インターネットの発展によって、パソコンやスマホを使えば、いろいろな動画を見ることができる時代になった現代。配信サイトも多く存在しており、公開されている映画の中から作品を検索し、気軽に触れられるようになりました。そんな時代でも、映画館に足を運ぶ人は絶えません。大きなスクリーンと優れた音響が備わったシアターで、多くの人と作品を見る…それが、映画館の魅力なのです。映画館で『盗撮らしき人』を見かけ…?映画館での出来事を漫画に描き、Twitterに投稿したのは、漫画家の福井セイ(@fukuisei)さん。ある作品の公開初日に、胸を弾ませながら映画館に向かったところ、気が散ってしまうような出来事に遭遇したといいます。映画館いったら隣の人が盗撮してそうだった体験談(2/2) pic.twitter.com/mBf3VI8zKa — 福井セイ@かけあうつきひ (@fukuisei) May 5, 2022 一般的に、音や光が上映の妨げになるため、上映中は携帯の電源をオフにするよう推奨されています。にもかかわらず、隣の席の人はスマホを取り出すどころか、カメラをスクリーンに向けるような動きを取っていたのです。勇気を出して福井さんがスタッフに声をかけたことで、なんとか盗撮行為を防ぐことができました。彼らがなんの目的で盗撮をしていたのかは分かりません。ですが、もし福井さんがスタッフに報告をしなければ、ネット上に公開されるなど、動画が悪用されていた可能性があります。投稿は拡散され、盗撮行為に対する非難の声や、犯罪を防いだ福井さんの勇気ある行動に称賛の声が寄せられました。・素晴らしい対応!投稿者さんに、今後いいことがありますように。・こういうのって犯罪以前に、周囲の人が作品に集中できなくなるから本当に迷惑。・平然と盗撮するだなんて、怖すぎる…。「盗撮かも?」と思ったらスタッフに報告を!文化庁は映画の盗撮行為について、たとえ私的使用が目的であっても、著作権法に基づき10年以下の懲役、もしくは1千万円以下の罰金、またはその両方が科せられると警告。また、映画業界や多くの施設が、シアター内で不審な人物を見かけた場合は、スタッフに報告するよう声を上げています。福井さんのように、相手が盗撮行為をしているかの判断が難しいケースもあるでしょう。確証のない状態でスタッフに報告をするのは、気が引けるものです。ですが、勇気を出してスタッフに盗撮の可能性を告げることによって、犯罪を防ぐことができるかもしれません。映画という1つの文化の未来を守るためにも、盗撮行為には「NO」といい続けていきたいですね。[文・構成/grape編集部]
2022年05月06日映画監督の園子温(その・しおん)さん、俳優としても活躍する映画監督の榊英雄さん、さらに俳優の木下ほうかさんの性行為強要疑惑が立て続けに一部週刊誌で報じられ、芸能界はもちろん世間に大きな衝撃を与えています。2022年4月13日には、俳優の橋本愛さんがInstagramのストーリーズ機能で、一連の問題に対するコメントを投稿。性被害や性暴力の被害者が受ける傷の深さ、告発する難しさを自身の言葉でつづっています。橋本愛「その思いを踏みにじるような言葉を投げかけないで」橋本さんは、性行為強要疑惑が報じられた後、「被害に遭った時に声を上げればよかった」「なぜ今更、告発をするのか」というコメントを見かける機会が多かったといいます。そうした考えを持つ人たちに対し「同様の被害に遭ったことがないのかな、と思いました」とし「もしそうならば、それはとても幸せなこと」「どうかずっと分からないままでいてほしいと思うほどです」と正直な思いをつづりました。一方で、なぜなのかが知りたいと思う人に対しては「分かってほしい」といい、こうも続けます。言えないんです。言葉を発そうとすると、たとえば口に汚物を塗りたくられたような感覚に。記憶を思い返すだけで、人の糞を無理やり口に、体内に捩じ込まれたような感覚に。とまで言えば、どこか体感として伝わるでしょうか。または全身を虫が大量に這うような感じ、もあります。耳や、口、鼻、目、に、虫がわらわらと侵入してくる感じ。です。感覚は人それぞれですが、私自身の感覚を表すとすれば、これが一例にあたります。たとえば窃盗なら、盗まれたものを取り返したい、そして、どこかで「取り返せるのではないか」という希望が持てるのだと思います。きっととても怖いしショックだけれどこの場合警察や然るべきところにすぐに相談される方は多いのではないかと思います。けれど、性被害は、一生、何があっても取り返せないんです。たとえ加害者が逮捕されようと、罰せられようと、どうなろうと。だから一番は、記憶を消すしかないんです。ai__hashimotoーより引用あまりにも生々しく、リアルな表現が並ぶ、橋本さんの投稿。被害者が受けた苦痛と嫌悪感、癒えることのない傷を負った絶望感が強く伝わってきます。また、だからこそ言葉にして被害を告発することは難しく、橋本さんはそれでも今回、声を上げた人たちを思い「それでもどうにか何かを変えたいと、なんとか言葉にしてくれた」とし「その思いを踏みにじるような言葉を投げかけないで」と訴えかけました。最後に「被害者の方々の気持ちは、全部私の想像なので、間違ってることもあるかもしれません。でも、私自身が想像した体感に、ウソは1つもありません」とつづった橋本さん。この投稿は反響を呼び「とても大きな意味がある投稿」とさまざまなコメントが寄せられました。・被害者に寄り添う姿勢が伝わってきた。・橋本さんの投稿で、勇気をもらった人も多いのではないだろうか。・影響力のある橋本さんがいうことで、被害者の苦痛が伝わってほしい。悲しいことに、性被害や性暴力は映画業界、芸能界に限った問題ではありません。今も誰かが被害を受け、声を出せずに苦しんでいるのです。被害者が受けた傷は癒えることがなく、過去を変えることができなくても、それでも被害を告発したその勇気は、もっと尊重されるべきではないでしょうか。そして、この声が大きくなり理不尽な被害を受ける人がいなくなることを多くの人が願っています。[文・構成/grape編集部]
2022年04月14日2022年4月4日、映画監督である園子温(その・しおん)さんに性的関係を迫られたという、複数の女性の証言を、一部の週刊誌が報じました。また、同年3月には俳優や映画監督として活躍する榊英雄さんや、俳優の木下ほうかさんの性行為強要疑惑が報じられています。原作者「映画業界の性暴力・性加害の撲滅を求めます」同月12日、作家の山内マリコさんと、柚木麻子さんが、「映画業界の性暴力・性加害の撲滅を求めます」という声明を発表しました。過去には、山内さんの作品『ここは退屈迎えに来て』『あのこは貴族』や、柚木さんの作品『伊藤くん A to E』が映画化されています。山内さんたちは、「物語がスクリーンに映し出される感動は、作者として何物にも代えがたい幸せ」とつづりました。一方で、「その作品がいかなるものであっても、自分の生み出した物語である責務を負う」と訴えています。原作者の名前は、映画の冒頭にクレジットされ、その作品がいかなるものであっても、自分の生み出した物語である責務を負います。映画制作の現場での性暴力・性加害が明るみに出たことは、原作者という立場で映画に関わる私たちにとっても、無関係ではありません。不均等なパワーバランスによる常態的なハラスメント、身体的な暴力、恫喝などの心理的な暴力等が、業界の体質であるように言われるなかで、今回、女性たちが多大なリスクを背負って性被害を告白したことは、業界の内外を問わず、重く受け止めるべきと考えます。声をあげてくださった方々の勇気に応えたく、私たちは、連帯の意志を表明します。原作者として、映画業界の性暴力・性加害の撲滅を求めます。ーより引用また、「映画業界の内部にいる人たちは声を上げづらい状況にあることを目の当たりにした」という、山内さんたち。映画業界と特殊な関係性を持つ原作者だからこそ、連帯し声を上げられると考えたことが、今回の声明を発表したきっかけだそうです。今後は、契約の段階から適切な主張を行っていくとともに、万が一、被害があった場合は原作者としてしかるべき措置を求めていけるよう、行動するそうです。映画界が抱える問題は、出版会とも地続き声明では、「映画界が抱える問題は、出版界とも地続きです」ともつづっています。これからは、出版界のハラスメント根絶のためにも、声を上げていくという、力強い意志を表明しました。声明には、数々の作家が賛同しています。山内マリコ「さすがにここでアクションを起こさないのは」声明とは別に、山内さんは自身のTwitterで、このように想いをつづっています。ステートメント【原作者として、映画業界の性暴力・性加害の撲滅を求めます。】公開しました。小説家は自作が映画化される際、蚊帳の外というか、直接なにか意見を言える機会はとても少なく、言っても反映されることはまずない無力な存在(わたしだけか)ですが、 — 山内マリコ (@maricofff) April 12, 2022 一連の性加害報道を受けて、さすがにここでアクションを起こさないのはどうなんだと思い、映画化経験のある知人作家まで、という小さな括りで賛同者を集めました。— 山内マリコ (@maricofff) April 12, 2022 また、「ここから何かが変わることを心から望みます」ともつづりました。山内さんたちの力強いメッセージに、ネットからも賛同の声が上がっています。・映画ファンとして、賛同します。勇気ある行動に拍手を送りたい。・声を上げることは大切なことだよね。一時的なニュースとして話題になるだけじゃなく、いい方向に変わっていかないと。・「素行は悪いけど、あの人の作る作品は素晴らしいから」ということがなくなることを祈ります。・素晴らしい、大切な一歩だと思う。作品を楽しむ側も、ハラスメントに対しては厳しい声を上げたいね。まずは、原作者として声を上げた18名の作家たちの勇気ある行動に拍手を送りたいですね。そして、この声明が、映画業界や出版業界のみならず、さまざまな業界によい影響をもたらすことを願います。[文・構成/grape編集部]
2022年04月13日宮本一馬容疑者(本人のSNSより)「あんま人をバカにしたしゃべり方すんなよ」「オレ、電車の中でも暴れるヤツだから」「女には手を上げへんけど、男には手を上げるからな」「ムカついたら普通にシバき回すぞ」傷害事件の逮捕後、宇都宮地検栃木支部の取り調べに対し、担当の男性検察官にそんな恫喝めいた暴言を吐いていたのは宇都宮市内のホスト・宮本一馬被告(28)。同支部は4月8日、本件での傷害罪、強要罪にとどまらず、検察官を脅迫した公務執行妨害罪を上乗せした3つの罪で起訴した。「手錠をかけられ、留置場に入れられてひと晩明かせば、たいていは冷静さを取り戻すのだが、宮本被告は違った。身柄を拘束されているのを忘れたかのように悪態をつきまくっており、犯行時とほとんど変わらない興奮状態にあったとみられる」(社会部記者)そもそもの犯行は今年1月23日のこと。JR宇都宮駅を発車した逗子行き電車の車内で、優先席に寝転んで加熱式たばこをふかしていたところ、乗り合わせた男子高校生(当時17)から「やめてもらえますか」と注意されて逆ギレ。高校生に土下座を強要し、それでも怒りはおさまらず、「クソガキ、おまえ、オレにしゃべりかけられる分際とちゃうんや」「ぶっ殺すぞコラ、ケンカ売ってるんじゃねえぞ」などと脅しながら、頭やからだに殴る蹴るの暴行を加えた。騒ぎに駅員が駆けつけ、途中駅で下車してからも暴行を続けるなどクールダウンする様子はなし。逮捕後、高校生のほうからケンカを売ってきたなどと「正当防衛」を主張したが、その割にはいったん現場から逃げているなど、どこまでも筋の通らない男だった。検事に対して“ボコボコにするぞ”「取り調べ中の担当副検事(男性検察官)に対しては、ほかにも“ボコボコにするぞ”“暴れるとき、まじ暴れるぞ”などと悪態をついており、そこが検察の牙城であっても“犯罪するヤツはどこでも犯罪すんねん”などと言い放ったようだ。検察側は起訴前、約2か月かけて宮本被告の鑑定留置を行い、公判で言い逃れができないように刑事責任能力があることを確認している」(前出の記者)週刊女性2月15日号で報じた通り、東京・新宿区の歌舞伎町などでホスト経験のある宮本被告は、SNSで両肩の入れ墨を見せたり唐突にシャドーボクシングしたりなど凄むようなところが多々あった。被害に遭った高校生は右頬付近を骨折する全治約6か月の重傷だったと判明。犯行態様も被害程度もひどく、その上、検察官を脅すなど反省の態度はみられない。“実刑にしてください”アピール起訴された3つの罪を裁判所が認めたとき、どの程度の罰則を受けることになるのだろうか。取り調べの現場では、検事を脅してくるようなことはよくあるのだろうか。元東京高検検事で元衆院議員の若狭勝弁護士に話を聞いた。「取り調べ中、暴言を吐く被疑者はいることはいます。そんなにしょっちゅうではなく、私が30年近く検事をやったなかで数件ぐらいですね。同僚には椅子を投げつけられた検事もいました」(若狭弁護士)取り調べを始めるとき、被疑者は手錠をはずされフリーハンドになる。もっとも、腰ヒモはつけたままで、ヒモの先を同行してきた警察官がうしろで握っているため暴れ続けることはできないという。若狭弁護士は、「ただ、検察官に暴言を吐いて脅したということで公務執行妨害罪で起訴されるケースはほとんどないと思います」と異例であることを指摘し、その狙いをこうみる。「反省の色がみられず、検察側は再犯のおそれが大きいと訴えたいのでしょう。報道で知る限り、カッとなりやすい激情犯という印象があります。検察官を前にしても暴言を吐いているのだから、拘束を解かれ社会に出たとき、一般人に対して何をするかわからないとの懸念を抱いているのではないか。犯行時は感情的に殴ったり蹴ったりした被疑者でも、検察官の前では普通は興奮が冷めて落ち着いているものです。検事に暴言を吐いたって、いいことは何もないんですから」(若狭弁護士)刑法に定められた傷害罪の罰則は、15年以下の懲役または50万円以下の罰金。強要罪は3年以下の懲役。公務執行妨害罪は3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金となっている。有罪認定されたとき、どの程度の罰則になるのだろうか。「まず、被害者が負ったとする全治約6か月のケガは程度として重い部類に入ります。これだけでも検察側の求刑が懲役2年を下回ることはないと思います。3つの罪で起訴された場合の罰則は、単純に1+1+1にはならないものの重い方向にいくのは確か。検察は強要罪と公務執行妨害罪を加味して懲役3年半から4年程度を求刑し、実刑判決をとりたいのでしょう」(若狭弁護士)懲役3年以下の判決言い渡しでは執行猶予がつくことがある。「検察はそれを上回る求刑をすることで、裁判官に“これは実刑判決にしてくださいよ”とアピールするんです」(同)公務執行妨害罪に加えて、公共交通機関でマナー違反を指摘した高校生に対し、逆ギレしてひどい暴力を振るった罪は法廷でこれから問われる。そこでは、入れ墨の威力も、恫喝めいた言動も通用しない。
2022年04月13日大人気マンガシリーズ、今回は永遠の厄年2人組(@eiennoyakudosi)さんの投稿をご紹介!「SNSの罠で不登校になった話」第11話です。ライブ配信をしながら自宅に突撃されたお兄さん。このことは学校に報告しましたが口頭注意で済まされてしまいました…。停学期間が終わり…出典:instagramクラス中に…出典:instagramお兄さんに説教…出典:instagram停学期間が終わり学校に行くとクラス中、誰一人としてお兄さんの味方はいませんでした。別室登校で頑張って学校に行きましたが毎回教師に説教をされ、学校に行けなくなってしまいました…!次回の配信もお楽しみに!(lamire編集部)(イラスト/@eiennoyakudosi)本文中の画像は投稿主様より掲載許諾をいただいています。"
2022年03月14日悲しいことに、世の中には悪事を働く人が一定数存在します。いくら対策をしても、被害がなくなることはありません。中でも金品の盗難はあらゆる手口で行われており、忘れ物を取られたり、バッグから抜き取られたりした経験のある人は少なくないといいます。M.J(@SaKuYaSub123)さんがTwitterに投稿したのは、スマホの盗難についての投稿。投稿者さんはスマホを盗まれた時に備えて、ある設定をしているといいます。多くの人から「この手があったか!」と声が上がった手法が、こちらです。Iphoneを盗まれた時のためだけに自分の電話番号をこれで登録してビビらせる pic.twitter.com/QHvubdFD2Y — M.J (@SaKuYaSub123) February 22, 2022 該当するスマホ以外の自身の電話番号を、警察署の名前で電話帳に登録している投稿者さん。これならスマホを失くした際に、家の電話機などから発信をすれば、盗んだ相手にこういった通知が表示されるのです。もちろん、これでスマホが戻って来る確証はありませんが、警察署から電話が来たと思った犯人は、あせってスマホを手放すかもしれません。投稿はまたたく間に拡散され、多くの人が斬新なアイディアに称賛する声を上げました。・なるほど!夫の携帯の登録名を、自分では偽物と分かる警察署の名前にしてみた。・確かに、これなら盗んだ犯人はビックリしそう。この手があったか!・スマホは2台持ちだから、これをやろうかな。家の電話でもできるね。スマホにはたくさんの個人情報が入っているため、盗難された際はデータを悪用されるリスクもあります。万が一の場合に備えて、ロックを登録したり、盗難防止グッズを使ったりと、いろいろな対策をとっておきたいですね。[文・構成/grape編集部]
