地下鉄有楽町線辰巳駅から徒歩1分の場所にある「Cafe LaLaLa」。カフェオーナーの中澤照子さん(77)は、昨年12月23日に定年を迎えるまで、20年もの間、保護司として活動してきた。関わった少年少女は実に120人以上!彼らと真正面から向き合い、更生させ、社会復帰させた。昨年11月14日には、保護司としての長年の功労が認められ、天皇陛下から、藍綬褒章が授与された。保護司は法務省の非常勤の国家公務員。無給のボランティアだ。各地域の保護観察所の監察官から、「この保護対象者を受け持っていただけますか?」と、連絡が入り、受け持った対象者と月2回、その親とも月1回、面談し、月1で報告書を書いて提出する。中澤さんは20年間、監察官からの依頼を断ったことがない。対象者に「会いたい」と言われれば、早朝でも深夜でも、必ず会った。「必要とされるなら、私は時間も心も割きます。『あとで』とか『メールで』は、絶対にしません。足を運ぶというのは、思いを届けることですから。それで、相手の目を見て、話します」通常、面談は月に2~3度だが、月に50回以上、会った子もいる。ユカリさん(仮名・当時16)だ。「自傷行為があり、体じゅうにカミソリの痕がありました。それも50カ所や60カ所じゃないんです。夜、電話が多かったのは、やはり寂しかったんでしょうね」電話を受けると、中澤さんは早朝でも飛び出して、夏なら近くの公園で話を聞いた。一時は自立に向けて歩き始めたように見えた。ところが、水商売で彼氏ができると、連絡が途絶え、以後、現在まで行方不明のままだ。「心配ですよ、女の子は。別の子ですが、男の人で変えられて、薬物問題を起こす子もいましたから」最近、中澤さんの携帯に深夜、非通知電話が入るようになった。高齢になって、中澤さんは現在、夜中は携帯を切っている。「電話をかけてくるのは、私が携帯を切ることを知らない子。ユカリちゃんじゃないかと思うんです」そんななか、中澤さんの後継者として、保護司になった元対象者が出た。プロレスラーの十嶋くにおさん(36)だ。中澤さんの1期生の1人で、16歳のとき、集団危険行為で鑑別所に入り、中澤さんの担当になった。十嶋さんは言う。「親はもちろん、大人は信用していませんでした。それが、中澤さんとの面談では、ダルくはあったけど、イヤではなかった。それまで大人はいつも頭ごなしに『おまえが悪い』だった。でも、中澤さんは、とにかく褒めてくれるんです」荷卸しのバイトを始めた十嶋さんを、「たいしたもんだ!」、「あら、いい顔つきになったね」と中澤さんは褒めまくった。毎朝8時17分、中澤さんが住む団地の前を通ってバイトに行く十嶋さんに、中澤さんは10階の部屋のベランダから、「ヤッホー!行ってらっしゃい。今日も頑張れよ~っ」と大きく手を振った。毎朝毎夕、十嶋さんが団地を通るたびに、中澤さんの「ヤッホー」が聞こえてくる。「そうしたら、頑張んなきゃって、気持ちになるじゃないですか」面談でも、中澤さんから、「オヤジさん、泣いてたわよ」と、聞かされると心が動いた。「直接、目の前でオヤジに泣かれるより、響くんですよね」保護観察期間が終了後も、十嶋さんは、新たに中澤さんの対象者になった仲間に付き添って、会いに行った。地域の雪かきや清掃作業に駆り出されると、十嶋さん自ら仲間を集めるようになっていた。「断ることもできたのにね。『手伝って』と言われて、親だと、こっ恥ずかしくてできないけど、『保護司の中澤さんを手伝ってやる』という体を続けているうちに、本当の親とも少しずつ話ができるようになっていたって感じですかね」バイトで20万円をため、十嶋さんは18歳で、プロレスの本場、プエルトリコまで修業に行った。「たいしたもんだ!」と、褒めつつも、中澤さんは鉛筆のように痩せていた十嶋さんが心配でたまらなかった。3カ月後、帰国した十嶋さんは真っ先に、中澤さんを訪ねて来て、鍛えた筋肉を見せてくれた。「『体が大きくなったら、道路を歩くと邪魔になるみたいで、俺、道を譲るようになりましたよ』なんて言うんですよ。あの肩で風切っていた子が(笑)。やっぱり夢や目標を見つけると、人は強いです」十嶋さんは’02年、19歳で、プロデビュー。’06年に結婚し、長男にも恵まれた。その後、離婚しているが、父子家庭になっても、1人で立派に長男を育てている。十嶋さんを筆頭に、“子どもたち”の成長を目の当たりにした中澤さんは、こう考えるようになっていた。「自分の経験を、保護司として生かしてくれる子が出てこないかな」そこで白羽の矢を立てたのが、十嶋さんだったのだ。昨年9月、保護司会会長や家庭裁判所など5つの関係各所の承諾を得て、十嶋さんは保護司になった。かつての保護対象者が、篤志家というイメージも強い保護司に選ばれるのは、従来では考えられない快挙だった。当初、十嶋さんは戸惑った。「俺、高校は2回も中退したし、まさか書類が通るとは思わなかったから。仲間たちの反響ですか。『え、マジか!?』