当時、Twitterを中心に拡散され、全世界が目撃した航空機事故を描く『ハドソン川の奇跡』。このほど、実際の出来事が巨匠クリント・イーストウッドならではの視点で描かれていることが明らかになった。2009年1月15日、厳冬のニューヨーク。160万人が住むマンハッタン上空1,000メートルで突如起こった航空機事故。全エンジン完全停止。制御不能。高速で墜落する70トンの機体。未曽有の大惨事を救った生死を分けた30秒。そのとき、一体何が起きていたのか…?『許されざる者』『ミリオンダラー・ベイビー』で2度のアカデミー賞監督賞に輝くイーストウッド監督が、同じく2度のアカデミー賞主演男優賞を手にするトム・ハンクスを主演に迎えて贈る本作。先月、86歳の誕生日を迎えたイーストウッド監督は、『ミリオンダラー・ベイビー』で当時74歳にしてアカデミー賞監督賞を獲得、現在も最高齢の受賞監督として称えられている。また、ブラッドリー・クーパーを主演に迎えた前作『アメリカン・スナイパー』では、米軍史上最強と謳われた伝説の狙撃手クリス・カイルの真実を衝撃的に描き、第87回アカデミー賞に6部門ノミネート、世界興行収入は5億4,700万ドル(約600億円)を超え、監督作品史上最大のヒット作となった。いまだ現役で、勢いの止まらない巨匠が新作として選んだ題材は、全世界が目撃し、“奇跡”と称賛された未曽有の航空事故。本作の脚本の基になったのは、事故機のサレンバーガー機長の手記「機長、究極の決断『ハドソン川』の奇跡」(静山社文庫刊)。航空旅客機史上最大の非常事態の中、制御不能となった飛行機をハドソン川に不時着させ、“全員生存”という驚愕の生還劇に隠された真実が、常に映画を通して時代を映し出してきたイーストウッド監督の手により、いま改めて突きつけられることになる。ハンクスが演じる“サリー”ことチェズレイ・サレンバーガー機長は、乗員乗客全員の命を救い、全米で“国民的英雄”と称されている。だが、その裏側では、厳しい取調べで彼の判断の是非が問われていたという。戦闘機パイロットの経験を経て、エアラインパイロットになり、重大事故の調査に携わり、米国定期航空操縦士協会の安全関係各種委員を歴任する、という輝かしい経歴を持っていたサリー機長。奇跡を起こしたはずの英雄がなぜ、その判断の是非を問われることになったのか?イーストウッド監督は、その裏側にあった事実を真摯なまなざしで描き出してくれるに違いない。『ハドソン川の奇跡』は9月24日(土)より新宿ピカデリー、丸の内ピカデリーほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2016年06月20日上川隆也を主演に、山崎豊子の最高傑作といわれる原作を初めてテレビドラマ化したWOWOWの連続ドラマW「沈まぬ太陽」。このほど、未曽有の航空機墜落事故から幕を開ける第2部より出演する、総勢8名の実力派キャスト陣が解禁となった。国民航空の労働組合委員長・恩地元(上川さん)とその同志で副委員長の行天四郎(渡部篤郎)は、袂を分かち、恩地は海外の僻地に左遷。一方、行天は幹部に取り入り、自らの理想の会社像を追い求め出世していく。やがて、空の安全を軽視した国民航空は、大型旅客機の墜落事故という未曽有の惨劇を引き起こす。事故当時、日本に戻っていた恩地は遺族係となり、遺族たちの深い悲しみと怒りに真摯に向き合うことに。そんな中、日本政府は国民航空の建て直しのため、関西紡績の国見正之にトップ就任を要請。会長に就いた国見は、恩地を会長室部長として呼び寄せ、組織にはびこる不正の数々を調査させる。恩地は失墜した会社の再生を信じて奔走するも、その前に立ちはだかったのは、常務にまで上り詰めた行天だった…。第1部には上川さんほか、渡部篤郎、夏川結衣、檀れい、板尾創路、小泉孝太郎、草刈民代、若村麻由美、古谷一行、國村隼ら豪華キャストが集結し、海外ロケを敢行するなど、かつてないスケールで描かれる連続ドラマW「沈まぬ太陽」。第2部からは、長塚京三、陣内孝則、高嶋政伸、石丸幹二、佐野史郎、升毅、平幹二朗、橋爪功という、日本を代表する実力派俳優がなんと8名も参加。今回、国民航空を建て直すために会長職に就任し、恩地を会長室部長に抜擢する国見正之を演じる長塚さんからもコメントが到着。ほかのキャストの役柄は、これから随時発表されていくという。<長塚京三コメント>ドラマWも大河ドラマのようになったなと思いました。だって随分前ですよ、国見役のオファーを戴いたのは。 恩地の前に、まるで「救世主」のように現れるのはいいが、その分、視聴覚的な実在感が微妙で、とても悩ましい準備期間を過ごしました。ま、案ずるより産むが易し、ですが。 なん人(びと)も所詮、欲で動く者のパワーには適わないのだろうか。国見という役を通して、正義を貫くことの空しさ、索莫とした非達成感、といったものを感じ取っていただけたら幸いです。WOWOW開局25周年記念連続ドラマW「沈まぬ太陽」は、毎週日曜22時~WOWOWにて放送中(※第1部:1話~8話/第2部:9話~20話)。(text:cinemacafe.net)■関連作品:沈まぬ太陽 2009年10月24日より全国東宝系にて公開(C) 2009 「沈まぬ太陽」製作委員会
2016年05月08日ここまで5回にわたって、飛行機の操縦や制動に使用する各種動翼の話をしてきた。今回は、その動翼を動かすメカニズムの話をしてみよう。○小型機なら人力で済む小型の飛行機なら、操縦桿あるいは操縦輪、それとラダーペダルから索や棹を介して、人力で直接動翼を動かすことができる。グライダーや軽飛行機ならそれで用が足りるし、第2次世界大戦の頃の戦闘機、例えば零戦でもそうやっていた。索を使用する場合、滑車で向きを変えながら、操縦装置と動翼を連結する。棹を使用する時は滑車というわけにはいかないので、リンク機構を使う。ただ、速度が上がると動翼に当たる風の速度も上がるため、動かすために必要な力が大きくなる。機体が大型化した場合は、動翼も大型化して、かつ面積が増えるため、やはり動かすために必要な力が大きくなる。すると、単純に人力で動かすのは難しい。1つの方法として、バランスタブと呼ばれる小さな動翼を取り付ける方法がある。つまり、動翼という名の舵面に、さらに小さな舵面がついて、親亀・子亀みたいな格好になっている。バランスタブに当たった風の力で、動翼全体を軽い力で動かせるようにアシストするというものである。といっても、最後はやはり人力で動かすものだから、この方法でも限度はある。走っているクルマの窓から手を少しだけ出して、手に当たる風圧の強さを感じ取ってみるとわかるが、時速数十kmでも結構な風圧だ。飛行機の速度はさらに桁が1つ多いのだから、ずっと強い力がかかることは容易に理解できる。○動翼は油圧で動かすのが普通そこで、速度が上がったり機体が大型化したりした場合は、索や棹の動きを機械力でアシストするとか、全面的に機械力で動かすとかいう話になる。そこで、動翼の作動機構に油圧装置を組み込むようになる。油圧を簡単に言うと、エンジンで駆動するオイルポンプで作動油に圧力をかけておき、必要に応じてバルブ操作によって作動油をシリンダに送り込んでやるというものだ。この油圧系統を指して集中油圧系という。油圧だけでなく空気圧を使用する場合もあるが、大きな力を出すことができるのは油圧のほうなので、負荷が大きい時は油圧を使うのが普通だ。ボーイング747の場合、後縁フラップや補助翼は油圧で動かしており、前縁フラップだけ空気圧で動かすという使い分けをしているのが面白い。ちなみに、この油圧や空気圧によって実際に作動を担当する機械のことをアクチュエータという。一般的なアクチュエータはシリンダの中にピストンを入れて伸縮運動を行うもので、作動油や圧縮空気を送り込むとピストンが伸び方向に動き、作動油や圧縮空気を抜くとピストンが縮み方向に動く。航空の世界ではメートル法よりもヤード・ポンド・フィートのほうが幅をきかせているので、油圧装置の圧力もpsi、つまり1平方インチ当たり何ポンド、という単位で表す。一般的なパスカル(Pa)やキログラム平方センチ(khf/cm2)との関係は以下のようになる。1psi = 6894.757293Pa (N/m2)= 0.070307kgf/cm2今だと一般的に用いられている油圧は3000psiだが、機種によってはさらに圧力を上げて4000psiの油圧系統を使用していることがある。圧力を高めると、小さな装置で同じ力を出せるから、油圧系統の小型軽量化につながる。しかし、圧力が上がれば油圧系統に求められる強度は上がるし、漏れ対策も難しくなる。参考航空実用事典 - JAPAN AIRLINES Worldwide Sites○電気ジェット機油圧は大きな負荷に対して強いし、電動式と違って、過負荷で止まった時に動力系に悪影響を与えない利点もある。また、作動油自体に潤滑効果があるのも利点の1つだ。動翼のほか、降着装置の上げ下げも油圧を使うのが一般的だ。身近なところでは建設機械、例えばブルドーザーのブレードやパワーショベルのバケットを動かしているのが油圧である。そう言えば、坂井三郎氏の著書『大空のサムライ』の中で、零戦で訓練飛行に上がった時に油圧配管が破れて作動油が機内に漏れ出してしまい、降着装置を降ろせなくなる話が出てくる。実は、飛行機の油圧系で使用する作動油は一目でそれとわかるように、着色してある。だから、もしも作動油が機体の外部まで漏れ出していれば、離陸前の機体外部点検の際に目視確認できる(はずだ)。その点、電動式なら電線を引くだけで使えるし、作動油の漏洩あるいは漏洩対策とも無縁だ。ただ、油圧と比べると踏ん張りが効かないとか、過負荷で停止したときの動作に問題があるとかいう理由で、長いこと油圧が使われてきた。しかし最近、技術開発が進んだことで、部分的にだが電動式アクチュエータを使用する機体が出てきた。民航機だとボーイング787ドリームライナーやエアバスA380、軍用機だとF-35がそれだ。電動化の目的は、まず、油圧について回る漏れ対策などの問題がないこと。結果として構造がシンプルになるし、整備点検にかかる手間や費用の軽減も期待できる。そして、油圧ポンプや油圧配管を引き回す代わりに電線だけで済ませることができれば、機体の軽量化にもつながる。また、電動式にすると運用中に自己診断機能を働かせることができるメリットもあるそうだ。すると、不具合が発生した時に、それがすぐにわかる。ただし、電動式といっても1種類ではない。A380やF-35が使っているのはEHA(Electro-Hydrostatic Actuator : 電気油圧式アクチュエータ)といい、作動の指令が来ると、電動機が動いて油圧ポンプを作動させる。つまり、実際に動翼を動かすのは油圧ポンプだが、その油圧系統はアクチュエータの中で完結しているから、集中油圧系の配管を引き回す必要を減らせるわけだ。ただしA380の場合、予備系統としてEBHA(Electro-Backup Hydrostatic Actuator : 予備電気油圧式アクチュエータ)も用意している。通常はモーターへの電力供給を遮断して集中油圧系で駆動しているが、集中油圧系が故障すると電力を供給して電動機で動作する。これがあるので、集中油圧系がなくなったわけではなく、減っただけである。EHAに対して、EMA(Electro-Mechanical Actuator : 電気機械式アクチュエータ)というものもある。要するに作動そのものを電動化したもので、電動機が直接、作動機構を動かす。もちろん、所要の力を発揮できるような強力な電動機がなければ成り立たない。ボーイング787の場合、車輪の回転を止めるブレーキを油圧式からEMAに変更している。全面電動化により、過熱や発火の歳に作動油に引火する危険性はなくなった。F-35では、EHAやEMAを使用する操縦系統全体を指して "Power-by-Wire Architecture" と称している。担当しているのはムーグ社(Moog Inc.)で、同社のWebサイトに解説と図が載っているので紹介しておこう。System Integrator for Lockheed Martin F-35◆この図を見ると、フラッペロンと方向舵は2重化したEHA、水平尾翼は単一系統のEHA、前縁フラップは電動式、となっている。それぞれが専用の制御用電子機器を持ち、そこに飛行制御コンピュータから指令が入るわけだ。ちなみに、ムーグといっても同名の電子楽器メーカーとは別の会社だが、創業者が同じ一族であるらしい。
2016年04月04日三菱航空機は3月29日、次世代リージョナルジェット機MRJ(Mitsubishi RegionalJet)に関するWEB情報発信ツール「MRJ Newsletter」第11号にて、3月のトピックスを発表。飛行試験や疲労強度試験機の進捗のほか、最終組立工場の竣工を報告している。3月には初めて日本海上空での飛行試験や、随伴機を伴わない単独での飛行試験を実施。最高高度は3万5,000ft(約1万500m)、最大速度はマッハ0.65(250Kt、約450Km/h)まで順調に進んでいるという。また、最近の飛行試験では、緊急用発電機の動作確認や、片方のエンジンが停止した場合を想定した飛行能力の検証を開始するなど、飛行中の安全機能の確認も行っている。疲労強度試験機に関しては3月15日、組み立てを完了した試験機を技術試験場に移送。機体の強度を検証する地上試験のうち、疲労強度試験では離陸・巡航・着陸など機体の耐久性を確認している。なお、先行している静強度試験は計画通りに進捗しており、今後、疲労強度試験も着実に進めていくとしている。3月1日には、2015年1月に着工した最終組立工場の竣工式を行われた。延床面積約4万4,000平方メートルの建屋内は、主に胴体結合・翼胴結合・尾翼結合を行う「構造組み立てライン」と、エンジンや客室内装も含めた艤装(ぎそう)作業を行う「艤装ライン」で構成されており、月産最大10機の生産に対応する。今後、生産設備などを搬入して量産の準備を行い、今秋には量産機の組み立てを開始する予定となっている。また、工場内を見学できる施設の準備も併せて進めている。(c)2016 MITSUBISHI HEAVY INDUSTRIES, LTD. All Rights Reserved.
