ていねいにスキンケアしているのに肌の調子が悪い……それ、体内の栄養不足が原因かも。「肉食美肌」を提唱する皮膚科医の肌は、自力で潤い“保湿いらず”というから、試してみない手はありません!「クリニックを訪れる40代、50代の女性は、ほぼ全員といっていいほどキメが荒れていて、肝斑なのか、くすみなのか、シミなのか……茶色の濃淡に赤みが合わさったような肌色で、ブルドッグのように皮膚が伸びてたるんでしまっている人が大勢。こじらせまくった、という感じです」そう話すのは、あいこ皮フ科クリニック院長の柴亜伊子先生。美容情報があふれている昨今、マッサージや美顔器のしすぎが逆効果、というのも一理あるようだが……。「なにより問題なのは、毎日の食事。肌をつくるタンパク質、特に動物性タンパク質である肉・魚・卵を食べずに、お菓子やパン、パスタの糖質ばかりという人が目立ちます。栄養状態が悪いため、皮膚がスカスカというか、フニャンフニャンというか。まったくもってハリがありません。10年前と比べると一見みなさん若い雰囲気ですが、肌年齢自体は老けている、という印象です」また、40代の肌というのは、20代のころと比べると、単純に倍の年月の紫外線を浴びてきている。「そのぶん、光老化が進んでいることになります。紫外線の害はある程度、体内の鉄分が防いでくれますが、やはりこれも食事から摂取できていない人が非常に多い。そればかりか、20~30年分の月経による鉄分の流出があるため、どんどん紫外線に負けやすくなっています。さらに、鉄分がないとコラーゲンをつくることができないため、ますますシワやたるみがひどくなって――まさに悪循環といえます」では具体的に、どんな食生活をめざせばよいのか。「ズバリ、美肌に必要なタンパク質や鉄分を含んだ『牛肉の赤身!』と言いたいところですが……日ごろ食べ慣れていない人は、体内で消化液がつくれないことも考えられます。いきなりステーキを食べるには、胃もたれなどの不調を招きがちなので、あまりおすすめできません。量も本来、食べられるならいくらでも食べていいのですが、最初は100グラムを超えないように、1回50~80グラムくらいから始めてみるのがいいでしょう。それも難しいときは、ひと口でもふた口でもかまいません。おいしいと思える程度にとどめましょう」肉の摂取量が自分の消化能力を超えてしまうと、未消化のタンパク質が発酵してガスを発生させたり、悪玉菌のエサになったり。「その結果、おなかが張り、腸内環境が悪化し、さらなるガスが発生して……おならや便のにおいがきつくなるなど負のスパイラルに。こういった症状が出ると『お肉が悪い!!』『自分の体質には合わない!!』と思い込み、二度と食べようとしない人が出てきますが、悪いのは肉ではなくて、本当はその人の胃腸のほう。肉は本来、雑食動物である人間には必要な食べ物であり、“合わない人”というのはいないはず。いつしか自分で合わなくしてしまった、ということなのです」
2019年05月22日なんだかぐっすり寝た気がしない、朝から体だるい…。もしかしたら寝る環境に原因があるかも! そこで、精神科医がすすめる理想の寝室環境と女子に人気の快眠グッズをご紹介します。文・椎原茜そのプチ不調、ストレスによる「脳腸疲労」かも!4月からの新年度で、就職や仕事の異動など、職場の環境が変化した人も多いのでは? そんな新しい環境ではや1か月。もしかしたら、不眠や頭痛、めまい、胃腸の不調・生理不順・血圧上昇などのプチ不調に悩まされている方もいるかもしれません。精神科医で産業医の古賀良彦先生は、こうした漠然とした体調不良を訴える女性が、この時期、増える傾向がみられるといいます。古賀先生 このような不調があるにも関わらず、診察や検査を進めてもはっきりとした身体的原因がわからないことも少なくありません。ストレスが積み重なり、身体のバランスが乱れることによって自律神経が適切に機能できなくなることで生じる心身症の可能性もあります。よくみられるのは、ストレスによる腹痛、下痢や便秘などの腸の症状が起こる例です。ーーこの腸の症状が起きている場合、仕事の効率にも影響が出ることもあるとか!古賀先生 腸の症状は脳の疲れを助長し、仕事を効率的に行うことができなくなるなどの影響を及ぼすこともあります。このような、脳と腸のマイナスの関係は、あえて言えば「脳腸疲労」。脳と腸がお互いに作用しあっている可能性は、近年“脳腸相関”として示唆されてきています。ストレスケアの基本「レスト~快眠」古賀先生によると、ストレスが原因の不調には、ストレスを蓄積させずに、毎日解消する必要があるとのこと。古賀先生 ストレスを解消するには「3つのR」のレスト(快眠)・リラックス(休憩)・レクリエーション(楽しく発散)のストレス対処を積極的に進めることをおすすめします。なかでも、ストレスの緩和法で基本となるのが「レスト=休養をしっかりとる」こと。特に脳腸疲労が疑われる場合には、睡眠の量と質を意識して、脳をしっかり休ませましょう。寝室環境を整えて快眠しよう!そこで古賀先生に、快眠できる寝室環境について具体的に教えていただきました。室温・湿度室温は24~26度、湿度は50%程度が快眠によい環境です。灯りと音寝室は真っ暗にせず、スタンドやフロアライトで、人影がほのかに見える程度の明るさにしておくと、気持ちが落ち着きます。歌詞のない音楽をかけておくのもよいでしょう。歌詞があると聴き入ってしまうためです。枕寝返りをうったときに頭部が枕からはずれないように、枕は70cmほどの幅があるものを選びましょう。シーツ・ナイトウェアシーツの色は、淡いベージュやブルーなどのパステルカラーが落ち着きます。ナイトウェアは、ルーズで寝返りを妨げないものがいいですね。ーーこれらを参考に一度、寝室環境を見直して、快眠環境づくりを心がけてみましょう!女子に人気の快眠グッズベスト6!また、快眠のために、グッズを使う女子も多いようです。人気の快眠グッズにはどんなものがあるのでしょうか?快眠グッズ総合店『SONOBON(ソーノボン)』を運営する会社の代表で、快眠アドバイザーでもある山本恵一さんに、ソーノボンで女子に人気の快眠グッズベスト6を教えていただきました!1位:快眠セラピスト監修 快眠空間をデザインする「スリープシープ」シリーズ山本さん タイプ(性格)別に快適な睡眠空間をデザインするために、専門家が監修したアロマシリーズ。枕にスプレーするタイプのピローミストタイプもあります。また、アロマ初心者でも簡単な、アロボックルは、かわいい羊モチーフで女性を中心に、ギフトとしても人気のロングセラーです。2位 抱かれ枕 DUAL-NEO (デュアル・ネオ)山本さん 「抱かれ枕」というネーミングの通り、包まれるような寝心地。構造的にも考えつくされており、首と頭だけで支える枕と比べ、頭、首、肩、腕全体を使用して体を支えるため、体への負担が少なく、疲れにくい構造になっています。また、横向き時には枕のアーム部分に抱きつけば「抱き枕」として使用でき、仰向けでも横向きでも安心感が得られます。3位 sleepion2 スリーピオン2山本さん 五感のうちの3感から安らぎを与え、睡眠環境を整えることで快適な睡眠を誘う、1台3役のコンパクト快眠グッズ。聴覚(独自開発された癒しのサウンド34曲)、視覚(脳に安らぎと癒しを与えるゆらぎの光)、嗅覚(睡眠用に選ばれたアロマの香り)が最高の睡眠空間を演出してくれます。4位 パーフェクトスリープスティック (ツボ押し棒 & 使い方BOOK)山本さん セルフケアにも余念がない女性を中心に人気の商品です。ぬくもりのある檜のツボ押しに加え、お休み前のリラックスに効くツボなど、ツボ押しハンドブック付きで、ギフトとしても人気です。5位 Dreamlight HEAT ドリームライトヒート山本さん 女性ならではの気になる目もとケアに快眠の要素を加えたもの。優しく顔全体を包み込み、遠赤外線ヒート機能によるリラックス効果と100%遮光によって就寝をサポートしてくれるアイマスクです。目もとだけでなく、首もとを温めることもでき、リラックスタイムにもおすすめ。6位:天使の脚マクラ レッグエンジェル フィット LegAngel Fit山本さん 足枕に引き締め効果がプラスされた技アリ商品です。ハイヒールなどで1日疲れた足を浮かせて、かつ引き締めることで、翌朝にはスッキリさせてくれます。足のむくみが解消されることで、実際に足が細くなることから、美容に敏感な女性に人気です。連休疲れも出るこの時期。ストレスからくるプチ不調や疲れには、快眠できる環境に気を遣いながら、ぐっすり眠ってケアしましょう!Information杏林大学医学部付属病院精神神経科 古賀良彦名誉教授 慶応義塾大学医学部卒。日本催眠学会理事長、日本ブレインヘルス協会理事長などを務める。快眠アドバイザー 山本恵一さん 快眠グッズ専門店「ソーノボン」代表。著書に『睡眠満足度があなたの年収を変える! 眠りの技法』ほか。©elenaleonova/Gettyimages
2019年05月11日「急によくわからない発疹が出てきました」そんな症状で受診する人は時々いますが、その原因のひとつにりんご病(=伝染性紅斑)が挙げられます。りんご病とは、どんな病気なのでしょうか。■りんご病「症状・原因・感染ルート・潜伏期間」りんご病はその名の通り、頬がりんごのように赤くなることが特徴です。子どもはもともと頬に湿疹(しっしん)ができやすく、これだけでは区別がつきにくいこともありますが、りんご病では首や胸、腕や太ももにも発疹が出現します。その分布は手足の先端ではなく、体の中心寄りに出やすいことが特徴です。ぼんやりと淡い紅斑が出現し、「レース状」「網目状」といったように表現されます。見た目の割に、かゆみは強くないことが多いです。りんご病は、ヒトパルボウイルスB19というウイルスが原因で、伝染性紅斑という名前の通り、接触やせき、くしゃみなどでうつります。感染すると7~10日の潜伏をへて、発熱や鼻水などの軽い風邪症状が数日あったのち1~2週間ほどで紅斑が出現します。この時、微熱程度だったり、ほとんど症状がないこともあります。この風邪症状の時が一番ウイルスの量が多く人にうつりますが、紅斑が出る頃にはウイルス量が少なくなっているので感染力はありません。外来で「りんご病です」と診断すると「学校はいつまで休まなければなりませんか?」と質問を受けますが、紅斑が出ている時期にはもう感染力はないので、元気であれば登園や登校はOKということになります。日光の刺激などで発疹が少しぶり返すこともありますが、おおむね1週間くらいで自然に改善するため、特別な治療は必要ありません。発疹が出て初めてりんご病とわかるので、初期の風邪症状の時期に知らず知らず人にうつしてしまっているかもしれず、なかなか厄介な感染症です。■りんご病の合併症「妊娠初期の流産・胎児水腫」通常の経過でしたら、少しの風邪症状と発疹のみですが、時に合併症を起こします。年長児や成人では関節痛を起こすことがありますし、遺伝性球状赤血球症という先天的な貧血の患者さんに感染すると急激に貧血が進む場合があります。そのほか、肝炎、筋炎、脳炎などまれとはいえ、多彩な合併症があります。なかでも特に注意しなければならないのが、妊婦さんです。妊娠初期に感染することで流産を起こす可能性や、おなかの赤ちゃんに感染して「胎児水腫」という病気を発症する場合があります。胎児水腫は、心臓の機能が低下して全身がむくむ病気で、胎児治療や出生してからの集中治療が必要となる重大な病気のひとつです。ヒトパルボウイルスB19は、一度感染すると免疫がついて、健常者では生涯感染することはありません。よって子どもの頃にりんご病になったことのある妊婦さんは大丈夫です。しかし、りんご病にかかっていない(かかったかどうかわからない)妊婦さんは、りんご病に対して不安を抱えて過ごさざるを得ません。■りんご病の予防「ワクチンも抗ウイルス薬もない」どのように予防すれば良いのでしょうか?残念ながら、りんご病を100%防ぐ手段は現在のところありません。ワクチンは開発中で実用化はされておらず、また抗ウイルス薬もないため治療は自然経過に頼るしかありません。そのため、できるだけ感染の機会を避けることが重要ですが、多くは幼稚園児〜小学生に流行が見られる感染症のため、特に妊娠初期は子どもが大勢いるような場所は避ける方が無難です。しかし、前述の通り発疹が出なければりんご病かどうかわかりませんし、症状が乏しい場合もあって感染者がどこにいるかわからないため、知らない間に感染してしまう危険性があります。手洗いやうがい、人混みを避けるなど一般的な対策しかなく、完全に防ぐことはできませんが、妊婦さんに感染した時の合併症の重さ・不安感を考えると、周囲の人ができる限りリスクを減らすために努力しなければなりません。つまり、微熱や風邪の症状であったとしても、りんご病である可能性も考え、妊婦さんへの感染を防ぐために登校や出勤を控えるべきでしょう。そもそも、ほかの病気であったとしても、風邪のような症状であれば休むべきです。しかし、軽い症状ではつい無理をしてしまうかもしれません。そんな時「もしかすると、妊婦さんと赤ちゃんに重大な結果を及ぼすかもしれない」と思いをめぐらせていただきたいと思います。実際、妊娠中にりんご病に感染して赤ちゃんが胎児水腫となったママからも、「りんご病が妊婦にとって怖いものだとは知らなかった」「自分を責めた」「病気への認識が広まって欲しい」といった声が聞かれます。100%防ぐ方法がないからこそ、妊婦さんはもちろんその周りの大人も子どももみんなが注意することで、感染を防ぐことができるでしょう。ちょっとした体調不良の時にもできるだけ外出を控えるようにする。それは、りんご病の脅威から妊婦さんと赤ちゃんを守ることにつながるのだと思います。
2019年05月11日寒い冬は乾燥による湿疹に悩まされますが、気候があたたかくなってきますと、虫刺されやあせも、とびひなど季節特有の皮膚トラブルに悩まされます。どのように対策すればよいでしょうか?■子どもの皮膚トラブル1:あせもの症状、予防、治療まず一番多い子どもの皮膚トラブルといえば、あせも(汗疹)でしょう。あせもは見た目は赤みがありかゆみを感じ、冬に乾燥からできる湿疹(しっしん)と症状には大差がありません。しかし、あせもの場合、できやすい場所があり、その分布が異なります。基本は、汗をかく場所、むれやすい場所にあせもはできます。例えば、首やわき、ひざ、おむつのギャザーが当たるところなどです。とくに赤ちゃんは、ぽちゃぽちゃしているので、皮膚の間のしわに汗がたまりやすくあせもができます。また、子どもは熱がこもりやすいので、寝ているときに汗をかいて、背中全体にあせもができることも多いです。あせもの原因は汗。ですから、予防として、まず汗をかかないように風通しよくすること、汗をかいたら早めにふきとったりシャワーをすることが大切です。おむつは早めに交換をしたり、冷感シーツやミニ扇風機などを利用するのもいいでしょう。冬の乾燥による湿疹とあせもは、同じ炎症症状なので、治療自体は大きくかわりません。炎症をおさえてあげる薬として、主にステロイド軟膏を使います。■子どもの皮膚トラブル2:虫刺されの症状、予防、治療あたたかくなると公園遊びなど外で遊ぶ機会が増えて、虫刺されも起こしやすくなります。知らぬ間にたくさん刺されていることもあり、我が子もベビーカーの中で気づいたらあちこち刺されてしまったということがありました。まずは、予防として虫よけを使用します。子どもに虫よけは大丈夫なの? と心配になるかもしれませんが、安全に使用できるものがあります。おすすめは「ディート」「イカリジン」という虫よけ成分が入ったものです。どちらも有効な虫よけ剤ですが、ディートは蚊だけではなく、ブヨ、サシバエ、イエダニ、トコジラミ、ノミ、ツツガムシ、マダニなどに対して忌避効果があります、一方、イカリジンは蚊、ブヨ、アブ、マダニと限定されます。使用できる年齢について、ディートは生後6カ月未満には使用できず、12歳未満に対しても使用回数が制限されているのに対し、イカリジンは乳児を含め小児への使用制限がありません。どちらにも長所短所があり、使用する年齢やどこに出かけるかによって使いわけてください。いずれも6時間ほどで効果はきれてきますから、長時間外出する場合は途中で追加するといいでしょう。スプレータイプが苦手な子は、ウエットティッシュタイプもあります。この時期は、日焼けどめも一緒に使用することが多くなりますね。その場合、まず日焼けどめを使ってから虫よけを使用すると、両方の効果が発揮されます。