「生命保険のCMとかでさかんに言われているけど、がんみたいな大きな病気で入院して、手術までするとなったら、急に大金が必要になるんでしょうかね……」50代の主婦がため息まじりにそう話す。かといって、50代から新たに医療保険に入るのも、家計に響くと嘆く。「実際はそうではなく、たとえ重篤ながんになったとしても“医療費が払えなくて苦労した”という声はあまり聞きません。日本には『高額療養費制度』という、収入に応じて上限を設けて医療費の負担を抑えてくれる制度がありますから、一般的な保険診療であれば“実費で数百万円”なんてことにはならないのです」こう語るのは、NPO法人「がんと暮らしを考える会」理事長・看護師の賢見卓也さん。「ただし、すべて“病院におまかせ”というわけにはいきません。基本的に、こういった制度は、加入者自らが保険者(健康保険組合や協会けんぽ、国民健康保険など)に申請する必要があるからです。とりわけがん患者となると、診断直後は、家族みんなで慌ててしまうこともあるでしょう。だからこそ、元気なうちから、医療費についての制度とその手続きの仕方について十分に知っておいていただきたい」賢見さんと社会保険労務士で同会理事でもある石田周平さんの2人に、高額療養費制度の使い方について教えてもらった。医師に「高額な医療費がかかる」と知らされた段階で、高額療養費制度の申請をする場合、次の3つのステップを順に検討することになる。【ステップ1】事前申請で「限度額適用認定証」を入手「治療に高額な医療費が予想される場合、前もって保険者に『限度額適用認定証』発行の申請をすれば、その後の手続きを簡素化することができます」(石田さん)申請書の用紙は、各病院の備え付けやHPからのプリントアウトで入手できる。これに記入し、保険者に郵送することに。「手続きに1カ月かかることもありますが、送られてきた限度額適用認定証を保険証と併せて病院窓口で提示すれば、毎月の支払いは、自動的に“自己負担限度額まで”で済むようになります」【ステップ2】無利子の「資金貸付制度」を利用する「先の限度額適用認定証をもらうことが最善の方法ですが、もし手続きが間に合わない場合は、『高額療養費資金貸付制度』を利用してみてください」(石田さん)協会けんぽでは、高額療養費の支給見込額の8割相当、国民健康保険ではほとんどの自治体が9割相当、健康保険組合では8~9割相当を貸し付けてくれて、直接病院に払い込んでくれる。「たとえば、100万円の医療費がかかった場合、自己負担額(窓口支払い)30万円から、自己負担限度額8万7,430円を引いた額の21万2,570円が高額療養費に該当します。ここで貸付制度を利用した場合は19万1,000円(9割貸し付け・100円以下切り捨て)が貸付金となりますから、高額療養費から19万1,000円を引いた2万1,570円と自己負担8万7,430円を足した10万9,000円を、窓口で支払うことになります」【ステップ3】窓口で自己負担分を支払った後に高額療養費を申請「事前申請や貸付制度を知らずに、自己負担の全額を支払い終えてしまっている場合は、事後申請の手続きをすることになります」(石田さん)退院時などに窓口で自己負担分(3割)をいったん支払い、その後、保険者に連絡して払い戻しを受けるという手順。「通常、病院から保険者への請求は翌月になります。そこから保険者の手続きには1カ月ほどかかりますから、高額療養費分が還付されるのは、約3カ月後というスパンになるでしょう」(賢見さん)これらステップ(1)~(3)の申請は、保険者によって差異があるものなので、少しでもわからないことがあれば、自分が所属する保険者に直接電話で問い合わせをしたほうがよいだろう。過去に大病を患った人でなくても「高額療養費制度」は必ず知っておくべき知識。制度を熟知することで、あなたの“老後の不安”が一つ消えるかもしれない。
2019年02月13日平成30年8月から高額療養費制度について改正が行われました。今回の改正の大きなポイントとしては「70歳以上の者の高額療養費の所得区分の細分化」がおこなわれた点にあります。従来の高額療養費制度では、70歳以上の者については、所得に応じて3つの区分に分けて高額療養費の計算を行っていましたが、今回の改正によって、70歳以上の者の高額療養費の所得の区分が6つに変更されました。具体的には、上位所得者に当たる人の所得区分を3つに細分化し、低所得者層も2つの区分に分けることになり、70歳未満の者の所得区分に近づける形に区分が改編されました。今回は、70歳以上の者の高額療養費制度の仕組みを解説したうえで、改正によって大きく変化した所得区分について詳しく説明します。平成30年度改正による高額療養費制度の変更点まず、今回の改正によって70歳以上の者の高額療養費制度の何が変わったのかについて、詳細を解説していきます。高額療養費の自己負担額の上限額の変更(現役並み所得者の区分による負担割合の細分化)今回の改正によって、70歳以上の者の高額療養費の上限額についての所得区分が3区分(上位所得者・一般所得者・低所得者)から6区分(現役並み所得者Ⅰ~Ⅲ・一般所得者・低所得者Ⅰ・Ⅱ)に変更になりました。これは、70歳以上の者についても、働き方の多様性により、現役並みの所得を有する人と現役並みではないが、就労していることで年金のみを受給している人よりも収入がある人が同じ区分で高額療養費の計算を行うことは、公平性に欠けるとの見方から3つの区分に分けることで、医療費負担の公平性を保つことが狙いといわれています。平成30年8月以降の高額療養費の自己負担の上限額参考:全国健康保険協会HP「高額療養費・70歳以上の外来療養にかかる年間の高額療養費・高額介護合算療養費」より70歳以上の高額療養費制度の仕組み70歳以上の高額療養費計算の仕組みは、70歳未満の場合とは異なり、外来診療に支払った医療費についても、別で上限額を設けています。今回の改正により、従来の「現役並み所得者・一般所得者・住民税非課税等所得者」の3つの区分で判断されていたもののうち「現役並み所得者」と「住民税非課税等所得者」の区分が細分化されています。70歳以上の者の高額療養費の計算の流れ70歳以上の者の高額療養費の計算については、70歳未満の者の高額療養費の場合とは大きく異なり、外来診療に関する医療費の自己負担分について、別で上限額の設定がされています。自己負担額の合計を世帯合算分と外来療養の支払い分とに区分する70歳以上の高額療養費計算の流れとして、最初に「外来診療(個人単位)」にかかる自己負担分の払い戻し計算を行います。その上で、残る自己負担額と入院分の自己負担額を世帯単位で合算し、「入院(入院外来)・外来(世帯ごと)の自己負担限度額」から払い戻し額を計算します。窓口負担を行う際の注意点窓口負担を行う際に注意しなければならない点としては、改正が行われた平成30年8月以降に支払った医療費について、現役並み所得者Ⅰ・現役並み所得者Ⅱに区分される者については「限度額適用認定証」が発行されますが、それ以外の所得区分の者(現役所得者Ⅲ、一般所得者、低所得者Ⅰ・Ⅱ)については限度額適用認定証の発行は行われません。社会保険としての全国健康保険協会(以下「協会けんぽ」)や健康保険組合と国民健康保険の場合の自己負担限度額協会けんぽや健康保険組合が行う高額療養費の自己負担限度額と国民健康保険が行う高額療養費の自己負担限度額については、自己負担限度額は同じです。そのため、保険者が異なるからといって、高額療養費の自己負担限度額が異なるといったことはありません。また、計算方法についても、同様の方法で行われるため、高額療養費の金額に違いはありません。70歳以上の者の所得区分による高額療養費算定基準額の具体例ケース1:適用区分が現役並み所得者Ⅲの場合(条件)被保険者の標準報酬月額:90万円自己負担割合:3割負担医療費の自己負担額:60万円(外来診療:20万円、入院等:40万円)標準報酬月額が90万円ですので、所得区分が「現役並み所得者Ⅲ」に該当します。よって、自己負担限度額は「252,600円+(2,000,000円(60万円÷30%)-842,000円)×1%」=264,180円となります。これより、この者の高額療養費の金額は「600,000円-264,180円=335,820円」となります。ケース2:適用区分が現役並み所得者Ⅱの場合(条件)被保険者の標準報酬月額:60万円自己負担割合:3割負担医療費の自己負担額:45万円(外来診療:10万円、入院等:35万円)標準報酬月額が60万円ですので、所得区分が「現役並み所得者Ⅱ」に該当します。よって、自己負担限度額は「167,400円+(1,500,000円(45万円÷30%)-558,000円)×1%」=176,820円となります。これより、この者の高額療養費の金額は「450,000円-176,820円=273,180円」となります。ケース3:適用区分が現役並み所得者Ⅰの場合(条件)被保険者の標準報酬月額:40万円自己負担割合:3割負担医療費の自己負担額:30万円(外来診療:5万円、入院等:25万円)標準報酬月額が40万円ですので、所得区分が「現役並み所得者Ⅰ」に該当します。よって、自己負担限度額は「80,100円+(1,000,000円(30万円÷30%)-267,000円)×1%」=87,430円となります。ケース4:適用区分が一般の所得者の場合(条件):世帯(本人以外)の自己負担額合計が5万円であるとします。被保険者の標準報酬月額:20万円自己負担割合:2割負担医療費の自己負担額:8万円(外来診療:3万円、入院等:5万円)標準報酬月額が20万円ですので、所得区分が「一般所得者」に該当します。一般所得者に該当するため、外来の自己負担分と世帯合算分とに分けて計算する必要があります。よって、外来の自己負担の払い戻し分は「30,000円ー18,000円=12,000円」となります。次に、世帯合算分を含めて高額療養費の計算を行います。世帯合算分の高額療養費は「(5万円+5万円)ー57,600円=42,400円」となります。これより、高額療養費の金額は「12,000円(外来分)+42,400円(世帯合算分)=54,400円」となります。70歳以上の高額療養費制度改正の変更点まとめ平成30年8月の健康保険法の改正により、70歳以上の高額療養費の自己負担上限額の改正が行われました。今回の改正により、上位所得者といわれていた人の高額療養費計算の所得区分が70歳未満の者と同様の所得区分で計算されるようになり、世帯間における違いがなくなります。また、今回の高額療養費の計算について改正により見直しが行われたことで、介護保険料や後期高齢者医療などの周辺の医療保険制度においても、少なからず影響が出るものと考えられますので、今後の改正情報には注意が必要です。
2019年02月07日毎年2月16日から3月15日までの期間は、確定申告書の提出期間となっていますが、今年は2月16日が土曜日となるため、2月18日(月)~3月15日(金)と若干提出期間が短くなっているので注意が必要です。医療費が発生している人(一定の金額以上医療費が発生している場合に限る。)は確定申告を行わなければなりませんが、高額療養費の支給を受けた人については、高額療養費の金額については確定申告は不要となります。それ以外の医療費部分については、医療費控除として確定申告を行わなければなりません。今回は「高額療養費とはどのようなものか?」を解説したうえで、なぜ「高額療養費に相当する部分が確定申告不要」なのか、そして「医療費控除との違い」について解説します。高額療養費は健康保険から行われる給付の一つそもそも、高額療養費は健康保険法に規定されている保険給付の一つです。高額療養費の金額の計算方法については、法令によって定められており、具体的には、被保険者の所得を基準とした標準報酬月額によって区分された自己負担額の上限額の算式を用いて高額療養費の計算を行うことになります。高額療養費の金額の計算の仕方高額療養費の金額の計算は70歳未満の者と70歳以上75歳未満の者では、計算方法や自己負担額限度額の計算区分が異なります。70歳未満の者の自己負担限度額70歳以上75歳未満の者の自己負担限度額高額療養費の自己負担額計算ポイント自己負担額の計算を行う際には以下の点に注意が必要です。自己負担額が21,000円を超える診療分が対象となります個人単位で計算を行います。診療を受けた医療機関ごとに計算します。入院分と外来診療分とは区別します。保険が適用される診療分が対象となります。高額療養費の手続きの流れ高額療養費支給申請書を保険者(協会の場合は協会けんぽ、組合の場合は健保組合)に提出することで、高額療養費の申請を行います。なお、ケガが原因の場合については「負傷原因届」の提出(協会けんぽの場合)が必要となります。また、住民税非課税区分に該当する場合は、被保険者の非課税証明書を併せて提出する必要があります。高額療養費はいつまでに申請しなければならない?高額療養費は月(1日から末日まで)ごとに計算されるため、申請することができる時期については、実際に自己負担額を支払った日の属する月ではなく、その翌月1日が申請開始時期となります。なお、高額療養費は時効により、自己負担額を支払った日の属する月の翌月1日から2年以内に申請する必要があります。高額療養費の払い戻しの目安は?高額療養費の払い戻しまでの時期の目安としては、保険者が実際に自己負担額を支払った医療機関のレセプト等を確認したうえで支給の決定を行うため、早くても2~3カ月後に払い戻しが行われることが多いです。医療費控除と高額療養費との違い医療費控除とは、所得税の計算において合計所得金額(各種所得の合計額)から控除することができる所得控除の一つで、1年間に支払った医療費の合計額から一定額を控除したものです。医療費控除の計算対象とは?医療費控除の計算対象は、高額療養費とは違い、21,000円を超えるような診療分に限らずに、治療を目的とする診療に関する支払を行ったものが全て対象となりますが、予防や美容などに関する支出については医療費控除の対象となりません。(例)予防接種の費用、疲労回復のための栄養剤購入費用など医療費控除の計算方法医療費控除の計算方法は、1年間の総所得の金額によって以下のように計算式が変わります。注意してほしい点としては、総所得金額は、所得控除をする前の所得金額の合計であるということです。(つまり、サラリーマンであれば、「給与所得控除額を控除した後の所得金額」がこれに該当するということです)高額療養費と医療費控除の確定申告手続き方法高額療養費と医療費控除は併用することができます。確定申告の際に手続きを行わなければ、適用を受けることができないものとなりますので、確定申告の手続きについて、最低限抑えておいてほしいポイントについて説明します。高額療養費の確定申告手続き方法高額療養費は確定申告をする際には、なんら手続きは不要です。これは、高額療養費が健康保険により給付される保険金の一つであると考えるためです。つまり、高額療養費は公的保険から出る保険金と扱われるため、医療費控除の計算においては医療費総額から控除されるものとなります。また、高額療養費は先程も述べたように、公的保険の保険給付の一つとなるため非課税です。そのため、確定申告においては、非課税となる以上は手続きは不要となるわけです。医療費控除の確定申告手続きの方法医療費控除については、年末調整では処理が行われない為、確定申告を行う必要があります。医療費控除を行う際に注意してほしい事としては、医療費控除の対象となる医療費の支出を証明できる領収書等を確定申告書に添付する必要があるということです。つまり、複数回の医療費の支出があった場合であっても、それらの全てに関する領収書を添付する必要があるため、医療費控除の申告を考えている人は、その点に注意が必要となります。高額療養費の確定申告手続き方法:まとめ高額療養費と医療費控除は性格的には似ている部分がありますが、実態は全く異なる性質のものとなります。年末調整や確定申告が近くなるにつれて、こういった部分について気になる人が増えてくると思います。そのため、医療費の支出が高額療養費の対象なのか、それとも医療費控除の申告の対象となるのかをある程度明確に区分しておくことも重要になります。また、医療費控除の申告については、領収書が添付されていることが必要となるため、1回あたりの医療費が少額のものであっても、回数が多かったり、診察に要する期間が長かったりするもの等がある場合については、領収証の保存に関してもしっかりと行う必要があります。確定申告に関する内容について、不明な点がある場合は、国税庁のHPや税理士の先生に確認することを活用していくことが大切です。
