サンゴ礁が生息する美しい海と緑豊かな沖縄の小さな島で、海人の父の下、天真爛漫に育った少女・凉子。だが愛する者を失ったとき、彼女は深海の底のような悲しみの世界に…。しかしやがて、その深海にも一筋の光が差し込む――。『世界の中心で、愛をさけぶ』でその人気を不動のものとして以降、近年では「ラスト・フレンズ」や「ぼくの妹」など、母性を感じさせるまでの大人の女性に転身を遂げた長澤まさみ。間もなく公開される『群青愛が沈んだ海の色』で、彼女は凉子という一人の女性の絶望、そして再生を見事に体現した。どのようにこの難役と向き合っていったのか、話を聞いた。沈黙の中で心情を見せることの難しさ「雰囲気で伝えること」――。深い悲しみから言葉を失ってしまった凉子を演じるにあたり、長澤さんにとって最大の挑戦であり難関となったのは、沈黙の中でその心情の変化を見せることだった。「台詞がない分、台本を読んでて、何でこうなるんだろうと思うところが多かったです。初めて映画のお話をいただいたときに監督から画コンテを見せていただいたのですが、そのときに凉子に対して抱いた印象が撮影を通してどんどん変わっていきましたし、彼女が自分自身と闘っているという雰囲気を出すのが難しかったですね」。「何でだろう?」。台本に描かれる凉子に対して絶えず繰り返されたその問いかけは、やがて凉子自身が内に秘める思いと交差していく。母の遺したピアノを弾くシーンで見せる、悲しみを湛えた瞳がその全てを物語る。「恋人の一也(良知真次))が死んでしまったとき、凉子は何でそうなってしまったのか分からない。答えをずっと探し、前向きに生きようとするけど見つからないまま、自分の中で堂々巡りをしていたと思うんです。ピアノを弾くシーンで、風が入ってきたときに『お母さん』と呼ぶ場面があるんですけど、何でこれがお母さんなんだろうと台本を読んだときは分からなくて。撮影前に監督に聞いたら、凉子にとって母親の形見であるピアノがお母さんなんだよ、凉子はいつもお母さんに自分の気持ちを訴えかけていると言われたんです。その答えにたどり着くまでに時間がかかりました。でも、そう言われたときに自分の中で凉子の気持ちの筋道が立ったんです」。言葉ではなく、雰囲気で見せる演技ということにかけては、父親役の佐々木蔵之介さんから学ぶものもあった。「蔵之介さんって目ヂカラがすごく力強いじゃないですか。よく視線を感じるなと思って見ると、ずっと見られているということもあったんですが(笑)。その目ヂカラから父親の威厳や揺るがない父親の強さ、そして優しさと包容力をすごく感じましたね。蔵之介さんが演じている父親というのは、理想の父親像なんじゃないかと思うほどでした」。撮影が行われたのは、沖縄本島から船で2時間以上かかる小さな楽園、渡名喜島。真夏の1か月にわたる撮影の日々を、長澤さんは名残惜しそうにふり返る。「やっぱり一番大変だったのは、暑さでしたね。これまでもたくさん暑い国に行ってきましたが、いままで一番暑かったかもしれません。撮影中は、男性陣は海人の訓練で現地の漁師さんと釣りにも行っていたんですけど、私は役柄もあってずっと部屋にこもっていたので、見ていてちょっと羨ましかったですね。部屋ではずっとDVDを観たり、自分を見つめ直す時間になっちゃってましたが、そういう環境も凉子の役作りには生かせました。ただ、せっかく沖縄に来たし、海で泳ぎたいと思っていたので、夕方になってから女性スタッフのみんなと海に入ったり、終わりがけにみんなで一緒にお酒を飲んだのが楽しかったですね」。「誰かに寄りかかることも大事なんだなと思った」全てを背負い込み、自分を追い詰めてしまう凉子だが、それは彼女が責任感や愛情に満ちているゆえ。