虫刺されは、衣服で体をおおったり虫よけを使ったりとまずは予防ですが、刺されてはれてきてしまったら、まずは冷やしましょう。冷やすことでかゆみが軽減されます。これまでに刺された経験が少ないほどはれやすく、一般的に子どものほうが大人よりもはれやすいです。ときに直径5cmくらいの大きさにはれることもあるので、そのようなときには湿疹と同様、ステロイド軟膏を使用してはれやかゆみをおさえるようにします。■子どもの皮膚トラブル3:とびひの症状、予防、治療とびひについては、これまで解説してきたあせもや虫刺されから発展してなることがあります。とびひ(=伝染性膿痂疹)は主に黄色ブドウ球菌の感染、ときに溶連菌でも起こります(溶連菌については 前回 を参照)。赤い湿疹からさらに、じゅくじゅくして汁がでてきているものがとびひで、たとえばかゆいあせもや虫刺されをかきこわしたところに、手や爪の菌が付着して感染することによって起こります。黄色ブドウ球菌の感染といっても、この菌は普段私たちの皮膚にいつも付着しているものですから、健康な皮膚なら何も起こりません。しかし、あせもや虫刺されなど皮膚病変があるところに感染が成立して、とびひを発症するのです。とびひは伝染性膿痂疹という名前ですので、接触によって感染します。しかし、適切に治療をうけていて、とびひのところをガーゼなどでカバーしていれば、菌がほかの人に接触しにくいため感染性は低いと考えられます。そのため、必ずしも完全に治るまで登園してはいけないものではありません(ただし、じゅくじゅくした状態でプールに入ることは避けましょう)。治療は、細菌の感染なので、まずは抗菌薬の軟膏を用います。塗り薬で改善しない場合は、ほかの抗菌薬軟膏に変更したり、内服抗菌薬を併用します。とびひは、その名のとおり飛ぶものですから、体のほかの場所の皮膚病変にうつることがあります。1カ所が治ってもまた別の場所の治療が必要になることもありますし、ひっかきやすい場所や、繰り返し刺激が加わる場所(たとえば鼻の下)などはなかなか改善しにくい場合があります。治療にはなかなか時間がかかる場合がありますので、まずは湿疹病変をできにくくするために、あせもの段階で早めに治療したり、虫よけを使用したりして予防しましょう。このように、あたたかい季節の皮膚トラブルは、とびひの予防まで見越した「攻めの予防」が大切になります。いよいよ大型10連休がやってきますが、キャンプやハイキングなど外遊びの予定がある方も多いのではないでしょうか? 皮膚トラブルを未然に防いで、楽しいGWをお過ごしくださいませ。
2019年04月24日0歳から活躍おいしいご飯で食の原点回帰バーミキュラのライスポット日々の食事は、子どものカラダとココロの成長に大きく影響します。それは、大人でも同じ。子育てを機に、食と改めて向き合ってみてはいかがですか?今回紹介するのは、食の原点回帰にぴったりなバーミキュラ ライスポット。私たちの食と切っても切れない関係のお米。そのお米本来の甘みを思い出させてくれる魔法の炊飯器。離乳食作りにもぴったりです。《 紹介者 》フードスタイリストつがね ゆきこさん書籍・広告・雑誌のフードスタイリストとして幅広く活躍中。また、自身のフォトグッズブランド「&MERCI」をプロデュース。スタイリング代表作に、バーミキュラ「ライスポット/ライスポットミニ」商品付属レシピブックや、『はじめての台湾料理』(PARCO出版)、『ストウブで無水調理』(誠文堂新光社)など多数。0歳から活躍行き着いた先はバーミキュラ ライスポット▼購入はこちらバーミキュラ ライスポット公式サイトフードスタイリストという職業柄、さまざまな調理器具を試す機会があるのですが、ここ数年、我が家で大活躍しているのがバーミキュラ ライスポット。無水調理鍋で有名なバーミキュラの炊飯器です。ライスポット任せで、お米本来の甘さと旨みが引き出されます。料理が苦手という方にもおすすめです。親として、子どもには赤ちゃんの頃から、素材そのものの美味しさを知ってもらいたいですよね。おかゆ設定もあるので、離乳食作りにもぴったりですよ。我が家では、平日は夕飯時に炊けるようタイマーをセットしています。炊きたてが最高ですが、冷凍ご飯すら美味しいので食べ過ぎ注意です(笑)。もちろん、大人向けの料理でも活躍してくれます。テクいらずで、いつもの料理のレベルが上がるので、日々の食事が楽しくなりますよ。取り分けテクで離乳食も賢く調理時短的な面でも、バーミキュラ ライスポットは魅力的!ご飯を炊く以外にも、大人用の食事と離乳食を同時に作れるんです。たとえば、ご飯の上にチキンや野菜を乗せて炊けば、蒸し鶏と蒸し野菜も同時にできちゃいます。温度設定ができるので、ローストビーフなどの火加減が難しい料理も失敗知らずで簡単にできちゃいます。低温調理も可能で、塩麹や甘酒、ヨーグルトも作れます。さらにお鍋は、無水調理のお鍋としてガス火でも使用可能!我が家でよくするのは、1cm角に切った野菜、挽肉と豆をオリーブオイルで炒めて、塩をして無水調理。ここからチリコンカンやカレー、コロッケなどにアレンジできます。調味前に取り分けをして、離乳食や子ども用、大人用を同時調理します。出しっ放しでも絵になるデザイン機能性に加えて、スタイリッシュなデザインも高ポイントですよね。毎日使うものなので、いちいち片付けるのは面倒だし、収納スペースも取るし……。でも、ごちゃごちゃと生活感溢れるキッチンというのも好きではなくて(笑)。そんなワガママにも応えてくれるクールなビジュアル!出しっ放しでも絵になるので、定位置に置いてインテリアの一部のような存在になっています。少しお値段はしますが、毎日使えるものなので、離乳食を始めるタイミングで調理家電を新調してみるのもありですよ!Text:Kyoko Isobe
2019年04月11日子どもが熱を出す原因の多くは「かぜ」であり、数日間で自然に熱が下がるため、抗生剤(抗菌薬)が必要な場面は限られます。では、抗生剤が必要となるのは、どんな病気なのでしょうか? 今回は、抗生剤がよく効く病気の一つである溶連菌感染症について解説します。■溶連菌感染症「診断、治療、家での過ごし方」溶連菌(=A群溶血性連鎖球菌)は細菌の一種で、主に4歳以上に発熱やのどの痛み、頭痛などの症状を認め、ときにおう吐や腹痛をともなうこともあります。扁桃腺がはれて赤くなり、首のリンパ節がはれたり、舌がイチゴのように赤くなるイチゴ舌や、体に発疹を認めることもあります。せきや鼻水などのいわゆるかぜのような症状は乏しいことも特徴です。主に咽頭炎や扁桃炎を起こしますが、とびひなどの皮膚感染症を起こすこともあります。診断溶連菌を疑う症状があり、のどを綿棒でこする迅速検査で陽性が出たら、溶連菌による咽頭炎と診断されます(時間はかかりますが、培養検査をするとより正確です)。このとき発熱などの症状はなくても、検査で陽性が出てしまう健康保菌者という場合があり(約15%)、解釈には注意が必要です(※1)。治療ペニシリン系といわれる抗菌薬が第一選択薬で10日間内服が必要です。溶連菌によく効くお薬ですので、内服して1~2日もすれば熱は落ち着くでしょう。その他の抗菌薬が使用される場合もありますが、ペニシリンアレルギーなどの限られたケースに限られます。家での過ごし方溶連菌は抗菌薬がよく効く感染症ですので、1~2日ほどで熱は下がるでしょう。学校の登校停止基準も「抗生剤治療開始後24時間をへて、全身状態がよければ登校可能」となっています(※2)。治療を開始して24時間経過していたら感染力はないので、学校にいったりお友だちと遊んだりしてもOKです。ただし10日間の内服をしっかりと続けていることが条件です。■溶連菌感染症「実は怖い合併症」治療のメリット4つこの溶連菌、実は無治療でも3~5日で自然に熱が下がります。自然によくなる病気になぜ抗菌薬が必要なのでしょうか? 主に、次の4つのメリットがあります。1. 発熱期間を短縮することができる。2. 感染拡大を防ぐことができる。3. 化のう性合併症を予防できる。4. リウマチ熱の予防ができる。発熱期間を短縮できることは大きなメリットですし、唾液などを介したきょうだいやお友だちへの感染拡大も防止できます。化のう性合併症とは、扁桃腺やリンパ節などにうみができるもので、ときに点滴や外科的治療が必要なことがあり予防は重要です。リウマチ熱とは、溶連菌に感染して2~4週間後に関節炎や心炎、発疹や舞踏病(体の一部が意図せず勝手に動く)などさまざまな症状を認める合併症です。とくに心炎では、後遺症として心臓の機能障害が残る場合があり、予防はとても重要です。日本ではまれですが、治療を十分に受けられない国ではリウマチ熱に苦しむ子どもが大勢います。発症から9日以内に抗菌薬を投与すれば予防可能とされ、溶連菌の治療の最も重要な目的です。そのほかの合併症として、発症から2~3週間後に起こる急性糸球体腎炎もあります。これは腎炎を起こして、たん白尿や血尿が出現し、尿が少なくなり、体がむくんで高血圧を起こしたりします。このような症状が出たら必ず受診が必要です。ただし、腎炎については、抗菌薬をしっかり飲んでいたとしても予防することはできないので、早く見つけるために2~3週間の期間は体のむくみや尿の状態などを注意して見ておくことが大切です。■抗菌薬が効かない! 別の病気が潜んでいるかも…抗菌薬を服用しても熱が下がらない場合は、どうすればいいのでしょうか?原因のひとつに、化のう性合併症が考えられます。うみをつくっている場合、飲み薬では十分治療できないので、必ず病院で相談してください。もしくは、別の病気にかかっている可能性もあります。溶連菌陽性の結果が、前述の「健康保菌者」を示しているだけで、実は発熱の原因がほかにあるのかもしれません。例えば、インフルエンザ+溶連菌の健康保菌者だった場合、抗菌薬を飲んでもメインのインフルエンザが改善しない限り熱は下がりません。また、溶連菌は川崎病に症状が似ているところがあります( 【医師監修】高熱が5日以上…「カゼではないかも?」子どもがかかる川崎病とは?<パパ小児科医の子ども健康事典 第14話> 参照)。発熱、リンパ節腫脹、発疹、イチゴ舌など共通する症状があるので、川崎病+溶連菌の健康保菌者という場合もありうるのです。この場合、溶連菌治療の抗菌薬内服を続けていても改善はせず、川崎病の適切な治療時期を逃してしまう危険性があります。溶連菌の診断で抗菌薬を内服しても改善しない場合は、見直す必要があるので必ず受診してください。発熱の原因が溶連菌と確定できれば、抗生剤がよく効くすっきりとした病気です。しかし、大事なのは、溶連菌と診断されているのに、抗生剤を飲んでも熱が下がらないときです。何か合併症はないか、実はほかの病気ではないのか? さまざまなことが考えられますので、再度受診して診察をうけてください。参考資料※1: 「小児感染症マニュアル2012」(東京医学社) ※2:学校保健安全法「登校停止基準」
2019年04月10日子どもを育てるお母さんの悩みは尽きません。さまざまな解決法を編み出してきたお母さんにも「これは困ったぞ…」という事態が必ずあるものですよね。なかでもよく耳にするのが「子どもの食事」に関するもの。「野菜が入っていると、手をつけてくれない」「好きなものしか食べない」「食事の時間が嫌い」などなど、多くのお母さんが子どもの好き嫌い、食わず嫌いに悩んでいます。大人と比べ、子どもは好き嫌いが多い気がしますが、何か理由があるのでしょうか? 小児科医でありお茶の水女子大学名誉教授・榊原先生に、「子どもの味覚」にまつわる悩み、疑問に答えてもらいました。お話をうかがったのは…医師・お茶の水女子大学名誉教授榊原洋一先生お茶の水女子大学人間発達教育研究センター教授。東京大学医学部卒業。専門は小児科学、小児神経学、発達神経学など。小児科医として発達障害児の治療にかかわる。著書は『大人が知らない子どもの体の不思議』(講談社)など多数。■食べ物の好き嫌い、子どもはどうして多い?――先生。今回は子どもの味覚についていろいろ教えてください! 世のママたちは「子どもの好き嫌い」に悩んでいる人が多いと思います。私も子どもは好き嫌いが多い気がするのですが、どうしてなのでしょう?榊原洋一先生(以下、榊原先生):そうですね…。これは子どもの好き嫌いが多いというよりも「大人がたくさんの味を好んでいるだけ」といえるでしょうね。――えっ…。榊原先生:考えてみてほしいのですが、この世界には食べられるものが本当にたくさんありますよね。食べものであふれている、といってもいい。だから大人はいろいろな種類の味を子どもに与えようとします。でもそんなにたくさんの味を与える必要は全然ないんですね。――栄養バランスの整った食事を与えるためには、いろいろな食材を使って、品数も多くしたほうがいいと思っていたんですが…。そうではないんですか?榊原先生:ある研究者が赤ちゃんの食の好みを調べたところ、刺激の少ない、味の薄いものを好むことが分かりました。赤ちゃんは濃い味、苦い味、酸っぱい味などは、ペッとはき出すんです。これは「刺激のあるものは体に害がある」ということを無意識に感じとっているからなんです。――刺激のある味は体に良くないと、無意識に感じている?榊原先生:そうです。だから食べようとしません。そして刺激の少ない薄い味と同様に、甘い味も好むんです。母乳やミルクには甘みがありますよね。これをペッとはき出す赤ちゃんはいないと思います。これは甘いもの=栄養があるものと認識しているからです。生きていくために栄養のあるものを欲しているんですね。刺激のある味をうけつけないこと、栄養のあるものを欲することは「生物的に自然な反応」なんです。■「好き嫌い」は生き物として当たり前!?――自然な反応…ということは好き嫌いするのは「当たり前のこと」なんですか?榊原先生:そうです。当たり前です。「好き嫌いがある」という言葉自体、私はあまり好きじゃない(笑)。大人が「うちの子は好き嫌いが多くて…」というのは、大人自身がいろいろな味が好きなだけなんですよ。――私たち大人がいろいろなものを食べているだけ…。では、なぜ大人になるといろいろな味が好きになるんでしょう?榊原先生:大きくなってくると、刺激がある味でも体に害がないことが経験から分かってきますよね。また食べ慣れることで、平気になってくる。それに味だけじゃなく、においや雰囲気などから「食べてみよう」というチャレンジ精神で食事を楽しめるようになる。文化の中で、味のバラエティを楽しめるようになってくるんです。――確かに私も生姜や大葉、辛いものなど大人になって食べられるようになったもの、好きになったものがたくさんあります…!榊原先生:子どもに好き嫌いが多い、というのではなくて、そもそも食べられるレパートリーが少ないのは生物的に当たり前のこと。生き物として当たり前の反応、といえるでしょうね。■赤ちゃんはいつから味覚を感じている?――素朴な質問ですが、赤ちゃんはいつから味覚を感じているのでしょうか?榊原先生:お母さんのおなかの中にいるときから味覚を感じていますよ。――本当ですか…! おなかの赤ちゃんが味覚を感じていることは、どうやって分かるんでしょうか?榊原先生:たまたま妊娠中のお母さんに、ある薬品を注射する必要がありました。体には無害な薬品です。この物質は血管の中をめぐり、舌の中の血管を流れるときに苦みとして感じられます。だからお母さんは当然、苦みを感じますよね。そしてこの物質は胎盤を通じて、おなかにいる赤ちゃんの舌の中の血管にも流れます。そのとき「苦そうな表情」をした赤ちゃんの様子がエコーで観察できたんです。――興味深いですね…! それで赤ちゃんは味覚を感じていることが分かったんですね…!榊原先生:そうです。先ほどお話ししたように、赤ちゃんの好きな味は最初は刺激のないもの、薄味ですが、甘い味も好むようになります。これはどうして分かるかというと、さまざまな味の液体をほ乳びんに入れ、乳首を吸う時間を比較してみたんです。その結果、甘い味を含む乳首を吸う時間が長かった。反対に苦い味、酸っぱい味は苦手であることも分かりました。――なるほど…。じゃあ、塩味はどうでしょう? 味覚の中には先生のおっしゃったように甘み、酸味、苦みなどがありますが、塩味もありますよね。塩味はどのように感じているのでしょうか。榊原先生:おもしろいことに「好きでも嫌いでもない」ようなんです。――え、好きでも嫌いでもない…?榊原先生:正確にいうと、塩味の薄い、濃いの微妙な違いは区別できず、どんな塩味でもニュートラル。つまり反応がないんです。――塩味を受け入れはする。でも、薄い・濃いなどの塩の割合について「好き・嫌い」とは感じていないということですか?榊原先生:そうです。――味によって、違う感じ方をしている…。子どもの味覚っておもしろいですね!今回は、子どもの好き嫌い、そして味覚にまつわる不思議について、お話をうかがいました。子どもの好き嫌いは、ママの大きなお悩みの一つとしてあげられますが、実は好き嫌いは当たり前のこと、自然なことという先生の言葉に胸をなでおろしたママも多いのではないでしょうか。嫌いなものを減らしてほしい、少しでもいろいろな食材を食べてほしい…。今まではそう思ってがんばっていましたが、お皿に盛りつけた瞬間に子どもから嫌な顔をされて、食事の時間が楽しめないときもありました。子どもにプレッシャーをかけていたことも…。気にする必要はない、自然な反応ならそこまで気を張らなくてもいいんだ、との先生の言葉にホッとしました。次回は「子どもの手足の不思議」についてお話をうかがいます。お楽しみに!参考図書: 『大人が知らない子どもの体の不思議』 (講談社)榊原洋一著子どもと大人はどう違うのか。それは単に大きさだけの違いではありません。どうして夜泣きをするの? どうして寝相が悪いの? どうして落ち着きがないの? 子育て中に親が抱く「答えが見つかりにくい質問」にエビデンスの精神で解答することを試みました。子どもの心と体の不思議を理解する、手助けとなる一冊。
