日本ミュージカル界屈指の人気作『エリザベート』の2019年シーズンが、いよいよ6月7日(金)に開幕する。初日に先駆け6日、出演する花總まり、愛希れいか、井上芳雄、古川雄大、山崎育三郎、成河が意気込みを語った。チケット情報はこちら19世紀末のウィーン、皇帝フランツ・ヨーゼフに嫁いだ美貌の皇后エリザベートを主人公にした物語。実在した皇后の波乱万丈な人生を、エリザベートに惹かれていく黄泉の帝王トート(死)という架空の存在を絡め、美しい音楽に乗せ描いていくミュージカルだ。日本では宝塚歌劇団版と、“東宝版”と呼ばれる東宝製作版プロダクションの2バージョンが繰り返し上演されている。今回の東宝版は2016年以来、約3年ぶりの上演。メインキャストも新しい顔ぶれが加わった。タイトルロールであるエリザベートを演じるのは、東宝版には3期連続出演となるだけでなく、1996年の宝塚版初演で同役を演じたオリジナルキャストである花總と、昨年宝塚歌劇団を卒業し、今回東宝版『エリザベート』には初出演となる愛希。ただ愛希も2018年の宝塚月組公演で同役を演じた経験がある。花總は「日本初演以来、ものすごく長くお客さまに愛されている作品。それを受け継ぎつつ、やるキャストによって色々な色に作品を変えることができたらいいなと思って毎回みんなで頑張っています。今回もたくさん愛していただけたら」と心境を。愛希は花總と「同じ時に同じ役をさせてもらうということに感動」と語り、「新しく作品に入らせていただきますが、もっと(作品を)深めて、先に先にいけたら」と意気込んだ。エリザベートと愛憎を繰り広げるトート役は、こちらも東宝版には3期連続出演の井上と、前回公演までは皇太子ルドルフを演じ、今回トート役初挑戦となる古川。ミュージカル界のプリンスと呼ばれる井上は、2000年の東宝版初演のルドルフ役でデビューをしているが、奇しくもこの日がデビュー記念日。「たまたま19年前の今日が初日だった。この仕事を19年も続けられて嬉しい(笑)。『エリザベート』は当時も人気作品でしたが、どんどん大きな作品になったんだなとひしひしと感じます」と話す。古川は「2012年にルドルフ役を演じ、今回で作品には4度目の出演ですが、いま2012年以上に緊張しています。ただ当時は感じられなかった“楽しみ”という気持ちも今はある。トートのことだけを考え、色々なことに挑戦していく機会にしていきたい」と語った。エリザベート暗殺犯・ルキーニは山崎、成河のダブルキャスト。「音楽面でも色々と変更が加えられている。作品を見慣れたお客さまたちも新しい重厚な世界を楽しんでいただけると思う」(成河)、「『エリザベート』は時代ごとに変化していくところも魅力」(山崎)とそれぞれアピールした。公演は6月7日(金)から8月26日(月)まで、東京・帝国劇場にて。
2019年06月07日乙女ゲームシリーズ『Starry☆Sky』が誕生10周年を迎えて舞台化され、2019年7月に品川プリンスホテル クラブeX(東京都港区)にて上演される。七海哉太役を演じる田中尚輝と、東月錫也役を演じる國島直希に本作への意気込みを聞いた。【チケット情報はこちら】『Starry☆Sky』はドラマCDや乙女ゲームなどからなる女性向けメディアミックス作品シリーズ。天文に関する知識を教える「星月学園」を舞台に、唯一の女子生徒が主人公となり、十三星座の性格特徴を持つ男性キャラクターたちとの恋愛を描く作品だ。本作は、原作シリーズに倣い、公演日によってエンディングが変わるという。田中は「日によってエンディングが違うと、毎回新鮮な気持ちで芝居ができるし、楽しい」と話し、國島は「どういう風になるのか分からない部分も多いけれど、何度も見られるので、お客様にも楽しんでいただけると思う」。初共演となる田中と國島。お互いの第1印象について、田中は「素から優しそうなオーラが漂っていた」、國島は「(実際の年齢はひとつ下だが)年上だと思っていた。すごくしっかりしている」と話す。“2.5次元”の舞台に初挑戦する國島は「最初は不安が大きく、セリフや動きも2次元だから成立するのかな、本当に整合性がとれるのかなと心配した。でも、この衣装やカツラを身につけて、これなら受け入れてもらえるかもしれないと思って」と率直な思いを話す。アニメが好きで100作品以上鑑賞してきたという國島は「アニメ好きという点では誰にも負けないと思う。『Starry☆Sky』が好きな方も納得してくださるよう、自分ならではのことができたらいいなと思っています」。一方、“2.5次元”の舞台出演経験も多い田中は「毎回どうキャラクターと寄り添うか、とても悩む。2.5次元舞台の魅力は、ゲームやアニメでは見えなかったキャラクターの関係性などを生で見られること。原作の裏で俺たちはこうやって時間を生きてきたということを表現できるのが素敵だと思う」と語ってくれた。そして、「たくさんの方が愛している作品なので、その期待を上回るような作品にしたい」と思いを述べた。公演は7月10日(水)から15日(月)までの全10公演。脚本・錦織伊代、演出・松崎史也。出演は田中と國島のほか、糸川耀士郎、越智友己、古谷大和、橘りょう、青木一馬、輝山立、丸山ナオ、杉江優篤、高本学、桜庭大翔、榊原徹士、竹井未来望、阿瀬川健太、佐藤和斗、瑞野史人、高橋凌。チケットぴあでは現在先行先着販売を実施中。チケット一般発売は6月8日(土)10時より。取材・文:五月女菜穂
2019年06月07日いまや日本の夏の風物詩となっているミュージカル『ピーターパン』。6月4日、10代目ピーターパンを務める吉柳咲良、22代目フック船長を演じるEXILE NESMITHらが登壇し、製作発表会見が行われた。【チケット情報はこちら】1981年に榊原郁恵がピーターパンを演じた日本初演から、今年で39年目。2017年に13歳の新人にしてピーターパンに抜擢された吉柳咲良も、今回で3度目の主演となる。「1年目のときは初舞台で、何もわからないままガムシャラに突き進んでいっただけだった」と振り返りながら、「今年は3年目。ダンスや歌、フライングの細かいところまで目を向けられるようになってきたなと思っていますし、ピーターパンに対する思いも深まってきた。今年で15歳になり、1年目の時よりも大人になっていますが、子ども心を忘れずに、ピーターパンとしての存在感を舞台で出せるように頑張りたい」と意気込みを語った。ピーターパンと戦うフック船長は、EXILE NESMITH。会見ではすでにフック船長としての迫力ある扮装姿を披露したが、本格的なミュージカルはこれが初挑戦。「以前からずっとチャレンジしたいと思っていたことが、今回、素晴らしい皆さまに囲まれて実現できることを嬉しく思います。ミックスの自分がこういう役をやることにも意義があるし、LDHの後輩たちにもこういう場所があるんだということを示せるのかなと思っています。自分なりにフック船長をやらせていただいて、(この先に)繋いでいきたい」とこちらも意気込み十分だった。演出を手掛けるのは、近年ヒット作を連発し、今年1月にはロンドンで演出家デビューも果たした藤田俊太郎。「0歳児から見ることのできるこの作品は、たくさんの“初めてミュージカルを観るお客さま”がご観劇なさいます。お客さまがこの作品を観たことで、これから一生ミュージカルを見ていきたいと思うのか、責任は重い。そう思っていただけるような作品を作り続けたい」と熱く話す。共演はほかに河西智美、宮澤佐江、入絵加奈子、久保田磨希ら。昨年春から芸能活動を休止していた宮澤はこれが復帰作となるが「1年分溜めたパワーをステージにぶつけたい」と語っていた。公演は7月21日(日)から28日(日)まで彩の国さいたま芸術劇場 大ホール、8月2日(金)から5日(月)までカルッツかわさき(川崎市スポーツ・文化総合センター)ホールほか、全国各地で上演される。チケットは発売中。
2019年06月06日再々演となる、THE CONVOY SHOW vol.37『星屑バンプ』。歌、ダンス、タップのパフォーマンスと心躍る物語が人気の本作に出演する、今村ねずみ、瀬下尚人、トクナガクニハル 、本田礼生、伊藤壮太郎、加藤良輔、バーンズ勇気の7名が登場。作品愛と互いへのリスペクトにあふれた彼らの声をここにお届け!【チケット情報はこちら】「今回、再々演できることがすごく嬉しい。毎回、キャストが異なるのでそれぞれにちがう作品になっているし、全員が対等な関係でいられて、好きだ!という熱を出せることがとても楽しい」(瀬下)「常に新作のつもりで演っているので、僕は『星屑NEWバンプ』って呼んでます(笑)。今回はトクちゃん(トクナガクニハル)と勇気(バーンズ勇気)が入ってくれて、より新たな作品になります」(今村)「またできるんだとガッツポーズしました!」(本田)「演者としても好きな作品なので、またお届けできるのが嬉しい」(伊藤)「前回は初参加で毎日、必死過ぎました。だから、もう一回、挑戦できることが驚きで楽しみでもあります」(加藤)前作からの出演者が喜びを語る一方で、初参加の出演者も意気込みを明かす。「1度はこの道を離れたこととか台本を読んで自分と重なる部分がいっぱいありました。ジャズダンス、タップダンスは初の挑戦なのでわくわくしています」(バーンズ)「54歳新人のトクナガです(一同笑い)。この作品は誰もが共感できて、大げさでなく人生のバイブルのような物語なので、出演してよかったと実感したいです」(トクナガ)年齢もキャリアもばらばら。そこで、後輩から見た先輩たちの印象をたずねると、すかさず今村たちが「ちょうだい、ちょうだい!」「いいこと言ってね!」と反応、笑いが起こる。実にすてきなカンパニーだ。「皆さんは僕にとってのヒーローで理想です。カッコイイ姿もボロボロの姿も全部、すごく憧れます」(本田)「ファミリーのような感覚。厳しいことも言われますがとてもリラックスできる。そんな環境の中で、毎日必死について行っています」(バーンズ)「毎日、遊びを習っている感じがしています。本気で遊んでいることでなにかが生まれている、その姿を見せてもらっているのがすごい!」(伊藤)「常に全力で楽しむ姿がとにかくすてきで、おもしろくて……うーん、言葉が追いつかない……だから、1度、稽古場に来てほしいです!」(加藤)最後にひと言をいただいた。「たくさんの星があるなかで、同じ星を目指そうとする者たちが出会っちゃったのがこの舞台です。一緒にその星を見つめてください」(今村)THE CONVOY SHOW vol.37『星屑バンプ』の東京公演は銀座・博品館劇場にて6月5日(水)から12日(水)まで、名古屋公演はテレピアホールにて6月15日(土)から20日(木)まで上演。