2016年03月29日走っているクルマを止める時は、ブレーキペダルを踏む。すると、車輪に取り付けられたブレーキが作動して回転を止める。タイヤが地面に接しているから、車輪の回転を抑えれば(空転やスリップが起きない限りは)スピードは落ちる。今回は、飛行機の動きを止める仕組みについて考えてみよう。○空力的な制動手段が必要飛行機でも、地上を滑走している時は車輪に取り付けたブレーキを使う。クルマと同様にディスクブレーキだが、ブレーキディスクが1つの車輪に複数枚ついている場合があるのは違うところ。では、空中を飛んでいる時はどうするか。地面に接していないのだから、車輪の回転を止めても意味がない。そこで登場するのが、空力的な制動手段である。まず、主翼の上面に展開するスポイラーがある。百の能書きより1枚の写真。実際に作動している様子を見ていただければ一目瞭然だ。空気の流れの中に衝立を立てるようなものだから、当然ながら抵抗力が発生して速度が落ちる。なお、スポイラーの中には飛行中に使用するものと、着陸後に使用するものがある。同じスポイラーを飛行中と着陸後の両方で使用することもある。制動専用のスポイラーなら左右を同時に同じ角度だけ立てるものだが、片方の主翼でのみ作動させることで横操縦に使用する事例があるのは、以前に第9回で述べた通りである。○エアブレーキとドラッグシュートところが、スポイラーとは別にエアブレーキというものもある。スポイラーと同様、機体外板の一部を展開して抵抗力を発生させるものだが、スポイラーが主翼の上面に取り付いているのに対して、エアブレーキが取り付けられる場所は豊富だ。F-15イーグルの場合、背面に大きなエアブレーキを取り付けており、それを展開すると以下の写真のようになる。F-15は専用のエアブレーキを背面に備えた一例だが、背面に付いているとは限らない。F-16ファイティングファルコンだと、水平尾翼付け根部分の胴体外板が上下に展開する。面積はあまり大きくないが、これで用が足りるということだろう。このほか、後部胴体の左右にエアブレーキを展開させる機体は少なくない。機種によっては胴体下面にエアブレーキを展開させることもあるが、もちろん、接地しても支障がない範囲にとどめるか、接地の際に収納するという前提である。地面にエアブレーキをぶつけたら壊れてしまう。機種によっては、全遊動式の水平尾翼を前下がりの方向に目いっぱい作動させて、エアブレーキの代わりにしている例もある。最近の飛行機ではあまりはやらないが、昔の軍用機でおなじみだったアイテムがドラッグシュート。要するに制動用パラシュートで、着陸直後にこれを後部に展開させる。ただし機種によっては、着陸直前にドラッグシュートを展開して、行き脚を抑えたところで接地させることもある。見るからにブレーキがよく利きそうだが、ドラッグシュートにはいくつか問題がある。まず、着陸した後でシュートを折り畳んで機内にしまい込む手間がかかる。B-52ぐらい大きな機体になると、ドラッグシュートも大きいから大変だ。また、ドラッグシュートと機体を結ぶケーブルがからみついたり、機体に傷をつけたりする懸念がある。そして、着陸時にしか使わないドラッグシュートのために、余分なスペースと重量を必要とする。といった理由によるのか、最近はドラッグシュートではなくエアブレーキを多用する傾向にある。ただし、寒冷地での運用を想定して「ドラッグシュートがもっとも頼りになる」とした事例もある。F-16はもともとドラッグシュートを搭載していなかったが、寒冷地で運用するノルウェー空軍は「滑走路が氷結する場合に備えて、ドラッグシュートが要る」といって、垂直尾翼の付け根に追加装備した。これが後に他国にも広まり、航空自衛隊のF-2も同様の手法でドラッグシュートを備えた。ノルウェーでは同じデンで、F-35Aにもドラッグシュートを付けることにしている。エアブレーキにしろドラッグシュートにしろ軍用機が主な使用事例で、民航機(軍用輸送機も含む)では、エンジンの逆噴射とスポイラーの組み合わせで済ませるのが普通だ。それはそうだろう。いちいちドラッグシュートを折り畳んで収容する手間はかけたくない。
2016年03月28日今回は「高揚力装置」の話をしてみよう。厳密に言うと「操縦」の話とは違う部分もあるが、操縦用の動翼と関わりがある分野に違いはない。それに、安全な離着陸のためには不可欠の道具である。○低速だと揚力が減る飛行機の主翼は、上下を流れる気流の間に生じる圧力差によって揚力を生み出している。だから、飛行機が停止すれば上下を流れる気流は消滅するし、それでは当然ながら揚力も生み出さない。逆に、スピードを上げていくと揚力を発生する。ただし、単純に速度だけで決まるわけではなくて、主翼の断面形状や迎角(進行方向と主翼がなす角度)、大気の密度といった要素にも影響される。例えば、高度が上がると大気密度が低くなるので、そこで揚力を十分に得るには相応の条件や工夫が必要になる。ところで、飛行機は地上から飛び立たなければならないし、最後は地上に戻ってこなければならない。前述のように、速度が上がるほど揚力が大きくなる傾向にあるが、十分な揚力を得るために必要とする速度がむやみに高いと、離着陸時に問題が生じる。まず離陸時だが、機体を浮揚させられるだけの揚力を発生する速度が上がるほど、そこまで加速するために時間がかかるので、滑走距離が長くなる。一方、着陸時には減速のために長い滑走距離を必要とするだけでなく、着陸進入速度が速くなって操縦操作が難しくなる。だから、離着陸のやりやすさだけを考えれば、できるだけ低い速度で十分な揚力を発揮してくれる主翼のほうがうれしい。しかし、いったん空に舞い上がった後は、速く飛べないと困ることが多い。ところがあいにくと、この両者は両立しがたい条件である。高速向きの主翼は低速になると揚力が少ないし、低速で十分な揚力を発揮する主翼は高速に向かない。そこで考え出されたのが、高揚力装置というわけだ。○高揚力装置の使い方基本的な考え方は、「高速飛行に向いた主翼に高揚力装置を付け加えることで、低速飛行時でも十分な揚力を発揮できるようにする」ということだ。具体的な手段として、まずフラップ(下げ翼)がある。主翼の前縁に取り付ける「前縁フラップ」と、主翼の後縁に取り付ける「後縁フラップ」があるが、後者しか装備していない機体は少なくない。まずは現物の写真を御覧いただこう。最も手の込んだ高揚力装置を備えた機体ということで、ボーイング747を引き合いに出してみる。ボーイング747は前縁フラップと後縁フラップの両方を備えている。前縁フラップは主翼の下面に収納されており、主翼下面外板の一部が前方にくるりと展開する形になっている。しかも、主翼下面に収納している時は平面なのに、それを展開するとリンク機構によって曲面に変形させるのだから凝っている。展開した前縁フラップと主翼の間には、少し隙間がある。一方、後縁フラップの方はトリプル・スロッテッド・フラップと言い、単に下に下げるのではなく、後下方にせり出してくる。しかも1枚モノではなくて3枚に分かれており、その間に隙間が空いている。「隙間なんか空けたら、かえって揚力が損なわれるのでは?」と思われそうだが、実は逆。隙間から空気を吹き込んでエネルギーを与えることで、主翼上面の気流がスムーズに流れてくれる。エネルギーを与えてやらないと、かえって気流が主翼の上面からはがれてしまい、揚力を生み出せなくなるのだそうである。なお、747を初めとして多くの民航機は近年、フラップの構造が以前よりもシンプルになってきている。主翼の設計技術や空力の研究が進歩して、手の込んだ高揚力装置を設けなくても済むようになってきたためだ。構造がシンプルになれば、それだけ軽くまとめることができるし、整備も容易になる。ちなみに、離陸した後でさらにどんどん加速していく離陸時は、フラップの展開角度は比較的小さい。それに対して、着陸進入時はフラップを限度いっぱいに展開して、できるだけ揚力を稼ぎだそうとする。飛行機に乗る機会があったら主翼後方・窓際の席をとって、フラップの動きや、離陸時と着陸時の角度の違いを観察してみよう。○フラップの展開方法はバリエーション豊富フラップの構造はバリエーションが豊富で、ごくシンプルなものから、747みたいな凝った造りのものまで多種多様だ。ここですべてを挙げるのは無理があるが、代表的な形をいくつか挙げてみよう。主翼の前縁部を後ろヒンジで下に曲げる(前縁フラップ)主翼の後縁部を前ヒンジで下に曲げる(後縁フラップ)主翼下面の外板を、前方ヒンジで前向きに展開させる(前縁フラップ)主翼上面外板の一部が外れて、それを前下方に展開(前縁スラット)主翼後縁部の下面に収容したフラップを降ろす。(後縁フラップ)主翼後縁部の下面に収容したフラップを降ろすだけでなく、後方にせり出させる。大面積のものは前述のように、複数枚に分ける(後縁フラップ)変わったところではフラッペロンがある。フラップとエルロン(補助翼)をくっつけた造語だ。フラップとエルロンを別々に設ける代わりに、同じ動翼を左右同時に下げればフラップとして機能するし、左右をそれぞれ逆方向に動かせばエルロンとして機能するというもの。フラッペロンは戦闘機に導入事例が多く、ロッキード・マーティンのF-16やF-35A/B、三菱F-2などが該当する。ただし、F-35でもC型だけは主翼が大型化されており、補助翼を別に持っている。さらに余談を書くと、F-16の前縁フラップは下に降ろすだけでなく、ほんのわずかだが上に向けることもある。フラップの角度をどう設定するかは、そのときどきの飛行状態に応じて飛行制御コンピュータが自動的に判断しているので、パイロットがいちいちフラップ上げ下げの指示を出しているわけではない。
2016年03月22日上川隆也が主演を務め、「白い巨塔」「華麗なる一族」「不毛地帯」などで知られる山崎豊子の最高傑作を初のテレビドラマ化した「沈まぬ太陽」。未曽有の航空機墜落事故という悲劇の裏で信念を貫いた者たちを、WOWOWの連続ドラマWとしてはかつてないスケールの全20話で描く本作から、アフリカや中東でもロケが行われた第1部のポスタービジュアルと、場面写真が解禁となった。国民航空の労働組合委員長・恩地元(上川隆也)とその同志で副委員長の行天四郎(渡部篤郎)は、劣悪な労働環境の改善を目指し経営陣と激しく対立。空の安全を第一に考え、時に愚直に行動する恩地は経営幹部に疎まれ、海外に左遷されてしまう。一方、現実主義の行天は恩地と決別し、幹部に取り入りながら自らの理想の会社像を追い求め、出世していった。やがて、空の安全を軽視した国民航空は、未曽有の大型旅客機の墜落事故を引き起こす。日本に戻っていた恩地は遺族係となり、尊い命を奪われた遺族たちの深い悲しみに真摯に向き合う。そんな中、日本政府は国民航空の建て直しのため、関西紡績の国見にトップ就任を要請。会長に就いた国見は恩地を会長室部長として呼び寄せ、組織にはびこる不正を調査させる。恩地は失墜した会社の再生を信じて奔走するも、その前に立ちはだかったのは常務にまで上り詰めた行天だった…。1995年の山崎豊子原作ドラマ「大地の子」で新人ながらも主人公を演じ、一躍脚光を浴びた上川さんが、20年の歳月を経て、再び山崎作品の主役に挑む本作。そのライバル・行天四郎役には、「連続ドラマW 翳りゆく夏」での熱演や、フジテレビドラマ「お義父さんと呼ばせて」の軽妙な演技も記憶に新しい渡部篤郎が演じるほか、夏川結衣、檀れい、板尾創路、小泉孝太郎、草刈民代、若村麻由美、古谷一行、國村隼ら実力派キャストが第1部に出演する。解禁されたポスタービジュアルは、背景に第1部の象徴的な舞台であるアフリカを連想させる広大な大地と、その大地を照らす“太陽”を描いた壮大なスケール感を漂わせている。恩地を演じる上川さんを筆頭に、行天を演じる渡部など、名立たるキャスト陣が一堂に会し、上川さんの力強く前を見据えた眼差しには、巨大組織に翻弄されながらも、決して屈することなく信念を貫く意志がみなぎっているかのよう。だが、恩地と行天の決して交わることのない視線が、今後の2人の関係性をはっきりと浮き彫りにさせている。また、場面写真は、今後の組合について酒を酌み交わしながら真剣に語り合う行天と恩地の姿と、実際に中東で撮影された、赴任先カラチの雑踏を1人歩く恩地を映し出した臨場感あふれるものとなっている。なお、本作の放送に合わせて「山崎豊子原作映画特集」として、過去に映画化された『白い巨塔』(’66)、『華麗なる一族』(’74)、 『不毛地帯』(’76)、『女系家族』(’63)を5月3日より連日放送。上川さん出演の連続ドラマW「マークスの山」、渡部さん出演の連続ドラマW「下町ロケット」も全話一挙放送される。かつてないスケールのドラマで描く「沈まぬ太陽」が、ますます楽しみになってきた。WOWOW開局25周年記念 連続ドラマW「沈まぬ太陽」は、5月8日(日)22時~WOWOWにて放送開始(全20話・1話無料放送※第1部:1話~8話/第2部:9話~20話)。(text:cinemacafe.net)