2019年04月05日こんにちは。5歳の双子と、1歳の末っ子の三姉妹育児をしている田仲ぱんだです。これは1年前の話です。ある日の夕方、次女のきゃえたんが、うんちを何度もおもらしをしました。■とまらないお漏らしに「何かがおかしい!」もうこのころには、すでにトイレトレーニングも終えていて、きちんとトイレに行くことができた娘。「こんなに何度もうんちを漏らしておかしいな…」と思っていました。よくよく見ると、どうやらうんちが勝手に漏れ出て、自分で止めたり我慢したりというコントロールができない状態のようでした。トイレに座らせて様子を見ると…最初は液状のうんちだったものが、やがて血のみが流れるように。しかも量は生理の2日目ぐらい、たっぷり流れてくるのです。■「血便」で検索したら、不安がさらに高まっていく…これは普通じゃないと思い、スマホで「子ども 血便」と調べると「腸重積」や「潰瘍性胃腸炎」など、こわい病名が出てくるではありませんか…。そして娘が「おなかが痛い」と言い出し、私も自分で判断しきれなくなって、ちょうど近所の診療所が午後7時から9時までの夜間当番医だったので行くことにしました。そんなこんなで総合病院の夜間救急に行くことになり…■出血の原因、それはまさかの病名だった…18時半に症状が出始め病院に行き、さまざまな検査をして、終わったのが23時。診療所に紹介状を出してもらってまで大きい病院に来て判明した病名が「便秘」だったと知ったときの脱力感たるや…。いや、よかったんですけどね! こわい病気じゃなくて。先生によれば「かたくなった便がなんらかの理由で大腸のどこかを傷つけているのではないか?」ということでした。本人が「痛い」というのも便秘のため…。実際、翌日には出血も止まり、普通に便を出すことが出来るようになりました。「病院に行くのは翌朝でもよかったかなぁ」と、ふと考えましたが、おそらくそれは便秘だとわかった後だからこそなのだと思います。まさか便秘で下血なんて思いもしませんでしたから…。※この体験記に記載された症状や治療法は、あくまでも筆者の体験談であり、症状を説明したり治療を保証したりするものではありません。
2019年03月25日春は、園や学校で身体測定がある季節です。だんだんとわが子の身長が低いことが気になってきた人もいらっしゃるのではないでしょうか。小児科でも「うちの子はどうして低いのですか?」「伸ばす方法はありませんか?」と相談をうけることが増えます。身長が低い場合は、どのように考えたらよいのでしょうか?■低身長かどうか? 目安となる母子手帳の「身体発育曲線」子どもの身長が低い時、小児科ではまず母子手帳の中にもある「身体発育曲線」 (※1) を確認します。6歳以上の場合は、 小児内分泌学会 の「横断的標準身長・体重曲線(0-18歳)」 (※2) をご参照ください。受診の時は乳児健診や幼稚園、小学校の身体測定の記録なども持っていくとわかりやすいでしょう。この身体発育曲線に身長と体重に点をうっていくと、生まれてから現在までの身長や体重の伸びや変化を見ることができます。グラフの「帯の部分からはずれると異常なのでは?」と不安になるかもしれませんが、必ずしも異常というわけではありません。このグラフはあくまで「分布」を見ているものです。身長体重には個人差があり、比較的多い成長パターンに入るお子さんがこの帯の範囲におさまります。具体的には100人中94人ほどがこの範囲におさまり、比較的小さい3人もしくは大きい3人が帯の範囲外になります。帯からはずれても必ずしも異常というわけではありませんが、何か病気が原因で体が小さい場合もありますので見極めるために受診が必要になります。■低身長の原因となる5つの病気身長は遺伝の影響が大きいため、ほとんどの場合は病気等の特定の原因を持たず、「特発性低身長」といいます。特発性低身長であれば、よく食べてよく寝てよく運動して気長に待ちましょう。特別な方法はなく、ある程度遺伝子で決まっているのです。一方、低身長をきたす疾患が隠れていることもあり、例えば以下のようなものがあります。・ホルモンの問題である甲状腺機能低下症や成長ホルモン分泌不全症・出生週数に比べて小さく生まれた場合に身長が伸びにくいSGA(small for gestational age)性低身長・女の子のみに発症するターナー症候群・骨や軟骨の病気である軟骨異栄養症・心臓や腎臓などの機能障害 など※病気のくわしい説明は、前出の 小児内分泌学会ホームページ をご参照ください。身長体重はどのように推移しているかも重要で、あるポイントから急に帯からはずれだしたり、伸びが悪くなったりした場合には、何か病気が隠れている可能性が高くなるので、早めに受診したほうがいいでしょう。■治療によって身長が伸びる場合も低身長の原因によっては、治療によって伸ばす方法がある場合もあります。それは、成長ホルモン補充療法です。これは一定の基準を満たせば成長ホルモンの注射を補充することで身長の伸びが期待できるというものです。自宅で保護者(または自分)が連日、成長ホルモンを注射することで、身長を伸ばすことが可能です。劇的に伸びるわけではありませんが、何年間も継続して積み重ねていくと最終身長がプラスになります。この治療の適応があるかは、病院でいくつかの検査を組み合わせて調べます。手のレントゲンで骨年齢(骨の成熟度合い)を見たり、血液検査で全体的な体のチェックとともに甲状腺ホルモンなどを確認します。成長ホルモンは脳の下垂体という部分から出ていますが、頭のMRI撮影で構造的に問題ないか調べるとともに、ここからホルモンがしっかり出ているかどうかを成長ホルモン分泌刺激試験で調べます。これは成長ホルモンがよく出るような刺激を点滴や飲み薬によって加えたのち、血液検査をして成長ホルモンの数値を調べるものです。薬剤を投与したのち30分おきに数回、血液検査をしてピーク値がどのくらいになるかをみます(頻回の採血が負担にならないように、点滴ラインを用いて痛みなく採取します)。この試験により、あまり成長ホルモンが出ていない場合は、ホルモン補充の適応となり治療が可能です。逆にホルモンがよく出ていて補充の適応とならない場合は、今後しっかり伸びる可能性があるとも考えられます。ちなみに前述のSGA性低身長は、治療適応の判断ができるのに見過ごされていることもしばしばあるので、出生の週数や体重をチェックしてください(治療適応は3歳以上から)。検査は1日1種類お薬を用いて行い、それを何種類かするため数日間かかります。入院して行うことが多く、薬剤が3種類の場合は少なくとも3日間を要すると考えてください。■気になる方は一度受診・検査を実は、筆者は小柄で小学校の頃から背の順は前のほうでしたので、この検査を受けたことがあります。基準を満たさなかったので、治療はうけず自然にまかせました。結果的には小柄のままですが、そこまで不便は感じていないのでこれはこれでいいかと個人的には思っています。私のように特に気にしていない人もいれば、いやいやどうしても身長が低いと困るという人もいて、身長が及ぼす影響は人それぞれで事情が異なるものです。例えば、どうしても自衛隊に入りたい、客室乗務員になりたいという場合は身長制限がネックになる場合があります。また、女の子で身長体重曲線の帯の下のラインであれば、最終身長は約147cmほどですから、骨盤が狭くて将来、難産になる可能性は高まるでしょう。治療をしていくかどうかは、本人の意志や将来の夢と、連日のホルモン注射などを天秤にかけて、総合的に決めていくことが大切だと思います。身長が気になっている場合、検査で原因を調べることは重要で、場合によっては伸ばすための治療も可能です。検査には数日間の入院が必要になりますので、この春休みなどを利用して計画されてもいいかもしれませんね。参考資料※1: 『母子健康手帳の様式について 省令様式』厚生労働省 ※2: 『低身長』日本小児内分泌学会
2019年03月18日今から数年前。4番目である三男を妊娠中の時のお話です。なんの前触れもなく突然高熱を出した長男。この日は平日で、仕事がある夫を頼るわけにもいきませんでした。幼い妹弟だけで留守番させるわけにはいかないので、3人全員を連れて車で小児科へ。検査の結果、インフルエンザでした。保育園のお休みが確定した長男は高熱なのにめっちゃ元気!!翌日には熱も下がりすっかり回復したんですが、次は妹弟が高熱…(兄弟あるある)翌日、前日に続き再び3人を連れて小児科へ。しんどくてグズグズの幼い2人。この時の私は来月に出産を控えた臨月妊婦だったんですが、そんなことを言っていられる状況じゃありません。高熱でぐったりする次男をおんぶし、しんどくて号泣する長女を抱っこして行きました。当然のように2人もインフルエンザ。帰宅後も泣きじゃくる2人をあやしながら、既に回復して遊びたい長男をなんとかなだめて過ごしました。子どもの体調不良って、なぜか夫不在の平日な事が多く、1人で急な対応を迫られることが頻繁にあります(子どもが幼いうちは特に多い)。兄弟の誰かが風邪を引くと高確率で他の兄弟にうつるため、短期間で何度も小児科のお世話に。4番目出産後、長男が体調不良になったときは、ぐったりして動けない長男をおんぶし、長女に歩いてもらって下の2人を抱っこして行ったこともありました。こんな時、『みんなが元気』っていうごく普通な事がどれだけ幸せな事なのかを改めて感じます。
2019年03月13日日本全国の“食”を楽しむイベント「ふるさとの食 にっぽんの食」全国フェスティバルが2019年3月9日(土)・10日(日)に、代々木公園およびNHKホール前広場、NHKみんなの広場ふれあいホールにて開催される。第17回目の開催となる今回は、各地の農水産物や食材について学びつつ、日本各地のふるさとの食を思う存分味わえるブースを展開。北海道から九州まで全国のグルメが代々木公園に集結する。会場の「ほかほかフードコート」では、産地直送の新鮮な素材を使った郷土料理や名物料理を堪能することが可能。名古屋の「味噌煮込みうどん」をはじめ、茨城の「あんこう鍋」、熊本の「からし蓮根」などが登場する。また、2018年に発生した大阪北部や北海道の地震、西日本豪雨の被災地を支援するチャリティープログラムとして「復興応援ゾーン」を設置。現地の食材を使用し、料理研究家の土井善晴ときじまりゅうたが特別メニューを提供する。【詳細】「ふるさとの食 にっぽんの食」全国フェスティバル開催期間:2019年3月9日(土)・10日(日)開催時間:10:00~16:00会場:代々木公園およびNHKホール前広場、NHKみんなの広場ふれあいホール入場料:無料【問い合わせ先】TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)
2019年03月03日一般的に、カゼは数日間の発熱で改善しますが、それ以上続く場合はどうすればいいのでしょうか?小児で発熱が長く続く病気として、「川崎病」があります。あまり聞きなれない病名かと思いますが、高熱が出たりとカゼに似た症状をもつ病気です。川崎病とは一体どんな病気なのでしょうか。くわしく解説していきましょう。■川崎病とはどんな病気? 重い合併症も…まず、川崎病には以下の6つの診断基準があります。1. 5日以上続く発熱2. 両側の眼球結膜(白目の部分)の充血3. 唇が赤くなる、またはいちご舌(いちごのように赤くなりぶつぶつが出る)4. 発疹が出現5.四肢末端の変化(むくんではれたり、赤くなる6. 首のリンパ節のはれ[川崎病診断の手引き(厚生労働省川崎病研究班作成改訂5版)から一部抜粋、改変]発熱するだけではなく、目が赤くなったり、発疹がでてきたりと、だんだん症状が増えていき、6個の基準のうち5つ以上を満たせば川崎病という診断になります。上記の診断基準には含まれませんが、BCGを接種した部分が赤くはれることもあります。発症すると、熱が続いて体力を消耗しますし、首のリンパ節のはれが痛くて、首を横に向けることができなくなったり、赤くはれた唇が切れて痛み、食事がとりにくくもなります。ぐったり感が強く、だんだんとしんどさも増す病気です。この病気は約50年前に日本人の医師、川崎富作先生が発見したものですが、いまだに何が原因かははっきりしていません。ただ感染症とは異なるということはわかっていて、抗菌薬の効果はなく、体には「血管炎」とよばれる状態が起こっています。血管炎とは、全身の血管が炎症を起こしている状態。例えば、目の血管で炎症が起きると充血し、手の血管で炎症が起きると赤くなったりはれたりという具合です。この時、最も注意すべきことが心臓の血管です。心臓の血管で炎症が起きると、そこには冠動脈瘤(かんどうみゃくりゅう)というコブができてしまいます。すると、コブがあるところは血管がつまりやすく、子どもでも心筋梗塞が起こってしまうのです。そのため、昔は川崎病によって子どもが突然死することがしばしばありましたが、現在は治療法が確立し、そういうことはほとんどなくなりました。■川崎病の治療法「発熱から7日までに診断、治療開始」川崎病の治療には、どんな方法があるのでしょうか。治療の一番の目的は、心臓の合併症を起こさないことです。そのために、現在では免疫グロブリン大量療法という治療が行われています。これは、人の血液から取り出した免疫グロブリンというタンパク質を大量に点滴するというもので、うまくいけば投与から1日ほどで熱が下がります。すぐに下がらなくても、多くの場合は2回、3回と投与したり、ほかの治療を組み合わせることで解熱します。ここで一番重要なことは、熱が出てから7日までに治療を開始して、はやく熱を下げることです(※)。それ以上続くと、心臓の血管にコブができやすくなってしまうからです。川崎病は、5日以上続く発熱で診断されます。そのため、診断が出た時点ですでに約5日が経過しており、発熱してから5日~7日という短い期間に、免疫グロブリンを投与するかどうかを判断しなければいけません。子どもの場合、高熱がどれくらい続いているかはとても重要。長く続くようなら、こまめな受診で小児科医の判断を仰ぐ必要があります。受診の際、小児科医から「熱が続くようなら、再受診してくださいね」と言われたことはありませんか? 熱が下がらなければ病院に行くのは当たり前じゃないかと思われるかもしれません。実は「もし川崎病だったら…」を小児科医は想定して、受診の時期を逃さないように声がけをしているわけです(場合によっては熱が出て数日の段階で川崎病の説明をすることもあります)。最初は発熱のみでカゼと区別が難しい川崎病ですが、熱が続いて目が赤くなったり発疹が出てきたりして、症状がそろってくると区別できるようになってきます。■川崎病「診断がつきにくい“不全型”に要注意」注意すべきものとして、「不全型川崎病」について説明しましょう。本当は川崎病なのに、5日たってもいまいち症状がはっきりしないのが「不全型川崎病」です。例えば、熱が続いているのに、目と口が赤いだけで症状が5つ以上そろっていないなどのケースがあります。症状が5つ以上あれば誰がみても川崎病なので、これを見逃す小児科医はほとんどいません。しかし、症状がそろっていないとなると判断がつかず、診断がはっきりくだせないのです。前述のように、川崎病の治療は熱が出てから7日以内に治療を始める必要があるため、不全型の時は特に注意しなければなりません。症状がそろっていないために見過ごされ、治療が遅れて冠動脈瘤ができてしまうケースも。診断がはっきりせずに熱が続く場合は、繰り返しの受診が必要ですし、場合によってはクリニックをかえ、別の医師の診察を受けてもいいでしょう。一般的に、川崎病は4歳以下の小さい子どもに多い病気ということから、まれに小学校高学年や中学生で発症した場合、なかなか診断がつかないこともあります。小児科以外ではなじみが薄い病気ですので、診断がつかない時は一度、小児科に相談したほうがいいでしょう。■「熱が続いたら再受診を」小児科医の言葉に込められた意味川崎病には重い合併症も存在しますが、時期を逃さず診断して適切に治療すれば心配はありません。「熱が続いたら、もう一度受診を」子どもの発熱で受診した時、小児科医が毎回のように添える言葉の裏には、「川崎病による合併症を防ぎたい」といった強い思いも込められているのです。参考資料※: 『川崎病急性期治療のガイドライン平成24年改訂版』日本小児循環器学会 川崎病急性期治療のガイドライン作成委員会