2019年06月05日歌舞伎俳優の中村獅童とバーチャルシンガー初音ミクがコラボする「超歌舞伎」が8月、京都・南座に初登場。公演に向けて、出演の中村獅童、澤村國矢が意気込みを語った。「南座新開場記念 八月南座超歌舞伎」チケット情報2016年よりニコニコ超会議で上演を重ねてきた「超歌舞伎」は、NTTによる最新の情報通信技術を用いて行う新たな歌舞伎興行。今回の「八月南座超歌舞伎」は、『超歌舞伎のみかた』、中村獅童と初音ミクによる新作舞踊『お国山三 當世流歌舞伎踊(いまようかぶきおどり)』、今年のニコニコ超会議で上演した『今昔饗宴千本桜(はなくらべせんぼんざくら)』を新たな演出でお届けする三本立て公演。またリミテッドバージョンでは『今昔饗宴千本桜』のみを、別配役で上演する。初演より出演している獅童は「歌舞伎を観たことがない若者を振り向かせることが中村獅童の使命と思っておりますので、伝統を守りつつ革新を追求するスタイルはこれからも貫き通したいです。今まで歌舞伎を観たことがないような方々も、いつの間にか“大向う”の掛け声が上手になってきていて。NTTさんにも“電話屋”という屋号ができました(笑)。毎年最後には燃え尽きて、何とも言えない感動が味わえる。南座でもそんなお芝居を作りたいと思っております」と力を込める。同じく初演より獅童、初音ミクの敵役として共演している國矢は「超歌舞伎の1か月間公演は初めてなので、どんな公演になるのか楽しみです。それとともに、リミテッドバージョンでは獅童さんの役を演じますので、獅童さんがお客様を燃え上がらせたあの魂を引き継いでやらなければならないプレッシャーに押し潰されそうですが、全身全霊で臨みたいと思います」と意気込みを語った。初の劇場公演となる今回、獅童に構想を尋ねると「初音ミクさんと宙乗りがしたくて、今ミクさんを説得しているところです。ご本人のお返事待ちです(笑)」とにっこり。通常の歌舞伎公演とは異なる、映像とコラボした歌舞伎ということでの見どころも多い。「回を重ねるごとにデジタルも進化している。ミクさんの踊りもどんどん上達されています(笑)。陰で並々ならぬご努力をされているのを見て、我々も身が引き締まります。また、歌舞伎ならではの色彩美には僕もすごくこだわっていて。日本特有の伝統色や歌舞伎のお化粧法も楽しんでいただければと思います。お客様参加型の演目ですので、歌舞伎を観たことがない若い方はもちろん、いつも南座にお越しいただいているお客様にも一緒に盛り上がっていただけるとうれしいです」。南座新開場記念「八月南座超歌舞伎」は8月2日(金)から26日(月)まで京都・南座にて。6月5日(水)23:59までプリセール受付中。6月6日(木)一般発売。
2019年06月04日金管楽器、打楽器を中心とした60種類以上の楽器を演奏しながらミュージシャンがダイナミックに動き回り、ダンサーはカラフルな旗やバトンを操って演出。そんな空間で、独創的なアレンジにより生まれ変わったディズニーの名曲を魅せて聴かせる「ブラスト!:ミュージック・オブ・ディズニー」が今夏、33会場59公演を巡る全国ツアーを敢行する。石川直(パーカッション)、米所裕夢(トランペット)、リサ・チャペル(トロンボーン)が取材に応じてくれた。【チケット情報はこちら】2000年入団のベテラン、石川は「ブラスト!」の魅力を端的にこう話す。「例えるなら、お祭りに近い。お祭りの楽しさってトータルの雰囲気ですよね。多くの人が集まって夜店があってお囃子が聴こえて盆踊りして、みたいな。ピュアに音楽のみで聴かせるところもあれば、フォーメーションや統一美で魅せたり、いろんな良さが詰まっています」加えて、幕間のロビーパフォーマンスや終演後のキャストとのミート&グリートも名物のひとつ。上演中はもちろん、劇場に入ってから出るまで「楽しい!」がギッシリ詰まっているのが、長きに渡る人気の理由だ。前回(2017年)はなんと47都道府県ツアーを成功させ、日本での浸透度や人気の高さを物語る。ディズニーとのコラボレーションは今回で3回目。演奏曲には今年公開された『メリー・ポピンズ リターンズ』の楽曲も含まれ、様々なアップデートがなされた最新版だ。なお、日本での人気の立役者といえる“ミスター・ブラスト!”石川直は、今回で退団が決まっている。「すごい悲しい……。彼のドラムパフォーマンスは大きな一部だし、ステージ以外でも、国籍の違うキャストの間に入ってつないでくれたり、たくさんサポートしてもらいました」(チャペル)「最初に聞いたときはショックでした。中学生で「ブラスト!」を知って目標とする中で、直さんという存在がなければ絶対にここまでやってこれなかった」(米所)惜しむ声を受けて石川は、「『ブラスト!』は仲間たちから学べることがとても多くて、僕にとっていい勉強の場でした。でもパフォーマーとしての僕個人がやりたいこと、できることの中で、ここで出せているのはごく一部。自分に見えているほかの世界を、今後は本腰を入れて形にしていきたいという気持ちです」と、率直な思いを語った。そして、そんな石川が思う「ブラスト!」の“効用”とは。「『ブラスト!』はアメリカと日本が手を取り合った芸術作品。お客さんと触れ合うことで劇場にいいエネルギーが膨らんで、それをお客さんが持ち帰り、周囲に伝染して広がっていく……これ、社会の浄化作用だと思うんですけどね」東京公演は8月20日(火)~23日(金)・27日(火)~30日(金) 東急シアターオーブにて。チケットは発売中。取材・文:武田 吏都
2019年05月31日長らくパリを拠点に活躍していた女優・作家の岸惠子が、今年も2部構成のトークショー『ひとり語り輝ける夕暮れ』を開催する。第1部の一人芝居『わりなき恋』は25万部以上を売り上げた自身の同名小説が原作。今年は2015年の初演から魅力を凝縮した、新演出版をお届けする。国際線の機内で偶然隣り合わせた男女の恋を描いた本作は、自身の体験をもとに創作したと明かす岸惠子。その時、隣席の男性から「パリを経由しプラハへ行く」と告げられた岸の脳裏には、ある光景が蘇っていた。岸惠子 ひとり語り「輝ける夕暮れ」チケット情報1968年、各地で学生紛争が頻発するなど世界は革命の時代にあった。30代だった岸はチェコの民主化運動を取材するためプラハへ飛んだ。「その男性も当時『プラハの春』と呼ばれたドプチェクの革命に胸を熱くした大学生で、プラハの春は僕にとっても青春の大事な1ページですと仰ったのです」。それまで小説の主人公像を掴みきれずにいた岸は、この偶然の出会いからインスピレーションを得て『わりなき恋』を上梓した。「認知症や健康についてのテレビ番組が多い中、赤ちゃん言葉で介護されている老人の映像を目にした時は、どんな人間にも尊厳はあると憤りを感じました。人生100年の時代にも、ぱぁっと虹が立つほど華やかな人生の夕暮れ時があっていい。この公演名には、黄金色の夕映えが見れたらいいなとの思いを込めました」。第2部は、初めて訳したおとなの絵本『パリのおばあさんの物語』の話から、世界で活躍する岸ならではの彩り豊かな人生観を、ユーモアたっぷりに語り尽くす。「先日は私の散歩道にあるノートルダム大聖堂が火災に見舞われ、スリランカでも大規模なテロがありました。世界は刻々と変化しているのに日本人は割合にのんびりしていて、そこが良くもあり腰砕けな部分でもある」。24歳でパリに渡って以降、岸は積極的に世界中で取材と冒険を重ねてきた。「私もぺしゃんこに失敗する時だってある。ただ、この冒険心と行動力がなかったら今ごろ退屈なだけの老後を送っていたと思います。男女問わず特に若い方には、世界情勢にもっと敏感になってほしい」。同時に、日本人はもっと“自分を思いやった方がいい”とも。「人が雑に考えた常識の枠にはまらず、自分で考えて行動する。自分の考える自分を生きた方がいいと思います」。年齢を感じさせない熱い語り口とスマートな身のこなし、気品溢れるオーラは健在だ。5月初旬には新作エッセー『孤独という道連れ』が発売された。「ひとりの生活は不便や寂しさもありますが、ひとりじゃないと味わえない自由や喜び、蜜のような甘さもある。そんな話もしてみたいなと思います」。大阪公演は6月11日(火)フェスティバルホールにて上演。チケット発売中。取材・文:石橋法子
