに支援内容を案内してもらいました。Upload By 発達ナビ施設インタビュー引地さん「平日は、子どもたちは一人ひとりに合わせた課題に取り組みます。アセスメントを元に設定した生活スキルの課題や、パソコンを使ってのITスキルのトレーニングもやっています」ーー個別トレーニングは大人の利用者さんと子どもが一緒の空間を共有しているんですね。引地さん「子どもたちのスペースは、成人の方々のスペースとタイムシェアしているんです。午前中は自立訓練の成人利用者さん、午後の早いうちは小学生、夕方から中高生、といった感じで上手に棲み分けています。個別のトレーニングスペースはそれぞれ仕切りがあります。余計な情報が入らないためです。それぞれがトレイに順番にセットされた自分の課題に黙々と取り組みます。今来ている小学1年生のYくんは、指先を使ったトレーニングに取り組み中。教材の多くはその子に合わせて手作りしています」ーーYくん、集中していますね。手の込んだ教材がたくさんあって驚きました!伊藤さん「それはどこにも負けません(笑)。提携しているKaienさんのコンテンツも使っていますが、うちで使うために”リメイク”しています」Upload By 発達ナビ施設インタビューUpload By 発達ナビ施設インタビュー引地さん「しゃ〜れでは、ライフスキルトレーニング・プログラムとして調理スキルのトレーニングにも力を入れています。1人1台ずつクッカー(電気調理鍋)を使って調理します」ーーたくさんレシピがありますね。どれも本格的でおいしそう!引地さん「小学生は混ぜるだけのホットケーキで、”できた!”を感じてもらうところからスタートします。スタッフより上手につくる高校生もいますよ。生姜焼きや酢豚などのおかず、クリスマスにはハッシュドビーフ…前につくったものと重ならないようにと考えているうちに、レシピが増えてしまって…80〜90くらいになってしまいました(笑)」視覚からの指示を理解しやすい自閉症のある子どもに合わせ、手順書も工夫しているとのこと。手順のカードは、材料や指示は分かりやすく写真つきでまとめられています。手順ステップがずいぶんと細かいのが目を引きました。引地さん「調理しながら細かく工程を写真に撮り、言葉の説明ではなく目で見て分かり「1人で」完成できることを心がけています。”切ったものどこに入れるの?”と子どもによく聞かれるので、”材料をボウルに入れる”も工程に入っています。道具や調味料のパッケージも、実際に使う物を撮影します。食材もマス目のついたまな板を使って、何センチに切るのか分かるようにします。当日はなるべく子ども本人が1人で調理に挑戦できるようにしています。料理ができたら、お迎えに来たおうちの人にも一緒に食べてもらいます。自分でつくったら苦手な食べ物だったけど意外と食べられちゃった、という偏食のお子さんもいるんですよ」出典 : ーー併設しているカフェの厨房設備を活かした、素敵なプログラムですね!引地さん「本人にとっても親御さんやきょうだいに”美味しいね””つくったの、すごいね”って褒められることが、何にも変えられない贈り物になっています。しゃ~れで使っているのと同じクッカーを買ったり手順書を持ち帰ったりして家庭でも実践している親子もいます。美味しく楽しいトレーニングを通じて、調理スキルをはじめ段取りや買い物、栄養に関する知識など、生きていく力が習得できるといいな、と思っています」Upload By 発達ナビ施設インタビューUpload By 発達ナビ施設インタビュー将来働くことを見据えたプログラムも積極的に取り入れています。ITスキルのトレーニングやパートナーシップを結ぶKaienのツールを使い、カフェの店員役、厨房スタッフ役、お客さん役に分かれてカフェのお仕事体験もしています。指先の巧緻性を高めることと、将来の仕事につながることを見据え、袋詰め作業も取り入れています。この日も高校生がビーズとカードを袋に入れるトレーニングに取り組んでいました。引地さん「実は、近くの漢方薬局からお茶の袋詰めも請け負っているんです」ーーどういった経緯でお茶の袋詰めを?伊藤さん「知り合いの漢方薬局で2000円ぐらいする高級なお茶を売っているのを見たんです。”自分たちでパッケージしている”と聞いて、じゃあ、うちでこの袋詰めやらせてくれませんか!と言って(笑)。まず、うちの支援員でやってみて、1時間で完成できる数から単価を出しました。"この金額で発注してもらえるか、検討してください!"と…」ーー受注の金額を提示して交渉したんですね。伊藤さん「同じ仕事を同じ時間、同じ精度でやるんです。障害者だからといって値段を下げられ、報酬に差があるのはおかしな話でしょ。利用者や利用する子どもの価値を値下げしたくないと思って、強気に交渉しました。もし同じ工賃だったらうちはもっと丁寧にできますよって(笑)」ーー放課後等デイのお子さんも袋詰めをやっているのですか?伊藤さん「最初は就労移行支援の方でやっていたんですよ。でも放課後等デイの中高生が試しにやってみたら、彼らの方が圧倒的に上手だったの(笑)。私は、お金を得るための手段として働いて、誰かの役に立って喜ばれて、お給料をもらって…それで自己実現できる事が仕事と思うんです。お金のつかない仕事はない。中高生のうちにそれを経験しておくのは大事だと思うんです。取り組む際には、これはお客さんに届く商品なんだよ、と伝えます。そうすると、みんな丁寧に取り組みますし、衛生管理もきっちりやっています。実際に取引先の会社も喜んでくれていますね。袋詰めをしたら”タスク・アローワンス”と言う名前で、お手伝い分の対価が得られます。