2019年01月30日がん保険と医療保険はどちらを選ぶのが良いのでしょうか?あるいはどちらを優先して先に加入するのが良いのでしょうか?すでに医療保険に加入している人はがん保険は不要なのでしょうか?または、がん保険と医療保険の両方に加入していて、重複した保障で無駄になっていないかどうかを確認したいという方もいるかもしれません。今回はがん保険と医療保険の共通点や相違点、そしてどちらを選ぶのが良いのかをわかりやすく説明していきたいと思います。がん保険と医療保険の共通点がん保険と医療保険の共通点を確認していくために、それぞれの基本的な仕組みを理解しましょう。がん保険の仕組みまず、がん保険の基本的な仕組みを確認しましょう。がん保険には、通常以下のような保障があります。がんと診断された場合の保障(1回のみ100万円など)がんで入院・通院した場合の保障(1日につき1万円など)がんで手術した場合の保障(1回につき10万円など)がんで特定の治療をした場合の保障(1回につき20万円など)がん保険の仕組みについては詳細を別の記事で説明していますので参考にしていください。医療保険の仕組み次に医療保険の基本的な仕組みを確認しましょう。医療保険は、以下のような保障が基本となっています。病気やケガで入院・通院した場合の保障(1日につき5千円など)病気やケガで手術した場合の保障(1回につき15万円など)特定の病気で治療した場合の保障(1回につき20万円など)現在の医療保険には多種多様な保障内容があるようにみえますが、突き詰めると上記の基本的な保障にまとめることができます。がん保険と医療保険との類似点両保険の基本的な仕組みを確認したところで、類似点を整理していきましょう。両保険とも入院・通院・手術・特定の治療といった場合に給付金が支払われる、という点です。類似点:入院・通院・手術・特定の治療で場合に給付金が受け取れる点がん保険と医療保険の相違点それでは逆に相違点を確認していきましょう。がん保険と医療保険のどちらを選ぶのが良いのかを考える際に最も参考になるのが、この相違点となります。異なる保障範囲医療保険は、視力回復手術(レーシック)などの一部を除いて、ほとんどの病気やケガという幅広い対象を保障するのが特徴です。これに対してがん保険は、がんに特化した保障範囲です。医療保険は保障する範囲が広く、がん保険はがんのみで保障範囲が狭い、というのが一つ目の相違点です。相違点1:医療保険は保障範囲が広く、がん保険はがんのみの保障範囲である点手厚いがん保障医療保険は幅広い病気やケガを保障範囲とする反面、保障額は入院や通院で1日につき3千円からせいぜい1万5千円までが限度です。また手術も1回につき5万円から40万円となっています。これに対して、がん保険はがんのみを保障範囲としますが、医療保険と比べて手厚い保障となっています。なかでも特徴的なのが、がんと診断された場合に支払われる「診断給付金(診断一時金などの別名もあり)」です。この診断給付金は1回だけの支払いである保障がほとんどですが、その1回の支払額は100万円から300万円となり、手厚い保障金額となっています。相違点2:がん保険独自の手厚い保障がある点なお診断給付金については詳細を別記事に記載していますので参考にしてください。がん保険には免責期間があるがん保険に加入した後の3ヶ月間(90日間)は免責期間といい、がん保険の保障が開始されません。なぜ免責期間があるのかというと、がんは自覚症状がある場合が考えられるからです。がんかもしれないと疑いを持った方が、まずがん保険に加入してから次に病院に行ってがんの診断を受けて、すぐに給付金の支払いを受ける、ということが出来てしまいますこうしたことを避けるため、がん保険には3ヶ月間という給付金が支払われない期間があるのです。医療保険にはこうした免責期間がありません。相違点3:がん保険には免責期間90日間がある点なお、免責期間については詳細を別記事に記載していますので参考にしてください。がん保険と医療保険をどちらを選べばよいのかここまでがん保険と医療保険の類似点と相違点について確認をしてきました。それでは次にがん保険と医療保険ではどちらを優先すればよいのか、あるいはどのような組み合わせやセットで加入したほうが良いのか、についてケース別に説明をしていきましょう。どちらにも加入していないケースがん保険と医療保険のどちらかに加入したい、あるいは先にどちらかに加入したいという場合を考えてみましょう。これまで整理してきた通り、あなた自身がどんな保障が欲しいかということがまず最初に重要です。病気やケガの幅広い保障が欲しいということでしたら医療保険を優先して検討しましょう。やはりがんになった時の保障を最初に手当てしておきたいということでしたらがん保険です。次に重要なのはがん保険や医療保険に加入する本来の目的です。病気・ケガ、がんになった時の治療費や急な出費に備えるのが、がん保険・医療保険の目的です。自分の貯蓄などで手当てできない部分を保険で補完するという考え方で、必要ながん保険や医療保険を検討されることをお勧めします。なお、がん保険の具体的な選び方については別の記事で詳しく紹介しましたので、参考にしてください。既に医療保険に加入しているケース次に医療保険に既に加入済みである場合に、どのようながん保険を検討したらよいのかを考えていきましょう。がんを含めた病気やケガの保障は医療保険で手当てされています。そうすると、あえてがん保険の加入を考えるのであれば、がん保険にしかない保障を中心に加入を考えたほうがよいということになります。がん保険独自の保障ということで先ほどご説明したのが、診断給付金などといわれる一時金の保障です。特に一時金だけ欲しいという方は、ネットライフ生命のダブルエールのように診断給付金だけに絞り込んだ商品もありますので参考にしてください。がん保険にのみ加入しているケースがん保険にすでに加入している場合は、がん以外の病気やケガでの保障がどれぐらい必要かを検討したうえで、医療保険の加入を検討しましょう。特に公的医療制度の自己負担3割が適用されず、治療費の全額が自己負担となってしまう先進医療を対象とした医療保険もあります。がん保険も医療保険も両方加入しているケースがん保険と医療保険に両方加入している場合には、両方の保険で重複している保障がないかを念のため確認しておきましょう。例えば医療保険の特約(追加保障)にがんの保障がついているのに、別にがん保険に加入している、といった事例などもありますので注意してください。がん保険と医療保険の比較まとめがん保険と医療保険ではどちらを選ぶのがよいのか、あるいは優先して加入すべきなのはどちらなのかを考えるために、両保険の類似点と相違点を整理しました。類似点:がん、病気・ケガになった場合の入院・手術・通院などの給付金があることです。相違点:医療保険が幅広く病気・ケガを保障しているのに対して、がん保険はがんのみに重点を絞って手厚い保障になっていることです。なお、がん保険には免責期間という当初3か月は保障対象外の期間があるので注意してください。がん保険と医療保険の選び方ですが、がん保険についてはがん診断給付金の一時金といった独自の手厚い保障を中心に検討しましょう。医療保険は幅広い保障であることから、がん保険との重複に気を付けて加入を検討しましょう。
2019年01月29日高額療養費は、医療費が高額になった場合において、自己負担分について上限を設定し、その上限額を超えて支払った医療費の部分について払い戻す仕組みとなっています。ただし、健康保険の適用される診療に限りますので、出産に関する費用の中には、高額療養費の適用を受けることができない事もあるのが注意すべき点です。今回は、高額療養費制度と出産費用との関係性について、これだけは理解していただきたいという内容を解説していきます。出産に関する費用で保険の適用が受けられるものと受けられないもの出産に関する費用には、健康保険の適用を受けることができるものと適用を受けることができないもの(全額自費負担)があります。高額療養費は保険適用対象の治療などに対して支給されるため、保険適用対象なのかどうかを確認しておくことも重要なことになります。実際に窓口で支払う場合においては、3割負担の部分と全額自己負担部分とが混在する形で支払うことになることが多いため、保険適用が受けられるかどうかについては、明確に区分することが必要になります。出産費用で保険の適用が受けられる場合保険の適用が受けられる出産費用としては、帝王切開や切迫早産などの異常分娩や妊娠・出産に伴う合併症などのように治療が必要とされる場合に健康保険の適用が受けられます。つまり、これらの出産に関わる費用の総額が自己負担額の上限額を超える場合については、高額療養費の申請を行うことで上限額を超えた部分について払い戻しが行われます。出産に関しては、予定日を過ぎると早まることなどがありますが、高額療養費の申請期限は自己負担額を支払った日の属する月の翌月1日から2年間とされています。出産費用で保険の適用が受けられない場合保険の適用が受けられない事例としては、自然分娩で出産を行った場合が該当します。自然分娩の場合は、治療となるような医療行為がないため、保険の適用対象とはならず、高額療養費の対象とはなりません。高額療養費の対象とはなりませんが、出産に関する給付である「出産手当金」や「出産育児一時金」の支給があるため、これらの給付により、実質的な自己負担がほぼないものとなります。出産費用に関する高額療養費はいくらぐらいもらえるのか?初めにも述べたように、出産費用は正常分娩の場合は保険適用外となり、高額療養費の支給を受けることができませんが、帝王切開や切迫早産、妊娠中の合併症などといった治療が必要な場合であれば保険適用されます。では、具体的に出産費用について高額療養費が発生した場合、いくらぐらいになるかについて見ていきます。帝王切開による出産を行った場合帝王切開による出産の費用は保険の適用対象となりますので、高額療養費の対象となります。帝王切開による出産の費用は平均すると約55万円(平成26年度時点)であるといわれていますが、保険の適用対象となる部分は、帝王切開にかかる費用のみとなっているため、それ以外の入院時の食事代などの費用の負担分については保険の適用外となる点(つまり、この部分については全額自己負担となり、高額療養費の適用を受けられないということです。)に注意が必要です。具体例(条件)帝王切開による出産にかかった費用(10割負担であった場合の支払総額):60万円実際に病院に支払った医療費(3割負担による支払額):18万円被保険者の標準報酬月額:40万円高額療養費の金額の速算表自己負担額の上限額標準報酬月額が40万円ですので、上記の速算表から「80,100円+(医療費総額(10割負担の場合の医療費総額)ー267,000)×1%」で算定することが分かります。この計算式を当てはめてみると、この人の自己負担額の上限額は、「80,100円+(600,000円-267,000円)×1%=83,430円」となります。高額療養費の金額実際に支払った自己負担額から、先程計算した自己負担額の上限額を控除することで、この人が支給を受けることができる高額療養費の金額が算定されます。これより、「180,000円(実際に支払った自己負担分)ー83,430円(自己負担額の上限額)=96,570円(高額療養費の金額)」が高額療養費として申請することで払い戻される金額となります。いつまでに申請すればよいか?実際に帝王切開による出産が行われた日の属する月の翌月1日から2年以内とされています。(つまり、出産日が平成31年1月6日であれば、その翌月である「平成31年2月1日から2年後の平成33年1月31日まで」に申請をすればよいということになります。)出産に関する高額療養費についての注意点出産に関する費用は基本的には医学的な治療ではない為ため、保険の適用はありませんが、帝王切開や切迫早産等の異常分娩や妊娠による合併症などの場合は保険適用があるため、高額療養費の適用はあります。しかし、保険の適用があるのは異常分娩などの出産に関する費用に限られているということです。そのため、実際に負担しなければならない額についても、3割負担の部分と全額自己負担の部分とが混在する形になってしまうため、医療費を支払った際に区分しておくことが必要になります。なお、1年間に4回以上高額療養費の支給が行われる場合は多数回該当といい、4回目以降の高額療養費の自己負担額の上限額の基準が変わります。入院期間が長期化する恐れがあったりする場合には注意が必要になります。高額療養費の適用があるもの異常分娩などによる出産費用以外にも、出産に関する費用で保険適用を受けることができる内容として、以下のような症状があげられます。つわり(重症妊娠悪阻)流産・早産子宮頸管無力症妊娠高血圧症候群逆子・前置胎盤の超音波検査児頭骨盤不均衡の疑いでのX線撮影微弱陣痛などで陣痛促進剤を使用分娩停止や胎児機能不全などによる鉗子分娩・吸引分娩頸管損傷・会陰裂傷Ⅱ度以上による縫合術赤ちゃんの新生児集中治療室への入院 などいずれの症状についても、保険適用があるため、高額療養費の支給対象とされます。高額療養費の適用がないもの以下に該当するものについては、保険の適用が受けられないため、高額療養費の適用を受けることができません。差額ベッド代入院時の食事費病院への交通費外来診療の医療費が21,000円未満のものなどこれらの費用については、出産に関する費用であるかどうかは関係なく、基本的に保険の適用を受けることができない費用とされています。出産に関する高額療養費まとめ出産に関する費用は、保険の適用があるものと保険の適用を受けることができないものがあるため、どの費用が保険の適用があり、どの費用は保険の適用外であるかを理解することが大切です。そうすることで、窓口で支払をした後に申請を行う上でもスムーズに進めることができるようになります。忘れてはいけないこととしては、高額療養費は健康保険の給付の一つですので、保険の適用がなければ、高額療養費を支給すること自体できないということにもなります。出産に関する高額療養費については、治療が必要かどうかという点に注意すれば、保険適用の有無についても判断ができることが多いですので、不明な点があった場合は、保険者(協会けんぽや健保組合など)に問い合わせをすることで、事前に疑問点を解消することも併せて行うことが望ましいです。
2019年01月24日病院などにおいて手術を受けたり入院をした場合、高額な料金の支払いをすることがありますが、その支払った代金の一部が返金される制度があります。この払いすぎた医療費が返還される制度のことを「高額療養費」といいます。高額療養費は、健康保険・国民健康保険のいずれの制度に加入している人であっても利用することが出来る制度ですが、制度が複雑であるため、なかなかイメージが出来ないことが多いかと思います。さらに、平成28年より法改正が行われて、高額療養費制度の区分が細分化されました。今回は、高額療養費制度の具体的な仕組み、どのような場合に申請することが出来るかといったことについて、近年改正が入りより細分化されたため、その点を踏まえて解説します。高額療養費とは高額療養費とは、同一月(1日から末日まで)にかかった医療費の自己負担額が高額になった場合において、一定の金額(自己負担限度額)を超えた分が、あとから払い戻される制度です。なお、70歳未満の人については、医療費が高額になることが事前にわかっている場合(長期入院が必要な病気やケガなどをしてしまった場合など)については、「限度額適用認定証」を提示することで高額療養費の請求をすることが出来ます。70歳未満の場合の高額療養費70歳未満の場合の高額療養費については、基本的には外来診察等で支払った医療費と入院等で支払った医療費の自己負担分の合計額が、自己負担額の上限額を超えている部分について高額療養費の支払いが行われる仕組みとなっています。つまり、同一月における医療費について、外来診療で支払った自己負担分と入院などで支払った自己負担分を合算した自己負担分が自己負担分の上限額を超えるかどうかで、高額療養費の支給が行われるかが判定されます。なお、1年間に4回以上高額療養費の支給が行われる場合は多数回該当といい、4回目以降の高額療養費の自己負担額の上限額の基準が変わります。70歳以上75歳未満の者の場合の高額療養費70歳以上75歳未満の者の場合の高額療養費は、70歳未満の人の場合とは異なり、外来診療などで支払った自己負担額と入院などで支払った自己負担額を分け上限額が設定されています。そのため、医療費の自己負担額が外来診療によるものなのか?それとも、入院などによるものなのかで、自己負担額の上限額が異なります。高額療養費の算定基準額高額療養費の算定基準となる金額は、標準報酬月額(保険料の算定の基準となる報酬月額)や報酬月額(実際の総支給額の給与や賞与などの合計を12で除して得た金額)がいくらになるかによって区分が異なります。70歳未満の者の場合70歳未満の場合、自己負担額の上限の区分は、標準報酬月額や報酬月額によって、大きく5つの区分に分かれています。70歳以上75歳未満の者の場合70歳以上75歳未満の場合、自己負担額の限度額も70歳未満と同様に所得状況によって区分されていますが、大きく4つの区分に分かれています。なお、自己負担限度額の計算は、外来分のみの場合については個人の自己負担額の合計で判断されますが、外来の自己負担額と入院等の自己負担額を合算した場合は、世帯全体で自己負担限度額の判定を行う仕組みになっているので注意が必要です。つまり、外来診察等で支払った医療費については、個人の支払額の合計額で判断されるが、入院等の費用が発生した場合については、世帯家族全体の医療費の自己負担額の合計で自己負担限度額を判断することになります。高額療養費の申請の流れ高額療養費の申請方法には「事前申請」と「事後申請」の2通りあります。いずれの方法であっても、申請先が保険証に記載されている保険者(協会けんぽであれば全国健康保険協会、健康保険組合であれば、保険証に記載されている健康保険組合)となります。事前申請の場合事前申請の場合は、保険者に健康保険限度額適用認定書申請書(協会けんぽの場合)を提出することで、「限度額適用認定証」の交付を受けます。その後、医療機関等で医療費を支払う際に限度額適用認定証を提示することで、自己負担額の上限までの支払いを行い、超える部分については支払わなくてもよいという流れとなります。(つまり、事前に自己負担額の上限がいくらですという証明書を発行することで、後から払い戻しの手続きに関する手間と時間を省略することができます事後申請の場合事後申請の場合は、いったん医療機関で医療費(10割)の支払いを行い、その後、高額療養費支給申請書と必要な書類(実際に支払った金額が証明できるものなど)を保険者に提出することで、払いすぎた部分の金額の償還払い(払い戻し)を行う手続きを行う方法です。つまり、事後申請の場合は先に医療費の支払いを行った後で、払いすぎた部分の金額については、事後精算という形で払い戻しが行われる方法で高額療養費の支払いが行われます。また、事後申請の場合、医療機関のレセプトの審査等を経て、通常であれば約3ヶ月後に払い戻しが行われるため、事前申請に比べると高額療養費が支払われるまでに時間がかかります。高額療養費制度まとめ高額療養費制度は、入院などをしたことにより高額な医療費の支払いにおいて、自己負担額を抑えることができる制度です。申請の方法については、現在加入している健康保険の保険者によって異なるため確認をしたうえで申請を行うようにしてください。高額療養費は事前申請をする場合と事後申請をする場合とでは、申請の流れが異なるだけでなく、実際に医療機関の窓口で支払う金額にも大きな差が出ます。そのため、医療費が高額になることが事前に予測できるようであれば、事前申請をすることで、自己負担限度額までの負担で済むため、経済的負担を軽減することも可能です。なお、高額療養費の対象になる医療費の支払いと対象にならない医療費の支払いがあり、年齢や所得状況によって、自己負担額の上限額が異なります。高額療養費は仕組みが複雑な部分が多いため、基本的な部分については上記に記載した内容を確認していただければ充分対応できるようになっていますので、しっかりと確認の上、制度を有効に活用することが重要になってきます。