ですよ(笑)。でも、仲間から『中澤さんが、あんなに期待してるんだからな』と、言われると、やっぱり少し誇らしかった。ちょっとずつ覚悟ができてきて、やっと最近、思うんです。一度、道を逸れた人間のほうがわかることもあるのかなって」照れくさそうな十嶋さんを、中澤さんも誇らしげに見つめていた。中澤さんが「Cafe LaLaLa」を始めたのは、昨年3月。保護司時代に縁のできた人たちが、いつでも気軽に立ち寄れる場所として、オープンさせた。「こないだも15年前に面談した男の子から、久しぶりに電話があって。ずっと連絡がなかった子でしたから、その名前を携帯の画面で見て、鳥肌が立ちましたよ」中澤さんがテレビで紹介されたのを見て、連絡をくれたという。「うれしかったですね。そんなことがあるから、どの子の電話番号も消せないんですよ。ユカリちゃん(前出)も、いつか『会いたい』と、来てくれるかもしれないし……」カフェに来るのは、中澤さんの“子どもたち”や関係者だけではない。最近では、ネットなどでカフェの存在を知り、保護司になりたいという若い女性が訪ねてきたり、息子を少年院に送り出したばかりという父親がやってきたり……。「父子家庭で、何とか息子を立ち直らせたいって言ってね。かなり長い間、お話しされていきましたよ。私も答えなんか出せないんです。でも、そうやって話しているうちに、ふと道が開けるヒントが浮び上がったりするのね。ですから、ここも珈琲処じゃなくて相談処になりました(笑)」保護司の肩書など、あってもなくても関係ない。自分のためより人のため。ぐるっとまるごと“人間保護司”の中澤さんこそ「たいしたもんだ!」。
2019年02月14日3〜5歳くらいは「なぜなぜ期」とも言われるように、子ども自身に疑問が溢れ出てくる時期。空はなぜ青いのか、悲しくなるとどうして涙が出るのか、ダンゴムシが丸くなるのはなぜか……。大人が簡単には答えられないような質問を、次から次へと投げかけてくる子も多いはず。また、そんな「質問攻撃」にやれやれ、と疲れを感じてしまう親御さんもいることでしょう。しかし、この質問こそが多方面への好奇心の表れであり、順調に知能が発達している証拠なんだそう。半分は親との受け答えを楽しんでいるだけとも捉えられますが、実はこの“なぜなぜ期”、子どもが“勉強好き”“理科好き”に育つチャンスなのです。「これなあに?」から「なぜ?どうして?」へ「これなあに?」に対して「◯◯だよ」と答えるだけでよかった2〜3歳の頃に比べ、3〜4歳になると質問も多様化。ことばと文字が頭の中で一致し、覚えたことばを上手に使えるようになる時期だからこそ、探究心が溢れ出てくるようです。子どもというのは元来、強い探究心を持っています。これは人間がまだ野生動物だった頃の名残なのです。野生動物は生まれた瞬間に、過酷な自然環境の中に急に投げ出されます。その瞬間に周囲から様々な情報を入手して分析し行動しなければ、たちまち天敵の餌食になってしまいます。そのため動物には、先天的に強い探究心が備わっているのです。幼い子どもが何にでも興味を示し、「なぜ?」「なに?」と訊いてくるのはそのためです。それを上手に育んでいけば、あとは勝手に「理科が得意の子」に育っていきます。(引用元:All About|理科のできる子に育てる低学年からの学習法)いろいろな科目の中でも、答えを導き出すにあたり、数値を使って計算したり、いろいろな作業をしたりしないといけない問題が多いのが理科。ひょんな「なぜ?」をきっかけに、答えを見つけ出すための姿勢が身についていけば、理科がきっと楽しいものと感じられるようになるはずです。子どもの好奇心を肯定し同じ目線に立つでは、「なぜ?」と聞かれたらどう答えるのがベストなのでしょうか。子どものためには、なんでもすぐに答えられるのが立派な大人、という認識は捨ててしまいましょう。すぐ答えが与えられることが習慣になっていると、子どもは「ママに聞けばなんでも答えがわかる」と頼り切ってしまい、自分で考える力が伸びないのだそうです。(引用元:曽田照子(2013) ,『ママ、言わないで!子どもが自信を失う言葉66』,学研パブリッシング.)子どもから科学的な質問をされたとき、知的探究心を伸ばすポイントをまとめてみました。【1.質問を肯定する】まず「よくそこに気づいたね!」と疑問に思ったこと自体を肯定してあげましょう。ただし調子を合わせて形式的にそう言っても、子どもには見抜かれてしまいます。「どうして寒いと体が震えるの?」と聞かれたら、たとえ当たり前だ、そういうものだ、と思っていても、本気で考えてみるのです。大人が何気なく理解しているつもりになっていることも実はよくわかっていなかったりするもので、たしかに不思議がいっぱいです。【2.すぐに答えず、一緒に疑問を持つ】質問にすぐ答えられてしまった子どもは、考えることの面白さを実感することができません。