それで日曜日にファミレスで家族にご馳走したりするんですって。本人も嬉しく、励みにもなっているようですね」ーー細かい作業に見えますが、どんな風に取り組むんですか?引地さん「最初は砂や豆を使って感覚をつかみます。袋詰めには、スプーンや秤の扱いも必要になります。マスクをするなどの衛生面の管理も含めて、トレーニングしています。入れる順番、使う順番に実物を並べた見本と手順もつくって、段階を踏んで課題に取り組みます。そうやって、最終的には本人が製品をつくれるようにしています」トレーニングで終わらず、最終的には商品をつくって仕事にしてしまうとは、驚きました。地域社会との関わりを大切に、子ども達の「生きる力」を信じる「しゃ〜れ」らしい取り組みです。Upload By 発達ナビ施設インタビューその人の人生に、サポートのはしごをかけ続ける就労移行支援事業Upload By 発達ナビ施設インタビュー就労移行支援での取り組みについて、担当する李さんに伺いました。李さん「就労移行支援は制度上、最大2年使えますが、「Schaleおおまち」では就職活動まで1年半〜2年たっぷり使います。企業の仕事と利用者をつなぐジョブマッチングではなく、人と人をつなぐマンマッチングだと思ってやっています」ーーマンマッチングとは、具体的にはどういうことでしょうか?李さん「仕事が合っているということだけでなく、一緒に働く人との関係性もとても重要です。実習も2〜3日やってフィードバック、次に1週間やってフィードバック、お互いにやってみたいとなったら2ヶ月くらいやって見るなど、丁寧に時間をかけて積み上げていきます。自閉症の人は言葉のコミュニケーションだけでは難しいこともあるし、困っていても、うまく言えない人もいますよね。だから、就職後も困った時に「Schaleおおまち」を思い出して欲しいんです。その思いから、フォローアップを大切にしています」「しゃ〜れ」では、制度上の職場定着支援を終えてからも、つながりを持ち続けるケースもあります。そうすることで、14人が就職し、12人が今も就労を継続している定着率85%を実現しているとのこと。継続3年目、5年目の人も出てきているそうです。「しゃ〜れ」を卒業した利用者も気にかけ続けたいUpload By 発達ナビ施設インタビュー伊藤さん「卒業した子がどうなっているか気にかけることが必要だと思っています。放課後等デイは18歳まででしょ。特別支援学校に通っている子はB型事業所に行くことが多いから、実は「Schaleおおまち」の就労移行支援に来ることは少ないんです。そうすると支援が途切れてしまう。高校卒業後、専門学校や大学に通う場合なんかも、放課後等デイと大人の支援制度の隙間で利用できなくなってしまう場合もありますね」ーーせっかく「しゃ〜れ」と出会っても、卒業せざるをえないこともあるんですね。伊藤さん「はい、でも中学からうちに通って高校卒業後、専門学校に行きながら、2年間自費で通った利用者さんもいるんですよ。実はそのあと就労移行支援に通って今、パティシエとしてこのカフェで働いているんです!もう3年目になるかな」ーーそれは嬉しいですね!調理スキルのトレーニングがダイレクトに生きたケースですね!一度ここに来た人にかけた支援のはしごは外さない出典 : ーー卒業した利用者さんはどんな風にフォローしているんですか?伊藤さん「折々電話やメールをしたり、お母様たちとお目にかかったり、年に1回みんなで集まったり。『虹の環(にじのわ)パーティー』と呼んでいます。卒業した人や子どもが集まる会です。卒業してもそこで再会できるの。卒業した利用者と保護者の方が遊びに来て、後輩の子がつくった料理を食べるんです」ーーブログで様子を拝見しましたが、美味しそうなお弁当でした。70人分とありましたが、お子さんたちがつくったんですね!パーティーはどんな様子ですか?「卒業生には、近況を教えてもらいます。それはいい報告じゃなくてもいい。意思表示が苦手な人もいるし、ずっと同じ環境にいる子もいます。定型発達の人には分からないこともたくさんあるでしょう。発達障害のある人はエネルギーを貯めるのに精一杯チャージが必要なんです。そんな人たちが疲れた時に帰ってくる、母港の充電ステーションになりたいと思っています」ーー充電して、また外に出ていけるんですね。伊藤さん「子どもだけではなく、就労移行支援についても同じです。制度上の期間が終わったら、支援や関係が切れるんじゃないかという不安が利用者さんにありますね。でも「Schaleおおまち」では企業に確認して、誤解や行き違い、何らかのトラブルの芽があったら担当の李さんが仲立ちしています。いつも誰かが自分を気にしてくれている、と実感できることが大切だから」ーー「しゃ〜れ」「Schaleおおまち」を利用していなくても支援は続く…伊藤さん「うちに通っている間というのは、その人の人生の、切り取った何年かの支援です。でも、一度「しゃ〜れ」や「Schaleおおまち」に来たら、かけた支援のはしごは外さない。利用しなくなったとしてもそのはしごは残っていて、いざとなったら使えるということが重要だと思っています」自閉症のある子と親のために!TEACCHとの出会いが変えた支援Upload By 発達ナビ施設インタビューーーその子が生きるための力を、生涯を通じてサポートし続けるという一貫した支援方針を実感しました。そもそも「Schale」を始めたきっかけは?伊藤さん「私には今年23歳になる息子がいるんですけど、その子が4歳の時に自閉症があることが分かったんです。でも今から17、8年前って、仙台の街では自閉症のわが子に合った療育を受けられる場所がなかったんです」ぶれいん・ゆに〜くす代表の伊藤あづささんは、仙台にある福祉の大学の教員でした。