2019年03月03日知的生きかた文庫として発売中2月20日、手間をかけずに美しい肌になろうという新刊『化粧いらずの美肌になれる3つのビューティケア』が発売された。著者は美容皮膚科医の菅原由香子氏である。同書は知的生きかた文庫として三笠書房より、680円(税別)の価格で発売中となっている。腸内環境を整え化粧品の成分に気をつける1970年、北海道旭川市に生まれた菅原由香子氏は、弘前大学医学部を卒業後、札幌医科大学皮膚科や大手美容外科美容皮膚科部門などに勤務し、現在は岩手県一関市にある「菜の花皮膚科クリニック」にて、美容皮膚科を担当している。菅原氏は2014年に自身の肌で試した美肌法を紹介している著書『肌のきれいな人がやっていること、いないこと』を発表。新刊『化粧いらずの美肌になれる3つのビューティケア』では、肌にやさしいクレンジングや洗顔方法、生活習慣改善などによる肌の美容法が掲載されている。同書によれば、美肌になるためには腸内環境を整えることが必要で、食事や睡眠、運動といった生活習慣を見直す必要があるという。また、食品や化粧品、シャンプーの添加剤は要注意だとしており、避けるべき口紅の成分など、注意したい化粧品の成分表についても紹介されている。(画像はAmazon.co.jpより)【参考】※化粧いらずの美肌になれる3つのビューティケア - 三笠書房
2019年02月27日こんにちは! 4歳、3歳、1歳の三兄弟のオカンあざみです。 前回 、4歳の長男のおチンチンがまだむけていないことが心配になったオカン。しかも3歳の次男はむけているというのに…。このままで本当に大丈夫なのだろうか。しかし女の私がいくら考えても答えは分からない。というわけでオトンに相談してみたするとへぇ~~~そうなんだぁ。フーン。子どもの事を相談するついでに夫の知らなかった情報も知ってしまった。(別に知らなくてもいい情報)まぁそんな事は置いておいて、やはり個人差があるという事はよくわかった。とはいえ、そうわかっていても本当に大丈夫だと言う確信が欲しい。そこで三男の1歳健診のついでに小児科の先生に相談してみる事にした。すると、まだ4歳、そこまで心配する必要はないと小児科の先生に教えてもらった。とてもデリケートな話なので質問するのが最初は恥ずかしかったが先生がとても丁寧に説明してくれて安心した。もし同じように悩んでいる方がいたら1人で抱え込まず、また恥ずかしがらずに一度小児科の先生に相談してみるといいかもしれない。それにしても、赤ちゃんの頃からむける子もいれば、中学生くらいでむける子などさまざま。成長と言うのは本当に個人差が大きい。周りの情報に惑わされすぎずに、我が子の成長を見守ってあげる大切さを改めて感じた。
2019年02月25日2月になってスギ花粉が飛び始め、花粉症の人にとって憂鬱(ゆううつ)な季節に入ってきました。子どもでも花粉症になることもあり、小児科や耳鼻科に受診する子も増えてきそうです。今回は、子どもの花粉症およびアレルギー性鼻炎について解説します。■花粉症の見分け方「この鼻水はカゼ? それともアレルギー?」花粉症の症状のひとつ、鼻水は小児科で最も多く見かける症状です。その中でも多い疑問のひとつが、「ずっと鼻水が続いている。花粉症ですか? カゼですか?」というものです簡単に区別することはできませんが、まず前提として、鼻水は生理的に出て当たり前ということを知っておいてください。鼻水が出たからといって、必ずしもカゼや花粉症というわけではありません。何もなくても少量出ることがあり、とくに鼻の通り道の狭い乳児であれば、生理的な鼻水でもつまって鼻がフガフガすることがあります。では、カゼの鼻水と花粉症の鼻水は、それぞれどういった特徴があるのでしょうか?まず、カゼの鼻水は症状のピークが2~3日で、ときにせきや発熱をともないます。おおむね1週間ほどで改善傾向となり、2週間もすれば出なくなるでしょう。一方、花粉症はスギなど特定の花粉にアレルギー反応を起こすもので、季節性アレルギー性鼻炎(結膜炎)といいます。花粉などに反応し、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみなどの症状を引き起こします。そのほか、ダニや動物の毛など季節に関係なく身の回りにあるものに対して反応する通年性アレルギー性鼻炎(結膜炎)もあります。花粉症であれば特定の季節に悪化することが特徴で、その期間の症状には変動があまりなく、ずっと続く点がカゼとは異なるところです。例えば、毎年春先にダラダラと3週間、鼻水や鼻づまりが続くようであれば花粉症の可能性が高い症状と考えます。また、一般的に花粉症の鼻水は透明でサラサラです。熱もなく元気だけど、サラサラの鼻水だけずっと出続ける場合も花粉症の可能性が高くなります。ただ、花粉症の途中でカゼをひき、鼻水がドロドロになるなど症状が変動することもあるため、一概に鼻水だけでは区別できないことも多いです。そのほか、花粉症の症状としては、よくさわることで鼻に湿疹ができていたり、鼻にティッシュや指を入れることが多いために鼻血を繰り返している、目の周囲に黒いくまができやすいことも特徴にあげられます。子どもでも花粉症になるの? と思われるかもしれませんが、スギ花粉については5~9歳の有病率は13.7%(※1)と頻度の高いものです。2歳以下での発症は少なく、とくに1歳未満では稀(まれ)です。この年齢でずっと鼻水が続く場合は、カゼが長引いている可能性のほうが高いと考えてください。■子どもの花粉症「診断・治療・予防」診断先に述べたような特徴を、まず問診や診察で確認することが最も重要です。そのうえで、鼻の粘膜を直接観察する鼻鏡検査や、鼻水の性質を調べる鼻汁好酸球検査、アレルゲン(原因となる物質)を特定するための皮膚テストなどを組み合わせて総合的に診断します。これらの検査は一部、小児科でも行っている場合はありますが、通っている小児科で難しいようであれば、耳鼻咽喉科に相談するのがよいでしょう。ちなみに、アレルギーの血液検査は必須ではありませんが、もし食物アレルギー等で検査をする機会があれば、一緒に花粉やホコリ、動物の毛などを調べると、原因アレルゲンを知ることができます。治療主要なものとして内服の抗ヒスタミン薬とステロイド点鼻薬の2つがあります。まず抗ヒスタミン薬は、いわゆる花粉症の飲み薬として処方されるものです。花粉などのアレルゲンが侵入するとヒスタミンという物質が出てきて、鼻水やくしゃみなどを引き起こしますが、そのヒスタミンをブロックするお薬です。こちらは効き目や副作用の眠気に個人差があるので、合わない時はほかの薬に変更してもらってください。抗ヒスタミン薬はカゼの時にも処方されることがありますが、花粉症とは鼻水の出る仕組みが異なるため、カゼの場合はあまり効果が期待できません。もう一つのお薬、ステロイド点鼻薬は鼻の穴にシュッと噴霧するものです。アレルギー反応をおさえ、鼻の粘膜のはれを改善します。効果は大きく、くしゃみや鼻水、鼻づまりがましになってとても快適に過ごせるようになる患者さんも多いです。これらの治療は、あくまでも症状を改善させる対症療法ですが、最近は、根本的に花粉症を治療する免疫療法も注目を集めています。これは、スギやダニなど特定のアレルゲンのみが対象になりますが、その成分をお薬として摂取することでアレルギーそのものを治す方法です。ただし、今のところ治療できる施設や、投与できる年齢に制限があるため、治療を希望する場合はまず医師とご相談ください。予防花粉症を予防するには、まずアレルゲンをさける、減らすことです。花粉情報をチェックして花粉が多い日の外出はさける、マスクやゴーグルを利用する、外出から帰宅したら衣服についた花粉を払ったり、すぐ洗濯機に入れて家の中に持ち込まないようにするなどです。鼻の穴の中にワセリンを塗ることで、侵入するアレルゲンを減らすという方法(※2)もあります。ただ、これらの対策には限界があるので、アレルゲンが来ても大丈夫なようにステロイド点鼻薬等で治療をしていくほうが現実的でしょう。花粉症の症状は、鼻水やくしゃみがつらいだけでなく、学校の授業に集中できない、鼻づまりでよく眠れないなど生活全体に影響をおよぼします。ここにあげた予防法や治療法を参考にして、快適な春を迎えていただけたら幸いです。参考資料※1:『鼻アレルギー診療ガイドライン2016』鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会 編※2: 『Efficacy of pollen blocker cream in the treatment of allergic rhinitis.』National Center for Biotechnology Information
2019年02月19日娘は6歳ですが、粉薬が大の苦手です。拒否反応なのか、「苦い」と思い込みすぎているのか、はたまた、ただのわがままなのかはわかりませんが、粉薬、とりわけ抗生物質などの苦い薬を飲むと、吐き戻してしまいます。ゼリー状のオブラートなど、薬剤師さんにアドバイスをいただいた方法も試しましたが、味わってしまうからなのか逆効果でした。■錠剤なら飲める娘、しかしお医者さんは…飲む度にこみあげる嘔吐感を、毎回顔を真っ赤にして耐える娘。2回に1度は実際に嘔吐してしまい、薬の効果はわからぬまま…。本当に体が拒否しているのか、それとも甘えているだけなのかわからず、どうすることもできないままに、アイスやゼリーなどに混ぜながらだましだまし飲ませていました。ただ、苦手な座薬すら、粉薬を飲むくらいならと、受け入れるほどだったので、本当に粉薬が無理なのかもしれません。次第に娘は、病院に行くのを拒むようになりました。よくよく聞いてみると、薬を飲まないといけないのが、病院に行きたくない一番の理由のようでした。でも、このままではよくならないし、いつもの小児科では錠剤で処方してもらえない…一体どうしたら…娘の気分を変える意味と、もしかしたら錠剤が処方してもらえるかもという淡い期待を抱いて、いつもと違う小児科に行ってみることにしました。■事態は好転! 希望の光が見えた瞬間そこでは、問診票に「希望の薬は?」という欄があり、「シロップ、粉薬、錠剤」のいずれかに〇を付けることができました。「もしかしたら、錠剤を処方してもらえるかもしれない…!」と、希望が見えてきました。診察になり、処方箋の相談のときに、薬の形態について医師に相談してみました。すると、そうして無事に錠剤で薬を処方してもらった娘。薬局で処方してもらった小さな錠剤を確認して、すごくうれしそうにしていました。これまで吐き戻したり、時間がかかったりして、大変で憂鬱(ゆううつ)な時間だった薬時間が、錠剤になっただけですごく楽になりました。しかし、また別の病院で、以前錠剤で処方していただいたものと同じ粉薬が処方されてしまいました。そこで、錠剤での処方をお願いしてみると、年齢のことと、「薬局に置いてないから」と言われてしまったことがあります。そこで思い切って、「お隣の薬局には置いてないかもしれませんが、わが家がいつも利用している薬局には置いてあるので、そちらでもらってはだめですか?」と聞いてみました(我ながらやっかいな親…)。そうしたら「わかりました…」とすんなり錠剤で処方箋を書いてくれたこともあります。医者側からすると面倒臭い親だったのかもしれません。でも、せっかく処方してもらった薬でも飲めなかったら意味がないと思います。だから、根気よく質問して、ちゃんと飲めるタイプのものを処方してもらう方がいいのではないかと思っています。ただ、錠剤は小さいお子さまには誤嚥(ごえん)の危険もあるため、錠剤への切り替えはある程度の年齢になり、病院の先生との相談しながら慎重にすべきだし、親もよく見守る必要があります。でも本当に粉薬で困っているお子さまは、医師に相談し、しっかり飲み込みの練習をした上で切り替えることもひとつの手だと思います。うちの娘は、錠剤を飲めるようになってからはというものの、病院も嫌がらず行くようになりましたし、薬を飲むことを渋ることもなくなりました。むしろ、「錠剤飲める私、おっとなー♪」といわんばかりに、いつも得意げに見せびらかしながら飲んでいます(笑)※この体験記に記載された症状や治療法は、あくまでも筆者の体験談であり、症状を説明したり治療を保証したりするものではありません。薬の形や効果などについてはかかりつけの医師にご相談ください。また薬の飲み方については、薬局や薬剤師などにご相談ください。
2019年02月15日子育て中は「子どもの体って不思議だなあ」と思うこと、たくさんありますよね。例えば、世のママたちの多くが口をそろえていうのが「子どもの寝相の悪さ」についてです。枕に頭をのせて寝たはずなのに、朝には足が枕の上に…。毎日のことなので、寝相の悪さについては当たり前のことになっているかもしれませんね。それから、赤ちゃんがウトウトして眠りにつく前、急に手足がポカポカしてくるように感じますよね。子どもの手足があたたかくなってきたら、「そろそろ寝るかな…」と予想がつくことも。また、大人と比べて大量にかく寝汗なども、子ども特有の不思議な現象です。子どもはどうして寝相が悪いのか、どうして眠りにつく前に手足があたたかくなるのか、どうして寝汗が多いのか? 小児科医でありお茶の水女子大学名誉教授・榊原洋一先生に「子どもの睡眠」にまつわる不思議をいろいろと教えてもらいました。お話をうかがったのは…医師・お茶の水女子大学名誉教授榊原洋一先生お茶の水女子大学人間発達教育研究センター教授。東京大学医学部卒業。専門は小児科学、小児神経学、発達神経学など。小児科医として発達障害児の治療にかかわる。著書は『大人が知らない子どもの体の不思議』(講談社)など多数。■子どもの寝相はどうして悪い?――どのお母さんも口にすることだと思うのですが、子どもって本当に寝相が悪い! 夜眠ったときと朝起きたときの姿勢がまったく違います。この寝相の悪さ、何か理由があるんでしょうか?榊原洋一先生(以下、榊原先生):子どもの寝相が悪いのは「睡眠の質」が大人と違うからなんですね。――質ですか…?榊原先生:人間には「睡眠パターン」というものがあります。このパターンは年齢とともに変わっていきます。特に睡眠時間と睡眠リズムに大きな変化が起こるんです。まず大人になると、乳児のときと比べ睡眠時間が短くなりますよね。それから睡眠中に見られる「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」の割合も変わります。どう変わるかというと、成長していくにつれてレム睡眠の割合がどんどん少なくなっていくんです。――先生! レム睡眠とノンレム睡眠とは何でしょう?榊原先生:レム睡眠とノンレム睡眠はどちらも睡眠状態のことを指しています。ただし、レム睡眠中の脳波は起きているときとよく似ています。眼球がきょろきょろと左右に速く動くこともあるし、体もよく動きます。睡眠中の様子を脳波とビデオカメラで同時に記録すると、レム睡眠のときに寝がえりや手足を動かす様子が多く見られるんです。――よく動くのはレム睡眠中だからなんですね。榊原先生:そうです。一方、ノンレム睡眠は深い眠りなので、こうした動きがほとんど見られません。