2022年02月23日松山地方裁判所「娘の死は、旅先で知りました。頭が真っ白になって。ショックで涙も出ませんでした。八戸へ帰って納骨して、そこで初めて大声で泣きました。死なせなくてもいいじゃないですか。娘をここに連れてきてほしい」松山地方裁判所第41号法廷。パーテーションで囲われた証言台からは、娘を失った母の悲痛な思いがあふれていた。令和2年2月、松山市内のマンションで同居する女性を抑えつけて死亡させたとして、傷害致死容疑で起訴されていたのは平豊輔被告(38歳)。その裁判が今月2日から始まった。被害者は曾我道子さん(当時33歳)で、平被告が経営していた飲食店にママとして勤務していたことで知り合った。当時、平被告には妻子がいたが、事情があって別居しており、その間に曾我さんとは不倫関係に発展していた。そのうち曾我さんから離婚を求められた平被告は、紆余曲折あったものの離婚し、曾我さんとの将来を考えるようになっていた。ただ、ふたりはしょっちゅう口論から大げんかを繰り返すことがあり、警察が出動する騒ぎを起こしたことも複数回あったという。当時100キロ近くあったという平被告に小柄だった曾我さんは太刀打ちできるはずもなく、曾我さんはケンカの際に物を投げたり、大声でわめいたりすることがあった。事件が起きたその夜も、きっかけは些細なことだった。そして、揉みあううちに平被告は曾我さんをベッドにうつ伏せに抑え込むと、上半身に布団をかぶせ、そのまま彼女が静まるのを待ったのだが、おとなしくなった曾我さんはすでに意識を失っており、その後、死亡した。まさかの「無罪主張」、そのワケはこれまでの裁判では検察が傷害致死を主張したのに対し、弁護側はまさかの無罪主張だった。実は曾我さんには心臓に“気になる点”があったという。循環器内科への通院歴があったのだ。弁護側は、曾我さんは心臓の病気(冠攣縮性狭心症)で死亡した可能性を否定できないとし、法廷には検察、弁護側双方の証人として実際に曾我さんを診察した医師がふたりと、解剖を担当した医師が出廷した。医師らによれば、確かに心電図を見れば、曾我さんの心臓には気になる点があったという。しかし、それが重篤なものであったかどうかは「可能性」の話に終始した。曾我さんを最初に診察したかかりつけ医は、「冠攣縮性狭心症(からの致死性の心臓トラブル)の疑いは否定できない」とする一方で、かかりつけ医からの紹介で診察した総合病院の医師は、「可能性はあるが限りなく低い」と証言。そして、それが死亡の要因になったかということについては、解剖した医師がその解剖結果から否定した。一方で、なぜ平被告が曾我さんをそこまで抑え込んだのかについては、2人の体格差を考えれば「やりすぎではないのか」という印象はあったし、検察も曾我さんの母親も、「そこまでする必要性があったのか」ということを問うていた。あの日、本当は何があったのか。被告人質問では、あの日の出来事のみならず、それまでの「壮絶な日々」が平被告から語られた。明らかになったDV被害被告によると、曾我さんは、酒を飲むと豹変することがあった。仕事柄、飲酒をしないというわけにもいかず、平被告は店のマネージャーらに飲ませすぎないようにと注意していた。仕事モードのときの曾我さんは、ところ構わず暴れることはなかったが、仕事から解放されて平被告がそばにいるときに限って、豹変したのだという。しかも何が気に入らないのか、何で怒っているのか、スイッチがいつ入るのかもわからないため、平被告は酔っている曾我さんと接する際は言葉にも気を付けていた。しかし、いったんスイッチが入ると、走行中の車内から平被告の私物を投げ捨てる、車から飛び降りようとする、ハンドルにつかみかかるなど命の危険すらいとわない行為に及んだ。実際に危険を感じた通行人に110番されたこともあった。また、自宅の壁という壁は曾我さんが暴れた際にできた穴が無数にあり、気に入らないことがあるとベランダから大声で叫ぶ、飛び降りるそぶりをする、挙句には室内に放火をするなど、その行為は常軌を逸していた。3度目の通報で駆けつけた警察官から、平被告がDV被害者に当たるとの指摘を受けたこともあった。平被告はとにかく抑えつけなければ何が起こるかわからないという「恐怖」を感じ、曾我さんが暴れるたびに抑えつけては、暴れ疲れて眠ってくれるのをひたすら待っていたという。あの夜、曾我さんは被告にスマホを見せてきた。出勤前の和服姿を見せたかったようで、「これ見て」といってスマホを平被告に渡した。しかしそのカメラロールの中に、元カレの写真があるのを被告が見つけてしまう。日付は、ふたりが同居し始めたよりもあとのものだった。説明を求める平被告に対し、表情を一変させた曾我さんはスマホを返せとわめくと、包丁を握った。そして、平被告の左胸下部にぐいっと突き付けたという。それまでにも刃物を持ち出されたことはあったというが、突き付けられたのはこの夜が初めてだった。平被告はこのとき、「実際に刺されたと思った」と証言した。「ケータイ(スマホ)返せ!ぶっ殺すぞ!」平被告がスマホを返すと、いったんは落ち着いたように見えた曾我さんだったが、ブツブツと何か言いながら室内をウロウロと歩き回り始めた。「テーブルの上にハサミがあって……。これまでも興奮するとハサミやボールペンを振りかざすことがあった」思いついたように曾我さんがテーブルへと走ったのを見た平被告は、慌てて彼女を捕まえるとそのまま寝室のベッドへと引きずりこむ。ベッドに引きずったのは、フローリングだと倒れ込んだ際に二人ともがケガをするかもしれないと思ったからだという。布団に抑えつけられてもなお、「ぶっ殺す!」とわめく曾我さんの両足を挟み込み、両手も手首をつかんで抑えつけた。5~10分経過しただろうか、おとなしくなったのを確認して、平被告はいったんその場を離れた。口の中が切れていた。「なんでこんなケンカせないかんの」そう言いながらベッドルームへ戻ると、曾我さんは起き上がり、すぐにまた興奮し始め、今度は窓に手を伸ばした。平被告は以前曾我さんが飛び降りようとしたことを思い出し、再び彼女を抑え込んだのだった。しかし、しばらくして彼女の異変に気付く。平被告は119番して救急隊からの指示のもと救命措置を施したが、曾我さんが息を吹き返すことはなかったという。大切な人だった。だから別れなかった検察は平被告の行為を、「殴ったり蹴ったりするより命の危険性が高く悪質」とし、曾我さんの非をあげつらうような主張を繰り返していて反省していないと非難、むしろ“死人に口なし”で都合のいいところだけを話すことも可能だとした。そして、2回目の抑え込みの際に曾我さんは凶器も持っていなかったのだから抑え込む必要などなかったとして懲役7年を求刑した。弁護側はあくまで病死の可能性が否定できない以上、因果関係が成立しないとして無罪を主張。また、解剖を担当した医師に正確な情報が伝わっていなかった可能性も指摘し、曾我さんの平被告へのDVについても裏付けがあるとした。すでに保釈され、実母と暮らしている平被告は終始冷静な態度で裁判に臨んでいたが、事件当日の曾我さんの和服姿を見せられると証言台で号泣した。「裁判では曾我さんが暴れていた場面を説明するために、酔っていた時の曾我さんばかりを思い出していたが、本当に心に残るのは笑顔の曾我さん。(別れろと周囲から言われたが)大切な人だった。だから別れなかった。」青森で生まれ育った曽我さんは、両親にとって流産を繰り返した上に生まれた宝物だった。松山へ来てからも、一人で暮らす母親に月15万円を仕送りしていた。平被告はすでに支払った700万円の慰謝料のほかに、曾我さんがしていた仕送りと同額を受け取ってもらえるならば今後も仕送りし続けたいと話した。「私、このままだと(平被告に)殺されるかも」生前、母にそう話していたという曾我さん。DVに走る一方で、心療内科へ自ら通院もしていたという。「殺されるかも」という言葉の本当の意味は、どうしようもない衝動を曾我さん自身が悩んでいたがゆえに出た言葉だったのかもしれない。殺されてしまった以上、その真相が明らかになることは二度とない。「死なせなくてもいいじゃないですかーー」。曾我さんの母親の悲痛な叫びを、被告はどう受け止めたのだろう。令和4年2月18日、松山地方裁判所は平被告に対し、懲役6年の実刑判決を言い渡した。事件備忘録@中の人昭和から平成にかけて起きた事件を「備忘録」として独自に取材。裁判資料や当時の報道などから、事件が起きた経緯やそこに見える人間関係、その人物が過ごしてきた人生に迫る。現在進行形の事件の裁判傍聴も。サイト『事件備忘録』: ツイッター:@jikencase1112
2022年02月22日こんにちは。子育てアドバイザーの河西ケイトです。先日、オンラインでの研修で参加していたお母さん方から「子どもが性犯罪に合わないためには、どうしたらいいですか?」と相談を受けました。子どもを守るために私達大人ができることはどのようなことでしょうか。今回は「性教育」についてお話したいと思います。スキンシップ前の声掛けで「自分の身体は大切」という感覚を養う皆さんはお子さんとスキンシップを図っていますか? スキンシップは子どもの不安な気持ちを安心に変えるために、とても必要なことです。しかし、不用意に予告なく行うスキンシップは子どもの心を傷つけることになることを知っていますか? 私達大人もいきなり抱きしめられたり抱っこをされたら、びっくりしますよね。それは子どもも同じです。私は保育士時代に、子どもの人権を常に考えながら仕事をしていました。例えば、0歳児だろうが1歳児だろうがおむつを交換するとき、着替えをさせるとき、どんなに忙しくても子どもに一言「先生がおむつ変えてもいいかな?」と聞くようにしていました。周りの先生からは「忙しんだからさっさと脱がせて変えればいい!」と言われていましたが、「私達大人がいきなりパンツを脱がされたらどうか? 子どもだから許されるわけではない!」と先輩たちと常に戦ってきました。もちろん、やり取りの中で子どもからの返事はありませんが、実はこうした会話を子どもとすることで、子ども自身が自分と他人の境界線を学ぶきっかけにもなるのです。また、オムツ替えでは便が出た際も「いいうんちが出たね」「すっきりしたね」など肯定的な声がけをして、排泄を取り替えることがマイナスではなくプラスになるような配慮をしています。そうすると、パンツに移行する際のトイトレでも、恥ずかしがらず排泄があったことを教えてくれるようになります。「プライベートゾーン」を教える「プライベートゾーン」を教えることも、自分の身体を大切にすることにつながります。プライベートゾーンとは、水着で隠れる部分と、口のことを指します。私は3歳の担任をした時、必ず子どもたちに対して、このプライベートゾーンのことを教えていました。紙に裸の人間の絵を描いてクラスの子どもみんなに「人の前に出るとき、どこを隠せば良いのか」を質問し、実際に子どもたちが隠す部分に好きな色を塗るという活動を行い、塗り終えたあとに、どうしてそこを隠そうと思ったのか、子どもたち一人ひとりに答えてもらいました。子どもの意見を聞きつつ正しい知識を伝えていくと、今までおままごとコーナに裸で置かれていた人形に対して「これは恥ずかしい姿だ!」と子どもたち自ら洋服を着せるようになったり、プールの着替えではしっかり大切な部分を隠して着替えられるようになったりなどの姿が見られるようになりました。「3歳に性教育は早い!」と思われるかもしれませんが、自分の身体が大切だということを教えるのに、早いも遅いもありません。こうした関わりが、子どもを性犯罪から守ることにもつながるのです。身体の部位をしっかり教えていく子どもが身体の部位に関心を持ち始めたら、性器などの名称とそれらがどのような働きをするのかをしっかり教えましょう。私達大人は、目・口・鼻などの身体の部位に関してはしっかり教えるのに、性に関する部位はなぜか隠そうとします。隠すから余計知りたくなり、自分で触ってみたり、友達のものを触ってみようとするのです。部位の話をしっかりし、子どもが身体を一人で洗えるようになったら、自分の性器は自分でしっかり洗うように声をかけていきましょう。性器をしっかり洗い清潔に保つことは、健康上とても大切なことです。また、性器を親に洗ってもらうことが「他人に触られても気にしない」と繋がる恐れもあります。自分で洗うようにすることで、「ここは簡単に触らせてはいけないんだ」と学ぶきっかけにもなります。そして、性器に触られそうになったら「いやだ!」と大声を出して逃げることを繰り返し伝え続けてください。今回は、性教育についてお話させていただきました。子どもが性犯罪に巻き込まれ無いために、普段からしっかりと正しい知識を伝え続けていく。また、親自身が「自分がされたらどうか」と子どもの立場に立ち、人権を守っていくことも大切かもしれませんね。
2022年02月17日請川左稀容疑者(本人のフェイスブックより)「故人には悪いけど、あんなことしてたら、ろくな死に方せんと思うとったよ」近所の住民男性は、意味深な言葉を口にした─。昨年12月1日朝7時ごろ、大阪市生野区の川崎勝哉さん(82)が3階建て自宅の2階にあるベッドの近くで血だらけで倒れている姿を知人が発見。119番通報するも、すでに手遅れだった。川崎さんの妻は3階に寝ていたが、気づかなかったようだ。■家に押し入ってハンマーで撲殺 大阪府警が生野署に捜査本部を設置。捜査を続けた結果、1月19日に大阪府八尾市の解体工事会社を営む請川正和容疑者(44)、その妻の左稀容疑者(23)、大阪市生野区の建設作業員・野木俊夫容疑者(58)の3人を強盗殺人の疑いで逮捕した。警察の取り調べに対して正和容疑者は、「ハンマーで頭や顔を複数回、殴って殺した。会社の経営がうまくいっていなかったため、金を奪おうと思ったが見つからなかった」などと供述。「正和容疑者は自宅1階で川崎さんの妻が切り盛りしている居酒屋に何度か飲みに行っており、資産家である川崎さんの情報収集をしていた。3階建ての自宅とその裏にある別宅は2階でつながっているなどの内部構造を調べ、下見までしたうえでの犯行。別宅のベランダにはしごをかけて侵入したのです」(全国紙社会部記者)自宅へ侵入したのは、主犯格の正和容疑者だけだった。「妻の左稀容疑者はトラックやはしごなどを準備し、野木容疑者はそのはしごを支えていた」(同・全国紙社会部記者)請川容疑者夫婦は、数年前に結婚。1年前に現在のメゾネットタイプのアパートに子ども1人を連れて引っ越し、間もなく2人目の子どもをもうけた。正和容疑者について、近所の住民は、こう話す。「向こうから挨拶してくれるような、気さくな人。でも、いつも忙しいようで、子どものことはすべて奥さんに任せっきりだった印象ですね」■分厚い札束を取り出して…妻の左稀容疑者はというと“挨拶すれば、応える”というタイプだったようで、「あんまり社交的ではなかった。SNSにあるパッと性格が明るそうな美人さんに見える彼女の写真は、かなり盛ってますね(笑)。茶髪でヤンキーっぽいところは合ってるけど。でも子育てを頑張っていましたよ」(別の近所の住民)一方、被害者となった川崎勝哉さんはというと、「昔から飲食店や散髪屋など手広くやっとった。今もビル経営にコインランドリーもやってた」(近所の住民、以下同)川崎さんはそうとう羽振りがよかったようで、「喫茶店で勘定するとき、分厚い札束を取り出して“ここから抜いてええよ”って。ひけらかしてたけど……あれはダメだよね」さらには、こんな話も。「“わしは金貸しもやってる。生野でも何番目かで古いんやで”って威張っとった。柄の悪い男数人と飲んでて“こいつらに取り立てをやってもらってるんや”ともね」左稀容疑者のSNSには、ラブラブな新婚生活ぶりが綴られていた。《この前ご飯作ってくれた 仕事終わりで疲れてるのにありがとうね。》地道に働くことに疲れたのか……強盗夫婦に以前のような甘い生活はもう戻らない。
2022年02月01日宮本一馬容疑者(本人のSNSより)「ニュースを見て“アイツらしい情けない事件を起こしたな”と妙に納得してしまった。相手をみて態度を変えるヤツだから。年下の高校生ならば優位に立てると思ったのだろう」と容疑者を古くから知る男性は呆れる。この大人げない事件があったのは1月23日の日曜日、正午ごろのこと。JR宇都宮駅始発の宇都宮線直通・湘南新宿ライナー逗子行きが次の雀宮駅を発車したころ、友人3人と乗り合わせていた高校2年の男子生徒(17)が、優先席に寝転んで加熱式たばこを吸う男に思い切って声をかけた。「お兄さん、たばこを吸っていますね。やめてもらえますか」男は無視していたが、男子生徒から繰り返し注意されると、身を乗り出すように顔を近づけ威かく。男子生徒がたまらず押し返したところ、「てめえ、手を出しやがったな。土下座しろ」と逆ギレして暴行が始まった。■男子生徒に逆ギレ暴行して逃亡男子生徒がやむなく土下座して「すみませんでした」と謝ると、その頭を踏み付け、「ふざけんなよ」とさらに逆上。男子生徒の友人や、男の連れの知人男性、駆けつけた女性車掌が制止しても突っぱね、殴る蹴るの大暴れ。男子生徒と引き離されても再び近寄って手を出すなど怒りはおさまらず、途中下車した自治医大駅のホームでも殴っている。「警察ざたになるのをおそれたのか、男は車掌の隙をみてホーム上の階段を駆け上がり、そのまま逆側の階段を降りて乗ってきた電車にふたたび飛び乗ると東京方面に逃走した。被害に遭った男子生徒は救急搬送されている。同日午後11時20分すぎ、JR宇都宮駅に戻ってきたところを捜査員が職務質問すると、大筋で事実を認めて抵抗することなく任意同行に応じた」(捜査関係者)栃木県警下野署は日付の変わった24日未明、男子生徒に複数回暴行を加えケガを負わせたとして宇都宮市内に住む飲食店従業員・宮本一馬容疑者(28)を傷害の疑いで緊急逮捕した。■評判最悪の現役ホスト同署によると、暴行の事実を認める一方、「相手がはじめにケンカを売ってきて、自分の首に手を押し付けてきたのでやり返しただけ。正当防衛だ」などと供述している。男子生徒は右頬骨付近を骨折するなどの重傷。さんざんな休日となった。社会部記者の話。「一部メディアの取材に生徒の父親は“自分は悪くないのに結局、土下座させられて、靴で頭を踏まれた行為は精神的に辛かったろう”などと心の傷が残ることを心配していた。事件後、被害生徒は悔しさと悲しさをにじませていたという。容疑者はこの寒さの中、半袖のTシャツ姿で暴行におよんでおり、上腕部のタトゥーをチラ見せしてビビらせようとした可能性がある」身柄確保のときは黒色のダウンジャケットを着ていたというから、車内での喫煙前後にあえて脱いだのだろう。真っ当な注意をうながした高校生を“返り討ち”にした宮本容疑者は、宇都宮市内のホストクラブに勤務する現役ホスト。市内の飲食業界関係者によると、昨年12月に東京・新宿歌舞伎町から来たばかりにも関わらず、逮捕前から知られた存在だった。「評判は最悪だね。ホストクラブの聖地と呼ばれる歌舞伎町から来たことを鼻にかけていた。ホスト歴が長いせいか自分の意見は全部正しいと思っていて、意にそぐわない行動を取ると、すぐに暴力を振るう。上から目線の嫌なヤツだって」(市内の飲食業界関係者)面識のある20代ホストは「悪いけど関わりたくない」と言葉少なだった。奈良県橿原市の出身。成人したころ栃木県内で暮らしていたことがある。ホストデビューは“西のホストクラブ聖地”の大阪ミナミ(心斎橋)とみられ、ここでも悪評ふんぷん。トラブルを起こし、約4年前に追い出されるようにして歌舞伎町へ。しかし、なぜかアウトローを気取ってSNSにこんな投稿をしている。《1万円だけ握りしめてきました。お客様も完全ゼロからなのでご来店お待ちしてます。貧乏生活スタートです》1泊か2泊カプセルホテルに泊まったくらいで、どん底といわんばかりの雰囲気も。前出の飲食業界関係者は、「結局、歌舞伎町でも通用しなくなったということでしょ」と吐き捨てた。■無意味にシャドーボクシング両腕の上腕にタトゥーを入れ、右腕には花びら少なめの桜吹雪。若いころはサポーターで隠すこともあったというが、ここ数年はSNSでも見せるようになっていた。宮本容疑者を古くから知る冒頭の男性はその人物像をこう明かす。「カズマは同級生とはつるまず、いつも後輩とばかり遊んでいた。どうしても自分が上に立ちたいんだろう。後輩の挨拶の仕方が半端だと“おまえら挨拶がなってねえぞ”と叱り飛ばし、一目置かれている同級生には自発的に頭を下げる。相手を見て態度を変えるんだよ。常にオラついて(いきり立って)いるくせにケンカは弱く、同級生や下級生にボコられたこともあった」素行の悪い仲間に群がるギャルには全くモテなかったという。こんなエピソードも……。「路上でサラリーマンと肩がぶつかると、少し歩いてから“チッ、やっちまえばよかったかな”と手のひらを拳で叩く。よく無意味にシャドーボクシングしたり、年下相手に“肩パン(肩にパンチ)させてくれ”と言い、嫌がる様子を楽しんでいたそう。そうやって偉ぶるくせに後輩とは割り勘なんだって」(同・知人男性)事件当日、宮本容疑者は都内に向かうところだったといい、乗車したときから大声で連れと話すなどマナーが悪かったという。同じ車両に乗り合わせた乗客は何もしなかったわけではなく、犯行の一部始終を録画したり、車掌に連絡するなどできる限りの“援護射撃”をしている。民放テレビ局のニュース番組に提供された車中の動画には、土下座した男子生徒を脅す様子が捉えられていた。「クソガキ、おまえ、オレにしゃべりかけられる分際とちゃうんや」「ぶっ殺すぞコラ、ケンカ売ってるんじゃねえぞ」男子生徒の勇気ある行動に感心し、どうにか助けようとした乗客は確かにいた。SNSで、感謝の気持ちを忘れてはいけないと“男道”を説く宮下容疑者。筋の通らない逆ギレ暴行は、男道に外れると思わなかったのか。
