芥川賞作家の小山田浩子さんが、待望の新作を上梓。「自分の好きなものが詰まった一冊になったので、嬉しいです」と語るのは、2014年に「穴」で芥川賞を受賞した小山田浩子さん。待望の新作『庭』は、ユーモラスで奇妙、鮮やかでちょっぴり不穏な15篇が詰まった短篇集。「どれも結婚や子ども、出産といったテーマを意識していたのは間違いないです。それ以外に、読み返すと自分の実家や田舎に行く、という話が多くて。それはもうフェティッシュ的に好きなのかも(笑)」たとえば巻頭の「うらぎゅう」は、実家に戻り、祖父に不思議な儀式に連れていかれる女性の話。「これは砂灸という、砂に足形をつけてそこにお灸をするという風習を聞いて“何それ”と思ったことがきっかけでした。ここに出てくる話はどれも、そんなふうに見聞きしたり経験したりしたことが元になっていることが多いですね」祖母が彼岸花を薬草として育てていた記憶、住んでいるアパートに出るヤモリ、山の旅館に行ったら愛想のいい猟犬がいた思い出、女子校時代に校舎によく出現した小さな蟹、ショッピングモールのフードコーナーにいるさまざまな家族……。そんな現実の光景から、とんでもない非日常的展開を導き出すのが小山田作品の魅力だが、「普通のことを書いていたらこうなった、という感覚です。自分に何かを空想して物語を広げる能力があるとは思わないんです。ただ、見聞きしたことの前後を、見たことがあるかもしれない気持ちで、思い出すように書いています」動物や植物が多数出てくるのは、「じっと考えているより、虫や植物をずっと見ていた時のほうが、面白いことがたくさん出てくるんですよね。それも、実際に眺めるのでなく、どんな感じだったか思い出しながら書いている感じです」ちょっぴり不条理な世界で生きる人々が描かれる本作。夫婦や親子の気持ちの齟齬も淡々と描かれるが、「家族でも分かり合えないことや、しっくりこないことはありますよね。でもそれは悪いことじゃない。それでやってきたし、やっていくんだ、というのが気持ちとしてあります」暮らしと不可思議な世界のあわいに潜む、人生の真実を垣間見せてくれる。そんな作品集なのである。『庭』庭の彼岸花、窓のヤモリ、井戸にいるどじょう……。草花や生き物に囲まれた、ちょっぴり不条理な世界の人々の日常をとらえた短篇集。新潮社1700円おやまだ・ひろこ作家。1983年、広島県生まれ。2010年、中篇「工場」で新潮新人賞を受賞して作家デビュー。’13年、作品集『工場』で織田作之助賞、’14年「穴」で芥川賞を受賞した。※『anan』2018年4月25日号より。写真・土佐麻理子インタビュー、文・瀧井朝世
2018年04月24日東京オペラシティ アートギャラリーでは、2018年1月13日から3月25日までの期間に渡り「谷川俊太郎展」を開催する。谷川俊太郎 / photo:深堀瑞穂谷川俊太郎は1952年に詩集『二十億光年の孤独』で鮮烈なデビューを果たした詩人。85歳の現在も、わかりやすく、読み手一人一人の心に届くみずみずしい言葉によって、子どもからお年寄りまで多くの人々を魅了し続けている。本展は、谷川俊太郎が影響を受けた音楽や「もの」、家族写真、大切な人たちとの書簡、ラジオのコレクション、自ら撮影した暮らしの断片等を選りすぐりの詩作品とともに展示する。本展のための書き下ろしの詩や、特別出品となる音楽家の小山田圭吾(コーネリアス)と、インターフェイスデザイナーの中村勇吾(tha ltd.)とのコラボレーションも発表。実生活を基盤に詩をつむぎ出してきた谷川俊太郎の、暮らしの周辺のものごとに焦点をあて、そこからダイレクトに谷川像を立ち上がらせる。関連企画として、「開催記念対談」と「スペシャルライブ 谷川俊太郎&DiVa『よしなしうた』」を開催。「開催記念対談」は、東京オペラシティビルの7階にある会議室にて2018年1月27日と2月10日に行われ、1月27日には都築響一(編集者)と谷川俊太郎が、2月10日には小山田圭吾(コーネリアス)(音楽家)と谷川俊太郎が対談する。なお、時間は各回14時開演、13時45分開場、定員は160名(全席自由)で参加費は無料(展覧会の入場は別料金)。参加方法は開催当日の11時より、アートギャラリー入口にて配布される整理券が必要。「スペシャルライブ 谷川俊太郎&DiVa『よしなしうた』」は、東京オペラシティ リサイタルホールにて、谷川俊太郎による詩の朗読と高瀬"makoring"麻里子(Vo)、谷川賢作(Pf)、大坪寛彦(B)からなる現代詩を歌うバンド・DiVaのスペシャルライブを2018年3月10日に行う。開演は14時から、全自由席(税込3,500円)。スペシャルライブのチケット予約は東京オペラシティ チケットセンターにて。【展覧会情報】谷川俊太郎展 TANIKAWA Shuntaro会期:2018年1月13日〜3月25日会場:東京オペラシティ アートギャラリー住所:東京都新宿区西新宿3-20-2時間:11:00〜19:00(金・土は20:00まで、いずれも最終入場は閉館30分前まで)休館日:月曜日(2月12日は開館)、2月11日、13日入場料:一般1,200円 大学・高校生800円 中学生以下無料
2017年11月23日積んであるあの本が、私を待っている……。少し早く帰れそうな夜、DRESS世代に、じっくりと読み進めてほしい本をご紹介する連載【積読を崩す夜】。9回目は、『身の丈に合った服で美人になる』(著:小山田早織)を取り上げます。著者の持論は「美人=努力家」。お金をかけたり背伸びをしたりすることなく、最大限おしゃれになる方法を、明解な小山田ロジックにより紐解きます。■美人=努力家身の丈に合った服を努力して着るこの本でいう“美人”とは努力家のこと。きれいになるためにベストを尽くせる人です。日頃、仕事で会うモデルたちを見ていて思うこと。それは、何の努力もせずにはきれいでいられないということです。私もアシスタント時代には人生の最高体重を記録し、お腹やお尻を隠すチュニックをよく着ていました。自分が努力を怠った結果とはいえ、着たいのに着られない服があるのはみじめで辛かったのを覚えています。その経験から、何よりも大切と痛感したのは、生まれ持った外見を活かしながら、理想の自分へと近づくための努力。その過程が自信となって表情にも表れ、女性を美しく見せるのだと思います。(9ページより引用)著者が考える身の丈に合った服、とは、無理なく買えるトレンド感のある服のことを指しています。着古して毛玉ができていたり、流行遅れになった高級服よりも、手の届く範囲でシーズンごとに流行を取り入れているほうがよっぽどおしゃれ。それを叶えてくれるのがユニクロ・ZARA・無印良品・GAP・H&Mの6大コスパブランドであるのだとか。さらに、シーズンごとに新しい服に挑戦していると、自然におしゃれの基礎力がつき、服を見る目が養われるといいます。服を着ていく上での気構えが、きれいになるために努力する姿勢。どんなに服を揃えても、きれいに着こなす努力を怠っては意味がありません。つねにベストコンディションな自分を目指して、旬の服を努力して着る。その姿勢こそが自信となって女性を美しく見せてくれるのかもしれません。■走り回る日こそ、ヒール靴朝起きて、「今日は忙しくなりそう」と思ったら、ヒール靴を選びます。この話をすると「忙しいなら、スニーカーやバレエシューズのほうがラクじゃない? 」と返されることが多いのですが、私は“忙しい日こそきれいを磨く日”と考えてヒール靴。はくだけでぺたんこ靴より1.5倍のカロリー消費できるという話を聞いたことがあるし、ふくらはぎの筋肉が鍛えられて美脚にも近づける。バランスだってよく見えるし、気持ちも引き締まる。そんな絶好の機会を見逃すなんて、私にはもったいなくてできません。(12ページより引用)何とも耳が痛い話で、走るときは楽なほうについ逃げがちなのが足元のおしゃれです。そのためにも、著者は走れるヒール靴を日常的にこまめに試着して探しているといいます。そして、足に合う靴に出会えたら運命の一足だと思って即購入。それほど、走れるヒール靴に出会える確率は低いようです。著者のおすすめはバビロンとプールサイド。はく前のクッション性、はいたときの甲やかかとのチェック、店内を最低二周して痛くないか、脱げないかを見極める。やはり、ここでも美人になるための努力が必要なようです。そうはいっても著者は、1日ヒールで足が痛くなるときのために、バッグにぺたんこ靴を忍ばせておくことも推奨しています。それだと気持ちに余裕も生まれますね。■ブランド物は思い出と一緒に買うデイリーなコーディネートを上品に格上げしてくれるブランドのレザーバッグは、私にとって欠かせないアイテムです。ただし、流行に任せて買うことはありませんし、少しでも安く買いたいからと、ネットで買うこともありません。たとえば、シャネルのチェーンバッグ。ココ・シャネルには伝記を読んで感銘を受けていました。なので、シャネルの精神が感じられるバッグは、スタイリストを目指していたときから、いつか絶対手にしたいと思っていました。それもパリのカンボン通りにある本店で。