当時、仙台市には母子通園型の施設は、知的・身体・精神の3障害が一緒でした。伊藤さん「例えば7月のある日、施設に行ってみたら突然、七夕さまが飾ってある。そうすると変化が苦手な自閉症の子はびっくりするわけです。息子は騒がしいところや集団がとっても苦手な子だったんです」ーー自閉症の子に特化した支援を始めたのは、それがきっかけだったんですね。伊藤さん「もう一つ、自閉症って、育てる中で障害特性があると分かるでしょ。親御さんがわが子のことを知ったり気づいたりするのにも、他の障害に比べて圧倒的に時間がかかるんです。そして、母親支援の仕組みも整っているとは言えない。お母さんは不安で、ものすごく心がざわざわして、検査して障害が分かって…いまさら障害児と言われる戸惑いもあると思うんです」伊藤さんは当初、息子さんに勉強ができるようになってほしい、学校に行って学習面で困らないようになってほしいと考え、育つ支援、療育の場が欲しかったそうです。しかし、その直後、自閉症について学ぶ中でTEACCH(ティーチ)と出会いました。伊藤さん「なんて私は愚かなお母さんだったんだろう、と痛感したんです。いわゆる学力ではなくて、自閉症のその子として、長い生涯にわたって生き抜くための力…自閉症のその人として社会の中で生きていくための知恵や、体の使い方を教えてあげられる場所が欲しいと気持ちが変わってきた」そこでたどり着いたのが、就学前から育ちの支援ができる児童デイ(児童発達支援・放課後等デイサービスの前身)という制度でした。伊藤さん「じゃあ自分たちでやろうか、と言って「しゃ〜れ」の前にやっていた事業所を始めました。で、自閉症児の療育をやるのであれば、集団じゃなくて個に応じた育ちの支援ができることをやりたいなと思ったんです。TEACCHの理念を取り入れ、「しゃ〜れ」でも一貫してそのスタイルを続けています」TEACCHはアメリカ・ノースカロライナ州で行われているASD(自閉症スペクトラム障害)の当事者とその家族を対象とした生涯支援プログラムです。伊藤さんは2010年にTEACCHの本拠地、ノースカロライナにある強度行動障害の人たちのグループホームを訪ねました。そこでは10年前まで強度行動障害のあった人が、食べたいものを食べ、自分の好みにしつらえた部屋で選択権を持って暮らしていました。そして鼻歌を歌いながら仕事をしている、その姿に伊藤さんは感動しました。伊藤さん「ここではどんなに重い障害の人でも自分の役割が果たせる。すごい!と感動しました。でもその現場を見て、アメリカでできるなら、日本でもできる、日本でできるなら仙台でもできるでしょ!って思っちゃったんです(笑)」子どもの育ちに伴走して育ってきた支援のかたちUpload By 発達ナビ施設インタビューーー放課後等デイサービスの他にも就労移行支援、カフェ…複数の形態の事業を始めたのはどうしてですか?伊藤さん「息子の育ちのステージに沿って事業が広がってきているんです。でもうちの子だけではなくて、どんな子でも、運もチャンスもあるし、力もある。そこを引き出すのが私たちの仕事だと思っています。親御さんはそうした、子どもの持っている力を信じきること。そのための応援として今、放課後等デイと成人期の支援をやっているんです」ーー息子さんは今、どうされているんですか?伊藤さん「息子は、18歳で独り立ちしました。去年の11月からは大阪の特例子会社で働いています」以前、伊藤さんは放課後等デイと就労移行支援事業所をつくったように、将来はグループホームをつくって、息子さんが住み慣れている環境で穏やかに暮らせるようにしようと考えていたそうです。伊藤さん「でも息子が18歳以降どうなるんだろう、って考えた時に、いや、ここにいたらこの子は24時間お母さんと一緒だよね。それは相当まずい!と思えた(笑)」仲間にも後押しされて、息子を手放す決意ができたという伊藤さん。伊藤さん「うちの息子は本当に重たい自閉症の子です。でもその子が今、お給料をもらって働いている。それで"どんな子でも働けるようになる"と確信しました。改めてTEACCHで育ったことの素晴らしさも感じましたね」――伊藤さん親子が特別ではない…?伊藤さん「こういう仕事もしているし、いろんな意味でいろんな人とのつながりも深かったりするので、伊藤さんだからできたんじゃないのと言われるんですが…。私はダメなお母さんだったんです。自宅の構造化も不十分で、おばあちゃんにあれこれ息子の世話を焼いてもらっていました。息子が小さい時にはくどくど叱って"お母さんと仲良しになりたい"って言われ、親子で泣いたこともあります。でもその一言で変われたと思っています。TEACCHの理念に出会い、たくさんの仲間、共感を持って手伝ってくれるスタッフもいてくれて、私を育ててくれた」――だから、どんな親子でもできると信じているんですね。伊藤さん「TEACCHには"自閉症の人は成人期に幸せでなくてはならない。またその家族も幸せでなければならない"という象徴的な言葉があります。息子が働く会社で"あせらない・あきらめない・あなどらない"、という言葉にも出会いました。自閉症のその子として、どんな子でも一人ひとりの子どもが自分自身を"いいね!"と肯定して生きていける、幸せな成人になってほしい。その子の生きる力を信じて、あきらめず、どんな手伝いができるか考え続けたいですね」伊藤さん親子のライフステージはこれからも進みます。そして、ここに集まる子どもにも大人にも、ハシゴをかけ続ける。自閉症のある子どもが幸せな働く大人になる、そんな未来を目指して、これからも「ぶれいん・ゆに〜くす」の支援は形を変え、広がっていくのかもしれません。撮影:小林啓樹(OPEN TOWN)ぶれいん・ゆにーくす