2016年03月18日東京大学(東大)、リコー、ブルーイノベーションは3月16日、GPSの受信が不安定な環境下でも無人航空機(ドローン)の安定した自動飛行を実現する技術を開発したと発表した。同成果は東京大学 大学院工学系研究科 航空宇宙工学専攻 鈴木・土屋研究室の鈴木真二 教授および土屋武司 教授らの研究グループと、リコーおよびブルーイノベーションの共同研究によるもの。3月24日~26日まで幕張メッセで開催される「ジャパンドローン2016」でデモ飛行を披露する予定。ドローンは構造物点検、警備・監視、測量などさまざまなサービスで活用され始めているが、橋の下やトンネルの点検、施設・倉庫内の警備などGPSの受信が不安定、または受信ができない環境下では突然バランスを崩したり、自動飛行ができなくなり墜落するなどのリスクがある。同研究で開発したシステムは、ブルーイノベーションと東大が開発した、安定した姿勢制御が可能な小型ドローンにリコーが開発した超広角ステレオカメラを搭載したもの。3次元空間での移動を計測するIMUセンサと超広角ステレオカメラの出力を融合させることでGPSに頼らない室内での安定した自動飛行を実現した。同研究グループは、今後、さらなる性能・信頼性向上のため現場での実証実験が必要だとしている。
2016年03月16日前回は、飛行機が3次元の操縦操作を行うために使用する動翼、すなわち昇降舵(エレベーター)・補助翼(エルロン)・方向舵(ラダー)の基本的な動作について解説した。すべての飛行機がこれらの動翼を普通に備えていれば話は簡単だが、なにしろ例外の多い世界である。○水平尾翼がない機体普通、尾翼というと垂直尾翼と水平尾翼が別々にあるものだが、水平尾翼を止めてしまう形もある。まずV尾翼。水平尾翼と垂直尾翼を別々に設ける代わりに、斜めに突き出た1つの尾翼で済ませてしまうもの。後縁部に動翼を設ける場合もあれば、尾翼がまるごと動く場合もある。それらを左右で逆方向に動かしたり、同一方向に動かしたりすることで、任意の方向の力を生み出して、ピッチやヨーの操作を行う。ちなみに、下に写真を載せたYF-23Aは全遊動式V尾翼なので、この大きな尾翼がまるごと動く。コンコルドがわかりやすい例だと思うが、水平尾翼を持たない機体もある。この場合、主翼の後縁に取り付けられた動翼がピッチ操作も受け持つ。左右で連動して同じ方向に動けば縦操縦操作になるし、左右で逆方向に動けば横操縦操作になる。同じ動翼が両方の機能を併せ持つ場合、エルロンとエレベーターの機能を兼ねているということで、これをエレボンと呼ぶ。○完全な無尾翼コンコルドはデルタ翼(平面型が三角形なので、こういう)と垂直尾翼の組み合わせだが、これがB-2爆撃機になると垂直尾翼がない。では、ヨー方向の操作はどうやるのかという話になるのだが、この機体の補助翼は上下2分割構造になっていて、それらが一体になって上下いずれかに動くだけでなく、別々に動く(上下の両方に展開する)こともできる。そこで、左側だけ上下に展開させて右側は何もしないと、左側だけ抵抗(ドラッグ)が発生するので、機首は左に振れる。機首を右に振りたければ逆にする。ドラッグによってラダーと同じ機能を発揮させるので、これをドラッグ・ラダーという。機首を振る効果を強めるには、ドラッグ・ラダーはできるだけ翼端に近いところにある方がいい。そこで、補助翼を上下二分割構造にしてドラッグ・ラダーの機能を持たせたわけだ。なお、ドラッグ・ラダーではなくエアブレーキとして使うために、補助翼を上下二分割構造にした機体もある。それがグラマンA-6イントルーダー攻撃機。普段は補助翼として上下一体になって動作しているが、エアブレーキの機能が必要になったときは上下が分かれて別々に開く。ただし、左右とも同じように動作するので、機首を振る動きにはならない。○エルロン・リバーサル本連載の第1回で、主翼が弾性を備えた構造になっているという話を書いた。実はこれが、補助翼の効きに影響する。なぜか。弾性を備えた主翼は、上下方向に動くだけでなく、ねじれた動きもする。そういう主翼の後縁に補助翼を取り付けて動作させるとどうなるか。例えば補助翼を下げた場合、本来なら、それによって上方向の力が生じるはずである。ところが、補助翼は主翼の後縁に付いているから、その上方向の力は主翼の後ろ寄りにかかる。すると、主翼を持ち上げるだけでなく、前縁が下がる方向にねじる力も発生してしまう。その結果として主翼が捻れて前縁が下がると、主翼の上面に気流が当たって、主翼を押し下げる動きが発生する。それが補助翼による上げ方向の動きより強いと、(主翼を上げるつもりで)補助翼を下げたのに主翼が下がってしまうという、意図したのとは逆の動きをする。補助翼は左右で逆方向の動きをするものだから、反対方向では逆の動きが生じる。結果として、例えば左にロールを打つ(機体を左に傾ける)つもりで行った操作により、機体が右に傾いてしまう。これが補助翼の逆効き(エルロン・リバーサル)と呼ばれる現象。これを防ぐにはどうするか。ということで考え出された方法の1つが、高速飛行時にだけ使用する補助翼を別に設ける方法。ボーイング747が典型例だが、主翼の内側寄り、2番エンジンと3番エンジンが取り付く辺りの後縁に、小さな補助翼(高速エルロン)が付いている。余談だが、飛行機のエンジンは左側から順番に数えるので、左端が1番エンジンである。低速で飛んでいるときは動作せず、高速になるとこちらを使う(逆に翼端の補助翼は使わなくなる)。内側寄りのほうが主翼の前後幅(翼弦長)が長く、強固なのでねじれにくい。すると、ねじれに起因する逆効きも起こらなくなる。面積が小さくても、速度が速ければちゃんと効く。○補助翼を使わないで横操縦ただ、内舷寄りに高速エルロンを設ける手が使えるのは、それなりに翼幅がある機体だから。戦闘機みたいに翼幅が短い機体だと、同じ手は使えない。そこで、補助翼を使わずに横操縦を行う方法がポピュラーになった。第1の方法として、全遊動式水平尾翼を使う方法がある。前回に触れたように、戦闘機の水平尾翼は全遊動式といって、独立した昇降舵を持たない形が一般的。水平尾翼全体が、付根に設けられたシャフトを中心にして上下方向に動く。左右を同じ向きに動かせば昇降舵として機能するが、左右を逆向きに動かせば補助翼と同じように横操縦に使える。もう1つの方法は、スポイラーを使う方法。スポイラーとは主翼の上面に展開する抵抗板だが、左右の主翼で同じように立てれば、左右均等に抵抗が生じてブレーキがかかる。ところが、片方の主翼でだけスポイラーを立てれば、そちら側だけ下向きの力が生じて横操縦ができるというわけ。この方法を使っている機体として日本でなじみ深いのが、航空自衛隊のT-2練習機とF-1支援戦闘機。この機体の場合、スポイラーを立てるとその下に空間ができて、主翼の下面から気流が上方に向けて吹き抜けるようになっている。T-2やF-1の現物を間近で見ようと思ったら、航空自衛隊浜松基地に隣接する「航空自衛隊浜松広報館」」に行くのが早道だ。T-2なら岐阜県の「かかみがはら航空宇宙科学博物館」にも展示してある。
2016年03月14日パスコは3月10日、従来から提供している人工衛星や航空機(UAVを含む)などから収集した空間情報を活用して行政業務の効率化を支援するマネジメントサービスと、森林分野での空間情報活用ノウハウを活かし、「森林GISクラウドサービス」を開発、2016年秋より提供を開始すると発表した。同サービスは、都道府県や市町村、林業事業体(森林組合など)における森林管理の効率化や林業の生産性向上を支援する新しいマネジメントサービス。主な機能は森林簿・森林計画図管理機能、林地台帳管理機能、森林異動管理機能、施業履歴管理機能、林道・作業道の管理機能など。共通利用できる仕組みを提供し、森林管理・林業に係る情報の管理や共有、活用を推進する考えだ。特徴は、都道府県別に開発、稼動実績のある森林マネジメントシステムから必要な共通機能を絞り込み、全国標準のクラウドサービスとして提供する点。また、クラウド方式による機能とコンテンツの提供により、システム導入の工期短縮と導入・運用コストを削減するという。さらに、関係団体をネットワークでつなぎ、申請作業や情報共有の円滑化を図るほか、ユーザーの声を反映した機能改良を恒常的に行い、法改正などにも対応することで将来的には木材流通関連業者まで利用範囲の拡大を目指す。
2016年03月11日エアロセンスは3月8日、同社製の自律型無人航空機(UAV)の量産体制および全国8エリアでのオペレーション体制を確立し、法人向けソリョーション提供を開始したと発表した。オペレーション拠点となるのは、札幌、仙台、東京(初台・笹塚・上野・浅草)、名古屋、大阪、京都、福岡、沖縄の全国8エリア。地形や構造物の2Dおよび3Dモデルを作成する「モデリングソリューション」、3Dモデル精度10cm程度で土量などを計測する「土量測量ソリューション」、定期的に空撮し目的物の経過をモニタリングする「定期点検ソリューション」やその他自立型UAVによるカスタマイズソリューションが、ZEGの協力のもと提供される。