念願叶って買ったバッグは、私に自信を与えてくれました。孫の代まで受け継げるよう大切に使いたいと思っています。(38ページより引用)デイリーなプチプラブランドを上手に取り入れるとはいっても、良いものも一品は身に着けたいものです。そういう意味でも、やたらにブランド物を身につけるのではなく、志やストーリーを持った良品を末長く持ち続けたいものです。たとえば著者は、前述のシャネルバッグをスタイリストとして独り立ちした記念にパリのシャネル本店で購入しています。あるいは、初めて表紙を担当した記念にセリーヌのバッグを表参道の路面店で購入。どういう場所で、どういうものを、どんなタイミングで購入するのか……。物を見るたびに、そのときの状況や心持ちまで、鮮やかに蘇ってきそうです。身の丈に合った服を身にまとい、思い出がつまった良品を手に。今日も1日美しくがんばっていくエネルギーを発していきたいものです。『身の丈に合った服で美人になる』書籍情報出典:身の丈に合った服で美人になる著者:小山田早織発行:講談社単行本 : 128ページ発売日:2017/9/6価格:1200円+税[公式サイト]著者小山田早織さんプロフィール日本一忙しいスタイリスト・小山田早織。『with』『GISEL』をはじめ、各ファッション誌で活躍中。日本テレビ『ヒルナンデス!』では、流行を分かりやすく噛み砕いたコメントで人気に。自身のブランド「TOKYO STYLIST THE ONE EDITION」も手掛ける。Instagramのフォロワーは5.8万超え。
2017年10月05日『with』をはじめとするファッション誌やTV番組『ヒルナンデス!』で、“明日着られるリアルなファッション”を提案することで、多くの女性にファッションの楽しさを伝えてきたスタイリストの小山田早織さん。彼女の初のスタイリングブック『身の丈に合った服で美人になる』が、この度刊行に。ユニクロ、ZARA、GU、無印良品、GAP、H&Mと、自身も愛用する6大コスパブランドでのアイテムの選び方、高見えさせるコツ、さらに“美人になれる小山田持論”から私服スナップ、自宅のクローゼットの中身、スタイリストになった経緯などプライベートにまで迫った読み応えたっぷりの一冊です。しかも、紹介されている6大コスパブランドのアイテムは、今秋発売のものばかり。気になるアイテムがあればすぐに買えて、明日のファッションに取り入れられるのもうれしいポイントです。今やコスパブランドは、女性にとってとても身近な存在になっています。特に、時間やお金に制限があるママたちにとって、リーズナブルなだけでなく同じブランド内で家族の服がまとめて買えるところもポイント。そんなママたちの強い味方であるコスパブランドをオシャレに着こなす小山田メソッドを、本著から少しご紹介したいと思います。■無理なく買えるトレンド感のある服が“身の丈に合った服”まず、小山田さんの考える身の丈に合った服とは、無理なく買えるトレンド感のある服のこと。着古していたり、流行遅れになった高価な服よりも、手の届く範囲でシーズンごとに流行を取り入れていくほうがオシャレだと提案しています。そして、それを叶えてくれるのがコスパブランド。リーズナブルだからベーシックなアイテムもアップデートしやすく、トレンド服にも挑戦しやすいわけです。また、子育て中は常に洋服が汚れる可能性がつきまといます。高価な服が汚れるのを心配するよりも、気軽に買えてジャブジャブ洗える服の方が気がねなく着られますよね。近くの公園に子どもと出かけるときでも、トレンドを取り入れた新しい服を着るだけで、気分がぐっと上がります。■“高見え”の秘密と、失敗しないコスパブランド活用法小山田さんによると、コスパブランド服を安っぽく見せないポイントは配色にあるそうです。そこで、真似しやすい3つの配色をご紹介。1.カフェラテ配色ワントーンコーデは色の幅が狭いとただの地味な人になってしまうので、濃淡の幅を持たせると華やかな印象に。カフェラテから着想を得た“カフェラテ配色”では、カプチーノの泡をイメージして多めの白を配し、ブラウンの小物でシナモンパウダーのスパイスを添える。2.グレーのワントーン配色グレーのワントーンコーデは、成功すれば洗練して見える配色です。地味にならないよう、シルバー小物やアクセを加えたり、リブニットなど素材感があるアイテムを組み合わせたりして、メリハリを出して。3.黒×カーキクールで誰でもオシャレに見える配色。重い色同士なのでロゴや柄アイテムを投入することで、着こなしに軽やかさを出すのがコツ。少しフェミニンさを加えたいときは、ブラウン寄りのカーキを選ぶと挑戦しやすいそう。ベージュ、グレー、黒、カーキと、使いやすい色をベースにトップスタイリストらしい視点が効いたテクニックですね。ほかにも本著では、「メンズのトップスをオーバーサイズで着る」「華やかなパーティ服はZARAかH&Mで探す」「流行のアウターをコスパブランドで毎年買い替える」など、小山田さん流の活用法やオシャレのヒントがいっぱいです。そして、「大人は買ってはいけないプチプラアイテム」というドキっとするポイントも……。1.クロップトパンツ万人がはける仕様になっていて、特にヒップ~太ももがゆるめシルエットのものが多いので、後ろ姿をチェックして。2.パンプス靴は健康をも左右するので、大量生産モノではなく木型や中敷きにこだわって、足に合う靴を探すようにすべき。3.合皮の大きめバッグ大きめのバッグだと、合皮の風合いや縫製に良し悪しが顕著に表れてしまうので、大人にはNG。4.華奢アクセコーデを格上げしてくれる華奢アクセには本物の輝きが必要なので、金メッキは避けたいところ。 ■信念、生き方、暮らしぶりが“美人”を作るさて、小山田さんといえば、作り出すコーデも人気ながら、オシャレに対するストイックな姿勢も女性たちの憧れとなっています。小山田さん曰く「どんなに服をそろえても、きれいに着こなすための努力を怠っては意味がない」。美人とは努力家のこと。なんの努力もせずにはキレイではいられないと提言します。「走りまわる日こそ、ヒール靴」「コンビニへもすっぴんで出かけない」「ゆるい服こそ下着に気を抜かない」「食べ過ぎた翌日はいましめにスキニーをはく」これらは美人になるための“小山田持論”。いつなんどきも自分に厳しく、努力を怠らない彼女の強さが垣間見えます。また巻末では、小山田さんの学生時代のこと、スタイリストになった経緯、20代にどのような目標を持って仕事に取り組んできたのかも綴られています。それらを読むと、その時その時、真摯に仕事や自分と向き合ってきたことがうかがえます。先の小山田持論も含め、信念や生き方、暮らしぶりが、魅力的なスタイリングを作り、そして小山田早織さんという“美人”を作っているのだとわかります。本著は、オシャレを追求する女性にとってヒントになることはもちろん、ひとりの女性の生き方としても刺激をくれる一冊といえそうです。参考図書: 『身の丈に合った服で美人になる』 小山田早織/著 講談社ユニクロ、ZARA、GU、無印良品、GAP、H&Mの6大コスパブランドでのアイテムの選び方、高見えさせるコツ、さらに“美人になれる小山田持論”から私服スナップ、自宅のクローゼットの中身、スタイリストになった経緯などプライベートにまで迫った読み応えたっぷりの一冊。小山田 早織(おやまだ さおり)『with』を中心にさまざまな女性ファッション誌や、日本テレビ『ヒルナンデス!』で支持され、シンプルでリアルなスタイリングの提案で日本中の悩める女性を救ってきた。ショーや広告でも活躍し、女優やモデルからの指名も多い、新世代スタイリスト。(株)東京スタイルとタッグを組み自身がディレクターを務めるブランド「 TOKYO STYLIST THE ONE EDITION 」を立ち上げ、さらなる人気を博している