「自分も凉子みたいに考えすぎてしまうところがある」と共感を口にする長澤さんだが、凉子という役を演じることは自分自身を見つめる作業となった。「人それぞれ違うと思いますが、悩んだときの出口というのは誰かに気づかせてもらわないとなかなか見つからないと思うんです。凉子にとっては、それを教えてくれるのがお母さんであって。この作品で思ったのが、誰かに寄りかかることは生きていく中で大事なんだなということでした。大人になっていく中で、私自身、何でも自分で出来なきゃと思っていたんですけど、いろんな人の意見を聞いて成長していかないと、どんなことも前に進む道はないし、出口も見つからないと思いました」。ちなみに、自身が落ち込んだときの解決法は…?「最近車を買ったので、落ち込んだときは運転してます。本当は落ち込んだときは運転してはいけないって教習所で習ったんですけど(笑)」。時折あどけない笑顔を見せながらも、真剣な眼差しで慎重に言葉を選んで話す長澤さん。最後に、22歳の胸に秘める“女優”としての覚悟を語ってくれた。「どんな作品も、そのときにしか出せない自分の力を出すだけで、そのときに“もっとこうやれば良かった”という反省や欲はいっぱい出てくるんですが、そういうのがあるからこそ次もまた頑張ろうと思えます。一つの仕事をずっと続けていくというのが、一番難しいじゃないですか。先輩の俳優さんたちを見ていて、“何でこんなに撮影が大変なのに続けていられるんだろう”と思うことはありますが、やっぱりみなさん“次はこうできる”“まだまだだな”という思いがあるからこそ、次も頑張れるのだと思いますし、自分も同じなのかなと思います。続けることの、大変さと大事さを感じますね」。(photo:Shunichi Sato)■関連作品:群青愛が沈んだ海の色 2009年6月27日より有楽町スバル座ほか全国にて公開© 2009「群青」製作委員会■関連記事:【どちらを観る?】夏、沖縄へ誘う――『群青愛が沈んだ海の色』&『真夏の夜の夢』「毎年、沖縄で仕事してます」長澤まさみが美ら島沖縄大使に主演作『群青』アピール長澤まさみとの父娘役に、佐々木蔵之介「こんなかわいい娘がいたらたまらない!」
2009年06月26日最愛の男性を失い、絶望に打ちひしがれるヒロインの心の再生を描く『群青愛が沈んだ海の色』と、恋に破れて帰郷したヒロインが、島の精霊を巻き込んだ騒動を繰り広げる『真夏の夜の夢』。共に沖縄の島を舞台にし、共に愛や恋に翻弄される美しいヒロインを擁した2作がこの夏に観られる。1本目の『群青愛が沈んだ海の色』は、いまをときめく長澤まさみ主演のシリアスなラブストーリー。長澤演じるヒロイン、凉子が幼なじみの青年・一也と結婚を誓い合う仲になるものの、思わぬアクシデントで彼を亡くす悲劇が物語の中心となる。妻に先立たれ、忘れ形見である凉子に深い愛情を注いできた父も、凉子のもうひとりの幼なじみで、彼女に密かな恋心を寄せ続けてきた青年・大介も、愛を失って沈む彼女を黙って見守るしかなく…。この作品で描かれる沖縄の海は、従来の明るく楽しいイメージから離れ、凉子を残酷な運命へと導く非情な存在として登場する。一也が命を落とした場所であり、その後も再び凉子に試練を与える沖縄の海。けれども、その海の青はやはり美しく、観る者を魅了する側面も持ち合わせている。2本目の『真夏の夜の夢』は、シェイクスピアの同名戯曲をアレンジしたハートウォーミング・ストーリー。不倫相手との関係に疲れたヒロイン、ゆり子(柴本幸)が東京から帰郷。そんな彼女の前に現れた島の精霊・マジルーが、ゆり子を元気づけようと、“恋の秘薬”を使って活躍するが…。