2016年03月08日本連載の第1回で、主翼に取り付けられている操縦翼面の話が少し出てきた。先に機体構造の話に進んでしまったが、それが一段落したところで、操縦翼面の話に移ることにしよう。○3次元の操縦鉄道車両の運転は「加速」と「減速」しかないから、これは1次元の操縦操作である。自動車や自転車やバイクや船は、「加速」と「減速」に「旋回」が加わる、2次元の操縦操作である。そして、飛行機や潜水艦は「加速」と「減速」と「旋回」に加えて「上昇・下降」が加わる、3次元の操縦操作である。飛行機は空気から揚力を得て飛んでおり、地に足が着いているわけではないので、クルマのように「タイヤの向きを変える」というわけにはいかない。そこで、操縦操作のために動翼と呼ばれるものを用意する。直進する時は(基本的に)使わないが、旋回・上昇・下降の際に動翼を動かすと、そこに気流が当たって、機体の姿勢や向きを変える力を生み出す。操縦操作のために動く翼面なので動翼だと覚えればよい。その操作に使用するのが、コックピットに設けられている「操縦桿」または「操縦輪」と、左右のペダルである。戦闘機みたいに棒が突っ立っていると「操縦桿」、旅客機みたいにU字型のハンドルになっていると「操縦輪」と呼ぶのが普通のようだ。なお、加速と減速はスロットルレバーでエンジンの出力を加減する方法が基本だが、実はこちらにもエアブレーキというのがあって、減速だけは空力的に行うことがある。その話もおいおい取り上げよう。○縦操縦(ピッチ)まず、縦操縦、つまり機首の上げ下げの話から。基本的には、上昇や下降を行う際に必要な操作である。3次元の座標軸を想定した場合、左右方向のX軸を中心とする回転になる。そこで使用するのは、水平尾翼の後縁部に取り付けられている「昇降舵」(エレベーター)である。左右の水平尾翼に取り付けられており、連動して同じ向きに動く。ただし、戦闘機などで多用している方法として、水平尾翼がまるごと上下に動く形もある。これを全遊動式水平尾翼(オールフライングテール)という。造りは違うが、機能的には同じだ。操縦桿や操縦輪を手前に引くと、昇降舵は上に動き、そこに気流が当たって下方向の力を生み出す。それが尾部で発生するから、結果的に機首を持ち上げる動きになる。逆に、操縦桿や操縦輪を奥に押すと、昇降舵は下に動く。すると上方向の力を生み出すので、結果的に機首を下げる動きになる。なお、飛行機の前後方向の動きと機首の上下方向の角度は、常に一致しているとは限らない。機首をいくらか持ち上げた状態で水平方向に前進することもあり得るが、その場合の機体の軸線と進行方向がなす角度のことを迎角(むかえかく)という。迎角が大きくなりすぎると、主翼が揚力を発生できなくなってしまうが、これがいわゆる失速(ストール)のこと。「航空機とIT」の第6回で書いた話だが、機体の重心を主翼の揚力中心より前方に持ってくることで、縦の静安定を実現できる。動翼をまったく動かしていない状態で釣合がとれて真っ直ぐ飛行できれば話は簡単だが、時には外部からの影響によって、あるいは意図的な設計によって、そうならなくなることもある。○横操縦(ロール)次は横操縦である。横操縦といってもカニさんみたいに横ばいの動きをするわけではなくて、機体を左右に傾ける操作のこと。3次元の座標軸を想定した場合、前後方向のY軸を中心とする回転になる。旋回する際は、機体を旋回する方向に傾けて遠心力との釣り合いをとるので、横操縦が必要になるのが普通だ(たまに例外がある)。また、直進しながら横転する飛び方もあり、これはブルーインパルスの単独機がよくやっている。横操縦に使用するのは、左右の主翼端・後縁部に取り付けられている「補助翼」(エルロン)である。昇降舵と違い、左右が逆方向に動く。つまり、左の補助翼が下がったら、右の補助翼は上がる。あるいはその逆。端のほうに取り付けるのは、そのほうがよく効くからだ(テコの原理を考えてみよう)。そして補助翼を動かすのは、操縦桿なら左右に倒す操作、操縦輪なら左右に回す操作となる。左に倒したり回したりすると、左の補助翼が上がり、右の補助翼が下がるので、機体は左に傾く。右に倒したり回したりすると、すべて逆になる。この操作によって傾きが発生するが、その際に地面との間でなす角度のことをバンク角という。バンク角をつけるだけだと機体は横滑りしてしまうが、主翼に上反角(翼端が付け根よりも持ち上がっている時に生じる角度のこと)がついていると、滑ったほうの翼に大きな揚力が生じて、傾きに対する復元力が発生する。これを正の横安定という。○ヨー最後はヨー。3次元の座標軸を想定した場合、上下方向のZ軸を中心とする回転になる。旋回する際に、機首の向きを変えるための操作と言えばわかりやすい。この操縦に使用するのは、垂直尾翼の後縁部についている「方向舵」(ラダー)である。これだけ足で操作するようになっており、左右の足をそれぞれラダーペダルに乗せている。左のラダーペダルを踏み込むと、方向舵は左に動き、機首を左に向ける力を生み出す。右のラダーペダルを踏み込むと逆になる。ヨー方向の安定を実現するのは垂直尾翼だ。実際、直進安定性が良くないからといって、垂直尾翼まわりの設計を修正しなければならなくなった飛行機はいくつもある。使用例は少ないが、垂直尾翼の後縁に方向舵を取り付ける代わりに、垂直尾翼をまるごと動かしてしまう、全遊動式垂直尾翼の事例もある。ロッキードSR-71ブラックバード偵察機がそれだ。飛行機を旋回させる時は、補助翼を使って機体を傾けるとともに、ラダーペダルを使って機首の向きを変える。例えば左旋回なら、操縦桿を左に倒したり、操縦輪を左に回したりするとともに、左のラダーペダルを踏み込む。これで飛行機は左旋回する。右旋回なら逆の操作になる。さらに操縦桿や操縦輪の押し引き操作を加えると、旋回と同時に下降したり上昇したりということになる。
2016年03月07日三菱航空機は3月2日、次世代リージョナルジェット機MRJ(Mitsubishi RegionalJet)に関するWEB情報発信ツール「MRJ Newsletter」第10号にて、2月のトピックスを発表。飛行試験の再開のほか、エアロリース社の購入に関する基本合意、シンガポールエアショー2016への出展について報告している。2015年11月11日に初フライトとなった飛行試験機初号機は、フィードバック改修作業を完了し、2016年2月10日より飛行試験を再開した。その後も太平洋側の空域にて継続的に実施しており、各種機能確認や飛行領域拡大など順調に試験項目を消化。2月中に4回の飛行試験を行い、これまでに計7回の飛行試験を実施している。今後については、3月以降も国内での飛行試験を継続し、米国における飛行試験へと移行する。エアロリース社との基本合意は、MRJ90を20機(確定10機、オプション10機)の確定発注に向けたもので、この基本合意をもとに早期に正式契約を締結する予定となっている。今回は、航空機リース会社との初の基本合意であり、正式契約になれば、2015年1月にJALの32機以来の確定発注で、MRJの合計受注機数は427機(確定233機、オプション170機、購入権24機)となる。基本同意がされたのはシンガポールエアショー内でのことで、このエアショーは2月16日~19日、シンガポール・チャンギ国際空港に隣接するエキシビジョンセンターにて開催された。同イベントは2年に1度開催されるアジア最大のエアショーで、MRJは2008年より出展し、今回が5回目の参加となった。ブースでは、実物大のキャビンモックアップとフライトデッキディスプレイが展示された。(c)2016 MITSUBISHI HEAVY INDUSTRIES, LTD. All Rights Reserved.
2016年03月02日前回は、アルミ合金と、航空機で用いられる複合材の代表格である炭素繊維強化樹脂(CFRP : Carbon Fiber Reinforced Plastic)で話が終わってしまったので、今回はその他の素材の話をしてみよう。○スチール要するに鉄である。軽く造ることを考えるとうれしくないので、アルミ合金で問題がないのであればアルミ合金を使用するのだが、どうしてもスチールにしなければならない場面もある。まず、特に高い強度と信頼性が求められる場面として、可変後退翼を備えた機体の翼胴結合部が挙げられる。可変後退翼でなければ、主翼を横断する桁を胴体側の縦通材やフレームと強固に結合できるが、可変後退翼を使用していると、主翼を動かすためのピポット機構が必要になる。そこでどういうことになるかというと、胴体の構造材と結合する形で左右に横切るキャリースルーを用意して、その両端に穴を開けてピンを通す方法で主翼を取り付ける。そのピンを回転軸にして主翼が角度を変える。つまり、可変後退翼を備えた機体では通常よりも狭いエリアに荷重が集中するので、軽く造ることよりも強度を優先してスチールを使うことが多い。例えばMiG-23がそうだし、F-111アードバークもそうだ。もっともこれは、チタンの加工技術が確立できていなかったので堅実にスチールにした、という事情もある。今ならチタンでできるかもしれないが、今度は可変後退翼機の需要がなくなってしまった。閑話休題。実はもう1つ、スチールを使用する場面がある。それは、スピードが速い飛行機だ。飛行機が大気中を高速で飛ぶと、機体の温度が上昇する。マッハ2ぐらいまでならアルミ合金でも耐えられるが、マッハ3になるとさらに温度が上がり、アルミ合金では耐えられない。ということで、スチールの出番となる。高速化と引き替えにスチールを使う羽目になった機体として有名なのは、函館空港に強行着陸したことでおなじみ、MiG-25フォックスバットだろう。機体の主要な部分をステンレス・スチールの溶接構造で組み上げている。もう1つは試作に終わった機体だが、XB-70バルキリー爆撃機がそれだ。こちらもステンレス・スチールだが、ただのスチールではなく、ステンレス・スチールの薄板で形作ったハニカム構造(蜂の巣みたいな形をしているので、こういう)をステンレス・スチールの外板でサンドイッチした構造だった。こんな、他所ではやったことがなさそうな構造の機体を造ることになったので、メーカーのノースアメリカン社はだいぶ苦労させられることになった。それでいてXB-70は2機を試作しただけで終わってしまったのだから踏んだり蹴ったりだが、後でアポロ宇宙船の司令船を製作した時、ステンレス・スチールのハニカム構造で造ったそうである。なお、MiG-25はXB-70を仮想敵として開発された機体だから、この両者は素材だけでなく生い立ちでも縁があることになる。○チタンマッハ3級の飛行機がもう1つあるが、こちらはスチールを使わなかった。それがロッキードSR-71ブラックバードで、こちらはチタンを機体構造材に使用した。軽くて丈夫でいいことずくめのように見えるが、不慣れな素材だっただけに、加工や品質管理の面でかなり苦労させられたという。例えば、素材を水道水で洗浄していたら、水道水に添加してある塩素のせいでダメになってしまい、蒸留水に切り替える羽目になった、なんていう話が伝えられている。また、どちらかというと柔らかめのチタンを使うことで加工性をよくしようとしたのだが、そうすると耐熱性の面で問題が出てくる。そこで機体外板を黒く塗ることで放熱効果を持たせて、機体構造材に対する熱の負担を軽減する工夫をしたのだそうだ。別に、シャレや演出で黒く塗ったわけではなくて、もっと深刻な理由があったのだ。1つ笑い話がある。ロッキード社がSR-71を製作した時に、チタン素材の入手が問題になった。そこでどうしたのかというと、ダミー会社を作って本当の買い手が誰だかわからないようにした上で、ソ連からチタンを買い付けたのだという。ソ連をスパイするつもりで製作した飛行機の材料をソ連から買ってきたのだから面白い。今でもチタンの一大産地はロシアなので、欧米の航空機メーカーがVSMPO-Avismaのようなロシアのチタン・メーカーと提携して、素材、あるいは加工した製品を買い付けている。