2022年01月31日※写真はイメージです大きな事件から、あまり知られていない小さな事件まで。昭和から平成にかけておきた事件を“備忘録”として独自に取材をする『事件備忘録@中の人』による「怖い女」シリーズ、第3弾。今回は不倫相手との間にできた子どもを、生んでは次々と“捨てた”母親の話。あまりにも残忍な行為に、言葉を失う。◆◆◆嬰児(えいじ)とは生まれて間もない赤ちゃんのことを言う。かつては貧しい寒村などで食い扶持(ぶち)を減らす「間引き」として行われることもあった、嬰児殺し。それは、生後間もなければ間もないほど、その罪の意識は軽かったという。時代は変わり、飢えや貧しさからの嬰児殺しは減ったとはいえ、平成・令和となってもその理由は別にして後を絶たない。望まぬ妊娠を誰にも言えず出産してしまった若い未婚女性のみならず、すでに子を持つ母がそれを繰り返す……。■「押入れの秘密」平成17年12月、和歌山のマンションの一室から、ビニールにくるまれた遺体のようなものが発見された。警察で調べたところ、ビニールの中身は嬰児とみられる遺体。さらに、室内を捜索すると押し入れの中の衣装ケースから2体の遺体が出たのだ。見つかった嬰児の遺体は全部で3体。いずれも腐敗、白骨化しており、その大きさから乳児とみられた。そしてそれらの遺体はそれぞれ死亡時期が異なっていた。警察がこの部屋の住人の行方を捜したところ、この部屋は3年前から子持ちの夫婦が契約していることが分かったが、夫は先月交通事故で死亡、妻と幼い子どもはその半年以上前から行方不明だと判明。死体遺棄事件として捜査が始まり、3日後、大阪府内にいた妻の身柄を確保し事情聴取したところ、押し入れの遺体はすべてこの女が生んだ子であると認めた。そして女は、「ほかにも遺体がある」と告白した。女の名は、真梨子(仮名/当時49歳)。逮捕時、8歳になる息子と一緒だった。真梨子は捜査員に対し、過去に暮らしていた大阪府内の民家で、出産間もない嬰児を殺して隠したと話していた。捜索の結果、供述通どおりの家から衣装ケースに入れられた嬰児の白骨化した遺体が発見される。ところが話は終わらなかった。真梨子は、発見された4人以外に、もうあと2人、捨てたと話していたのだ。真梨子はどのような人生を送っていたのか……。■不倫相手の子を「生んでは殺す」昭和32年に和歌山県で生まれた真梨子は、非常につらい幼少期を送っていた。「置屋(※)」で働く母親のもとで育ったが、家にはしょっちゅう、複数の男性が出入りしていた。小学生のときにその男のうちの一人にレイプされ、以降も性的虐待は続いたという。真梨子は自殺未遂も起こしていた。中学3年で妊娠。このときは中絶したものの、卒業と同時にその時の交際相手の男性宅で同棲をはじめ、16歳を過ぎて結婚した。10年間で子どもは4人生まれた。夫の家族は厳しく、日々、真梨子は主婦として、母親としてだけの日々を送っていたが、親切にしてくれた男性と不倫関係に陥ってしまう。そして、真梨子はその不倫相手の子を身ごもってしまった。大阪の自宅で出産したが、この子は殺そう、そう決めていた。遺体を衣装ケースに隠すと、真梨子は何事もなかったかのように日常に戻っていく。こんなことがあったにもかかわらず不倫はやめられず、結果、「妊娠すれば生んで殺して隠す」を、この家で暮らした18年間で3度繰り返した(のちに真梨子はそう自供したが、平成17年の発見時には、大阪の自宅からは3体あるはずの遺体のうち、1体の遺体しか見つかっていない)。平成2年、離婚が決まった真梨子は部屋に遺体を隠したまま、子どもたちを置いてその家を出た。ときは流れて平成8年、和歌山市内でホステスをしていた真梨子は、内縁関係を経て9歳年下の男性と再婚する。2人の間には男児も生まれていた。子煩悩で明るく、仲のいい夫婦と周囲には見えていたというが、真梨子はまたしても夫以外の男性と関係を持つ。そして、不倫相手の子を妊娠してしまった。ひとり自宅で出産した真梨子は、これまでと同じように遺体を家の中に隠し、夫との生活を続けたという。しかし平成17年、真梨子は息子を連れ、突如夫と暮らすマンションから姿を消す。押し入れの秘密はそのままにして。その後、夫が事故死したことで関係者が自宅の整理に訪れ、遺体が発見されたのだった。■家族は気づかなかったのか昭和48年以降、12人を出産し5人を殺害(真梨子の供述によれば6人殺害遺棄であるが冒頭陳述で検察は5人殺害とし、さらに時効成立により実際に罪に問われたのは和歌山で発見された3人の殺害死体遺棄)し遺棄したという恐るべき母親に対し、平成19年4月25日、和歌山地裁は「動機は短絡的で人の親としてあるまじき非道な行為」として懲役8年(求刑懲役9年)の判決を言い渡した。この事件は、未婚の女性が処置に困って、と言ったものではなく、すでに子どもがいる母親によって繰り返された嬰児連続殺人という点、家族らと暮らす家に遺体を隠すなど、さまざまな点で異様な経過をたどった。不可解な点もあった。それぞれの時期、夫をはじめ、家族らは何度も妊娠出産を繰り返す真梨子の異変に気付かなかったのかということである。真梨子はもともと、ふくよかな体型だったというが、それにしても夫も気づかないということなどあり得るのだろうか。真梨子が大阪の家を出たあと、何年にもわたって自宅に隠されていた遺体の存在をまったく知らなかったというのも気にかかる。大阪の元夫と義母は、真梨子が逮捕され遺体が発見される日までその家で暮らしており、これについて、警察ジャーナリストとして知られる故・黒木昭雄氏はルポの中で「最初の結婚が破綻したのは、夫が嬰児殺しに気づいたからではないのか」という指摘をしている。物置の遺体に気づかなかったのではなく、見て見ぬふりだった可能性はなかったのだろうか。それは、事故死した2人目の夫にも言える。マンションという広くない空間の中で、夫は押し入れの秘密を知らなかったのだろうか。前出の黒木氏の取材によれば、夫は真梨子らが失踪したあと、あきらかに様子がおかしくなっていたという。会社ではミスを連発、円形脱毛症にもなり同僚らの手助けやアドバイスを拒むだけでなく、自宅マンションに帰りたくない、と漏らしていた。夫は真梨子の失踪後、一緒に暮らしていたマンションをそのままにして別のマンションへと引っ越している。遺体は一緒に暮らしていたマンションから発見されているため、遺体の存在に気づいていた可能性もある。彼が亡くなったという事故の状況も不自然だった。彼は車を運転中、走行中のトレーラーに、後方からノンブレーキで突っ込んでいたのだ。そこで黒木氏は、夫はもしかすると真梨子が家を出たあとに「押入れの秘密」に気づいてしまい、もうその部屋で暮らし続けることができないと悩んでいたのではないか。マンションの契約を続けながら別のマンションに引っ越すわけだが、そのことに悩んだ挙句の自殺だったのでは、と考察している。夫が事故死したあと、夫が暮らしていたマンションに現れた真梨子。その部屋で何かを探し始めたが、目当てのものが見つからなかったのか、何も持たずに部屋を出たという。これまでの生活でも、真梨子はふらりと家を出ては戻ることがあったという。しかし、このときの家出中の夫の引っ越しと事故死は誤算だったと思われる。裁判では真梨子の精神鑑定を行った医師が、真梨子は自身が体験した虐待的養育を、自身の子どもに対して殺害・遺棄という形で“再演”した、と証言した。加えて、9歳のころから中学まで続いた性的虐待が人格形成に深刻な影響を与えたと裁判所も認めた。子どもを産み、殺し、隠し続けた真梨子。一方で子ども思いの面も垣間見れ、離婚当初は残してきた子どもらに服を届けることもあったという。しかし、裁判で真梨子ははっきりと証言した。「子どもをかわいいと思ったことなど、一度もない」事件備忘録@中の人昭和から平成にかけて起きた事件を「備忘録」として独自に取材。裁判資料や当時の報道などから、事件が起きた経緯やそこに見える人間関係、その人物が過ごしてきた人生に迫る。現在進行形の事件の裁判傍聴も。サイト『事件備忘録』: ツイッター:@jikencase1112【参考文献】読売新聞平成17年12月15日大阪朝刊、平成19年1月25日大阪朝刊毎日新聞平成17年12月15日大阪朝刊、12月17日大阪夕刊、平成18年3月2日大阪朝刊、平成19年4月25日大阪夕刊産経新聞平成17年12月20日大阪朝刊、平成18年1月7日大阪朝刊『和歌山嬰児5人殺害事件 あまりに悲しい女被告の半生』(週刊朝日 2006.2.3 p.30~35、2006.5.5・12 p.34~35)『11人産んで6人を死なせた容疑者の女と不可解な警察発表-追跡 和歌山・嬰児殺害遺棄事件』黒木 昭雄 著※「置屋」とは、芸者や遊女を抱えている家のこと
2022年01月29日荒木秋冬容疑者が住んでいた家賃月2万円の借家「幼少期から問題児やったけど、あんなことをするなんて……。でも、結果的に誰も傷つけなくて、よかった」と、容疑者の小学校の同級生は胸をなでおろしていた。1月8日午後9時ごろ、東京・渋谷区のビル1階にある焼肉店で物騒な籠城事件が起きた。住所・職業不詳の荒木秋冬(あきと、28)容疑者が見せかけの爆弾を所持して男性店長(49)を人質に立てこもったのだ。店長は《爆弾を起動した。警察に連絡しろ。騒ぐな》というメモを容疑者から渡されて、すぐさま110番通報。近所の飲食店店主によると、「ちょうど店仕舞いをしようとしていたら、パトカーや消防車がたくさんきて、驚きましたよ。警察官が規制線を張っていて火事かなと思っていたんですが、自宅でテレビを見て“立てこもりだ”とようやくわかりました」(近所の飲食店店主)110番通報から約3時間後、警視庁は隙を見て店長を救出。さらに捜査員が閃光弾を投げ入れて突入し、荒木容疑者を監禁容疑の現行犯で逮捕した。■捕まる前に焼肉が食べたかった容疑者は昨年10月に起きた京王線内の刺傷事件に触発されたなどと供述。また、2週間前に故郷の長崎県を出て、東京では路上生活をしていたという。警察の取り調べに対して容疑者は、「生きている意味を見いだせず、警察に捕まって死刑になればいいと思った。場所はどこでもよかったが、捕まる前に焼肉が食べたかったから」などと告白している。容疑者は、長崎県南島原市で生まれた。この街は有明海に面していて、ほとんどの住民が半農半漁で生計を立てている。容疑者の父親は植木職人兼板前、母親は介護士だったという。近所の住民はこう話す。「父親は先妻との間に息子がいた。そこへ容疑者の母親が嫁いで、長女、次女、そして秋冬容疑者が生まれた。だけど、彼が小学校へ入る前に、両親は離婚。母親は長女、次女、容疑者と3人を連れて、父親の実家を出て、同じ町内の家賃月2万円の一戸建ての借家へ移り住んだとよ」■お賽銭を盗んどったし母親の女手ひとつで育った容疑者。冒頭の小学校の同級生によると、「お母さんと2人のお姉ちゃんはやさしい人なのに、彼だけは小学校時代からヤンチャで問題児だった。神社のお賽銭を盗んどったし、家出をしてその神社で寝泊まりしていたことも。ほかの子をいじめとったし、イタズラも度が過ぎとったから、友達もいなかったと思う。ばってん、明るい子やったけん」中学校に上がると、剣道部に所属したのだが、「すぐに辞めて、帰宅部になった。勉強はからきしダメやったしね」(中学校の同級生)県立高校に進むと、今度はラグビー部へ。しかし、それよりも情熱を注いだのが、バイクだった。「毎日、ブンブン乗り回してウルさかった。近所の同級生は“割とおとなしかばってん、なんば考えとるかわからん不気味さがあった”というとったよ」(近所の主婦)容疑者が高校を卒業するころになると、家庭環境に変化が。長女と次女が次々と結婚して家を出ていき、母と息子の二人暮らしになったという。「秋冬が卒業して塗装業に就いたのをきっかけに、南島原市内の借家から母親の実家近くの一軒家に引っ越したんじゃないかな」(前出・中学校の同級生)容疑者はその後、故郷を飛び出して東京へ。「捜査関係者によると、容疑者の母親は“定職に就かず引きこもりになって、突然いなくなった”と話しているそうです」(全国紙社会部記者)“死刑になりたい”と供述した容疑者。ヤンチャでも明るかった少年が辿り着いたのは、底なしの深い闇だったーー。
2022年01月18日保育園時代の小倉美咲ちゃん警察庁の統計によると全国の行方不明者は年間8万人超。うち、9歳以下の子どもが1000人強も!なぜ子どもたちは突然消えてしまったのか。残された親たちはどうすればいいのか―。2件の行方不明事件に迫った。年間約8万人─。この数字は日本全国の警察に届けられる行方不明者の数である。警察庁によると、統計が残っている昭和31年以降は年間、8万〜11万件を推移していたが、平成18年以降は8万件台が続き、直近の令和2年は約7万7000件と最も少なかった。それでも1日当たり200件以上の届け出がされている計算だ。大半は届け出た当日〜1週間以内に不明者の所在が確認でき、事なきを得るのだが、中には所在確認までに数か月、長いときで2年以上かかるケースもある。行方不明の原因・動機としては、「疾病関係」が全体の3割を占めて最も多く、このうち7割超が当事者に認知症の疑いがあった。続いて「家庭関係」、「事業・職業関係」、「異性関係」の順で、とりわけ未成年者の女性が対象になると、誘拐・監禁といった事件性を帯びてくる。1990年に新潟県三条市で女児(当時9)が行方不明になり、中年男性によって9年以上監禁された事件や、2014年に埼玉県朝霞市で少女(当時13)が誘拐され、大学生によって2年間監禁された事件などがそれで、いずれも世間を震撼させた。前述の統計によると、9歳以下の子どもに限定すれば、令和2年の行方不明者数は1055人で、過去5年間は1100〜1200人台を推移している。■「誰かと一緒」の可能性に言及、山梨不明女児の母そのうちの1人、千葉県成田市出身の小倉美咲ちゃん(9)は2019年9月21日、山梨県道志村のキャンプ場で忽然と姿を消した。母親のとも子さん(38)が一瞬、目を離した隙にいなくなってしまったのだ。山梨県警はこれまでに捜査員のべ約3900人を投入し、寄せられた情報は約4300件に上るが、美咲ちゃんの行方はわからないままだ。とも子さんは現在も毎月2回ペースで山梨県へ通い、情報提供を求めるチラシを配るなどの活動を続けている。10月末には、自身が開設したホームページに、「大切な美咲へ」と題した文章を投稿し、発生以来のこれまでの思いをしたためた。その中で、美咲ちゃんが誰かと一緒にいる可能性に初めて言及し、その相手にこう問いかけた。《2年間美咲と一緒に生活してあなたの生活はいかがでしたでしょうか》(原文ママ、以下同)これに続けてとも子さんは、美咲ちゃんを妊娠した当時の記憶をたどり、行方不明になるまでの7年間、家族一緒に過ごした数多の思い出を、切々と綴っている。そして「あなた」にこう訴える。《美咲を連れ去った事やこの2年間に少しでも後悔や罪の意識があるのであれば、美咲を返して下さい。人のたくさんいる安全な場所に連れて行って、美咲を解放して下さい》《私はあなたを信じています。人を傷つけたりしない優しい子である美咲のそばで、美咲とともに2年間過ごしてきたあなたを信じます》美咲ちゃんが誰かに連れ去られた可能性については、とも子さんがこれまで山梨へ通い、現地を歩き、美咲ちゃんの目線に立った行動を踏まえた末にたどり着いたひとつの結論だった。発生直後にも同じ推測は頭に浮かんでいたが、「事件か事故かわからない」という理由で警察から口止めされていたため、公言はしなかった。しかし発生から1年がたち、2年がたっても美咲ちゃんは現れず、報道の減少とともに世間の関心が薄まっているのも感じたため、公開を決めた。とも子さんが語る。「今年3月ごろに文章を考え始めました。悩みながら時間をかけて書き、美咲を取り戻したい一心で公開しました」そのホームページには、「似たような子を見かけた」という情報が毎月、数件〜10件程度寄せられる。その度に一喜一憂するというとも子さんは、どんな情報でもためらわずに伝えてほしいと呼び掛け、現在の心境をこう吐露する。「美咲が私たちの目の前からいなくなって2年がたち、世の中では風化しているかもしれない。でも家族が忘れることはありません。美咲は私たちにとって絶対に必要な存在なので、戻ってくるまではあきらめない」■投げかけられる心ない言葉情報や励ましのコメントが寄せられる一方で、発生以来続く誹謗中傷もいまだになくならない。前述の文章公開をインスタグラムでも告知したところ、同じアカウントからこんなコメントが立て続けに入った。《家を売ってでも美咲ちゃん取り戻したいのですよね?なら家を売って懸賞金にすればいいのでは?》《何故お母さんが批判されたり誹謗中傷されたりするのをご自身で考えてみて下さい》(原文ママ)こうした嫌がらせや中傷に対し、とも子さんは法廷で今も闘っている。自身のブログで1年以上にわたって小倉さん一家の中傷を続けた、無職の野上幸雄被告(70)=静岡県熱海市=が名誉毀損の罪に問われている裁判は、大詰めを迎えている。11月25日には千葉地裁で論告求刑公判が開かれ、検察は懲役1年6か月を求刑し、結審した。一方の弁護側は無罪を主張。証言台に立った全身黒ずくめの野上被告は最後に、「今回は普通の事件じゃない。今まで誘拐は何度もあったけど、母親を追い掛けて云々ということはなかった。その理由は怪しくないから。自分の子どもがいなくなったら皆、泣きながら捜している。小倉とも子とは現地(の山梨)で会っているけど、捜しているのは1回も見たことがない」などと支離滅裂な主張を続けた。公判終了後、とも子さんは嘆息まじりにこう語った。「悲しんでいないみたいに言われたことがいちばん傷つきました。結局は、自分の犯した罪をわかっていないんだとがっかりしました。被告は『社会的正義のため』と誹謗中傷を正当化していますが、その先に美咲の帰りを待つ家族が苦しんでいることを理解してもらいたい」判決は12月半ばに言い渡される予定だ。野上被告のほかにも誹謗中傷者は多数いて、とも子さんは、投稿者の情報開示を求める裁判を相次いで起こしている。【小倉美咲ちゃんに関する情報提供は】大月警察署 0554-22-0110小倉美咲ちゃんHP misakiogura.com■沈黙の理由、大阪女児誘拐事件の親わが子が行方不明になった親に対しては、誹謗中傷にとどまらず、その弱みにつけ込んで詐欺まがいの行為を働く者さえいる。秋晴れとなった11月20日の昼下がり。大阪難波の高島屋前を行き交う人混みの中に立ち、スーツ姿の吉川永明さん(61)と妻の美和子さん(60)が、「ご協力お願いします」と頭を下げていた。2人が手渡しているティッシュには、「吉川友梨ちゃんを捜しています!」と太字で書かれたチラシが挟み込まれている。友梨さんは2人の長女。今から18年半前の2003年5月20日、当時小学4年の友梨さん(27)は、大阪府熊取町で学校からの帰宅途中、突如として姿を消した。友梨さんは、熊取町立北小学校に通っていた。その日は社会科見学で、学校で解散した後、午後2時40分ごろに同級生3人と下校。途中の交差点で3人と別れ、1人になった。最後の目撃情報は、自宅から約400メートルの路上だ。現場は緩やかな上り坂で、住宅が密集しており、公民館や寺院も近い。友梨さんがいなくなった時間帯は、人通りや車の通行がないわけではない。その路上を友梨さんは1人で歩き、自転車に乗った同級生と軽く言葉を交わした後、消息が途絶えた。大阪府警はこれまで、捜査員のべ約10万300人を投入。現場付近で不審な白いトヨタクラウンが目撃されていることから、誘拐事件とみて捜査を続けている。寄せられた情報は約5000件に上るが、事件解決につながる有力情報はない。難波のチラシ配りに集まったのは、友梨さんの両親のほか、これまで一緒に取り組んできたNPO法人「あいうえお」(同府貝塚市)のボランティアや大阪府警の捜査員ら総勢約30人。終了後、永明さんにコメントを求めると、「取材のほうはお断りしています。どちらの(メディアの)会社でもご勘弁ください。事情がありますので帰ります。失礼します」と語り、足早に立ち去った。発生以来、吉川夫妻の支援活動を続けてきた同NPO法人の郡山貴裕事務局長(60)は、永明さんが取材に消極的な理由についてこう説明した。「お父さんがメディアの取材を断るようになったのは、詐欺被害に遭ったと報道されたときからです」永明さんは事件発生の翌月から4年以上にわたり、「友梨さんの居場所を知っている」などと近づいてきた男女2人に総額約7400万円をだまし取られていた。しかし永明さんは警察にもその事実を伝えることなく、’08年12月に発覚。この男女2人は詐欺容疑で逮捕、起訴され、後に大阪地裁は懲役9年の有罪判決を言い渡した。’11年には、インターネットの掲示板に「(友梨さんを)殺害した」と書き込んだ20代の男も逮捕されている。郡山事務局長が続ける。「発生当初、NPOのホームページにお父さんの手紙を掲載していたのですが、その文章に少しずつ異変を感じました。ちょうど詐欺被害に遭っていたころで、精神的にかなり参っているようでした。以来、他人への不信感が強まり、メディアからの取材はすべて断っています」子どもが行方不明になって負った心の傷に、塩を擦り込むかのような誹謗中傷や詐欺行為。二次被害、三次被害とその傷口が広がるうちに、誰を信用してよいのかわからなくなる。そんな折れた心に鞭打つかのように、街頭に立って頭を下げる。もうそっとしておいてほしい─。「失礼します」と右手を上げて遮るように立ち去った永明さんの姿が、そんな声なき声を発しているように聞こえた。行方不明児の親たちの苦悩は続く。【吉川友梨さんに関する情報提供は】 大阪府泉佐野警察署 0724-64-1234水谷竹秀(みずたに・たけひで)ノンフィクション・ライター。1975年生まれ。上智大学外国語学部卒。2011年『日本を捨てた男たち』で第9回開高健ノンフィクション賞を受賞。10年超のフィリピン滞在歴をもとに、「アジアと日本人」について、また事件を含めた世相に関しても幅広く取材。