子どものころはレム睡眠の割合が多いので、寝ている間にたくさん体が動くんですね。――覚醒状態と似たレム睡眠の割合が多いから、自然と寝相が悪くなるんですね…。ちなみによく動く時間帯などはあるのでしょうか?榊原先生:レム睡眠は明け方、目が覚める前に多く出る睡眠パターンです。だから夜中は寝相が良かったけれど、起きる時間近くになったら急に寝相が悪くなっていた…なんてことがあるかもしれませんね。■寝る前、子どもの手足が急にあたたかくなるのはなぜ?――赤ちゃんを抱っこしていて「あれ、なんだかポカポカしてきたな」と思ったらすやすや眠っていた…ということがよくあったのですが、手足があたたかくなることと眠ることに何か関係はあるのでしょうか?榊原先生:実際に手足の先の皮膚温度をはかってみると、子どもは眠くなると温度が1.5度くらい上昇することが分かっているんですね。でも、脇の下の体温をはかっても変化がない。このことから、子どもの手足があたたかくなることには、体の中の血液の流れが関係していると考えられます。――血液ですか…?榊原先生:普通、熱が発生するのは筋肉や臓器なんです。でも、手足の先には大きな筋肉も臓器もありませんよね。では、なぜ皮膚温度が上がるのか。温度を上昇させる方法としてほかに考えられるのは、血液です。血液は熱を運ぶことができます。子どもの手足の先があたたかくなったのは、体の中心部からたくさんの血液が流れてきたから、と考えることができます。――血液が手足のポカポカを生んでいるんですね…! でも、子どもの血管は細そうなイメージがあります。たくさんの血液を手足の先に運ぶことってできるんでしょうか?榊原先生:血液量が増えるのは、細い血管が広がるからなんです。血管が広がるのは交感神経と、副交感神経といった自律神経が関係しています。――交感神経と副交感神経?榊原先生:交感神経は獲物を追う、敵から逃げるといったときに優位になるもので、皮膚の血管を収縮させます。血管を細くすることで、万が一傷を負うことになっても少ない出血ですむんですね。――生き抜くための反応ですね…!榊原先生:反対に副交感神経は休息しているときに優位になるもので、血管は広がります。そのため、熱を持ったたくさんの血液が手足の先にまで運ばれて、体がポカポカしてくるというわけです。眠る前に子どもの手足があたたかくなるのは「休息モード」に入っているからなのです。お母さんに抱っこされて、安心した状態になることで、より眠りやすくなったからでしょうね。――なるほど。赤ちゃんの手足が急にあたたかくなってくるのはリラックス状態に入った、ということなんですね。■朝起きると寝汗でびっしょり…子どもが汗かきなのはどうして?――寝ている子どもでびっくりするのが、大人と比べて寝汗がすごい…! 子どもはどうしてあんなに汗をかきやすいのでしょうか?榊原先生:1日に必要な水分量で比較すると、子どもは大人の倍量が必要になります。子どもの体は大人と比べ、水分の割合がすごく多いんです。――大人の倍量も必要なんですね…!榊原先生:その理由として、腎臓の機能によることと、失われる水分量が多いことがあげられます。子どもは腎臓の機能がまだ未熟で、尿としてたくさんの水分を排出します。それから新陳代謝も活発なので、汗や呼吸によって、どんどん体の外に水分が出てしまうんですね。失われる水分量は大人の1、5~3倍近くになるといわれています。――そんなに…! 子どもはそもそも水分を失いやすいものなんですね。榊原先生:そうですね。それと、単純に大人は汗をかくとハンカチで拭きますよね。でも、子どもは拭きません。よだれが多いのと同じで、出てくるものに構わない…(笑)。子どもは大人のように汗を拭いたりしないから、いっそう汗が目立って見えていることもあると思います。今回は、子どもの睡眠にまつわる不思議について、お話をうかがいました。子どもの寝相が悪いのは、子どもと大人で睡眠の質が違うからということが分かり、長年の謎がようやく解けました(笑)。また、赤ちゃんの手足があたたかくなるのは、交感神経・副交感神経が状況に応じて優位になることで、体の中でさまざまな反応が起こっているから。「人の体はなんて複雑でおもしろい仕組みなんだろう」と感心するインタビューとなりました。引き続き、榊原先生に「子どもの体の不思議」について、お話をうかがっていきます。参考図書: 『大人が知らない子どもの体の不思議』 (講談社)榊原洋一著子どもと大人はどう違うのか。それは単に大きさだけの違いではありません。どうして夜泣きをするの? どうして寝相が悪いの? どうして落ち着きがないの? 子育て中に親が抱く「答えが見つかりにくい質問」にエビデンスの精神で解答することを試みました。子どもの心と体の不思議を理解する、手助けとなる一冊。
2019年02月06日子育て中は「子どもの体って不思議だなあ」と思うことが、たくさんありますよね。例えば「大人に比べ、体は小さいのに頭が大きい」と思ったことはありませんか? 子どもの頭はその小さな体に不釣り合いなくらい大きいですよね。また、久しぶりに会った友人から「赤ちゃんの顔つきが、生まれてすぐの時とは変わったね!」と言われ、そういえば…気づくこともあるでしょう。子どもの頭はどうして大きいのか? 顔つきが変わるとは一体どういうことなのか? 小児科医でありお茶の水女子大学名誉教授・榊原洋一先生に「子どもの顔・頭」にまつわる不思議をいろいろと教えてもらいました。お話をうかがったのは…医師・お茶の水女子大学名誉教授榊原洋一先生お茶の水女子大学人間発達教育研究センター教授。東京大学医学部卒業。専門は小児科学、小児神経学、発達神経学など。小児科医として発達障害児の治療にかかわる。著書は『大人が知らない子どもの体の不思議』(講談社)など多数。■子どもの頭はなぜ大きい?――前から気になっていたのですが、大人に比べると赤ちゃんの頭ってすごく大きいですよね。体のサイズからすると、もっと小さくても良いような気がするのですが、何か理由があるのでしょうか?榊原洋一先生(以下、榊原先生):子どもの頭が大きいのは、脳の大きさが体に対して大きいということがあげられます。なぜ体に対して、脳が大きいのか。これには、人の体の中で脳がどう働いているのか、そのシステムに関係があるんですね。――システム?榊原先生:そうです。人の体は働きによって大きく8つのシステムに分けることができます。例えば、心臓や肺は「呼吸循環器系」、胃や腸や肝臓は「消化器系」、骨髄や赤血球なんかは「血液系」、リンパ節や胸腺は「免疫系」、骨格筋や骨は「骨格系」などと呼ばれていますね。――「~系」というのが、システムのことなんですね。聞いたことがあるものもあります。榊原先生:こうしたシステムのうち、脳に関係するものが「神経系」です。――頭の大きさと関係してくるのが神経系?榊原先生:はい。システムの中でも神経系は、もっとも負荷のかかる部分といわれています。どのシステムも人が生きるために不可欠なんですが、神経系はほかのシステムにはない仕事をこなす役割があるんです。■赤ちゃんの頭の大きさと「神経系」の関係とは?――ほかにはない仕事…?榊原先生:はい。システムの中には急いで完成させる必要がなく、人間の成長に合わせて、長い時間をかけて形作られていくものもあります。でも、神経系は違うんですね。神経系はお母さんのおなかの中にいるときから、生命のリズムを維持する働きや、手足・胴体を動かす働きをしているんです。――お母さんのおなかにいるときから、神経系は働き始めている?榊原先生:そうです。でも、おなかの中にいる間は、それほど働かせる必要はないんです。それがいったん子宮の外に出ると、環境が激変します。――居心地のいいお母さんのおなかから、急に外に出てくるわけですもんね…。赤ちゃんにしてみれば「なんだ、ここは!」ってびっくりすると思います(笑)。榊原先生:そうです。赤ちゃんは生まれてすぐ、まぶしい光、さまざまな音、体に感じる重力といったものにいきなり対応しなければなりません。それに成長するにつれて、立って歩いたり、指先を細かく動かしたり、言葉の使い方なども知っていかなければなりませんよね。実はこれらは基本的に、すべて神経系の受け持ちなんです。だから神経系は生まれたその瞬間から、いっそう活動を活発化させていくんです。――なるほど。体が小さいうちに神経系の働きがものすごく活発になるから、最初から脳、つまり頭が大きくなっているということでしょうか?榊原先生:そうです。これには脳の発達スピードも関係しています。脳を中心とした中枢神経は、成長や発達にともなって、フル回転で機能を発揮しなければなりません。そのため赤ちゃんの脳の中では、機能を充実させるための「突貫工事」が急ピッチで進められているんです。――短時間で一気に発達しようとするんですね。榊原先生:乳児から幼児期前半は、人生の中で脳の発達がもっとも著しい時期といわれています。神経系の発達はほかのシステムに比べ、とても早い時期に行われるんです。だから、小さな子どもの頭が大きく見えるのは「脳が大きい」から。そして脳が大きくなるのは「神経系を急いで作り上げなければならないから」といえるでしょうね。■「子どもの“顔つき”が変わった」どうして?――子どもの顔を見ていると、小さいころとは顔つきが変わったように感じることがあります。赤ちゃんのころは男女差があまりないように感じるのですが、顔つきの変化はどうして起こるのでしょうか?榊原先生:顔は成長するにつれて変化していきます。要因はいろいろですが、頭蓋骨とその中にある脳は、4歳くらいまでに急激に大きくなるので、顔の形が大きく変わる時期でもあるんです。だからこの年齢で「顔つきが変わった」と感じるお母さんもいるかもしれません。――顔の大きさや形って、印象に影響するものなんですね。榊原先生:影響すると思います。一般的には目や口、鼻の配置などが大きく変わると、顔の印象も大きく影響を受けると思うでしょう。それもありますが、実は皮下脂肪や顔の表情をつくる表情筋の発達なども、印象を大きく変えるんですよ。――顔の皮下脂肪や、表情をつくる筋肉も、顔を印象づける要因になっている…?榊原先生:子どもの顔を見ると、皮下脂肪が多くてふっくらと丸顔であることが多いですよね。これは人に限ったことではなくて、動物全般に当てはまることなんです。ふっくらと丸顔であることで、かわいい印象を周りに与えているんです。――確かに、ふくふくとした真ん丸のほっぺを見ていると「かわいいな~」と思いますし、抱きしめたくなります(笑)。榊原先生:大人になると皮下脂肪が薄くなり、重力の影響もあって、顔はどんどん細長くなっていくんです。丸顔から、細長い顔に変わっていく。だから、印象が変わったように見えるんですね。それから、日常的にどんな表情をしていることが多いか、表情筋をどう使っているかということも、顔つきの印象変化に関わってくると思います。――なるほど。顔のパーツ、大きさ、脂肪、表情筋のつき方…。顔つきを変える要因はひとつじゃないということですね。榊原先生:そうです。いずれにせよ、顔つきは「急に変わる」ということはありません。顔の印象は年齢とともに少しずつ変化していくものなんですね。今回は、体の中のシステムなどちょっと難しいお話もありましたが、赤ちゃんの頭が大きい理由について知ることができました。神経系はお母さんのおなかの中にいるときから少しずつ働き、この世界に誕生してすぐにフルスピードで発達し始めているんですね。先生のお話をうかがったことで、赤ちゃんは生まれた瞬間から「生きることに一生懸命」と感じ、がんばれ! がんばれ! と応援したい気持ちが芽生えました。小さな体の中ではさまざまな変化が起こり、日々新しい何かが生まれているんですね。次回は、「子どもの寝相はどうして悪い?」「寝るときに手足が温かくなるのはなぜ?」など、子どもの睡眠にまつわる疑問についてお話をうかがいます。お楽しみに…!参考図書: 『大人が知らない子どもの体の不思議』 (講談社)榊原洋一著子どもと大人はどう違うのか。それは単に大きさだけの違いではありません。どうして夜泣きをするの? どうして寝相が悪いの? どうして落ち着きがないの? 子育て中に親が抱く「答えが見つかりにくい質問」にエビデンスの精神で解答することを試みました。子どもの心と体の不思議を理解する、手助けとなる一冊。
2019年01月31日節分の季節がやってきました。豆まきをして、年の数だけ豆を食べて…と昔からの伝統行事ですが、小さい子どもがいるご家庭は誤えんに注意です。「豆って誤えんするんですか?」と思われるかもしれませんが、病院では時々見かける症状です。■子どもが豆を誤えん…どうやって起こるの?豆は丸くつるっとしていて、幼い子どもにとってはかみ砕きにくいものです。口の中に入っている時に、笑ったり、びっくりしたりした拍子にヒュッと空気の通り道(=気道)へと吸い込んでしまうことがあります。気道のほうに入りますと、むせてせき込みます。その時出てくればいいのですが、時に気管をふさいでしまったりすると、息が苦しくなり顔が真っ青になります。さらに、気管をぬけて肺に入るとせきはましになりますが、豆という異物が入ることによって肺炎を起こすこともあります。ですから、飲み込んだ直後にせき込んで、そののち、せきがましになっても安心とはいえません。しばらくして、呼吸が苦しくなったり、発熱することもあるのです。治療せき込んでいる時は、豆が外に出るのをうながすために、下を向かせて背中を叩いて出させます。気管の奥のほうに入ってしまったものは、細いカメラ(気管支鏡)でのぞいて取り出さなければならない場合がありますが、子どもに気管支鏡が使える病院や医師は限られており、麻酔も必要ですので大がかりになります。豆が肺に入って肺炎を起こした場合も、酸素投与や点滴の治療が必要になるので入院しなければならないでしょう。豆の誤嚥はなかなかやっかいですので、まずは予防が大切です。予防まずは、幼い子には食べさせないことです。米国小児科学会では、4歳以下に対して、誤えんしやすいものは避けるべきとしています(※)。4歳をひとつの目安として、まだ難しそうなら4歳より年が上でも、誤えんしやすい豆は避さけたほうがいいでしょう。節分の豆まきも工夫が必要です。豆はまいたとしても、全部回収すること。ただ、目の届かない場所、意外な場所に残っていることもあるので、小袋のまま投げる、新聞紙を丸めて豆の代用とするなどの対策もあります。節分の際は、豆まきのほかにイワシを食べる、飾るという伝統行事もありますから、子どもが小さいうちだけは、こちらだけするのでもいいかもしれません。年齢が上になって、豆をスムーズに食べられるようになった子どもでも、歩き食べなどをしていると誤えんの危険があります。例えば、歩いている途中で転んだりすると「あっ!」と声を出し、その時にヒュっと豆は気道へ。食べている時に驚いたり泣いたりして声を出すと、気道に入りやすくなります。だからといって、子どもが歩きながら食べているのを見つけても「こらっ!」と怒ったりしてはいけません。その声にびっくりしたり泣いたりして、さらに誤えんの可能性を高めてしまうからです。そんな時は、大人が怒りをしずめて「お口の中のもの、ベーしてね」と優しくさとしてください。誤えんだけじゃない!「子どもは鼻や耳にも入れる」豆を与えるのは4歳を目安にとお伝えしましたが、それ以上の年齢となる年長児などには別の注意が必要です。好奇心旺盛な子どもたちは、なぜか豆を鼻や耳の穴に入れたがります。危険なこととして教えることはもちろんですが、もしもの時は自分でとろうとせず耳鼻咽喉科に相談してください。ちなみに大人の方も誤えんに気をつけてくださいね。節分の豆を誤えんすることはあまりないでしょうが、大きな恵方巻きにかぶりついてむせ、食べたものが気管へ…ということはあります。子どもの誤えん「豆以外にも要注意」子どもは、豆以外にもいろいろなものを誤えんします。とくに、豆と同じように丸くてつるっとしたものは詰まりやすいです。例えば、お弁当の定番、プチトマト。丸くてつるっとしているために、窒息が起こりやすい食品です。小さい子どもに食べさせる時は半分にする、十字に切れ込みを入れて口の中でつぶれるようにするなどの対策をしてください。ブドウも同様に詰まりやすいので、同様に切れ込みなどを入れてください。意外と盲点なのがクランチチョコレートです。ナッツなどが含まれているので、歩き食べなどをしていると、何かの拍子に誤えんしてしまうことがありますから注意してください。子どもは、食べ物だけではなく小さいおもちゃなども口にするので、誤飲も心配ですね。3歳の赤ちゃんが口を開けた時の最大口径は約39mm。この大きさ以下なら、誤って飲み込んでしまいます。一般社団法人日本家族計画協会が作成した 『誤飲チェッカー』() は、子どもが誤飲する可能性のあるものをチェックすることができます。誤飲チェッカーがなくても、トイレットペーパーの芯は直径が約38mm大ですので、ここに入るかどうかで簡易的に誤飲の可能性があるものを調べることができます。1年に1回やってくる節分は、子どもの頃からなんとなく思い出として残っています。鬼に豆をぶつけるのが仕事だった私も、最近は鬼役として子どもたちから追い回される役に徹しています。せっかく厄を払い、福を招くイベントですので、この記事のちょっとしたチェックポイントを参考に楽しい節分にしてくださいね。参考資料※ 「Choking Prevention」healthy children.org(American Academy of Pediatrics)