さすがに、機体の主要構造材としてチタンを使ったのはSR-71ぐらいのものだが、他の航空機でも、耐熱性や強度を求められる部分ではチタンを使うことがよくある。これは軍用機でも民航機でも変わらない。前述のXB-70バルキリーも、エンジン周りと前部胴体はチタン製だった。航空自衛隊向けにF-15イーグルの導入が決まり、それを日本でライセンス生産することになった。F-15は軽量化を追求してチタンを盛大に使っていたので、日本のメーカーではチタンを加工するための機械を新たに入れたり、それを使って部品を製作するためのノウハウを身につけたり、といった苦労をする羽目になった。しかし、航空機にチタンはつきものだから、「いつかは通るべき道」であったと言うべきか。○その他の素材金属素材だと、アルミとリチウムの合金(Al-Li合金)がある。利点としては、7075アルミ合金と同程度の強度を、7075より軽く実現できるという。強度や耐食性の分野で課題があったが、これはメーカーの努力によって解決できたという。ただ、リチウムが水と反応しやすい素材なので、取り扱いが難しいところがあるそうだ。そして、Al-Li合金はお値段が高い。実は、これが一番の普及阻害要因になるかもしれない。他の分野と比べると、高価な材料を惜しげもなく(?)使う傾向がある航空機だが、安価に済むのであれば、そのほうがいいに決まっている。参考航空機に於けるアルミリチウム合金の開発動向前回に炭素繊維ベースの複合材料の話をしたが、炭素繊維やガラス繊維だけが複合材料の素材になるわけではない。例えば、ボロンを使用した事例もある。ただし、ポピュラーにはならず、航空機業界における複合材料のメインストリームは炭素繊維になった。
2016年02月29日これまで5回にわたり、航空機の機体構造がどうなっているかについて解説してきた。締めくくりとして、そこで使われている素材の話もしておかなければならないだろう。○アルミ合金系素材かつては「全金属製機」などといって、わざわざ区別していたが、それは木材を使用する機体が多かった時代の話。今では金属材を使用するのが当たり前になっている。航空機は軽くかつ丈夫に作らなければならないので、金属なら何でも良いというわけにはいかない。そこで主流となったのがアルミ合金である。純アルミニウムではなく、さまざまな金属を添加した合金素材を使っているが、そのほうが性質が優れているためである。特に広く知られているのがジュラルミンだろう。最初に登場したのは、アルミニウムに銅を添加した素材で、ジュラルミンといえばこれである。その名称の由来は、ドイツのデュレンという街で開発されたから、あるいはラテン語でhardを意味するdurusとaluminiumを合成してできたという説がある。日本工業規格(JIS)では、アルミ合金には4桁の数字あるいはアルファベットを組み合わせた名前がつけられている。ジュラルミンは2017で、銅を3.5~4.5%、珪素を0.5~1.2%、そのほか鉄、マンガン、マグネシウム、亜鉛、クロム、チタン、ジルコニウムといったものもいくらか混ざる。主な部分を占める元素の名前から、Al-Cu系ということになる。その後に登場したのが「超ジュラルミン」こと2024。銅を3.8~4.9%、マグネシウムを1.2~1.8%、そのほか鉄、マンガン、珪素、亜鉛、クロム、チタン、ジルコニウムといったものもいくらか混ざる。主な部分を占める元素の名前から、Al-Mg系ということになる。そして「超々ジュラルミン」こと7075がある。最近ではスマートフォンのドンガラでも使われているらしいが、元々は航空機用の素材だ。いわゆるAl-Mg-Zn系で、銅を1.2~2.0%、マグネシウムを2.1~2.9%、亜鉛を5.1~6.1%、そのほか鉄、マンガン、珪素、クロム、チタンといったものもいくらか混ざる。航空機用ではこの3種類がメジャーだが、もしも興味があったらJISの規格書を見てみていただきたい。あきれるぐらいたくさんのアルミ合金素材が規格化されている様子がわかる。航空機と並んでなじみ深いアルミ製品というと鉄道車両(特に新幹線)があるが、こちらは6N01や7N01など、溶接性と押出加工性に優れた素材が使われる。航空機はリベット止めが普通だから、鉄道車両ほど溶接性は重視されないようだ。○アルミ合金素材の使い分け後から出てきた素材ほど軽くて丈夫ということであれば、何でも7075で造ればよいかというと、そういうわけでもないところが面白い。例えばボーイング747の場合、胴体のうち与圧する部分の外板、それと主翼の下面には、疲労と亀裂に強い2024を使う。胴体でも縦通材やフレーム、非与圧部分の外板、あるいは主翼の桁・リブ・上面外板、それと尾翼は7075だ。7075の方が圧縮・引張・曲げに強いが、疲労においては2024のほうが有利だといわれる。主翼で発生させた揚力で機体全体を支えているわけだから、基本的に、主翼の上面には圧縮荷重がかかり、下面には引っ張り荷重がかかる。そのことが、「上面外板は7075、下面外板は2024」という使い分けにつながっているわけだ。ちなみに、主翼の外板は局所的に10mmを超える厚みになることもあるが、胴体の外板は一番薄いところで1.6mm厚だそうだ。繰り返すが、1.6cmではなく1.6mmである。これで機内の与圧による圧力差に耐えているのだからすごい。○炭素繊維複合材複合材料というと真っ先に思い浮かぶのはカーボンファイバー、つまり炭素繊維複合材だろう。厳密にいうと、炭素繊維とはその名の通りに繊維であって、それを樹脂で固めたものが炭素繊維強化樹脂である(CFRP : Carbon Fiber Reinforced Plastic)。繊維と樹脂を組み合わせているから複合材だ。組み合わせる樹脂素材はエポキシ樹脂が多い。エポキシ樹脂以外では、ポリアミド樹脂やナイロン樹脂を使うこともあるという。複合材の組み合わせはこの2種類に限らない。風呂でおなじみのガラス繊維強化プラスチック(GFRP : Glass Fiber Reinforced Plastic)も、極端なことをいえば鉄筋コンクリートだって複合材料である。まあ、鉄筋コンクリートで飛行機を作ることはないだろうから、それはおいておくとして。強度が求められる部分では、炭素繊維の糸を織り合わせて造った「織物」にエポキシ樹脂を含侵させた、「プリプレグ」と呼ばれるものを使う。プリプレグ自体は柔らかいが、これを型に敷き込んでからオートクレーブと呼ばれる「釜」に入れて焼き固めると、軽くて丈夫な構造材ができる。いわゆるドライカーボンというやつである。「織物」を使うから、繊維の向きによって強度が違ってくる。裏を返せば、どの方向に強度を持たせたいかという希望に合わせて繊維の配列を工夫することで、「ある方向に対しては強いが、別の方向に対しては変形しやすい」なんていうものも造ることが可能だ。ただ、この方法は製作に手間がかかる上に、電気代もかさむ。もちろん、コストや手間よりも強度が優先されるところではドライカーボンを使うが、要求仕様によっては量産性と経済性を重視して、別の方法を使うことがある。例えば、樹脂含侵成型法(RTM : Resin Transfer Molding)がある。これはオス型とメス型の間に炭素繊維の織物を敷き込み、そこに樹脂を注入して含侵・成型するものだ。樹脂が固まったら型から外せばよい。樹脂を注入する際に、反対側で気圧を下げることで樹脂の回りを良くするのが、真空樹脂含侵成型法(VaRTM : Vacuum Assisted Resin Transfer Molding)である。いくらCFRPが軽くて高強度だといっても、プラモデルみたいに一枚物の板で所要の強度を持たせるわけにはいかず、ちゃんと骨組と外板を組み合わせている。JAXAの施設一般公開で展示されていた、CFRP製機体構造材のサンプルを御覧いただこう。航空機以外だと、1980年代半ばからレーシングカーの車体をドライカーボンで造るのが普通になった。鉄道車両でも、JR東日本のE4系新幹線電車の一部が先頭部をCFRPで造ったことがあるし、CFRPの弾性を生かした台車「efWING」の導入事例が増えつつある。どちらも川崎重工の仕事だ。スキー板をCFRPで造った事例もあるが、これを手掛けたフィッシャーにしろ川崎重工にしろ、航空分野でCFRP製品を手掛けているメーカーでもある。
2016年02月22日三菱航空機は2月16日、次世代リージョナルジェット機MRJ(Mitsubishi RegionalJet)において、米国の航空機リース会社であるエアロリース社(Aerolease Aviation, LLC)とMRJ90で20機(確定10機、オプション10機)の確定発注に向け、基本合意にいたったことを発表。基本合意が確定すると、2015年1月にJALからの32機以来の確定発注となる。両社は今回の基本合意をもとに、早期に正式契約を目指す。エアロリース社は1986年に設立された米国・フロリダ州に拠点を置く航空機リース会社。40機超のボーイング757型機を保有・管理し、中古の旅客機・貨物機のリースをグローバルに展開している。エアロリース社へのMRJの納入は、2018年に開始される見通しとなっている。三菱航空機にとって、航空機リース会社との基本合意は今回が初めてであり、また、エアロリース社としても新造機の発注は初となる。今回の基本同意に対しエアロリース社のジェップ・ソーントン代表は、三菱の航空機製造における経験や強固な財務基盤を高く評価した結果としている。MRJに対しても、「MRJが最先端の空力設計と画期的なプラット&ホイニー社製のGTFエンジン、さらにはロックウェルコリンズ社のアビオニクスを組み合わせた優位性のある機体」と評価。今後、MRJのパートナーとしてリージョナルジェット機市場でMRJのカスタマーベースを広げていくとしている。また、三菱航空機の森本浩通社長は、航空機リースが今日の航空機産業において重要な役割を担っていることを認識して活動してきたことに触れつつ、エアロリース社との基本合意に対して「MRJプログラムにおいて重要な意味を持つ」と捉えている見解を述べている。加えて、「今回の基本合意はMRJの資産価値がマーケットで認められた証であり、今後のエアライン向け受注活動にも大きく寄与するものと考えている」とコメントしている。MRJはこれまでに407機を受注しており、今回のエアロリース社との基本合意が確定すると、MRJの合計受注機数は427機(確定233機、オプション機、オプション170機、購入権24機)となる。なお、リージョナルジェット機市場では今後、20年間でおよそ5,000機の需要が見込まれており、航空会社の導入に加えリースでの需要も伸びが期待されている。ローンチカスタマーであるANAは、2008年3月に25機(確定15機、オプション10機)を発注。飛行試験機5号機はANAの塗装仕様にて、国内での飛行試験を実施する見通しとなっている。この量産初号機の納入時期は、2015年12月に4度目の延期を発表しており、2017年第2四半期から1年程度先延ばしとなった。また、JALも2015年1月に32機を確定発注しており、JALへの納入は2021年開始を目指している。(c)2016 MITSUBISHI HEAVY INDUSTRIES, LTD. All Rights Reserved.