2017年09月25日NYを拠点に活躍する女優・小山田サユリさん。2010年10月から9カ月間、文化庁新進芸術家海外派遣制度の研修員としてNYの演劇学校で演技を学び、現在は新作映画『女が眠る時』に出演、資生堂のCMではレディ・ガガと共演するなど、活躍の幅を広げています。「NYで演劇を学ぶ」「海外で夢を掴む」なんて、自分にはマネできないすごいこと。そう思いがちですが、小山田さんも仕事に悩みながら「これでいいのかな」と手探りで前に進んできたのだそう。今の自分を作った30代の自分を振り返ってもらいました。30代前半まで、自分の力に自信を持てなかった20代前半にデビューして以来、映画を中心に活躍してきた小山田さん。「若さと勢いで」目の前の仕事に一生懸命だった20代を過ぎ、30代に入ると「長く仕事を続けるために」という視点で自分をとらえるようになったそう。そこで出てきた不安が、「このままでは限られた役しかできない女優になってしまう」ということでした。「私は華やかな顔をしているタイプではなく体も華奢な方だったからか、病弱な役や心に傷を負った役など、なんらか影を背負う女性を演じることが多かったんです。撮影が数カ月に及ぶ映画では役にどっぷり浸かることから、役の色が抜けきらず、プライベートでうつうつとすることも。加えて、『演技をしっかり学ばずに(スカウトをきっかけにして)女優になった』ということがコンプレックスで、実力がついていないという危機感を強く抱くようになりました。今振り返れば、もっと好奇心をもって仕事以外に新しい趣味を始めてみたら変わったのかもしれないのですが、愚直に仕事に向かうあまり、どんどん暗くなっていましたね」「楽しむ」ことを教えてくれた演劇学校ターニングポイントは「何か変えなくては」と、34歳で応募した文化庁新進芸術家海外派遣制度。若手芸術家を海外に派遣し、実践的な研修機会を提供する国の制度に見事合格し、NYで演劇を学ぶ道を選んだことが「仕事のとらえ方が180度変わる」大きな出来事になります。「新鮮だったのが、演劇の授業でもオーディション前でも先生や周りの仲間が『Have fun!』『Enjoy!』(楽しんで!)と口癖のように言うことでした。授業でも常に笑いがあり、演技をする際も、どうしたら面白くなるかを貪欲に追求する。緊張するオーディションでさえ、『チャンスがあるなんてとても素敵なこと。悔いがないように全力で楽しむのよ』と前向きな言葉で送り出されます。それまで女優という仕事に真面目に取り組もうと視野が狭くなっていた私にとって、『演技を楽しむ』『その場にいることを楽しむ』という姿勢は何よりも必要としていたことでした。演技の技術も理論も、人脈も、大切なことをたくさん得た演劇学校生活でしたが、『楽しむことを学んだ』のは、私の人生において、本当に貴重でした。いろんなことに興味がわき、人に会うことが大好きになってよく笑うようになると、周りにもポジティブな人が集まってくるんです」NYで作った人脈をいかして仕事をしたいと考え、NYに拠点を置くことを決めた小山田さん。2015年には婚約し、「私の人生はまだまだこれから!」と笑顔を見せます。「今後は国内外広く評価される女優でありたいし、プロデュース業にも興味があります。世の中は自分がどうとらえるかで景色が大きく変わるし、自分が楽しむことから道は開ける。これからの毎日に、自分が一番わくわくします」悩み、もがき苦しみ、一歩踏み出したからこそ、今がある。小山田さんの生き方は、今まさにその悩みの渦中にいる人たちにとっては勇気とヒントを与えてくれるものではないでしょうか。年齢や固定概念からの解放。それは、得ようと思えば誰にだって得られる自由なのです!【News】小山田サユリさん出演の映画『女が眠る時』全国の映画館で公開中。作家の清水健二(西島秀俊)は、編集者の妻・綾(小山田サユリ)とともに休暇を過ごすため郊外のリゾートホテルを訪れる。そこにいた、初老の男(ビートたけし)と若く美しい女(忽那汐里)の謎めいたカップルに目を奪われた健二は、少しずつ2人に近づいていく。監督:ウェイン・ワン出演:ビートたけし、西島秀俊、忽那汐里、小山田サユリ第66回ベルリン国際映画祭パノラマ部門正式出品作品
2016年03月17日NYを拠点に活躍する女優・小山田サユリさん。2010年10月から9カ月間、文化庁新進芸術家海外派遣制度の研修員としてNYの演劇学校で演技を学び、現在は新作映画『女が眠る時』に出演、資生堂のCMではレディ・ガガと共演するなど、活躍の幅を広げています。プライベートでは2015年に婚約し、新生活をスタートさせた小山田さん。公私ともに充実した今に至るには、30代の大きなチャレンジがありました。体系的に学ぶ環境に、必死で食らいついた黒沢清監督『アカルイミライ』、行定勲監督『セブンス アニバーサリー』、森田芳光監督『わたし出すわ』など、日本映画界を牽引する監督作品に多く出演してきた小山田さん。映画に「自分の居場所」を見出し、順調にキャリアを重ねていた30代前半、ふと「自分には女優としての実力があるのだろうか」と不安を抱くようになったと言います。長く仕事を続けるためにきちんと演技を学ばなければと考えた小山田さんは、若手芸術家を海外に派遣して実践的な研修機会を提供する国の制度「文化庁新進芸術家海外派遣制度」に応募。35歳でNY留学を決めます。「派遣制度のことは、友人でもある演出家の長塚圭史さんに強く勧められていて知っていました。私が渡米する前年に『絶対に派遣制度で海外に行く』と言っていた長塚さんが有言実行でロンドンに行ったのを知り、私も行動に移さなくちゃと思ったんです」演劇学校では演劇の基礎理論をはじめ、シアター系の演技法、アクション技術など実践的な演技指導、オーディションに受かるためのノウハウ術まで幅広く体系的なカリキュラムが用意されており、日本との違いに驚きの連続だったと言います。「日本では『現場で仕事をしながら学べ』という感覚重視のやり方が一般的ですが、アメリカは非常に合理的。演技は理論から実践まで学ぶものという考えがスタンダードですし、どんなに有名な俳優でも演技のパーソナルトレーナーをつけて、日々の努力を欠かしません。演劇学校で知識やスキルを学ぶので、俳優や演出家などとして活躍したあとにパーソナルトレーナーとして指導する側に立つこともできる。演劇界に関わる人の層の厚さには、衝撃を受けましたね」自分では変えられないことで、悩むのはやめよう英語ができないまま演劇学校に入学した小山田さんは、演技法の授業のために日々セリフを覚えることで精一杯。加えて慣れない環境での一人暮らし、意志の疎通の大変さにノイローゼになったほどでした。「セリフを覚えなくちゃ、日本人特有のアクセントをできるだけ消さなくちゃ、欧米の学生たちに負けないように大きく振る舞わなくちゃ……など、さまざまなプレッシャーで、今思えば心がちょっとおかしくなっていました」そんな小山田さんを変えたのは「諦めて受け入れる」という物事のとらえ方。「どんなに背伸びをしたって私は私」と思えてから、すっと悩みがなくなったと言います。「英語を習得したのが35歳なんだから、アクセントがあるのは仕方がない。体が小さいのも仕方がないし、見た目を変えることはできない。自分ではどうしようもないことは諦めて、認めてあげよう。そう思ったら本当にラクになりました。発音は音でしかないのだから、演じる役の心の内、感情、秘めた思いをしっかり表現できる女優であろうと。自分ができること、やるべきことが明確になり、自分にないものをくよくよ考えることから解放されました」どんな質問にも、自身の考えをはっきり示しながら答えてくださった小山田さん。NYの演劇学校という厳しい競争社会に身を置き、そこで自分なりの答えを見つけてきたしなやかさに引き込まれ、「世界的に活躍する女優になりたい」という小山田さんのこれからが、ますます楽しみになりました。撮影:石田祥平ヘア・メイク:Hanjee スタイリング(デザイナー):Satoko Ozawa【News】小山田サユリさん出演の映画『女が眠る時』全国の映画館で公開中。作家の清水健二(西島秀俊)は、編集者の妻・綾(小山田サユリ)とともに休暇を過ごすため郊外のリゾートホテルを訪れる。そこにいた、初老の男(ビートたけし)と若く美しい女(忽那汐里)の謎めいたカップルに目を奪われた健二は、少しずつ2人に近づいていく。監督:ウェイン・ワン出演:ビートたけし、西島秀俊、忽那汐里、小山田サユリ第66回ベルリン国際映画祭パノラマ部門正式出品作品
2016年03月13日NYを拠点に活躍する女優・小山田サユリさん。これまで、黒沢清監督『アカルイミライ』、行定勲監督『セブンス アニバーサリー』、森田芳光監督『わたし出すわ』など、日本映画界を牽引する監督作品に多く出演。2016年は、新作映画『女が眠る時』への出演、資生堂CMでのレディ・ガガとの共演など、活躍の幅を広げています。プライベートでは2015年に婚約し新生活をスタートさせた小山田さん。公私ともに充実した今に至るまで、どんな風に「自分」を育ててきたのか。小山田さんのこれまでを聞きました。実力をつけたい。その一心で、35歳で単身NYへ 都内の短大に通っていた20歳のとき、スカウトされたことをきっかけに女優の道を歩き始めた小山田さん。「地元・新潟に帰って、幼稚園の先生をしよう」と免許もとっていた矢先の、突然の転機だったと言います。「まさか自分が女優になるとは、想像もしていませんでした。華やかな競争社会に自分は絶対に向いていないと思っていましたが、目の前の仕事を一つ一つ進めていって得られる達成感が心地よく、気づけばがむしゃらに20代を過ごしていました。短期的な集中力が大切なCMの仕事、スピードが大事なテレビドラマの仕事、じっくりとものづくりを進める映画の仕事……それぞれを経験する中で映画に自分の居場所を感じられるようになり、もっと演技を学びたいという気持ちが芽生えていったんです」「このままでいいのだろうか」と足が止まったのは、30代になって数年が過ぎたころ。演技を“学んだ”経験がないことへの焦りや将来への不安から、35歳のとき文化庁新進芸術家海外派遣制度の研修員として単身渡米を決め、本場・NYの演劇学校に通うことにしたのです。これが今の小山田さんへ導く、最大のターニングポイントになります。