2019年01月21日医療費控除とは、1月1日から12月31日までの1年間において、本人や配偶者をはじめ生計を同一にしている家族の医療費を支払った場合で、支払った医療費が一定額を超えるときに受けられる税金の軽減制度です。ただし、実際に、医療費控除で税金の軽減を受けるためには、年末調整では受けられず、翌年2月16日から3月15日までの確定申告期間中に確定申告をしなければならないほか、確定申告をする方の収入(所得)によって、医療費控除が適用できる、できないといった判定も異なる特徴があります。このようなことを踏まえまして本記事では、確定申告で医療費控除を受けるための方法や医療費控除で押さえておくべきポイントをわかりやすく紹介していきます。確定申告で医療費控除が適用になる金額医療費控除が適用になる金額の計算式確定申告で医療費控除の適用になる金額は、確定申告をする方の収入(所得)によって、金額が異なりますが、実務上、医療費控除が適用になる金額は、以下の計算式によって求めることになります。(実際に支払った1年間の医療費合計額-保険金などで補填される金額)-10万円たとえば、1月1日から12月31日までの1年間で、実際に支払った1年間の医療費合計額が30万円、医療保険から保険金を15万円受け取ったと仮定した場合、上記の計算式にあてはめますと、医療費控除の金額は5万円(※)となります。※(30万円-15万円)-10万円=5万円なお、保険金などで補填される金額には、医療保険から支給される入院給付金や手術給付金といった受取保険金のほか、健康保険などから支給される高額療養費・家族療養費・出産育児一時金などがあてはまります。ちなみに、1年間の総所得金額などが200万円未満の人は、総所得金額等の5%の金額を超えた場合に医療費控除が適用できることとされていることから、先に紹介したように、一概に、1年間に支払った医療費が10万円を越えなければ医療費控除が適用できないといったわけではありませんので注意が必要です。総所得金額ってどのように判断する?1年間の総所得金額などが200万円未満と言われても、そもそも総所得金額って何?と感じられている方も多いと思いますので、ここでは、1年間の収入が給料のみである会社員や公務員を想定して、総所得金額の確認方法について、源泉徴収票を例に紹介しておきます。国税庁No.2260 所得税の税率納めるべき復興特別所得税:355円(16,950円×2.1%)納めるべき所得税および復興特別所得税の合計金額:17,305円→17,300円(100円未満切り捨て)還付される所得税:2,800円(17,300円-20,100円(源泉徴収票の源泉徴収税額)=▲2,800円)医療費控除の適用によって、本来納めるべき所得税および復興特別所得税は、17,300円で良いのですが、20,100円が源泉徴収されているため、結果として2,800円、多く税金を納めていることがわかります。そのため、差し引きした2,800円の所得税の還付が受けられるほか、翌年から納めるべき住民税も少なくなる効果が得られます。確定申告で医療費控除の対象となる医療費を知ろう先に紹介した医療費控除の計算式において、実際に支払った1年間の医療費には、医療費控除の対象となるものと医療費控除の対象にならないものがあり、医療費控除の対象になる医療費が計算式の結果よりも多くなければ医療費控除を受けることができません。医療費控除の対象となる医療費と対象にならない医療費国税庁のWEBサイトでは、医療費控除の対象となる医療費や対象にならない医療費は、以下の通りとしていますが、治療のための医療費は、医療費控除の対象、予防のための医療費は、医療費控除の対象外と考えながら読み進めてみるとわかりやすいでしょう。1 医師又は歯科医師による診療又は治療の対価(ただし、健康診断の費用や医師等に対する謝礼金などは原則として含まれません。)2 治療又は療養に必要な医薬品の購入の対価(風邪をひいた場合の風邪薬などの購入代金は医療費となりますが、ビタミン剤などの病気の予防や健康増進のために用いられる医薬品の購入代金は医療費となりません。)3 病院、診療所、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、指定介護老人福祉施設、指定地域密着型介護老人福祉施設又は助産所へ収容されるための人的役務の提供の対価4 あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師による施術の対価(ただし、疲れを癒したり、体調を整えるといった治療に直接関係のないものは含まれません。)5 保健師、看護師、准看護師又は特に依頼した人による療養上の世話の対価(この中には、家政婦さんに病人の付添いを頼んだ場合の療養上の世話に対する対価も含まれますが、所定の料金以外の心付けなどは除かれます。また、家族や親類縁者に付添いを頼んで付添料の名目でお金を支払っても、医療費控除の対象となる医療費になりません。)6 助産師による分べんの介助の対価7 介護福祉士等による一定の喀痰吸引及び経管栄養の対価8 介護保険制度の下で提供された一定の施設・居宅サービスの自己負担額9 次のような費用で、医師等による診療、治療、施術又は分べんの介助を受けるために直接必要なもの(1) 医師等による診療等を受けるための通院費、医師等の送迎費、入院の際の部屋代や食事代の費用、コルセットなどの医療用器具等の購入代やその賃借料で通常必要なもの(ただし、自家用車で通院する場合のガソリン代や駐車場の料金等は含まれません。)(2) 医師等による診療や治療を受けるために直接必要な、義手、義足、松葉杖、補聴器、義歯などの購入費用(3) 傷病によりおおむね6か月以上寝たきりで医師の治療を受けている場合に、おむつを使う必要があると認められるときのおむつ代(この場合には、医師が発行した「おむつ使用証明書」が必要です。)(3-1)医療費の中には、身体障害者福祉法、知的障害者福祉法などの規定により都道府県や市町村に納付する費用のうち、医師等の診療等の費用に相当するものや前記(1)・(2)の費用に相当するものも含まれます。(3-2)おむつ代についての医療費控除を受けることが2年目以降である場合において、介護保険法の要介護認定を受けている一定の人は、市町村長等が交付する「おむつ使用の確認書」等を「おむつ使用証明書」に代えることができます。10 骨髄移植推進財団に支払う骨髄移植のあっせんに係る患者負担金11 日本臓器移植ネットワークに支払う臓器移植のあっせんに係る患者負担金12 高齢者の医療の確保に関する法律に規定する特定保健指導(一定の積極的支援によるものに限ります。)のうち一定の基準に該当する者が支払う自己負担金(平成20年4月1日から適用されます。)出典:国税庁No.1122 医療費控除の対象となる医療費確定申告で医療費控除を受けるために必要なことこれまでの解説より、確定申告で医療費控除を受けるために必要なことをまとめますと、以下のようになります。医療費控除の適用を受ける方の1年間の総所得金額が200万円未満なのか、200万円超なのかを確認しておく医療費控除の対象となる医療費が、計算式で計算した結果よりも多くなっているのかを確認しておく確定申告で医療費控除を受けるための必要書類確定申告で医療費控除を受けるためには、原則として、翌年2月16日から3月15日までの確定申告期間中に作成した確定申告書に医療費控除の明細書を一緒に提出する必要があります。なお、医療費控除の明細書を作成するための基となった医療費の領収書は、5年間に渡って自宅などで保管する必要があるのですが、所定の事項が記載された医療費通知(医療費のお知らせなど)を医療費控除の適用を受ける際に提出する場合は、医療費控除の明細書や領収書の保管を省略することもできるようになっています。ちなみに、平成29年分の確定申告より、医療費控除を受けるために、医療費通知(医療費のお知らせなど)を添付することで、医療費控除が簡単に受けられるようになりましたが、1年間の支払った医療費が、すべて網羅されているわけではありません。たとえば、薬局で購入した市販の風邪薬や公共交通機関を利用して通院した場合の交通費も医療費控除の対象になるわけでありますから、このようなことを踏まえますと、少しでも多くの医療費控除を適用するためにも、やはり、医療費控除の明細書を作成することが望ましいのではないかと筆者は感じています。確定申告で添付が必要な医療費控除の明細書とは国税庁平成30年分確定申告特集(準備編)医療費控除の明細書は、医療費の領収書を見ながら必要事項を明細書へ記入していく流れとなりますが、すべてを個別に記入する必要はなく、医療を受けた方の氏名や病院・薬局などといった支払先の名称ごとにまとめて記載しても良いことになっています。国税庁医療費控除に関する手続について(Q&A)上記イメージ図のように、まとめて記入し、明細書を作成することで、手間や時間が省けることにつながります。医療費控除を受ける際に領収書の添付をしても差し支えないこれまでは、医療費控除の適用を受けるためには、医療費控除にかかる領収書の添付が求められておりましたが、平成29年分の確定申告からは、領収書の添付が省略できるようになっています。一方で、これまで通りのやり方で医療費控除の適用を受けたい方や多くの領収書を自宅で保管することに対して煩わしさを感じている方は、経過措置として、平成31年分まで引き続き領収書の添付をすることで医療費控除の適用を受けることが認められています。仮に、5年間に渡って保管しなければならない医療費控除にかかる領収書を紛失したり破棄する恐れがあると感じている方は、これまで通りの方法で確定申告の際に領収書を添付してしまう方が確実、かつ、安心と言えるでしょう。医療費控除で交通費がある場合は、忘れずに領収書などの添付を病院へ治療に行かれる際に、電車やバスなどの公共交通機関やタクシーを利用される方もおられると思いますが、これらは、医療費控除の対象になるため、忘れずに領収書の添付をするように心掛けておきたいものです。中には、領収書が発行されないものもあると思いますが、メモに残しておくことやエクセルなどの表計算ソフトへ入力して保存しておくなどの方法も認められているため、何かしらの証拠として残しておくことがとても大切になります。なお、ご自身が自ら自動車などを運転して通院するためのガソリン代や駐車場の代金は、医療費控除の対象とはなりませんので、こちらも合わせて注意しておくことが大切です。確定申告で医療費控除を受けるための方法まとめ医療費控除は、医療費通知(医療費のお知らせなど)を確定申告書に提出することで簡単に受けられるようになったため、医療費控除の適用を受ける方にとって手間や負担が前よりもかからなくなったことは確かです。ただし、医療費控除の対象となる医療費の範囲はとても広いことから、普段から家族にかかった医療費の領収書を1つの場所にしっかりと保管しておき、年末になりましたら一通り合計金額を算出される習慣を身に付けておくことをおすすめします。これは、長い人生の中で、病院へ入院したり、高額な医療費がかかる場合が将来的に十分考えられることから、いつかは必ず役に立つ内容のものであると考えられるからです。日常生活を振り返ってみて、普段と違った特殊な事情が生じた場合は、医療費控除が受けられる可能性も高くなるとも考えられますので、ケース・バイ・ケースではありますが、本記事で紹介した医療費控除のポイントを、ぜひ、今後に役立てていただければと思います。
2019年01月13日児童福祉制度とは、児童福祉法を基本として、様々な行政機関や施設、専門職の働きや実践によって推進される制度で、具体的には「保育子育て支援」「健全育成」「母子保健対策」などの施策があり、妊娠・出産に関する福祉だけでなく、育児を行っている世帯まで、幅広い世帯においてかかわりが深い制度といえます。今回は児童福祉制度の一つであり、もっとも身近に感じることが出来る給付の「児童手当」の制度の仕組みについて説明します。子どものいる世帯の経済的支援を行う「児童手当」の仕組み児童手当は、児童がいる世帯に対して、子の年齢、子の人数に応じて支給される金額が変わります。この児童手当は、過去には「こども手当」という名称で支給されていたこともありますが、現在では、児童手当として支給されています。対象者児童手当は、15歳に達した日後最初の3月31日までにある子(つまり、「中学卒業するまでの子」のことで、「支給要件児童」といいます。以下同じ)がいる世帯に対して、その子の年齢、人数に応じて市町村から支給される給付で、毎年2月・6月・10月にその前月までの4か月分をまとめて支給されます。児童手当の支給要件次の①~⑤のいずれかに該当する者に支給されます。①父母等中学卒業前の児童である子を監護(児童の面倒を見ており、通常必要な監督保護を行っていること)する必要があり、かつ、その子と生計を同じくする父また母、もしくは、未成年後見人であり、日本に住所がある人のこと②父母指定者日本に住所がない父母等が指定する人のうち、その父母等が仕送り等で生計を維持している子と同居している人で、日本国内に住所がある人(例えば、祖父母や叔父、叔母など)のこと③父母等又は父母指定者のいずれにも監護されず、または、これらと生計を同じくしない支給要件児童を監護し、かつ、その生計を維持する者であって、日本国内に住所を有するもの簡単に言うと、「両親が離婚等をして別居しており、生計を同じくしていない場合」に児童と同居している人のこと④施設等受給資格者何らかの理由によって里子として出された子を監護している里親等、または、障害児入所施設に入所している支給要件児童がいる施設の管理責任者のこと⑤所得制限(2019年度)世帯の所得の合計金額が以下の金額未満であることが必要です。なお、所得制限の判断基準は所得(給与所得控除語の金額)がいくらになるかで判断されます。なお、今までは所得制限を超えた世帯であっても児童1人当たり5,000円の特別支給が行われていましたが、2019年度は廃止されます。扶養親族がいないとき年収:833.3万円(所得:630万円)扶養親族が1人年収:875.6万円(所得:668万円)扶養親族が2人年収:917.8万円(所得:706万円)扶養親族が3人年収:960.0万円(所得:744万円)扶養親族が4人年収:1002.1万円(所得:782万円)ひとり親+扶養親族が0人(子供1人)年収:833.3万円(年収:622万円)児童手当の額児童手当の額は子どもの人数や年齢によって異なり、1月当たりの金額で規定されており、4か月分を2月・6月・10月の年3回にその前月分(2月:10~1月、6月:2~5月、10月:6~9月)を支給されます。ただし、15歳に達した日後最初の3月31日以降になる子がいる場合は、その子については支給の対象とはなりません。