2016年02月16日主翼の内部構造についてはすでに書いたが、今回は、その主翼と胴体が取り付く部分にまつわる話を取り上げよう。案外と考えなければならない話が多い分野である。○高翼・中翼・低翼飛行機は主翼の枚数に応じて、「単葉(主翼が1枚)」「複葉(主翼が2枚)」「三葉(主翼が3枚)」といった分類がなされる。昔は複葉機が普通で、時には三葉機もあったが、今では単葉機が普通だ(たまに例外があるが)。その主翼が胴体に取り付く位置の違いにより、複数の区分ができる。この場合の位置とは前後方向の位置ではなくて、断面形状に対する上下方向の位置だ。具体的にいうと、胴体の下の方に取り付く「低翼」、胴体の真ん中辺に取り付く「中翼」、胴体の上の方に取り付く「高翼」、胴体から離れた上方に主翼を配置して支柱で支える「パラソル翼」に分類できる。飛行中は、揚力を発生する主翼が胴体を含めた機体全体を支えるのだから、主翼の強度部材である桁(翼桁)と、胴体の強度部材である縦通材やフレームを強固に結合しておかなければ、飛行機は空中分解してしまう。低翼機の場合、以前に取り上げたセンターウイングボックスの両側に主翼を取り付けて、その上に胴体が載る格好になる。分割はされているが、左右通しの主翼の上に胴体が載っていると考えて差し支えない。ところが、中翼や高翼だと話がややこしくなる。主翼を構成する桁を左右通しにすると、それが胴体のド真ん中、あるいは上方を突き抜けて横切る形になり(これをキャリースルーという)、機内のスペースに食い込んでしまうからだ。だから、中翼や高翼配置の機体だと、桁の構造に工夫をしたり、機内配置に工夫をしたりといった例がいろいろ出てくる。○ケーススタディ(1)B-29とランカスター例えば、ボーイングB-29スーパーフォートレス爆撃機は中翼配置である。ところがこの機体は爆撃機だから、機内に爆弾を積み込むためのスペース(爆弾倉)を確保する必要がある。さらに厄介なことに、爆弾を投下する前と後で重心位置が大きく変動しないようにする必要があるので、爆弾倉の位置をやたらと前方あるいは後方に寄せるわけにはいかない。しかも、空力的安定性を確保するには、重心位置を主翼の揚力中心位置より前方に持っていかなければならない。とかなんとか、さまざまな要因を考慮した結果、主翼と胴体の結合部ではキャリースルーが胴体を左右にぶち抜いて、その前後に爆弾倉を分割配置することになった。こうすれば主翼に邪魔されずに十分な高さを確保できるが、長さには制約ができる。そこで問題になったのが、中央部のスペースを占拠している主翼と爆弾倉によって、機内が前後に分断されてしまうこと。これでは前後の往来ができない。そこで、爆弾倉の上部に人がはって通れるぐらいのトンネルを設けて、前後の往来を可能にした。同じ第2次世界大戦中の爆撃機でも、アブロ・ランカスターは主翼の位置が比較的上に寄っている。そのため、爆弾倉もB-29のような前後分割ではなく、単一の長い爆弾倉になっている。そして、その爆弾倉の上をキャリースルーが左右に貫通している。総面積が同じでも、複数の狭い部屋に分かれた状態よりも広い1つの部屋にまとまっているほうが、なにかと柔軟性がある。これは爆撃機の爆弾倉も同じで、単一の広い爆弾倉に小型爆弾をたくさん積むことも、大型爆弾を少数積むこともできた。その代わり、爆弾倉の高さはB-29ほど大きくない。そして、胴体を横切るキャリースルーに人が通れるぐらいの穴を空けて、前後の往来を可能にしている。○ケーススタディ(2)C-130ハーキュリーズ今の軍用輸送機の「公式」を作ったのはロッキードC-130ハーキュリーズだといって差し支えはないだろう。その「公式」とは、高翼配置にするとともに降着装置を短くまとめて、機体を地面に近づけるとともに後部ランプを設けるというものだ。こうすることで、人や貨物の積み降ろしに際してタラップや昇降台を用意する必要がなくなるし、車両は後部ランプから自走で積み降ろしできる。というだけでは、話が終わらない。貨物を積み込むスペースは凸凹していない、シンプルな四角い箱になっているほうがありがたい。先のランカスターの爆弾倉の話、あるいはクルマのトランクルームのことを考えてみれば容易に理解できる話だ。ところが前述したように、飛行機として軽く、強く造ることを考えると、左右の主翼を構成する翼桁を左右通しにして、胴体とガッチリ結合する必要もある。また、降着装置を収容するスペースも必要になる。低翼配置の民航機なら、機内を2層構造にしてキャビンの床下に翼胴結合部や降着装置収容スペースを設けるところだが、軍用輸送機では胴体をまるごと単一の空間として使いたい。ということで、主翼は高翼配置にして、機内への食い込みを最低限に抑えている。降着装置も、胴体の両脇に張り出しを設けて、そこに収容することにした。これが、C-130で確立した「軍用輸送機の公式」である。ただし、機内への翼胴結合部の張り出しを完全になくすまでには至らず、たいていの機種では程度の差はあれ、張り出しが残っている。その部分は前後の部分よりも天井高が低く、そこの天井高によって、積み込むことができる貨物の最大高が決まる。機種によっては、胴体の上部に張り出しを設けて主翼を取り付けることもある。その方が機内上部の張り出しを少なくできて、空間確保の面で有利だが、空力や構造の面では面倒かもしれない。航空自衛隊向けに開発中の川崎XC-2が、そんな傾向の強いデザインだ。ちなみに、なにかと話題のV-22オスプレイも同様に、主翼は胴体の上に設けた張り出しに取り付いている。機内空間の確保という理由もあるだろうが、もっと大事な理由もある。オスプレイは海兵隊の人員輸送機として使用する関係上、艦上運用も考えなければならない。そして艦上では場所をとらないように、主翼とその両端に取り付いたエンジンを一緒に、グルッと回転させて前後向きにしてしまう。それをやるには、主翼が胴体内部に食い込んでいては具合が悪く、胴体の上部に飛び出している必要がある。つまり、オスプレイの翼胴結合部は他の軍用輸送機と違い、回転させるためのメカが組み込まれているわけだ。その模様は、米国海軍のニュースサイトの記事「First Production V-22 Joins Flight Test Program」に載っている写真で確認できる。
2016年02月15日三菱航空機は2月10日、次世代リージョナルジェット機MRJ(Mitsubishi RegionalJet)の飛行試験機初号機による飛行試験を再開した。2015年11月11日に初フライトとなった飛行試験機初号機はその後、フィードバック改修作業と機能試験を実施。この改修作業では業主翼と胴体の結合部に局部的に薄板が追加され、2月10日の飛行試験では改修後の確認を中心に、太平洋側の空域で約1時間半かけて試験飛行を行った。(c)2016 MITSUBISHI HEAVY INDUSTRIES, LTD. All Rights Reserved.
2016年02月10日前回は主翼の構造を取り上げたので、今回は胴体の構造を取り上げてみよう。ただし、機体の用途によってかなりの違いがあるので、まずは身近な輸送機の話から始めることにする。○輸送機の胴体は茶筒であるここでいう輸送機には、軍用輸送機と、いわゆる民航機(旅客機・貨物機の両方)を含む。要は、「大きな筒状の胴体内に人やモノを積む飛行機」である。登山をする方なら御存じの通り、高度が上がると気圧や気温が下がる。そのままでは人が過ごすには具合が悪いので、機内は温度と圧力を高めて、特別の装備がなくても普通に過ごせる程度の環境を維持している。機内の気圧を高める操作あるいは仕組みのことを与圧という。ところが、与圧をかけると機体の内外で圧力差が生じて、それに起因する負荷が胴体の構造部にかかってくることになる。そこで、輸送機の動体は円筒形、あるいはそれに近い断面形状にするのが一般的だ。四角い断面形状にすると、角の部分に負荷が集中してしまうから、円筒形にする方が軽さと強度の両立という点から見て有利だ。胴体の断面形状がどうなっているかは、旅客機に乗ってみれば容易に理解できる。外から見れば胴体断面が円筒形になっているのは一目瞭然だし、機内でも窓側の席に座っていると、側壁が湾曲している様子が分かる。その胴体の内部構造はどうなっているか。まず、前後方向に走る骨組み(縦通材)と円周方向に走る骨組み(フレーム)を組み合わせており、その外側に外板をリベット止めした構造である。ただし、リベットが外に突出していると凸凹になって空気抵抗を増やすので、外板の中にリベットの頭を埋め込んだ、いわゆる沈頭鋲を使用するのが普通だ。つまり、輸送機の胴体は「内側に縦横の骨組みを入れて強度を持たせた、巨大な茶筒」である。鶏卵だと殻だけで強度を維持しており、内側に骨組みはついていないが、飛行機の胴体だと卵の殻のようにはいかないので、骨組みを加えて強度を持たせている。ただし、茶筒といっても前端部と後端部はそれぞれ絞り込んだ形にしないと空力屋から文句が出るし、そもそも強度を維持していない。そこで、半球ないしはそれに近い形状にして強度を持たせている。ちなみに、1985年の日航ジャンボ機墜落事故で問題になった圧力隔壁とは、この半球形の後端部のことである。実際にはその後ろまで胴体構造は続いているが、圧力隔壁より後ろは与圧の対象になっていない。旅客機だと内装材が取り付けられているので、胴体の内部構造を見ることはできない。そこで現物を見る機会としてお薦めしたいのが、自衛隊や在日米軍の基地公開。たいてい、何かしらの輸送機が来て一般公開されるが、そのときには機内も見せてくれることが多い。そして、軍用輸送機の機内は実用本位で、内装パネルはなく断熱材だけだ。だから、胴体を構成する縦通材やフレームがそのまま見える部分がある。余談だが、この辺の考え方は潜水艦も似ている。前後を半球ないしはそれに近い形にした筒で構成するところは、まるで同じだ。ただし潜水艦の場合、圧力は中からではなく外からかかる。○胴体の断面形状いろいろ強度を持たせることを考えると、胴体の断面形状は真円にするのが一番いい。そして、大きくなるほど強度面の要求が厳しくなるから、必要なスペースを確保しつつも、最小限の直径で済ませたい。しかし、輸送機として使うことを考えると機内スペースの確保という課題もついて回る。少なくとも、機内で人が立って歩ける程度の高さはないと困るから、これで高さの最小値は決まってしまう。これが問題になるのは、どちらかというと小型の機体ではないかと思われる。大型機なら必然的に直径が大きくなるから、機内で人が立てるぐらいの高さは確保できる。例えば、ボーイング747の胴体外径は6.49メートル、エアバスA330/340の胴体外径は5.64メートルもある。しかし、機体を小型にまとめるために直径を小さくして、かつ真円にすると、幅もさることながら、高さが足りなくなってくる。だから、縦長の楕円形胴体断面にする機体も結構ある。三菱MRJがこれだ。小型の単通路機になると、この手の胴体断面が増えてくる。また、ボーイング707みたいに上半分と下半分で異なるサイズの円筒形にして、両者をつなぐこともある。境界部分に角ができるので強度の面では不利だが、過度に大きくしないで、かつ所要のスペースは確保する、という観点から導き出された手法。ボーイング747の前半部やエアバスA380みたいに客室を2層構造にすると、真円では大きくなりすぎるので、こちらも楕円形あるいは2つの円筒を組み合わせた構造になる。この場合にはもちろん、上のほうが小さい断面になる。ちなみに、規模が異なる複数の機種をラインアップしているメーカーでは、胴体の断面を共通化することがある。例えば、ボーイングの707/727/737、エアバスのA300/A330/A340が、そういう関係に当たる。○機体構造の寿命とサイクル数前述した与圧の関係で、機体が上昇して周囲の気圧が下がると、胴体には内側から外側に向かう圧力がかかるので、いくらか膨張する。機体が下降すると逆になる。つまり、1回のフライトごとに「延び」と「縮み」の変化が1回ずつかかることになる。だから、フライトを多く繰り返した機体は、それだけ胴体の構造材が傷んでいることになる。そこで注意しないといけないのは、製造から経過した年数とフライトの回数が必ずしも一致しないことだ。例えば、長距離国際線の機材では、胴体の伸縮は1日1~2回程度で済む。しかし、短距離国内線やLCCの機材は1日に何フライトもするから、胴体の伸縮は1日に何回も発生する。もちろん後者のほうが、胴体の構造材にかかる負荷は増えるし、金属疲労が起きやすい。針金を手でポキポキと曲げたり伸ばしたりしていると、そのうちポキンと折れてしまうが、それと似ている。だから、ボーイング747には「-100SR」という日本国内線専用モデルがあった。通常の「-100」よりも機体構造や降着装置を強化して、頻繁な離着陸に起因する負荷繰り返しの増大に耐えられるようにしたモデルである。
2016年02月01日エアバスは現地時間の1月28日、イランがエアバスと新造機の購入および民間航空産業における包括的協同に関して協定を締結したことを発表。加えて、エアバスとイラン航空はエアバス機の導入(73機のワイドボディ機と45機の単通路型機)に関して同意した。この同意内容には、導入機材の効率的な運航と運航開始を支援するパイロットや整備士の訓練、サポートサービスの提供が含まれている。さらに、イランの道路・都市開発大臣によって、イランの民間航空産業の近代化計画の一環として包括的協同の同意が締結された。これにより、航空交通管理(ATM)の開発や空港および航空機の運用、規則に関する調和、技術および学術訓練、整備、修理、産業協力の支援が実施される。これらの同意は、1月16日に履行された包括的共同作業計画(JCPOA)および関連する規則と指標の一環として締結された。また、イラン航空は合計118機のエアバス機を導入することで同意した。内訳は、A320ceoファミリーが21機、A320neoファミリーが24機、A330ceoが27機、A330neoが18機、A350-1000が16機、 A380が12機となっている。
2016年01月29日三菱航空機は1月29日、次世代リージョナルジェット機MRJ(Mitsubishi RegionalJet)に関するWEB情報発信ツール「MRJ Newsletter」第9号にて、2月上旬に初号機の飛行試験を再開するとともに、ローンチカスタマーであるANA向けのMRJ量産初号機に対して領収検査を開始したことを発表した。2015年11月11日に初フライトとなった飛行試験機初号機は、次のフィードバック改修作業を完了し、現在、機能試験を実施している。今後、走行試験を経て2月上旬に飛行試験を再開する予定となっている。飛行試験機初号機に関して、2015年5月に静強度試験に基づく解析予測を実施した結果、一部の部位(胴体中央部の主翼結合部品・胴体フレームの一部品)に通常の荷重を上回る終極荷重をかけると強度が不足することが予測された。航空機の型式証明を取得するためには、飛行中に実際に機体にかかる最大荷重の1.5倍に耐える強度を持つように定められている。そのため今回のフィードバック改修では、主翼と胴体の結合部に局部的に薄板が追加された。なおこの改修は、初期の飛行試験段階では問題視されることではなかったが、最終的に型式証明を取得するために改修を行ったとしている。飛行試験機初号機と2号機に対して、アビオニクスや操縦系統、エンジン系統等のソフトウェアの改修を施し、同3号機は機能試験実施中、客室内装が施される4号機と5号機は最終艤装(ぎそう)作業中で、内装品の組み付け調整作業等を行っている。また、全飛行試験機には主要な構造組み立てや脚の取り付けが完了しており、試験用の計測装置等を組み込まれている。ANAに対するMRJ量産初号機に関しては、1月13日に三菱重工飛島工場にて領収検査を実施。今回の検査対象は主翼骨格組み立てで、ANAの領収検査員が立ち会った。領収検査は製造工程の中で検査ポイントを設け、各胴体・主翼・尾翼等の構造組み立て状態や、各部位の結合状態・艤装状態等を顧客が立ち会って検査するというもの。最終的には機体完成後の地上検査や飛行検査を通じてMRJを受領することになる。ANAの領収検査員からは、「とてもキレイな機体で、ていねいに作られていることが分かりました」と検査合格を得た。また1月18日には、アイルランドのダブリンにてMRJファイナンス・カンファレンスを開催。同地では例年同時期に大規模なファイナンス関係の国際会議が開かれており、同会議についても各国より集まっている金融機関、リース会社、機体評価会社、エアライン等の業界関係者約110人が参加した。会ではMRJの特性や最新開発状況の説明を行うとともに、パートナー会社2社による主要装備品説明のほか、MRJの価値査定プロセス、欧州におけるリージョナルジェット市場や一般的なリージョナル機の資産価値について説明を行ったという。(c)2015 MITSUBISHI HEAVY INDUSTRIES, LTD. All Rights Reserved.