また、答がすぐに導き出せない問題は投げ出してしまう、根気のない子に育ってしまう可能性も否定できません。もしも答えがわかっていたとしても「どうしてなんだろうね」と寄り添い、自ら答えを探し始めるように促してあげましょう。【3.わからなかったらネットや図鑑に頼ってOK】親たるもの、なんでも答えられなくては!と威厳を保とうとする必要はありません。知ったかぶりは最もNG。親の役割は、知識を与えることではなく勉強の仕方や調べ方を伝えること。ネットや図鑑の力を借りながら、子どもが理解できるよう、かみくだいて説明してあげましょう。するといずれ、子ども自らが疑問解決のために勉強する姿勢が見られるはずです。なぜ?に対する「NGワード」「NG行動」逆に、質問に対してNGなのは、以下のような受け答え。いずれもせっかくの好奇心・探究心を、根元からスッパリ切り落としてしまうような残念な答え方です。×「そんなこと知らなくていいのよ。」×「そういうものなの!」×「そんなの◯◯に決まってるじゃない」このほかにも「またあとでね」とその場をやり過ごした場合は、実際にあとになっても何もしないでいると子どももがっかり。信頼を失いかねません。もちろん、手が空いてから改めてこどもの質問に向き合うのであればOKです。また、子どもの質問は無邪気なものでつい笑ってしまいたくなることもありますが、一笑に付すのもNG。子どもは大人が思っている以上にナイーブ。一度笑われてしまうと恥ずかしさや恐怖心を覚え、質問できなくなってしまう場合もあります。幼い子の場合は、質問自体がうまく説明できず、何を言っているのかわかりにくい時も。そんなときは「なにがききたいのかわからないよ」と切り捨てるのではなく、やさしく寄り添って質問内容を引き出してあげましょう。実際の観察や体験を通して説明を本や図鑑で調べるのももちろんよいですが、「百聞は一見に如かず」。勉強の楽しさを知っている子は、机の上以外のあらゆる場所から学びのチャンスを得ています。本来、何かを学ぶことは心をウキウキさせ、楽しいものです。「勉強」感覚が希薄な幼児期にこそ、その「楽しさ」を体感させることが大切なのです。(引用元:祖川泰治(2015) ,『IQがみるみる伸びる0歳から6歳までの遊び方・育て方』,廣済堂出版.)わからないなら机に向かって調べましょう!ばかりではなく、体感することで理解につながれば、親も子も学びの楽しさを実感できるはず。「なぜ?」をきっかけにして、近所の図書館や川や公園へ出かけたり。また、答えを見つけられそうな動物園や博物館、キャンプや登山などを週末に計画すれば、親子一緒にワクワクできますね。***子どもの疑問に寄り添いたいのはやまやまだけれども、毎日忙しくそんなに余裕はない、という親御さんも多いことでしょう。ならば、ときには「◯年生になったら学校で教えてもらえるよ」と未来へ希望をもたせてみたり、「お母さんもわからないから、◯◯くんが大きくなったら勉強して教えてくれる?」とお願いしてみたり。夏休みの自由研究のテーマにしよう、と提案し、疑問を忘れないようにメモしておくのもいいですね。その時はわからなくても、ほかのことを勉強していくうちに知識と知識が結びつき、「なんだ、そういうことか!」と心から納得できる時が来ることもあるはずです。親が真摯に向き合うべきなのは、質問自体ではなく、こどもの“好奇心”の方。「なぜ?」は勉強の楽しさを知るワクワクの芽。大事に育てていけるといいですね。文/酒井絢子(参考)ベネッセ教育情報サイト|「なんで?」と言われても、「間違っているから違う」としか言えません[中学受験]AERA dot.|「9歳のころがカギ」 自分の子どもを「理系」にする方法gooニュース|子どもの 「なぜなぜ攻撃」に、正確な知識で答えるのはNG!?All About|カンタン! 子どもの知的好奇心を引き出す方法All About|理科のできる子に育てる低学年からの学習法All About|これからの教育キーワードは「没頭力」汐見稔幸・高濱正伸対談祖川泰治(2015) ,『IQがみるみる伸びる0歳から6歳までの遊び方・育て方』,廣済堂出版.キャシー・ウォラード(2012) ,『なぜ?どうして?身のまわりの疑問、まるわかり大事典』,飛鳥新社.立石美津子(2014) ,『1人でできる子が育つ「テキトー母さん」のすすめ』,日本実業出版社.曽田照子(2013) ,『ママ、言わないで!子どもが自信を失う言葉66』,学研パブリッシング.