2019年05月31日ビートルズの創成期を描いた舞台「BACKBEAT」が5月25日に開幕。それに先がけフォトコール(プレス向け撮影会)と囲み取材が行われ、取材には戸塚祥太(A.B.C-Z)、加藤和樹、辰巳雄大(ふぉ~ゆ~)、JUON(FUZZY CONTROL)、上口耕平、夏子、鈴木壮麻、尾藤イサオ、翻訳・演出の石丸さち子が出席した。【チケット情報はこちら】本作は、1994年に公開された伝記映画『バック・ビート』をイアン・ソフトリー監督自身が舞台化した作品の日本初演。ビートルズ結成時のベーシストで、デビュー目前に21歳で夭折したスチュアート・サトクリフ(戸塚)を中心に、親友ジョン・レノン(加藤)、ポール・マッカートニー(JUON)、ジョージ・ハリスン(辰巳)、ピート・ベスト(上口)、そしてスチュアートの恋人となる写真家アストリッド・キルヒヘル(夏子)ら若者たちの揺れ動く心を繊細に描く。今回の見どころのひとつは約20曲にものぼる舞台上での生演奏。しかし演奏ははじめ、戸塚が「絶望からスタートしたといっても過言ではない」と明かすほどのレベルから始まったそう。しかしこの日、前半の2シーンが披露されたフォトコールでの演奏は抜群の仕上がり。音楽が楽しい!5人で演奏するのが嬉しい!という思いが真っ直ぐに伝わる姿そして音を届けた。そこに至るまでをJUONは「だけど初めて5人で音を出したとき、すぐグルーヴしたよね」、上口も「初めての会話が“音”だったのでそれがすごくよかった」と、このメンバーだからこそ生まれた音があったと振り返る。さらに辰巳も「稽古の間ずっと(5人が)近くにいた。ビートルズさんの当時の映像を観ても常に距離が近いけど、僕たちも近い距離感でワイワイ作品をつくっていった」と本作で描かれるビートルズの姿に自分たちを重ね、笑顔を交わした。そうやって生まれた5人の演奏を加藤は「ライブなので何が起きるかわからない。でもそのライブ感はこの作品でしか味わえないものなので、そこをぜひ体感してほしい」と語る。そんな5人を翻訳・演出の石丸は「ビートルズは目指すには大きすぎるのですが、私たちは観客にビートルズを伝える架け橋。その架け橋は立派にできあがっています」と絶賛。1966年にビートルズの初来日公演で前座を務めた尾藤も「皆さんの成長がすごくて驚きました。ビートルズに負けない!」と太鼓判を押した。石丸が「長いこと演劇をやっていますが、こんな作品は観たこともないし、つくったこともない。細かなみんなの努力やコミュニケーションがあって、こんな素敵な作品が生まれた。このメンバーを誇りに思います」と語る本作は、6月9日(日)まで東京・東京芸術劇場 プレイハウスにて上演後、兵庫、愛知、神奈川を巡演。取材・文:中川實穗
2019年05月28日5月・6月に全国を巡る 岸惠子 ひとり語り『輝ける夕暮れ』が5月18日に開幕。それに先がけて囲み取材が行われた。第1部で一人芝居『わりなき恋』(朗読劇)の上演、第2部でフリートークを行う今回。第1部の『わりなき恋』は、岸が2013年に発表しベストセラーになった小説で、一人芝居は2015年に初演、2016年に再演。今回はそれを「要になる場面を編集し直して50分にまとめてやることにしました」(岸)と、新演出・凝縮版で上演する。「私がこの小説を完成させたのが80歳、今は86歳です。テレビで高齢者の惨めな様子ばかり映すことに憤りが湧いて、“人生の夕暮れ時に、偶然でも夢でもいいから、パーッと虹が立つような美しい景色がないかしら”と思って書きました」と執筆のきっかけを振り返る。描かれているのは、成熟した女の愛と矜持の冒険譚。生々しい描写もあるが「高齢者の恋にはさまざまな障害があるんですよ。男にも女にも身体の変化がありますからね。私はそういうものから逃げずとことん書くぞという覚悟で、パリでは産婦人科の先生数名に話を聞き、日本でもいろんな取材をしました。今日もそういう場面はあります」と明かす。そしてラストは「出会いがあれば必ず別れがある。私はその別れを、清々しく美しく、私流の美学で飾りたいと思いました。我ながら成功したように思っているので、それを汲み取っていただけたら嬉しいなと思います」そして第2部はフリートーク。話す内容については「今朝まで悩んでたんです」と笑顔をみせ、「私はこの5月2日に『孤独という道連れ』という本を出したのですが、出版社の方に“若いときや女盛りのときのあなたじゃなくて、今老いていく最晩年の日々を書いてほしい”と言われ、16編のエッセイを書きました。今回はその中の話をしようと思っています。でもどの話をするかは…まだ迷ってます(笑)」と話した。舞台について「その都度、ドキドキしてやっています。でも舞台っておもしろいですよ。お客さんが湧いてくださったりするとすごくしあわせです」と語る岸が、第1部、第2部でさまざまな表情を見せる 岸惠子 ひとり語り『輝ける夕暮れ』は、5月18日の東京・新宿文化センター 大ホールを皮切りに、愛知、埼玉、千葉、大阪、神奈川など全10会場を巡演。取材・文:中川實穗
2019年05月21日熊川哲也のKバレエがおくる『シンデレラ』は2012年に初演された。誰もが知るシンデレラの物語を、美しさと上質なユーモア溢れる演出で見せる今舞台が5月24日(金)から上演される。その公開リハーサルでは、今シーズンにプリンシパル・ソリストとして入団し、初主演に抜擢されたふたりの稽古シーンがお披露目された。【チケット情報はこちら】シンデレラを演じる成田紗弥は、韓国のユニバーサル・バレエ団から移籍。芯の通った身体と儚げな表情の、健気なシンデレラだ。1幕より『シンデレラと継母たち』の場面では義姉妹(杉山桃子、高橋怜衣)と義母(ルーク・ヘイドン)にこき使われ、働かされる。布、ほうき、鞄、ドレスなど小道具の多いシーンで、段取りが難しい。指導の浅川紫織が「火を焚く時はオーバーに全身を使って小道具を見せて」と示すと、とたんに客席からも見やすくなる。自然な動きを心がけ、物語を繋いでいく浅川の指導を受け、成田は「振付を覚えるのと、表現力をつけるのが大変」とくらいついていく。働かされ耐え忍ぶシンデレラだが、ひとりになると亡き母親の形見を取り出し、幸せだった思い出に浸る。その時間だけは、愛された少女のように軽やかだ。成田の持つ儚さとあいまって、幸せと寂しさを同時に表現する。2幕より披露されたのは『シンデレラと王子のパ・ド・ドゥ』。矢内千夏の明るいシンデレラに対し、高橋裕哉の王子は少し控えめで初々しい。指導する遅沢佑介が高橋に「相手の体重が右肩に乗るまで待って」「ここはシンデレラの動きに自分の動きを重ねて」と、身体の状態を具体的に示していく。ハンガリー国立バレエ団から移籍したばかりの高橋は「的確にステップを押さえていかないと綺麗に見えない」と、演技よりもまずひとつひとつの振りを身体に落とし込んでいく。高橋の身体が安定感を増せば、矢内が輝いて見える。そのシンデレラを見つめて嬉しそうに笑う王子。ふたりの表現がなめらかに重なり合い、恋人たちのうっとりとした場面ができあがっていく。本番にはほかプリンシパルの宮尾俊太郎、中村祥子らが出演。4人のシンデレラと4人の王子によるKバレエ『シンデレラ』は、5月26日(日)まで東京・東京文化会館、5月31日(金)から6月2日(日)まで東京・Bunkamura オーチャードホール、6月4日(火)に静岡・アクトシティ浜松、6月6日(木)に大阪・フェスティバルホールにて上演。熊川独自のアイデアが光る夢のような『シンデレラ』の世界へ誘う。取材・文:河野桃子
2019年05月20日舞台を中心に活動するジャニーズのふぉ~ゆ~が、6月7日(金)22:24~23:24放送の音楽番組『My Anniversary SONG』(BS朝日)に出演。テレビ初披露となるふぉ~ゆ~オリジナル曲『Everything 4 You』をお披露目。懸命な歌とキレのあるダンスでお届けする。【チケット情報はこちら】『Everything 4 You』はKinKi Kidsはじめ多くの作品を手がける堂島孝平の作詞作曲。「どうしても堂島さんにオリジナル曲を作って欲しい」というメンバー全員の妄想から夢が叶った。また、メンバーそれぞれがJr.の頃にバックで踊っていた思い出の楽曲をスペシャルメドレーで披露する。トークでは、さまざまな楽曲にまつわるエピソードを振り返っていく。MC高嶋政宏からのきわどい質問にもガチで答えるふぉ~ゆ~の4人。メンバーの福田悠太、辰巳雄大、越岡裕貴、松崎祐介それぞれの個性が炸裂!そして番組のレギュラーの座を狙うふぉ~ゆ~にミュージシャンのKがビビる!?歌もトークも盛りだくさんのエンターテイメントぶり。4人の仲の良さや関係性も存分に伝わる、ふぉ~ゆ~丸わかりの贅沢な1時間だ。番組出演にあたってメンバーの4人は「楽曲のリリースをしていないのに音楽番組に出演だ!」と大はしゃぎ。ふだんは舞台出演が多く、ジャニーズの中でもダンスと演劇で活躍する唯一無二のグループとして着実に技術を磨いている彼ら。各メンバーが単独舞台主演などをつとめながら、年に1度は4人そろって演劇に挑む。2019年は7月に『SHOW BOY』を上演予定だ。『SHOW BOW』は大型カジノ豪華客船を舞台にした、セクシーでショッキング、マジックあり、歌ありのオリジナルダンス劇。4人の役は、ケガで引退した実力派ダンサー(福田悠太)、失敗ばかりのマジシャン見習い(辰巳雄大)、全財産を失ったギャンブラー(越岡裕貴)、中国人マフィア(松崎祐介)。ゴージャスな船上で、4人の男たちの4つの物語がはじまる。ほか、キャバレーの支配人役に神田沙也加、主演ダンサーに秋山大河(MADE/ジャニーズJr.)、ショーのマドンナに樋口日奈(乃木坂46)らが出演。ゴージャスなショータイムと、ハートウオーミングな物語をお届けする。脚本は登米裕一、演出はウォーリー木下。上演は7月10日(水)から28日(日)まで、東京・シアタークリエ、8月3日(土)名古屋市公会堂にて。チケット発売は5月19日(日)午前10時より。テレビに音楽に舞台にダンスと、さまざまなエンターテイメントを存分に楽しむふぉ~ゆ~。今後の活動から目が離せない!文:河野桃子
2019年05月17日デュッセルドルフとデュースブルグの2か所に本拠地を置くライン・ドイツ・オペラのバレエカンパニー、バレエ・アム・ラインの初来日公演が決定!演目は作曲家・チャイコフスキーの中でも特に有名なバレエ作品である『白鳥の湖』で、9月20日(金)・21日(土)東京・オーチャードホール、9月28日(土)兵庫県立芸術文化センター KOBELCO 大ホールにて上演される。バレエ・アム・ライン「白鳥の湖」チケット情報バレエ・アム・ラインでは、スイス出身の振付家であるマーティン・シュレップァーがチャイコフスキーの原典版音楽(通常バレエに使用されているのは変更、削除、他曲が挿入され、ほぼ30%が原典版と異なる)を使用し、台本は世界中で上演されている“プティパ・イワーノフ改訂版”ではなく改変前のオリジナルを使用。『白鳥の湖』おなじみの白タイツやチュチュを衣装に取り入れず、陰影を際立たせる演劇的要素の強い照明や多国籍なダンサーたちの個性を生かした振付で、これまでにないスタイリッシュで力強くスピード感のある新しい『白鳥の湖』を創り出した。このシュレップァー版『白鳥の湖』は2018年6月、ドイツで世界初演を迎え、その個性的なダンスをはじめ、衣装や照明、美術、そして“古典”と“モダン”を融合させた斬新な演出が話題を呼び、チケットは即日完売、連日観客を熱狂させ大成功を収めた。ヨーロッパで強烈なインパクトを与え続け、いま最も注目されているバレエの革命集団のが創り出す“究極のアート”の世界をぜひ体感してほしい。チケットは5月25日(土)10:00より一般発売開始。一般発売に先駆け、東京公演は5月24日(金)23:59まで、兵庫公演は5月23日(木)23:59まで先行先着プリセール実施中。