①3歳未満の子15,000円×該当する支給要件児童の数②3歳以上小学校卒業までの子2人目まで10,000円×該当する支給要件児童の数3人目以降15,000円×該当する支給要件児童の数③小学校卒業後中学校卒業までにある子10,000円×該当する支給要件児童の数児童手当の額の具体例①14歳・10歳・6歳の場合10,000円+10,000円+15,000円=35,000円/月②17歳・14歳・10歳の場合10,000円+10,000円=20,000円/月※第1子が15歳に達する日後最初の3月31日を過ぎており、児童手当の支給対象児童とはならないため、支給対象児童である第2子と第3子が児童手当の支給額の計算の対象となります。③17歳・16歳・14歳の場合10,000円/月※第1子と第2子が15歳に達する日後最初の3月31日を過ぎており、児童手当の支給対象児童とはならないため、支給対象児童である第3子の10,000円/月が児童手当の金額となります。児童手当を支給するために必要な手続き児童手当は、支給手続きを忘れてしまうと遡及(過去にさかのぼること)して支給を受けることが出来ないため、必ず手続きができるようになった時に行うことが必要です。支給手続きで必要なもの児童手当の支給手続きをするときに必要になるものは以下に挙げるものが必要です。児童手当認定請求書申請者の健康保険証の写し申請者名義の振込先口座のわかるもの申請者の印鑑支給手続きの注意点具体的に支給手続きを行う際の注意点は、以下のようになります初めて子が生まれた場合子が生まれて、児童手当の支給対象児童となった日の翌日から15日以内に市町村に申請手続きをする必要があります。2人目以降が生まれた場合その子を出産した日の翌日から15日以内に市町村に申請手続きをする必要があります。引越しをして住所が変わったとき転入日(転出予定日)の翌日から15日以内に市町村に申請手続きをする必要があります。公務員になった場合基本的に勤務先である市町村に対して申請手続きを行いますが、新たに公務員になった場合、または、公務員を辞めた場合は、その事実があった日の翌日から15日以内に住所地の市町村に対して申請手続きを行う必要があります。まとめ児童福祉制度の一つである、子供・子育てに関する支援制度の一つとして児童手当があります。児童手当は、子が生まれた世帯に対する経済的支援を行うことで「生活の安定を図ると共に、次代の社会を担う児童の健やかな成長に資することを目的とする(児童手当法1条)」とされている制度です。児童手当は、子供の年齢や人数によって支給される金額が異なり、また、世帯合算の所得によって制限がかかることがあります。さらに、自治体によっては児童手当以外にも、児童福祉に関する給付が行われているところがありますので、今、お住いの自治体が子供の育成に関する給付として、どのような支援を行っているのかを改めて確認することは重要なことといえます。児童手当の制度などを理解したうえで、妊娠・出産・育児を包括的に考えたうえで、今後のライフイベントをどのように計画していくべきかを、改めて考えてみるといいでしょう。
2018年12月29日「財形制度」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?「勤労者財産形成促進制度」を略したもので、勤労者財産形成促進法に基づき、会社が雇用する社員の財産づくりを国とともに支援する制度です。「財形制度」を導入している企業の社員は、結婚やマイホーム購入など、あらゆるライフイベントに備えて給与天引きで確実に貯蓄できる「財形貯蓄制度」や財形貯蓄残高に応じて長期・低利・公的な住宅ローンが組める「財形持家転貸融資制度」などを利用することができます。今回はこの「財形制度」にまつわるお話です。■ 不動産会社に聞かれて存在を知った「財形制度」昨年、会社員の夫名義での戸建て購入の際に初めて財形制度の存在を知った筆者。欲しい家が決まり、さあ次は住宅ローンをどの銀行から借りようかと考えていた際、不動産会社から言われた「ご主人の会社は財形制度を導入されていますか?」の一言。財形制度を導入している会社で1年以上財形貯蓄をしているなど特定の条件を満たしていれば、年利率がなんと0.7%前後で住宅ローンが組めると聞きました。さらに中小企業勤労者や18歳以下の子どもを育てている勤労者であれば、金利引き下げ特例措置があるとのこと。なんと、はじめの5年間はここからさらに0.2%も低い固定金利で融資が受けられるんです。これはすごく安い!さらに、ほかの公的融資や「フラット35」との併用も可。結局、筆者夫の会社は財形制度に加入していなかったため、財形制度は諦め、中央労働金庫(ろうきん)で借りることになりました。ろうきんでも他銀行と比べたら金利は安かったのですが、それでも財形制度で借りた方が遥かに安い金利だったことは事実。「なんで夫の会社は財形制度を導入していなかったんだ~!」と思ってしまいました。■ 財形制度で借りた資金は新築購入、中古購入、リフォームに使える財形制度で住宅ローンを借りる時には、このように低金利という最大のメリットがありますが、実は注意したい点もあります。Naoaki / PIXTA(ピクスタ)それは、借入可能額に制限があること。具体的には、申込日における一般財形貯蓄・財形住宅貯蓄・財形年金貯蓄の残高(合計)の10倍の額(最高4,000万円)、もしくは担保等の状況に応じて、住宅の建設・購入に必要な額および土地の取得(整備を含む)に必要な額(所要額)の90%以内の額、またはリフォームに必要な額(所要額)の90%以内の額の、いずれか低い金額が融資限度額になります。筆者宅は4,000万円を超える住宅ローンを借りたので、この限度額をオーバーしていましたが、もし財形制度を利用できていたら予算を少し下げて家探しをリスタートしたかもしれません。ローン返済に追われる今となると、それくらいこの低金利は羨ましいポイント。makaron* / PIXTA(ピクスタ)また、財形制度で融資を受けた資金は、新築住宅の購入だけではなく、中古住宅の購入、さらにリフォーム資金までもが対象です。家が欲しい、かつ低金利で融資を受けたいといった場合には、まず家を見つけてから住宅ローンを借りる銀行を探すのではなく、財形制度の条件内で欲しい家を探すという選択も決して悪くはないでしょう。新築購入、中古購入、中古住宅購入からのリフォームと、予算内ながらも選択肢を大きく広げることができるのは、非常に大きなお金が動くマイホーム購入においては非常に魅力的です。■ 澤穂希さん出演のウェブCMもスタート!単なる積立預金にとどまらず、国と会社がともに社員の人生設計を支援するしくみとなっている財形制度。社員が利用するには、勤めている企業が財形制度を導入している必要があります。12月3日からは財形制度の認知度アップのため、2017年1月に長女を出産し、今まさに子育て真っ只中である澤穂希さんが出演するWEBのCMがスタート。「財形貯蓄制度」「財形持家転貸融資制度」についてさらに詳しく、楽しく学べます。自分の会社が財形制度を導入していると、自分自身の住宅購入のあれこれがいろいろと変わってきます。もし低金利で住宅ローンを借りたいけれども、財形制度を導入していない中小企業にお勤めの方は、上層部に掛け合ってみるもの一つの手かもしれません。【参考】※澤穂希さんが“財産づくり”を学ぶ!? 初登場の「財形」広報キャラクター・財形姉妹と見事な掛け合いを披露 「財形制度」の新WEB CM 2018年12月3日(月)より公開
2018年12月18日軽症高額該当とは?難病法に基づき、難病のある人を対象とする医療費の助成制度があります。しかし、指定難病に罹患していると認められたものの、病状が「軽症」であるため重症度基準を満たせないと、医療費助成の対象とならない場合があります。「軽症高額該当」は、「軽症」でありながら症状を保つために高額の治療費を支払い続けている難病の人を医療費助成の対象として認定し、経済的負担の軽減を図る制度です。難病患者が医療費助成を受けることができる制度に「指定難病医療費助成制度」があります。その認定審査は、定められた「診断基準」および「重症度基準(症状の程度の基準のこと)」という2つの基準をもとに行われます。上記2つの基準両方を満たした人が、難病医療費助成を受け取ることができるという仕組みです。しかし、診断基準は満たしているものの、重症度基準を満たせない「軽症」という場合もあります。服薬などの適切な治療によって症状が抑えられ、通常の生活を送ることができている状態が続いている人もいます。「軽症」とはいえ、その状態を保つ治療を継続するためには、高額な医療費が必要となってきます。特に難病の場合は、治療が長期にわたることも多く、治療費は経済的に大きな負担となってしまいます。そこで平成27年1月1日より、「難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)」が施行され、その中でこうした難病でありながら、高額な治療費を支払い続けている「軽症」状態の患者の経済的負担の軽減を図るため、「軽症高額該当」という新しい制度が導入されたのです。軽症高額に該当する2つの要件出典 : 「軽症高額該当」の対象者は、臨床調査個人票(医師による、細かい調査所見を記入したもの)を審査した結果、申請した疾病の診断基準は満たすが、重症度基準(病状の程度の基準)は満たさなかった人となります。要するに、指定難病であると診断されているにもかかわらず、「軽症」(適切な治療によって症状が抑えられている)な状態であることによって、助成費が受けられないということです。「軽症高額該当」制度において、医療費の助成が受けられるかどうかは、1ヶ月あたりの難病治療にかかる医療費の総額がポイントとなります。認定の基準となるのは、申請した月以前の12ヶ月間において、申請した疾病(指定難病)にかかった医療費総額(10割負担と考えた場合)が33,330円を超える月が1年間の間に3ヶ月以上あると認められるかどうか。難病と診断されてから12ヶ月経っていない場合は、医師が難病発症と認めた月から、申請日の属する月までに医療総額費が33,330円を超える月が3回以上あった場合に対象となります。Upload By 発達障害のキホン参考:東京都福祉保健局軽症高額該当の認定および医療助成費申請の流れ出典 : 指定難病医療費助成申請をする際に、「軽症高額該当」認定申請も同時に行なうのが一般的です。これは、指定難病医療費助成と軽症高額該当の申請を別々に行うと、かなりの時間と手間がかかり、給付までに相当な時間を要することになってしまうためです。最初にどこに相談すればいいのか、どのような手順で申請するのか、申請に必要な書類、注意すべき点などを解説します。「軽症高額該当」認定および医療助成費の申請や相談の窓口は、自身の住民票のある各都道府県の保健所になります。各都道府県によっては、福祉事務所などと統合されている場合もありますので、事前に自治体のホームページなどで確認しておきましょう。「軽症高額該当」の認定申請は、医療費助成申請の手続きと同時に行うことがほとんどです。「指定難病医療費助成制度」の医療助成費申請手続きの際に、追加書類として「軽症高額該当」であることを証明するための書類を提出することで、軽症高額該当の認定確認も行われます。まず、必要書類(次項の「申請に必要な書類」参照)を揃え、各都道府県の窓口(保健所もしくは役所の福祉事務所)に提出します。「軽症高額該当とみなし、医療費助成対象である」と認定されると、都道府県から「指定難病医療受給者証」が交付されます。都道府県によって異なりますが、認定されても医療受給者証が届くまでには、ある程度の時間がかかります。医療受給者証が手元に届くまでにかかってしまった医療費に関しても、治療証明書や領収書を添付し治療費の支給申請を行えば、負担上限月額を超えた額があとから支給されます。必ず治療証明書や領収書は保存しておきましょう。ほぼすべての書類は、保健所や福祉事務所のホームページからダウンロードすることができます。都道府県によって必要な書類は多少異なってくるため、必ず担当窓口に確認しましょう。・※「臨床調査個人票」…指定医による詳細な診断書、厚生労働省のホームページからダウンロードできる。なお、平成27年1月1日以降、難病患者が特定医療費の認定申請を行う際、都道府県知事の定める指定医以外の医師が作成した臨床調査個人票(診断書)は認められない。・※「医療費申告書」…かかった医療機関に、医療機関名・治療内容・かかった医療費などを記載してもらう。必ず領収書も添付する。・支給認定申請書…患者の個人情報を自身が記入するもの。・健康保険証の写し・住民票・世帯の所得を確認できる書類※印の書類が、「軽症高額該当」認定のための追加必要書類となります。難病医療費助成制度における指定医制度について医療受給者証の有効期間は原則1年以内です。継続的に治療が必要な場合は、有効期間終了前に必ず更新手続きを行いましょう。せっかく「軽症高額該当」と認められ、医療費の助成を受けられても、更新し忘れた場合、再び新規申請しなければならないので注意しましょう。また、医療費の助成が受けられるのは、「指定医療機関」で受けた指定難病およびそれに付随して発生した傷病の治療に限られます。難病以外の風邪などの病気あるいは怪我などで、他の病院でかかった医療費は助成されません。助成を受けられる場合、自己負担額はどのくらい?「軽症高額該当」と認められ、指定難病医療費助成が受けられるようになると、各指定医療機関で受診した場合の自己負担の割合は2割に抑えることができます。そのうえで、1ヶ月間(月初~月末)の自己負担の累積額が、年齢や所得に応じた自己負担上限額に達する、あるいは超えてしまった場合でも、その月はそれ以上の費用徴収が行われません。自己負担上限月額は、所得によって基準が異なりますので、下表を参照してください。Upload By 発達障害のキホン指定医療機関を受診するごとに「指定難病医療受給者証」を提示し、自己負担上限額管理票に負担した金額を記入してもらうことで、その月ごとの自己負担の累積額を把握・管理することができます。指定難病医療受給者証の更新手続きの際には、「自己負担上限額管理票」が必要になってくるので、忘れずに記入し、必ず手元に取っておきましょう。助成の対象となるもの、ならないもの助成の対象となる医療の範囲は、「指定難病及び当該指定難病に付随して発症する傷病(公的医療保険適用外の費用やサービスは対象外)」となります。助成は、公的医療保険を使用した指定医療機関での入院や外来、および薬代や訪問看護に対して行われます。また、軽症を保っている間も、リハビリや介護が必要な場合もあります。その場合は、介護保険を利用した訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導なども給付の対象となります(指定医の承諾書が必要)。助成の対象とならないケースとして、保険診療外や当該の指定難病に起因しない傷病の診療費および指定医療機関ではない病院、薬局や訪問看護ステーション(訪問看護サービスを提供する地域の事業所)の診療等が挙げられます。例として、・指定医療機関以外での受診でかかった医療費や薬代・医療受給者証に記載されている有効期間外にかかった医療費や薬代・認定されている疾病およびそれに付随して発生する傷病以外の治療(歯の治療など)にかかった医療費や薬代・入院中の食事代(生活保護受給者は対象となる)・入院中の差額ベッド代やシーツ、テレビ、おむつなど、保険適用外の料金・往診料金で医療機関に払う、保険適用外の交通費や手数料など・臨床調査個人票などの証明書発行にかかる料金・めがねやコルセット、車椅子などの治療用補装具にかかる費用・はり、きゅう、あんま、マッサージなどの費用などは対象外となります。その人の病状や自治体によっても若干内容が異なってくるので、必ず保健所や福祉事務所の窓口に相談しましょう。まとめ難病は、治療が極めて困難で、長期にわたるケースがほとんどです。たとえ「軽症」な状態が保たれていても、そのための医療費は高額になります。医療費の助成制度を活用することで、今まで重くのしかかっていた医療費の自己負担が、3割から2割に引下げられる場合もあります。「軽症高額該当」に認定され、指定難病医療費助成を受けることができてもなお、医療費の負担が重い患者さんもいます。そういう人のために、「高額かつ長期」という制度もあります。これは、「一般所得Ⅰ(年収約160万円~約370万円で市町村民税 7.1万円未満)以上の者が、支給認定を受けた指定難病にかかる月ごとの医療費総額について5万円(10割負担の場合。実際に請求される金額が2割負担の場合、1万円という換算)を超える月が年間6回以上ある場合は、月額の医療費の自己負担を軽減する」というものです。適切な治療を受けながら、症状の安定した状態で日常生活を送り、かつ「このまま高額な治療費を払い続けるのか」という精神的負担を減らすためにも、医療費助成制度の仕組みや流れをしっかり理解しておくことはとても大切なことなのです。参考:東京都福祉保健局|軽症高額該当について参考:東京都福祉保健局参考:難病情報センター参考:大日本住友製薬参考:厚生労働省|難病対策参考:一般社団法人全国訪問看護事業協会参考:東京都福祉保健局|高額かつ長期について
2018年12月04日離婚につきものなのが、慰謝料の話題。芸能人の離婚ニュースであれば「慰謝料は●●億円」といった高額慰謝料も注目を集めます。過去には大物歌手が50億円の慰謝料を支払った、なんて話も。そもそもなぜ芸能...