2021年12月13日※写真はイメージです先日、愛知県弥富市の中学校で、3年生の男子生徒が同級生に刃物で刺し殺される事件が発生した。もし自分の子どもが、兄弟が、同じような事件を起こしたら、その「加害者家族」にはどんな運命が待ち受けているのかーー。凶悪事件も含め、200件以上の殺人事件の家族を支援してきたNPO法人『World Open Heart』理事長・阿部恭子さんによる解説。■真相究明には時間を要する愛知県弥富市で、中学生が同級生を刃物で刺し、被害者が亡くなるという痛ましい事件が起きてしまった。事件に関し、連日さまざまな報道が行われているが、現時点での情報は断片的で、必ずしも正しいとは限らず、事件の背景が明らかになるには時間を要する。結論を急ぐことなく、捜査の進捗を冷静に見守っていく姿勢が求められる。事件は、想像以上に多くの人を巻き込み、子どもたちの心に深い傷を与えている。ここでは、兄が同級生を殺害してしまい、“加害者家族”となった妹の体験をもとに、事件が与える子どもたちへの影響について考えてみたい。当時、中学生だった宏美(仮名・現在40代)は、その日、部活動に励んでいた。突然、担任から呼び出しを受け職員室に行くと、隣のクラスの由紀もいた。宏美の兄と由紀の兄は友達で、同じ高校に通っていた。「大変なことになったの。ふたりともすぐ着替えて。宏美さん、すぐ〇〇病院に行きなさい、由紀さんは先生が送っていくから」担任はいつになく余裕のない表情で、宏美を病院に行くように急かした。宏美は慌てて病院へと向かい、受付で案内された方に向かうと、怒鳴り声と同時にすすり泣くような声が聞こえてきた。土下座する両親の向こうには、泣き叫ぶ由紀とその両親の姿があった。宏美の兄は、由紀の兄に暴力を振るい、死亡させてしまったのだ。■家にも学校にも居場所はなかった当時、宏美の両親は自営業を営んでいたが、事件の影響で次々に契約はキャンセルされていった。これまで両親が喧嘩をしたところなど見たことがなかったが、事件が起きてからは日々大声で怒鳴り合うようになり、家の中は殺伐としていた。「両親は兄のことしか考える余裕はなく、私はいてもいなくてもいいんじゃないかと思うようになりました」学校では、嫌がらせをされるようなことはなかったが、誰ひとり、宏美に優しい言葉をかけてくれる人はいなかった。「もう仲よくできない」そう言って去っていく友達もいた。宏美が無視される一方で、遺族となってしまった由紀の周りにはたくさんの生徒が集まり、教員たちも気にかけている様子が目に入るとつらい気持ちになった。「私が罪を犯したわけでもないのに、どうしてこんな目に遭わなければならないのか、周りの人が全員、信用できなくなりました」学校でひとりぼっちになってしまった宏美は勉強をするしかなかった。元々成績はよかったが、皮肉にも事件後、周囲に差をつけてトップになった。■高校進学さえ許されなかった両親は、損害賠償の支払いで経済的余裕がないことは十分承知していたが、高校には行かせてもらえるはずだと思っていた。ところが、世間体が悪いということで進学に反対したのだ。「この地域で、あれから由紀さんのお母さんの体調がよくないことはみんな知っているでしょ。そんな状況で、加害者側の人間がのうのうと勉強しているわけにはいかないじゃない」宏美は不条理に感じた。それでも、自分ひとりの力ではどうにもならなかった。結局、宏美はアルバイトをしながら専門学校に通い美容師になった。「私と同じ年位の学生さんの接客をするときがつらかったです。事件さえなければ、今ごろ私も……と、何度も誰もいない場所で泣いていました」宏美は、家族と縁を切るつもりで家を出てひとりで生活するようになった。その後、職場で知り合った男性と結婚したが、夫の家族には両親は亡くなったと話しており、兄の存在も隠してきた。理解ある夫と幸せな家庭を築いてきたが、それでも加害者家族としての後ろめたさが消えることはないという。「家族は?きょうだいは?という、当たり前の質問を受ける度に、傷ついて生きてきました。嘘をつかなければならないことにも罪悪感があります」その兄は少年院を出院後、普通に仕事をし、家庭を持ったと母から聞いていた。兄は友人が多かったことから、社会復帰にあたっては両親だけでなく多くの人が支援してくれたという。ところが、宏美を支援してくれる人は誰もいなかったのだ。加害者家族の子どもは第二の被害者と呼んでも過言ではない。被害者・加害者及び双方の家族、友人、目撃者など、事件によって傷を負った人々すべての包括的なケアこそが、事件現場に求められている。阿部恭子(あべ・きょうこ)NPO法人World Open Heart理事長。日本で初めて犯罪加害者家族を対象とした支援組織を設立。全国の加害者家族からの相談に対応しながら講演や執筆活動を展開。著書『家族という呪い―加害者と暮らし続けるということ』(幻冬舎新書、2019)、『息子が人を殺しました―加害者家族の真実』(幻冬舎新書、2017)、『家族間殺人』(幻冬舎新書、2021)など。
2021年12月07日※画像はイメージです「ちょっと飽きた香水に5000円の値段が付いた」「お土産でもらって試してみただけのファンデーションが3500円で売れた!」誰でもいくつか持っている使いかけの化粧品は、いまやフリマサイトの人気商品だ。■中古品売買は成長市場個人売買とはいえ、人が使ったものでもちゅうちょなく購入して使える――古着人気などから始まったリサイクル文化もここまで来たか、と思える話だが、いまや世の中には使用済みコスメでも積極的に買い取るお店さえ増殖中。ネットなどでも広告をよく見るようになっている。新品以外を扱う「二次流通市場での化粧品/コスメの取引が増加しており、メルカリにおける化粧品/コスメの購入数も2014年~2020年の7年間で約12.4倍にも拡大しています」と、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授の山口真一氏。「新型コロナウイルスが猛威を振るう中、店頭でサンプルやテスターを試すことができなくなったこともあって、通販で安くお試し購入できる二次流通の重要性が高まっていると推測されます」山口准教授は分析する。これは化粧品コミュニティサイト @cosme(アットコスメ) を運営するアイスタイルが行った調査結果を分析したコメントだが、同調査によれば、二次流通ツールを利用したことがある人はなんと5割強、さらにその5割以上は化粧品の購入経験があるという。「購入した」と答えた人が、その理由に挙げるのは「少しでも安く買いたいから」「その化粧品を試したいから」「もう売っていなくてどうしても欲しかった」など。手軽な値段で購入し試してから、新品を買うという使い方が目立つ。新型コロナの影響で店舗からテスターが消えたことも、確かに大きな理由と考えられる。ただし、二次流通には怖い一面も。フリマサイトでのやり取りがトラブルにつながったり、中には使用期限や開封時期を偽って出品しているケースもある。そしてさらに謎が多いのが、急増中の買い取り業者たちだ。以前から未開封品を買い取ってくれるところはあったが、アプリやWebサービスの普及とともに「中古品でも大歓迎」という業者が目立つようになってきた。ところが未使用品を扱う業者とはまるで違うようなのだ。ほとんどすべての業者は実店舗なし。買い取りはWebで依頼を受け、客に商品を郵送させ、それを査定。買取額を提示し、振り込みがされて売買終了となる。連絡先として記載されている電話もほとんどがスマホなどの電話番号だ。ところが、ネットでの口コミなどが多いところを選んで3~4軒ほどに連絡してみたが、どこも呼び出し音が鳴るだけで留守電にさえならない。さすがに不思議に思って、化粧品や香水の流通事情に詳しい美容関係者のNさんを通じて、付き合いのある業者の方を探してもらったところ、匿名を条件に内幕を話してくれた。■外側は本物だけど……出てきた話は驚くべき内容。「買い取った化粧品や香水は99%個人売買サイトへ出品する。中身はどうでもいい。入れ替えるので」というのだ。買い取った香水の中身は捨ててしまうので、どれくらい残ってるかや開封時期はたいした問題ではない。大切なのは、外見が「どれくらいキレイで新しく見えるか」。フレグランス・香水なら大事なのは中身だろう、という常識は通じない。本物を捨ててしまった後に、同じような香りのずっと安価なものに入れ換え、限りなく未使用品に近いおトク商品として販売するからだ。実は、香水の成分などはもはや秘密でも何でもない。比較的たやすい分析で明らかになるから、同じようなものを作るのはそれほど難しくない。しかも、その背景にはそれを単純に偽物だと決めつけられない事情もあるという。「コンビニなんかのプライベートブランドと変わらないよ」中古コスメ買い取り氏はそんな風にうそぶく。「大手メーカーの商品と同じものが別のブランドで、ちょっとばかり安い値段が付いてるよね。その分、品物が良くないのかといえばそんなことはない。当たり前だよ、だって同じ工場で作られているんだから。パッケージとブランドのロゴを替えただけで、中身はまったく同じでしょ?香水だって、化粧品だっていっしょよ」結局、中古買い取り業者は、ネットでかき集めた香水で「セドリ」をしているのだという。これはもともと古本業界の隠語で「掘り出し物を転売して利ざやを稼ぐ」ことだ。フリマサイトに個人アカウントで登録して中古の商品販売をするのには、いくつかのメリットがある。まず、第一に個人間売買で商品価格が30万円以下なら非課税、つまり税金がかからない。また、コスメなどの偽ブランド品の流通には、メーカーが厳しいチェック体制を敷いているというのがほとんどだ。■買取業者の闇しかし、一旦、中古として使用されてしまえば、そのチェックから外れる。摘発されることも告発される心配もなくなるわけだ。ただし、完全に法律違反であることは間違いない。たとえ個人であっても、中古品を買い取って販売するためには古物商免許が必要だが、買い取りだけなら必要ない。そこで販売専門用に名前を変えて、ネットオークションやフリマで香水を売りさばいても、それは個人が自分の持ち物を売っているだけという建前だから特別な条件は何もない。だが、実は買い手と売り手が一緒だとすれば、古物営業法違反となって懲役3年以下または100万円以下の罰金などが課せられることになる。いずれにせよ、業者に買い取ってもらった使いかけの香水はブラックマーケットに直行、の可能性は高い。そして、これまで「おトクだ!」と喜んでいた買い手の方にも被害は広がっていく。すでに社会的に広く認知され、取引ルールや健全性が急速に整いつつあるオークションサイトやフリマサイトにさえ、このような業者が少なからず入り込んでいる。「ブランドものの香水やコスメ、それも各種ブランドの中古品を多量に出品できる個人なんているはずない。みんなどこかでかき集めてきたものばかり。セミプロが荒稼ぎしているくらいは、少し想像すれば誰にでも分かります」しかも掘り出し物と喜んで購入したものの、本物は外側のビンやパッケージなどだけで、大方は中身は真っ赤な偽物ということになる。もしそんな被害の当事者になりたくないなら、フリマで気になる出品を見つけたとしても、最低でもいくつかのポイントを確認しておいた方がいい。使用回数や購入時期、購入場所は必須条件。もちろん、出品者についても同じ。評価や同じものを大量に出品していないかをチェックするのは基本中の基本といえる。たとえば、「評価0」などという出品者は、運営側からアカウントの停止をくらっては新たに登録をくり返すというイタチごっこをしている業者の可能性が大きい。「ネットの普及で一般の人たちが手軽に個人売買に手を出せるようになってきたから、我々が商売できるようになってきたんだよ」とは買い取り氏の言葉。ITの拡大で便利さがどんどん拡大する裏では、うごめく闇も急速に大きくなっているというのだ。■<購入前チェックポイント>ネット購入の前には一度チェックリストを確認してみよう。魅力的な値段や画像に騙されずに一度冷静になれば、偽物の購入は避けられる。・価格設定が明らかにおかしい(新品未使用/未使用同然なのに安すぎる)・出品者の評価が0か極端に低い・同じものを大量に販売している・正規代理店を名乗っている・購入元が明示されていない・製造番号(シリアルナンバー)が分からないこれらに当てはまる場合、商品が偽物の可能性も。フリマアプリは出品者とのやり取りができるので、気になる事があれば問い合わせてから購入するべきだ。
2021年11月27日服部恭太容疑者が事件直前に現れたルミネエスト新宿「『ルミネエスト新宿』内にあるいくつかのショップで、服部容疑者が事件直前に買い物をしていたんです」そう話すのは、アパレル関係者。声を潜めてこう続けた。「……そこで購入した服を着て、あの凶行に走ったんです」10月31日、ハロウィンの夜に起きた無差別テロ。走行中の京王線の車内で乗客が刺されるなど十数名が重軽傷を負う大惨事が発生した。殺人未遂の現行犯で逮捕されたのは、住所・職業不明の服部恭太容疑者(25、犯行時24)。「警視庁調布署捜査本部は22日、複数の乗客に火をつけて殺害しようとしたとして、殺人未遂と現住建造物等放火容疑で服部容疑者を再逮捕しています」(全国紙社会部記者)犯行時、服部容疑者はまるでアメリカの人気映画『バットマン』シリーズに登場する悪役『ジョーカー』のような派手なスーツとネクタイ姿だった。「警察が駆けつけてくるまで、車内の座席で足組みをしたまま、煙草をくゆらせるという容疑者のふてぶてしい姿が報道されました」(同・社会部記者)■犯行時に着ていた“モテる服”容疑者は“勝負服”を購入するために、『ルミネエスト新宿』内のとあるショップに立ち寄った。そこは海外ブランドも取り扱っている20〜30代向けのメンズブランドなのだが、そのコンセプトはというと、《モテる男のワードローブ》事件時も、やはり異性の目は気にしていたようだ。前出のアパレル関係者がさらに続ける。「容疑者は20万円をキャッシングしてきて、ルミネ内にあるいくつかのショップでそのお金をすべて使いきったようです」前出のブランドでは、約7万円のコートを購入したという。容疑者は物静かな青年だったという報道があったが、「接客した店員によると、容疑者は大人しくていい人だったようです。実はその日、ポイント倍増キャンペーンの期間中でした。なので、高額のお買い物をされたお客様にはアプリ会員の登録を勧めていて、容疑者にも紹介したそうです。すると、素直に住所や名前を入力して登録してくれたとか。男性客は面倒がってアプリ登録はしてくれない方も多いらしいんですが、店員の申し出を断りきれなかったんですかね。そもそも、貯まったポイントを使うつもりだったのか……」(同・アパレル関係者)福岡市出身の服部容疑者は、今年の夏に地元を出て神戸、名古屋、八王子のホテルを転々としていた。「仕事も友人関係もうまくいかない。でも自分では死ねないので大量殺人で死刑になろうとした」と供述している服部容疑者。小心者が最悪のジョーカーになってしまった……。
2021年11月25日事件のあった和歌山県子ども・女性・障害者相談センター「やさしい性格で子どもたちから好かれていた。危険な香りを漂わせるようなことはなく、むしろ穏やかな男性だった」児童相談所機能を持つ『和歌山県子ども・女性・障害者相談センター』の職員はそう言って、同僚の犯行にショックを受けているという。勤務先の同センターで一時保護中の10代少女にわいせつな行為を複数回させたとして和歌山県警は11月16日、児童福祉法違反(淫行させる行為)の疑いで県職員の福祉主事・浅野紘平容疑者(29)を逮捕した。5〜8月にかけて当直勤務の際、一時保護され入所生活をおくっていた10代少女が18歳未満と知りながら、周囲が寝静まるのを待って施設内の別室に呼び出すなどしてわいせつな行為をさせた疑いが持たれている。わいせつ行為じたいは認めながら、「そんなに多くの回数はさせていない」と犯行回数をめぐって一部否認しているという。■容疑者の勤務態度はマジメで回数が少なければ許されるものでもないが、どうしてこんな男が少年少女を救う立場に就くことができたのか。「地方公務員試験に合格した直後の昨年4月に県職員として採用し、同センターに配属しました。社会福祉士の国家資格を持っており、募集条件を満たしていたからです。最初の約7か月間は児童相談所の担当者として、子どもの保護者や取り巻く地域の方々らの相談を受けていました。いきなりフルパワーを求められる職務はたいへんだろうと考えたからです」(県福祉保健部の担当者)フルパワーを発揮する現在の職務についたのは昨年11月。さまざまな事情を抱えた原則18歳未満の子どもと入所生活をおくる一時保護課に異動し、児童指導員を任された。親の死亡、家出、離婚などで行き場を失った子どもや、虐待を受けていたり、あるいは本人に家出癖や不登校、家庭内暴力がある場合など取り巻く環境は多岐にわたる。「だれでも指導員になれるわけではなく、社会福祉士資格か教員免許を持っている人が務めます。学校レベルの教育体制はとれませんが、日中は子どもたちにプリントを配って勉強時間にあて、わからないところを教えて採点もします。バドミントンやサッカー、遊びの延長のようなゲームを一緒にすることもあり、生活指導の一環として食事も一緒にとります。寝るときも同性の職員が同じ部屋で見守ります。容疑者の勤務態度はまじめで問題はありませんでした」(前出の県担当者)しかし約半年後、少女に手を出した。周囲にバレないよう、深夜巡回中を狙って犯行を繰り返したというから悪質だ。同センターの関係者などによると、入所児童はおおむね3、4人にひと部屋があてがわれ、男子棟と女子棟は行き来できないようにカギのかかるドアで遮断されている。消灯の午後9時以降、突破できる異性はカギを持っている職員だけだった。「職員の当直はだいたい3人体制でした。交代で1人ずつ男子棟も女子棟も巡回しており、ほかの当直職員は子どもと寝ているため部屋の外の様子に気付きにくかった。事件を受け、同性の職員による巡回や複数職員による見回りに変えました」(前出の県担当者)■深夜になるとオオカミに豹変し犯行が発覚したのは今年9月、被害少女の話が人づてに別の職員の耳に入ったからだ。同センターの関係者によると、すぐに被害少女と浅野容疑者の双方に事実確認をしたところ、いずれもこれを否定したという。「特に浅野容疑者はきっぱりと否定していました。情報の真偽がわからない中、10月1日に突如として“じつは疑われた内容は事実でした”と自ら話してきたんです。なぜ打ち明けたのかはわかりません。その日のうちに警察に通報しました」と同センターの関係者。県は、犯行を始めたとされる今年5月以降に容疑者とかかわったとみられる子ども約80人に被害がないか調査したところ、ほかに被害の申し出はなかったという。ところが、読売テレビの報道によると、別の入所少女が容疑者に押し倒される被害に遭ったと証言。わいせつ行為を受けそうになったとする新情報が出てきた。《急に上に乗っかってきて、それで『こんなことが好きなんやろ』と問いかけてきたこともあって、ちょっとこういう人はおかしいんかな》(読売テレビの取材に応じた入所少女の話)県は警察と情報を共有するとともに、容疑者が指導員を始めた昨年11月までさかのぼって追加調査を検討している。県政関係者はこう明かす。「容疑者は6年前の7月、隣接する奈良県生駒市の路上で帰宅途中の当時22歳のアルバイト女性に背後からわいせつ目的で近づき、頭を両手でつかんで押し倒すなどした暴行容疑で逮捕されている。逮捕後に余罪も発覚。やはり路上で当時47歳の会社員女性の背後から手で口をふさぎ“騒ぐな。殺すぞ”と脅迫したわいせつ未遂で再逮捕された。容疑者は当時会社員で、いずれも深夜0時前後の犯行だった。女性に抱きつきたかったようだ」羊のように穏やかに見えて、深夜になるとオオカミに豹変する本性をなぜ見抜けなかったのか。「採用時に逮捕歴はわかりません。本人からの申告もない。欠格事由になるのは、禁錮以上の刑を受けてその執行を終えていない場合などに限られますから」(前出のセンター関係者)入所中の子どもにとって、容疑者は“先生”の立場にあったといえる。学校の教職員については、児童・生徒にわいせつな行為をして懲戒免職になった教員の免許再取得を防ぐ「わいせつ教員防止法案」が今年5月に成立。1年以内にこうした教員の前歴がわかるデータベースが整備され、教員採用時に活用して拒めるようになる。力関係で子どもたちの上位に立つのは、児童相談所職員も同じだろう。同法の付帯決議は、教職員と同様に児童・生徒と日常的に接する職種や役割に就く場合、採用する側が公的機関に照会して性犯罪の前科などがないことの証明を求める仕組みの検討を求めている。保育士のほか、部活動の外部コーチやベビーシッター、塾講師など免許の必要ない職種も同じ。子どもを助ける立場の人間が、力関係を利用して子どもを傷付けることなどあってはならない。