2019年01月17日子どもの成績とインテリアや間取りが関係あるという話、聞いたことはありませんか?成績のいい子とイマイチな子では、「家」にどんな違いがあるのでしょうか。さまざまな家庭のリアルを見てきたプロの家庭教師に“子どもを伸ばす部屋づくり”について教えていただきました。毎週10~12の数の家庭を訪問して見えてきたものとは……?教えてくださったのは、5年連続100%の合格率を誇るスゴ腕家庭教師の佐々木恵先生。家庭教師を始めて今年で約8年(専業になってからは約6年)。その間ずっと週に約10~12ほど数の家庭を訪問しているそうです。ーー子どもの成績と家って関係があるんですか?佐々木先生:関係……あると思います。はっきりした違いは、できる子の家はどこに何があるかきちんとわかっているというか、例えばできる子の親御さんに「◎年生の時の成績表はありますでしょうか?」と聞くと、何年前の成績表だろうが、瞬時にパッと出てくる。物の番地が分かっていて、整理ができている。紙ではなくてラインで送ってくれたりもします。そういう方のお子さんは、プリント類の整理もきちんとできている。逆に勉強があんまり得意じゃない子は、どこに何があるか分からず、親御さんも「先週のプリントどこ?」なんてバタバタ探していることが多いですね。あまりに散らかしすぎていると「ちょっと片付けようか」と片付けから入ることもあります。ーーどこに何があるか把握できていることが大事なんですね。佐々木先生:体系化して整理するという意味では、勉強と片づけは共通しているんですよ。知識を体系化して、理解したり記憶したりできる子は、自分の脳みそのどこに何があるのか、番地が分かっている。逆に、できない子はおそらく頭の中がブラックボックス化していて、どこに何があるか分からないと思います。部屋が散らかっていると知識も散らかっているのかもしれません。ーーできる子の家はキレイ?佐々木先生:キレイだから成績がいい、キレイじゃないからダメとは単純には言えません。できる子の家も、物が多くてごちゃついていたり、ゴミが落ちてることがあります。インテリアのテイストは関係ないですが、おしゃれすぎるのあまり良くないですね。モデルルームのように、生活感がないほど片付いていると子どもは落ち着かないですよね。それに、あまりにもキレイすぎると「何かあるな……」って。特にいつも開いていない“開かずの間”がある家は危ない。家族の中で触れないようにしている闇のようなものを感じます。子どもも心に引っかかりがあると勉強に集中できず、伸びないですね。日当たりと間取りは集中力に影響する!?ーー家の広さとか間取りは、成績と関係ありますか?佐々木先生:そうですね、一軒家か、アパートマンションかとか、広さは関係ありませんが、日当たりは大事です。とくにリビングや子ども部屋に日光がちゃんと入るかどうかは重要です。ほとんど日光が入らないお家に行ったことがありましたが、そこは家族ゲンカばかりしていました。また朝、起きられなくて不登校ぎみになっていた中学生の男の子を一番光の当たる部屋で寝起きしてもらうようにしたら、起きられるようになり、それまでの朝起きられない、眠いからいつもだるくて睡眠の質が悪い、授業中も寝てしまう……という悪循環が断ち切られたので成績もアップしたという例もあります。太陽は大事です。--光が入るかどうかが重要なんですね。ほかには?佐々木先生:さらに動線も重要だと思います。ある家庭では、リビングを通らずに玄関から子ども部屋に行けるようになっていましたが、そのせいで親子のコミュニケーションが途絶えていました。子どもはで家に帰ってきても、親と会話をせずにすぐ自分の部屋にこもってしまう。自分の部屋で勉強をすればいいのですが……普通はしないですよね。部屋にこもったときは好きなことをしている。結局、残念ながら成績は上がりませんでした。間取りをリビングやキッチンを通る動線にしておけば、「見守っているよ」というサインが出せたかも知れないと思います。リビング勉強は先生のイチオシ--リビング勉強が流行っていますが効果ありますか?佐々木先生:“リビング勉強”は私のイチオシです。勉強をちゃんとやる子ほどリビングでやっていますね。“カフェ勉強”と同じ理屈で、人は生活音があるほうが集中できるという説があるんですよ。生活音や気配があった方が集中しやすい。さらに小学生なら親が見ている安心感がありますし、中高生だと「勉強しているぞ」と親にアピールするためにリビングで勉強する子もいます。「宿題やったの」とか「勉強やりなさい」とかガミガミ言われるくらいなら、やっているところを見せようという作戦ですね。ーーリビング勉強ってやっぱりいいんですね。効果的にするための注意点ってありますか?佐々木先生:リビングには勉強しやすいちょっとしたスペースを作るといいです。60㎝幅くらいでいいのですが、紙を置いて書きやすいテーブルがリビングにあるといいですよね。ガラステーブルとかナチュラルな素材とか、リビングのテーブルは天板が鉛筆では書きにくいことがありますので、そういったこともちょっと気をつけてあげてください。ーー勉強ができる子のリビングと、そうでない子の家のリビングでは、違いはありますか?佐々木先生:成績がいい子の家のリビングには必ず本棚があります。そしてそこに親の仕事や趣味に関した専門書があります。親が普段、本を読んで学んでいる姿を目の当たりにしている子は、勉強の習慣ができやすいので、当然成績もよくなります。