2019年05月17日鉄道の沿線を“擬人化”した人気コミックの舞台シリーズ、ミュージカル『青春-AOHARU-鉄道』最新作が5月9日より東京・品川プリンスホテル クラブeXで開幕した。副題は「すべての路は所沢へ通ず」。“西武鉄道”に焦点をあて、西武グループの沿線達が一堂に介するスピンオフ作品だ。【チケット情報はこちら】西武グループは全員金髪、全員青制服。似たビジュアルだからこそ出演者らは「よりキャラを出していきたい」(KIMERU)、「個性がたくさん。みんな違ってみんないい」(木村敦)と意気込む。その言葉どおり舞台上ではそれぞれが個性を暑苦しいほど主張し、とても勢いあるミュージカルとなっている。公演は、原作漫画と同じく日常的なエピソードが折り重なっていく構成。「30個以上のシーンでできています。何を見させられているんだろうという新しい感情が湧くのでは……普通の舞台とは違う作り」(滝口幸広)。ひとつひとつは、鉄道グッズの開発、ホワイトデーの出来事など、彼らの賑やかな日々を描いている。本人達は非常に真剣だが、どれもくだらなく笑えるものばかり。エピソードすべての根底に流れるのは、揺るぎない“会長愛”。全員が西武グループ創業者を『会長』と呼び神のごとく崇拝する“会長愛”を持っている。ことあるごとに「会長万歳!」と叫び、観客にも叫ばせる。「前作までは、西武鉄道3名で万歳をしていました。今回は全員が西武。会場に万歳を巻き起こせたら」(橋本汰斗)。「参加型の舞台です。「万歳!」「会長!」と一緒に叫んでほしい」(森山栄治)。「西武グループに浸っていただければ」(馬場良馬)。12名の金髪青服の鉄道達に盛り上げられ、劇場は「万歳!」の嵐に包まれていく。しかも場所は西武グループが運営する品川プリンスホテル内。熱気に揉まれ、一体になって西武グループを崇め称える異様な空間となる。「万歳!」と叫ぶ間も、30個のエピソードが怒濤のように繰り広げられていく。するといつの間にか、それぞれの関係の変化や悩みが見えてくる。「おのおのの関係性が面白い。個性的なんだけれど、統一されている」(渡辺コウジ)。そんな彼らを観ていると、最後には、ちょっと感動してしまったりする。「個性の強い西武グループを見て、西武愛に目覚めていただければ」(岩城直弥)。擬人化され、感情豊かな沿線達を見ているうち、いつの間にか西武鉄道が好きになってしまう舞台だ。上演は5月19日(日)まで。文:河野桃子
2019年05月17日作・作詞・楽曲プロデュースを森雪之丞、演出を白井晃が手掛ける新作ミュージカル『怪人と探偵』が、今年9月に神奈川・KAAT神奈川芸術劇場にて上演される。本作は、江戸川乱歩作品を原案にしたオリジナルストーリーで、大怪盗・怪人二十面相を中川晃教、名探偵・明智小五郎を加藤和樹、ヒロイン・北小路リリカを大原櫻子が演じる。大原に話を聞いた。【チケット情報はこちら】脚本を読んだ感想を「怪盗と探偵の駆け引き、男女の関係、どちらもハラハラする作品です」と楽しそうに話した大原。自身が演じるリリカについて「ある背景があって、ただの品のいい令嬢ではない。清純でありながら泥沼の世界も知っているような女性です」と語る。怪人二十面相を演じる中川と明智小五郎を演じる加藤の印象を聞いてみると、「実は小学生の頃にテレビで中川さんが歌っていらっしゃるのを観て、本当に素敵な歌声で“うわ、この人といつか歌いたい”と思ったんです。だから中川さんと共演できるのが夢のように嬉しくて!」と待望の共演なのだそう。一方、加藤は「以前イベントでご一緒させていただいたのですが、そのときに先輩方に“和樹~!”ってかわいがられている加藤さんの印象が強いんですよ。だから今回、ビジュアル撮影の写真を観て“あれ!カッコいい!”って(笑)。フランクな加藤さんしか知らなかったので、素敵って思いました」と、怪人と探偵同様どこか正反対ともいえる存在のよう。演出を務める白井とはミュージカル「わたしは真悟」(2016)以来のタッグ。「『わたしは真悟』で白井さんのことを大好きになりました。心を委ねられるし、本音をぶつけることができる方です」と全幅の信頼を寄せる。作・作詞・楽曲プロデュースを務める森とは、大原が出演した新感線☆RS『メタルマクベス』disc2(2018)の公演中に話をしたといい「公演を観て“櫻子ちゃん、俺ちょっと書き直すわ”と言ってくださって。だからこそ脚本が楽しみでしたし、実際に読んで、嬉しいなとも感じました」と明かす。音楽は本作ならではの布陣。テーマ音楽を「東京スカパラダイスオーケストラ」が書き下ろし、劇中の楽曲の作曲は「WEAVER」の杉本雄治が手掛ける。「テーマ音楽を少しだけ聴かせていただいたのですが“きたきたきたきた!”って感じるような音楽で、ハラハラドキドキしました!」。KAAT2019年度のラインアップ発表会で森も「“この作品から日本のオリジナルミュージカルの歴史が始まった”と言われるような作品にしたい」と話した本作。果たしてどんな作品が誕生するのか楽しみに待ちたい。公演は9月14日(土)から29日(日)まで、神奈川・KAAT神奈川芸術劇場にて。ぴあでは5月26日(日)23:59まで二次抽選受付中。取材・文:中川實穗
2019年05月17日昨年、兵庫で大好評を博したリーディングシアター『レイモンド・カーヴァーの世界』が今年は兵庫と東京で上演される。昨年から続投の手塚とおる、新たに仲村トオル、矢崎広、平田満を迎え、公演日ごとに組み合わせを変えながら各回2名が出演。村上春樹が翻訳した、レイモンド・カーヴァーのシュールでミステリアスな短編を朗読する。「大先輩と同じ座組で大変光栄に思います」と恐縮する唯一の30代、矢崎広。どうしようもない男女のすれ違いや破綻を描いた作品群の中から、当日は『収集』『菓子袋』の2編を物語る。リーディング・シアター「レイモンド・カーヴァーの世界」チケット情報カーヴァーは80年代のアメリカ文学界にカルト的影響を与え、ピューリッツァー賞の候補にもなった作家であり詩人。『収集』は失業中の男と不在の妻を訪ねてきた見知らぬ男との何気ない会話を描写する。一方の『菓子袋』は離婚した父を成人した息子が訪ねたときの回想録だ。矢崎はレイモンド・カーヴァーの世界に初めて触れ、その“分からなさ”に早くも虜になったという。「これは原作者と訳された村上春樹さんおふたりのすごさだと思います。例えば『菓子袋』なら話している父親や聞いている息子の顔、菓子袋を持つ手の表情までが浮かんでくる。描写力のすごさが想像力を掻き立て、なぜ父はこのタイミングで息子にこの話をしたのか、とか。謎解きの要領で読んでいくと最後は迷路に迷いこむ。その感覚が面白いですね」。出演作は「血が騒ぐか否か」で見極めるという、デビュー15周年の矢崎広。近年はミュージカル『ジャージー・ボーイズ』、『ライムライト』など注目作への出演が続き、存在感を増している。「年々演じる役の大きさに追い付け追い越せという思い。同時に役が付くこと自体有り難いことなので。今の自分はどんな役でも“やってやるぞ!”という気持ちです」。今回も気合十分に挑むつもりだ。「本作への出演が決まると、知人から『やるんだってね。がんばってね。いや、社交辞令じゃなく本当にがんばってね!』と、少し怖くなるぐらいのテンションで激励を受けました(笑)。レイモンド・カーヴァーに思い入れの強い方が他にもたくさんいることを実感したので、その方たちの思いにも応えたいと思います」。カーヴァーは中高年の悲哀に敏感で、行間からその年代特有の悲しみや寂しさの余韻が溢れだす。演出の谷賢一いわく「人生に疲れたことのある聴き手の心にそっと寄り添う」リーディング公演となりそうだ。「読者に答えが委ねられるような作風でもあり、見終わった後に自問自答したり、隣席の方と語り合いたくなる。演劇が好きな方はもちろん、普段は興味がないという方も構えずにお越しいただければ、この楽しくも頭がむず痒くなるような世界から抜け出せなくなると思います」。公演は5月25日(土)・26日(日)兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール、5 月30日(木)から6月2日(日)まで東京・六本木トリコロールシアターにて上演。チケット発売中。取材・文:石橋法子