2018年10月17日出産費用の負担を軽減させるための制度、出産育児一時金の直接支払制度というものを利用すると、まとまった出産費用を用意しなくて済むようになります。こちらでは、これから出産をするみなさんが安心をして、出産育児一時金直接支払制度を利用することができるように、手続きの方法や差額分について、利用するメリットなど様々なギモンについて詳しくご説明していきます。出産育児一時金の直接支払制度とは出産育児一時金とは国が定めている制度で、女性が子供を出産する際に、勤め先や夫の健康保険に入っていればその健保から、国民健康保険に加入していれば自治体から出産費用の補助として給付金が支給される制度ものです。出産する子供ひとりにつき一律42万円、加入する健保によってはさらに付加給付金が上乗せされて支給されます。ただし産科医療制度に加入していない病院の場合は減額され、40万4000円の支給となります。そして出産育児一時金の直接支払制度とは、出産時の窓口実費負担を軽減させる制度です。直接支払制度を利用すると窓口での支払いは、出産費用から出産育児一時金の42万円を差し引いた金額が請求されます。 出産育児一時金直接支払制度のメリット出産をする際に出産育児一時金直接支払制度を利用することで得られるメリットには、次のようなことが上げられます。まとまったお金を用意しなくて済む金銭的にも余裕が出て心にもゆとりができる高額になりがちな出産費用ですが、出産育児一時金直接支払制度を利用することで医療機関の窓口で支払う額が軽減されます。まとまった大きな金額を支払わずに済むので、金銭的に余裕ができ、ゆとりのある心で子育てに入ることができます。 支払い額と支給金額に差額が発生したらどうする?出産育児一時金は42万円と定められていますが、実際に掛かる出産費用は出産する病院や検査内容によって大きく変わります。出産育児一時金の42万円を超える方もいれば下回る方もおり、金額の差は医療機関や入院する部屋などにもよりますが、大きな違いは出産する地域の差になります。都道府県別の平均的な出産費用北海道427,536円石川県456,037円岡山県479,016円青森県424,054円福井県453,697円広島県475,611円岩手県450,152円山梨県477,026円山口県426,973円宮城県513,764円長野県492,076円徳島県457,491円秋田県439,574円岐阜県474,691円香川県434,345円山形県486,012円静岡県481,314円愛媛県441,567円福島県461,714円愛知県497,657円福岡県459,253円茨城県496,897円三重県489,252円佐賀県430,352円栃木県525,763円滋賀県471,587円長崎県446,221円群馬県492,802円京都府472,706円熊本県441,449円埼玉県511,750円大阪府492,944円大分県422,215円千葉県492,400円兵庫県492,866円宮崎県420,879円東京都586,146円奈良県479,864円鹿児島県426,711円神奈川県534,153円和歌山県443,955円沖縄県414,548円新潟県486,386円鳥取県399,501円富山県457,650円島根県453,170円全国平均486,376円厚生労働省保健局/出産育児一時金の見直しについて:都道府県別の平均的な出産費用について(平成24年度)pdf上記の表図をみて分かる通り出産費用はの地域差がは大きいものになりますです。出産費用出産費が全国で一番安い鳥取県の出産費平均額は399,501円に対し、出産費が全国で一番高い東京都の出産費平均額は586,146円で約19万円もの差がついています。更に鳥取県と東京都で出産育児一時金を利用した場合を比較すると、鳥取県は約2万円下回り東京都は約17万円上回ります。地域によってこんなにも差があるのです。超えた分は医療機関の窓口で出産費用出産費が出産育児一時金の42万円を超えた場合は、超えた分の金額を医療機関の窓口で支払います。下回った分は後日振込出産費用出産費が出産育児一時金の42万円を下回った場合は、差額が銀行口座へ振り込まれます。加入しているされている健保の制度保健で付加給付金がある場合のほとんどは、差額が振り込まれるタイミングで付加給付金もが上乗せされて振り込まれます。 出産育児一時金直接支払制度の申請方法42万円もの補助金が出ることや窓口で支払わなくて済む制度を利用すると考えると、出産育児一時金直接支払制度の申請は面倒な書類が必要なのではないか……と心配になるかもしれませんが、出産育児一時金の申請や手続きは原則、必要ありません。しかし、被保険者と医療機関の間で直接支払制度利用の契約を結ぶ必要がありますので、医療機関で契約に必要な書類を手渡されます。書類の内容は医療機関によって異なりますが、大きな病院などでは被保険者証(保険証)の提出と書類にサインする程度の簡単な手続きで直接支払制度の契約が完了しますので、ほとんどの医療機関では直接支払制度を利用する為の特別な準備は必要ありませんないでしょう。出産育児一時金直接支払制度を利用しない場合出産育児一時金の直接支払制度を利用しない場合は、出産費用出産費の全額を窓口で支払った後日に出産育児一時金の42万円を受け取る流れになり、ご自分が加入している健康保険保険が定めている書類を提出し手続きを行う必要があります。また、海外で出産をした方も同様の手続きが必要です。直接支払制度の利用出産費用支払い受取利用する42万円以下窓口の支払いなし42万円の差額と付加給付金(制度がある場合)を受け取り42万円以上出産費用から42万円を差し引いた額を窓口で支払い付加給付金(制度がある場合)を受け取り利用しない–出産費用の全額を窓口で支払い42万円に付加給付金(制度がある場合)を上乗せで受け取り 予め確認が必要!負担が大きくなるケース出産育児一時金は日本に住む日本人であれば全員が利用できる制度ですが、一部の医療機関では出産する方の負担が大きくなる場合があります。小さな医療機関などでは直接支払制度を導入していないところがある他、産科医療保障制度というものに加入していない医療機関で出産場合した場合は出産育児一時金が減額になりますので、予め医療機関に確認しておくことが必要です。直接支払制度を導入していない医療機関もし、自分が出産する医療機関が直接支払制度を導入していない場合は受取代理制度という制度を利用する方法もあります。受取代理制度は直接支払制度と類似の制度で、出産育児一時金の受け取りを医療機関に委任する制度です。受取代理制度は直接支払制度に比べ面倒な手続きが必要になりますが、直接支払制度を導入していない医療機関でも出産育児一時金の42万円を差し引いた金額を窓口で支払うことになりますので、まとまった大きな金額を用意せずに済みます。受取代理制度の申請は事前手続きとなります。産科医療補償制度に加入していない医療機関出産育児一時金は42万円と説明しましたが、実は詳しい内訳をみると出産育児一時金は40万4千円と定められています。差額の1万6千円はというと産科医療補償制度の掛金分とされ、合わせた金額が42万円とされています。産科医療補償制度とは出産後に子どもが脳性まひなどの重度の障害を負った際に、家族へ保証金を支払う事を目的とした制度です。補償金の掛け金は出産する方が支払うことと定められていますが、出産育児一時金に産科医療補償制度の掛け金分として1万6千円が含まれています。一部の産科医療補償制度に加入していない医療機関で出産をした場合は、産科医療補償制度の掛金も必要なくなるので出産育児一時金は掛金、1万6千円を差し引いた40万4千円となります。 まとめ出産には高額な費用が掛かるものです。出産育児一時金直接支払制度は面倒な手続きなく利用している方がほとんどですので、予め医療施設に確認をしゆとりのある出産をしましょう。また、出産前にある程度、自分のかかっている医療機関で必要となる出産費用を計算し、出産育児一時金を差し引いた差額を把握しておくと、より気持ちにゆとりが出るでしょう。
2018年09月20日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「高度プロフェッショナル制度」です。6月、8つの法律から成る働き方改革関連法が成立。長時間労働をなくすため、残業時間の上限が原則月45時間、年間360時間に定められました。上限を超えると使用者側に6か月以下の懲役、または30万円以下の罰金が科せられます。また、「同一労働同一賃金」を導入。同じ企業で同じ仕事内容の場合、正規雇用と非正規雇用の待遇格差を是正することになりました。8つの法律の一つが「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」です。年収1075万円以上の専門職は、残業や休日、深夜労働などの割増賃金の支払い対象から外すというもの。証券アナリストや医薬品開発の研究者、経営コンサルタントなどが対象とされています。残業せずに自分の裁量で効率よく働けばいいという制度なのですが、現実問題、自分の仕事が終わったからと、残業せずに帰ることができるでしょうか。上司に新たな仕事を頼まれ、サービス残業を強いられるのではないか。家族が過労死した遺族らはこの法案に反対していました。優秀で責任感の強い真面目な人こそ、過労に至ります。本来、法律はそういう働き手を守るためにあるべきなのに、「高プロ」はそうではないと肩を落としていました。実はこの法案、第1次安倍内閣のころにも「ホワイトカラー・エグゼンプション」という名で推し進められましたが、猛反対にあい、潰されました。安倍内閣が、なんとしてもこの法律を通したかった背景には、アメリカからのリクエストがあります。「日米投資イニシアティブ」という、経済的にパートナーシップをとろうという交渉のなかで、アメリカは日本の雇用環境を、従来の終身雇用型の家族的なあり方ではなく、成果主義ですぐに首を切れる外資系スタイルに変えることを要望。そうして、日本企業でアメリカ人の雇用を増やすことを望んでいるのです。高プロは、労働者側に、拒否する権利を与えています。しかし、有給休暇の申請さえしづらい日本の職場環境で、対象者は拒否できるのか。また、現在は一部の高所得者、専門職のみが適用対象になっていますが、それも将来もっと広げられるのではないかと、危惧する声も上がっています。堀潤ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2018年9月5日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子
2018年09月04日「9月の総裁選では、“安倍首相の3選”が有力視されています。今年4月には、財務省『財政制度等審議会財政制度分科会』で『厚生年金の支給開始年齢を65歳から68歳に引き上げる』という案が議論されました。すでに年金財政はカツカツですが、安倍首相が再選した場合、世論への影響を考えて、支給開始年齢の引き上げは“今年中”には実行しないでしょうね。しかし、こうした年金財政のなか、いつなにが起こるかわかりません。自分が受け取れる年金額は、自分の知識で守っていく必要があるんです」そう話すのは、年金制度に詳しい経済評論家の加谷珪一さん。この支給年齢の引き上げに加えて、政府と財務省がもくろんでいるのは「支給年金の減額」だ。「これは、現役世代から徴収する年金収入や、国庫金からの年金財源としての支出の上限を固定してしまう『マクロ経済スライド』によるもの。収入が固定されてしまうと、当然、それぞれに給付される年金額は大幅に減ってしまうというわけです」年金減額も“待ったなし”の状態――この状況に、50代の主婦は不安を漏らす。「65歳になっても年金が減るなら、60歳になったときに前倒しでもらっちゃったほうがいいんじゃないかしら……?」「前倒しにもデメリットがある」と話すのは、ファイナンシャルプランナーの中村薫さんだ。「前倒し受給というのは、60歳から64歳までの段階で『65歳になった』と仮定されるものです。すると、60歳からの5年間は『国民年金の任意加入』の対象外となってしまうんです。なぜなら、65歳になってしまうと、この『任意加入』の制度は利用することができないからです」中村さんが語る「国民年金の任意加入」とは、納付期間10年間という受給資格を満たしていない場合と、納付期間が40年未満の場合に追加で加入できる制度。60歳以降も保険料の納付済期間を増やすことができ、老齢基礎年金の額が増える。しかし、40代、50代の人でも未納の年金を後納できる制度がある。加谷さんがこう説明する。「通常、納め忘れた場合は2年までさかのぼることができます。さらに、後納制度というものを使えば、申請することで5年まで遡って納付できますが、この制度は今年の9月末で打ち切りとなるんです。未納がある人は急いで後納を検討した方がよいでしょう。具体的には9月28日が期限となります」自分の未納期間などは、年1回、誕生月に郵送されるはがき「ねんきん定期便」、パソコンやスマホで見られる「ねんきんネット」で把握できるようになっている。
2018年08月22日企業従事者は出産時に「育児休業制度」を取得することができます。ある程度の期間を休むことができるということはご存知だと思いますが、どういった内容かはご存知ですか?この記事では育児休業の内容や平成29年に改正された点や、意外と知らない企業側が講じなければいけない細かな点をご紹介します。 育児休業制度とは?企業従事者が出産時に取得することのできる育児休暇制度。正式には「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」と言います。略称は「育児・介護休業法」、「育児・介護休業法のあらまし」です。制度が生まれた背景この制度が生まれた背景には日本の少子化、労働者の減少、地域差焼きの活力の減少があります。就労か結婚・出産・育児のどちらかを選ばなけれならないという状況を改善し、仕事と生活の調和を実現するために作られました。 平成29年の改正育児・介護休業法の概要平成29年10月に育児・介護休業法が一部改定されました。内容は以下のとおりです。育児休業期間の延長以前は1歳6ヶ月までとされていた育児休暇の取得期間が、子どもが受け入れ先保育園が決まらないなどの理由によっては、最長2歳になるまで取得可能になりました。合わせて育児休業給付金の給付期間も2歳までとなります。育児休業等の制度周知社員、従事者またはその配偶者が妊娠、出産を事業主が知った際、育児休業等に関する制度を周知する努力義務が創設されました。育児休暇の導入を促進事業主に対して、当該者の子どもが小学校入学までの間、育児に関する目的に対しての休暇制度を設ける努力義務が創設されました。 育児休業制度対象者この制度の対象は以下になります。・原則として1歳に満たない子を養育する男女労働者・常勤の従事者であること(日々雇い入れられる人は対象外)期間採用の場合は以下に該当すれば育児休業の該当者とみなされます。・同一の事業主に引き続き1年以上雇用されていること・子どもが1歳6ヶ月に達する日までに、労働契約(更新される場合には、更新後の契約)の期間が満了することが明らかでないこと育児休暇に関する労使協定を結んだ場合は協定が優先されます。子の看護休暇子どもが看護が必要な場合も休暇を取ることができます。内容は以下のとおりです。子どもが小学校に入学するまでの間は1年の間に5日(子どもが2人以上の場合は10日)まで看病が必要な場合、予防接種や健康診断を受ける場合には休暇を取得することができます。所定外労働の制限3歳以下の子どもを持つ親に対して所定外労働についても定められています。事業主は、3歳に満たない子どもを養育する労働者が所定以上の労働を請求したとしても、事業が正常に運営できないなどの理由がない場合はその請求を受けてはいけません。時間外労働の制限時間外労働・残業についても以下のように定められています。事業主は、子どもが小学校未入学の子どもを擁する従事者に対しが1ヶ月に24時間、1年で150時間を超える時間外労働を従事者が希望しても、事業が正常に運営できないなどの理由がない場合はその請求を受けてはいけません。深夜業の制限深夜の労働に対しても制限があります。事業主は、子どもが小学校未入学の子どもを擁する従事者を、午後10時から午前5時までの間、事業が正常に運営できないなどの理由がない限り働かせてはいけません。短時間勤務制度労働時間の短縮に関しても定められています。事業主は、3歳に満たない子どもを持つ従事者が希望した場合は仕事と育児の両立が可能になる措置(就業時間の短縮)を取らなければなりません。育児休業等に関するハラスメントの防止措置育児休業が取りやすくなる環境整備について以下のように定められています。事業主は従事者が育児休業を取得しようと意思を表明した際に嫌がらせをされたり、職業環境が害されないように、相談しやすい環境、体制を講じなければなりません。