ーー子どもに勉強をさせたかったらまず親が勉強している姿を見せるんですね!子ども部屋は狭いほうがいいですーー子ども部屋はどう考えたらいいですか?佐々木先生:低学年ではまだ子ども部屋はいらないと思います。勉強もリビングでするし、ひとりで寝るのも寂しがります。思春期になると自分の部屋を欲しがります。親御さんに秘密ができてくる頃には子ども部屋があったほうがいいですね。子ども部屋は狭い方がいいです。広いとさびしいですよね、意外に。机とベッドがあれば十分。狭くてもプライバシーが守れる自分のスペースがあればいいです。勉強するのでも、1人で集中できるのが目的なので、広さは逆に邪魔になるのかなと思います。集中力が切れたときには家族の目を感じるリビング、集中したいときは自室で勉強、と、場所によって勉強する内容を使い分けている子もいます。ーー部屋の汚さと成績って関係ありますか?佐々木先生:やはり何がどこにあるか、ちゃんとわかっている子の方が成績がいいです。せめて机の上だけでもキレイにしておいてほしい。ノートを広げられないぐらい机の上が雑然としている子は、勉強に取りかかる前に片付けというハードルがありますから、当然のごとく成績はパッとしない場合が多いです。ーー子ども部屋が散らかっているとつい親が片づけちゃうんですが……。佐々木先生:散らかっていて掃除しているお母さん多いですが、思春期以降の子にとって子ども部屋は1人で勉強に集中したり休んだりする場所なのですから、親が入るのはマイナスです。中学生ぐらいだったら放っておけばいいのにと思います。いろいろ言われてトラウマになってしまったという子もいますし、親も変なものを見つけて気に病むくらいなら、子どものスペースとして割り切って、あまり立ち入らない方がいいですね。ーー他に子ども部屋で気をつけるポイントってありますか?佐々木先生:アイドルや映画のポスターなど貼ることもあると思いますが、勉強のモチベーションを上げる手段としては志望校のポスターや写真を貼っておくのがおすすめです。さらに勉強ができる子は、全員と言っていいほど自室に勉強がらみの何かを貼っています。覚えたい単語だったり歴史年表だったりするのですが、たくさん貼っている子は成績が上がってきますね。場所記憶というのですが、テスト中など「部屋の机の右側に貼ってあったな……」と場所にひもづけて思い出すと、記憶がよみがえりやすいです。部屋の東西南北に合わせて地理の暗記物を貼っていた子もいました。親が貼るのではなく、子どもが自主的に貼るのが理想です。子ども部屋だけでなく、リビングやトイレなど家じゅう子どもの書いたメモだらけという家もありました。インテリア的にはおしゃれとは言いがたい状態ですが、子どもが本気で勉強している証拠だ、と親御さんは受け入れていましたね。日当たりや間取りはなかなか変えられませんが、片付けとリビングに本棚を置くことなら、すぐに実践できそうですね。ぜひ参考にしてみてくださいね!●ライター曽田照子
2018年06月10日発酵食品のなかでも最近注目を集めているのが、日本の伝統食である「ぬか漬け」。興味はあるけれど、いざ始めるとなるとハードルが高い……という人のために、ぬか床の作り方をプロに聞いてきました♪実はアバウトでいい!ぬか床の作り方って?取材したのは千葉県船橋市にある漬け物専門店の佐々木社長。10代の頃から漬け物に関わってきたという佐々木さんは、80歳代とは思えないほどお肌ツヤツヤ。毎日ぬか漬けを食べて、年間10日ほどしか休みがなくても毎日元気いっぱいだそうです。「身体にいいぬか漬けを、次の世代に伝えたい」という強い思いを抱いている佐々木さんに、ぬか床の作り方を教えていただきました。<用意するもの>※ぬか床約3キロ分・生ぬかお米屋さんで譲ってもらうか買うのがベスト。1kg50円程度からわけてもらえます。自宅用なら1kg用意すれば充分です。・塩ぬかの1割から1.5割の量。食塩よりも岩塩などミネラル豊富なものがおすすめだそうです。佐々木漬物店では岩塩を1kg500円で販売しています・水水道水ではなく、湯冷ましなど、塩素がふくまれていないもの。ミネラルウォーターもいいそうです。・切り昆布ひとつまみ。切ってなくてもよいそうです。・唐辛子ひとつまみ。種ごとでもOK。・容器今回は100均で購入した大きめのタッパーを持参しました。混ぜることを考えると、5リットルくらい入る容器がおすすめです。高さがあるもののほうが食材を漬けやすいそうです。<作り方>1.ぬかを容器に入れる佐々木さんはざくっと全部入れましたが、初心者は調整用にぬかを少し取っておいたほうがよいそうです。入れたら手で全体をざっくりかき混ぜます。2.唐辛子、切り昆布を適当にパラパラ入れる表面にバラバラと散る程度に唐辛子と切り昆布をまぶし、手で全体に行き渡らせます。水を入れる前のほうが混ぜやすいのだとか。3.