2019年05月14日今年旗揚げ39周年を迎える劇団☆新感線。感謝の気持ちを込めた“39(サンキュー)興行”の夏秋公演として、舞台『けむりの軍団』が2019年7月からTBS赤坂ACTシアターで上演される。13日、東京都内で製作発表会見が行われ、主演の古田新太や早乙女太一をはじめとする出演者、脚本の倉持裕、演出のいのうえひでのりが出席した。【チケット情報はこちら】物語の舞台は戦国時代。頭が切れる軍配士(古田新太)とずる賢い謎の浪人(池田成志)がひょんなことから嫁ぎ先から逃げ出した姫(清野菜名)を実家に送り届ける羽目になり、巻き起こる珍道中を描く。脚本を担当した倉持は、演出のいのうえから提案された当初のお題が、「黒澤明監督の『隠し砦の三悪人』と太宰治の『走れメロス』を合わせたような話」だったことを明かす。その分、黒澤明監督の映画を彷彿とさせるオマージュを盛り込んだといい、倉持は「前回(※2016年『乱鶯』)はシリアスな話だったが、今回はもう少し軽めで笑えるものにしようと心がけた」。「電話帳ぐらいの厚さがある」(池田成志談)というが、倉持作品らしい会話の妙が織り込まれていることだろう。また、演出のいのうえは「劇団員の“高齢化”が進んでいるので、年相応のものを作ろうと。最近のテレビでも映像でもなかなか見ることのできない、ちゃんとした時代劇をやりたい。骨太な人間ドラマが僕らなりに描けたら」と語った。これまでのケレン味溢れた“いのうえ歌舞伎”とはまたひと味違う、王道路線の娯楽時代劇になりそうだ。主演の古田は会見で「劇団員なので出ざるを得なかった」と話して会場の笑いを取りつつも、「これが自分の代表作になればいいと思う。ほぼ劇団員フルメンバーで出演をするので、劇団ファンの皆様にはぜひ見にきてほしい」と気合い十分なコメントをした。一方、新感線には6度目の出演となる早乙女だが、古田との共演は今回が初めて。「17歳の頃に初めて立たせてもらって10年。やっと古田さんと共演できるということが何よりもうれしい」と素直に共演を喜ぶ。「子どもの頃からの憧れ。古田さんと新感線からいろいろなことを学んだ。勝手に師匠だと思っている」と話していた。出演者は古田と早乙女のほか、清野菜名、須賀健太、高田聖子、粟根まこと、池田成志ほか。東京公演は7月15日(月・祝)から8月24日(土)まで。福岡公演は9月6日(金)から博多座で、大阪公演は10月8日(火)からフェスティバルホールで行われる。チケットは5月19日(日)午前10時より発売。ぴあでは東京公演の先着先行を5月14日(火)10時より受付予定。文・写真:五月女菜穂
2019年05月13日怪人二十面相と名探偵・明智小五郎が、昭和モダンなニッポンで華麗な対決を繰り広げる! 江戸川乱歩が生み出したキャラクターを主人公にした新作オリジナルミュージカル『怪人と探偵』がこの秋登場。二枚看板を務める中川晃教、加藤和樹に話を訊いた。チケット情報はこちらともにミュージカル界では欠かせない存在であるふたり。共演は2017年の『フランケンシュタイン』に続いて2度目だ。だが中川が「僕たちって共演は本当に『フランケンシュタイン』だけ!?」と驚くほど、仲が良い。「普段の和樹マンは……和樹君は(笑)、舞台に立っている時とは違う顔を持っていて、僕はそのニュートラルな彼に愛着がある。一緒になって遊んだり、ふざけたり、悩んだり、稽古含めて作品に対して費やす時間の抱き方が似ている気がするんだよね。そんなプライベートも活かせるような“最高の相手役”になれそう」と中川。一方の加藤は「僕からすると(中川は)大先輩だし憧れの存在。『フランケン~』の時は緊張でガチガチでした」と苦笑しながらも、「今はこうしてボケとツッコミみたいになっていますが、そういう関係性になっていることが僕にとっては奇跡的なこと。アッキーさんの歌にとにかく惚れているし、その上での芝居の作り方、さらに時として演技を超える感情がほとばしるところもすごい。今回はどんなアッキーさんが見られるのか、非常に楽しみにしています」と、こちらも共演を心待ちにしている様子だ。演じるのは、中川が怪人二十面相、加藤が明智探偵。森雪之丞による脚本は「笑えるポイントもあり、面白く読み進めていったのですが、「えっ」となるところもある。何が正義か、何が真実かが曖昧になって、人の気持ちも行動も表裏一体なんだなと思わせられます」と加藤。続けて「演出の白井晃さんも、ミュージカルとしてのエンタテインメント性はなくさずお芝居を作りたいと仰っていました。その中で、芯となる僕らふたりの奥底にある本音や本質が見え隠れしたら面白いですよね」と期待を語った。テーマ音楽は東京スカパラダイスオーケストラが担当し、作曲はWEAVERの杉本雄治が手掛けるのも話題。「日本のオリジナルミュージカルで、しかも江戸川乱歩の世界という日本独自のコンテンツ。乱歩の世界はどこか淫靡で、乱れ崩れていく美しさがあり、さらにそれを美しいと思う自分の心は美しいのか……というところまで考えさせられる。いくつも隠し扉があるような、捉え方によっていくらでも広がっていくような世界です。それをWEAVERの杉本さんのポップで面白い音楽と白井さんの繊細な演出でどう描かれていくのか。これらのピースがピタッとはまった時に、新しいオリジナルミュージカルとして、ワクワクとドキドキをお客さまに届けられるんじゃないかな」(中川)出演はほかに大原櫻子ら。公演は9月14日(土)から29日(日)まで、KAAT 神奈川芸術劇場 ホールにて。10月に兵庫公演も予定している。チケットぴあでは5月14日(火)23:59まで関東公演のWEB先行抽選「プレリザーブ」受付中。
2019年05月09日松本零士監修の元、原作にはない新しいストーリーで展開する「舞台『銀河鉄道999』さよならメーテル~僕の永遠」の大阪公演が5月10日(金)より梅田芸術劇場メインホールで幕を開ける。銀河鉄道999 劇場版公開40周年記念作品「舞台『銀河鉄道999』さよならメーテル~僕の永遠」チケット情報本作は、中川晃教扮する主人公・星野鉄郎が“人間狩り”で殺された母の仇を討つため、要塞時間城で機械伯爵への復讐を遂げるまでを描いた初演(2018年)の続編。「タダで機械の体にしてくれるという星を破壊したい」という新たな思いを抱いた鉄郎は、共に旅をするメーテルと女盗賊クイーン・エメラルダス姉妹の母、プロメシュームに立ち向かう。エメラルダス役は前作に続いて凰稀かなめが、メーテル役は木下晴香と伊波杏樹のWキャストが担う。そして鉄郎最大の敵となるプロメシューム役に挑むのは松下由樹。大阪公演を目前に控え、松下が作品への思いを語った。3月下旬、浅野温子に代わって急遽出演が決まった松下。4月20日の東京公演初日に向け、急ピッチでプロメシューム像を作り上げた。「原作とは違う結末であること、プロメシュームと娘たち、特にエメラルダスとの関係について深く描かれている中、意識したのは、プロメシュームは機械帝国の女王である前に、元は生身の人間で優しい母親だったということです。そこを大事にして親子関係を築けたらと思いました」。「稽古場では『いいね~、怖いね~』と、私への『怖い』は誉め言葉でした」と笑顔を見せる。鉄郎が対峙する惑星の命運を握るプロメシュームは、とにかく怖い存在なのだという。「プロメシュームの人物像を考えると必然なんです。怖いというよりも、本当に倒せない大きな壁。メーテルやエメラルダスにとって、プロメシュームを倒すことは母を倒すことになります。一方のプロメシュームも、星を守るという思いの強さたるや並大抵ではないだろうと。誰よりも高い壁になっていなければ、そこに立ち向かう鉄郎たちの機微も伝わらないと思うので、その気持ちの強さをキープしています」。永遠の命とは、機械の体であること、限られた命の美しさについて、といったあらゆるテーマで想像を膨らませることができるのも、本作の魅力だと語る。東京公演の間も劇中にふと、プロメシュームに思いを巡らせることもあったとか。プロメシュームの役作りをしている時に「彼女は機械人間だけど、そうならざるを得ない理由があって。でも、まだ心は残っているかもしれない…と思った時にはすでに運命が決まっていて。すごく切ない気持ちなりましたが、凰稀さん、木下さん、伊波さんたちと愛情が通じ合う親子関係を築き上げることができたと感じました。大阪公演でもそういう部分を見ていただければ」。「舞台『銀河鉄道999』さよならメーテル~僕の永遠」は5月10日(金)から12日(日)まで大阪・梅田芸術劇場メインホールで上演。出演はほかに、平方元基、前山剛久、矢沢洋子、美山加恋ら。チケット発売中。取材・文:岩本和子
2019年05月08日宝塚歌劇団が105周年を迎える今年、宝塚歌劇団音楽家・吉崎憲治が活動60周年、演出家・岡田敬二が活動55周年を迎え、記念公演『吉崎憲治&岡田敬二ロマンチックコンサート』が開催される。『朝日の昇る前に(華麗なるギャツビー)』『シトラスの風』など、昭和から平成の名曲を元トップスターと現役生が歌い継ぐ夢のステージだ。「宝塚人生が還暦を迎えました」と茶目っ気たっぷりに語る吉崎と、抜群の歌唱力を誇る元雪組トップスター杜けあきが見所を語った。「吉崎憲治&岡田敬二 ロマンチックコンサート」チケット情報現在、作曲数は3000曲を超える吉崎。杜はいつ会っても吉崎の印象が「全く変わらない」ことに驚く。先頃出演したOG公演『ベルサイユのばら45』でも共演者らと吉崎や今作の話題で盛り上がったという。「やはり現役であることが先生の活力の源ですね。私は退団して25年になりますが、曲のイントロが流れると一瞬にして当時に戻ってしまうほど、情熱を注いできたんだなと。OGのみんなとも、先生の曲をまた一緒に歌えるなんて幸せだね!と話しました」。現役時代は『おもかげ草子』『華麗なるギャツビー』『ヴァレンチノ』などの大作で吉崎とタッグを組んできた杜。「先生の曲は組曲のように起承転結があり、知らぬ間に役の心情に運ばれる。歌の中で役者として育てていただきました」。それは杜だったから、と応える吉崎。「こういう風に気持ちを動かしたいんじゃないかとか、杜さんにはこちらの心を動かすものがあった。彼女がまだ研1か研2の頃、何かのパーティーで柱の陰から先生と呼ばれたことがありました。下級生に話かけられることはまずない。でも愛嬌というか嫌味がないんです。この人は何かやるなと思ったら、トップスターになられました(笑)」。盟友・岡田敬二について吉崎は「発想力が抜群で岡田先生の歌詞には情熱がある」。また、演出家の意向を汲み作曲するのが座付き作曲家の使命とも。「今思えば曲のエネルギーで演者を含めこちらの世界に引っ張り込みたい気持ちもあったように思います。結局自分が燃えていないとダメ。みんなの情熱がぶつかってこそ愛される作品に仕上がります」。歌を通して青春を思い出してほしいと語る杜。「先生へのお祝いも含め、心を込めて歌います」。吉崎も錚々たる出演者の顔ぶれに「ありがたい」と顔をほころばせる。「お母様、叔母ちゃまになられたオールドファンには懐かしんでいただき、初めて観る方々には宝塚って良いな、観たいなと思っていただけることが願いです」。公演は6月1日(土)、2日(日)まで梅田芸術劇場メインホールにて上演。チケットは5月11日(土)一般発売。※吉崎の「吉」は上部が「土」、「崎」は右上が「立」が正しい表記。取材・文:石橋法子