2019年01月29日RSウイルス感染症は、冬に流行する(ときにほかの季節でも流行)、せきや発熱をおこす呼吸器感染症です。とくに生後3カ月未満の乳児は呼吸困難感が強くなって、入院が必要になることも多いのです。RSウイルス感染症とは、どのようなものでしょうか? 症状や診断、治療・ホームケア、感染予防のポイントなどを解説していきます。RSウイルス感染症、その症状は?最初は、せきや鼻水などの症状が数日続いたのち、発熱したり胸がゼロゼロして呼吸があらくなります。発熱は数日~1週間近く続く場合や、微熱程度の場合などさまざまです。鼻水が多いことが特徴で、のどの奥に垂れ込んできてせきこみ、夜眠れなくなってきて、さらにひどくなると細気管支炎というものをひき起こしてきます。細気管支とは、気管が左右に分かれ、さらに細かく枝分かれした部分。そこが炎症を起こすのが、細気管支炎です。細気管支がむくんだり、分泌物がたまったりしますと空気の通りが悪くなってしまい、笛のようにヒューヒューと音がなる(ぜん鳴)ようになります。空気の通りが悪いと呼吸困難感がでてきて、肩で息をしたり胸やおなかがペコペコ(=陥没呼吸。下のイラスト参照)するような症状が出てきたら酸素投与をしなければなりませんから救急受診してください。この陥没呼吸はとても重要な呼吸困難のサインで、鼻がひくひくしたり、首のところがペコペコしたりする場合も見られます。数日間の軽い風邪症状から次第に呼吸困難感が強まり、数日間の症状のピークがへて、せきや鼻水は徐々に改善に向かいます、全経過で1~2週間以上はかかるものと思ってください。RSウイルス感染症「診断・治療・ホームケア」診断症状や経過を確認し、鼻の綿棒検査で調べます。この検査は、入院患者さんと、外来では1歳未満の赤ちゃんの場合、保険適用にて調べることができます。治療・ホームケアRSウイルス感染症には、残念ながら特効薬はありません。重症化に注意して症状を緩和する治療をしながら、改善するのを待ちます。鼻水や鼻づまりがひどい場合、赤ちゃんは哺乳しながらだと息がしんどくなるかもしれませんから、休みながらこまめに与えてください。脱水にもなりやすいので、水分補給はとても重要です。鼻やせきの症状に対して内服薬の効果は乏しい一方、鼻水吸引は効果的です。鼻水をとることで、のどへの垂れ込みを減らせば、せきを減らすことができますし、鼻づまりが改善すると哺乳もしやすくなります。ちなみに気管支喘息で用いるような気管支拡張薬(吸入、貼り薬、飲み薬)の効果はあまり期待できません。空気の通り道を狭くしている分泌物は気管支拡張薬ではなかなか引かないので、改善には時間がかかるものと思ってください。発熱は1週間くらい続くこともありますし、せきも長引いて数週間におよぶ場合があります。経過中に肺炎や中耳炎を合併してくる場合、抗菌薬を使う必要も出てきます。RSウイルスと診断をうけたら、こまめに受診して小児科医に状態を確認してもらってください。とくに生後3カ月未満の乳児は呼吸困難感やときに無呼吸発作が起こる場合があり、入院治療をするケースが多いです。かわいた空気は気道に刺激が加わり、せきも出やすくなります。加湿器などで適度な湿度をキープしてください。お風呂の中は加湿されていますから、ぐったりした様子などがなければ、入浴することはむしろ良い効果があるかもしれません(注:医師により判断は異なります)。RSウイルス感染症「予防、登園・登校基準」3~5日の潜伏期間があり、発症から7~10日くらいはウイルスを出しています。インフルエンザのように登園停止基準があるわけではありませんが、せきやくしゃみ、接触により感染するため、せきこみがひどいうちは登園・登校はさけたほうが無難です。RSウイルス感染症「よくあるQ&A」最後に、RSウイルス感染症について、よくある質問をまとめました。Q. 大人も感染する?A. 大人も感染します。ただし重症化することはなく通常のせきや鼻の症状です。先に大人が風邪症状を認め、のちに子どもがRSウイルス感染症になることがよくありますので、とくに小さい赤ちゃんがいるご家庭では注意してください。Q. 繰り返しかかるの?A. 年齢があがれば重症化のリスクは下がりますが、残念ながら繰り返しかかってしまいます。Q. 予防法はある?A. 今のところワクチンは開発中ですので、予防は一般的な手洗いや、感染している人との接触を避けることです。ワクチンとは異なりますが、早産児や先天性心疾患を持つお子さんなどリスクの高いお子さんは、重症化や入院を防ぐ目的で、 米MedImmue社のシナジスに代表されるパリビズマブという抗体薬を、あらかじめうつことができます。一部の方にこのお薬の適応があるので、流行期には医師から説明があるかと思います。RSウイルスは毎年多くの人が感染して1歳までにほぼ半数が、2歳までにほぼ100%の人が感染するもので、誰もが通る道です。熱やせきも長引きなかなかしんどい感染症ですが、呼吸困難やとくに小さい赤ちゃんの重症化には注意しながらなんとか乗り切ってくださいね。参考資料※ 「シナジス投与ガイド」(提供 アッヴィ合同会社/制作 リノ・メディカル株式会社)
2019年01月28日子どものお世話をしていると「子どもの体って不思議だなあ」と思うこと、たくさんありますよね。例えば、赤ちゃんの目。顔をのぞきこむと、こちらをジッと見つめているような気がしてきます。そんなときに思うのが「赤ちゃんはモノがどのくらい見えているんだろう?」という疑問ではないでしょうか。赤ちゃんの視力はどのくらいあるのか、また言葉を話せない赤ちゃんの視力をどうやってはかるのか。そうした子どもの体にまつわる疑問に回答してくださるのが、小児科医でありお茶の水女子大学名誉教授・榊原洋一先生です。今回は、榊原先生に「子どもの目」にまつわる不思議を教えてもらいました。お話をうかがったのは…医師・お茶の水女子大学名誉教授榊原洋一先生お茶の水女子大学人間発達教育研究センター教授。東京大学医学部卒業。専門は小児科学、小児神経学、発達神経学など。小児科医として発達障害児の治療にかかわる。著書は『大人が知らない子どもの体の不思議』(講談社)など多数。■赤ちゃんの視力はどのくらい?――榊原先生、本日はどうぞよろしくお願いいたします。早速ですが、生まれたばかりの赤ちゃんの「目」に関する疑問があります。ママなら誰しも思ったことがあると思うのですが、顔を近づけると、ジッと見つめているようなときもあるし、見ているのか、見ていないのか分からないときもあって…。赤ちゃんはどのくらいモノが見えているのでしょうか? 榊原洋一先生(以下、榊原先生):生まれたばかりの赤ちゃんは人の顔やおもちゃが目の前にきても追わない、焦点があっているように見えないので「目が見えない」と信じられていたんですね。でも、近年の行動観察などによって、目の前から大体数10cm程度のものは「ぼんやりと見えている」ことが分かってきました。――自分に近い距離にあるものは、ぼんやり見えているんですね…。榊原先生:そうです。生まれてすぐのころは近視に近い感じなのですが、生後5~6カ月を過ぎると、ぼやっとした輪郭のようなものが見えてくるようです。――生後5~6カ月くらいで輪郭のようなものが見えるようになるんですね。視力であらわすと、大体どのくらいになりますか?榊原先生:出生時の視力は0.02~0.03といわれています。それが1歳ごろになると、0.2~0.4くらいになる。そして3歳ごろには1.0以上になると考えられています。もちろん輪郭だけではなく、赤ちゃんは色も見えていますよ。■赤ちゃんの視力、どうやって調べるの?――3歳くらいで1.0くらいの視力になるんですね…! ちょっと疑問なんですが、赤ちゃんの視力ってどうやってはかっているんでしょう? 私たちが視力をはかるときは、アルファベッドの「C」がいろんな方向を向いた表を使って、Cにすき間が開いている部分を「右」「斜め左」などと伝えて視力を検査しますよね。でも赤ちゃんは言葉が話せません。一体どのような方法で調べられているのでしょうか?榊原先生:視力は「赤ちゃんならではの性質」を利用して測定されています。――赤ちゃんならではの性質…?榊原先生:そうです。赤ちゃんは何も書いていない紙より、縞模様が書いてある紙のほうをよく見つめる、という性質があるんですね。この性質を用いた視力の調べ方を紹介しましょう。まず赤ちゃんに2枚の紙を見せます。片方は灰色の紙、もう片方は縞模様が描かれた紙です(いずれも明度は同程度)。当然、赤ちゃんは縞模様の紙を長く見つめますよね。――…はい。榊原先生:そこで見せる縞模様の幅を段階的に、だんだん狭くしていくんです。各段階で縞模様の紙を見つめている時間も、それぞれ記録します。そして、灰色の紙を見つめる時間と比較してみるのです。――なるほど! その差を見ることで、視力をはかるということですね。榊原先生:そうです。当然最初は縞模様を見つめる時間のほうが長いですよね。でも縞模様の幅を狭くしていくうちに、見つめる時間が短くなってくる。大人も縞模様がどんどん細かくなっていくと、模様がだんだん見えなくなって、ただの灰色の紙のように見えてきますよね。赤ちゃんも同じで、縞模様を模様として判別しなくなってくる。縞模様を見つめる時間と灰色の紙を見つめる時間が同じになったときが、赤ちゃんの「視力の限界」を示すことになるのです。――考えた人、すごいです…!榊原先生:そうして調べたことで「新生児の視力は0.02~0.03くらい」というような具体的な数値が分かるようになったんですね。――「赤ちゃんは無地より縞模様をよく見る」という性質があるなんて、おもしろいですね…! 榊原先生:縞模様もそうですが、赤ちゃんは人の顔を一生懸命見る特性があるのも分かっているんですね。縞模様と顔を見せると、顔のほうをよく見るんです。だからお母さん、お父さんのなかには「こっちをよく見るな~」と感じる人がいるかもしれませんが、顔や目元、口元をよく見るというのは本当。実験結果でもそうした特性があることは分かっていますね。――赤ちゃんは人の顔をよく見るなと思っていましたが、それも赤ちゃんならではの特性だったんですね! ■赤ちゃんの白目「青く見えるのはどうして?」――先生、目に関することでほかにお聞きしたいのが「子どもの白目が青く見える」ことです。何か理由があるのでしょうか?榊原先生:ではまず、目の仕組みについて少し説明しましょう。白目は結膜という透明な膜でおおわれています。そして、結膜の下にはさらに強膜という膜がある。さらにその下には脈絡膜というのがあって、細い血管が網の目状に走っています。――白目の部分って、いろいろな膜が何層も重なっているんですね。榊原先生:そうですね。乳児の白目の強膜には、ある特徴があります。それは「大人と比べて厚さがとても薄い」ということです。だから強膜の下の脈絡膜を流れる血管の色が透けて見えるんです。これは静脈ですね。だから、白目の部分が青く見えるんです。――なるほど! 青く見えているのは、血管の色が透けていたからなんですね。でも大人になっても白目が青い人ってあまりいない気がします。子どもならではの現象なんでしょうか?榊原先生:大人になると、白目はやや黄色くなってきます。これは年齢とともに、肌のシミと同じ物質が沈着していくからです。――シ、シミ…! 目にも沈着するんですね(焦)。榊原先生:はい。それで、加齢と共に白目はやや黄色味がかってくるんですが、子どもの場合はまだ沈着がないので、大人に比べると青っぽく見えるようですね。小児科医である榊原先生のもとには、子育ての悩みや行動に関する相談がたくさん持ち込まれるそうです。それは、子育て経験の豊富な人がまわりにいなかったり、子育てや子どもの病気などを気軽に聞くことができなかったりする環境にある家庭が多くなっているからかもしれません。榊原先生は、そうした現状を踏まえ、子育て中の親が抱くであろう子どもの体と心に関する「答えが見つかりにくい質問」に真摯に向き合っています。今回は、子どもの「目」にまつわる疑問についてうかがいました。赤ちゃんならではの性質を知ることは新鮮であり、ちょっとした疑問も答えが分かることで「そういうことだったのか」と子どものことを理解できたような気がします。次回は、「子どもの頭はなぜ大きい?」「顔つきが変わるってどういうこと?」など、子どもの顔や頭に関する疑問について、榊原先生にお話をうかがいます。お楽しみに…!参考図書: 『大人が知らない子どもの体の不思議』 (講談社)榊原洋一著子どもと大人はどう違うのか。それは単に大きさだけの違いではありません。どうして夜泣きをするの? どうして寝相が悪いの? どうして落ち着きがないの? 子育て中に親が抱く「答えが見つかりにくい質問」にエビデンスの精神で解答することを試みました。子どもの心と体の不思議を理解する、手助けとなる一冊。
2019年01月26日夜間の小児救急外来をしていますと、腹痛をうったえるお子さんが受診して、便秘が原因であることはよくあります。「便秘くらいですいません…」と申し訳なさそうにする保護者の方も多いのですが、便秘には腹痛、排便困難感、食欲低下などの症状があり、子どもにとってとてもつらいものです。ある調査結果によると、子どもの10人に1人くらいは便秘といわれています(※)。便が出れば解消することから、病院へ行くほどでもないと軽く考えがちですが、便秘は立派な病気です。しっかりと治療、予防をしていく必要があります(主に1歳以上の子どもを想定しています)。便秘のしくみ「体内で何が起こっている?」便秘はなぜ起こるのでしょうか?まれに先天的な病気などで便秘になる場合もありますが、多くはそのような特別な原因がない便秘で、「機能性便秘」と呼びます。排便の機能は個人差があり、毎日スムーズに出る子もいれば、毎日は出ない子もいます。あまりスムーズに出ないタイプの子は、便が固くなったりして排便の時に痛みをともなうようになります。痛みがあるとさらに排便を我慢して、出しにくくなるという悪循環にはまってしまい、便秘症の完成、つまり慢性的な便秘となってしまいます。便秘の症状・診断「目安は1週間で3回未満、5日以上出ない」便秘の症状としては、便がたまっておなかがはってくるので、腹痛や食欲低下、ときにおう吐を引き起こすことがあります。また、排便困難感があって、排便のときに痛そうにする、顔を真っ赤にしていきむ、トイレをいやがる、なんとなく不機嫌、おしりが切れて血が出るといった症状が起こります。診断の目安として、1週間に3回より少なかったり、5日以上出ない場合は便秘となります(※)。ただし、毎日出ていても、排便のときに痛がる場合は、便秘として治療が必要です。排便の頻度や回数だけではなく、おなかを触診して便のかたまりに触れるか、おなかのレントゲンを撮影して便やガスがたまっているかなどから総合的に診断します。便秘の治療「医師と相談しながら進める3つの手順」便秘の治療には、医師と相談しながら、次の手順で進めます。1. 浣腸:まずは一度、便秘の悪循環をリセットする必要があり、浣腸してひとまず便をだします。これは病院でできますし、ドラッグストアで浣腸を購入する方法もあります。2 .浸透圧性下剤の投与:便をやわらかくして出しやすくするお薬です。これ自体で腹痛を引き起こすことは少なく、比較的使いやすいお薬です。浸透圧性下剤には、次の2つがあります。糖類下剤:マルトース(麦芽糖)。代表的なものにマルツエキス(和光堂)。塩類下剤:酸化マグネシウム。ただし、量が多いと下痢をしますし、少ないとあまり効果がないので、医師と相談して調整しながら適切な量を決めなければなりません。