2016年01月29日ゼンリンは1月26日、無人航空機(ドローン)産業の発展を支援する日本UAS産業振興協議会(JUIDA)およびドローン・インテグレーターであるブルーイノベーションと共同開発したドローン専用飛行支援地図サービスの実証実験を開始したと発表した。同サービスは空港周辺や人工密集地などの飛行許可申請が必要な空域に加え、ゼンリンが収集した石油コンビナートなどの飛行危険空域を最新の地図情報に重ねて表示するというもの。また、ブルーイノベーションが開発したユーザーや機体情報の管理機能なども提供する。実験期間は3月中旬までで、実証実験中はモニター利用登録することでPC、スマートフォンのブラウザなどから無料で利用することが可能。同実証実験を通じてモニターからの要望や改善事項を収集し、4月以降のサービス開始を目指すとしている。
2016年01月26日これまで「航空機とIT」というテーマで連載を続けてきたが、ITという切り口だけでは取り上げられる範囲に限りが出てくる。ちょうど三菱MRJの初飛行などもあって航空分野への関心が高まっているように見受けられたので、技術面・全般に話を広げて新たな連載を始めることにした次第だ。○主翼は揺れるもうだいぶ昔の話になるが、職場で上司に「この間、飛行機に乗ったら、主翼がユサユサ揺れてるんだけど、あれって大丈夫なの?」と聞かれたことがある。筆者は「そういうもの」だと承知しているから驚かないが、事情を知らないと、ビックリして怖くなってしまうのも無理はないかもしれない。飛行機の主翼といっても、いろいろある。主翼の形状を示す指標の1つにアスペクト比というのがあって、要は主翼がどれぐらい細長いかを示すものだ。戦闘機だと、前後方向の幅(翼弦長)が大きい一方で横幅(翼幅)は短いから、アスペクト比は小さい。速度性能を重視した選択である。対する旅客機の場合、翼弦長は小さめで翼幅は長い、つまりアスペクト比が大きい。その極めつけはグライダーで、もっと細長い主翼を付けている。太くて短いものよりも、細くて長いもののほうが変形しやすそうに見える。そこで変形しないように頑丈に作ろうとすると、重くなってしまって、飛行機にとっては具合が悪い。飛行機にとって、過剰に重たいことはそれだけで罪である。また、頑丈な主翼を作ろうとすると構造が複雑かつ大掛かりになり、主翼が分厚くなってしまう。それでは空気抵抗が増えるなどのネガが発生する。そして、主翼が細長いのにガッチリして変形しないと、外部からかかる力を受け流すことができない。「柳に風」とでも言えばいいだろうか、適度な弾性を備えていて柔軟にたわむ主翼のほうが、外力を受け流すには具合がよい。こうした事情があり、大型のジェット機が出現した頃から、アスペクト比が高い主翼は弾性体として作るのが普通になった。だから、飛んでいる最中に反り返ったり、ユサユサ揺れることがあっても不思議はない。この設計思想を本格的に取り入れた機体というと、ボーイングB-47ストラトジェット爆撃機が挙げられる。その次に登場したB-52ストラトフォートレスはさらに顕著だ。どちらも、地上にいる時と空を飛んでいる時とでは、翼端の位置がメートル単位で変化する。もちろん、飛んでいる時のほうが翼端が持ち上がっている。B-52を目にする機会はあまりないが、民航機だと顕著にわかるのがボーイング787だ。経済性を重視する最近の民航機は、抵抗軽減のためにアスペクト比を以前よりも大きくとる傾向が強まってきており、その関係もあって、遠目にも「ああ、787だ」とわかるぐらいに主翼が反り返っている。もちろん、こういう変形が発生することは設計した時点で織り込み済みであり、飛行する度に主翼が反り返ったり元に戻ったりという繰り返し荷重を受けて、それでも壊れないことを疲労試験機による地上試験で確認している。○主翼に穴が開くといっても、爆発して穴が開くとかいう話ではなくて。旅客機に乗って主翼より後方の窓側席に座っていると、主翼の様子を見ることができる。巡航中は普通の翼に見えるが、離着陸時にはあれこれと動翼が開いたり、せり出したりする様子がわかる。よくよく見てみると、上面と下面が素通しになっていることがあるので、知らないとビックリするかもしれない。揚力を稼ぐため、離着陸時にはフラップ(下げ翼)というものを降ろす。それによって、主翼の面積を広げる効果とか、下向きの気流を発生させる効果とかを発揮させることで、低速時でも十分な揚力を得られるようにしている。こうしないと離着陸時の速度が高くなってしまい、操縦が難しくなるなどのネガが出る。ボーイング747はトリプル・スロッテッド・フラップといって、降ろした下げ翼が途中で分割された三分割構造になっている。こうやって隙間を作り、そこから気流が吹き出すようにしないと、かえってフラップから空気の流れが剥離してしまい、揚力を持てなくなってしまうのだ。それと比べると、最近の民航機はフラップの構造がシンプルになった。設計・製作・保守する立場からいうとシンプルなほうが好ましいのだが、メカマニア的見地からすると面白くない。と、この辺の話は回をあらためてきちんと書くことにして。ともあれ、「主翼の下面にはフラップを展開する」。一方、主翼の上面にはスポイラーが展開する。こちらは前ヒンジでシンプルに開くだけでそれによって空気抵抗を増やして空力ブレーキとする。飛行中に使用することもあれば、着陸後に使用することもある。さて。フラップもスポイラーも主翼の後側に付くものだが、下方にフラップ、上方にスポイラーが展開すれば、その間の空間は吹き抜けになり、上から下が素通しになる。もちろん、そこを空気が通り抜けることは承知の上で、それを前提とした設計になっているから、これによって強度が落ちるとか揚力が損なわれるとかいうことはない。安心して乗っていただきたい。今回は外から見て分かる話だけを書いたが、次回はその主翼の中がどういう構造になっているかを書いてみよう。
2016年01月18日クルマ全体のエレクトロニクスをまるで眺望するかのように設計できるツールが現れた。クルマや航空機、宇宙船のように巨大なシステムを設計する場合に、全体を眺望できれば個々のサブシステムの設計はよりしやすくなる。同時に、サブシステムの設計者全員がシステム全体を鳥瞰でき、自分はシステム全体のどこを設計しているのか、一目で理解できるようになる。こういった巨大システムの設計に便利なツールCapital System製品を2種類、米Mentor Graphics(日本法人はメンター・グラフィックス・ジャパン)がリリースした。最近では、巨大なシステムの中で動く個別のシステムはサブシステムとは言わず、やはりシステムと呼ぶ。System of Systemsという言葉で表現している。クルマでは、エアコンやインテリア照明、エンジン点火装置、排気装置、エンジン冷却装置、ギアボックス、トランスミッション、パワーウィンドウ、パワーステアリング、ブレーキ、ABS(横滑り防止)、アクティブセイフティ、エアバッグ、航行コントロール、適応型の航行コントロール、電源、バッテリ管理などさまざまなシステムをECU(電子制御ユニット)が担う。クルマ全体で数十~数百モノECUをどのように配置し、それをワイヤハーネスでどうつなげるか。Mentorの新製品はこれを一目で見られるツールである。クルマでは、個々のシステムがプリント回路基板(PCB)ハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク情報、電気配線システムからできている(図1)。個々のシステムの機能や特長を記述するのに、パワーポイントやエクセル、あるいはワードなどさまざまなアプリケーションソフトを使っているため、ハードウェアの記述とソフトウェアやネットワーク情報の記述データの交換程度しかできない。そこで、今回の新製品(図2)は、データ駆動型のソフトウェアともいうべきもので、全体に適用できるだけではなく、ハード、ソフトなど個々のテクノロジーにも使え、さまざまなECUシステムをエレガントに接続する。新製品の1つ「Capital System Capture」は図2の左上の図のように、全体の機能や特長を記述し、大まかな接続情報も加える。このツールを使って製品を記述すると、いろいろなソースから集められた機能設計の抽象化を作り出し見える化できる。信号を通して機能や配線を捉え、このあと機能レベルを実行するためのガイダンスを提供する。これらの機能はハードウェアとソフトウェア、ネットワーク情報(IOマルチプレクサ)、電気の量を表わしている。このソフトのメリットは何か。ハードとソフト、ネットワーク、電気配線など各専門の設計者のコラボレーションを育成できる。コンセプトの段階から、これらのチームとのやり取りをスピーディにできる。システム設計者のために設計を再利用できる。もう1つの新製品「Capital System Architect」は図3のように、記述された機能や特長をクルマの上にマッピングする。クルマのどこにパワートレインやシャーシ、ボディ、ADASシステムなどを配置し、それらをつなぐか、を一目で見えるように鳥瞰図を書く。Capital System Architectは、いろいろな機能のモデルを集め、それらをロジックのプラットフォームに落としていく。その結果、ロジックと物理的な中身を構築するごとに修正しながら出力するような形に合成する。そして、ユーザーが定義したルールと制約条件を使って制御していく。設計の狙いが正しく行われているか、作りつけのDRC(デザインルールチェック)を使って検証する。その出力は、個々の工程での設計プロセスとツール(ハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク情報、配電用ロジック)を実現するための提案形式になっている。このようにして鳥瞰してそれぞれのシステム設計者にまるで落とし込むように仕様を手渡す。このプロセスのメリットは何か。各ECU特有の最適化をするとコストがかかるが、全体を鳥瞰するため、そのコスト上昇を避けることができる。目標を達成するために各設計者とコラボレーションしてやり取りし、全体最適を図ることができる。この手法は開発から生産設計へとシームレスに流すこともできる。こういったツールが出てきた背景には、ADAS(先進ドライバー支援システム)や自動運転のようにIT系と車体の制御系の2つを利用するシステムが大規模化してきたためである。図4のように、例えば前方のクルマや障害物に衝突しそうになる時に自動的にブレーキがかかるようなシステムは、レーダーシステム、障害物との距離を計算するシステム、クルマのスピードを測定するシステム、ブレーキ制御システム、計算した結果危険を知らせる警報システム、警報をLCDに表示するシステム、警報をLEDに点滅させて知らせるシステム、などECUだけでも数が増えてしまう。それらをつなぐワイヤハーネスの情報も必要だ。それぞれのECUだけを手掛けていてはADASシステム全体としての最適状態を把握できなくなってしまう恐れがある。このCapital Systemsは、各ECU内部を詳細に表現しない。むしろ、全体のECUやネットワーク、配線のハーネスなどを把握し、鳥瞰できることであり、詳細を表現することではない。しかし、各ECUの設計段階に入り、それぞれの詳細設計に取り組んでいる時にハードウェアやソフトウェアで変更があれば、すぐさま設計者全員に変更点をフィードバックして再評価・検証することができる(図5)。こうしておけば全体から自分が設計するECUへの影響を把握でき、全体最適に近づくことができるようになる。この新製品ツールは、各ECU設計者同士のやり取りを初期の段階からでき、変更点などの確認評価もできることが最大のメリットだ。だからこそ、クルマ全体の最適化するための時間が短縮でき、しかも間違いのないクルマを作ることができるようになる。