2019年05月07日2011年、小池修一郎の脚本・演出により宝塚歌劇団でミュージカル化され、星組で初演された『オーシャンズ11』。2013年には花組で再演、共に好評を博した本作が、6年ぶりに宙組で上演。4月19日、兵庫・宝塚大劇場にて幕を開けた。本公演は第105期初舞台生40名のお披露目公演でもあり、幕開きには初舞台生が口上を行い、ショーではラインダンスを披露している。宝塚歌劇宙組 ミュージカル『オーシャンズ11』チケット情報原作は、ジョージ・クルーニー、ブラッド・ピット、ジュリア・ロバーツなど豪華キャストの共演で話題を呼んだ同名映画。ラスヴェガス最高のカジノホテルを舞台に、ダニー・オーシャンと10人の仲間が金庫破りに挑むスリリングなエンタテインメント大作だ。服役中の天才詐欺師ダニー・オーシャンは、仮釈放になると同時に、ラスヴェガスへと向かう。愛する妻テスをホテル王テリー・ベネディクトから取り戻すとともに、カジノから売上金を奪うために…。第一幕はダニーの仲間探しとベネディクトのたくらみを中心に展開。トップスター真風涼帆(まかぜ・すずほ)演じるダニーが仮釈放され、芹香斗亜(せりか・とあ)演じる昔馴染みのラスティーと再会。冷酷非情な裏の顔を持つホテル王ベネディクトにひと泡吹かせるべく、金庫破りの計画を実行する仲間を集めていく。役者がそろった第二幕は、カジノに潜入し、計画を実行していく様子が描かれる。カジノに張り巡らされたセキュリティを次々と突破し、ベネディクトを追い詰めていく様は痛快だ。“チョイ悪”ダニーをはじめ、ダンディでクールな男たちがズラリと並ぶ様に惚れぼれ。ダニー役の真風は、余裕のあるアダルトな色気をまとって魅せ、ラスティー役の芹香は頭のキレっぷりとユルさが絶妙。初演の新人公演でも同役を演じたふたりの息はピッタリだ。ダニーの妻テスを演じのトップ娘役星風まどかも、洗練された知的な女性を表現。ベネディクト役の桜木みなとは、表情や佇まいで繊細にヒールなキャラクターを作りこんでいる。ほか、カジノのディーラーやマジシャンなどの多彩なキャラクターを、個性豊かな宙組生が好演。個々の魅力、そして組としての魅力が存分に味わえるステージとなっている。兵庫公演は5月27日(月)まで上演中。その後、6月14日(金)から7月21日(日)まで東京宝塚劇場にて上演。東京公演のチケットは5月19日(日)より一般発売開始。取材・文:黒石悦子
2019年04月26日東啓介と青野紗穂が出演するNew Musical『Color of Life』が4月26日(金)に東京・相模女子大学グリーンホールにてプレビュー公演を行い、5月1日(水)に東京DDD青山クロスシアターにて開幕する。4月25日に行われたゲネプロを取材した。【チケット情報はこちら】本作は、脚本・作詞・演出を石丸さち子、作曲・編曲を伊藤靖浩が手掛けるオリジナルミュージカル。初演は2013年のニューヨークのオフ・オフ・ブロードウェイ演劇祭「Midtown International Theatre Festival」で、最優秀ミュージカル作品賞、最優秀ミュージカル演出賞、最優秀作詞・作曲賞、最優秀ミュージカル主演女優賞の4部門を受賞した。日本でも2016 年に初演され、今回は日本で3度目の上演。東と青野は共に初めての出演となる。対面客席になったことで舞台美術も大きく変わり、衣裳の雰囲気もこれまでのイメージとは違うものになった今作。そこで演じるのも、昨今『マタ・ハリ』『スカーレット・ピンパ―ネル』などミュージカル作品でその存在を示し始めた東と、『RENT』や『ソーホー・シンダーズ』などのミュージカル作品に出演する女優であると共にニューヨークアポロ・シアター「Stars of Tomorrow」で優勝を果たす実力派歌手でもある青野という、20代前半の輝き出したばかりのふたりだ。大震災によって画題を見失ってしまった和也(東)と、同性の恋人と死に別れたばかりのレイチェル(青野)が偶然飛行機で隣り合わせになり、惹かれ合い、ニューヨークの彼女の家で一緒に暮らし始めて……というストーリー。そこで描かれるのは、大きな事件というようなものではなく、和也のビザの有効期間(3か月)までの間に、ふたりが向き合って、自分自身とも向き合って、迷いながらも変化していく様だ。そのなかにあるのは、膨らんだりしぼんだりし続ける感情や刻々と進んでいく時間。それらを奏でるメロディは繊細で緻密で複雑で、東と青野は歌、身体、表情、息づかいで丁寧に丁寧に…けれど大胆さも重ねながら紡いでいく。和也の幸せな時間と、自身の根幹を揺るがす感情に戸惑うレイチェルの不安。隣同士で同じ時間を温かく過ごしながらも同じではない感情が、小さく交わす笑顔やふとした目線の動き、空気の揺れによって伝わってくる。対面客席ならではの客席との距離の近さが、そういった表現を実現しているのだろう。東と青野、そして石丸と伊藤がつくりだす、劇場でしか味わえない演劇の魅力がたっぷりと詰まった作品。ぜひ劇場で味わって!プレビュー公演は4月26日に東京・相模女子大学グリーンホール 多目的ホールにて。本公演は5月1日(水)から27日(月)まで東京DDD青山クロスシアターにて上演。取材・文:中川實穗
2019年04月26日客席への同時VR映像配信を演出に取り入れた“新たな演劇”、VR演劇『Visual Record ~記憶法廷~』がこの度誕生。吉倉あおい・岡本至恩の出演で、6月に上演されることとなった。本作で主演を務めるのが、人気ファッション誌にてモデルとして活躍し、初主演映画『ゆるせない、逢いたい』で国内外で高い評価を得た吉倉。舞台は3月に行なわれた朗読劇『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』以来の2度目となり、初の単独主演となる。被告人・樋口役は、ファッションモデルや大手TVCMなどで活躍しながら、『テラスハウス』軽井沢編にて“テラスハウス史上No.1イイ奴”として話題を呼んだ岡本が務め、そのほか、山口景子、小築舞衣、サトウヒカル、堤匡孝らが出演する。演出は、TAIYO MAGIC FILM主宰で、齊藤工監督作『Blank13』にて脚本も務めた西条みつとし。脚本は、緻密な脚本で演劇玄人をも唸らせるロジカル・コメディで有名な電動夏子安置システム主宰の竹田哲士が、今作のために書き下ろした。作品は、“モノ”が目撃した記憶(ヴィジュアル)を取り出すことが可能になった、近未来の裁判を描く。被告人・樋口(岡本)にかけられた殺人容疑を裁くために招集された門倉(吉倉)はじめ代表陪審員たち4名は、サイバー・テロによって、不完全にしか記録されていないさまざまなヴィジュアルをもとに隠された真実を追究していく。樋口を裁くのは門倉たち代表陪審員の4名と、陪審員である客席の“あなた”だ。あわせて、主演の吉倉、岡本のコメントが公開された。■吉倉あおい(門倉真澄役)近い将来もしかしたら……と思えてしまうようなSFミステリー。観に来てくださる方にも陪審員として一緒に推理して頂きます!VRでしかできない演出で1秒たりとも目が離せません。私自身舞台初挑戦になりますが、楽しんで臨めたらと思っています!■岡本至恩(樋口克哉役)樋口克哉役の岡本至恩です。今回、VR×演劇というとても新しい取り組みに参加できることを大変嬉しく思います!初めての舞台のお仕事で緊張もありますが、先日台本も読ませて頂き、企画、ストーリー共にとても面白く頭の中で思い浮かべてはワクワクしております!(笑)そのワクワクを少しでもリアルに皆さんにお伝えできるよう頑張りますので、応援よろしくお願いします!!VR演劇『Visual Record ~記憶法廷~』公演日程:6月27日(木)~7月1日(月) 全12公演予定劇場:中目黒ウッディシアターチケット料金:6,000円※他、各種割引あり。
2019年04月25日役者、ダンサー、振付師、演出家などパワフルな存在感で一目置かれる各分野の“ツワモノ”たちが集う、結成12年目のパフォーマンス集団junkiesista(ジャンキーシスタ)&junkiebros.(ジャンキーブロス)。2014年、好評を博したサスペンスフルなお葬式コメディ・ミュージカル『REizeNT~霊前って...~』で初の大阪公演を飾る。主宰の林希とは唯一無二の親友で、結成当初から歌唱指導としてカンパニーに関わるシルビア・グラブが、今作では客演として参加する。「最高にくだらなくて面白い、壮大なコントです。笑わずに歌えるかな…」と真顔で悩むシルビアに、意気込みを聞いた。junkiesista×junkiebros.PRESENTS「REizeNT~霊前って...~」チケット情報ある日、大富豪の女社長が殺された。犯人不明のまま執り行われたお葬式では家族、参列者、葬儀屋、住職に至るまで、全員が怪しい。疑心暗鬼の末、事態は思わぬ展開に…。「メンバーは、枠に収まりきらない爆発的なエネルギーを持った人たちばかり。あえて重い題材でコメディに挑むとか、『こんなミュージカル観たことない!』と思わせるのが狙い」とシルビア。これまで暴走族、キャバクラ、ゾンビなど作品の切り口も斬新だが、特筆すべきは毎回全曲が有名ブロードウェイ・ミュージカルのパロディだという点。今回も超人気作の曲をお経調にアレンジするなど、替え歌を多彩にスタンバイ。韓流ダンスボーカルユニットH5のリーダーHONEYら複数の“歌ウマ客演陣”を迎えたことで、初演より曲数を増量してお届けする。しかも、本編終わりにはショータイムが付くのも恒例で、ダンスファン、演劇ファン共に爆笑と感動を味わえる、一粒で2度美味しい公演となっている。林希とは20代の頃、玉野和紀作・演出・振付のミュージカル『THE GUEST SHOW』(1999年)で初対面し、「肝臓の強さが一緒で意気投合した」と笑うシルビア。後に『CULB SEVEN』の名物となる「50音順ヒットメドレー」が初登場した公演でもあったという。「希とは、稽古終わりに毎日呑んで、お酒をガソリンに換えていました(笑)」。同世代で尊敬し合える仲間と出会い、同じく共演者だった岡千絵と3人で結成した音楽ユニットgravityの活動は、今年で14年目を迎える。「希は、面白いことをやろうぜとみんなを惹き付ける原動力を持っている人。惹かれるという意味でgravityと名付けたんですけど。ジャンキーも小規模ながらムーチョ村松さんが映像、PaniCrew植木豪さんがグッズデザインを担うなど、スタッフ陣もすごい顔ぶれが揃っています。みんな気持ち優先で集まってる部分が大きいので、ケンカもするけど楽しくて。いまだに青春しています」。大阪ではあえてお堂のある小劇場を選んだ。「初めての劇場に私もワクワクしています。絶対後悔させませんので、ぜひ笑いに来てください!」東京公演は5月24日(金)から6月2日(日)まで中目黒キンケロ・シアターにて、大阪公演は6月8日(土)・9日(日)一心寺シアター倶楽にて上演。大阪公演のチケットは、チケットぴあにて発売中。取材・文:石橋法子