2018年06月12日発達障害のある子どもや家族の困りごとを解消するために!5月もミートアップを開催「LITALICO発達ナビ」では、発達障害に関するコラムの発信や、施設情報の提供などを通して、発達障害のあるお子さんや、保護者の方々の生活を取り巻く困難の解消に取り組んできました。現在は、月間300万人以上の方がサイトを訪れる規模となりました。多くのユーザーの方に、必要な情報と出合ったり、同じような悩みを持つ仲間との交流ができる場となっています。一方で、LITALICO発達ナビの力だけでは解消出来ない困難が多いことも事実です。そこで、発達障害にまつわるより多くの困りごとを解消していくため、さまざまな分野の企業とのコラボ企画・協業を進めていこうとしています。その一環として、先月に引き続き、2018年5月22日(火)に「LITALICO発達ナビ ミートアップvol.2」を実施。ゲストスピーカーによる講演や、さまざまな企業や団体で活躍されている皆さんとLITALICOのスタッフでのディスカッションなどを行いました。LITALICO発達ナビ ミートアップの様子をレポート今回のミートアップにも、IT企業、旅行会社、小売店、セキュリティ会社などから、保育園や学校に勤務されている方まで、多種多様な業種の企業・団体などで働く方の参加がありました。ミートアップでは、まずLITALICO発達ナビの鈴木編集長からの媒体紹介がありました。続いて、ウェブマガジン「greenz.jp」のビジネスプロデューサー・小野裕之さんによる講演が行われました。Upload By 発達ナビ編集部ウエブマガジン「greenz.jp」を運営するNPO法人グリーンズは、「一人ひとりが『ほしい未来』をつくる、持続可能な社会」を目指しています。この理念のもと、ウェブマガジンの発行のほか、さまざまなイベントを主催しています。また、「社会の中にある違和感」を解消するための取り組みを行う起業家らをメディアで取材したり、そうした人と企業や自治体とつなげて一緒にプロジェクトを行ったりもしています。例えば、次のような事例があげられました。■地方移住をしたい人、その人をサポートし地域活性化をしたい地方の鉄道会社をつなぎ、「移住者サポートつきコワーキングスペース」をオープン参考:あそこに行けば、面白いことをやってる。西日本鉄道・宮﨑泰さん×福岡移住計画・須賀大介さん×グリーンズ小野裕之が語る「HOOD天神で“はじめる”未来」■こだわりのお米を仕入れて販売しているお米屋さんと、日本橋の街づくりを担う会社をつなげ、おむすび屋さんというリアル店舗を開店。おいしいおむすびを食べながら、人と人との接点もつくりだせる場所に参考:グリーンズとトラ男が日本橋に、本屋とイベントスペースもあるけど「普通の」おむすび屋をオープンします。このように、日常生活の中にある課題に気づくだけでなく、そこから人と人・企業・行政などをつなぎ、いろんな生き方や価値観があってもいいということを体感できる場所づくりも、ビジネスとして成り立つ形で行っています。LITALICO発達ナビも、さまざまな課題に気づき、発信するだけでなく、企業や行政などとつながり、障害のない社会という「ほしい未来」をつくっていきたいと感じることができた講演でした。 By 発達ナビ編集部鈴木編集長からは、現在どのような企業とのコラボレーション実績があるのかなどについて紹介がありました。■非日常の状況でパニックを起こしやすいお子さんが、安心して空の旅を楽しめるサービス紹介の例発達が気になる子どもが安心して飛行機に乗るには?JALの子ども向けサービス活用法を徹底紹介!■多様性を踏まえたマネジメントができるよう、社員向けに研修を行った例ミュゼプラチナム×発達ナビ 発達障害への理解を深める勉強会を開催!■障害のある子どもの保護者の方の意見を取り入れて制作された商品紹介の例障害のある子どもの「ママたちの声」を生かして開発!3つの「お出かけ便利グッズ」がフェリシモから新発売あったらいいサービスや商品って?グループディスカッションで意見交換Upload By 発達ナビ編集部会場を5つのグループに分け、各グループごとに「自社のリソースと理念」をまず書き出すワークを行いました。そして、発達障害がある人の困難の例を参照しながら、「それぞれの会社のリソースでできる解決策」についてディスカッションを行いました。さまざまな業種、職種の参加者が、メーカー側、支援者側からの意見などが活発に出され、自社の商品やサービスの中に、今まで気づいていなかった価値があることに気づけた場面もありました。例えば、IT技術を活用することで、ARメガネを使って勉強することが当たり前になるかもしれないーそんな意見に、支援の仕事をしている参加者からは、「発達障害があることを保護者が受け入れるのは難しい場合もある。でもIT技術を活用し、特性によって困難になっていることをポジティブに解決できる可能性があることに気づけた」という意見も。障害のある子どもの支援をしている人や当事者・保護者と、技術を持っている人がつながる。旅行会社と工場をもつメーカーなど、異業種でもコラボレーションの可能性がある企業がつながる。それぞれの経験や技術を組み合わせることで、よりニーズにあった商品やサービスが生まれるのではという希望が、より高まるディスカッションでした。LITALICO発達ナビ ミートアップは、毎月開催予定!Upload By 発達ナビ編集部ミートアップでは、グループディスカッション後に懇親会も行い、皆さんが交流できる場を設けています。