塩を入れる塩を入れて手で混ぜます。1kgぬかに対して100~150gが目安ですが、「入れたらちょっとなめて、好きな塩加減に変えて」と佐々木さん。自分好みでアレンジすることで、家庭それぞれの味ができていくんですね。4.水を入れる水を入れます。水道水は含まれている塩素で乳酸菌が死滅してしまうのでNGだそう。ぬかに含まれている水分量によって変わるので、分量ははっきりいえないそうです。(※取材後に自宅で再現してみると、ぬかカップ1杯に対して、水はカップ2杯くらいでした)5.全体を手で混ぜ、固さを調整する水を入れたら全体を混ぜて、ぬか床の固さを調整します。固さは自分の好みでいいそうですが、ボソボソとした状態はNG。空気が混ざってしまっているため、腐敗菌が入って発酵しなくなってしまうそうです。固さは耳たぶくらいがベスト。「これなら漬けられるな、っていうくらいに調整してください」と佐々木さん。固すぎる場合は水を、柔らかすぎるかなと思ったら、ぬかを少しずつ足しながら調整します。ちょっとなめて味を見るのもいいそうです。6.表面をならすぬか床の表面を手のひらでなめらかにならします。佐々木さんのぬか床は表面をならしてうっすら水がしみ出るか出ないかぐらい。底なし沼みたいな感じと言えば伝わるでしょうか。「好みによって自分で感覚をつかんでほしい。水の量が多くても少なくても、それなりにうまくいきますから」と佐々木さん。7.発酵させる仕込んだぬか床は、密封せずに軽くフタをして、そのまま風通しのいい室内に置いておきます。直射日光を避けて、寒い季節は暖かいところ、暑い時期は涼しいところ。おすすめの温度は人間が快適だと感じる24℃くらいだそうです。「混ぜなくていいの?」と思いがちですが乳酸菌を増やすためにはかき混ぜないほうがいいそうです。夏場は2~3日、冬場は1週間から10日おき、表面に白いカビのような産膜酵母が出てきたら、ぬか内部に乳酸菌が増えてきた証拠。ここではじめてかき混ぜます。「白い部分は酵母菌なので混ぜ込んでください」。ぬか床作り成功のコツはこちら!「発酵するとぬか床の味がしょっぱいから酸っぱいへ変わります。その変化を自分で確認することが大事」と佐々木さんは言います。発酵したぬか床はきれいな黄色、決して不快ではない、ぬか漬けの匂いがします。今回は、作り方のコツも伝授いただきました。・冷蔵庫はNGぬかを冷蔵庫に入れるといつまで経っても乳酸菌が活性化してくれません。最適な温度は24℃くらいです。・発酵させている間は密封しない乳酸菌は酸素が苦手なのでぬか床が発酵してから密封するのはかまわないのですが、発酵を待っている間は、産膜酵母が活動できるよう密封しないでおきます。「自然の状態にしといてください。自然発酵ですから」。・必ず「生ぬか」を使用する佐々木さんは「ぬかを炒ったほうが、ぬか床はいたみやすいのですよ」といって「炒りぬか」ではなく、「生ぬか」を推奨しています。炒りぬかは生ぬかを炒って乾燥させ、保存性をよくしたものです。香ばしい風味が魅力ですが、加熱することでぬかのなかにいた乳酸菌が殺菌されてしまい、生ぬかを使うより発酵しにくいそうです(発酵しないわけではなく、野菜に付着した乳酸菌に頼るため、管理が難しいのだとか)。・ほかの発酵食品を混ぜないビール、日本酒、パン粉などを混ぜる人もいますが、ほかの発酵食品を混ぜると、乳酸菌とほかの菌が拮抗して、発酵が遅れたり腐敗してしまう原因になります。・発酵したら漬けてみよう発酵したぬか漬けはぬか特有のよい匂いがします。発酵したらさっそく漬けてみましょう。佐々木さんのぬか漬けは、最初からほどよい塩分にしてあるため、いわゆる「捨て漬け」は不要です。野菜の漬け方、基本はこちら!1.野菜は必ず水洗いし、水分を拭いてから漬けます。容器に収まらないときは適当にカットしてOKです。2.ぬか床のなかにズブッと入れて、野菜を埋め込んで表面を平らにならし、半日から1日放置します。3.食べる前に取り出し、サッとぬかを洗って、食べやすい大きさに切ってできあがり。漬かり加減は漬け時間で調整します。急ぐ場合は表面を塩もみして、塩を水で流してから入れると早く漬かります。あまり長時間漬けると酸味が出てしまいます。「柔らかくなったなと思ったら食べてみる、どのくらいの漬かり具合がいいかは、その家庭の好みです」と佐々木さん。上手な漬け方、野菜別のポイントを伝授♪・きゅうりぬか漬けのなかでも人気のきゅうりは、洗って端を切って、そのままつけ込むだけ。・かぶしっぽを落とし、実の部分に大きく切り込みを入れてつけ込みます。佐々木さんは葉つきのまま漬けているそうです。・だいこん漬けやすい大きさに切り、ところどころ皮をピーラーでむいて漬け込みます。・にんじん彩りのいいにんじんのぬか漬けもおすすめ。ピーラーで皮をすべてむいて漬け込みます。皮が残っていると黒く変色してしまうそうです。・なすぬか床に色が付いてしまうため、佐々木さんは別の容器にとって漬け込んでいるそうです。