2019年04月25日ウィリアム・シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』を原作に、“スズカツ”こと鈴木勝秀が脚本・演出を手掛けるRock Opera『R&J』が6月から7月に上演される。【チケット情報はこちら】ロミオを演じるのは、2.5次元舞台で注目を集め最近では音楽劇『道』など活躍の場を広げる佐藤流司、ジュリエットを演じるのは、マドンナや椎名林檎のバックダンサーを務めたダンサーであり、現在はアーティスト・女優としても活躍する仲万美。果たしてどんな作品になるのか、鈴木に話を聞いた。「最初にプロデューサーから“『ロミオ&ジュリエット』を下敷きにロックで”という話を聞いたときに“それ、ものすごく好きな感じ!”と思って。ファーストインプレッションでやろうと思いました」と鈴木。「これが“ミュージカルで”というお話だったら、僕じゃないんじゃないでしょうかと言ったかもしれない。『ロミオ&ジュリエット』はもっと乱暴なんですよ、僕のイメージの中で。きれいきれいな中におさめたくない。だから音楽も乱暴なほうがいい。音程とかなんとかじゃない。リズムの中にちゃんとグルーヴしていればいい。そういうものにしたいんです」物語は「設定から書き換えます。舞台は近未来だし、想像される『ロミオ&ジュリエット』とは全然違うと思う」と大胆なアレンジが加わりそう。「だけど、恋愛に突っ走っていくふたりがいて、それにいろんなアドバイスをして話を余計に複雑にしてしまうおやじとか出てくるところは同じです(笑)」鈴木が「直感的にいきている人たち」だというロミオとジュリエットを演じる佐藤と仲。鈴木はそんなふたりも「かなり直感的ですよ。佐藤くんは音楽(バンドプロジェクト「The Brow Beat」のRyujiとして活動中)をやってるし、バンビ(仲)ちゃんはダンスをやってるし。それって直感の力がないとなかなかできないものですよ。音楽もダンスも“こうだから”“ああだから”でやるものじゃないので」と印象を語る。歌もダンスも取り入れた作品になるという本作。シェイクスピアと言えば“長台詞=言葉”という印象もあるが「でも『ロミオ&ジュリエット』の話って、大雑把には大体誰でも知っている。だから、説明をしなくても、シーンがもし飛んでも、その間は観ている人がつなげるんですね。僕は説明されたりとか、答えを教えよう教えようとする人が大嫌いなので。自分で考えたものしか答えにはならないじゃない?って思うから」と、作品全体としても直感的なものになりそうだ。「僕自身が楽しみにしています。いや、“楽しみ”以上。本当に“一発かましてやる!かませるチャンス来たか!”みたいな感じです」と語る鈴木のRock Opera『R&J』は6月・7月に東京・大阪にて上演。ぴあでは5月6日(月)午後11時59分まで抽選先行(プレリザーブ)受付中。取材・文:中川實穗
2019年04月25日尚月地の同名人気漫画を原作にした舞台・浪漫活劇譚『艶漢』第三夜が開幕、それに先がけ公開ゲネプロと囲み取材が行われ、取材には櫻井圭登、末原拓馬(おぼんろ)、三上俊、村田恒、福井将太、岩義人、岡田あがさ、堀越涼(花組芝居)、八神蓮が出席した。【チケット情報はこちら】本作は、ノーフン(フンドシをはいていないこと)がちな傘職人の美少年・吉原詩郎と、熱血正義感の巡査殿・山田光路郎、そして詩郎の兄貴分で無敵な色気を放つ吉原安里の物語を軸にした、エログロナンセンスな昭和郷愁的アンダーグラウンド事件簿。ストーリーを紡ぐ浪漫活劇譚シリーズは2016年の初演、2017年の第二夜に続く3作目で、脚本・演出はほさかようが手掛ける。同じキャストで歌謡エンターテインメントショーを行う歌謡倶楽部『艶漢』シリーズもこれまでに2作上演されている。ゲネプロ前の囲み取材で、主人公・吉原詩郎役の櫻井は「新しいキャラクターが新しい風を吹かせてくれて、第三夜ならではの攻め方ができた作品になったと思います。初演ぶりにシアターサンモールに帰ってこれたので、色んな想いを込めながら、愛を込めて演じきりたいと思います」、山田光路郎役の末原は「この場所で上演された第一夜のときは、歴史のある漫画を僕たちが舞台化するということでドキドキしていました。だけど受け入れてもらえ、歌謡倶楽部もあり、合わせると今回で5作目。いろんな人でつくり上げてきた『艶漢』になっていることが嬉しいです。今回も新たなものを積み上げることになればと、今またドキドキしています」、吉原安里役の三上は「過去最高の作品になったんじゃないかと思います。安里という役はこれまで何を考えているかわからない部分が多かったのですが、今作では目的もハッキリしますし、感情的になって戦うシーンもあり、これまでにない顔や声が見せられると思います。楽しみにしていてください」とそれぞれ挨拶を述べた。衣装やセット、メイクはもちろん、殺陣からふとした仕草にまで登場人物それぞれの個性豊かな“艶”やかさが光り、丁寧につくりこまれた世界が広がる本作。今回の物語は、謎多き吉原兄弟の悲しい過去が軸となるが、ふたりの湾曲し屈折した想いや願いが不思議なほどまっすぐに届くのが印象的だった。登場人物ひとりひとりのコントラストも鮮やかで、そこで生まれるドラマひとつひとつが心に響く作品に仕上がっていた。激しく艶やかなアクションにも注目の本作は、4月29日(月・祝)まで東京・シアターサンモールにて上演中。取材・文:中川實穗
2019年04月24日最後の全体公演と銘打った『ラスト3~最終伝説~』の上演から2年。ワハハ本舗が再び動き出した。2020年に、新生「ワハハ本舗全体公演」を上演することを決めたのである。そして今年6月、そのプレイベントとして、これまでの全32回の全体公演から選んだ演目を“ベスト版”として披露することに。ワハハ本舗の作・演出家の喰始と、看板女優・久本雅美が語るその見どころには、“ワハハ本舗魂”が詰まっていた。【チケット情報はこちら】「1度終わらせて区切りをつけたかったんです。もう1度やるにしても、終わらせたものを新たに立ち上げるほうがハードルが高くなって僕自身もみんなも奮起するだろうから。そのもう一度がこんなに早くくるとは思わなかったですけどね(笑)」。喰は新たな“ワハハ本舗全体公演”への思いをまずこう語る。そして、「私たちもけしかけてたんですよ。ワハハワールドで暴れることができない寂しさが日に日に募っていたので。だから、2020年にやると聞いたときは、もう号泣でした(笑)」と久本。この前哨戦のイベントについても、「私たちが若い頃にやっていたことを観ていない方も多いと思うので、改めてワハハ本舗を知ってもらえるのがうれしい」と燃える。『ベストオブ全体公演~ショー・マスト・ゴー・オン~』と題して開催されるイベントは、<久本雅美が「観たい」「見せたい」演目たち><柴田理恵が「観たい」「見せたい」演目たち>として、実際に喰、久本、柴田が集まって選び抜いたものから、それぞれ違う内容を見せることになる。久本個人のネタからは、30年以上前の「オカルト二人羽織」に、2011年当時は早すぎた「フレディ・マーキュリー」が登場。「今回はみなさんがご存知だと思うので、またヒゲ生やして胸毛つけて、再チャレンジしますよ(笑)」と思い入れも強い。柴田のネタでは、久本絶賛の「一人ミュージカル忠臣蔵」が披露される予定。副題の通り、まさしくショー・マスト・ゴー・オンで続いていくワハハ本舗。その魅力は、「結成当初から、60歳になってもケツ出していたいよねと言ってたので、いよいよ念願が叶います」という久本の言葉に表れている。公演は6月11日(火)から16日(日)まで、東京・シアターサンモールにて。取材・文:大内弓子