ディスカッションで興味を持った事業内容についてより深く聞くことができたり、ほかのグループの参加者とも話すことができます。参加者からは、次のような感想をいただきました。「多種多様な企業の方のお話をききながら、自分の問題の整理ができました」「いろんな人に会って、どういう想いで何をしようとしているのかも知りたいし、逆にニーズや困りごとについても知りたいです」さまざまなアイディアを実際に社会の中に生み出し、より生きやすい世界にするために、LITALICO発達ナビは企業や団体の皆さんとつながり、新しいサービスや商品を作り出していきたいと考えています。また、実際にコラボレーションが実現した企画についても、LITALICO発達ナビ上で発信をしていきます。「LITALICO発達ナビミートアップ」は、これからも毎月開催予定です。それぞれの企業や団体が持っているサービスや商品の力で、社会をもっと生きやすいものにしたい!熱意のある人たちとディスカッションをしたい!という方は、ぜひご参加ください。次回のゲストは、Branch代表の中里祐次さまです。Branchとは、発達障害のある子どもと、その子ども達が興味を持っている分野の学生や専門家などをマッチングさせ、その子の可能性を伸ばすことに取り組んでいるWEBサービスです。代表の中里さまは、発達障害のあるご自身のお子さまと過ごす中で着想を得て、Branchを立ち上げられました。イベントでは、発達障害にまつわる課題をWEBサービスの力で解決することをテーマにお話いただく予定です。■ゲスト紹介:中里祐次さまUpload By 発達ナビ編集部2007年、早稲田大学卒業後、㈱サイバーエージェント入社。子会社の㈱サイバー・バズにて広告クリエイティブのディレクションを担当し東京インタラクティブ・アド・アワード受賞。広告プランニング/商品開発経験後、子会社の㈱プーペガール取締役に就任。その後Amebaにて、ソーシャルゲームのスマートフォン対応、プラットフォームのオープン化担当、プロジェクト責任者などを経て独立。次回のミートアップは、6月28日(木)に開催します!【日時】6月28日(木) 19:00-21:30【場所】株式会社LITALICO東京本社〒153-0051東京都目黒区上目黒2-1-1中目黒GTタワー16F【交通案内】東京メトロ日比谷線・東急東横線「中目黒駅」東口より徒歩1分【対象】企業にお勤めの方で、発達障害のあるお子さまや保護者さまの抱える困りごとの解決に関心をお持ちの方、発達ナビとのコラボレーション企画を希望される方【参加費】2,000円※発達ナビに会員登録されている方は1,500円【プログラム】①発達ナビのこれまでの取り組みと今後の展望紹介②ゲスト講演:Branch代表 中里祐次さま③質疑応答④企業の力で発達障害の課題解決を考えるワークショップ⑤参加者同士の交流・懇親会(ドリンク・軽食あり)多くの方のご参加をお待ちしております!
2018年06月05日「みんなが当たり前にできていることが自分にはできない」「ママ友とよく原因不明のトラブルになってしまう」…。発達障害が広く世間に認知されるようになり、これまでの経験から「もしかして自分も?」などと感じている方も少なくないのではないでしょうか?そんな大人の発達障害(グレーゾーン含む)に悩む人のために、日常生活を上手に過ごすための具体的なノウハウを紹介したのが「ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に暮らすための本」。前回は、片づけやスケジュール管理が苦手なママのための“上手に暮らすコツやツール”をご紹介しました。著書の村上由美さんは、現在は言語聴覚士として活躍されていますが、実は4歳まで音声言語を話さなかったASD(自閉症スペクトラム)当事者です。そして、村上さんの旦那さんも、ASDに加えてADHD(注意欠陥・多動性障害)やLD(学習障害)の傾向もあり、大人になってからようやくそのことに気づいたそうです。そんな、当事者でもあり、家族でもあり、支援者でもあるという村上さんが、三つの視点から編み出した、発達障害の人が日々の暮らしがラクになるためのアイデアをおうかがいしました。お話をうかがったのは… 村上由美さん上智大学文学部心理学科、国立身体障害者リハビリテーションセンター(現・国立障害者リハビリテーションセンター)学院聴能言語専門職員養成課程卒業。重症心身障害児施設や自治体などで発達障害児、肢体不自由児の言語聴覚療法や発達相談業務に従事。現在は、自治体の発育・発達相談業務のほか、音訳研修や発達障害関係の原稿執筆、講演などを行う。著者に「声と話し方のトレーニング」(平凡社新書)、「アスペルガーの館」(講談社)、「ことばの発達が気になる子どもの相談室」(明石書店)、「仕事がしたい!発達障害がある人の就労相談」(明石書店、共著)、「発達障害の人が活躍するためのヒント」(弘文堂、共著)がある。■ママ友の世界は“究極の調整能力”が必要――今回は、ママの世界のコミュニケーションについておうかがいします。というのも、 前回 の片づけのお悩みと同様に、発達障害グレーなママからは、「ママ友とのおつき合いが苦手」という声もとても多かったのです。村上由美さん(以下、村上さん):ママ友の世界は、まさに究極の調整能力が求められますからね。そもそもおつき合いが得意でない人は、ママ友に関しては、自分ができる範囲の境界線を引くことが大切だと思います。ここまでは一生懸命やるけどこれ以上はやりません、などというふうに。もちろん断り方も大事です。