2021年11月24日送検される服部恭太容疑者(左)=2日午前11時57分、警視庁調布署(共同通信)先日、京王線の特急電車内で起きた刺傷事件。殺人未遂容疑で逮捕された服部恭太容疑者はこう供述した。「人を殺して死刑になりたかったーー」。そんな身勝手な理由から、人の命を奪おうとする凶悪犯罪者たち。加害者家族をサポートするNPO法人『World Open Heart』の理事長・阿部恭子さんの元にも、「死刑になりたい」と言う子どもに怯える家族からの相談が寄せられている。いったい何がそうさせるのか。そして、阿部さんにとある青年が語った本心とはーー。■明日は我が身という恐怖10月31日、コロナの感染状況も落ち着き、仮装してハロウィンを楽しむ若者の姿も見られる東京の夜、京王線の車内で派手なスーツに身を包んだ青年が突然、乗客を切りつけ、車内に火をつける事件が発生した。現場はパニックになり、逃げ惑う人々の映像は社会を震撼させた。多くの人が利用する電車を狙った無差別放火・刺傷事件は、自分も巻き込まれるかもしれないという大きな不安を社会に与えている。事件の影響で、電車を利用することができなくなり、日常生活に大きな支障をきたすケースも出てくる可能性があり、長期的な被害者のケアと社会復帰への支援が不可欠である。「こういう事件が起きると、娘が巻き込まれたのではないかととても不安になります。無事だと判明した途端、今度は、息子が事件を起こすのではないかという不安に襲われるんです」久美(仮名・50代)は息子と娘、ふたりの子どもの母親である。息子・雅史(仮名・20代)は、大学受験の失敗がきっかけで自宅に引きこもるようになった。生活は昼夜逆転し、久美に暴言を吐き、家で暴れることもしばしばだった。久美は子どもたちがまだ幼いころ、夫を病気で失い、その後まもなく再婚していた。再婚相手は息子にだけ厳しく、成績が振るわないと叱責し、息子も年を重ねるごとに父親に激しく反抗するようになった。父子の間で板挟みになっていた久美は耐えられなくなり、数年前に離婚をし、夫は家を出ていった。雅史は、人生が思いどおりに行かなくなった原因は、母親が再婚したことだと久美を責め続けた。それだけでは収まらず、怒りの矛先は母親以上に妹にも向けられる。再婚相手の父親は妹には甘く、妹は比較的自由に育ってきた。学校でも活発で成績もよく、有名大学に合格していた。雅史は妹に激しく嫉妬し、父親が家を出てからは妹に暴言を吐くようになり、妹は実家を出てひとりで生活せざるを得なくなった。今年の8月、小田急線の車内で起きた刺傷事件の犯人は、「幸せそうな女性を見ると殺したい」「勝ち組の女性を標的にした」と供述していたと報道されたが、久美は妹を妬む雅史の姿と重なったという。「自殺で失敗して身体が不自由になったら嫌だから、死刑がいい。俺が犯罪者になったらあいつ(妹)の人生も終わりだ。やるときは道連れにしてやる」雅史はそう言って、久美を脅した。「人を殺したいならお母さんを殺してちょうだい……」息子の前に跪き、泣きながらそう叫んだこともあった。警察に相談してもカウンセラーに相談しても、事態は一向に収まらなかった。息子が人を殺める前に、この手で我が子を殺すしかない。そう思いながらもできないまま時間が流れていた。■殺意はどこから来るのか筆者は、久美から相談を受け雅史と直接会って話をする機会を得た。雅史は一見、穏やかで、礼儀正しい青年だった。家庭以外でトラブルを起こした過去はないという。しかし、「誰でもいいから殺して、死刑になりたいと思うことがある」話の核心に入ると、突然険しい目つきになり、はっきりと殺意を口にした。“死刑”という発想はどこから来るのか。雅史が言うには、母親の再婚相手である義理の父が、夕食の時、犯罪報道を見るたび、「こういう奴らは即刻、死刑にしろ!」と言っていた言葉が焼き付いているからだという。義理の父親はエリートで一流企業に勤めていた。父親は雅史に、地元で最も偏差値の高い高校に入学するようにプレッシャーをかけた。なんとか合格はしたものの、入学後は授業についていけず、劣等感から友達を作ることもできなくなり不登校気味になっていった。義理の父親に劣等感を抱くと同時に、実父を亡くした喪失感にも苦しんでいたのだ。雅史から見ると妹は要領がよく、新しい父親ともすぐに仲よくなっていた。雅史は、母や妹に裏切られた気がして不信感を募らせ、家族に攻撃的になっていたことがわかった。雅史と対話を重ねるうちに、不満は述べても「自殺」や「殺人」といった物騒な言葉を口にすることはなくなっていった。転機が訪れたのは、二浪の末、第一志望の大学から合格通知が届いてからである。その後は、順調な大学生活を送っており、人が変わったように明るくなり家族に暴言を吐くこともなくなった。それでもまだ、久美の親としての不安は払拭されてはいない。「就職が上手くいけばいいのですが、また挫折するようなことがあったらと思うと……。事件が起こる度、被害者か加害者か、明日は我が身と考えてしまいます」■子どもに「人を殺したい」と言われたら真知子(仮名・50代)もまた、かつて「人を殺したい」と訴える息子(10代)に悩まされていた。息子は学校の成績もよく友達も多かったことから、まさか現実になるとは考えられなかった。ところが事件は起きてしまう。息子がひとり暮らしを始めて間もなくのころ、自宅に訪ねてきた知人を刺して死亡させてしまったのだ。犯行動機について、息子は「人を刺してみたかった」と供述し、猟奇的な事件として報道された。「たとえ問題を起こしたとしても、まさか人を殺すなんて考えませんでした。あの時、もっとちゃんと子どもと向き合っていればと後悔しています」安全かつ確実な方法で死に至る死刑制度を求める殺人事件はこれまでにも起きており、殺人にまで発展しなかった事件においても、犯行動機として「死刑願望」が語られていたケースはいくつも存在している。このような現状に鑑みれば、死刑制度が犯罪の抑止として機能しているのか、非常に疑問である。では、もし自分の子どもが「人を殺したい」「死刑になりたい」などと口にしたらどのようにしたらいいのか。「人を殺したい」といった言葉は出口の見えない絶望感、底知れぬ孤独、制御不能となった異常性を示すSOSとなる。その欲求がどこから生じるのか、真摯に向き合ってくれる人がいることは犯行の抑止になり得ると言える。久美のように、家庭に問題を抱えながらも息子を支えるだけの経済力が残っているケースはそう多くはない。金銭的にも余裕がなく、誰にも相談できず、あらゆる繋がりが絶たれて孤独になってしまった人々。彼らの受け皿が、社会には必要である。阿部恭子(あべ・きょうこ)NPO法人World Open Heart理事長。日本で初めて犯罪加害者家族を対象とした支援組織を設立。全国の加害者家族からの相談に対応しながら講演や執筆活動を展開。著書『家族という呪い―加害者と暮らし続けるということ』(幻冬舎新書、2019)、『息子が人を殺しました―加害者家族の真実』(幻冬舎新書、2017)、『家族間殺人』(幻冬舎新書、2021)など。
2021年11月07日写真イメージです日本の総人口は減り続けているが、65歳以上の人口は増加の一途をたどっている。2025年には国民の3割以上が65歳以上、5人に1人が75歳以上になるというデータも。どこを見てもおじいさん、おばあさん……という状況は目前。そんな中、シニアを取り巻く深刻な問題が発生している。高齢者の犯罪が増え続けているのだ。■犯罪も高年齢化法務省が発表した「2020年版犯罪白書」によると、1年間に検挙された刑法犯は約75万件と17年連続で減少し、戦後最少を更新した。しかし、65歳以上の割合は過去最悪に!増加傾向にあったものの、ついに4万人を突破し、全体の22%、犯罪者のおよそ5人に1人が高齢者となってしまった。しかもその7割以上が70歳以上というから驚きだ。「高齢者の犯罪は、30年ほど前は全体の2.1%程度に過ぎませんでした。高齢者が罪を犯すというケースは極めてまれだったわけです。ところが右肩上がりに増え続け、2020年には過去最悪の22%に上っています」というのは犯罪心理学に詳しい法政大学の越智啓太先生。「高齢者の人口増加と比例して、高齢者犯罪の割合も増加しているというのが現状です」(越智先生、以下同)■女性は万引き、男性は暴行ではどんな犯罪が多いのだろう。「高齢者犯罪の70%以上が罰金刑で収まるような、比較的軽微なものが多いです」中でも特に多いのが窃盗。全年齢でみた検挙数の40.2%が高齢者だ。窃盗というのは、いわゆる万引きが当てはまり、高齢者犯罪の種類別に見ても、万引きが半数以上を占めている。万引きというと10代の青少年が犯しやすい犯罪というイメージがあるが、実際はシニアが大多数を占める。特に女性が多く、女性万引き犯は全体の4分の3にもなる。次いで多いのが、傷害・暴行。これはほぼ男性高齢者によるもの。「駅で駅員を殴るとか、道でトラブルになって殴りかかるというような、いわゆるキレる老人です。計画性はなく、その場の怒りに駆られて、衝動的に暴力をふるう場合がほとんどですね」年齢を重ね、分別があるはずの高齢者なのに、なんとも嘆かわしい話だ。さらに高齢者は、再犯率も高い傾向にある。「半数以上の人が、2度3度と繰り返しています。悪いことをしたという意識が低く、またすぐ罪を犯す人が多いんです」高齢者なので会社をクビになる心配はないし、友人や家族との関係が薄ければ、周囲の目も気にならない。またほとんどが軽犯罪なので、逮捕されても注意を受ける程度か、せいぜい罰金を科せられるくらい。何度も罪を犯したり、超高額なものを万引きしたとしても、ほぼ執行猶予ですむ。刑務所に入ることはごくまれなのだ。「犯罪後に生活が変わることはなく、失うものもないので反省もしない。だから再犯率も高く、常習化していく人が多いと思われます」■背後に潜む“孤独”問題万引きをする高齢者は、やはり経済的不安をかかえている人なのだろうか。「実は、経済的に貧しいという人はあまりいません。普通の生活を送れている人がほとんど。万引きをするのは、節約のためという人が多い」昭和生まれの高齢者は節約志向が高く、万引きする商品も、食品や日用品が主。宝飾品やブランド品はまずないという。「そして主たる原因として考えられるのが、“社会的孤立”です」万引きに関する有識者研究会の報告書によれば、65歳以上の万引き犯のうち、「独居」が56.4%、「交友関係を持つ人がいない」と答えた人は46.5%を占め、日常生活の中で孤独を抱えている人が多数いることが判明した。同報告書では、日常生活の中で孤独や不安、ストレスの増加などが引き金になって、万引きのような問題行動につながるのではないかと指摘している。「万引きが唯一のコミュニケーション手段になっている可能性が高いですね。“見張られている”という状況は、社会とのつながりを感じられるし、つかまって店長や警察官に叱られれば、それ自体がコミュニケーションとなる。怒られても罰にならず、むしろ楽しみや高揚感を感じている人が少なくありません」また孤独感は「キレる老人」を生む元凶にもなっている。「孤独で話し相手がいない状態が続くと、気持ちの切り替えがしにくくなるので、嫌なことがあると、常にそのことが頭を巡ってしまいがち。時間をかけて怒りが増幅していって、ずっとイライラしているという状態になります。そんなときに、道で足を踏まれたりすれば、怒りが限界点に達して、殴る、暴言を吐くといった問題行動につながるのです」「コロナ禍でステイホームしていた間は、老人犯罪も多少は減っていたでしょう。しかし、室内にこもって孤独と怒りをため込んでいたかもしれません。ステイホームもほぼ明けたいま、危ない老人が一気に街に出てくる可能性があります」■高プライド老人に要注意孤独な老人ほど犯罪に手を染めやすいのなら、周囲の人間としては、小まめに声をかけるなどしてあげるのがよいのだろうか。「そうとも言い切れません。おじいちゃん元気?なんて声をかけると、子ども扱いしやがって……と怒りを買うこともあります。いちばんいいのは、習い事や老人会に参加するなど、本人が自分で環境を変える努力をすることです」カルチャーセンターや町内会の集まりなどに出かける老人の中で、罪を犯すような人はまずいないという。しかし孤独に陥っている老人は、プライドが高い人が多く、「年下にものを習うなんて」「ジジババの集まりなんか行っていられるか」などと自分から垣根をつくってしまいがちなのだ。昔は高齢者の知識や経験が重宝され、子どもや孫たちに頼られていた。けれども今や知りたいことはすべてインターネットで知ることができる。老人の知恵など必要とされなくなってしまったのだ。「とはいえ、老後は20年以上もあるので、プライドを捨てて新しいことにチャレンジし、豊かな余生を送ってほしいですね。それを社会が後押しすることがシニアの犯罪抑制へとつながるのです」■82歳老人ストーカーの末路20代の女性会社員に付きまとったとして逮捕されたのは、熊本県に住む82歳の男性。女性が働くお店に客として訪れた際、親切にされたのがきっかけで、自宅や勤務先を訪れては交際を迫るなどの行為を頻繁に繰り返した。警察からも警告が行われたが、ストーカー行為がなくならないため、逮捕に至った。これは2010年の事件で、越智先生が印象に残っている高齢者犯罪のひとつ。「高齢者のストーカーは意外と多いんです。“最後の恋”だと思っているので必死だし、ラブレターや花束を渡す、電話をかけるなどの行為なので、逮捕もされにくい。けれども、金も時間もあるからどこまでも追いかけてくる。ストーカーとしては、高齢者はかなりタチが悪いともいえます」教えてくれたのは●越智啓太(おち・けいた)先生●警視庁科学捜査研究所、東京家政大学心理教育学科助教授などを経て、法政大学文学部心理学科教授。犯罪捜査への心理学の応用、プロファイリングなどが専門。『ケースで学ぶ犯罪心理学』(北大路書房)など著書多数。<取材・文/樫野早苗>
2021年11月05日※写真はイメージです連日報道される殺人事件。日本で起きる殺人の半数は、家族間で起きているという。「野田市小四虐待死事件」「池袋暴走事故」ほか、これまで200件以上の加害者家族を支援、『家族間殺人』(幻冬舎新書)を上梓したNPO法人World Open Heartの理事長・阿部恭子さんが実例とともに家族間での殺人について伝える。あるとき、阿部さんに届いた加害者本人からの手紙。そこに書かれていたこととはーー。* * *9月20日、東京都・羽村市で、息子への嘱託殺人容疑で保釈中だった77歳の女性が、今度は74歳の妹を殺害するという事件が起きた。女性は、自宅で転倒し骨折して身体が不自由になった妹から「苦しいから殺して欲しい」と頼まれ、電気コードで首を絞めたと供述している。次々と家族に手をかけた女性に一体何があったのか、注目が集まっている。このように、介護や育児の限界により、家族の将来を悲観した末の心中殺人、配偶者間のドメスティック・バイオレンス、虐待死事件など、家族間で起きる殺人は後を絶たない。全国的に報道されないケースも数知れず、もっとも身近で起きている殺人にもかかわらず、多くの事件は真相が解明されないまま世間から忘れ去られていく。一方で、加害者家族でありながら、同時に被害者家族でもある家族は、なぜ事件が起きてしまったのか、真実を求めてきた。ここでは筆者がこれまで見てきた実例を元に『家族間殺人』について考えていく。■殺人犯になった弟「事件を知った時は耳を疑いました。まさか、あの子が人を殺すなんて……」ひとみ(30代)の弟・雅樹(30代)は、ギャンブルで嵩(かさ)んだ借金が妻に知られ、離婚を迫られるが受け入れられず、妻を殺害するに至った。世間ではよくある“ギャンブル好きの暴力夫による妻殺害事件”として片づけられ、よくも悪くも関心を集めることはなかった。「弟は真面目に働いていましたし、暴力を振るう子ではありませんでした。奥さんのほうがしっかりしていて、尻に敷かれている雰囲気でした。借金だって、家族に相談してくれれば返せない金額ではないし、ギャンブルは嫌いだったはずなんですが……」ひとみが話すには、雅樹の母親(80代)は事件を聞いてから外出できなくなり、今では寝たきりの生活になってしまったという。“人を殺したんだから、死刑になっても仕方ない”と、息子に面会しようとも裁判に関わろうともしなかった。おそらく懲役17年を言い渡された息子と再会できる日は来ないだろう。弟を許すつもりも庇うつもりもない。ただ、何が弟を殺人犯にしたのか、真相が知りたいーー。ひとみはその一心で、真相を知るべく公判すべてを傍聴した。「ああいう人、サイコパスっていうんでしょ」あるとき、傍聴人の会話が耳に入った。なぜギャンブルにのめり込むようになったのか、妻を殺さなければならなかったのか。結局、雅樹の口からその理由が明かされることはなかった。■隠された真実「家族はまた深く傷つくと思いますが、どうかご支援の程宜しくお願いします」ある日、受刑生活を送る雅樹から、筆者のもとに手紙が届いた。そこには雅樹が事件を起こすに至った経緯が綴られていた。母や姉は知らないほうがいいと思ってきたが、残された子どもたちのためにも真実を伝えて欲しいと姉に諭され、手紙を書くことを決意したのだという。* * *雅樹と妻の美沙(仮名・30代)は、交際を始めてまもなく、妊娠をきっかけに結婚した。「子どもの世話で忙しいから、自分のことは自分でやってね」雅樹が仕事を終えて家に帰ると、いつも美沙と息子は食事を済ませていた。