2018年07月22日■乳幼児医療費助成とは?子どもにかかる医療費を、自治体が助成してくれる制度。各自治体が運営している制度なので、名称や助成内容などはさまざま。詳細は、住民票がある市区町村の役所やHPで確認を!■乳幼児医療費助成もらえる金額は?助成額は、自治体によって違う。たとえば、かかった医療費全額を助成する自治体もあれば一部の場合もあるし、助成の対象年齢も乳幼児に限らず、中学生まで対象にしている自治体も増えている。■乳幼児医療費助成もらえる人は?国民健康保険や会社の健康保険など、健康保険制度に加入し、乳幼児医療費助成の加入手続きをした人。加入の手続きが遅れた場合、さかのぼって助成が受けられるかも自治体によって異なる。■乳幼児医療費助成 手続きの概要①住んでいる市区町村の助成内容・手続き方法を確認する自分が住んでいる市区町村の助成内容や手続きの方法を、役所の窓口や自治体のHPで確認しておく。市区町村の境目に住んでいて、他自治体の医療機関を使う可能性がある人は、「他自治体の医療機関を受診した場合」もチェックしておく。②赤ちゃんの健康保険に加入手続きし、健康保険証を受け取る赤ちゃんが入る健康保険に加入手続きをする。加入の手続きをする際に、「いつごろ健康保険証が届くのか?」の目安を確認しておくと、乳幼児医療費助成の申請タイミングの参考になる。扶養者が国民健康保険の場合は、出生届を出した後で、乳幼児医療費助成の手続きができるのが一般的。③役所で手続き後、乳幼児医療証を受け取る赤ちゃんの健康保険証を持参して役所で助成を受ける手続きをする。健康保険証が届いていない場合でも、手続きできる自治体もある。手続き後、しばらくすると乳幼児医療証が届くので、これを医療機関の窓口に提示することで助成が受けられる。■乳幼児医療費助成 DATA※この記事は2018年4月末現在の法令・情報に基づいて書いています
2018年07月01日■医療費控除とは?1年間に10万円を超える医療費がかかった場合、確定申告をすることで、支払った税金の一部を戻してくれる制度。■医療費控除でもらえる金額は、いくら?戻ってくるお金 = 医療費控除額 − 所得税率たとえば医療費合計額が60万円で所得が320万円の場合なら、確定申告をすることで、税金がおよそ1万6000円程度(※)戻ってくる。※医療費60万円 − 出産育児一時金 − 足切り額10万円= 医療費控除額面8万円医療費控除額面8万円 × 所得税率10% =戻ってくる税金8千円住民税率10%=戻ってくる税金8千円■医療費控除を受けられる人は、どんな人?家族全員で1年間の医療費が10万円(総所得金額等が200万円未満の人は総所得金額等の5%の金額)を超え支払い、確定申告をした人。■医療費控除 手続きの概要●還付申告だけなら1年中受け付けている確定申告というと2月中旬~3月中旬のイメージがあるが、(医療費の)還付申告は、1年中受付している。対象となるのは、申告する前の年1年(1月1日~12月31日)なので、たとえば2017年の分の確定申告(医療費の還付申告)であれば、税務署が混む前に提出すれば、相談窓口も込みあわないので、確定申告初心者にはオススメ。■コラム「保険金等で補てんされる金額」について知っておこう◆医療費控除で間違えやすいのは、「保険金等で補填される金額」。じつは、私も初産の確定申告時に間違えて、税務署の方に指摘され、とても焦った記憶がある。この話を簡単に言えば、「公的制度や民間の保険会社からもらったお金は、医療費から差し引いて計算しなければならない」ということ。「差し引く必要がある費用」と、「差し引く必要のない費用」を下記の表にまとめた。ちなみに私は「出産育児一時金」を差し引くのを知らず、金額が40万円くらい違っていた(激汗)。私のように慌てないよう、ご注意を!●「保険金等で補てんされる金額」差し引く必要があるもの、ないもの■医療費控除 DATA※この記事は2018年4月末現在の法令・情報に基づいて書いています
2018年07月01日■高額療養費とは?高額療養費とは、1ヶ月の医療費が「自己負担限度額」という一定の金額を超えた場合、その超えた分を加入している健康保険が負担してくれる制度。以前は、いったん病院の窓口で医療費の自己負担分(2割や3割など)を支払い、申請したのちに払い戻す制度になっていたが、現在では「健康保険限度額適用認定証」を提示することで、退院時、あるいは精算時に、最終的な自己負担額だけを支払う方法が基本になっている。つまり以前のように、立て替える必要はなくなっているわけだ。■高額療養費の自己負担限度額は?「医療費総額」−「健康保険制度が負担してくれる金額」=「自己負担限度額」自己負担限度額は、標準報酬月額によって違ってくるので、ザックリとした目安を一覧表にした。●自己負担限度額一覧表■高額療養費をもらえる人は、どんな人?1ヶ月の医療費が、自己負担限度額を超えそうな時に、事前に健康保険限度額適用認定証を取得した人。あるいは、高額療養費分を立て替えたのち、加入先の健康保険に支給を申請した人。尚、「1ヶ月」とは1日~月末までのことをいい、月をまたいでかかった場合は「2ヶ月に分けて」計算する。■高額療養費の手続きの概要「事前」と「事後」、2種類の申請方法がある。「事後」だと差額が戻ってくるまでに1~3カ月かかるため、一時的に高額な医療費を支払う必要がある。予定帝王切開の場合など、事前に医療費が高くなる場合は「限度額適用認定証」を交付してもらうのがおすすめ。限度額適用認定証の有効期間は原則1年間だが、国民健康保険では8月に切り替えがおこなわれるため、7月末になる。●事前の場合①限度額適用認定証を交付してもらう②加入先の健康保険に「健康保険限度額適用認定証」を交付してもら③医療機関の窓口に限度額適用認定証を提示すると、自己負担額をのみを病院の窓口で精算すればOK。●事後の場合①高額療養費の申請をする②医療費の2割か3割を支払った後、高額療養費の支給を申請する③約1~3カ月後に、支払った金額から自己負担限度額を差し引いた分が還付される。■高額療養費 DATA※この記事は2018年4月末現在の法令・情報に基づいて書いています
2018年07月01日■未熟児養育医療制度とは?生まれてきた赤ちゃんが未熟児だった場合など、医師が入院療養が必要だと認めた赤ちゃんが、全国の「指定養育医療機関」で治療を受けた場合、その医療費を助成する制度。■未熟児養育医療制度でもらえる金額は、いくら?費用の全部、または一部(地域によっては保護者の所得に応じて一部自己負担金がかかる場合もある)を負担してもらえる。■未熟児養育医療制度をもらえる人は、どんな人?この制度が適用される赤ちゃんは、「出生時の体重が2000g以下の場合」または下記のような場合などだ。●助成の対象となる乳児(例)1、運動不安・けいれんがあるものなど2、体温が34度以下3、呼吸器・循環器系(強度のチアノーゼがあるなど)4、黄疸(生後数時間以内に現れるか、異常に強い黄疸のあるもの)など(エキサイト編集部作成)■未熟児養育医療制度の手続きの概要①医師に養育医療意見書をもらい、書類審査を受ける②出産時以降の状況を見て、医師に養育医療意見書を書いてもらう出生届を出す前に、手続きが開始するのが一般的。未熟児養育医療給付申請書、世帯調査書は自分で書き、自治体によっては扶養者の所得を証明する書類(源泉徴収票のコピーや確定申告書)と一緒に未熟児養育医療の申請をし、書類審査に通ると利用できる。◆コラム:未熟児養育医療制度を利用した私の実感◆「生まれた子が、未熟児だった」というのは、ママにとっては結構ショックな出来事。じつは、私にも経験がある。次男・三男が双子なため、二人とも早産で極小未熟児だったのだ。「ちゃんと産んであげられなくてごめん!」と、出産直後は相当自分を責め、大きな挫折感だった。退院は一緒にできず、双子が入院している病院に搾乳を届ける日々。未熟児は文字通り「未成熟な状態で生まれた児」なので、当初はトラブルも多かった(生後半年で入院6回)。「障害が残る可能性は、通常に生まれた子の10倍」と言われ、生後1年半の間、総合病院で生育の経過をチェックしてもらう「経過観察」にも通った。…と、いろいろあったが、あれから13年。 極小未熟児で生まれた双子は、何の遜色もない普通の中学1年生となった(現在、やや肥満気味ですらある)。「出産当初はショックだったけれど、過ぎてみればそれも懐かしい思い出」という現在の私の実感を伝えておきたい。■未熟児養育医療制度 DATA※この記事は2018年4月末現在の法令・情報に基づいて書いています
2018年07月01日■小児慢性特定疾患の医療費助成とは?子どもの病気の中で、国が指定した疾病の治療にかかる費用などを自治体が支援する制度。■小児慢性特定疾患の医療費助成でもらえる金額は、いくら?国の制度だが、運営は自治体に任されているので、自治体によって助成内容は違う。■小児慢性特定疾患の医療費助成をもらえる人は、どんな人?国が指定した疾病(小児慢性特定疾患)にかかっている18歳未満の子ども。何らかの健康保険に加入していることが条件。18歳をすぎても治療が必要なときは20歳まで延長できる。■小児慢性特定疾患の医療費助成手続きの概要●小児慢性特定疾病指定医にて受診を指定医療機関にて受診を受け、医師より小児慢性疾病の医療意見書を出してもらう。医療費助成の申請に医療意見書を添付し、各自治体に提出する。小児慢性特定疾病審査会で審査後、認定された場合は「小児慢性特定疾病の医療受給者証」が届く。指定機関で「小児慢性特定疾病の医療受給者証」を見せると助成が受けられる。◆コラム:小児慢性特定疾病情報センターのHPチェックを!◆小児慢性特定疾病情報センター小児慢性特定疾病情報センターは、小児慢性特定疾病の情報を一元化し、情報提供する目的で、構築されたポータルサイト。国立研究開発法人 国立成育医療研究センター(厚生労働省「小児慢性特定疾病登録管理データ運用事業」の補助事業)が運営している。≫ 小児慢性特定疾病情報センター ■小児慢性特定疾患の医療費助成 DATA※この記事は2018年4月末現在の法令・情報に基づいて書いています
2018年07月01日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「死刑制度」です。世界は廃止が主流。加害者の人権をどう捉えるか。1989年~‘95年に起きた一連のオウム真理教事件。関連する刑事裁判がすべて終結し、麻原彰晃死刑囚をはじめ、死刑が確定した13人の刑の執行もまもなく行われるといわれています。日本の死刑の歴史は古く、5世紀の仁徳天皇時代からあり、現在の刑法に定められたのは明治40年です。しかし、世界では死刑制度は廃止の方向に進んでいます。1990年時点で、死刑制度のあった国は96か国、廃止国は80か国。2009年には死刑存置国は58か国に減り、廃止国は139か国に増えました。イギリス、フランス、ドイツなど、ベラルーシ以外の欧州諸国や南米諸国は廃止。アフリカでも廃止国が増えており、アメリカで死刑が存置されているのは一部の州のみです。中国も国際社会からの批判を受け、適用を厳格化することにしました。多くの国が死刑制度を廃止にした主な理由は、人権的な問題と、実は死刑が凶悪犯罪の抑止力にはならないと証明されたからです。国連人権理事会は、日本政府にも死刑制度の廃止や一時停止の勧告を行いましたが、政府は世論が求めていないからと、検討する構えを見せていません。平成26年度の内閣府の世論調査によると、80.3%の人が「死刑もやむを得ない」と答えました。「死刑は廃止すべき」が9.7%、「わからない、一概にいえない」が9.9%。「やむを得ない」と答えた人のうち5割以上の人が、その理由を「被害者やその家族の気持ちがおさまらない」「凶悪な犯罪は命をもって償うべき」としています。そして、「死刑を廃止すると、凶悪犯罪が増える」と考える人が57.7%いました。しかし一方で、袴田事件や名張毒ぶどう酒事件といった死刑判決が確定した事件が、再審でのDNA鑑定により冤罪だったことなど、問題も複数起きており見過ごせません。日弁連は、人権擁護の観点から死刑制度廃止を訴え続けていて、再来年、国連犯罪防止刑事司法会議が日本で開催されるまでに、進展を見せたいと考えています。加害者とはいえ、人が人を殺してもよいのか。終身刑ではなく、死刑でなくてはならない理由は何か?みなさんはどう思いますか?堀潤ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。新刊『堀潤の伝える人になろう講座』(朝日新聞出版)が好評発売中。※『anan』2018年5月23日号より。写真・中島慶子題字&イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2018年05月16日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「徴兵制度」です。戦争の形も変わり兵役制度も変化してきています。今年の1月よりスウェーデンは、8年前に廃止していた徴兵制度を復活させました。ロシアの脅威に備えるためです。続いてフランスでも今年、マクロン大統領が、18~21歳の男女を対象に兵役を課すことを発表しました。ロシアへの対抗、テロ対策の強化が主な理由です。また、アメリカのNATO軍への負担が大きいため、トランプ大統領がヨーロッパ各国にも公平に参加してほしいと依頼したことも起因していると思われます。ただ今回のフランスの兵役は1か月なので、軍事訓練というよりは国威発揚を促すことに重きがおかれているのではないでしょうか。日本人は、徴兵制度というと太平洋戦争のときのイメージを持つかもしれませんが、いまは無人攻撃機やサイバー攻撃などが増え、かつての大量の歩兵による肉弾戦とは戦争の形が変わっています。それにともない、兵役の内容も変化してきているんですね。たとえばIT先進国のイスラエルでは、18~19歳から男子が3年、女子は2年の兵役義務があります。軍隊で心身ともに鍛えながら、同時にさまざまな最新のIT技術を学んで身につけます。退役後はそのスキルをいかし、起業するケースが多いんですね。また、マレーシアでも男女が徴兵され、3か月間の共同生活を行います。ただし、軍事訓練というよりは社会奉仕活動がメインなのだそうです。現在、男女ともに兵役のある国はこの2国のほか、ノルウェー、スウェーデンのみ。男性のみ義務がある国は、韓国、北朝鮮、シンガポール、ベトナム、タイ、スイス、ロシアなど。アメリカやイギリス、ドイツ、イタリアなどには徴兵制度がありません。かつてはあったのですが、冷戦が終わったときにほとんどが廃止されたんです。