なすの色がよく出るように鉄なすなどを入れます。なすはちょっと難易度が高いのでほかの漬け物で慣れてからがおすすめだそうです。作ったぬか床を大切に維持するためにせっかく作ったぬか床、大切にしたいですよね。ぬか床を維持していくコツも聞いてみました。・混ぜるぬか床といえば混ぜるもの、というイメージ通り、できあがったぬか床は「とにかく『かく拌』すること、混ぜること」と佐々木さんは言います。混ぜることで、表面に出てきた産膜酵母をぬか床の下に、底のほうにある酪酸菌を表面に出し、いつまでもフレッシュなぬか床になるのだとか。ただずっと混ぜていたのでは、酸素が苦手な乳酸菌は増えません。乳酸菌を増やすためには、「混ぜすぎないこと」も大切です。・常温保存この作り方のぬか床は、冷蔵庫に入れず、佐々木さんのお店でも常温で保存しているそうです。佐々木さんによると「常温で保存することで、乳酸菌が元気に働き腐敗しにくい」のだそうです。直射日光の当たる場所では暖まりすぎてしまうので、日陰の室内に置いてください。・変色したらその部分を捨てる表面がうっすら白い、あるいはうっすら黒ずんでいるときは混ぜ込んでも大丈夫。黒、赤、青など、はっきりと変色している場合は、変色している部分とその周囲を、思い切って捨ててください。混ぜ込むと腐敗の元です。・長期間外出するときは中の野菜を全部出して冷蔵庫に保管します。大きな容器の場合は、ぬか床の表面に塩をまぶし、ラップなどで空気を遮断して常温で保管します。・水が出てきたら「野菜から出たきれいな水なので、そのなかには乳酸菌がたっぷり入っていますから、捨てずに生ぬかを足すことで濃度を調整してください」と佐々木さん。・乳酸菌を育てる「1gのなかに5億から10億の菌がいます」という佐々木さん。ぬかの中の乳酸菌を生かす、という気持ちでぬか床に接するといいそうです。いざやってみると本当にカンタン♪野菜を漬け込んで、しばらく置いて取り出すだけでおいしくなるぬか床。難しいと思い込んでいましたが「普通の日本人が忙しい暮らしのなかで続けてきたものですよ。難しいわけがない」と佐々木さんが言うとおり、実はシンプルでカンタンなものだったのです。ぬか床さえ作ってしまえば、毎日の手間はちょっと混ぜたり漬け込んだりする程度。思っていたほど手間がかかりません。これからの季節、いつもの食卓に小鉢に入ったぬか漬けを添えてみてはいかがでしょうか。和の匠佐々木漬物店の詳細はこちら!●ライター曽田照子
2018年05月26日大正14(1925)年に生まれた91歳の角田照子(つのだ・てるこ)さんは、40歳を過ぎてヨーガに魅せられ、現在は東京と埼玉の2ヵ所でヨーガ教室を開いている。2年前には、88歳にしてヨーガの実践書『図説 しあわせヨーガ 健やかに美しく齢を重ねるために』(めるくまーる)を執筆。今でもほぼ毎日ヨーガの指導を続けている、バイタリティいっぱいの角田さんに聞いた。40歳を過ぎて出会ったヨーガの恩師――角田さんは幼い時から、ヨーガや健康に関するお仕事に興味を持っていたのでしょうか?角田照子さん(以下、角田):ヨーガと出会うのはもっと先ですが、幼少期からそれに通ずる経験はしていたと思います。私の娘時代は戦争中で生活がとても厳しかったですし、未婚女性で構成された「女子挺身隊」に連れていかれて工場で働かされたこともありました。そんなつらい時にも、山に登ったりして自然の雄大さにたくさん触れていました。その頃から自然は大好きだったんです。また、当時は保育園もなかったので、よくおばあさんに預けられていました。おばあさんにお寺参りに連れていってもらっていたせいか、幼い頃から死について考える機会がありました。なので、お釈迦様や仏教が生まれた国で、かつヨーガ発祥の地であるインドには淡い憧れを持っていた気がします。そうした体験があったので、仏教思想と関係が深いヨーガの世界にも自然に入っていったのかな。――ヨーガに出会ったのはいつでしょうか?角田:40歳を過ぎた頃です。当時は専業主婦をしていました。夫の知人に、芥川賞候補にもなった小説家兼ヨーガ研究家の広池秋子さんという方がいらっしゃいました。30歳半ばに大ケガをして不調が続いて困っていたところ、広池さんが「ヨーガ禅」を提唱していた佐保田鶴治先生を紹介してくださったのです。ヨーガを行えば身体の不調もよくなるのではないかということでした。佐保田先生はもう亡くなりましたが、インド哲学の専門家で大阪大学名誉教授でした。お仕事を定年退職された後にインド人からヨーガを教わったところ、もともとの虚弱体質がピタっと治ったんです。それを機に「ヨーガ禅」を日本に広めるべく、「日本ヨーガ禅道友会」を創設されました。私は48歳の時に、設立されたばかりのその会に入りました。――そして、今のようにヨーガを教える立場になられた。角田:先生のもとでヨーガを教わっていた50歳くらいの頃、先生の推薦で教師の資格をいただいたんです。