3 .刺激性下剤の投与:ラキソベロン(帝人ファーマ)を代表的なものとするピコスルファートナトリウムを主成分とした薬で、腸を動かし排便させるものです。液体のお薬を水に混ぜて飲むもので使いやすいのですが、排便時に痛みをともなうことがあります。また、排便によりおしりが切れている場合は、おしりのケアも大切です。ワセリンなどで表面を保護してあげてください。便秘の予防「まずは食物繊維をしっかり摂取」便秘の予防にはまず、食事療法が重要で、食物繊維をしっかりとります。一般的に子どもの多くが食物繊維不足ですので、野菜、海藻、果物、芋類、豆類などを意識的にとってください。小学生にとっては、学校で排便することが恥ずかしいということがあるかもしれません。学校でトイレに行けず、便秘を悪化させてしまうことはよくあります。そのような場合は、家で朝、もしくは夜にトイレに行って排便するよう習慣づけるとよいでしょう。規則正しい排便には、十分な睡眠や規則正しい食事、適度に運動が大切です。もちろん、学校でトイレに行くことは決して恥ずかしくないことを教育していくこともあわせて重要です。子どもの便秘「よくあるQ&A」便秘について診察室でよくうける質問をまとめました。Q. 水分をとったら便秘が治る?A. 水分不足で便秘になる可能性はありますが、たくさん水分をとっても尿として出ていきますので、それだけでは改善しません。Q. 浣腸はくせになるからしないほうがいい?A. 浣腸は便秘の悪循環を一度リセットするものです。浣腸で出したあと、緩下剤や食事でコントロールして悪循環にはまらないようにしなければなりません。浣腸しないと排便できないという状況は、くせになっているというよりは、便秘の悪循環から抜け出せていない状態ととらえてください。Q. トイレトレーニングの時期は?A. おむつがはずれる時期は2~4歳と幅があり、個人差が大きいです。トイレトレーニングの時期が本人にあっていないと、排便はつらいものになり、便秘の原因となる可能性があります。うんちをしてスッキリすることは気持ちいいいということ教えていくためにも、子どもにとって適切な時期に開始していかなければなりません。赤ちゃんの便秘「綿棒の刺激で排便サポート」最後に赤ちゃんの便秘にも少し触れます。生後すぐは排便の力が十分ではありません。肛門の綿棒刺激をしてアシストすることでだんだん自分でも出せるようになってきます。寝た態勢では排便しにくいので、首がしっかりしてきたら支えながら座らせると「うーん」ときばりやすくなります。それでもなかなか出ない時は、浣腸をしたり、医師と相談のうえで下剤の使用を検討してください。以上、最近増えている子どもの便秘に関する対策をまとめました。規則正しく、すっきりとうんちを出すことは健康のバロメーターです。便秘は、ときにのたうちまわるほどの強い痛みを起こすこともあり、「病気」ととらえてしっかりと予防、治療していきましょう。参考資料※ 「こどもの便秘−正しい知識で正しい治療を−」(小児慢性機能性便秘診療ガイドライン作成委員会)
2019年01月14日寒い日が続き、我が子のまわりでも風邪が流行っています。みなさんはいつ頃、どのようにかかりつけ医を決めましたか?今回は、わたしがかかりつけ医を選んだポイントをまとめてみました。小児科デビューは、地元で人気のクリニック人の病院の付き添いなんてあまりしたことがなかった私。自分自身も特にかかりつけ医がいるわけではなく、ましてやまだ自分で症状の説明もできない赤ちゃんのお医者さん探しとなるとより慎重に…。息子の産まれた産院では、すぐにかかりつけ医を決めるよう指導していたので、出産後すぐ近くの小児科の場所や数、評判をチェックしていました。実は、息子の初めての小児科受診は、退院して二日後のお昼頃。検温すると、なんだか熱が高い…!リサーチしておいたなかから、急遽一番近所にある小児科に行ってみることに。急な病気の時に頭に浮かぶ病院がいくつかあるのはとても心強かったので、妊娠中や産後すぐに小児科のリサーチをしておくことは大切だなぁと実感しました。息子が診てもらった先生は、感じがよく信頼できそうな印象。新生児~低月齢のうちは病院にかかる基準がわからない新米ママの私に、「心配しすぎくらいでいいですよ」と言ってくれたのも安心できました。結局、この小児科がそのままかかりつけ医に。通うようになって後から知ったのですが、ここの小児科地元では超人気。病児保育やおでかけ広場も併設していて、地元の人の小児科検診やワクチン接種はだいたいここなんじゃないかというくらい。風邪が流行っている時期などはすごく混みますが、何人か先生がいるし、ネット予約も出来るので長時間は待ちません。どの先生も感じがよいから質問しやすいし、親身に向き合ってくれることが一番の良いところでした。立地や設備も、病院を選ぶ条件に先生の印象のほかに、病院を選ぶ基準となるのは、通いやすい立地と、院内の設備。距離が近いというだけでなく、アクセスが良い立地であることも大事。私にとっては保育園の帰りにサクッと寄れる場所にあるというのもポイントでした。また、院内の設備も病院の心遣いの表れのひとつ。月齢が低いうちは少し離れたところの待合を使わせてくれるのは、伝染する風邪が流行っている時期などには有難かったです。もちろん、オムツ替えシートも完備、清潔なキッズスペースもあり、待合ベンチの配置や院内の雰囲気は総じて心地よいものでした。最近では、ワクチンや検診の予約がネットでできるかどうかも、病院選びのポイントに。具合の悪い赤ちゃんを抱えて電話するのは大変だし、診療時間外に調子が悪くなったときにもネットで予約すれば安心できます。いざという病気のときに、大型病院への連携は?また、いざという病気が判明した場合や、風邪が悪化して入院が必要な症状になってしまった場合など、その小児科がどういった大病院と連携しているかも大事です。小児科のサイトに、地域連携医の登録などが記載されていると知ることができます。息子を出産した病院は小児分野が専門の大病院で、自宅からバスで30分ほどかかりますが、救急もやっているので心配な症状の時は足を運んでいます。最新の研究も行ってるので、マイナーな病気を見逃してしまうなんて可能性も低い気がするので、地域の総合病院を知っておくのはリスクヘッジにつながると思います。かかりつけ医が、なかなか見つからない場合は?私の知人には、通っていた小児科が閉院になったり、「なんだか先生と合わない…」と感じているママも。そんなときに何よりタメになるのが、やっぱりご近所ママたちの声。児童館や地域の子育てセンター、保育園や幼稚園ママたちに話を聞いてみて。また、乳幼児家庭訪問で来た保健師に、地域のママたちが通っている小児科を聞いてみてもいいかもしれません。でも一番はやっぱり、自分と自分の赤ちゃんが、その小児科に合うかどうか。小児科難民だからっていろいろなところを転々とするのはおすすめできませんが、小さなうちは予防接種項目が続くので、数院回ってみるのも手。納得できるかかりつけ医選びのためにも、かかりつけ医が休診だったときのためにも、いくつかの小児科を知っておく方がいいと思います。保育園生活スタート、鼻水の症状は耳鼻科に!保育園入園前は、前述した小児科だけに通っていた息子。しかし、入園後は治れども治れどもちょっとした風邪をうつしあってしまい、鼻水がだらだら出ている状態が続いたことも。基本は家の自動吸引器で吸ってるのですが、あまりにひどい時は病院に行きます。鼻水の症状が強い場合は、小児科ではなく耳鼻科に連れて行くように。耳の中を細かく見たり、薬をつけたりする機械などが耳鼻科のほうが充実しているからです。こちらも、近所の耳鼻科が一児のママである先生がやっていて、子どもを診せやすかったのでかかりつけに。待合にキッズスペースもあったり、ネットで順番待ちも出来るので助かっています。小児科以外の病院にかかる場合、子供歓迎の雰囲気があると◎。風邪から中耳炎になりかけてしまったときにもすぐに見つけてくれて薬もよく効いたのでこれからも耳や鼻の症状はこちらにかかろうと思っています。最近では、なんだか耳を気にしているなと思って耳鼻科に連れて行ったらものすごく大きな耳垢が!綿棒ではとれない耳垢ってよくあることらしく、いつでも来てくださいねと言ってくれました。お子さんの様子が気になったら行ってみてくださいね。1歳を過ぎた頃から…、歯医者さんの選び方は?息子は、1歳ではじめての歯医者さんを経験。歯磨きが苦手な息子に悩んでいたので指導を受けたかったことと、フッ素塗布がきっかけです。歯医者さんは口の中を長時間診るため、こどもが嫌がってしまうと診察にらないので、お医者さんとの相性はとっても大事。赤ちゃん慣れしていて優しい先生のところに通うことにしました。それでもやはりグズりますが、なんとか診察できています。小児専門歯科もたくさんありますが、虫歯や病気などでない場合は、検診やフッ素塗布がメインなので、近所で通いやすく雰囲気の良い歯科で十分かなと思います。病院へ行く時の注意点!診察時の吐き戻しの心配があるので、診察の30分~1時間前までには食事や授乳を済ませておきましょう。熱を測ったり、防寒やマスクも忘れずに。病院へいくときは、保険証、乳児医療証、診察券、お薬手帳、この4点セットは、母子手帳ケースにまとめて!それと子どものことに気を取られて忘れがちですが、感染予防にママ用マスクも必須です。キッズスペースや絵本がない病院では、おもちゃや絵本があると待ち時間に退屈させずに済みます♪着替えやオムツなども適宜持参して。子どもが風邪や病気、ケガなどでつらいときにママが焦ってしまっては本末転倒。信頼できるかかりつけ医さんにを見つけて、親子で安心して診てもらえるといいですね。
2019年01月11日冬になるとノロウイルス胃腸炎が流行して、下痢やおう吐で小児科を受診する子が増えます。今回は、下痢やおう吐の対策、ノロウイルス胃腸炎を中心に解説していきます。ノロウイルス胃腸炎の症状は? 診断、治療は??ノロウイルス胃腸炎とは、どんな病気なのでしょうか? その症状や合併症、診断のポイント、治療についてご紹介します。ノロウイルス胃腸炎、その症状は?ノロウイルスはおう吐を主な症状として下痢、腹痛、発熱を認め、冬に流行しやすい胃腸炎です。子どもが感染すると、そこから大人にも感染することが多く、家族内で流行することも珍しくありません。数日間の症状ですが激しいおう吐などから脱水になってぐったりしてきたり、おしっこが出なくなったりします。この合併症に注意ノロウイルス胃腸炎の合併症として、けいれんを起こす「胃腸炎関連けいれん」があげられます。これは、ノロウイルス以外の胃腸炎でも起きるものですが、熱性けいれんとは異なり、熱がなくても起こる症状で、数秒~数分の短いけいれんを反復するという特徴があります。熱性けいれんとは治療薬が異なるので、けいれんが見られた時には医師に胃腸炎症状があるかないかを伝えることはとても重要です。ノロ、それとも? 医師の診断ポイントおう吐にはじまり、下痢症状をともない、数日の胃腸症状ののち改善し、周囲でも流行しているようならノロウイルス胃腸炎の可能性が高いと医師は診断します。ノロウイルス胃腸炎の場合、おう吐から始まることが多いですが、おう吐=ノロとは限りません。実は、おう吐=ノロと考えるとほかの疾患を見逃すことになり、思わぬ落とし穴があります。例えば、髄膜炎や心筋炎などでもおう吐の症状があります。ノロウイルス胃腸炎かどうかの診断については、便の検査はあるものの必須ではなく、保険診療での検査も3歳以下や65歳以上の高齢者のみと制限があります(子どもと高齢者は悪化しやすいため)。そのため、便の検査は補助的に用いて、基本的には診察や経過で総合的に医師が判断します。特効薬はなし! ノロウイルス胃腸炎の治療特効薬はありません。下痢としてウイルスが体内から出ていけばだんだんと改善しますので、症状のある数日間、脱水にならないようにしのぐことが最も重要です。薬としては、症状を緩和させるために整腸剤や、漢方薬の五苓散などが使用されます。オーエスワン/OS-1(大塚製薬)など経口補水液による脱水対策が大切ですが、飲めない場合は点滴を考慮します。これらはノロウイルスに特別な治療ではなくて、ほかの胃腸炎でも同じ対症療法です。つまり検査でノロウイルスを確認しなくても治療は可能で、おおまかに胃腸炎ということがわかればそのあとの治療は一緒です。そのため、ノロウイルス胃腸炎かどうか検査するためだけの受診は必要ないといえます。どちらかというと、そのおう吐がほかの病気ではないこと、胃腸炎であることを確認することを一番の目的としたほうがいいでしょう。受診するか、しないか…その目安は?受診するかしないか迷った時は、脱水傾向があるかどうかが目安になります。つまり、水分がとれずぐったりしている、尿が少ない、口がかわいている、などの症状です。脱水の症状があれば、点滴が必要になる可能性があるからです。逆に言えば、脱水の心配がなく水分がとれているようであれば、無理をして受診をしなくても家でしばらく様子をみてもかまわないでしょう(注:医師により判断は異なります)。もちろん不安だったり、ほかの病気の心配があれば受診したほうがベター。ただ、ある程度元気で、脱水の症状が出ていなければ、ホームケアで自然と治っていく病気であるといえます。一番こわい脱水症状を防ぐ「吐き気がある時の水分摂取」ポイントは症状が強い数日間、ここをいかに経口補水でしのぐかです。よく、おう吐するから飲ませないと考える場合があるかもしれませんが、おう吐して水分が少ない状態でさらに経口摂取を絞れば、すぐに脱水になってしまいます。飲ませ方には、ちょっとしたコツがあるので、以下の手順ですすめてみてください。脱水症状を防ぐ水分の取り方1.おう吐直後はすぐまたもどしてしまうので、水分は飲ませないほうがいいでしょう。30分くらい時間をあけます。2.吐き気がおさまったタイミングで、水分を一度口に含ませてみてください。スプーン1さじでかまいません。3.1さじ飲めたら、2さじ、3さじと段階的に様子をみながら水分量を増やしていきます。吐かない程度に少量づつ体に水分をいれていけば、脱水を予防できます。※もし、1さじも受けつけない、数さじでもおう吐するようであれば、病院での点滴を考えたほうがいいでしょう。飲ませる水分は、アクアライト(アサヒグループ食品)など乳児用イオン飲料や、オーエスワン/OS-1などの経口補水液がいいでしょう。ナトリウム(電解質)や糖分が入っていないと、血液中のナトリウムが少なくなったり、低血糖によって倦怠感(けんたいかん)を感じたり、時にけいれんを起こす可能性があります。飲み物はできる限り、電解質や糖分を含むものにしてください。経口補水液が飲みにくいという場合、軽症であればりんごジュースなどと半々で割って飲みやすくしてから与える方法もあります(※)。家族への感染を食い止める! 予防法とホームケア親が感染すると看病を含め2倍、3倍のしんどさになります。下痢、おう吐の処理は手袋をして、可能であればビニールエプロンを使って感染対策をしてください。寝具におう吐すると後片付けが大変なので、ペットシーツなどをしいておくのも一つの方法です(我が家も一度ひどい目にあいました…泣)。子どもがおう吐しそうになったときすぐに受けることができるよう、洗面器やボウルにビニールをかぶせておくと便利です。もし出かける場合はおう吐に備えて、紙袋+ビニール袋や、着替え(親の分も)、手をふくウェットティッシュなど用意しておくことをおすすめします。予防には、手洗いが基本です。できるだけ流水でウイルスを洗い流しましょう。ノロウイルスは飛びやすいので、いろいろなところに付着しているため、ほかの人がさわる可能性のあるところは極力さわらず、どこかさわったあとは手を洗うようにしてください。アルコール消毒は効果が乏しいので、ハイター(花王)といった次亜塩素酸ナトリウム配合の商品で除菌するのがおすすめです。ドラッグストアにはノロウイルス対策と書いていても、成分がアルコールという場合があります。買う時の参考にしてくださいね。参考資料※ Effect of Dilute Apple Juice and Preferred Fluids vs Electrolyte Maintenance Solution on Treatment Failure Among Children With Mild Gastroenteritis: A Randomized Clinical Trial.