日本に徴兵制度が復活する可能性は低いでしょう。ただ、現在自衛隊が定員割れしています。「予備自衛官補」という、18~34歳の学生や一般社会人が基本訓練を受け、災害時や有事に徴集されるという制度も設けています。現在の自衛隊の人手不足を考えると、災害救助や救急救命のノウハウを学ぶための短期間の徴兵制度なら、あってもよいのではという声もあります。堀 潤ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2018年4月11日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2018年04月06日2015年4月、「子ども・子育て支援新制度」がスタートしました。そのうちのひとつ「病児保育」は、子どもの急病で出社できないというワーママに役立つ制度として注目されていますが、2016年、少し遅れてスタートした「お迎え制度」をご存知でしょうか?今回は、全国病児保育協議会会長・大川洋二(ひろじ)さんが解説してくれました。「お迎え制度」ってどんな制度?「子どもが急病でお迎えに行かなきゃ…」。子育てと仕事を両立するママなら、多くの人が経験したことがあると思います。しかし「お迎え制度」を活用すれば、その心配はなくなるそう。「これまでは、保育園や幼稚園、認定こども園などの施設に預けていた子どもが急に体調が悪くなったとき、お母さんに連絡して迎えに来てもらうのが一般的でした。しかしこの制度は、病児保育を行う施設のスタッフなどが代わりに迎えに行き、かかりつけ医で診察してもらってから預かるというもので、お母さんやお父さんが仕事中に早退しなくてもよくなったのです」(大川さん、以下同)子どもの急病による早退問題は、働くママにとって、重要なこと。この制度はそんな人たちにとって、大きなメリットとなるのです。デメリットも認識しよう!一方で、この制度にはまだ危ない面もあるのだとか。大川さんは、デメリットとして2つのことを挙げます。「まずひとつ目は、『子どもの精神的不安』です。知らない人に知らない場所へ連れていかれるというのは、子どもにとっては、大きな心理的負担。子どもにとってもなじみのある施設、せめて一度は使ったことがある施設にするなどの配慮が必要です」そしてもうひとつは、「重症化したときの対処」。「体調が悪くなるといっても、軽度のものから重症化の恐れがあるものまで様々あります。施設のスタッフが園にお迎えに行って、かかりつけ医に診察してもらったとき、もしも『すぐに入院する必要がある』と言われたらどうしますか?家族ではないスタッフに、勝手な判断はできませんよね。そのため、あらかじめ保護者と綿密な話し合いをして、緊急時にどうするかを決め、同意を取っておく必要があります」さらに、大川さんは、「『お迎え制度』を含む病児保育は、母親の就労支援の面ばかりがクローズアップされますが、本来は子どものための制度」とも。ママにとっては、子どもの急病が原因での急な早退や欠席を避けられるメリットはありますが、「早退しなくてよくなった」だけではなく、子どものことを考え、もっと慎重に利用すべき制度なのかもしれません。(文・明日陽樹/考務店)
2018年02月26日4月から「診療報酬」が改定され、病院の窓口で支払う医療費が変わる。医療報酬とは、診察や検査、薬などの料金や、それに伴う手数料などを決めているもので、2年に1度見直される。 今回の改定のうち、家庭に影響が大きそうなポイントは、おもに2つ。1つ目は、「初診は大病院ではなく『かかりつけ医』で受ける」体制を、さらに推進している点。2つ目は、「看護・介護から看取りまでを在宅で行う」よう推進する見直しだ。 4月からの「診療報酬」改定を踏まえ、医療費をどう節約したらいいのかを荻原さんが教えてくれた。 【1】信頼できる「かかりつけ医」を見つける 「『有名な病院のほうが安心』などと、安易に大病院を受診すると、初診料の5,000円加算と合わせ、窓口で1万円近く請求されることもあります。重篤な病気が疑われる場合も、まず『かかりつけ医』に相談し、専門病院を紹介してもらいましょう。また、経済的にも体にも負担が重い“はしご受診”は避けましょう」 【2】薬は病院に近いほど安い 「薬そのものの値段は、どこでもらっても同じ。しかし、薬をそろえるなど施設を維持するための『調剤技術料』は、薬局により異なります。今回はこれも見直され、病院の敷地内にある“門内薬局”は院内処方と同程度の100円に、病院近くにある大手チェーンの“門前薬局”は150円に引き下げられました」 【3】薬の多い人は、薬剤師に相談して減薬してもらう 「複数の病院にかかり6種類以上の薬を飲む方は、薬剤師に減薬の相談をしてみましょう。2種類以上減薬できると『服用薬剤調整支援料』が加算されますが、薬が減る分、節約効果は長く続くはずです」 【4】病院受診は時間内に 「休日や夜間の診察は割高です。初診の場合、休日だと2,500円、深夜だと4,800円が加算されます。支払いは、3割負担の方なら休日750円、深夜1,440円の加算ですが、そもそも時間内に受診すれば払わなくてすむお金です」 【5】高額療養費制度を利用する 「高額療養費の利用を勧めてくれる病院も増えていますが、すべてというわけではありません。払戻し制度があることを覚えておきましょう」 高齢者がいる家庭では、訪問診療も行う「かかりつけ医」を持つと安心。また、看取りまで担う介護福祉施設の情報も集めておこう。
2018年02月23日2015年4月、子育て世帯やママを取り巻く環境は、大きく変わりました。それは、「子ども・子育て支援新制度」が始まったから。この「子ども・子育て支援新制度」には、保育園や幼稚園を利用するための認定について、子どもにかかるお金のことなど、様々なことが定められていますが、「病児保育」も注目したい項目のひとつ。そんな「病児保育」について、「病児保育の施設には3つある」、そう話すのは、全国病児保育協議会会長・大川洋二(ひろじ)さん。「病児保育」を行う3つの施設って?先ほど、大川さんが言っていた「3つの施設」。これらについて、解説してくれました。「ひとつ目は、病院やクリニックに併設されている『医療機関併設型』。2つ目は、幼稚園や保育園などに併設された『保育園併設型』。そして3つ目は、『単独型』というものです」(大川さん、以下同)では、それぞれの施設はどのような特徴があるのでしょうか?「『医療機関併設型』は、おもに病気は治っていないけど、悪化する可能性の低い子どもを預かる『病児保育』を担当していて、『保育園併設型』は、病気は治っているけど、円や学校には行けない子どもを預かる『病児後保育』を担当しています。というのも、いずれの場合も子どもの容体は安定しているとはいえ、悪化する可能性はゼロではありません。そのため、『病児保育』は医師が常駐している『医療機関併設型』で担当することが多いのです」「医療機関併設型」、「保育園併設型」の違いはわかりましたが、もうひとつの「単独型」は?「『単独型』はNPO法人などが運営している施設です。地域のドクターがチームを組んで、今日は○○病院、明日は××病院といったように、当番制で担当しています」これらの施設には課題もこのように、病児を受け入れてくれる施設はありますが、「まだ課題もある」と大川さんは続けます。「『子ども・子育て支援新制度』が施行された2015年以前から『病児保育』の取り組みはありました。当時は、病児2人に対し、保育士・看護師がひとり付くことになっていましたが、現在は、人員不足の観点から、保育士・看護師ひとり当たり3人になったのです。しかし、これでは病児へのケアが不十分になるとの懸念もあります」また、定員が少なく、現状は預けたくても預けられない状況もあるそうで、その点も解決すべき課題だと大川さん。共働き世帯や働くママが増え、病児保育の需要が高まっている昨今。子ども・子育て支援新制度が充実するには、まだ時間がかかりそうです。(文・明日陽樹/考務店)
2018年02月23日年末調整・確定申告の時期になると気になるのが、控除による節税方法や関連するお得な制度です。住宅関連の中では「住宅ローン控除」がよく知られた制度ですが、ほかにも意外と知られていないお得な制度や控除があるようです。住宅購入やリフォームを検討している人は、対象となる制度や条件などをチェックしてみましょう。(1)中古住宅の購入でも利用できる「住宅ローン控除」住宅関連の制度でも多くの人が利用している「住宅ローン控除」は、住宅ローンを借入れて住宅を取得する場合に、取得者の金利負担の軽減を図るための制度です。一定の要件を満たした場合、年末の住宅ローン残高または住宅の取得対価のうちいずれか少ない方の金額の1%が10年間に渡り所得税の額から控除され、10年間で最大400万円(長期優良住宅の場合は最大500万円)が控除されます。所得税から控除しきれない場合は住民税から一部控除されます。また、中古住宅の場合でも新築の場合の要件に加え、耐久年数もしくは耐震基準といった中古特有の条件をクリアすれば、10年間で最大200万円(長期優良住宅などの場合は最大300万円)の控除を受けることができます。(2)夫婦共働きなら住宅ローン控除が夫婦で受けられる「ペアローン」「ペアローン」は共働き夫婦がそれぞれの名義で住宅ローンを組む場合に、二人とも住宅ローン控除を受けることのできるローン制度で、互いに相手の連帯保証人となります。住宅ローン控除が一人ずつ受けられることは大きなメリットですが、それぞれローンを組むため、契約時などの事務手数料は2倍かかってしまいます。また、夫婦の一方が仕事を辞めるなどした場合には、返済自体が厳しくなる可能性もあるため計画的に組みたいところです。(3)目安年収510万円以下の人が対象の「すまい給付金」「すまい給付金」は、消費税率引上げによる住宅取得者の負担を緩和するために創設した制度です。取得する住宅の床面積が50平米以上などの条件をクリアした場合、消費税率8%の2017年12月現在だと、収入額510万円以下の人を対象に最大30万円(消費税率が10%になった場合は収入額が775万円以下の人を対象に最大30万円)が給付されます。収入額によって給付される額は異なり、例えば、消費税率8%の場合、収入額425万円以下だと最大の30万円、425万円超え475万円以下だと20万円、475万円超え510万円以下だと10万円が給付されます。※収入額はあくまで目安のため、給与所得者のいわゆる「額面収入」ではなく、市区町村が発行する課税証明書に記載される都道府県民税の所得割額に基づき決定されます。(4)工事費用の10%の控除を受けられる「住宅特定改修特別税額控除」「住宅特定改修特別税額控除」は、一定の省エネ改修工事、バリアフリー改修工事または三世代同居対応改修工事を行った場合に、標準的な工事費用の額の10%相当額が、その年分の所得税額から控除されるというものです。それぞれ工事限度額(それに応じた控除限度額)が設定されており、対象となる工事も指定されています。また、バリアフリー改修工事では申請できる特定の個人の条件も設定されています。(5)断熱改修やエコキュートの導入には「住宅省エネリノベーション促進事業費補助金」「住宅省エネリノベーション促進事業費補助金」とは、住宅の省エネ化を図るリノベーションを促進するために、省エネ性能が高い高性能建材(ガラス、窓、断熱材)を用いた断熱改修などを支援する国の制度によって交付される補助金です。省エネ性能が高い高性能建材では、一戸あたり補助対象費用の1/3以内もしくは150万円のいずれが低い金額、戸建て住宅での家庭用蓄電などの蓄電システムでは、定額5万円/kWhもしくは補助対象費用の1/3または50万円のいずれか低い金額、エコキュートなどの高効率給湯機の導入では、補助対象費用の1/3以内もしくは15万円のいずれが低い金額が補助金額の上限となります。ここまで、住宅関連のお得な制度と控除を紹介してきましたが、知っていると知らないとでは、支払わなければならない金額がだいぶ変わってくるようです。事前に情報を確認し、賢い住宅購入・リフォームを実現しましょう。
2017年12月27日こんにちは、ファイナンシャル・プランナーでライターのyossyです。2016年、”みまもり家族制度”事業を行う大手だった公益財団法人日本ライフ協会が公益認定取り消し・破綻という事態に陥り、利用者や利用検討者に衝撃が走りました。しかし、なぜみまもり家族制度のような事業が必要とされるのでしょうか。また、今後どのように活用していけばいいのでしょうか?●独り身高齢者の身元保証サービスいわゆる”みまもり家族”制度などの身元保証サービスというのは、主に下記のようなことを請け負ってくれる事業のことを指すことが多いです。日本ライフ協会以外にも、近しい事業を実施している企業・団体がたくさんあります。・賃貸住宅の更新や転居、入院、福祉施設への入所等に際して必要な身元保証の代行・困ったときに頼れる窓口・万が一の場合の対応や葬儀に関する手続きの代行高齢者向けの見守りサービスは、さまざまな企業・団体が実施していますが、身元引受人や葬儀・死後の手続きの代行までやっている部分に特徴があるといえるでしょう。はじめに100万円前後の費用が発生するケースも 少なくありません。親族・配偶者に先立たれてしまい、身元保証人がいない高齢者は多くいます。総務省によれば、平成28年時点で総人口に占める高齢者(65歳以上)の割合は27.3%。今後ますます高齢化が進み、「何かあったらどうしよう」と不安を抱える人が増えてくるでしょう。そういった不安を解消してくれるうれしいサービスなんですね。●成年後見制度とは成年後見制度というのは、自分自身が判断力を失ってしまったときのために後見人を立てられる制度 です。判断力がある人向けの”任意後見制度”と、すでに判断力が失われてきている人向けの”法定後見制度”があります。勘違いしやすいですが、後見人は、正常な判断ができなくなった本人に代わって契約行為などを行う人なので、身元引受人とは異なります。しかし、やむを得ない事情があれば、後見人がいることで入院等が認められるケースもあるようです。正常な判断ができなくなる前に、まずこちらの検討をしておきたいところですね。●信頼できる団体・企業、必要なサービスを「不安だから」という理由で急いで契約をしてしまうケースも多いようですが、初期投資額が高額なことも多いため、落ち着いて冷静に選びましょう。・賃貸住宅の保証のみ行うサービスを利用する・緊急時の駆け付けのみ行うサービスを利用する・万が一のときのために死後事務委任契約をしておくといった方法もあります。検討の結果、総合的にサービスを受けた方がいいと判断すれば、身元保証サービスを利用するといいでしょう。高齢者に必要とされる身元保証サービス。非常にうれしいサービスですが、慎重に比較検討したいですね。【参考リンク】・総務省|統計からみた我が国の高齢者(65歳以上)(PDF)●ライター/yossy●モデル/貴子