「私には関係ないから」みたいな言い方をしたら、当然反感を買ってしまうので、誠意をもって対応すること。でも、それでも相手に伝わらなかったとしたら、それは仕方ないですね。相手によっては難癖をつけるのが目的な場合もありますから。自分には及ばない、できないことは、必要以上に悩んでも仕方ないので、ある程度のあきらめも必要だと思います。――ママ友の世界は、子ども同士が仲が良い、同じ園や学校といった“縛り”があるため、断りにくく感じてしまうお母さんも多いかもしれませんね。村上さん:子どものことを考えると、うまくつき合わざるを得ないのもよくわかりますよ。でも、自分の精神を病んだり、家族に悪影響を及ぼしてまでつき合う必要はないはず。「自分はどれくらいこの人たちと関わりたいのか?」ということを、きちんと見極めることが大切です。また、ママ友の世界しか頭に入らなくなってしまっていると、つい自分の居場所はそこしかないような気がしてしまいがちですが、一歩引いてみれば全然違う世界があるのです。実際、ママ友のことで悩んでいる方は、たいていほかのコミュニティーに入ったり、別の世界を見ることで、解決するケースが多いようです。物事に対する別の尺度が出てくると、気が楽になるんですね。――確かに。ただ、地域によっては、保育園・幼稚園から小学校、中学校まで1つしか選択肢がなくて逃げ場がないなんてケースもあるそうですが…。村上さん:そういう場合は、気が合えばものすごく心地良いんでしょうけど、何かあったら途端にいづらくなってしまいますよね。そうならないためにも、リスクは分散して、いろいろな逃げ場を作っておきましょう。趣味が合う友人や、独身時代の友だちなど、ママの世界とは違う世界のコミュニティーを意識して確保し、自分を一つの世界に閉じ込めないように心がけましょう。今は、SNSなども上手に利用して、自分の趣味や好きなことで仲間とつながって息抜きしているお母さんも多いようですよ。SNSはトラブルになるリスクを懸念する人もいるでしょうが、最初は特定メンバーだけフォローしたり、アプリ設定で制限を設けたりして段階的な導入でリスクを抑えられます。 ■「ほどよいおしゃべり」って、実はとっても難しい――男の人と比べて、「女の人は雑談が得意」などとよく言われますが、おしゃべりがすぎて「つい余計なことを言って相手を不快にさせてしまう」とお悩みのママもいました。村上さん:こういう方は、相手が会話の中で何を求めているのか、上手に察知できないのでしょう。例えば、食事中など第三者がいる場で、人が悩みや愚痴を打ち明ける時は、相手に共感を求めていることが多く、そういった場合に現実的なアドバイスや意見をするのはあまり歓迎されません。でも、ASD(自閉症スペクトラム)の傾向が強い人は、相手が聞き入れる体制にあるかどうかをほとんど考えずに話してしまいがちですし、ADHD(注意欠陥・多動性障害)傾向が強い人の場合は、思いついたことをその場の状況を無視して口に出してしまうことが多いので、相手の感情を害してしまうことが多いです。その場の雰囲気を感覚的につかむことが苦手な場合、まず相手は自分から意見を聞きたいのか、それとも愚痴って気分転換したいのかを観察してから発言するようにしましょう。――具体的な方法としては?村上さん:まず、相手がこの会話で何を重視しているのかを観察しましょう。例えば、ちょっと愚痴りたいだけなのか、何かアドバイスを求めているのかなど。次に、相手の話を黙って聞いてみましょう。今まで見えてこなかった相手の悩みや感情が出てくることがあります。そして、相手が伝えたいことは何か? に焦点を絞って話を聞きましょう。最後に、相手がひと息ついたり、話に区切りをつけるような言葉(例えば「まあ、仕方ないんだけどね」など)が出てきてから、自分の意見を言うようにしましょう。そして、相手が知りたくない、聞きたくないことは極力言わないように心がけることが大切です。――お話をうかがっていると、上手なおしゃべりって、かなり頭をフル回転させねばならない感じですね(汗)。村上さん:言語聴覚士として、言語リハビリや療育支援の仕事をしていると、ご家族から「せめておしゃべりでもできるようになれば」と希望されることが多いのですが、でも、雑談するためには、実はとても高度な情報のやりとりをするスキルが必要なのです。なかでも特に、非言語のコミュニケーション情報を操作するスキルがとても重要になります。会話は突然、主語や時系列、話題が変わるため、文脈から状況を推測する力が必要となり、発達障害の人にとっては難しいことが多いのです。――たわいもないおしゃべりは、誰でも簡単にできると思われがちですが、必ずしもそうではないのですね…。村上さん:最近では、発達障害は広く世間に知られるようになりましたが、言葉がひとり歩きして、「困った人たち」というレッテルばかりが増えている印象もあります。でも、実は一番困っているのは本人ですし、周囲の人も「本人が何に困っているのかよくわからないから困る」という発想の転換が必要なのだと思います。発達障害の人たちが、このようなライフスキルを身につけるためには、幼少期からのトレーニングが必要で、大人になった今はもう手遅れではないか? と思われる方もいるかもしれません。でも、村上さんのお話によると、「本人がその気になった時こそが、実は一番良いタイミング」とのこと。「大人だからこそ、言葉だけで解釈したり、達成度を数字などの尺度で確認できる強みもある」そうです。実際、村上さんは当事者でもあり、発達障害を抱える旦那さまと一緒に試行錯誤を繰り返すなかで、言葉で確認し合える大人同士だからこそ話がわかる面も多かったといいます。何を始めるのにも、遅すぎることはないのかもしれません。参考図書: 「ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に暮らすための本」 (翔泳社)大人になってから発達障害の症状に悩む人が増加しています。ここ10年で「発達障害」の知名度が飛躍的に上がったことで、「もしかして自分も…」と成人になってから気づく人が増えたのが最大の要因と思われます。発達障害の人には、「同時並行作業力が弱い」「段取りが取れない」「ケアレスミスをする」「コミュニケーションが苦手」といった特徴があり、そうした症状に悩む人のために、上手に日常生活を過ごす方法を解説。イラスト/高村あゆみ取材/文:まちとこ出版社N