今は試験があって資格を得るのは厳しいのですが、当時は推薦でもらえました。その後、東京信用金庫で開かれていた「東信ヨーガ禅教室」で37年ほど指導し、同時に埼玉・浦和に開いた「埼玉ヨーガ禅道友会」でも教えていました。88歳の時、高齢のため東信ヨーガ禅教室の退任が決まったのですが、生徒さんたちに惜しまれて新たに板橋で教室を開くことになりました。今は長男の息子にもいろいろと協力してもらいながら、浦和と板橋を行ったり来たりしながら平日は毎日午前・午後の2レッスン、土曜日は午前中の1レッスンをこなしています。最近は地方で教える機会をいただいて、北海道から九州まで各地に出向いています。本当にヨーガ三昧の生活です。ひとりになった時こそ、人生を充実させるチャンス――佐保田先生のヨーガのどこに惹かれたのですか?角田:最近、若い女性の間ではやっているのは、ダイエットや美容とつながった、アメリカナイズされたヨーガです。それもいいと思いますが、私が続けてきた佐保田先生提唱のヨーガは、精神のあり方に重点を置いたもの。私が惹かれたのも、その点でした。ヨーガで身体のプロポーションがよくなることも幸せのひとつですが、心身の両面で幸せになるという点が、先生のヨーガの深くて素晴らしいところなんです。先生は「誰の心の中にも仏様や神様の分身がいる。だから生きているうちに、ヨーガによってその分身を表に出しなさい」というお考えでした。そうすることで身体は健康になり、心は優しくて穏やかになります。さらに、①動作はゆっくり行うこと、②動作に呼吸をつけて行うこと、③上の空で行わないこと、④緊張と弛緩を調和させること。この4つの原則を守りましょう、と。これらは誰でもひとりで簡単にできます。だから、たとえひとりだとしても人生を豊かにしながら、深く幸せに生きていくことができるのです。――角田さんのクラスには元気な70代、80代の女性も多いそうですね。角田:はい、たくさんいらっしゃいます。みなさんプロポーションがいいのでオシャレをしてあちこちに出かけたくなるんだそう。そのせいか、みなさんますます元気ですね。旦那さんがいなくても、外に出て、お友達と一緒に楽しいことができる喜びを感じていただいているようです。ヨーガの研修を兼ねてインドへは20回以上行っていますが、今年のお正月も、クラスのみなさんと一緒に行きました。私は旅が好きで、7、8年前にはヒマラヤにも登りましたよ。来年はイタリアに行こうかしら、と。佐保田先生がかつてこうおっしゃっていたんです。「高齢者がこれから増えていく中で、国や家族のお世話にならずに自立してひとりでも生きていけるようにならないといけません」と。91歳の私が元気で健康な心と身体を持っているのは、ヨーガのおかげですね。私を見ると、「ヨーガをやると100歳まで元気でいられるんだな」と思ってもらえるかな。欲に囚われなければ幸せになれる――今後の目標はありますか?角田:本当に今までやりたいことを十分やらせてもらいました。あとは、家族やまわりの人が幸せに生きていってくれたらと思うくらいですね。ただ、私くらいの年齢になると死が近づいてきます。“死”をどう考えていくかは今後の課題かもしれないです。生前、佐保田先生は私に、「死ぬと肉体はなくなるけど、魂は先に逝った人のもとへ行く。だから死は怖くない」と言ってくれました。その2年前、私が60歳くらいの時、次男に先立たれてしまい、失意のどん底だったので、この言葉にはとても救われました。今年、インドのアジャンター石窟群を見に行ったら、壁画に先生がおっしゃったことがそのまま描かれていたんです。私も死んだら息子、夫、そして父や母が待つところに行けるんだと感じられたから、死は怖くないかな。ヨーガは「死」と「善い生き方」を考えてくれます。生きている間は自分に与えられた仕事を精いっぱいやることが大切だと教えてもらいました。だから私にとっては、ヨーガを一生懸命にみなさんにお伝えして、お役に立つというお仕事をしていることが、本当の幸せなんです。――最後に20代、30代の女性にアドバイスをお願いします。角田:生きていく中で「これをやってみたい!」と強く思えるものが見つかるのはとても幸せなことです。損得勘定なしで生きがいとして追求していけるもの。それに出会うためにはいろいろな場所に出かけていったり、たくさんの人に会ったりして経験を積む必要があります。今の若い方は考え方がすごく進んでいますし、私の娘時代とは違って自由もあるけれども、その分ストレスも大きいのかな。恋愛や見た目の美しさ、手に入れたい物など、欲望は満たされたらいいけれども、満たされなかったり、囚われたりするととても苦しい。ヨーガはその欲望に囚われてはいけないと教えています。私もそのことをヨーガを通じて身につけました。今の若い人にも、欲望をなくしていく「離欲」が必要なのではないでしょうか。(石狩ジュンコ)
2016年07月26日