休みの日でも家族で一緒に食事をすることはなく、雅樹はいつもひとりで外食をしていた。いつになっても自分の家という実感が持てず、パチンコや飲み屋に寄って深夜に帰宅する生活になっていたという。それでも美沙は、友人の家族と一緒にキャンプに行ったり旅行することが好きで、家庭の外では仲よくできていたのだ。ところが、美沙はふたり目の子どもを出産してから体調を崩すようになった。そのころから心配した雅樹の母親が、家事や子育てを手伝うために自宅に来るようになっていたが、「クソババアまた余計なことして!あたしを馬鹿にしてる」と、雅樹の母親が作り置きしていった料理を、美沙が投げつけることもあったという。美沙は料理が得意ではなく、母の気遣いを馬鹿にされたと感じ激怒したのだ。「まずいし、貧乏くさい!こんなもん食べて、まともに育つわけないでしょうが!」美沙はそう言いながら、次々とゴミ袋に流し込んでいった。雅樹は一瞬、怒りが込み上げたが、子どもたちがいたので喧嘩はすべきでないと感情を抑えた。雅樹は次第に、家庭のストレスからギャンブルにのめり込むようになっていく。そんなある日の夜、雅樹の父親が急に倒れたという連絡が入る。“あたしは関係ない”と言う美沙を置いて、雅樹はひとりで病院に向かうことになった。その日の明け方、父は息を引き取り、雅樹が帰宅すると、「死んだ?ねえ、死んだの?」「死んだんだ、よかったじゃん。寝たきりとかになったら面倒くさいよね」笑いながらそう話す美沙に、雅樹は初めて殺意が湧いたという。それでも雅樹は美沙に感情をぶつけることはできなかった。美沙の問題行動は続く。雅樹が夜遅くに帰宅した日に、長男が駆け寄ってきた。美沙の体調が悪く、夕食を済ませていないというのだ。雅樹はすぐに食事を作って与えた。美沙は娘だけに食事を与え、長男には与えていなかったのだ。さらには長男を怒鳴りつけ、蹴り飛ばすこともあったという。「何すんだよ、やめろよ」ある日、倒れ込んだ長男を抱き起こす雅樹に、美沙はテーブルにあった封筒を投げつけてきた。それは借金返済の督促状だった。「あんたも親父に似て馬鹿なんだから」雅樹の父親は経営に失敗し、破産していた。雅樹は沸々と殺意が込み上げてくるのを感じていた。これまで目にしてきた妻の言動、そして父の葬儀の間、ずっと友人と電話やメールをしていた美沙の姿も蘇ってきた。「この子にもおんなじ血が流れてると思うと虫唾が走る!本当に間抜けな家族!」そう言われた雅樹は、息子にお菓子を渡して子ども部屋に行くよう伝えたことまでは覚えているが、その後の記憶は定かではないという。我に返った雅樹が見たものは、血まみれで倒れている妻と返り血を浴びた自分の姿だった。■家族に絶対言ってはならないこと度重なる美沙からの両親を侮辱する言葉に、雅樹は殺意を募らせていった。息子への暴力と暴言を目の当たりにし、ついに理性が崩壊した。しかし、どれだけ酷い言葉を浴びせられようとも、人を殺していい理由には到底なり得ない。酒やギャンブルに逃げず、妻とコミュニケーションを取ることで問題を解決する努力を重ねていれば、事件は回避できたはずだ。家族を侮辱されたことへの憤怒は「家族間殺人」の動機として度々報告されている。たとえ自分の家族をよく思っていなかったとしても、他人から悪口を言われると傷ついてしまうのは、家族は自分の一部であり、自分まで否定されたように感じるからであろう。配偶者の家族と折り合いが悪く、悩みを抱えている人は少なくない。耐えられないことは率直に配偶者に伝え、話し合うことが重要だ。ただし、くれぐれも言い方には注意が必要である。他人に対して抑えるべき言葉は、家族に対しても控えるべきなのだ。一瞬でも、家族に対して殺意が湧いたことがあるという人は、実は少なくないのではないか。他人ごとにせず、長く付き合う家族だからこそ気を付けるべきことを、今一度考えてみる必要がある。阿部恭子(あべ・きょうこ)NPO法人World Open Heart理事長。日本で初めて犯罪加害者家族を対象とした支援組織を設立。全国の加害者家族からの相談に対応しながら講演や執筆活動を展開。著書『家族という呪い―加害者と暮らし続けるということ』(幻冬舎新書、2019)、『息子が人を殺しました―加害者家族の真実』(幻冬舎新書、2017)、『家族間殺人』(幻冬舎新書、2021)など。
2021年10月15日高校の卒業アルバムに写る対馬容疑者(知人提供)「周りからは“ツッシー”と呼ばれていました。いじられても笑ってすませる温厚な人柄で、こんな大事件を起こしたことが信じられません……」容疑者の高校時代の同級生は驚きを隠せない──。自称・派遣社員の対馬悠介容疑者(36)。8月6日に小田急線の車内で乗客の男女10名を牛刀で切りつけた殺人未遂の容疑で逮捕された。「事件直前、容疑者は食料品店で万引きを行い、女性店員に通報されていました。店員を恨んだ容疑者は殺害を決意。しかし店が閉まる時間だったため、電車での無差別殺人に計画を変更しました」(全国紙社会部記者)狙われた20代の女子大生は重傷を負った。「さらに容疑者は大量殺人を企て、電車内にサラダ油を撒いてライターで火をつけようとしましたが、燃えることはありませんでした」(同・前)■「昔から人にバカにされてきた不幸な人間」容疑者は警察の調べに対し、「6年くらい前から、幸せそうな女性を見ると殺してやりたいと思っていた」「(殺すのは)誰でもよかったので、勝ち組っぽい女性を狙った」と供述している。以前から女性への歪んだ感情に支配されていたようで、その後の捜査でも、「大学のサークルや出会い系サイトで知り合った女性にバカにされて生きてきた」「幸せそうなカップルがたくさん歩いている渋谷のスクランブル交差点を爆破しようと計画していた」「俺は昔から人にバカにされてきた不幸な人間。幸せそうにしている人間が憎い」などと語っており、女性に対する強い憎悪を抱いていたことがわかる。牛刀は自殺用に購入し所持していたが、「(自殺は)痛そうだからやめた」と思い、断念。その刃は、何の罪もない女性たちに向けられた。このことからも、他人の痛みを想像できない身勝手な人間性がうかがえる。無差別殺人を計画し、社会を恐怖のドン底に突き落とした容疑者。何が彼をここまで歪んだ人間にさせたのか……。■大学時代に“異変”、ナンパを繰り返す容疑者は青森県出身。幼少期に東京・世田谷にある母親の実家に移り住み、公立の小・中学校に通った。中学から付き合いのある同級生によると、「誰にでも声をかけるタイプで、周囲に好かれていました。成績はいつも上位で、スポーツもできた。しかし、中学・高校と彼女はいませんでした」悪ふざけをすることもあったようで、「高校時代に、上半身裸で近所のファミレスに突撃したことも。女性店員には無視されていましたが」(同・前)くしくも学生時代を過ごした自宅は、今回の犯行現場となった小田急線・祖師ヶ谷大蔵駅のすぐそばにあった。その後、中央大学理工学部に進学した。何の問題もなく過ごしていた学生時代。しかし、このころから徐々に、容疑者に“異変”が現れる……。別の友人によると、「大学では周囲に“俺はナンパ師だ”などと自慢げに語り、手あたり次第に女性に手を出していましたね」一部報道では大学時代、中学・高校生にナンパを繰り返し、時にはホテルに連れ込んでいたという証言も伝えられている。大学に入学して突然、女性関係が豹変した容疑者。その勢いは止まらず……。「大学時代に友達数人でイタリア旅行に行ったことがあるんです。そして、ツッシーは海外でもナンパを……」前出の友人はあきれた様子で語る。ローマやフィレンツェなど名だたる観光地を回った楽しい旅行だったが、“真の目的”は別にあったのだ。「彼は本当に女好きで、旅行中はずっと過去のナンパ話など、女性関係の話題ばっかりでしたね」盛り上がった流れで……。「現地で女性をナンパしようということになったのですが、“さすがに現地の女性を落とすのは厳しいだろう”ということで、日本人観光客の女性に声をかけていました。ホテルのロビーで執拗につけ回したり、ロック・オンした女性の部屋をノックしたり……」(前出・友人)イタリアまで来ても、やはり言葉の通じる日本人ばかり狙って声をかけていたという。自称・ナンパ師を公言していた容疑者だが、異国の地で海外の美女にナンパをするほどの度胸はなかったようだ。ちなみに容疑者のフェイスブックにはこの旅行の後に、再度イタリア旅行をした際の投稿があり、《インジェノバ、ウィズマイフレンド&めっちゃタイプガール》(原文ママ)というコメント付きで現地の“イタリア美女”と肩を組む写真を載せている。頼み込んで、写真だけ撮らせてもらったのだろうか。■突然、大学をやめてしまったひたすら女性との交流を求め、ナンパに明け暮れた大学生活だったが、やがて……。「何があったのかわかりませんが、突然、大学をやめてしまったんです。大学時代には交際していた女性もいましたが、3年生くらいのときにフラれてしまった」(大学時代を知る別の友人)程なくして周囲の友人とは音信不通に。大学を中退した容疑者は、派遣会社を転々とし、その間に女性への“恨み”を増大させていった──。以前は執拗に女性にアプローチしていた容疑者がなぜ、一方的な敵意を募らせることになったのか。「まだまだ未解明の点は多いですが、妄想型の統合失調症を患っていた可能性を含め現在、捜査が行われているようです」(前出・記者)あまりに身勝手な理由で多くの人が傷ついた今回の事件。拗らせた容疑者の女性への感情が変わらなければ、出所後にはまた、新たな被害が出てしまうだろう。
2021年08月17日対馬悠介容疑者のフェイスブックより「6年くらい前から、幸せそうな女性を見ると殺してやりたいと思っていた」小田急線の車内で6日、乗客の男女10人を切りつけるなどして殺人未遂の容疑で逮捕された自称・派遣社員の対馬悠介容疑者(36)。その犯行動機は、女性蔑視に満ちている。容疑者は「勝ち組っぽい女性を見つけ狙った。相手は誰でも良かった」などと供述しており、無差別での犯行だった。「逮捕された対馬容疑者は青森県の出身です。中央大学理工学部に入学するも、中退。その後は派遣労働などを転々とし、次第に学生時代の友人とも疎遠になっていたようです」(テレビ局記者)犯行の直前には新宿区内の食料品店で万引きもしていた。しかし女性店員に発見され、警察ざたに。一方的に恨みを募らせた容疑者は一時、店員の殺害を決意するも、店が閉まっていたため、急遽、電車内での無差別殺人を企てた。犯行では乗客を包丁で切りつけたほか、サラダ油を車内に撒き散らしてライターで発火させることを試みたが、ライターの火力では燃えることはなかった。■殺人未遂での刑の相場は懲役5~7年無差別殺人未遂という、社会を不安と恐怖のドン底に突き落とした容疑者の身勝手な犯行。今後、どれほどの罪を背負うことになるのか。元検事でフォートレス法律事務所の田中良弁護士に聞いた。「今回、容疑者は殺人未遂で逮捕されています。一般的に殺人未遂での刑の相場は、懲役5~7年ほど。しかし、今回の事件はもっと重い罪を下されるかもしれません」(以下、田中弁護士)その理由とは。「容疑者には酌量の余地がなく、被害者にも落ち度がない。さらに逃げ場のない公共機関での犯行であり、社会的影響力の高さからしても、負うべき責任は重いと言えるでしょう」今後、殺人未遂として起訴される際の被害者の数とそれぞれの怪我の程度が量刑を決めるポイントになるという。「重傷を負った20代女性の件は起訴されるでしょうが、その他の被害者が負った被害について、何人分が起訴されるか。怪我の程度にもよりますが、かすり傷程度の場合は、検察が起訴しないケースもあります」起訴される人数が少なければ、その分、求刑が軽くなることも考えられるという。これほど大きな事件を犯して短い刑期で出所するとなれば、多くの人が不安に思うはずだが……。「しかし、もし1人分の被害しか起訴されなくても、求刑が殺人未遂の相場である7~8年を下回ることはないでしょう」それでは、最大でどの程度の罪になるのか。「4~5人の被害が起訴されることになれば、15~20年という求刑になってもおかしくありません。殺人事件での刑の相場が、おおよそ12~15年くらいなので、殺人事件を犯したのと同等の扱いになるということになります」■精神的な異常が認められた場合は一方で、懸念すべき点もあるようで……。「今回の容疑者の供述を見ていると、精神的に正常な状態だったのかという点が気になります。異常が認められた場合は、少し話が変わってきます……」容疑者は二十代前半まで普通に生活をしていたが突然、社会から脱落しており、「“スクランブル交差点を爆破する”と供述するなど、言っていることもまともではありません。もしかしたら、妄想型の統合失調症の症状があったのではないか」成人後に発病することが多いこの病気にかかると、幻覚や妄想の症状が現れ、社会生活を送ることが困難になる。「今後、精神鑑定などを行うことが予測されますが、もし精神疾患が認定されれば、その重度によっては、刑が軽くなることもあり得ます」確かに、中央大学の理工学部に入れるだけの頭脳をもった人物がサラダ油をライターで発火させられると考えているなど、まともな精神状態だったとは思えない犯行だ。「一部では容疑者が生活保護を受けていたという報道もあります。36歳で、外見的には健康そうな男性が、そう簡単には生活保護を受けられません。もしかしたら、何らかの医療行為を受けていたのではないでしょうか」これらは、あくまで推測に過ぎないが……。「場合によっては、刑務所よりも病院に入ってもらう方が良いとなるかもしれません」(田中弁護士)刑法では精神に異常のある者は無罪もしくは減刑にすると定めており、より早く、容疑者が「野に放たれる」可能性もあるのだ……。もし病気が事実だったとしても、容疑者の犯した罪はとてつもなく大きい。治療を行っても再犯を完全に防止できる保証はなく、多くの人が不安に感じることだろう。司法はどう判断するか。
2021年08月14日※写真はイメージです「憧れのハイブランドのバッグが欲しい!」「コロナ禍でパートの日数も減って子どもたちの学費が厳しい」お金が欲しい、そんな欲望は誰もが抱えているもの。そんなときに、《おいしい仕事です!簡単!早い者勝ち》《日給10万円以上!短期間でまとまったお金を稼げます》なんてメールが届いたら……。見てみるだけと思ってついクリックすると大変なことに。■“簡単な仕事”の誘い文句に注意を!「SNS上で“高収入”や“高額バイト”という誘い文句で募集しているのは、いわゆる『闇バイト』と呼ばれるものが多いのが実情。その正体は、高い報酬と引き替えに犯罪行為を行う人の募集です」そう語るのは、元・埼玉県警捜査一課刑事でデジタル犯罪に詳しい佐々木成三さん。こうした仕事はメールで届くばかりではない。「闇バイト高収入」「裏バイト即金」などとキーワードを入れればSNS上で多くの怪しいバイトがヒットした。そこには《10万以上》《安心》《簡単な仕事》など聞き心地のいい言葉が並んでいる。だが、その実態は前出・佐々木さんが述べるように「犯罪行為」だ。では、具体的にどのような悪の片棒を担がされるのか。「まずオレオレ詐欺や振り込め詐欺などの特殊詐欺で、電話をかける“かけ子”や高齢者宅に現金やキャッシュカードを取りに行く、いわゆる“受け子”の仕事。また、違法薬物の運び屋や、家に押し入って金銭を強奪する強盗の仕事まで募集しています」(佐々木さん、以下同)特殊詐欺の場合、犯罪者グループが、受け子を募集する際は“物を受け取りに行くだけの簡単な仕事です”と巧妙な言葉で誘い込む。「犯罪グループとのやりとりは証拠が残らないようにメッセージが一定時間で自動的に消えるSNSを使うよう指示されます。そして面接が行われ、学生証や免許証など写真のついた身分証明書や自分の顔写真を送るように求められるのです」その後、実際に犯罪行為を行う仕事が「紹介」される。銀行員を装いキャッシュカードを騙し取ろうとする手口をもとに説明しよう。「決められた日時に、指定された高齢者宅に銀行のキャッシュカードを受け取りに行くよう指示されます。“あなたはアルバイトの銀行員として、偽名を伝えてカードを受け取ってください”と言われます」明らかに怪しそうだが、高報酬に目がくらみ、さらにたたみかけるように言われる。「“訪問する人の許可は取っているので大丈夫です”“警察に捕まることは100%ありません”という言葉を信じ込んでしまうのです。深く考えることなく犯罪に手を染めてしまいます」■闇バイトは一度関わると抜けだせない実はこうした犯罪に巻き込まれるのは大人ばかりではなく、未成年のケースも増えている。6月には、高校生が相次いで埼玉県警に逮捕された。「入間市の17歳の高校生の少年が静岡県内でオレオレ詐欺の受け子をしてお金を受け取りました。ですが説得され母親に連れられて自首しました。彼は詐欺の疑いで逮捕されています」(全国紙社会部記者)福島県の高校生の少女(17)も静岡県の女性(83)から現金250万円などを騙し取ったとして逮捕された。「大人、子どもにかかわらず人は誰かに認められたいという承認欲求を持っています。それをお金で満たそうとするんです」(佐々木さん、以下同)可愛い服を買ったり、おいしそうなものを食べたり。SNSなどを通して共有し、評価を求める。「犯罪者いわく、“いちばん誘惑に負けてしまう年代”なんです」お金がない……そんなときに、地道にバイトをしてお金を稼ぐという手順を追わず、安易な方向に流されてしまえば悪い大人たちに狙われる。「1回だけやって10万円ゲットして、その後すぐにやめれば警察に捕まることはないだろう」と闇バイトで犯罪を犯した若者たちはそうした甘い考えを持っていたという。しかし簡単には抜けだすことができないのも闇バイトの怖いところなのだ。「面接時に送った学生証や身分証などの個人情報を握られている状態です。“やめたい”と言っても、“学校にチクられたくなかったら手伝え”と脅されてしまい、抜けるに抜けられなくなってしまうのです。一度でも関わってしまえば、そこで終わりです」さらに犯罪者たちは、言葉巧みに罪の意識をなくすような言葉を投げかけてくるのも特徴だ。「過去に摘発された犯罪者グループは、犯罪行為をする前の受け子のバイトの子たちにこう言っていました。“高齢者がタンス貯金して使っていないお金を僕たちが使うことで、日本の経済を回している。つまり、日本を助けている。だからこれは犯罪じゃないんだ”“みんなやってるから大丈夫”。そんな根拠のないうたい文句に騙されてはいけません」佐々木さんは語気を強める。■コロナ禍で増加傾向、一度の犯行で実刑もさらにコロナ禍でネットを使った犯罪は増加傾向にあると続ける。ターゲット層になりうる学生たちがネットに触れる時間が増加して闇バイトのリクルートがしやすくなったからだ。また、収入減で困窮する大人世代にもターゲットを広げ、甘い誘い文句で声をかけてくる犯罪者も増えている。昨年11月、80代女性からキャッシュカードを騙し取り、約217万円を引き出した男(当時29)が逮捕された。男はコロナ禍で店長を務めていた飲食店が経営難になったことでSNSで見た闇バイトの高額報酬に魅力を感じ、応募。犯行に至ったという。「闇バイトをしてしまった学生の中には、警察に捕まって初めて、自分がやったことが特殊詐欺の“受け子”だったと知ったというケースもありました。受け子は詐欺罪という重大な犯罪です。偽名を使って銀行員になりすましていますし、“自分がやったことは犯罪とは知りませんでした”では通用しません」闇バイトで犯罪に加担し逮捕されると、その経緯によっては弁解が通用しないことも。「初犯でも実刑、つまり刑務所に入ることになる可能性が大きいものもあります。詐欺罪、強盗致傷など、その犯罪行為によります」そう指摘するのは元検察官の高橋麻理弁護士だ。「闇バイトというのはあくまでも実行役を募るための手段。結果としてどのような犯罪に加担したかで刑罰が決まりますので、アルバイト感覚でやったとしても、その当事者に重い実刑が科されてしまいます」(高橋弁護士、以下同)■社会復帰が非常に難しくなるリスクも実際に実刑が科せられた事件も少なくない。