2018年12月31日病気の完治には早期発見が大事。最先端医療以外でも、基本的な検査の組み合わせでそれは可能だ。女医がすすめる、本当に必要な「女性が40歳過ぎたら受けるべき検査」とは――。「40歳以上の20人に1人は、日本の失明原因第1位の目の病気、緑内障にかかっている可能性があります。自覚症状がないまま進行していくので、失明寸前にならないと気づかない方もいます」そう話すのは、たじみ岩瀬眼科の院長で、日本緑内障学会理事の岩瀬愛子先生。「近視が強い人、家族に緑内障のある人は特に注意が必要です。緑内障は、早期発見すれば失明せずにすみます。40代になったら、一度は眼底検査・視野検査・眼圧検査を受け、その後は、少なくとも5年に1度は受けましょう」骨粗しょう症は、加齢による女性ホルモンの減少や、過度なダイエットなどで骨がもろくなる。岡山市・淳風会健康管理センターの斧澤克乃先生は次のように語る。「閉経後、骨の分解を抑える働きがある女性ホルモンの分泌が減ると骨密度が低下しやすい」年齢を重ねたとき、骨折して寝たきりになる恐れもあるという。「最近では、骨量を増やす薬もできているので40代になったら一度は骨密度検査を受けて、早めの対処を心がけましょう」(斧澤先生)骨粗しょう症の検査は、地域の保健センターや保健所で受けられる。
2018年12月23日いよいよ本格的な冬の到来。子育て中の親のみなさんは、風邪やインフルエンザ対策として子どもに予防接種や手洗いうがいの徹底、お部屋の湿度管理、除菌など忙しくされているのではないでしょうか?しかし、あらゆる対策を施しても、学校や幼稚園など集団で過ごしている子どもたちはどうしても感染してしまいますよね。「混雑した小児科を受診するより、内科で受診したほうが早く済むかしら……」「坑インフルエンザウイルス薬や抗菌剤ってどのように処方されているの?」など、みなさんも疑問を抱いたことがあるはず。今回は、そんな「小児科についての疑問」や「小児科から一般内科への移行年齢と処方薬」についてのお話です。■ 小児科は0歳児から成人まですべての患者が対象!0歳児のころから予防接種や定期健診を始め、お世話になることが多い小児科。tkc-taka / PIXTA(ピクスタ)小児とは一般的に15歳くらいまでを指すそうですが、子どもの風邪や肌荒れ、心身症まで診てくれるなどの守備範囲の広さから、小児科は親にとっては強~い味方。筆者としてはなるべく長くお世話になりたいくらいですが、子どもが成長すると「小児科は小さい子どもが多いから、なんとなく恥ずかしい」などという感情が芽生え、一般内科に移行する子どもが多いようです。しかし、小児科について定められた年齢制限はないそう。実は筆者も、子どもの予防接種ついでに30代にして小児科を受診した経験があります。小児病棟には、高校生や成人の患者さんが入院することも珍しくはなく、0歳児から成人まですべての患者が対象と考えていいようです。Graphs / PIXTA(ピクスタ)■ 小児科医と一般内科医でまったく違う”移行期間”小児科受診に定められた対象年齢はないということは分かりましたが、”小児科から一般内科への移行期間の目安”について、医師たちはどう考えているのでしょうか。「株式会社アンテリオ」は、過去1か月間に小児患者(15歳以下)を10名以上診療した医師を対象に「小児患者の受診」について調査を実施しました。小児科から一般内科への移行時期の目安となる年齢についてのアンケート結果を見てみると……、最も多い回答は、一般内科医は「12歳(中学校入学)ごろ」、小児科医は「15歳(高等学校入学)ごろ」となりました。なんと小児科医と一般内科医では、移行期間の目安に3歳もの差があることが判明!両者の回答を見てみると移行期間は12歳~18歳頃と幅広く、一般内科への移行は親やお子さんが判断されても問題はないようにうかがえます。kou / PIXTA(ピクスタ)■ 薬の処方方針は年齢によって違う?次に、小児科医の坑インフルエンザウイルス薬の処方方針を見てみましょう。”1歳未満の新生児・乳児に対してはほとんど処方しない”と回答した医師が17%いるものの、ほとんどの医師がどの年齢の患者に対しても坑インフルエンザウイルス薬を投与しているという実態が明らかになりました。6歳まではドライシロップ(粉薬)が多く処方されていますが、6歳を超えると薬の選択肢が増え、10歳以上になると吸入薬が約6割。tkc-taka / PIXTA(ピクスタ)年齢に合った剤型が処方されているようです。更に、厚生労働省で適正使用を求められている”抗菌剤”の使用について見てみると、かぜ症候群(主に上気道症状、発熱等)に対する抗菌剤の使用については、小児科では「ほとんど処方しない」とする医師の割合が85%。その一方で、一般内科では「積極的に処方する」と「患者側の希望により処方する」とする医師数を合計すると半数にのぼることがわかりました。抗菌剤は中耳炎や気管支炎、肺炎、扁桃炎など細菌による病気を早く治すためや、重い病気から命を救ってくれるものでもありますが、普通の「かぜ」であればウイルスが原因のため効きません。普通のかぜのときに予防のために抗生物質を飲むことは、体内の菌のバランスが壊れ耐性菌(抗生物質が効かない菌)ができてしまうこともあるのです。中耳炎に対しては、ペニシリン系抗菌剤を使う医師の割合が、一般内科よりも小児科の方が高いため、小児科医師の抗菌剤の適正使用に前向きな姿勢がうかがえました。tadamichi / PIXTA(ピクスタ)いかがでしたか?子どもの場合は細菌感染なのかウイルス感染なのか判断が難しい場合があります。抗生剤が処方された場合は、用法と容量、内服日数を必ず守り、飲みきるようにする。そして自己判断による抗生剤の内服や、中途半端な抗生剤の使用の中止はお子さんの将来にとってよくありません。薬の処方について不明な点は、診察の際に質問されることをオススメいたします。【参考】※小児患者の受診に関する調査小児科医師が考える「小児科卒業」の目安は15歳医療従事者への簡易Web調査「TenQuick」で調査※小児科医へのよくある質問-大分大学医学部※「抗微生物薬適正使用の手引き 第一版(ダイジェスト版)」を作成しました-厚生労働省
2018年12月22日咳は子どもには頻繁に起こる症状で、咳込んだり眠れなかったりして見ていてつらいものです。子どもが咳込むとき、家でしてあげられることは? 受診のタイミングは? と悩むことも多いのではないでしょうか。今回はそんな咳の症状や改善方法について解説します。咳をする仕組みって何??まず咳の仕組みはどのようなものでしょうか。息を吸うと空気が口や鼻から入って、のど、気管を通って肺にいきます。この通り道を「気道」といいます。この気道に細菌やウイルス、タバコの煙やアレルギー物質、食べ物などの「異物」が入ってくると、それらを外に出そうとして「咳反射」が起こります。食事中にむせると咳が出ますが、これは異物としての食べ物が気道に入ってくることで反射的に咳が出ているのです。このように咳は異物を外に出すための生理的な反応といえます。咳の原因って何??では、咳の原因にはどんなものがあるでしょうか?基本的には、気道を通る異物すべてということになります。主な原因は以下です。感染症による咳いわゆる風邪(上気道炎)は気道にウイルスや細菌が侵入して咳を引き起こします。また鼻水がでてきて、のどに垂れ込んでくることでも咳を起こします(=後鼻漏:コウビロウ)。自分で鼻をかむことができない子どもたちにとって、後鼻漏は咳の原因として大きなものです。また風邪により痰がからんでくると、それを出すために生理的な反応として咳がでます。誤嚥(ごえん)による咳食べ物や唾液が気管に入ってしまうことで咳を引き起こし、ときに肺炎を起こすこともあります。胃食道逆流(いしょくどうぎゃくりゅう)による咳胃液の逆流により胃液が気道に入って咳を引き起こします。食後や、仰向けの態勢で逆流は起こりやすくなります。気管支喘息による咳もともと気道が過敏な状態であるために、アレルギー物質やタバコの煙などの気道に入ってきた刺激に対して咳が出やすい状態になっています。受診のタイミングは? 咳で困ったときの判断基準ではこのような場合受診のタイミングはどうすればよいでしょうか? 緊急性のあるものとそうでないものがありますが、以下のような呼吸困難を伴うものは緊急性があり、早く受診したほうがいいでしょう。百日咳とくに3ヶ月未満の赤ちゃんはまだ予防接種をうけていないため重症になりやすいです。コンコンコンコンと連続的に咳をして、顔を真っ赤にして苦しそうにヒューっとうなります。※1 動画参照仮性クループのどの奥のほうにある声門の下が腫れるもので、犬が吠えるようなケンケンした咳を特徴として、呼吸困難を認めます。※2 動画参照一方、風邪の咳は1~2週間ほどで落ち着くことが一般的で、緊急性はないのですが、それ以上続く場合は肺炎や喘息など他の原因が隠れている場合があり、受診したほうがいいでしょう。肺炎の有無の確認にはレントゲン撮影が必要です。咳の特徴としては気管支喘息の場合、日中はそれほどでなくても朝や早朝、運動後などに咳き込むことが多く、肺炎など感染症によるものは、日中と夜の咳のギャップは少ない傾向です。…では治療はどのようなものがあるでしょうか。気管支喘息や百日咳、クループなどは病気ごと個別の治療があり受診が必須ですが、一般的な風邪の咳の治療であれば、ご家庭でできるものもあります。風邪の場合、咳をして異物を出すことで自然に治っていきますから、必ずしも病院で咳止めをもらわなくていいと考えます。咳にはさまざまな治療がなされますが、医学的には「一定の効果があるもの」と「効果が乏しいもの」とが混在しているというのが現状です。以下にまとめてみました。■咳の改善に一定の効果が期待できるもの(1)鼻水吸引:鼻を吸引することが後鼻漏に効果的です。小児科や耳鼻科でもできますが、電動鼻吸引器を購入して自宅で何度も吸うとより効果的です。寝ているときに垂れ込みやすいので、寝る前に吸うとよいでしょう。下記の通り、書籍「小児の咳嗽診療ガイドライン」(日本小児呼吸器学会)にも鼻水吸引が効果的だと記載されています。乳児の後鼻漏は咳嗽のみならず喘鳴や吸気性呼吸困難、無呼吸などの随伴症状をきたしたり、哺乳力低下や不機嫌などの全身症状を合併することもある。鼻汁吸引はこれらの症状の改善にも有用である出典: 小児の咳嗽診療ガイドライン / 日本小児呼吸器学会 P85 (2)ヴィックスヴェポラッブ®:ドラッグストアでも購入できる塗り薬のヴィックスヴェポラッヴは夜間の咳を鎮める効果があるというデータがあります。※3(3)ハチミツ:ハチミツにも咳を鎮める効果があるというデータがあります。ただし、ボツリヌス症の危険性があるため1歳未満の子どもには与えないでください。※4痰切りのお薬も一定の効果があるというデータがあるため使用を考慮していいかもしれません。また乾燥した空気は気道への刺激となる可能性があり、部屋は加湿したほうがいいでしょう。■咳の改善に効果が乏しいもの(1)鼻水のお薬:よく鼻水のお薬として抗ヒスタミン薬が処方されていますが、これはアレルギー性鼻炎のお薬ですので風邪の鼻水への効果は期待できません。後鼻漏の咳には抗ヒスタミン薬より鼻吸引がいいでしょう。(2)気管支拡張薬のテープ:ホクナリン®やツロブテロール®などのテープは気管支喘息のお薬ですので、咳を鎮める効果は乏しいです。咳の時は、わが子にも患者さんにもこのような対策をしています。ちなみにわが子は風邪の時咳き込んで嘔吐しやすいので、寝床にタオルやゴミ袋を用意しています。だんだんと寒くなり風邪が流行する季節になってきました。咳の時にはこれらのポイントを参考にしてくださいね。参考資料※1 Whooping Cough/Indian Health Service ※2 KidMed/Croup: What Parents Need to Know to Breathe Easier ※3 NCBI/Vapor rub, petrolatum, and no treatment for children with nocturnal cough and cold symptoms. ※4 NCBI/Honey for acute cough in children.
2018年12月06日小児科は、大きな泣き声が聞こえてきて、それだけで子どもにとっては怖いところに思ってしまいます。ムスメちゃんは、意外にも優しい先生やおもちゃに心奪われて、ずっとニコニコしていたそう。しかし、注射されたとたん…。「病院が怖い~」と泣いて困っているママ必見のお話です。ムスメとちゅうしゃ近所の小児科に、0歳の頃からずっとお世話になっています。初めて受診した時、ムスメは優しい看護師さんや先生、魅力的なおもちゃの数々にすっかり心奪われずーーっとニコニコしていました。診察が始まってもニコニコ、おなかを出して聴診器を当ててもらってもニコニコ。しかしひとたび注射器の針が腕に刺さると「だまされた!」と言わんばかりの形相でギャン泣きでした。まあそりゃそうですよね…その後はすっかり病院が怖くなってしまったようで、何度も何度も予防接種に来るたびにその恐怖は勢いを増し…1歳の頃はもう病院に入っただけで泣くようになっていました。当然診察中はさらに大暴れで、必殺大人の腕力で押さえつけてチクッとやってもらう日々。隣で看護師さんがおもちゃの音を鳴らしてくれても、先生の優しい笑顔や声も、何もムスメに届く事はありませんでした…。1歳半を過ぎて予防接種が終わると病院にかかる頻度はだいぶ減りましたが、それでも風邪をひいたりしたときに受診するとビクビク。注射がなくても病院は怖い…うーん、わかるよ、わかる。消毒液のニオイとか、なんか痛いことされそうな気がしてくるカチャカチャ音とか、ほかの子の阿鼻叫喚とかね…。私自身病院大嫌いだったので、子どもを怖がらせないために「大丈夫だよ~」と努めて明るく振る舞っていても、内心は過去の恐怖がよみがえってきて一緒にビクビクしていました。笑この頃には少しずつ言葉がわかるようになってきていたので、「病院怖いね、でも病院行くとバイキンやっつけてくれるお薬もらえるからね…あとシール(お薬の服用チェック用)ももらえるよ!」などと説得しながらときどき足を運んでいました。そして今年もインフルエンザの予防接種のシーズンがやってきました。ああ嫌だなぁ…今年も泣くんだろうな…と思いきや、スッと椅子座ってパッとおなか出してアーンするではありませんか。え? 泣かなくていいの今日?注射なしの期間が長かったせいか、看護師さんが注射器を出しても気付かず、なんなら刺されても数秒気づかず、3秒後くらいに少し痛がって終了でした。アンタ…成長(?)したわね…!先生と看護師さんの見事な連携にただただ感謝するのでした。
2018年11月25日最初のきっかけは上の子の咳。元気でしたが元々喘息があるので念のため小児科を受診。特に検査などはなく、薬をもらって帰宅。その後数日で元気になりました。そして数日後、当時2ヶ月半だった末っ子四男が咳をしはじめました。上の子同様、普通の風邪がうつってしまったんだろうとこの時までは思っていました。その日に小児科を受診。すると検査の結果RSウイルスに感染していることが判明。その時は熱もなく、咳もあまりひどくなかったことから一旦帰宅し、翌朝再度受診するように言われました。そして夜。眠れてはいるけどどうも咳がひどくなってきている気がする…。朝まで様子を見るのは恐い気がして夜間の救急を受診。こういうときの母親の直感とはよく当るもので、そのまま即入院になりました。最初は付き添い入院。病院到着後、すぐにモニターと酸素と点滴がつけられました。小さな体にたくさんの管を付けられて辛そうにする四男を見ながら、私はただただ抱っこすることしかできず…。RSウイルスは3~4日が一番ひどくなるそうで、結局ICUに入ることになりました。ICUは付き添い入院ができません。生後間もないのに初めて離れる事になってしまいました。3日間酸素マスクを付けられ、大きなベッドで眠る四男を見るたびに泣きそうになりながら連日通いました。その後、一般病棟に移動。再び付き添い入院に。看護師さん曰く、今年はRSウイルスが大流行していて、例年よりもかなり多くの3ヶ月未満の赤ちゃんが入院していると言っていました。その後無事に退院した四男。RSウイルスにかかると喘息のリスクが高くなると言われました。今も念のため、咳をしだすと早めに小児科へ行くようにしていますが、幸い今も喘息にはなっていません。お恥ずかしながら、5人目にして初めてRSウイルスの怖さを知った私(たまたまなのか、上の子達はだれも乳児期にRSに感染したことがありませんでした)。『RSウイルスは何度も感染するが、幼児さんくらいだとただの風邪のような症状で治るパターンが多く、知らない間に下の子にうつしてしまう…というケースが多いです』と先生が仰っていました。今ではすっかり元気な四男ですが、当時は本当にヒヤヒヤしました。
2018年11月21日前回はインフルエンザの概要と予防法についてお話しました。では実際にかかった、もしくはかかったかもしれない時はどうすればよいでしょうか?検査のタイミングは?流行期に発熱があると、「インフルエンザかも?」と心配になり受診されると思いますが、まずインフルエンザウイルスの迅速検査(鼻綿棒)は発症から24~48時間が望ましいということを押さえておいてください。※1中には、「まだ発熱したところなので検査できません」と検査を断られた経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。それは発熱してから時間が経過しないとインフルエンザ検査の意義が乏しいからです。例えば、発熱してから2時間後に受診して検査結果が陰性だった場合でも、感染しているのか、していないのか判断できません。あまりに短時間の検査では空振りが増えてしまいます。仮に発熱してからすぐに検査をしても、陰性の場合は翌日熱があれば再検査することになり、大きな負担となります。また受診した待合室などでインフルエンザやあるいは他の感染症をもらってしまう可能性があり、発熱してすぐの受診はリスクが高いと考えられます。インフルエンザの検査は必須ではない実は診断に検査は必須ではありません。鼻綿棒の検査感度も100%ではないため、流行期に発熱、関節痛や寒気などの症状があり、診察上疑わしい場合は検査せずにインフルエンザと診断することがあります。(注:医師により判断は異なります)。治療薬の特徴は?インフルエンザと診断された場合、さまざまな抗インフルエンザ薬がありますが、ウイルス増殖を抑制して発熱の期間を短くすることが期待できます。ウイルスが増えきってからでは効果が乏しいため、抗インフルエンザ薬は発症から48時間以内の投与が原則となります。主なお薬の特徴と副作用主なお薬の特徴と副作用、使い所についてまとめました。■タミフル®(オセルタミビル)内服薬で1日2回、5日間飲みます。1歳未満でも使用可ですが、主な副作用として嘔吐(24.3%)や下痢(20.0%)といった消化器症状があります。※2 以前は10代のお子さんでタミフル®によると思われる異常行動が心配され、厚生労働省から投与を控える措置がなされていました。しかし異常行動はインフルエンザそのものによる症状であり、タミフル®とは直接関係ないことから、今後、措置は見直される方針です。■リレンザ®(ザミナビル)吸入のお薬で1日2回、5日間吸入します。確実に吸うことができれば効果的ですが、吸入薬なので5~6歳以降でないと難しいものです。■イナビル®(ラニナビル)リレンザ同様吸入薬ですが、1日吸入してその後効果が1週間持続する便利な薬です。しかしその反面、吸入に失敗すると(例えば吸入後咳き込むなど)効果が十分得られなくなってしまうというデメリットもあります。※吸入薬のリレンザ、イナビルに共通して言えることですが「乳糖」が添加されているため、牛乳アレルギーの場合は稀にアレルギー症状が出る場合があり注意しなければなりません。■ゾフルーザ®(バロキサビル)平成30年3月から発売された最も新しいお薬で、1回の内服で治療が終了する点がメリットです。今シーズンの流行で使用が増えると思われますが、新しい薬のため医師の使用経験が少ないということが一つのデメリットです(私もまだ使用していません)。■ラピアクタ®(ペラミビル)唯一の点滴のお薬です。1歳未満も使用できます。脳症や肺炎など入院治療が必要な場合や、基礎疾患のために内服や吸入ができない場合などに選択されます。点滴のため使用できる医療機関は限られている点に注意してください。また漢方薬の麻黄湯を使うこともあります。上記の抗インフルエンザ薬とは作用ポイントが異なりますが、治療効果のエビデンスがあるため使用を考慮していいと思います。併用も可能です。※3インフルエンザのお薬はさまざまあり、医師や施設によっても方針が微妙に異なります。ここにあげた情報を参考にしつつ、治療方針は担当医とご相談ください。ホームケアと再受診のタイミングインフルエンザにだけ特別なケアはなく、基本的には発熱時の対応と同じです。( 第3話 、 第4話 参照)。倦怠感が強く食欲が落ちるので水分をこまめに取り、脱水の対策をしてください。タミフル®の消化器症状が出た場合は受診して薬の変更を考慮します。発熱が続く場合には肺炎や中耳炎などの合併症を伴ってきているかもしれませんし、「ぼーっとする」「わけのわからないことを言う」などの症状がある場合は、脳症の可能性があり受診した方がいいでしょう。インフルエンザは倦怠感が強く受診そのものも負担となりますので、この記事を読んで、受診すべきなのか?タイミングはいつがよいか?などの目安にしていただけたら幸いです。参考資料※1 Performance characteristics of a rapid immunochromatographic assay for detection of pandemic influenza A (H1N1) virus in children. ※2 タミフル添付文書 ※3 A randomized, controlled trial comparing traditional herbal medicine and neuraminidase inhibitors in the treatment of seasonal influenza. 2018/2019シーズのンインフルエンザ治療指針(日本小児科学会)
2018年11月16日