ファンタスティックな喜劇として親しまれたシェイクスピアのオリジナル同様、テイストはコミカルで軽快。ゆり子はもちろん、彼女を追って来た不倫相手やその妻を大らかに迎え入れる沖縄の自然も、ゆり子を取り巻く島の個性的な人々も、折に触れ奏でられる音楽も、ハッピーな気分へと誘う存在として、恋のドタバタ騒動に寄り添っている。『群青愛が沈んだ海の色』を手がけたのは、『青い魚』、『真昼ノ星空』などの中川陽介。一方、『真夏の夜の夢』を放ったのは、『ナビィの恋』、『ホテル・ハイビスカス』などの中江裕司。それぞれ沖縄を舞台に作品を撮り上げてきた両監督だが、当然ながら作風は全く別物。シビアな現実の中で圧倒的な美しさを誇る青い海と、降り注ぐ太陽の下、カラフルなハッピーオーラを放つ豊かな大自然。この夏、触れてみたいのはどっち?(text:Hikaru Watanabe)■関連作品:群青愛が沈んだ海の色 2009年6月27日より有楽町スバル座ほか全国にて公開© 2009「群青」製作委員会真夏の夜の夢 2009年7月25日よりシネカノン有楽町2丁目、シネマート新宿ほか全国にて順次公開© 2009「真夏の夜の夢」パートナーズ■関連記事:沖縄の神秘!『真夏の夜の夢』試写会に5組10名様をご招待「毎年、沖縄で仕事してます」長澤まさみが美ら島沖縄大使に主演作『群青』アピール長澤まさみとの父娘役に、佐々木蔵之介「こんなかわいい娘がいたらたまらない!」
2009年06月23日沖縄の離島を舞台に、ひとりの女性が愛する人を亡くした痛みから再生していく姿を描いた感動作『群青愛が沈んだ海の色』が6月27日(土)より公開される。昨年の7月に1か月にわたり、サンゴ礁が生きる美しい海など自然豊かな渡名喜島(となきじま)で撮影された本作。公開に先立ち、このたび主演を務めた長澤まさみが、沖縄の文化を広め、観光の振興に寄与した功績を認められ、沖縄県知事から「美ら島沖縄大使」に認定され、15日(月)、晴天の沖縄にてその認定証交付式が行われた。『深呼吸の必要』(’04)、『涙そうそう』(’06)に続き本作と、沖縄を舞台にした作品に縁深い長澤さん。今回の大役に「デビューしてから、毎年仕事で沖縄に来ているので、縁があってこういった大使に任命されることは嬉しく思います」と喜びを笑顔で語り、「沖縄はすごく好きで気候とか、食事とか、風景、海が好きなので、その良さを伝えられたらと思います」と意気込みを口にした。この任命にあたり、仲井眞県知事からは沖縄県民を代表して「女優として全国的に活躍している長澤まさみさんに美ら島沖縄大使を引き受けていただき、心から感謝してます。『群青 愛が沈んだ海の色』では、癒しの島、沖縄の魅力を発信していただいてます。これからも、沖縄の笑顔と元気をアピールして下さい」と長澤さんへ思いが託された。沖縄の自然の広大さと美しさの反面、その厳しさも描かれる本作。最後に長澤さんは「この作品で、沖縄で撮影する作品は4本目(※上記3作に加え映画『ラフ』は一部沖縄で撮影)になりますが、この映画は特に、景色だとか人の温もりといった沖縄の良さが詰まった映画になっています。私もがんばって演じたので、ぜひ観てください」と作品をアピールし、大使として最初の役目を果たした。『群青愛が沈んだ海の色』は6月27日(土)より全国にて公開。■関連作品:群青愛が沈んだ海の色 2009年6月27日より有楽町スバル座ほか全国にて公開© 2009「群青」製作委員会■関連記事:長澤まさみとの父娘役に、佐々木蔵之介「こんなかわいい娘がいたらたまらない!」
2009年06月17日