大学生の男性(当時)は闇バイトに応募して強盗傷害の実行役をすることとなった。民家に押し入り、住人にケガをさせたことから、強盗傷害で逮捕。初犯だったが判決は懲役4年6か月の実刑。覚せい剤の運び屋をして、懲役9年の実刑判決を言い渡された例もあるという。「この運び屋こそ軽く考えられがちですが非常に重い処罰を受けます。覚せい剤の営利目的での密輸は、運び込んだ薬物の種類や量にもよりますが、一発で実刑になるのが原則」高橋弁護士は「闇バイトで募集して参加したという事例ではありませんが」と前置きをしたうえで、「私が検察官をしていた際に扱った事件です。成人して間もない若者でした。悪い友人に誘われて受け子として1回仕事をしただけ、初犯でしたが懲役1年6か月の実刑判決を受けました。特殊詐欺は社会問題化し、裁判でもかなり厳しく処罰される傾向があります。そもそも、確実に執行猶予がつくような軽微な犯罪であれば、犯罪の首謀者たちの仲間内でやるはずですよね。そうではなく、それなりの対価を払い、SNSで人を集めるという手間とリスクを背負ってまで共犯者を募っているのは、警察に逮捕されるリスクや逮捕されたあとの代償が大きいからでしょう」未成年が逮捕された場合はどうなるのだろうか。「少年法の適用で、成人とは手続きが異なります」少年院送致ということになれば、少年院に収容される。また、重大犯罪に関しては、成人と同じ刑事裁判を受け、刑務所に収監される場合も。「つまり、未成年であっても、犯した犯罪の内容によっては重い懲役刑や身柄拘束を受ける可能性があるということです」刑事処罰とは別に、学校を退学処分になってしまったり、会社を解雇されることもある。家庭があるなら、子どもや配偶者の未来にまで影響を及ぼすような社会的制裁も免れない。それに刑事責任を果たしたらそれで終わり、というわけにはいかない現状もある。「ネット上に事件内容を投稿する人もいるため、半永久的に氏名や顔写真などの情報が残ってしまうおそれがあり、社会復帰が非常に難しくなる。それほどのリスクまで背負っているということです」アルバイトや副業という軽いノリで犯罪に手を染めてしまったら取り返しがつかない。■子どもたちをどう守ったらいいのかでは、高校生や大学生の子どもたちをどう守ったらいいのだろうか。高橋弁護士は、「親世代が実際に闇バイトはどういう言葉で募集されているのか実態をその目で確認することが重要です。当然“強盗の仲間を集めています”というような直接的なアナウンスはしていません。さまざまな隠語やキーワードを駆使しているんです。まずそこを知ることです」例えば仕事内容によって強盗は『叩き』、違法薬物の運搬は『運び』などの隠語が使われている。ほかにも『単発の仕事』『保証金なし』も闇バイトを募集する際のキーワードだという。「一見まともそうに見える闇バイト募集の投稿を自分で確認したあとに、お子さんに見せて“これ、何だと思う?”という会話から始めてみてください。そこから、実は自分も危ない世界と隣り合わせのところにいるんだ、という危機感を伝えるきっかけにしてほしい。親子で危機感を共有することが子どもが闇バイトに陥ることを未然に防ぐ第一歩だと思います」もしあなたの子や孫が闇バイトに手を染めていたら……。それがわかったとき、どうしたらいいのだろうか。「警察に行くという踏ん切りがつかない、そもそも犯罪かどうかもわからない場合もあると思います。まずは弁護士に相談してください。状況に応じて自首のサポートもできます。弁護士が独断で、勝手に警察に通報することもありません。安心して、速やかに行動してほしいです」闇バイトは、甘い誘い文句のもと、SNS上で手軽に参加できてしまうものだが、1度手を染めてしまったが最後、支払う代償はもらう報酬よりもずっと高いものになる。■『闇バイト』危険な仕事内容一覧ネット上に躍る『高額バイト』や『闇バイト』の文字。ただ仕事内容は特に書かれていない。もしかしたらこんな危険なことをやらされるかも……。(注・専門家への取材をもとに編集部で作成。あくまでも一例)■詐欺関連『オレオレ詐欺』『還付金詐欺』などで電話をかける『かけ子』、被害者から金銭やキャッシュカードを受け取る『受け子』、被害者が振り込んだ金銭を引き出す『出し子』を担う。中でも『かけ子』は騙すことがわかっていながら電話をかけるため知らなかったではすまされない。最近では新型コロナに乗じた特定給付金に関する詐欺への関与をさせられる事例も増えている。■運び屋違法薬物や拳銃、現金などを指定された場所から場所へと運ぶもの。何を運んでいるかわからなくても罪に問われる。海外などから薬物を運ぶ場合などは、国によっては死刑にあたるほどの重罪になる。■口座売買や名義貸し銀行口座や戸籍などの個人情報を第三者に売る、というもの。振り込め詐欺など特殊詐欺に利用されることがある。その口座や個人情報が事件に使われれば逮捕されたり、今後新しく口座を開いたり、ローンを組むのが難しくなることにも。■各種勧誘投資でもうかるなどの勧誘で情報商材などを販売するもの。中には騙す本人もその商品を買わされ、そのためにローンを組まされるケースも。ほかにもカニや布団などを高額で売りつける販売員をさせられることも。■強盗被害者宅を訪れ、金品を奪取するもの。文字どおり犯罪なのだが、指示役からは募集の段階では「お金を取りに行くだけ」「被害者の不正なお金」などと言われていることも多い。そのため、罪の意識が薄く犯行に及ぶケースも。元埼玉県警捜査一課佐々木成三さん警察を退職後は犯罪を防ぐため精力的に活動。サイバー犯罪捜査の経験から『スマホで子どもが騙される』(青春出版社)などネット犯罪に関わる著書も多い。弁護士高橋麻理さん法律事務所オーセンス、第二東京弁護士会所属。検察官として殺人、詐欺、性犯罪事件に携わった。退官後、弁護士に。刑事事件のほか離婚等家事事件を担当している。(取材・文/堤美佳子)
2021年07月20日経済産業省6月末、新型コロナの給付金詐欺で2人の経産省キャリア官僚が逮捕された。事件を受け、「なぜ、エリート官僚が?」という声も少なくない。凶悪事件も含め、200件以上の殺人事件などの“加害者家族”を支援してきたNPO法人World Open Heartの理事長・阿部恭子さんが、これまで見てきた実例から「エリート息子の転落」を解説する。コロナの影響で売り上げが減少した中小企業の関係者を装い、国の「家賃支援給付金」約550万円を騙し取ったとして、経済産業省産業政策局産業資金課の桜井真(28)と同局産業組織課の新井雄太郎(28)が詐欺罪で逮捕された。2人は共謀して犯行に及んだと報道されている。桜井容疑者は給料より高いマンションに住み、高級車を2台所有するなど明らかに派手な生活が事件を露呈させたようだ。罪を犯さずとも、人並み以上の生活ができたであろうエリート官僚がなぜ犯罪に手を染めたのか。エリートに育てたはずの息子が事件を起こし、本人だけでなく、家族の人生まで台無しにしてしまったふたつの事件を基に、加害者の「歪んだ価値観」がどこで身についたものなのか考えてみたい。■土下座して謝罪に回る両親「出世して、社会貢献してほしいと思っていたのに、社会に多大な迷惑をかけることになってしまって……。本当に親として情けない限りです」敏子(仮名・60代)の次男・智也(仮名・30代)は、投資詐欺で総額約2,000万円を知人らから騙し取り、逮捕された。被害者はみな、智也の友人や幼馴染だった。智也の実家は東日本大震災で被害を受けた地域であり、国や自治体からの支援金が入っている家が多かった。被災者をターゲットにした卑劣な犯行に、地域住民は憤った。怒りの矛先は、塀の中の智也にではなく、地域に住む智也の家族へ向けられた。「智君だから信用して預けたのに!絶対許せない!」連日、自宅に訪ねてくる被害者一人一人に対し、敏子と夫は土下座をして謝罪した。年金生活の両親が息子の代わりに返済する資力はなく、謝罪することしかできなかった。敏子にとって、智也は自慢の息子だった。一流大学を出て一流企業に入り、震災後は復興支援事業を始めると地元に戻ってきてくれた。派手な生活をしている様子もなく、真面目で堅物の息子が、間違っても人様から金を騙し取るなど夢にも思わなかった。「こんなもんいらないから金返せ!あんたらも騙し取った金で遊んでたくせに!」被害者のひとりは、敏子が沖縄を旅行した際に渡したお土産を投げつけた。智也は働き出してから、ずっと両親に仕送りを続けていた。夫の定年退職後、敏子は夫とよく旅行に出かけたが、そうした余裕は智也の援助あってのことだった。楽しかった旅の思い出も、すべて罪悪感に変わった。「泥棒!」「詐欺師!」「よくもあんなクズ育てて」敏子はあらゆる言葉で非難された。親戚からも絶縁され、「親族の恥」と罵られた。事件が起きる前までは、「優秀な智君のお母さん」「智君は親族の誇り」とほめそやされていたはずが、人生のすべてを否定されたと感じた。「悪夢を見ているようでした。何かの魔法にかけられて、一晩で悪魔にされてしまったような……」追いつめられた家族は、長年暮らしてきた故郷を去らざるを得なかった。■優等生が犯罪者になるまで「被災地の役に立ちたくて、会社を辞めてきました」智也は周囲にそう話していた。人の役に立ちたいという気持ちは嘘ではなかったが、会社を辞めた理由は他にあった。智也は、同じ職場の女性と交際するようになり、女性は智也との結婚を前提に退職し、ふたりは同棲生活を始めていた。ところが、ある日突然、女性は他に好きな人ができたと智也の下を去った。そして、女性が次に交際を始めたのは智也の部下だった。同僚にはまもなく彼女と結婚すると話しており、智也は職場に行きづらくなった。そこで、復興支援事業を始めることを理由に退社したのである。「子どものころは“ガリ勉”といじめられてました。あまり褒められたことがなかったので、地元の人たちが受け入れてくれて嬉しかった反面、急に掌を返されたような気もしていました」会社を設立したものの身が入らず、ギャンブルにばかりのめり込むようになった智也。家庭を築く目的を失い、自暴自棄だったという。そんな智也に、何も知らない地域の人々は、疑いもなくお金を預けた。「金というより、他人をコントロールすることに快感を得ていたのだと思います」智也は幼いころ、身体が弱く性格も内向的だった。勉強ができるより、活発な男の子がもてはやされる地域で、智也は友達もなく孤独に育った。両親は、スポーツで活躍する兄の応援にばかり夢中で、智也は家庭の中でも孤立していた。兄はスポーツ推薦で有名高校に進学したが大学受験に失敗し、その後はフリーター生活だった。両親は、兄に恥ずかしいから実家に戻って来るなといい、今度は智也ばかりを可愛がるようになった。父親は、事件後まもなく他界。敏子は、罪悪感から食事をとることができなくなってしまった。刑務所に収監された息子の帰りを待つと、拒食症を克服したが、息子の顔を見ることができないまま亡くなってしまった。刑務所で母の死の知らせを聞いた智也は、ようやく犯した過ちを心から悔いたという。■子の学歴は親の買い物里子(仮名・50代)の長男・祐樹(仮名・20代)は、都内の有名大学に通う学生だったが、振り込め詐欺で逮捕された。祐樹は、これまで友人からの借金やアルバイト先での横領などさまざまな金銭トラブルを起こし、その都度、すべて親が代わりに返済してきた。「退学だけにはならないようにと援助してきたのですが、すべてが水の泡になりました」子どもの尻拭いにあたる親の「援助」が報われることはない。むしろ、さらなる事態の悪化を招くのである。親は学歴にこだわるが、祐樹はほとんど大学に行ったことはなかった。“教育ママ”の里子は成績第一で、幼いころから息子の生活や交友関係を厳しく制限していた。高校時代はもっとも厳しく、趣味や部活は許さなかった。受験先は親が決めたようなもので、祐樹にとってはどこでもよかったのだ。合格すればひとり暮らしができ、新車も買ってもらえるというので、実家を出たい一心で勉強に励んだ。祐樹はコミュニケーションが苦手で、大学で友達を作ることが難しかった。対等な関係を築くことができず、相手より優位に立たなければ信頼関係を構築できなかった。優位に立つために奢ったり、交際相手には高価なプレゼント送ることで関係を維持していた。次第に周りには悪い仲間ばかり集まるようになり、振り込め詐欺集団に取り込まれることになる。事件の影響で、祐樹の父親は退職せざるを得なくなった。すでに祐樹の事件で貯金を使い果たしており、そのしわ寄せは、これから進学を控えているきょうだいに及んでいる。■加害の原点殺人事件などに比べ、詐欺や横領の場合、犯行手口に焦点が当てられ、その動機が掘り下げられることは少ない。お金はないよりもあったほうがよく、あればあるだけいいと考えるのは当然のことかもしれない。しかし、正当な手段で豊かな生活を手に入れられる立場にある者が、あえてリスクを冒すのはなぜなのか。若年者の犯行の場合、生育歴に原因が潜んでいるケースは少なくない。智也と祐樹は、家庭の中で無条件に愛される経験を欠いていた。まるで成果に対する報酬のように、親の期待に答えることを条件に、家族の一員として認められるのである。智也にとって金は、支配欲求を満たすものであり、祐樹にとってはコミュニケーション能力の欠如を補うためのものだった。そして2人には、リスクを選択するにあたって歯止めになるような、守るべきものがなかったのだ。金や権力に過剰に固執する人の中には、自己肯定感が低い人も少なくない。価値観の歪みに気が付くことが更生の第一歩である。桜井容疑者、新井容疑者もまた、「加害の原点」と向き合って欲しい。阿部恭子(あべ・きょうこ)NPO法人World Open Heart理事長。日本で初めて犯罪加害者家族を対象とした支援組織を設立。全国の加害者家族からの相談に対応しながら講演や執筆活動を展開。著書『家族という呪い―加害者と暮らし続けるということ』(幻冬舎新書、2019)、『息子が人を殺しました―加害者家族の真実』(幻冬舎新書、2017)など。
2021年07月17日お笑いコンビ・チョコレートプラネット(長田庄平、松尾駿)が1日、東京・千代田区の法務省で催された「第71回社会を明るくする運動~犯罪や非行を防止し、立ち直りを支える地域のチカラ~キックオフイベント『コント芸人が法務省とコント作りに挑む!』」に出席。犯罪更生の仕組みを知り、松尾は「僕が何か犯罪してもすぐ更生できる」などと語った。同運動は、法務省と吉本が、犯罪や非行のない社会を築くための運動の広報啓発活動として行う取り組み。チョコレートプラネット、ジャルジャル(後藤淳平、福徳秀介)、シソンヌ(じろう、長谷川忍)、3時のヒロイン(ゆめっち、福田麻貴、かなで)の4組は、「更生保護ボランティア」を題材としたコント動画を、1日より各種YouTubeチャンネルで順次公開する。チョコレートプラネットの2人は、犯罪再犯を防止する「協力雇用主」、左官業の三上工業に取材を敢行。長田は「犯罪を犯してしまっても、もう一度世の中に復帰できる、すばらしい世の中になればいいなとコントを通じて伝えたい」と真面目にコメント。「もし相方が犯罪を犯してしまっても、そういうのがあるのは助かる」と述べた。松尾も同調し、「僕が犯罪を犯しても三上工業さんがある。三上工業さん、実は僕の実家の近く。だから僕が何か犯罪してもすぐ更生できる」と安堵。「(協力雇用主という)そういう方がいると分かった。僕は安心して間違いを犯せる」と言い、笑いを誘った。ジャルジャルは、犯罪や非行に走った人を更生する民間ボランティア「保護司(ほごし)」を取材。保護司をテーマにコントを考えることに。後藤は同テーマについて「難しいと言えば難しい。でも難しいほうが逆に、面白いコントは生まれやすいのでは」と語るも、福徳は「本当は、一回撮ったんです。お笑いに走りすぎてボツになった。『笑かすことばっかり考えてるじゃん!』となった」と暴露。後藤も「『こんな動画出せない』となった」と心境を明かした。
2021年07月01日子どもを通じて交流が始まるママ友との付き合い、その中ではモラルがないママ友との出会いも時にあるようです。中には、モラルがないどころか、無意識に犯罪行為している深刻なケースもあるといいます。今回は、ウーマンエキサイトアンケートに寄せられたエピソードの中から「モラルのない非常識なママ友」についてご紹介します。■子どもの入場料のごまかし!? 犯罪行為に手を染めるママも多く寄せられたのが、料金のごまかしなど、お金を出し渋るがゆえの非常識な行動についてのエピソードです。「ママ友がドリンクバーで自分の分だけ注文して、子どもにもこっそり飲ませたり、テーマパークでは当たり前のように、年齢をごまかしていましたね」「子どもに年齢詐称させる親をみかけます。モラルの問題以前に、詐欺行為で犯罪だと理解してもらいたい」「量り売りの潮干狩りで、こっそりバッグに入れて持ち帰るなど、常識では考えられないような行動をとる方もいました」「自営業のママ友。年収をごまかしている、子どもの給食費も払わなくていい、修学旅行も実質上無料になると自慢げに話していました」「子どもにチャイルドシートが必要なのに、片手で抱っこしながら運転していた。『危ない』と指摘したら、高いし必要ないしと開き直った」「友達親子とお出かけして、うちだけおやつにポップコーンを買いました。するとママ友の子どもがむさぼりつくように食べ出して、うちの子が遊んでいる間に8割ほどを食べてしまいました。親も止めず、びっくりしました」中には犯罪行為と言えるような、驚きのエピソードも寄せられていました。レストランやテーマパークでの料金のごまかしは、刑法上の詐欺罪にあたります。絶対に許しがたい行為ですが、実際にこのようなモラルのない人たちが周囲にいたママたちもいるようです。■厚かましい!遠慮がなさすぎエピソードまた、ママ友の厚かましい態度にうんざりしたというコメントも寄せられていました。「幼稚園時代、園に駐車場がなくて、有料駐車場を利用する必要があった。すると、ママ友からうちの車に下の子どもを一緒に乗せてほしいとしつこく言われ、『チャイルドシートがないから』と断ると、『真面目なんだね』と言われた。卒園式が終わった後はもう二度と幼稚園に行かなくていいんだと思ったときは本当に嬉しかったです」「お隣さんの子どもとその友達が十数人、自宅前の私有地でワイワイして、音や声がすごくて、産後すぐの私には苦痛だった。また、勝手に入ってこられるのが嫌だったため、入ってこないでほしいことを隣の子どもに伝えた。数日後、『うるさくしてすみません。ちなみに、うちの敷地には入ってもらって構いませんから〜』と言われて、不快だった」「ママ友が家に遊びに来ると、冷蔵庫に磁石で貼ってある手紙類や、予定を書き込んでいるカレンダーをいつも見られ、『今度〇〇病院に行く予約を取ってるの? どこか悪いの?』とか、『△△さんと来週ランチ行くんだ、へぇ~』などと言われます。行動をチェックされているみたいでとても嫌でした」「2人目を妊娠中のある日、ご近所のAさんからメールで、『2人目妊娠中? 仕事行ってないよね』などと聞かれ、私を監視しているかのような内容に恐怖を感じました。それから、安定期に入ったことを聞きつけたAさんは、マスクもせずに思春期の子どもを連れてやってきて、出た瞬間におなかを触ってきて、『今しか触れないから触り!』と、子どもにもおなかを触らせました。こんな目にあうなんて…と、気持ちがやられそうでした」ママ友からの遠慮のない数々の行動には驚きを隠せません。人との心地よい距離感は、それぞれに異なるとは言え、相手の気持ちを考えずに、ズカズカとプライベートに踏み込んでいく行動は、つくづくよくないと実感します。■非常識なママ友どうすればいい!?それでは、このような非常識なママ友の行動に直面したとき、どのように対処すればいいのでしょうか。寄せられたコメントから、対処法を考えてみたいと思います。「引っ越しをして縁を切りました」「『こういう人だ!』と割り切って、次回からは信用し過ぎない事にし、自分からは絶対誘わないようにした。また突然誘われたら、当たり障りのない返事をして距離を置く」「一緒に出かけないことが最善だと思い、徐々に行かなくしていきました。最初は幼稚園生活のことを考えるとまずいかなと、視野が狭くなっていたのですが、私がルールを守ることについて嫌みを言ってきたので、こういう人は生活には必要ないと冷静になりました」「やはり距離を置くことが1番です。面白おかしくモラルのないママ友の話をしている人がいたので、不愉快になり『本人の前でちゃんと言うべき』と注意した事がありました。一緒にいると同類に思われます。子どもは子ども、親は親と割り切った方がいいと思います」ママ友のモラルのなさによって、トラブルになってしまうことも多々あるでしょう。チケット購入時の年齢詐称や、飲食店での料金の踏み倒しは、れっきとした犯罪行為です。もし非常識なママ友がいたら、同じような行動は取りたくないと、距離をとったり付き合いをやめたりしている人が多いようです。ママ友付き合いについては、こんなコメントも寄せられていました。「『子どもの友達』であって、決して親同士が友達ではないので、深入りせずに過ごした方が無難だなぁと思います」「いろいろなママ友がいます。特に、子どもが幼い時のママ友付き合いは大切だと思います。でも、一人になっても自然と人は集まるし、価値観が合う人と付き合うべきです。心に負担がかかるようなママ友とは距離をとった方がいいと思います」コメントにもあるように、ママ友はあくまで「子どもの友達のママ」という存在ですよね。中には、そこから本当の友達に変わっていくケースもありますが、多くの場合は短期間だけの交流にとどまります。そうした現実をしっかりと頭の片隅においた上で、自分自身と自分の子どものことを第一に考えて、非常識なママ友に振り回されないようにしたいですね。