「20代のころは『若くて透明感がある』と評価されることが多く、勢いだけで突き進んでいました。でもそんなのって、実力とは違う儚いもの。このままじゃ演技の幅が広がらない、しっかりとスキルを身に着けたいという思いが、日に日に強くなっていきました。幸運なことに、文化庁の派遣制度に応募したところ合格。9カ月間演劇学校に通い、ゼロから演劇を学びなおすことを決めました」日本で順調に仕事をしていた中での、渡米というチャレンジ。当時は英語を一切話せなかったそうですが、不安よりも「広い世界に飛び出したい」という衝動の方が大きかったと言います。「世界中から俳優を目指す人が集まり、演技を理論から実践まで体系的に学ぶ環境で、世界のレベルの高さを痛感しました。授業の半分を理解するのがやっと、言いたいことが伝えられないという環境で最初はノイローゼ気味でしたが、一方でいろんなことから解放されていく自分に気づいたんです」年齢は数字でしかない 「NYで居心地のよさを感じた理由の一つが、『私のことを、見たまま評価してくれる』ということでした。私は女優デビューが20代と比較的遅かったので、日本では演じられる役にかなり制限がありました。『この役は10代後半だから25歳の小山田はダメ』という風に、私を見ることなく履歴上の年齢だけで落とされることが何度もあり、すごく悔しかったんです。でも、NYに来たら誰も年齢のことを口にしません。私が35歳であろうと40歳であろうと、オーディションでプロデューサーが20代だと思えば役をもらえる。とてもシンプルで、ありのままの自分で勝負できるという自由さに、心も体もどんどん開放されていきました。オーディションで落ちることももちろんたくさんありますが、『実力がなかった』とすっきり前に進める。そんな経験から、年齢は数字でしかないと思えるようになりました」レディ・ガガと共演した資生堂のCMでも役の想定年齢は20歳だったものの、オーディションに行ってみると、15歳の中学生から40~50代の方まで幅広い層がいたそう。「チャンスの入口は広く、チャレンジすることに前向きな人ばかり。いくつになってもやりたいことに挑戦すればいいと思えたら、40歳の今もまだまだスタートラインに立ったばかりと思えます。世界で活躍する女優になりたいし、プロデュース業もやってみたい。30代だからこうすべき、40代になったらこうすべきといった考え方は、一切しなくなりました」スクリーンで魅せる透明感はそのまま、くるくると表情を変えながら話す小山田さん。35歳で英語もできないまま、NYで自ら厳しい環境に飛び込む……それだけを聞くと、なんて強くたくましい女性なんだろうと思いがちですが、「小さなきっかけに背中を押されただけ。無知だったから行けたんです」と笑顔を見せます。「年齢って、本当に誰も気にしないの。日本の常識が世界じゃ全然スタンダードじゃないんだ、なんだ、私は私でいいんだと思えたんです」そんな小山田さんの言葉に、聞いているこちらも、ふっと心が軽くなった気がしました。撮影:石田祥平ヘア・メイク:Hanjee スタイリング(デザイナー):Satoko Ozawa【News】小山田サユリさん出演の映画『女が眠る時』全国の映画館で公開中。作家の清水健二(西島秀俊)は、編集者の妻・綾(小山田サユリ)とともに休暇を過ごすため郊外のリゾートホテルを訪れる。そこにいた、初老の男(ビートたけし)と若く美しい女(忽那汐里)の謎めいたカップルに目を奪われた健二は、少しずつ2人に近づいていく。監督:ウェイン・ワン出演:ビートたけし、西島秀俊、忽那汐里、小山田サユリ第66回ベルリン国際映画祭パノラマ部門正式出品作品
2016年03月09日まだまだ寒い日は続きますが、厚手のコートから薄手のコートへ、ブーツからハイヒールへ、ダーク系からパステル系へ、街を歩いていても春らしさを感じ始めるそんな季節がやってまいりました。街が明るくなれば四十路の心も明るくなるようで、年末の恋の傷も徐々に治りかけています。…が、半月前にその人に渡そうと思ってかなり前から注文していたお取り寄せチョコレートがうっかり届き、塞ぎかけた傷口が少しだけ開き、悲しいかな、そのチョコレートを1人でぺろりと平らげてしまった女、古山エリーです。今宵もたわごとお付き合いくださいませ。世の中には“しあわせになるための○○なコト”を綴った恋愛&人生の指南書が山のようにあります。四十路を迎えた今はあまり読まなくなりましたが(今も読んでいたらそれはそれで問題…)、迷える20~30代は似たような本をあれもこれも読みあさりました。現在は、迷えるというより深い落とし穴から出られない感じです(それも問題…)。それらの指南書には、仕事も恋愛も何もかもは“同時”には手に入らない──的な言葉が綴られていて、当時の私にどれだけ勇気を与えてくれたことか!そのおかげで(そのせいで?)、恋愛はうまくいかないけど仕事があるじゃない!と、仕事ひと筋で頑張ってこられたのですから。まあ、そのまま独走してしまっているのは“大”間違いでしょうけれど。でもですよ、周りを見わたしてふと思うのは、本当に何もかも手に入らないんだろうか?という素朴な疑問。『女が眠る時』という映画を観て、そんな疑問が浮上してしまったのです。どんな物語かというと、リゾートホテルに滞在する2組のカップルのお話。スランプ中の小説家・健二(西島秀俊)とその妻・綾(小山田サユリ)、若く美しい女性・美樹(忽那汐里)と中年の謎の男・佐原(ビートたけし)、彼らの数日間が描かれます。物語があるようでない、ちょっと不思議な映画です。何が面白いって、どのキャラクターの目線で観るかでストーリーが変わってくることです。ふとしたきっかけで美樹と佐原の後をつけて覗き見してしまう健二の目線だとサスペンスになりますし、美樹の眠る姿をビデオで撮り続ける佐原の目線だとホラーチックなラブストーリーのようでもある。普通じゃないし不気味だし気持ち悪いんですが、この先どうなるんだろう…と気になってしまう。途中、西島さんの裸体にクラッとしつつも、2人の男のあまりの不気味さと気持ち悪さでハッと目が覚める。そしてエンディングを迎える頃に襲ってくるのは、綾の恐ろしさです。美人で仕事もできる良妻に見えますが、最後の最後で「えっ、すべて策略だったの?仕組んでたの?」と、ゾクッとさせられる。そう、かつて読んだ指南書には「何もかもは同時に手に入らない」とあったのに、この綾という女性は何もかも手に入れているじゃないかと。もう、いろんな意味でびっくりです。なーんだ、綾のようにすればぜーんぶ手に入るのか!だったら私もー!と意気込んでみたものの、現実は──ちょっぴり気になる男性からのメールや電話の回数が減ってきていることにあたふたし、振りまわすどころか完全に振りまわされているという残念な有り様…でした。で、振りまわされないために仕事に打ち込んで、また同じことの繰り返しって…。我が身の恋のループの方が恐かったということで、今宵のたわごとはこの辺で。また次回。(Elie Furuyama)
2016年03月04日世界的巨匠ウェイン・ワン監督が手がける初の日本映画『女が眠る時』の初日舞台あいさつが2月27日に、東京・有楽町の丸の内TOEIで行われ、ワン監督をはじめ、主演のビートたけし、西島秀俊、忽那汐里、小山田サユリが登壇した。『女が眠る時』舞台あいさつ/その他の写真スペイン人作家ハビエル・マリアスの短編小説を基に、ある年の離れたカップル(ビートたけしと忽那)の艶めかしい人間模様と、それを覗きながら狂気の領域に陥っていく小説家(西島)の姿を描いた異色のミステリー映画。今月開催された第66回ベルリン映画祭パノラマ部門に正式出品され、ワン監督、西島、忽那が出席。この日は現地入りが実現しなかったたけしに、映画祭公式のテディベア、シカのオブジェなど3人が選んだ“ベルリン土産”が贈られた。西島が「現地ではとにかく“北野人気”がすごく、公式上映も熱気を帯びていた」と報告すると、たけしは「本当にありがたい。ベルリンにはよく誘われるけど、どういうわけかスケジュールが合わなくて。今年も山梨のラドン温泉で営業があって」と笑いを交えながら、不参加を悔やんでいた。「観終わった後、頭の中で知性と感受性が戦うような映画。今の日本映画界はあまりにエンターテインメント重視で、観客に考えさせない遊園地みたいな映画ばかりだから」とアピールするたけしは、さらに「ワン監督には『よくぞ作ってくれた』とお礼を言いたい。それに引き替え、『アウトレイジ』をやってる自分が恥ずかしい」と自虐コメントも忘れず、会場を笑いに包んだ。そんな発言に、ワン監督も「作った私でさえ、観るたびに新しい解釈や答えが見えてくる」とうなずき、「ハッキリ言えるのは、ひと夏で2つの愛が失われたということだけ。明確な答えは用意していないので、感性を信じ、ご覧になる皆さんなりの答えを見つけてください」と観客にメッセージをおくった。『女が眠る時』公開中取材・文・写真:内田 涼