2016年01月15日ボーイングとエアバスはこのほど、2015年(1~12月)の業績を発表。ボーイングは民間航空機部門において762機、エアバスは635機(10社の新規顧客を含む85社)となり、ともに過去最高の引き渡し機数となった。内訳は、ボーイングでは737が495機、747が18機、767が16機、 777が98機、787が135機で前年比39機増の762機となり、エアバスはA320ファミリーが491機、A330が103機、A380が27機、A350 XWBが14機で、前年比7機増の635機となった。一方、純受注数(総受注からキャンセルを引いた機数)を見てみると、ボーイングは768機となったが、エアバスは53社から1,036機の純受注数を獲得している。なお、2015年12月時点での受注残は、ボーイングは同社最大の5,795機、エアバスは航空史上最大の6,787機となっている。
2016年01月13日エアバスは現地時間の1月12日、航空機リスト価格を平均1.1%引き上げたことを発表。1月1日から全てのエアバス航空機に適用されている。単通路機を見てみると、ピーチをはじめ国内のLCC(低コスト航空会社)が運航しているA320は9,800万ドル、2016年にローンチが予定されているA320neoは1億730万ドルに設定。双通路機では、2014年にローンチされJALも購入するA350 XWBは、A350-900が3億810万ドル、A350-1000が3億5,570万ドル、A350-800が2億7,240万ドルとなる。エアバスの旅客機では最大となる総2階建てのA380-800は、4億3,260万ドルに定められている。2016年リスト価格(ドル)A318: 7,510万A319: 8,960万A320: 9,800万A321: 1億1,490万A319neo: 9,850万A320neo: 1億730万A321neo: 1億2,570万A330-200: 2億3,150万A330-800neo: 2億5,230万A330-200F: 2億3,470万A330-300: 2億5,640万A330-900neo: 2億8,770万A350-800: 2億7,240万A350-900: 3億810万A350-1000: 3億5,570万A380-800: 4億3,260万
2016年01月13日今回のお題は、日本国内でも就航している旅客機「エアバスA320」の一族である。A320に加えて、短胴型のA319や長胴型のA321があるから、それらを総称すると一族という表記になるわけだ。なぜか筆者は日本国内では乗ったことがなく、アメリカでだけ乗ったことがある。それも、ワシントンDCのダレス空港からラスベガスのマッカラン空港までという長距離路線で。と、そんな話はともかくとして。○売り物はハイテクエアバスA320は、流れとしてはA300シリーズに続いて登場した第2作であり、機体規模は先行するボーイング737に近い。初飛行は1987年、就航は1988年のことである。外見は旅客機として一般的なもので、特に変わったところは見受けられない。乗客として機内にいる分には、これも他の旅客機と比べて大きく違いがあるわけではない。一般的な単通路機である。ところが、コックピットに入ると一変する。第71回で取り上げたボーイング757/767より後から登場した機体だから、グラスコックピット化されているのは当然と言えるし、ディスプレイ装置の画面はこちらのほうが大きい。それより何より、正副操縦士席の前にニョキッと立っているはずの操縦輪がないのが最大の特徴である。これは、F-16と同様にフライ・バイ・ワイヤ(FBW)を導入するとともに、操縦輪を止めてサイド・スティックにしてしまったせいだ。ただし、F-16は右手でサイド・スティック、左手でスロットル・レバーと決まっているが、A320は正副操縦士席で配置が逆になる。つまり、右席の副操縦士は右手でサイド・スティック、左手でスロットル・レバーを操作するが、左席の機長は左手でサイド・スティック、右手でスロットル・レバーを操作する。最も使う重要な操縦装置が左右逆転して混乱しないのかと思うが、もともとスロットル・レバーは正副操縦士席が並列配置なら右手操作だったり左手操作だったりするものだし、案外とすんなり慣れることができるのかもしれない。単に見た目がスッキリするとかハイテクっぽいとかいうだけでなく、サイド・スティックにすると身体の前の空間に余裕ができるし、テーブルを設置して書類などを広げる余地もできる。A320機が「ハイテク化された旅客機」と呼ばれる場合、それを構成する主な要素はFBWとサイド・スティックの組み合わせ、それとグラスコックピットであると言える。○旅客機をFBW化する利点ただし旅客機の場合、F-117Aみたいに「ステルス性を重視したために、飛行制御コンピュータがないとまともに飛べない」なんていうことはない。運航の安全を考えればレーダーで監視してもらうほうがありがたいのに、レーダーに映りにくくしてどうする。無論、戦闘機みたいに「わざと空力的に不安定な機体を作っておいて機敏に飛ばす」なんていうニーズも存在しない。安全に、安定して、滑らかに飛ぶことが第一である。とはいえ、操縦操作次第では危険な領域に入ってしまい、例えば機首上げの度が過ぎて失速するような場面はあり得るかもしれない。そこでFBW化して飛行制御コンピュータを介することで、危険領域に入るような操縦操作をした時に飛行制御コンピュータが介入して、危ない操縦操作を抑制するような使い方が可能になる。その代わり、飛行制御コンピュータがどういう場面でどういう介入の仕方をするのか、あるいはどういう機体の動かし方をするのか、といったことをパイロットがきちんと承知していないと、操縦操作と飛行制御コンピュータの喧嘩になり、かえって事故が起きる可能性につながってしまう。という話は以前にも書いた。そこのところをきちんと対処していれば、何も問題はないわけだ。ただ、ソフトウェア制御の部分が増える分だけ、ソフトウェアのテストや熟成は重要になる。A320の話ではないが、FBWのソフトウェアに起因する問題によって墜落事故につながった事例、皆無ではない。○ハイテク化に走った理由では、エアバスがどうしてこのような路線を歩むことになったのか。これは個人的な推測だが、民間旅客機の市場で先行するアメリカ勢に追いつき、追い越す際の武器として、経済性とか信頼性だけでなく、さらに何かしらの「武器」が必要だったのではないか、ということだ。そこで前述したようなわかりやすい「ハイテク要素」を取り入れて、先進性をアピールする手に出たのではないかということである。もちろん、コンシューマー商品とは違うから、単に「ハイテクっぽい」というイメージだけで販売につながるわけではない。しかし、ハイテク化という切り口から独自のメリットを訴求できれば、それは販売を後押しする効果につながると期待できる。「飛行制御コンピュータが、危険領域に入らないように対処する」なんていうのは、その一例である。グラスコックピット化にしても、他のエアバス機との共通性を維持して、機種移行を容易にしたり操縦資格を共通化したり、といった利点があるから、ちゃんとしたメリットを訴求できるハイテク化である。メリットがあるのかないのかよくわからなかった、乗用車のデジタルメーター(1980~1990年代にかけてだいぶ流行した)とは事情が違う。
2016年01月04日所沢航空発祥記念館(埼玉県所沢市)は2月7日13時~14時20分、1階研修室に公開講座「Honda航空機エンジン開発 挑戦の軌跡」を開催する。公開講座では、ホンダジェットのエンジンである「HF120」の開発について、本田技術研究所の野田悦生上席研究員を講師に迎え、開発当初から完成に至るまでの軌跡を様々な体験談を交えて紹介する。定員は60人で参加費は無料。参加希望者は、所沢航空発祥記念館のオフィシャルサイトまたは往復ハガキで申し込みとなる。応募はひとり1回のみで、応募締め切りはオフィシャルサイトからの場合は1月28日17時まで、往復ハガキの場合は当日必着となっている。定員を超えた場合は抽選となり、荒天等の理由により催事を中止することもある。そのほか詳細はオフィシャルサイトを参照。
2016年01月04日三菱航空機は12月28日、次世代リージョナルジェット機MRJ(Mitsubishi RegionalJet)に関するWEB情報発信ツール「MRJ Newsletter」第8号にて、12月2日にパートナーズカンファレンス開催、また、12月10日にボーイングとでカスタマーサポートに関してセレモニーを実施したことを発表した。12月2日には9度目となるパートナーズカンファレンスを名古屋で実施。パートナー各社を中心に国内外25社の幹部および関係者が一堂に集まり、飛行試験や開発・量産を中心とした広範な協議や意見交換を行った。同会議では、MRJプログラムへの支援に感謝の意を表し、パートナー表彰としてAIDC (Aerospace Industrial Development Corporation、台湾)とエアバスヘリコプターズ(ドイツ)、ナブテスコ(日本)を表彰した。また、12月10日にはシアトルのミュージアム・オブ・フライトにて、ボーイングおよび三菱航空機関係者でカスタマーサポートでの取り組みに対してセレモニーを実施した。同セレモニーは、顧客がいつでもどこでも素早く、最新のMRJのカスタマーサービスにアクセスできるウェブポータル「MMF(My MRJ Fleet.com)」の構築が大きなマイルストーンに到達したことを祝したもの。三菱航空機は2011年6月にボーイングとカスタマーサポートに関する支援契約を締結しており、同セレモニーでは「両社協力のもと、最良のカスタマーサポート体制を構築していく」とコメントしている。(c)2015 MITSUBISHI HEAVY INDUSTRIES, LTD. All Rights Reserved.
2015年12月28日三菱航空機と三菱重工業は12月24日、リージョナルジェット機「MRJ(Mitsubishi Regional Jet)」の量産初号機の納入時期を2017年第2四半期から約1年延期すると発表した。同社によれば、初飛行およびその後の試験飛行で機体の基本特性が良好であることを確認しているが、より完成度の高い機体にするため、試験項目の追加・見直しを行い、納入までのスケジュールを変更したという。同社今後、開発マイルストン管理を行い、進捗に合わせてスケジュール精度を高めていくほか、北米での飛行試験の早期実現、三菱航空機本社・シアトルエンジニアリングセンター・モーゼスレイクテストセンターの役割・体制を明確化し、各種作業の加速など施策を講じて、開発作業を推進していくとしている。
2015年12月25日