2021年06月21日阪上翔伍被告(航空大学卒業生のHPより)身の毛もよだつ、医大生のヘンタイ行為が発覚した。福岡県警久留米署は、久留米大学医学部の元学生、阪上翔伍被告(37歳・住居侵入罪などで公判中)を逮捕・送検したと5月10日に発表した。被告人は、部屋の鍵に記された製造番号を使って合鍵を作り、女性宅への侵入や下着泥棒を繰り返していた。■計164件の住居に侵入し下着を窃盗手口はこうだ。「阪上被告は大学のサークルや実習中などに女子学生の鍵の製造番号をこっそり盗み見。その番号を使ってインターネットで合鍵を注文し、自宅に侵入した。自宅の場所は本人や知人との会話から大まかな場所を聞き出し、周辺で一軒一軒、鍵穴がはまる場所を探して割り出した」(捜査関係者)そもそも、他人の家の合鍵を勝手に作れるものなのか。鍵取扱業者の業界団体である『日本ロックセキュリティ協同組合』によると、「ほとんどの鍵は刻印された製造番号がわかれば、ネットで注文して誰でも勝手に合鍵を作れます。人に渡したり、見せたりしないよう注意してほしい」犯行理由について「女性の家に入って、普段見られない世界を見たかった」などと供述していた阪上被告。自宅へ侵入する際はノックをして、中に人がいないか確認。ところが今年1月26日、マンションの一室に侵入した際に、住人である同級生の女子学生と鉢合わせとなり、そのまま住居侵入の疑いで逮捕された。その後の調べで、被告人は同じ学部の女子学生らが住むマンションなどで計164件の住居侵入を繰り返し、女性の下着など計51点(約4万円相当)を盗んでいたことが明るみになった。女性からすればあまりに気持ち悪い話だが、犯行に及んでいた被告人はいったい、どんな人物なのか。■夢を諦めた経験から医療を志す福岡県で生まれ育った阪上被告は、高校を出た後、1浪して九州大学に進学した。卒業後はパイロットを志して航空関係の学校に進んだ。念願の航空会社に入社するものの、パイロット資格の取得には視力や健康面など厳しい審査がある中で、身体面の問題が見つかり、パイロットになる道は絶たれた。具体的にどんな問題があったのかは不明だが、自身の身体の異常で夢を諦めた経験から同じ境遇の人に思いを馳せるようになり、医療を志すようになったという。2014年、航空会社を退職し、実家に戻って医学部受験のため勉強を開始。紆余曲折を経て、2016年4月に久留米大学医学部に入学した。このときすでにヘンタイ行為に手を染めていたようだ。前出の捜査関係者によると、「初めに住居侵入を行ったと確認されているのは、2015年の9月。狙ったのは、被告人の近所に住んでいた当時14歳の女子中学生が住む家でした。この家では自宅の鍵を家のポストに入れて出かける習慣があり、それを知っていた被告人はこっそり鍵を持ち出し、鍵店で合鍵を複製。度々、勝手口から中へ侵入していました」(同・捜査関係者、以下同)同じ家に何度も忍び込んでは、毎回のように下着を盗み出した。気づかれないよう、一度に持ち去る下着の数は1~2点に抑えるよう工夫した。パンティーとブラジャーが一対の場合は、必ずセットで持ち去る徹底ぶり。女性の部屋に入り込む“快感”を覚えた被告人の犯行はさらにエスカレートしていく。「その後、医学部に進学した被告人は、製造番号がわかれば、現物が手元になくても他人の鍵を複製できるとネットで知ったようです」女性の部屋では下着を物色する際に記念の動画撮影をしていただけでなく、下着のほか、使用ずみ生理用品まで盗んでいたからおぞましい。「盗んだ下着は一点一点、保存袋に保管し、丁寧に持ち主の名前まで記名していました。金銭の被害は確認されておらず、今回、鉢合わせするまで気づかれなかった」■公判で被告人は「間違いありません」逮捕後、3月には久留米大学医学部を強制退学処分となっていた被告人だが、同月に保釈されており、現在は公判の真っただ中だ。5月14日には第2回公判が福岡地裁久留米支部で行われ、週刊女性も傍聴に訪れた。午前10時の開廷15分前に裁判所に到着した被告人は黒のスーツにグレーのネクタイを締め、法廷に臨んだ。無表情だが緊張した様子で、時折、天井を眺めては深呼吸。傍聴席には、大学の友人らしき男性が5人ほど座り、審理の経過を見つめていた。今回の公判では検察官が起訴状を読み上げたが、被害事実があまりに多すぎて読み終わるのに5分ほどかかった。事実関係を問われた被告人は、証言台に立ち、「間違いありません」と低い声ですべてのヘンタイ行為を認めた。終始、うつむき加減だった被告人は一切抵抗する気持ちがない様子で検察の主張を受け入れた。今後、6月の最終審理を経て、判決が下ることになる。審理では情状証人として父親が出廷し、示談金の支払いなどを証言する予定だという。■SNSの投稿写真から合鍵が作れる犯罪者が他人の合鍵を勝手に複製することで起きた今回の事件。類似の手口として、泥棒が管理会社を装って住人に鍵を提示させ、製造番号を控えるケースや、SNSに投稿された写真に鍵の番号が写り込み、合鍵を作られるケースも発生している。女性のみならず誰もが事件に巻き込まれる可能性がある。防ぐ手立てはないのか。前出の『日本ロックセキュリティ協同組合』によると、「合鍵を作る際に、依頼者が本当に鍵の持ち主か確認することは、難しい。鍵の登録管理は現実的に不可能で、ウソをつかれたら、見破ることは困難です」近年は技術の向上もあり、精巧に作られた鍵でも複製は可能だという。そのうえで、セキュリティーを高めるために、「『認証ID』を採用した鍵は、タグ状のプレートなどに刻印されたID番号が製造番号とペアになっていて、2つの情報が同時にメーカーに届かないと複製できません。賃貸住宅であればオーナーしかID番号を知りえないので、勝手に鍵を複製されることはありません」この『認証ID』を導入していない限り、不法侵入を完全に防ぐことは難しい。犯罪者に隙を見せないよう、警戒が必要だろう。
2021年05月20日子供が成長していくと、学校だけでなく塾やおけいこへの行き帰り、友達との待ち合わせ時など子供が一人になる時間が増えていきます。犯罪に巻き込まれないために、子供にはどのように防犯を教えれば良いのでしょうか。今回は、子供への防犯の教え方についてご紹介します。子供への防犯の教え方は?子供を狙った痴漢、公然わいせつ、つきまとい、盗撮、また登下校中の誘拐、わいせつ目的の誘拐などの犯罪があとを断ちません。学校の登下校時だけでなく習い事や友達との約束など、子供の行動範囲が広がる前に、以下を参考に防犯について子供にしっかり教えましょう。子供への防犯の教え方は「いかのおすし」知らない人にはついて「いか」ない声をかけられても車に「の」らない知らない人に連れて行かれそうになったら「お」お声を出す声をかけられたり、追いかけられたりしたら「す」ぐ逃げる怖いことにあったり見たりしたら、すぐに大人に「し」らせる子供の防犯の5つのお約束を、親子で一緒に確認しましょう。それでは、子供の防犯の教え方について細かく確認しましょう。どんな人に気をつけるのか?不審者から身を守るよう子供に伝える時、「変な人に気をつけてね!」と言っても子供にはその「変な人」がどのような人なのかわかりません。また「知らない人」と言うのも危険です。子供を狙うのは、知らない人だけとは限らないからです。そこで、子供に防犯を教える際は具体例を示しながら教えます。自分についてくる人じろじろ見てくる人体や持ち物を触ろうとする人こんな人がいたら逃げようね、と子供に防犯対策を教えましょう。また、道路、屋外での被害が多く発生していることも教えておきましょう。どんなことが危ないのか?車に乗せられそうになる追いかけられるつきまとわれる待ち伏せされるなどは危険なことです。子供に「こんなことはとても危ないことだよ」としっかり具体例を示しながら、防犯について教えましょう。子供が一人、あるいは子供だけでいるときは犯罪に巻き込まれやすくなります。いちばん犯罪発生が多い時間帯は、習い事に行く、友達と遊びに出かけるなど子供が一人になることがが多い午後4時前後です。防犯対策のために、子供が一人にならないためにはどうすれば良いか、子供がどの道を通ればいいのかなども確認しながら教えましょう。自分の守り方は?腕を掴まれて連れて行かれそうになってしまったら、大きな声で「助けて」と言う。しかし、このことがわかっていたとしても、大人でもいざ自分が緊急の事態になると声が出ないものです。そんな時のために「いやだ」「やめて」という自分の意思も大きな声で言えるように練習を重ねておくことも大切です。また、どうしても怖くて声を出せない時のために、子供に防犯ブザーの使い方を教えましょう。子供が防犯ブザーを使ったことがない場合は、防犯ブザーの引っ張り方を教え、鳴らす練習もしておきましょう。逃げる場所は?逃げる際は、交番、コンビニ、スーパー、こども110番の家など、助けてくれる大人のところへすぐに行くよう伝えます。すぐに声を出すことが難しい子供もいます。危険なことに遭遇した時のために、最初は小さな声しか出なくても励ましながら練習を繰り返し、無意識にできるようにしておきましょう。子供が自分で身を守れるように教えていこう子供を犯罪から守るには、子供自身が自分で身を守れるようにしておくことが非常に大切です。「いかのおすし」を繰り返し確認し、犯罪に巻き込まれる前に察知できる防犯力を教えることで、親が離れていても子供が自分で自分を守れるよう教え育てていきましょう。
2021年05月06日サドルとペダル(@Pedalandsaddle)さんは、友人から実際に聞いた話を漫画にし、Twitterに投稿。読んだ人から「怖すぎる」の声が相次ぎました。東京の大学に進学し、一人暮らしを始めた女性。あわただしい生活で部屋は散らかっていました。ベランダには紺色の洗濯機を置いていたのですが…。本当にあったそこそこアレな話数日後、洗濯機はベッドの位置から見えなくなっていました。よく考えると、ベッドから見えていた紺色のものは洗濯機ではないことに気付いた女性。夜中、目が覚めると人間のような影が部屋の中を覗いており…。すりガラス越しに見えた影の正体とは【漫画】本当にあったそこそこアレな話3/3 pic.twitter.com/QrIagkG12L — サドルとペダル (@Pedalandsaddle) April 23, 2021 友人に頼み、ベランダを見てもらうとそこには男がいました。洗濯機だと思っていた紺色のものは、きっと部屋を覗いていた男だったのでしょう。その後、警察に話すも男は逮捕された様子はなく、女性は引っ越しをしたといいます。【ネットの声】・心霊とかより、こういうもののほうがよっぽど怖い…。・夜中、たまたま目が覚めて本当によかったですね。虫の知らせだったのかな。・やっぱり人だった…。怖すぎます。読んでいて震えた。男は、洗濯機の中にある女性の私物を狙っていたのか、部屋に侵入しようとしていたのかは分かりませんが、悪意がある行動には違いありません。残念ながら、このような悪意を持った人は少なからず存在します。2階の部屋だからといって、安心できるわけではないようです。毎年、春になると新生活を始める人も多いでしょう。何か怪しいものを見かけた場合は、身の安全を確保した上で警察を呼んだり、大家さんに伝えたりして、助けを求めることも大切です。また、2階以上の部屋でもこのような事態を想定し、外から見られないようにカーテンの丈を気にしたり、アラームが鳴る防犯グッズを設置したりするなどの対策もしておくべきかもしれません。犯罪をする人が減ることが一番の願いですが、念のために防犯対策も忘れずにしたいですね。[文・構成/grape編集部]
2021年04月24日※画像はイメージです 繰り返し起きる“性犯罪”。そういった犯罪の原因は「性的欲求不満」と捉えられがちだが、一概にそうとも言いきれないという。凶悪事件も含め、200件以上の殺人事件などの「加害者家族」を支援してきたNPO法人World Open Heartの理事長・阿部恭子さんが、性犯罪を起こした加害者家族、そして加害者本人から「本音」を聞いた。■ある日、夫が性犯罪者に「子育てと仕事に追われて美容院に行く暇さえなくて。夫婦生活もありませんでしたから……すべて私のせいです」成美(仮名・40代)の夫はある日、未成年者にわいせつ行為を行ったとして条例違反で逮捕された。女性にとって、家族が性犯罪で逮捕されるほど屈辱的なことはない。事件による精神的ダメージは大きく、妻たちはとくに、自分に女性としての魅力が欠けていたからだと自分を責める傾向が強い。結婚生活も続けば倦怠期もあるだろうし、生活に追われてそれどころではない時期もあるであろう。本当のところはどうなのか。成美の夫・晃(仮名・40代)に真相を聞いてみた。「妻のせいではありません。仕事が上手くいっていたら、こんなことにはならなかったんです」問題は「性」ではなく、「仕事」だというのだ。晃は、都内で飲食店を経営しておりかつて売り上げは順調だった。ところが、事業拡大を進めていた最中にコロナに見舞われ、突如、経営は悪化を辿った。3人の子育てに追われ専業主婦をしていた成美も、従業員削減によって店を手伝わなければならなくなっていた。接客に慣れていない成美にとっては苦労の連続だった。仕事のことで夫婦喧嘩も多くなり、夫婦仲は冷めきっていった。「成美は仕事場でも家でもため息ばかりつくようになっていました。苦労させてばっかりで申し訳なくて。身体に触れるどころか、目を合わせることさえできなくなりました」コロナの収束が見えないなかで店の客足は戻らず、店は倒産寸前だった。「妻に苦労させたにもかかわらず状況は悪くなるばかり。妻子を養うことすらできない自分に生きている価値はないと思うようになりました」晃は自殺を考えるようになり、インターネットで情報を集めるようになった。ある時、掲示板を見ていると、自殺願望を訴えるひとりの女性の書き込みが目に留まった。晃が生まれ育った地元の近くから上京してきた女性だった。アルバイトが続かず、生活が苦しいのだという。晃は彼女と会うようになり、彼女が未成年者だと分かった後も関係を続けた。「妻とは景気のいい時期に知り合いましたから、いい店に連れて行ったし、高級品も買いました。今の自分にそんな余裕はありません。それでも彼女はファミレスの食事でも喜んでくれて。こんな俺でも少しは役に立つのかと、一度だけと思いながら関係が続いてしまいました」逮捕され、当然、妻からは愛想をつかされると思い込んでいた。ところが、警察署まで迎えに来た妻が、「ごめんね」と言いながら泣き崩れる姿を目の当たりにし、晃は自分の犯した愚かな罪を心から悔いたという。ふたりは離婚せず、家族で一から生活を立て直す道を選んだ。■「孤立」からSOSを出せず犯罪へ優等生の息子が加害者になることもある。九州地方で暮らす玲子(仮名・50代)の息子・信也(仮名・20代)は、東京の大学に合格し、都内でひとり暮らしをしていた。コロナの影響で連休も年末年始も帰省できず、しばらく息子に会うことができず、不安に感じていたころに事件が起きた。警察から電話があり、信也が未成年者とのわいせつ行為で逮捕されたという。信也の学費や家賃は家族が援助していたが、生活費はアルバイトで稼いでいた。信也は、東京での生活は決して楽ではなかったと話す。「大学では実家暮らしの友達が多くて、自分はお金がなくて、一緒に遊ぶ余裕がなかったんです。デートのときは、男が奢らなくちゃいけないと思い込んでましたから、それを考えると彼女もできなくて」それでも、いろいろな出会いがある飲食店でのアルバイトは、信也にとって居場所となっていた。ところがコロナの影響で閉店。収入だけではなく、心の拠り所まで失ってしまった。大学の授業とアルバイトで多忙な学生生活を送っていた信也だったが、緊急事態宣言によって外出ができなくなり、いつの間にか生活は昼夜逆転し、ネットに依存する生活になっていた。あるとき、出会い系サイトで知り合った女性のひとりから、家族と喧嘩したので家に泊めてほしいというメッセージが送られてきた。信也は、女性が未成年者であると知りながらも自宅に招き入れた。困っているのだから面倒を見るのだと思い、罪悪感はなかったという。「とにかくひとりで寂しかった。何のために東京にいるのかわからなくなり、自暴自棄になっていたと思います」信也は大学を退学し、実家に戻ることに。地元の会社に就職し、真面目に働き始めているが、事件のショックから立ち直れないでいるのはむしろ母親の玲子だった。「あんなに頑張って入った大学だったのに。生活が大変なら、そう言ってくれれば援助したのに……。親としてはとてもショックです」困ったときにSOSを出せない男性が犯罪に手を染めるケースは決して少なくない。家族に心配かけまいと問題をひとりで抱え込んだ挙句、取り返しのつかない事態を招いてしまうのだ。家族に本音は話せているだろうか。先が見えない時代だからこそ、家族間のコミュニケーションを見直してみたい。■性犯罪の原因はセックスレスとは限らない長引くコロナ禍で、お金は貯まらずストレスはたまる一方、という人も少なくはないのではないだろうか。家庭に充満するストレスは、DVや虐待を生み、家出を余儀なくされる女性や子どもたちが被害に遭うケースも報告されている。一方で、被害者だけではなく加害者もまた、経済的、精神的に追いつめられた「弱者」かもしれない。ゆとりが失われた生活の中で、相手を理解するプロセスを省略して性のみを手に入れる性犯罪は増えるであろう。性犯罪の原因は性的欲求不満と捉えられがちだが、さまざまな事件の背景を見ていくと、そう単純なものではなく、セックスフルな生活を送っている人でも犯罪に手を染める場合がある。根底にあるのは、男性としての社会的劣等感であり、経済力の喪失も動機となりうる。男性優位でなければならないという呪縛は、男性をも蝕んでいる。阿部恭子(あべ・きょうこ)NPO法人World Open Heart理事長。日本で初めて犯罪加害者家族を対象とした支援組織を設立。全国の加害者家族からの相談に対応しながら講演や執筆活動を展開。著書『家族という呪い―加害者と暮らし続けるということ』(幻冬舎新書、2019)、『息子が人を殺しました―加害者家族の真実』(幻冬舎新書、2017)など。
2021年04月09日