2018年05月31日「みんなが当たり前にできていることが自分にはできない」「ママ友とよく原因不明のトラブルになってしまう」…。発達障害が広く世間に認知されるようになり、「もしかして自分も?」などと感じている方も少なくないのではないでしょうか?そんな大人の発達障害(グレーゾーン含む)に悩む人のために、日常生活を上手に過ごすための具体的なノウハウを紹介したのが 「ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に暮らすための本」 (翔泳社)。著書の村上由美さんは現在、言語聴覚士として活躍されていますが、実は4歳まで音声言語を話さなかったASD(自閉症スペクトラム)当事者です。そして、村上さんの旦那さんは、ASDに加えてADHD(注意欠陥・多動性障害)やLD(学習障害)の傾向もあり、大人になってからようやくそのことに気づいたそうです。そんな、当事者でもあり、家族でもあり、支援者でもある村上さんが、3つの視点から編み出した、発達障害の人が日々の暮らしがラクになるためのアイデアをうかがいました。お話をうかがったのは… 村上由美さん上智大学文学部心理学科、国立身体障害者リハビリテーションセンター(現・国立障害者リハビリテーションセンター)学院聴能言語専門職員養成課程卒業。重症心身障害児施設や自治体などで発達障害児、肢体不自由児の言語聴覚療法や発達相談業務に従事。現在は、自治体の発育・発達相談業務のほか、音訳研修や発達障害関係の原稿執筆、講演などを行う。著者に「声と話し方のトレーニング」(平凡社新書)、「アスペルガーの館」(講談社)、「ことばの発達が気になる子どもの相談室」(明石書店)、「仕事がしたい!発達障害がある人の就労相談」(明石書店、共著)、「発達障害の人が活躍するためのヒント」(弘文堂、共著)がある。■断捨離「モノが捨てられない」悩みを解決!――著書を読んで、「発達障害と長くつき合うのは、愛情じゃなくてスキルが必要」という言葉に「なるほど!」ととても納得しました。そのスキルをまとめたのが、本書というわけですね?村上由美さん(以下、村上さん):私は、かねてから、発達障害者の自立のカギは「時間、モノ、お金の管理ができること」と思っていて、最近ではそれに加えて「他人と協力できる場を持てること」「生き延びるための体力」も必要だと思っています。これらは、発達障害の人がこの三次元の世界で生きるための接着剤のようなもの。これらを介さないと、この世界の人やモノとは繋がれないので、それぞれの苦手項目を解決するためのスキルをまとめました。――今回はその中から、「モノの管理(片づけ)」についておうかがいします。というのも、発達障害グレー気味というママからは「片づけができない」というお悩みが圧倒的に多かったからです。村上さん:発達障害の人は、空間やモノへの捉え方が一般の人とは感覚的に異なるので、「片づけが苦手」という方がとても多いです。片づけについては、まず、自分にとってどういう状態が片づいているのかを明確にすることが大事です。例えば、ホテルのような整然とした部屋が良いのか、多少散らかっていても日常生活に支障がない状態なら良いのか、などというふうに。――確かに、人によって定義が全然違いますものね。でも、自分の片づけのイメージ通りに「モノを捨てられない(減らせない)」という悩みも多いようですが、これはどうしたら?村上さん:発達障害の人はモノの判断基準があいまいで、自分にとってのモノの役割を認識できていないため仕訳が苦手です。例えば、ADHDの傾向が強い人は、興味や関心に惹かれてつい使わないモノに手を伸ばしてしまいがちですし、ASD傾向が強い人は、そもそも片づけの意味や必要性を認識していないことや、人から押しつけられるとうまく断れず不要なモノが増えてしまうことも多いのです。発達障害の傾向が強い人は、自分の好みに合わないモノとつき合うのがそもそも苦手という特性を認識して、ある程度試してみて不要だとわかったら手放す覚悟が必要だと思います。――具体的な対処法としては?村上さん:まず、似たようなモノ同士をまとめます。集めたモノを比較すると、モノ本来の目的や自分の判断基準が明確になります。そこから不要なモノを間引きするのですが、判断に迷ったらいったん保留にし、モノ本来の評価と自分の感情を表などに書き出して整理しましょう。例えば、「使いにくいけど高価なモノ」は、モノ本来の評価は「使いにくい」、自分の感情は「高いから捨てるのがもったいない」になり、どちらが勝っているかがわかりやすくなるので決断しやすくなります。また、「〇〇したら使うかも」などと、条件つきで判断に迷うモノは、実際に使ってみることで結論がでます。例えば、「修理が必要なモノ」は「お金をかけて修理してまで使いたいのか?」「そこまでするのは面倒なのか?」で判断ができるはず。また、捨てるにはもったいないけど自分では使わないモノを処分するには、リサイクルショップや寄付などを利用するのが良いでしょう。 ■子どもの大量プリントやスケジュールはIT管理――家の片づけに加えて、子どもの片づけや学校の用意も加わって、お手上げ状態のお母さんもいたのですが、子どものモノの片づけはどうしたら良いでしょうか?村上さん:基本はどの片づけもだいたい同じなのですが、まず「この部屋で何をするか?」というルールを決めることが大事です。例えば、リビングは家族のパブリックスペースで、たくさんの個々人のモノが持ち込まれるので散らかりがちですが、「ごはんを食べる」「仕事をする」「勉強する」「遊ぶ」などと目的を決めると、だいたいの作業エリアが決まるので、そのために必要なモノを配置しやすくなります。子どもが勉強するなら、テーブル回りに筆記用具の引き出しや勉強本の棚を設置したり、それにまつわるモノが回る仕組みをつくります。また、子どもが片づけやすい状況になっているかも大事です。引き出しにラベルを貼って中身をわかりやすくしたり、きょうだい児がいる場合は棚を色分けするなど工夫しましょう。…とはいえ、子どもがいる場合は、そもそも整然としたホテルのような部屋を目指すのは難しいので、ある程度の妥協は必要だと思いますよ。――なるほど。また、子どもの片づけといえば、学校からの大量に配られるプリントの管理もありますが、こちらの対策は?村上さん:どんどんデジタル管理して、用済みの紙は捨てることです。紙情報は、処理して捨てるまでの流れを仕組みにしないと、どんどん積み重なって“地層化”になる一方ですよ。また、紙は検索できませんが、データなら検索できるのでとても便利。ちなみに、私はクラウド・サービス「 Evernote(エバーノート) 」を利用していますが、ほかにもプリント管理に便利なスマホのアプリなどたくさんあるのでぜひ検索してみてください。きょうだい児ごとにタグづけすれば簡単ですよ。また、IT管理は子どものスケジュール管理にも便利です。家族行事は、夫婦でGoogleカレンダーを共有し、子ども用には、プリントアウトしたモノを目につきやすいところに貼っておくことをおすすめします。子どもには、情報をITで理解するのはまだ難しいので、紙という具体化したモノで見せることが大事です。――スマホのアプリで管理するのは便利そうですね。村上さん:パソコンやスマホ、インターネットは、発達障害者にとっては三種の神器のようなもの。世の中のIT化により、社会の仕組みが発達障害の人たちが苦手とする三次元の世界から、得意な仮想空間の世界へとシフトしてきています。これらの情報機器をうまく活用すれば、生活の質を上げていくことができるでしょう。――ちなみに、ITオンチのお母さんはどうしたら良いでしょう…?(汗)村上さん:ITが苦手なお母さんは、トレイで管理することをおすすめします。目につきやすいところに「ママに渡すモノトレイ」を設置して、そこに子どもにプリントを入れてもらい、見たら即仕分けたり返事を書く、手帳やカレンダーに記入するというルールを決めましょう。また、子どもがちゃんとプリントを出せたら、たとえ内心、当たり前と思っていても、ちゃんと言葉に出してほめることが大事。できなかった時に叱るのではなく、できた時にほめることで、子どもにプリントを出す行動が定着します。■「お客様」意識のパパ、「私がやらなければ」意識のママ――なるほど。でも、いろいろお話をうかがって、これらを全部お母さんひとりでやるというのも大変ですよね…?村上さん:本当にその通りです。お母さんがやるのが大前提になってしまっていますが、これはお母さんだけの課題ではありません。協力して助け合うのが、家族の大事な役割なのですから。でも、日本の家庭は、たいてい奥さんが「プログラマー」になって細かくプログラムを組まないと、夫がうまく動いてくれないですよね(苦笑)。だから、「そんなの面倒くさくてやってられない!」と全部自分でやってしまうから、夫婦ケンカになってしまう。――おっしゃる通り(笑)。村上さん:私が思うに、多分、大半の夫は家庭に対して「お客様」感覚でいるのだと思いますよ。でも、夫は家族の一員なのだから、それは違いますよね? ですから、夫に家庭での「お客様」意識を改めてもらうことが必要です。そして同じように、お母さんも育ってきた環境や社会に求められて、家のことはすべて自分がやるものだと思いがちですが、そういう意識も変えていく必要があると思います。で、先ほどの、子どもができたらちゃんとほめるという話は、自分に対しても同じ。できて当たり前ではなく「できた私ってえらい!」と自分をきちんとほめてあげてくださいね。片づけや家事は「できて当たり前」と思われがちなうえに、消耗する行為が多いもの。でも、できて当たり前ではないこと、できたら自分をほめてあげる習慣をもつことで、自分自身にも片づけの習慣が定着するかもしれません。後編では、ママ友との「コミュニケーショントラブル」についておうかがいします。参考図書: 「ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に暮らすための本」 (翔泳社)大人になってから発達障害の症状に悩む人が増加しています。ここ10年で「発達障害」の知名度が飛躍的に上がったことで、「もしかして自分も…」と成人になってから気づく人が増えたのが最大の要因と思われます。発達障害の人には、「同時並行作業力が弱い」「段取りが取れない」「ケアレスミスをする」「コミュニケーションが苦手」といった特徴があり、そうした症状に悩む人のために、上手に日常生活を過ごす方法を解説。イラスト/高村あゆみ取材・文/まちとこ出版社N
2018年05月24日