2016年02月27日ビートたけしが2月27日(土)、自作以外では12年ぶりとなる主演作『女が眠る時』の初日舞台挨拶に登壇し、「最近の日本映画は、あまりにもエンターテインメント重視で、話題になるのはお客さんの数だけ。遊園地のような映画ばかりもてはやされる」と苦言を呈した。東京・有楽町の丸の内TOEIで行われた初日舞台挨拶には、たけしさんをはじめ、共演する西島秀俊、忽那汐里、小山田サユリ、ウェイン・ワン監督が登壇。ワン監督が自ら日本で撮影することを提案し、初のオール日本人キャストでスペイン人作家ハビエル・マリアスの短編小説を映画化した。スランプに陥った小説家(西島さん)が、滞在したリゾートホテルで初老の男性と若い美女(たけしさんと忽那さん)のカップルに出会い、その異様で妖艶な空気に魅せられる…。解釈の余地を残した結末のミステリーで、たけしさんは「きっとご覧になった皆さんの頭の中で、知性と感受性が戦っているはず。そういう意味では、頭のエンターテインメント。ワン監督にはよくぞ作ってくれたと言いたいし、何時間でも討論できるようなこの作品に、日本映画界が刺激を受けてくれれば」と持論を展開した。このコメントに、西島さんも「皆さん、見終わった後で少しボーっとされていますね。僕もそうでした。ぜひ、気持ちいい夢を見たような余韻を楽しんでもらえれば」とアピール。ワン監督は「映画を作った私自身が、見るたびに新しい解釈や答えを見つける作品。皆さんも、自分の感性を信じ、ご自分なりの答えを見つけてください」と語った。今月には第66回ベルリン国際映画祭パノラマ部門に正式出品され、ワン監督、西島さん、忽那さんが現地入り。この日は3人から、ベルリン行きが叶わなかったたけしさんへのお土産がプレゼントされ、たけしさんはワン監督が選んだシカのオブジェに興味津々だった。『女が眠る時』は公開中。(text:cinemacafe.net)
2016年02月27日ビートたけしはこの映画を「妄想と覗きのバームクーヘン」と表現する。西島秀俊は完成した映画で改めて、たけしの演技の凄まじさを目の当たりにし「一からやり直そう」と打ちひしがれたという。そしてウェイン・ワン監督。彼は撮影前にたけしに対しこの映画について「これまであなたが作ってきたヤクザ映画に近い作品です」と告げたという。男たちが『女が眠る時』を語る――。※インタビュー中、作品の解釈などについて、物語の内容に深く触れながら話している箇所がございます。映画を見ていない方はご注意ください。スペイン人作家ハビエル・マリアスの短編小説の舞台を日本に置き換え、『ジョイ・ラック・クラブ』、ベルリン国際映画祭銀熊賞に輝いた『スモーク』など映画ファンを熱狂させてきた巨匠ウェイン・ワンが映画化。処女作以降、ヒットに恵まれない小説家の健二は妻と訪れたリゾートホテルで初老の男・佐原、彼が世話を焼く美しく若い女・美樹と出会う。なぜか2人に興味を持った健二は、彼らから目が離せなくなり、やがて部屋を覗くまでになる。部屋では毎晩、佐原が美樹の眠る姿を撮影し続けていたが…。――何が現実でどこからが妄想なのか?リゾートホテルとその周辺という狭い空間の中で何とも不思議な物語が展開します。最初に脚本を読まれた感想は?西島:最初に読み始めた時は、不思議なカップルを覗き見るというエロティックな物語かと思ったんですが、読み進んでいくうちにだんだんとサスペンスになっていって、急に事件も起きたりして…楽しんで読ませていただきました。たけし:おれは、(佐原は)単なる変態オヤジだなって(笑)。変態オヤジの役に選ばれて嬉しくもあり、哀しくもあり…。――物語はどのように解釈されましたか?たけし:(佐原は)妙な性癖のある変な奴には違いないし、撮影では言われた通りにやったけど、いざ完成した作品を見るといくらでも解釈のしようがあるんだよね。おれが西島くん演じる作家の首に冷たいナイフを当てて「脳は目が覚める一瞬でストーリーを作っちゃうんだ」という内容のことを言うけど、まさにその言葉の通り、この映画で起きているはずの全ては、実は最後のワインバーでのシーンで一瞬で“作られた”ものなんじゃないか?とか。それはそれで面白い解釈だなと自分でも思うけど、正しいとは限らない。見る人によって違うだろうね。ワン監督:原作の小説は哲学的で複雑に入り組んでいて、初老の男の若い女への執着、思惑などを描いてますが、舞台を日本にしたことで、うまく哲学的側面をカットし、より強い内容になったと思います。2人の人物がある“密約”を交わし、それに対する裏切りがあり、裏切り者を始末しなくてはいけなくなる――忠誠心についての映画でもあり、撮影前にたけしさんに「あなたが撮ってきたヤクザ映画と近い」とも伝えたのです。――解釈に関しては人それぞれですが、男性と女性、また既婚者と未婚者などそれぞれの立場で考え方、受け取り方が変わってくるかとも思います。男の女に対する思い込みや妄執も描かれますが、たけしさん、西島さんも女性に対して、ある時ふと「違う生き物だ」という畏怖を感じたり、女性には男性にはない感覚が備わっていると感じることはありますか?たけし:西島くんは結婚は…西島:しました(笑)たけし:え?そうなの?なんだ…言ってくれたら止めたのに(笑)。西島:(笑)たけし:いやぁ、カミさんはすごいですし、女ってのは恐ろしいですよ(苦笑)。あらゆるものを持ってるから。多くの生物は最初、女として誕生し、そこから男に分化するものと、そのまま女として生まれるものとで性別が分かれると言われてて、だから『全ての可能性はメスが握ってる』ということはよく言われる。可能性と要素を持っているのは女で、男はそれに翻弄されると…。西島:さっきの解釈の話にもなりますが、あるスタッフは、僕が演じた作家の妻(小山田サユリ)が全てをコントロールしてたんじゃないかって言ってました。彼女は実は求めていた全てを手に入れてるんじゃないかと。そう考えると怖いですよね…。今回の映画でも、男が女性に翻弄されるってのはありますよね。――女性には本能的に男には装備されていない感覚が備わっていたり…?西島:あるのかもしれません(笑)。男とは全然、違う視点で物事を見ていたり。こっちが命がけでやってることを、全く大したことだと思ってなくてバッサリ斬られて…ということはありますよね(笑)。たけし:翻弄って言うなら今回、我々はワン監督に翻弄されたわけだけど…(笑)。この人、何を考えてるのか?おれは何をしてるのかって、だんだん意味不明になってきたからね。ワン監督:演出ってそれくらいでいいのだと思います(笑)。役者をいつも混乱させたいと思ってます。そうすると、役者は本能に頼るしかなくなりますからね。――健二と佐原に、西島さんとたけしさんをキャスティングした理由を教えてください。また、この2人だからこそ表現しえた部分はどのようなところだと思いますか?ワン監督:長い答えになりそうですが…(笑)、健二も佐原も強い“執着”を持ったキャラクターです。その側面をきちんと見せたいと思っていました。健二は、佐原と美樹を見てその執着心をより強めていく――そのケミストリーがドラマに厚みを与えていきます。西島さんもたけしさんも、役者として強さを持っており、リアルにそこにあればいいし、リアルに感じられないことは演じないというタイプです。映像作家を長くやってきましたが、ハッキリと言えるセオリーは「演じないでくれ。ただキャラクターとしてそこにいてくれ」ということだけですね。西島:健二という役は、現実で起きているいろんなことを見ないことにして生きてる男。佐原がある意味でストレートに愛情を表すことで、健二が日常で見ないようにして隠していることがどんどん暴かれていきます。それは北野さんが持つ資質――みんなが見ないようにしてるものを暴いていくという部分と一致してるんだと思います。――臭いものにふたをするのではなく、暴いていく感じ?西島:あくまで僕のイメージですが、普段から北野さんは執着を持ってないし、これまで演じてきた役も、生にも死にも執着しない。女性に対してもそう。「もう死んでもいい」って感じで。でも今回、初めて愛情に執着し固執するという役を演じられて、これが素晴らしくて…。現場でももちろん勉強になりましたけど、完成した映画を見て「一からやり直そう」って思いました。こういうアート映画に北野さんがいらっしゃるともう全然、勝負になりません。正直、自分にとっては2015年で一番大きい出来事であり、心を入れ替えてやり方を探していかないとって思いで、いろんな意味でインパクトを受けた作品でした。――改めてこの映画、どんな映画かと説明するのが難しい作品ですが…たけし:普段から記者に「この映画で監督は何を言いたいのか?」と聞かれて「そんなの言葉で言えるなら撮らねえよっ」って言うんだけど、この「何が言いたいのか?」という問いを逆手にとって「あなたは何の映画だと思うか?」と問いかける逆襲の映画なんだな。ファストフード店に入ると、店員は「○○はいかがですか?▲▲は…?」ってこっちの意見をハナから無視して圧倒的に与える物を言ってくる。そういうスタンスと正反対にあるんだよね。観客に「こう思って」とか「こう感じて」とは絶対に言わない。あらゆる世代、男女が違う意見を持ってもかまわない。そういう男を演じるとなると、逆にどうとでも受け取れる男でないといけないわけで、監督の言う「演じないでくれ」ってのは、そういうことなのかなと思ってます。西島:これだけ観客に委ねられた映画ってのもあまりないですよね。でもストーリーはちゃんとある。よく「観客が見ることで映画が初めて完成する」と言いますが、まさにそういう作品だと思います。(photo / text:Naoki Kurozu)