2019年04月24日舞台『銀河鉄道999 さよならメーテル~僕の永遠』が4月20日に東京・明治座で開幕した。松本零士による不朽の名作マンガを原作とした音楽劇で、昨年上演された『銀河鉄道999 ~GALAXY OPERA~』のその後を描く新作。前作に引続き、中川晃教が主人公の星野鉄郎を演じる。【チケット情報はこちら】前作で、機械の体になり永遠の命を手に入れるために999号に乗った鉄郎は、今作では限りある生命の美しさに気付き、機械の体をタダでくれるという星を破壊したいと目的が変わっている。中川はひとまわり成長した鉄郎の少し影を負った表情も細かく演じ、作品の哲学的なメッセージをも織り込んだ演技を見せる。今回初参加となるメーテル役の木下晴香(伊波杏樹とWキャスト)の、落ち着いた口調や美しい佇まいも印象的。またクイーンエメラルダスに扮する凰稀かなめ、キャプテン・ハーロック役の平方元基は原作から抜け出てきたようなカッコ良さ。彼らミュージカル界で活躍する実力派が、もともとのキャラクター性を尊重しつつ、自身の才能を発揮した歌声と演技力で、さらにキャラクターを魅力的に輝かせていることで、見応えある作品になった。さらに松下由樹が演じる“最後の敵”プロメシュームとの決戦シーンなどは迫力の立ち回りで、舞台作品ならではの魅力だ。映画とは違う、生身の人間が演じる面白さもしっかりと伝えた。人として大切なものを問うテーマなども、現代的。40年愛され続けているこの名作の舞台化を今やる意義もひしひしと伝わってきた。初日の前には、キャストと原作の松本零士が登壇する会見も。松本は「ひと言ひと言、キャラクターの名前も何もかも、小学生の頃から一生懸命考えていた“憧れ”なんです。自分の少年の日からの夢、信念を皆さんに実際に演じていただける。苦労して頑張っていただいていることがとても嬉しい」と感慨深げに語る。また中川は「この作品には夢も希望も詰まっています。見どころはたくさんありますが、宿敵であるプロメシュームとの戦い、そしてその娘であるメーテルとの旅の中で鉄郎は自分の役割を果たし、最後に鉄郎とメーテルがファーストキスをします。このキスの向こうにあるものをぜひ皆さんに感じていただきたい。甘酸っぱい気持ちもありますが、ピリっと刺激的なメッセージも含まれているかもしれません。どうぞ劇場に足をお運びください」とアピールした。公演は4月29日(日・祝)まで同劇場にて上演。その後5月10日(金)から12日(日)まで大阪・梅田芸術劇場メインホールでも上演される。チケットは発売中。
2019年04月23日これは落語なのか、演劇なのか――。昨年の『志らくひとり会』が文化庁芸術祭賞優秀賞を受賞した立川志らく。その続編にあたる新作落語「不幸の家族」を上演するのが、4月22日に本多劇場で開幕した『志らくひとり舞台』だ。2016年に自身の劇団で上演したものを、落語版としてひとりで演じる。まず「志らく 半生を語る」の語りで幕を開ける。次いで始まった「不幸の家族」は、2025年の大三次世界大戦突入寸前の日本が舞台。かつて海上自衛隊で親友であり、恋敵でもあった男ふたりが、18年ぶりに再会することになる。心躍らせいそいそと準備するくだりは、いかにも落語的。はりきりすぎてちょっとドジをしたり、家族との少しズレた日常会話などに、思わず吹き出してしまう。社会風刺や、落語家に対する毒舌も痛快。志らくの得意な映画ネタも満載で、有名映画たちにツッコミを入れていく。映画を観ていなくてもネタが楽しめる気配りも忘れない。時事ネタも織り交ぜ、教養と遊び心たっぷりに会話が展開する。男は娘や息子も巻き込んで再会の準備を進めるが、そのうちに、思いもよらなかった事実が明らかになってくる……。上演時間1時間。男たちの単純な再会話かと思いきや、男同士の友情、夫婦の形、親子の縁、家族の愛情など、さまざまな人間関係が複雑に重なっていく。前半に散りばめられた伏線が、細かいネタにいたるまで丁寧に回収されるうち、なぜか笑っていたのに泣かされている。そこには、人は迫りくる戦争よりも、目の前のちょっとした出来事が重要だという風刺も効いている。がしかし、とても温かい作品だ。演劇作品を落語にしたことで、全役をたったひとりで演じる。しかし、照明も衣装も変わらず高座のみがあるステージには、ふたりの初老の男と、その家族たちの表情豊かな姿が見えた。落語を聞いていたつもりが、いつの間にか1本の小さくも壮大な演劇を観た気分になる。それは古典の技術と経験を踏まえ、試行錯誤の末にたどりついた志らくの新作落語(現代落語)が成せる技だろう。そこには、ひとり芸の要素がふんだんに詰まっていた。これは落語か演劇か。語り、コント、マイム、音楽などを盛り込み、ジャンルを越えたひとり舞台の最高峰を「ひとり話芸の元祖であり極みである落語」(立川志らく)で表現する。上演は23日(火)19時の回が最後。当日券は開演1時間前より劇場受付にて発売。また、チケットぴあでは「立川志らく独演会」等出演公演も販売中。取材:河野桃子
2019年04月23日宝塚歌劇雪組公演『壬生義士伝』『Music Revolution!』の制作発表会が4月17日に都内にて開催された。確かな実力で宝塚の人気を牽引するトップコンビ、望海風斗と真彩希帆率いる雪組が、お家芸の日本物と、“音楽”にフィーチャーしたショーの2本立てを上演する。会見にはトップコンビのほか雪組スター彩風咲奈、『壬生義士伝』原作者の浅田次郎らも登壇。意気込みや期待を語った。チケット情報はこちら『壬生義士伝』はドラマ化、映画化もされた同名のベストセラー小説が原作。貧困にあえぐ家族を救うために脱藩し新選組隊士になった南部藩の下級武士・吉村貫一郎を主人公に、武士としての義、家族への愛、友との友情などの人間ドラマを描いた物語だ。その劇中歌2曲を中心に、望海、真彩、彩風の3人によるパフォーマンスからスタートしたこの日の会見。パフォーマンス中には南部弁も披露、物語の一端を3人がしっとりと切なく演じ上げた。吉村貫一郎を演じる望海は「この作品をやると発表された時の皆さまの反響が大きく、ファンが多いことを感じた。この浅田先生の書いた涙なしでは読めない素晴らしい作品に、いまの雪組が挑戦させていただけることを大変嬉しく思います」と挨拶。現在すでに稽古が始まっているとのことだが「南部弁をいかに自然にしゃべるか、そしてそれがきちんとお客さまに届くか、ということを考えながらお稽古していきたい」という苦労も語った。原作者である浅田次郎は「週刊文春で1年半という長期連載だった。400字詰め原稿用紙で1200枚もある長い長い話、どこをどう削ったら制限時間(上演時間)におさまるのか。これは相当の高等技術(笑)。映画化されたときの滝田洋二郎監督も同じようなことを仰っていましたが、(今回も)大変楽しみにしております」と少々捻くれた角度からのエールを送りつつ、「私は日本人の魂をこの小説に込めたつもり。できれば(舞台化を機に)より多くの世代を超えた方々にこの小説をもう一度お読みいただいて、思うところがあれば嬉しい」とも話した。また、演出の石田昌也が「宝塚のトップスターが比較的名もない下級武士で、センターになかなか来れない、という難しい問題があります」と話すように、宝塚歌劇団で上演されるには珍しいタイプの物語。だが望海は「今お稽古をしていても、近藤勇や土方歳三が真ん中にいて、私は端っこの方に並んでいます。でも吉村が真ん中にきてしまったらおかしい。その中で人としての在り方を出していけたら。登場した瞬間「望海はどこだ」となるかもしれませんが(笑)、ひとつの作品としてきちんとまとまるよう、みんなで作り上げていきたい。そういう作品に今の雪組で挑戦できることは楽しみですし、大きな挑戦であると感じています」と意気込みを語った。公演は5月31日(金)から7月8日(月)まで兵庫・宝塚大劇場、7月26日(金)から9月1日(日)まで東京宝塚劇場にて上演される。兵庫公演は4月27日(土)、東京公演は6月30日(日)にそれぞれ一般発売開始。
2019年04月18日日本を代表する演出家・栗山民也が手掛けるオリジナルのミュージカル『ハル』の大阪公演が、4月22日(月)から梅田芸術劇場で幕を開ける。栗山に話を聞いた。ミュージカル「ハル」チケット情報同作は、子ども時代に患った病を乗り越え、元気な体を手に入れたものの、やりたいことが見つからず、本音を話す友達もいない高校生のハルがボクシングに出会う物語。ハルを薮宏太(Hey!Say!JUMP)、ハルをボクシングに誘う真由を北乃きい、ハルの幼なじみの修一を七五三掛龍也(Travis Japan/ジャニーズJr.)と若手が顔を揃え、東京公演は大好評だった。栗山は「劇場は薮君のファンでいっぱい。今、若い世代が演劇から遠ざかる時代だからいいことですよね。薮君はボクシングジムにも通い、本当に真摯に役と向き合ってくれています」と話す。ハルは絶えず周りの評価を気にし、自分には生きる価値がないと思い込んでいる人物だ。「今の若い人たちの震えや恐れなどヴィヴィッドな精神を主題にしたかった。中でも描きたかったのは、“ぶつかる”ということ。今の人たちは恋をしない、人と向き合わない。傷つくことを恐れ、ネットばかり見て自分の世界に入ってしまう。演劇とはぶつかるものでしょう。ぶつからないような演劇もあるけど、僕は好きではない。これ以上、ぶつかるものはないだろうとボクシングが題材になったのです」。脚本・作詞を高橋亜子、作曲・音楽監督を甲斐正人が担当。震災やさびれていく街など、今の日本の現状を浮き彫りにした背景も、切実に胸に迫ってくる。「シェイクスピアの言葉にあるように、演劇は時代を写す鏡。虚構の世界から真実が見えてくる。今の時代を裸にしたミュージカルを作ることで、新しいものが見えてこないかと」。キャラクターは何を今、訴えようとしているのか。キャラクターと会話し、それを役者が自分で発見しない限り、嘘の表現になるという。「引き出しはあくまでも技術であり関係ない。稽古場は新しい引き出しを作る場所。皆、型にはまった同じような歌い方や演じ方はしてほしくない。いろんなジャンルの人が集まり、基本がバラバラだからこそぶつかり合い、面白い効果になるんです」。薮をはじめ、キャストは引き出しを見つけ、舞台に立つことが楽しくなっているそうだ。また、“命とは何か”を問うラストにも注目だ。「物語をひとつ観客に渡すときは、たとえ3時間上演したとしても、その世界が見えてくるわけではない。でも、ちょっとした糸口や出発点に誘うことができるだろう。あとは観客ひとりひとりが想像力を働かせることが導きになる。無理やり結論を作ると、観客は安心するでしょう。でも物語は安心ではないから。人間の運命をギリギリのところで今の時代と照らし合わせて作る。その鋭利な姿勢を忘れてはいけないと思います」。ミュージカル『ハル』大阪公演は、4月22日(月)から28日(日)まで、梅田芸術劇場メインホールにて上演。チケット発売中。取材・文:米満ゆうこ
2019年04月18日