2017年11月16日太陽光発電の売電に関する制度は、現在では2012年から施行されている「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」に一本化されています。しかし、2009~2012年には「全量買取制度」と「余剰電力買取制度」の2つの制度が存在していました。この記事では、そのうち「全量買取制度(全量売電制度)」について詳しくご紹介します。現行の「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」と照らし合わせながら、ぜひご参考になさってください。全量売電制度とはどんな制度?全量売電制度とは、太陽光発電設備で発電した電力の全量を電力会社に売電できる制度を指します。現在は再生可能エネルギーの固定価格買取制度へ移行していますが、移行以前からこの制度のもとで売電を行っていた方は、新制度移行後も従来と変わらない条件下で売電を行うことができます。全量買取制度と並んで、もっと規模の小さな発電設備を対象とした「余剰電力買取制度」があります。こちらは総出力10kW未満の設備を対象としており、主に一般家庭で自家用として使われる太陽光発電設備に適用されます。基本的には発電すればそのまま家庭用の電力として消費できますが、発電した全量を使うことなく余った電力(余剰電力)については、電力会社が決まった価格で買い取ることを国が約束する制度です。全量買取制度は主に事業者向け、余剰電力買取制度は主に一般家庭向けに設けられている制度と考えると分かりやすいでしょう。なお、これら2つの制度は2012年に「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」に改められていますが、その内容は「余剰買取制度」と「全量買取制度」に二分されており、発電システムの最大出力10kWを境界に、それを満たさなければ余剰買取の対象となります。それ以上の出力なら全量買取と余剰買取のいずれかを選択可能としているため、2012年の制度変更以前と大きな差異はないと考えてよいでしょう。全量売電制度の対象は?全量買取制度は、比較的規模の大きな発電設備(具体的には総出力10kW以上)を対象とし、発電事業などを目的として設備を運用する場合が対象です。ちなみに、全量買取の対象となる発電設備を「産業用」、余剰買取の対象となる設備を「家庭用」と呼び分けることが多くなっています。なお、広い敷地に多くのソーラーパネルを設置できる一般住宅などでは、総出力がわずかに10kWを超えるようなケースもあり得ます。そのため、総出力10kW以上の発電設備に関しては全量買取とするか、余剰買取とするかを利用者が選択できる仕組みになっています。ただし、多くの一般住宅においては屋根上などにソーラーパネルを設置するケースが用いられるため、その総出力は概ね3~4kWが標準値といわれます。ゆえに、一般のご家庭で太陽光発電設備による売電をする場合は、余剰買取の対象になる場合がほとんどといってよいでしょう。太陽光発電の費用を無料で比較固定買取期間とは?再生可能エネルギーの固定価格買取制度においては、規定の価格で電力買取を行う期限にあたる「固定買取期間」が規定されています。電力の買い取りを固定価格によって制度化した背景には「発電設備のさらなる普及」という目的がありますから、一定期間に得られる売電収入の固定化によって発電設備の導入コストを実質的に低減できる仕組みになっているのです。固定買取期間の長さには全量買取と余剰買取で差があり、全量買取の場合は20年間、余剰買取の場合は10年間と定められています。「20年固定価格で売電できるのなら、少し設備に費用をかけても全量買取にした方が得なのでは?」と考えてしまいますが、そもそも売電価格が異なります。2017年度の場合、余剰買取の売電価格は1kwhあたり28円~30円、全量買取の場合は1kwhあたり21円です。また、余剰買取の場合は発電設備の導入時に自治体などから補助金を受けられる場合がありますが、全量買取とした場合には補助金制度そのものがありません。それに、そもそも総出力が大きくなる発電設備を設置するには多くのコストがかかってしまいます。それらの兼ね合いを考慮し、現在の制度下で一般家庭においては余剰買取とするケースが大半となっています。また家庭用の太陽光発電設備の設置コストを考えても、10年の期間があれば売電である程度回収することができると考えられています。固定買取期間の経過後は電力会社と任意で売電契約をするか、あるいは売電を一切取りやめて自家消費用の発電のみに切り替えるかということになるでしょう。現状の予測としては、電力会社が自前で発電するコストよりは各家庭から電力を買い取る方が省コストになると考えられているため、当分は売電を継続できる可能性が高いといわれています。これらを踏まえ、今のところは「一般家庭では余剰買取」「発電事業をする業者などでは全量買取」とするケースが主体であると考えてよいでしょう。まとめこちらの記事では、太陽光発電の全量売電制度(全量買取制度)の詳細や、余剰買取制度との違いなどについてご紹介しました。設置する発電設備の総出力が10kwを超えると、全量買取か余剰買取のいずれかを選択することになります。一般家庭の場合は10kW以上の発電設備を設けるケースは稀ですが、もし大規模な太陽光発電設備を導入したいとお考えであれば、全量買取とするか余剰買取とするかは計画段階で決めておいた方がよいでしょう。太陽光発電の費用を無料で比較
2017年10月31日ご自宅に太陽光発電設備の設置を考えている方なら「余剰電力買取制度」について聞いたことがあるかもしれません。実際に設備業者へ相談したご家庭などの場合、1度は説明を受けた経験があるのではないでしょうか。そこでこの記事では、一般家庭用の太陽光発電設備における「余剰電力買取制度」に関して、詳しくご紹介します。余剰電力買取制度ってどんな制度?一般家庭などで総出力が10kWに満たない太陽光発電設備を設置した場合に、ご家庭で消費する分の電力を発電した電力が上回った際には、その余剰分の電力を電力会社によって買い取ってもらえることが2009年から制度化されています。これを「余剰電力買取制度」と呼びます。家で使った電力の余り分を売ることができるという制度の仕組み上、ご自宅で消費する電力量が少なくなればなるほど売電できる電力量が増え、収入につなげられます。このため、太陽光発電による再生可能エネルギーを利用していてもご家庭での電力消費量を抑えたり、できるだけ節約したりしようというモチベーションの向上を図ることができるともいえます。この「余剰電力買取制度」そのものは2012年に終了し、それに代わり「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」が新たに設けられ、今に至っています。ただし、一般家庭で太陽光発電を行う場合においては、特に各制度における差異を意識する機会はあまりないといってよいでしょう。【全量買取とは?】ちなみに、余剰電力買取制度が施行されていた時期、同時に「全量買取」という電力買取の方式が存在していました。こちらは、太陽光発電によって発電される電力を自分達で消費せず、すべて電力会社に売却する方式です。しかし、この方式を適用できるのは総出力が10kW以上となる太陽光発電設備を設置した場合に限られます。したがって、主に事業者や団体などが設置する大規模な発電設備にしか事実上は適用されないと考えられます。この全量買取と余剰電力買取制度を一本化し、現在施行されている「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」となったことが分かります。再生可能エネルギーの固定価格買取制度においても、総出力10kWを境にそれ以上の場合は発電電力の全量を買い取り、それ未満の場合は余剰電力を買い取る仕組みになっています。余剰電力買取制度の対象は?旧制度である「余剰電力買取制度」の対象に該当する太陽光発電システムは、総出力10kW未満のものと定められていました。現行の「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」においても、総出力10kWに満たない小型の太陽光発電システムについては自家消費したうえで余った分の電力を買い取る方式によって売電を行っています。国内の一般的な一戸建て住宅で設置可能なソーラーパネルの総出力は、かなり広い面積の住宅であると考え多く見積もったとしても、概ね5kW程度までであるといわれています。また、余った電力を売電するために一般家庭向けの小規模な太陽光発電設備を設ける場合は、自治体によっては補助金を受けることができるケースがあります。しかし事業目的で発電を行うなど、発電した電力の全量を売電する目的で太陽光発電設備を設ける場合は、補助金を受けることができません。一般家庭で太陽光発電設備を設置するにはかなり高額な費用がかかるものです。補助金一切なしで、10kW以上の総出力をもつ大規模な発電システムを作ることは現実的ではないでしょう。したがって、ご家庭で太陽光発電を始めるならやはり、総出力10kW未満のソーラーパネルで余剰電力を買い取ってもらう方式をとることが一般的といえるでしょう。太陽光発電の費用を無料で比較固定買取期間はいつまで?経過した後はどうなる?2009年から施行された「余剰電力買取制度」は、2012年からは「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」に移行し、現在に至っています。なお、再生可能エネルギーの固定価格買取制度には、一般家庭や事業者などが民間の太陽光発電システムで発電した電力について、電力会社が決まった価格で買い取ることを国が約束してくれる「固定買取期間」が存在します。一般家庭で設置されることの多い、総出力10kW未満の太陽光発電設備の場合の固定買取期間は「10年間」とされています。2017年度(2018年3月末まで)に新たに太陽光発電設備を設置したケースを例にとると、総出力10kW未満の太陽光発電設備で余剰電力を売電する場合、1kwhあたり28円(出力規制ありの場合は30円)の売電価格となっています。この価格のまま、固定買取期間中である10年後までは余剰電力を買い取ってもらえるというわけです。なお、2018年4月以降は売電価格も1kwhあたり26円(出力規制ありの場合は28円)に下がることがほぼ決まっています。これから太陽光発電設備を設置して1kwhあたり28円(30円)で向こう10年間は売電を行いたいなら、早めに計画を進めて2018年3月末までに電力会社と売電契約を済ませるようにしましょう。まとめこちらの記事では、「太陽光発電における余剰電力買取制度」についてご紹介しました。余剰電力買取制度は、現在は「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」となっていますが、旧制度の施行期間中に売電契約をしたご家庭や事業者は旧制度に基づく条件で引き続き売電を行うことができます。しかし、これから新規で設置した場合には現行の制度に基づいて売電を行うことになります。電力買取の価格は年度ごとに変動し、近年は家庭用太陽光発電設備の普及に伴い毎年2円ずつほど下がる傾向にあります。これから新規で太陽光発電設備を設置してより高い価格で売電するには、何より早めの準備が肝心といえるでしょう。太陽光発電の費用を無料で比較
2017年10月30日「市役所の人たちがしきりに成年後見制度の利用を勧めるので、利用してみたらとんでもないことになりました。わが家のお金なのに、人さまに頭を下げないとビタ一文、使えなくなってしまったのです。制度を利用したメリットは何もない。悪いことばかり。こんな制度と知っていれば絶対に利用しませんでした」 東京都の三多摩地区に住む山村洋子さん(70代・仮名)は怒りに声を震わせた――。 いま成年後見制度を巡るトラブルが全国で多発していることは、あまり知られていない。成年後見制度は、介護保険と同じく’00年から始まった。認知症の高齢者や知的障がい者など、判断能力が十分でない人の財産を守るために設けられた制度である。本人や家族からの申し立てを受けて、家庭裁判所が選任した後見人が、認知症の人などを保護・支援するものだ。発足した当初、後見人の約9割は、子どもなどの親族がなっていた。 ところが制度発足から17年を経た現在、弁護士や司法書士など、親族以外が後見人になるケースが全体の7割以上に上っている。じつはこうした親族以外が後見人に選任されることで、逆に多くの認知症の高齢者と、その家族が苦しんでいる現実が生じているのだ。トラブルが表面化しないのは、家裁(国家)と法律家(弁護士、司法書士ら)が相手なので、ほとんどの市民が“泣き寝入り”しているからにすぎない。 冒頭に紹介した山村洋子さんも、夫の後見人弁護士が実質的に何もせずに報酬だけ持っていくことに強い理不尽さを感じている。洋子さんにとって、成年後見制度は「夫婦の財産に家裁が穴をあけて、弁護士や司法書士にお金を流し込む制度」にしか見えないという。 洋子さんは昨年暮れ、自治体側の熱心な勧めで後見制度の利用を決めた。洋子さんと夫(80代)は夫婦共有名義の一戸建てで長年暮らしたが、昨年7月、夫は認知症が原因で特別養護老人ホーム入所。夫と一緒に暮らすことを望む洋子さんは「自宅を売却して、その資金で夫と一緒に入れる老人ホームを探そう」と思い、市役所主催の無料法律相談会に2度出席したところ、行政書士と弁護士から「認知症があるなら後見人をつけるしかない」と言われた。 「後見制度を利用しないですむ方法や、制度のデメリットについての説明は一切ありませんでした。弁護士が“自分で後見申立ての書類が書けないなら、手数料30万円で弁護士が代行する”と言ったので、金額の高さにビックリして相談室を出ました」 そこに、待ち構えていたかのように社会福祉協議会(社協)の女性職員が「お手伝いしましょうか」と近づいてきたという。職員は「弁護士に頼まなくても申立て書類は自分で書けます。ご主人の後見人にはあなたがなれますよ」とキッパリ言った。その言葉を信じた洋子さんは、職員に言われるままに書類に自分の氏名と住所を書き、そのほかの項目はすべて職員が記入。 後日、申立書は家裁に提出され、洋子さんは「これで私が後見人になって夫の世話をできる」と安心して家裁の審判を待った。ところが今年3月、家裁から洋子さんに届いた通知書には、洋子さんが名前も知らない弁護士を後見人に選任したと書かれていたというのだ。 それ以来、洋子さんの生活は一変した。まず、夫名義の通帳や銀行カードなどは、すべて弁護士に提出して、弁護士が管理。夫の預金からお金を引き出したいときは、いちいち弁護士に相談して許可を得なければならなくなった。 「それまでは、私のわずかな年金と夫の年金を合算して家計を切り盛りしていたので、夫の年金を取り上げられて生活は一気に苦しくなりました。弁護士は“今後、私の許可なしにご主人の財産は1円たりとも使えない”という態度。夫の財産を減らさないことしか、弁護士の頭にはなく、毎月10万円しか渡してくれない。赤の他人に土足で家を踏み荒らされたようで、怒りのあまり、頭がおかしくなりそうです」 洋子さんは「家の売却はやめるので後見人を辞めてほしい」と頼んだが、弁護士は聞く耳を持たないという。後見制度では、後見人は自分が辞めるか、家裁から解任されない限り、続けられるのだ。とくに弁護士が後見人の場合は、被後見人(認知症などで後見人がみつけられた人)の財産を横領しない限り、事実上、解任されることはない。要は、いったん弁護士が後見人につくと。被後見人が亡くなるまで自分の財産から毎月報酬を支払う仕組みなのだ。 こうした後見人への報酬は被後見人の資産の額に応じて決められる。東京家裁立川支部が’13年1月にホームページ上に公表した、弁護士など第三者への“報酬の目安”によると、資産が1,000万円を超えれば、年間で40~50万円、5,000万円以上だと70万円程度で、これが毎年の基本報酬。これ以外に、弁護士らが被後見人の家を売却したら約100万円の報酬を払うなど、各種ボーナスも発生する。 東京大学医学系研究科元特任助教で、成年後見制度に詳しい宮内康二・一般社団法人「後見の杜」代表はこう語る。 「全国的に、おひとりさま高齢者や高齢者夫婦の2人暮らし世帯に、行政や司法が後見を勧める傾向が見られます。行政は孤独死や空き家問題への対策が面倒なので、高齢者を後見人に任せたいのかもしれません。しかし、後見人への報酬などの不都合を事前に説明しないのでは、トラブルが起きるのは当然です」
2017年08月11日