2016年02月26日女優の忽那汐里が2月24日(水)、東京・有楽町の日本外国特派員協会で行われた『女が眠る時』の試写会に出席。年齢の離れた恋人役で共演したビートたけしについて、「現場ではとても寡黙な方」と明かした。スペイン人作家ハビエル・マリアスの短編小説を原作に、『スモーク』でベルリン国際映画祭銀熊賞に輝いたウェイン・ワン監督が、自ら日本で撮影することを提案し、初のオール日本人キャストで映画化したミステリー。スランプに陥った小説家(西島秀俊)が、リゾートホテルで初老の男性と若い美女(たけしさんと忽那さん)のカップルに出会い、その異様で妖艶な空気に魅せられる。外国人記者からラブシーンについて、質問された忽那さんは「親子ほど年の離れたカップルという設定なので、不自然に見せないために、良い関係を築いていかなければと思っていました」とふり返り、「たけしさんと最初に撮ったのは、一緒に蝶を捕まえるシーン。不思議な経験でしたが、ご一緒することが心地よく、(恋人役として共演する)自信にもつながった」と語った。ホウ・シャオシェン監督の『黒衣の刺客』、トルコとの合作映画『海難1890』など海外での活躍も目覚ましい忽那さん。今回は日本でも人気が高いウェイン・ワン監督と初タッグを組み、「役者から自分のイメージ通りの演技が出ないと決してOKは出さない監督。その分、役者とはコミュニケーションを重ねて、創造性を最大限に引き出してくれるし、こちら側がきちんと感情表現できるまで、辛抱強く待ってくれた」と刺激を受けた様子だった。会見には共演する小山田サユリ、渡辺真起子が同席した。『女が眠る時』は、2月27日(土)より全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2016年02月25日『スモーク』のウェイン・ワン監督がビートたけし、西島秀俊、忽那汐里らオール日本人キャストで邦画制作に挑んだ『女が眠る時』が、第66回ベルリン国際映画祭パノラマ部門へ正式出品されることがこのほど決定。あわせてワン監督、西島さん、忽那さんがベルリンに渡航し、同映画祭に参加することが明らかとなった。作家の清水健二(西島さん)は1週間の休暇を取り、妻の綾(小山田サユリ)と共に郊外のリゾートホテルを訪れる。初めて書いた小説がヒットしたもののスランプに陥り、今後就職することが決まっていた健二は、妻との関係も倦怠期を迎え、無気力な時間を過ごしていた。滞在初日、彼はプールサイドで異様な存在感を放つ、初老の男・佐原(たけしさん)と若く美しい女性・美樹(忽那さん)のカップルに目を奪われる。その日以来、健二はホテル内で彼らを見かけるたびに後をつけ、部屋を覗き見るようになっていく。スペイン人作家ハビエル・マリアスによる短編小説「While the Woman Are Sleeping」を、『メイド・イン・マンハッタン』などの巨匠ウェイン・ワン監督が自ら日本で撮影することを提案し、初のオール日本人キャストで映画化した本作。主演を『血と骨』以来12年ぶりに自作以外での映画主演を果たすたけしさん、共演に『CUT』がヴェネチア国際映画祭にて絶賛された西島さん、オーストラリア出身で、2015年カンヌ国際映画祭にて監督賞を受賞した『黒衣の刺客』への出演など国際派女優としての期待も高い忽那さん、現在ニューヨークにて活動中の小山田サユリらが務め、予告編のイメージソングを中森明菜が担当している。そしてこのほど、本作の第66回ベルリン国際映画祭パノラマ部門への正式出品が決定。ベルリン国際映画祭は、ドイツ・ベルリンで毎年2月に開催され、カンヌ、ヴェネチアと並ぶ世界三大の映画祭のひとつ。第66回目の開催となる今年は、日本からは他にも桃井かおり監督作『火 Hee』や、黒沢清監督作であり本作と同じく西島さん出演の『クリーピー』の出品が決定している。さらにワン監督、西島さん、忽那さんの3人は現地ベルリンへ渡航し、映画祭に出席する事が決定。たけしさんはスケジュールの都合上欠席となっており、記者会見やレッドカーペットイベントなどの公式行事は2月14日、15日(現地時間)に行われる予定だ。ワン監督は過去に『スモーク』でベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞しており、本作の国際的な評価に注目が集まりそうだ。『女が眠る時』は、2月27日(土)より全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2016年02月04日2月27日公開の映画『女が眠る時』の完成会見が16日、東京・有楽町の丸の内TOEIで行われ、ビートたけし、西島秀俊、忽那汐里、新井浩文が出席した。同映画は、巨匠ウェイン・ワン監督がニューヨーカー誌に掲載されたスペイン人作家ハヴィア・マリアスの短編小説『WHILE THE WOMAN ARE SLEEPING』をベースに日本で撮影した作品。ワン監督にとっては初めての日本映画となる。ストーリーは、妻の綾(小山田サユリ)とバカンスでリゾートホテルに訪れた小説家の健二(西島秀俊)が、プールサイドで美しい女の美樹(忽那汐里)にクリームを塗っている初老の佐原(ビートたけし)の姿に目を奪われ、ほんの好奇心から始まった彼らへの追跡が次第に異常な行動をとるようになっていく。主演のビートたけしは「この映画は時代のニーズに応えてないね。『007』や『スター・ウォーズ』とかの映画が製作されている昨今に、直木賞や芥川賞に匹敵する知的映画を製作したワン監督の力だけでなく、すべて私のお陰です(笑)」と笑わせるも、本作が商業的な娯楽性の高い映画とは対称的である点を強調。続けて「あまりにも観客動員数が少ないんで、ついつい暴力映画やお笑い映画を撮っちゃってますが、今回は他人の映画だから損失があっても俺のせいじゃない。難解だけども知的ゲームの映画なので喜んで出させてもらいました」と出演までの経緯を説明し、「こういう映画をもう1回改めて見直して欲しいということで、国際映画祭に出ることはいいことだと思います」と本作がパノラマ部門として正式出品される第66回ベルリン国際映画祭(2月11日開幕)に期待感をにじませていた。たけしについて西島は「監督さんの演出に対して120%真摯に向かうところは、僕もそうありたいと思いました。現場に入ると俳優として参加するその姿勢は素晴らしかったです」と賞賛し、忽那も「たけしさんにカミソリを投げるシーンがあったんですけど、本番中に勢いついてたけしさんに2回も当てちゃったんですが、『全然大丈夫だよ』とおっしゃっていただき、安心して一緒にお芝居することができました」と全幅の信頼感。そんな賞賛の言葉にビートたけしは「ここにいて俺の悪口言わないでしょ。普通褒めますから」と照れ笑いを浮かべるも「出来たら現金を送りたいぐらい。良いところを見繕うのが大変だと思いますけど、ありがとうございます」と再三にわたって感謝の言葉を繰り返していた。映画『女が眠る時』は、2月27日より全国公開。
2016年01月17日ビートたけしが自身の監督作以外で12年ぶりとなる映画主演を果たす『女が眠る時』。共演に西島秀俊、忽那汐里、小山田サユリら豪華キャストが出演する本作から、今回予告編が到着。さらにイメージソングに中森明菜の「FIXER」が起用されタイトルコールも担当することが明らかとなった。作家の清水健二(西島秀俊)は1週間の休暇を取り、妻の綾(小山田サユリ)と共に郊外のリゾートホテルを訪れる。小説がヒットしたもののスランプに陥り、今後就職することが決まっていた健二は、妻との関係も倦怠期を迎え、無気力な時間を過ごしていた。滞在初日、初老の男・佐原(ビートたけし)と若く美しい女・美樹(忽那汐里)のカップルに目を奪われる。その日以来、健二はホテル内で彼らを見かけるたびに後をつけ、部屋を覗き見るようになっていく。部屋には、美樹の体の産毛をカミソリで丁寧にそり、毎晩彼女が眠る姿を撮影し続ける佐原の姿があった。自ら佐原に近づいた健二は、佐原と初めて言葉を交わしたものの、美樹が眠る動画を見せながら彼が放った「あの子の最後の日を記録しようと思って」という言葉に底知れない恐怖を覚える。危険を感じながらも好奇心をさらに掻き立てられた健二の行動は次第に常軌を逸し、部屋の中に忍び込む――。本作は、『スモーク』でベルリン国際映画祭銀熊賞に輝き、『メイド・イン・マンハッタン』など、ハリウッドを代表する巨匠ウェイン・ワン監督が、スペイン人作家ハビエル・マリアスによる短編小説「WHILE THE WOMAN ARE SLEEPING」を日本で撮影することを自ら提案し、ワン監督にとって初となるオール日本人キャストで邦画の監督に挑んだ。そしてキャストには、自作以外での映画主演は『血と骨』以来、実に12年ぶりとなるビートたけしが主人公の初老の男・佐原を演じる。また佐原に振り回されていく作家・健二には西島さん、ミステリアスなヒロイン・美樹には、カンヌ国際映画祭にて監督賞を受賞した『黒衣の刺客』など、国際派女優としての期待も高い忽那さん、健二の妻・綾には、現在ニューヨークにて活躍中の小山田さんが好演し国内外で活躍する豪華な演技派俳優陣が集結した。さらに本作のイメージソングとして中森明菜の「FIXER -WHILE THE WOMAN ARE SLEEPING-(女が眠る時)」が起用されることが決定。サブタイトルには映画の原題が付けられ、見事に映画の世界観とマッチした内容となっている。歌姫・中森明菜の妖艶な世界観かつ独特の印象深い歌声が映画関係者の耳にとまり、映画の深淵なる魅惑のミステリー感とマッチするという事で今回オファーに至ったという。今回解禁された予告編は、<これは5日間の愛の話>というテロップから始まる。“DAY1”、プールサイドで健二に妻の綾が「ねえ、あれ見て。親子じゃないよね」と佐原と美樹に好奇心を抱きはじめる。“DAY2”、佐原に近づいた健二は「あの子の最後の日を記録しようと思って」とビデオに撮った映像を見せる。そして中森さんの歌声に乗せて、<狂っているのは自分なのか、現実か>というテロップと共に3日から5日までの出来事が映される。そしてラストには「彼女に何したんですか」という健二の問で予告編は終了する。何やら家具の下に忍び込む健二や手首を切りつけようとする女、なんとも言えない恐怖さえも感じるそんな予告編となっている。また今回の予告編では、中森さんがタイトルコールを担当しており、昨年のNHK紅白歌合戦以来の肉声となり大いに話題を呼びそうだ。単なる好奇心が物語を展開していく。異常な愛は時として狂気へと変わる、そんな一面をまずは予告編から覗いてみて。『女が眠る時』は2016年2月27日(土)より全国にて公開。(cinemacafe.net)
2015年12月05日『スモーク』(1995年)でベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞したことで知られるウェイン・ワン監督がメガホンを取った映画『女が眠る時』の公開日が2016年2月27日に決定し、チラシビジュアルが24日、公開された。本作は、ウェイン監督がニューヨーカー誌に掲載されたスペイン人作家ハヴィア・マリアスによる短編小説『WHILE THE WOMAN ARE SLEEPING』をもとに日本で撮影。ウェイン監督にとっては、初の日本映画となる。妻の綾(小山田サユリ)とバカンスでリゾートホテルに訪れた小説家の健二(西島秀俊)が、プールサイドにたたずむ美女・美樹(忽那汐里)と彼女にクリームを塗る初老・佐原(ビートたけし)のカップルに目を奪われ、ほんの好奇心で始まった追跡から次第に異常な行動をとるようになっていく様を描く。公開されたチラシに描かれているキャッチコピーは、「覗き見たのは、<狂気>か<愛>か。」。ビートたけしと西島の意味ありげな目元、忽那と小山田の不惑の表情が印象的なデザインに仕上がっている。チラシは、順次劇場に設置される予定。(C)2016 映画「女が眠る時」製作委員会
2015年10月24日監督としても世界各国で名高いビートたけしが、自身の監督作以外で12年ぶりとなる映画主演を果たすことで話題の『女が眠る時』。この度、本作の公開日が決定するとともに、チラシビジュアルも解禁となった。作家の清水健二は1週間の休暇を取り、妻の綾と共に郊外のリゾートホテルを訪れる。初めて書いた小説がヒットしたもののスランプに陥り、今後就職することが決まっていた健二は、妻との関係も倦怠期を迎え、無気力な時間を過ごしていた。滞在初日、彼はプールサイドで異様な存在感を放つ、初老の男・佐原と若く美しい女・美樹のカップルに目を奪われる。その日以来、健二はホテル内で彼らを見かけるたびに後をつけ、部屋を覗き見るようになっていく。部屋には、美樹の体の産毛をカミソリで丁寧にそり、毎晩彼女が眠る姿を撮影し続ける佐原の姿があった。自ら佐原に近づいた健二は、佐原と初めて言葉を交わしたものの、美樹が眠る動画を見せながら彼が放った「あの子の最後の日を記録しようと思って」という言葉に底知れない恐怖を覚える。危険を感じながらも好奇心をさらに掻き立てられた健二の行動は次第に常軌を逸し、部屋の中に忍び込む――。本作は、『スモーク』で「ベルリン国際映画祭」の銀熊賞に輝くなど、世界的な活躍をみせるウェイン・ワン監督の最新作。ワン監督は本作が日本映画初の作品となる。主演の初老の男・佐原役にビートたけしを迎え、作家・清水健二役に『MOZU』シリーズや今シーズンでは「無痛~診える眼~」(フジテレビ)でも主演を演じる西島秀俊、清水の妻・綾役には「ブラッディ・マンデイ」(TBS)に出演していた小山田サユリ、そして佐原の恋人で若く美しい女・美樹役には『黒衣の刺客』『海難1890』など海外を視野に演技の幅を拡げ続ける忽那汐里といった豪華キャストが集結。このほか、リリー・フランキー、新井浩文、渡辺真起子らも出演することが決定している。今回解禁されたポスターは、「覗き見たのは、<狂気>か<愛>か。」と書かれたキャッチコピーとともに、たけしさんと西島さんの怪しげな目元と、忽那さんと小山田さんの不惑の表情が強調されたなんとも意味深で印象的なポスタービジュアル。そしてこのポスターには「狂っているのは自分なのか、それとも目の前の現実なのか。」など劇中の言葉が散りばめられており、更に本作の内容が気になる仕様となっている。このポスターは、今週末より順次劇場に設置される予定だ。ハリウッドの巨匠と日本の豪華俳優陣がどんな物語を織りなすのか。佐原が注ぐ異常な愛はどういった結末を迎えるのか、今後の続報にも期待したい。『女が眠る時』は2016年2月27日(土)より、全国にて公開。(cinemacafe.net)
2015年10月24日ハリウッドで活躍するウェイン・ワン監督が日本人俳優を起用し映画『女が眠る時』を製作。クランクアップを迎えた7月11日に都内で会見が行われ、主演のビートたけし、西島秀俊、忽那汐里、小山田サユリとワン監督が出席した。その他の画像スペイン人作家のハビエル・マリアスの短編小説「WHILE THE WOMEN ARE SLEEPING」をワン監督が日本で撮影売ることを提案し、製作が決定した本作。妻と共にリゾートホテルを訪れた作家が目撃した、初老の男と親子ほど年の離れた若い女性の異様な愛を官能的に描き出す。6月16日にクランクインし、メインのホテルのシーンは静岡県河津町の伊豆今井浜東急ホテルおよび、河津町、下田近郊で撮影。この日の都内(北青山)での撮影で全てのシーンを撮り終えた。たけしにとっては自身の監督作以外での映画主演は『血と骨』以来、12年ぶり。開口一番「渡辺謙です」と自己紹介するなど随所にジョークを交えつつ「自分のキャリアの中で久々に緊張して、最初は手探り状態が続いた。やってみて、役者としても監督としてもいい勉強になった」と振り返った。現場ではワン監督が一方的に演出するだけでなく、常に台本に変更が加わり、俳優陣にアイディアを求めることも多かったという。西島はその様子について、特にワン監督とたけしのやり取りを指して「偉大な映画作家2人と現場でご一緒できて、2人が話し合ってどんどん膨らんでいくのを見ることができたのは僕にとって財産。さっき(撮影が)終わったばかりで落ち込んでいます(苦笑)」と語る。ワン監督はたけしについて「この作品にとってのもう一人の監督。こちらから『日本人ならこういう状況に置かれた時、どうする?』などとアイディアを求めたこともありました」と話した。忽那は、たけしが演じる初老の男・佐原の理想の女性として幼い頃より育てられてきた美樹を演じた。当初、監督は忽那は美樹のイメージと違うと感じていたものの、会ってすぐに起用を決断したという。忽那にとっても挑戦となったが「クランクインまでは時間があり、監督と文通のようにコミュニケーションをとりながら作っていきました」と述懐。撮影に入っても常に変更があり「予測不可能な毎日で、いつも以上にどちらに傾いても役がぶれないようにと考える時間が長かったです」と苦労の日々を明かした。このほか、リリー・フランキー、新井浩文、渡辺真起子も出演。現時点で未定ながらも、今後、海外の映画祭への出品などにも注目が集まる。
2015年07月13日2016年春公開の映画『女が眠る時』の製作発表記者会見が11日、都内で行われ、ビートたけし、西島秀俊、忽那汐里、小山田サユリ、ウェイン・ワン監督が出席した。巨匠ウェイン・ワン監督がニューヨーカー誌に掲載されたスペイン人作家ハヴィア・マリアスによる短編小説『WHILE THE WOMAN ARE SLEEPING』を日本で撮影した本作。ウェイン・ワン監督にとっては初めての日本映画となる。物語は妻の綾(小山田サユリ)ととバカンスでリゾートホテルに訪れた小説家の健二(西島秀俊)は、プールサイドで美しい女の美樹(忽那汐里)にクリームを塗っている初老の佐原(ビートたけし)の姿に目を奪われ、ほんの好奇心から始まった彼らへの追跡が次第に異常な行動をとるようになっていく、というストーリーだ。クランクアップを迎えたこの日は、ウェイン・ワン監督と主演のビートたけしらキャスト陣が勢揃い。ビートたけしが冒頭で「渡辺謙です。トニー賞がもらえなくて殴ってやろうかと思いました」といきなり会場を笑わせて「(演出法は)基本的に俺と似ていますが、俺は適当で面倒くさがり。監督は非常に真面目な方なので、きれいな女性とソープ嬢の違いみたいな感じですね」とたけし節が随所でさく裂。とはいえ「今回の映画は自分のキャリアの中でも久々に緊張して手探りの状態が続きましたが、役者としても監督としてもいい勉強になりました」と監督の演出に刺激を受けた様子だった。佐原に10歳の頃から育てられた美樹を演じた忽那は「とにかく刺激的で挑戦的な毎日でした。毎日何が起こるか分からない中、極力"美樹"という不思議な女性に少しずつ作っていけたら、と悩みながら演じました」と感想を。また、ウェイン・ワン監督は「本当にある意味、たけしさんはもう1人の監督で、いろんな提案を出してもらいました。たけしさんを含めたキャスト全員は、撮影が始まる前に監督以上に完璧に理解していましたね」とキャスト陣に感謝の言葉を口しながら「日本人スタッフがこれほど仕事熱心で文句ひとつ言わずに働いてくれることにすごく感動しました。英語が分からなくてもジェスチャーが通じてスムーズでしたよ」と日本での仕事に満足げだった。映画『女が眠る時』は、2016年春に全国公開予定。
2015年07月13日ビートたけし、西島秀俊、忽那汐里、小山田サユリがベルリン国際映画祭銀熊賞に輝くなど世界的な活躍を見せるウェイン・ワン監督の最新作『女が眠る時』に出演。クランクアップを迎えた7月11日(土)に都内で記者会見が行われた。香港出身でハリウッドでも活躍するワン監督がスペイン人作家ハビエル・マリアスによる短編小説「WHILE THE WOMEN ARE SLEEPING」を日本で撮影することを自ら提案。リゾートホテルで、初老の男・佐原と親子ほど年の離れた若く美しい美樹の間にある愛情を目にした作家・健二が彼らに心奪われ、執拗に追いかけ、次第に自分を見失っていくさま、佐原が美樹に注ぐ異常な愛が描き出される。撮影は6月半ばに始まり、メインのホテルのシーンは静岡県の「伊豆今井浜東急ホテル」および、近郊の河津町、下田で撮影され、この日、都内の北青山での撮影でクランクアップを迎えた。佐原を演じるたけしさんにとって、自身の監督作以外の作品に主演するのは『血と骨』以来、12年ぶり。開口一番「渡辺謙です。トニー賞がもらえず、殴ってやろうかと…」と語り笑いを誘う。本作への出演を決めた理由についても「スケジュールが合ってギャラもらえるから。金をくれれば親でも殺す芸人なので」と冗談を連発していたが「キャリアの中でも久々に緊張し、最初は手探りの状態が続いた。やってみて役者としても監督としてもいい勉強になりました」と大いに刺激を受けたよう。ワン監督は現場でもどんどん台本に変更を加えていくタイプで、たけしさんをはじめ、キャスト陣にも積極的に行けんやアイディアを求めたそう。たけしさんについてワン監督は「この作品にとってはもう一人の監督」と最大限の賞賛を送る。たけしさんはワン監督の現場について「基本的に、おれの作り方と似ているなと感じた。違うのはおれは適当で『こんなもんでいいや』というところ。やってることは同じだけど(笑)」とまたも冗談に紛れさせつつ、現場で感じた“共鳴”を明かした。作家の健二を演じた西島さんは、ワン監督がベルリン国際映画祭銀熊賞に輝いた『スモーク』に言及し「個人的に何度も見直してる映画で、何度見ても『この映画は何なんだ?』『この役者たちの素晴らしさは何なんだ?』と感じる」と語り、今回の作品へのオファーと共にすぐさま香港に飛んで、監督と話をしたと明かす。「役について深く話をして、自然にスーッと(本作への参加が)始まった感じだった」と振り返る。西島さんにとって、たけしさんは自身の出世作と言える『Dolls/ドールズ』の監督でもあるが、今回の現場について「偉大な映像作家2人と現場をご一緒できて幸せでした。さっき、(全ての撮影が)終わったばかりで落ち込んでいます(笑)。どんどん新しいシーンが増えていくのは刺激的でしたし、お2人が話して、どんどん膨らんでいくのを見られたのは僕にとっては財産です」と充実した表情を見せた。忽那さんは、少女の頃から佐原の理想通りに育てられてきた美樹を演じたが、実は当初、忽那さんはワン監督がイメージする美樹とはやや違っていたそうで「役をいただけるとはあ思ってないところから、『一度お茶でも』とお会いした」とのこと。ワン監督は直接会って、すぐに忽那さんの起用を決断したという。忽那さんは「クランクインまで時間があり、美樹というなかなかない育てられ方をした女性ということで、自分一人では見失ってしまうところを、監督と文通のようにコミュニケーションを取りながら作って生きました」と述懐。撮影でも「予測不可能な毎日で、役がどういう気持ちに傾いても、ぶれないようにといつも以上に考える時間が多かったです。刺激的で挑戦的な日々でした!」と笑顔で語った。たけしさんは、自身が演じた佐原を「変態」と自虐的に評するが、ワン監督は原作を読んで「変態ながらも共感できた」と語る。「この初老の男が眠る少女をビデオに収めるのですが、そこに純粋なものが凝縮されているのを感じました。彼はいつか彼女が自分を捨てるであろうことも薄々感じているのです。その意味でこれは“裏切り”を描いたヤクザ映画のようなものだとも言えます」と語り、完成に向けての手応えをうかがわせた。このほか、リリー・フランキー、新井浩文、渡辺真起子が出演することも発表された。『女が眠る時』は2016年公開。(text:cinemacafe.net)
2015年07月13日公開初日を迎えたアニメーション映画『攻殻機動隊 新劇場版』の初日舞台あいさつが20日、東京・新宿バルト9で開催され、劇中音楽を担当したコーネリアスこと小山田圭吾、主人公・草薙素子を演じた声優の坂本真綾、黄瀬和哉総監督、脚本の冲方丁氏らが登壇した。第57回グラミー賞で、最優秀アルバム賞を受けた世界的なミュージシャン・Beckとのコラボレーションや、Salyuなど数多くのアーティストのプロデュースで知られる小山田は、2013年から全4話で劇場公開されたアニメーション作品『攻殻機動隊ARISE』から劇中音楽を担当。『攻殻機動隊 新劇場版』では劇中音楽に加え、素子を演じた坂本とのユニット「坂本真綾 コーネリアス」を結成し、主題歌「まだうごく」も手がけている。登壇した小山田は、「長編映画の音楽を作るのはこれが初めて。貴重な体験をさせていただきました」とあいさつ。続いて、MCから楽曲制作で気をつけたことを聞かれると、「アニメーションは、実写と比べると情報量が少ない。かといって、音の要素を入れすぎるとセリフや効果音とぶつかってしまうので、そのバランスには配慮しました」とコメントした。主題歌について話題がおよぶと、小山田と坂本とのやりとりに。小山田が「坂本さんは、歌入れが異常に早いんですよ。昼ぐらいに集まるんですけど、夕方には帰るみたいな。けっこう難しい曲だと思ったんですけど、練習したんですか?」と尋ねると、一方の坂本は、「この流れで練習してませんとは言えないですよ」と照れつつも、「難しさに燃えるんです。でも、小山田さんも2、3回歌うと『もういいですよ』って、すごく早いなと思いました」と返す。すると、小山田は「本当にバッチリだったので」とレコーディングの順調ぶりを振り返りつつ、歌手・坂本真綾について「すごく好きですよ。クセのない、きれいな声をされている」と絶賛した。曲を聞いた総監督の黄瀬氏は、「初めはサントラでいただいたんですが、やっぱりフィルムを通して聞くのは違うなと思いました」と語り、「川井憲次さんがよかったという方もいるでしょうし、菅野よう子さんがいいと言う人もいたんですけど、僕は小山田さんにやっていただいて満足しています」と称賛の言葉を贈った。『攻殻機動隊 新劇版』では、総理大臣暗殺事件をきっかけに、シリーズを通して謎に包まれていた全身義体の主人公・素子の生い立ちが明らかになるとともに、攻殻機動隊の誕生秘話が語られる。アニメーション制作はProduction I.G、監督は野村和也氏が務める。この日の舞台あいさつにはその他にも、ProductionI.Gの石川光久氏、野村和也監督らが登壇。また本作は、6月20日にフランスの「2015年アヌシー国際アニメーション映画祭」でも上映され、26日には同じくフランスの映画館・グランレックスでの上映を控えているという。(C)士郎正宗・Production I.G/講談社・「攻殻機動隊 新劇場版」製作委員会
2015年06月20日