ICT教育とは、簡単に言うと「デジタル機器(タブレットやパソコン)を使った教育」のことを指しますが、そのメリットや注意点を正しく理解しているでしょうか。ICT教育は、国もその重要性を認識し、ガイドラインが策定されています。そのため、今後多くの学校でICT教育が取り入れられると予想されているのです。この記事では、ICT教育の代表的なメリットや、ICT教育を受ける際に注意しておきたいことも紹介していますので、ぜひ参考にしてください。そもそもICT教育とは?そもそもICT教育とは、インターネット、パソコンやタブレットを利用した教育のことです。「ICT」は、「Information and Communication Technology」の頭文字をとった言葉で、「情報通信技術」という意味で、現在非常に注目されています。ICT教育では生徒1人ひとりに端末を配布し、紙ではなくデジタルを媒体とした授業を行います。事前に作成したデータや動画を用いて授業を行うため、紙を使った授業ではできなかった五感を刺激する授業が可能です。特に、紙では伝えづらかった英会話や図形問題では、理解を深めるのに役立つでしょう。今後は情報通信技術が益々重要になっていくことが考えられているので、総務省や文部科学省もガイドラインを策定するほど重要でありと認識されています。しかし、現在はすべての学校でICT教育を受けられるわけではありません。子どもにICT教育を受けさせたいのであれば、ICT教育を導入している学校を探す必要があります。ICT教育のメリットとは?ICT教育のメリットには、代表的なものに以下の3つがあります。授業が分かりやすくなる効率的に授業の準備ができるデジタル機器が身近な存在になるひとつずつ解説していきます。●授業が分かりやすくなるICT教育を導入することにより、インターネット環境や映像を使うことで授業が理解しやすくなります。具体的な例を挙げると英会話がイメージしやすいのではないでしょうか。英語の授業は、英語が話せない日本人教師が教えています。そのため、ネイティブな発音による授業が難しく、文法ばかりの授業で英会話が身につきにくい環境です。しかし、ICT教育を取り入れることで、インターネットを通じてネイティブに話せる講師が授業を受け持てるため、子ども達は日頃からネイティブな英語に慣れ親しめます。幼いころからこの環境が整っていれば英会話が身近なものになり、今以上に実用的な英語力が身につくことに期待ができるのです。他にも、アニメーションを使った授業を行えば、図形を立体的に認識する手伝いができたり、歴史に興味を持ちやすくなったりすることに期待できます。また、端末を使った授業なので、何度も同じ授業を見直せるため、自習がしやすくなり理解度の向上にも役立つでしょう。ICT教育を取り入れれば、再生するだけで教師の授業を何度でも受けられます。興味が持ちやすく分かりやすい授業を受けることが可能なので、子ども達の理解度を高められる可能性があるのです。●効率的に授業の準備ができるこちらは教員側のメリットになりますが、ICT教育を取り入れることで効率的に授業の準備ができるため、教師の負担を軽減することができます。というのも、紙が媒体の授業を行う場合はプリントを作ったり、1人ひとりのテストの採点を教師が行ったりする必要がありました。授業の準備やテストの採点は教師への負担が大きく、退職する理由のひとつでもあったのです。しかし、ICT教育ならデジタル機器を使った授業になるので、授業の準備はデータの必要な箇所の修正や追加で済みます。小テストのような頻繁なテストもデジタル化することで、準備が簡単になるだけではなく、採点の時間を大幅に削られるようにもなるでしょう。その結果、ICT教育は残業や休日での仕事を減らせるので、教師の負担を大きく軽減させることができます。●デジタル機器が身近な存在になる日本に限らず、世界的にパソコンやスマートフォンなどのデジタル機器が身近な存在になりつつあります。一昔前まで、パソコンやスマートフォンを持っている人は多くありませんでしたが、現在は仕事や大学でも使用する場面が増えたため、デジタル機器を取り扱えるスキルが必須になってきています。このような流れからも、パソコンやスマートフォンが使えなくては、社会に出てから戦力になりづらくなってきています。そのため、これからの子ども達は今までの授業と同時に、デジタル機器の取り扱いについても理解することが必要と言えるのです。ICT教育を導入することで幼いころからデジタル機器の扱いに慣れさせることができるため、デジタル機器の導入による授業の効率化に加え取り扱いも学ぶことができるため一石二鳥です。さらに、デジタル機器は非常に高価なので、家庭の収入差によるデジタル機器を取り扱う機会に差がありましたが、ICT教育を受けることによりすべての子ども達が平等にデジタル機器を身近な存在にできるようになるのもメリットの一つです。仕事の自動化やビッグデータの取り扱いなど、今後益々デジタル機器を使った仕事が増えていくことが考えられており、ICT教育はそんな状況になっても対応できるような教育が期待できるのです。ICT教育の注意点生徒の理解度を深めたり教師の負担を軽減させたりと、ICT教育には大きなメリットがあります。しかし、ICT教育は大きなメリットと同時に、注意したほうが良いこともあるのです。ICT教育で注意しておきたいことは、主に以下の3つです。時代とともにトレンドが変化するVDT症候群になる可能性がある想像力が低下する可能性もある子どもにICT教育を受けさせたいのならば、情報収集してよく注意しておきましょう。●時代とともにトレンドが変化するデジタル機器や情報通信技術というものは、進化が非常に早いです。つい最近出たデジタル機器や技術でも、数年後には古くて誰も使わなくなっている可能性があります。せっかく学校で習得したことや慣れた端末がトレンドではなくなり、将来役に立たない知識や技術になるかもしれません。そのため、ICT教育を受ける際はトレンド色の強い知識や技術だけではなく、ワードやエクセルなど凡庸性が高い教育も受けることをおすすめします。●VDT症候群になる可能性があるデジタル機器を使いすぎると、VDT症候群になる可能性があります。VDT症候群とは、パソコンやスマートフォンのディスプレイやキーボードの使いすぎで、肉体的・精神的に疲労をすることで起こる症状です。VDT症候群には、以下のような症状が確認されています。眼球……ドライアイ、視力低下、頭痛体……肩こり、腰痛、手のしびれ精神……イライラ、耳鳴り、頭痛VDT症候群を予防するためには、連続作業時間を60分以内にして定期的に休憩をするようにしてください。また、正しい姿勢で作業することも重要です。ICT教育を取り入れる場合は、自然とパソコンやスマートフォント接触する時間が増加しますので、子どもがVDT症候群にならないように常に注意してあげましょう。●想像力が低下する可能性もあるICT教育では、視覚から得られる情報量が非常に多くなります。調べれば解決してしまうため自分で考える機会が減ってしまい、その結果想像力が低下するかもしれないと考えられているのです。もし、ICT教育を取り入れるのなら、五感を使う教育をしたり、自分で考える時間を作ったりと、子どもの想像力を向上させる工夫をする必要があるでしょう。モバイル機器を禁止する時間を設けたり、親子で会話するときは調べることを禁止したり、子どもが想像力を働かせられる環境を整えることをおすすめします。まとめICT教育は学習効率を上げられるため、子どもには大きなメリットがあります。また、世界的にモバイル機器の取り扱いスキルや情報通信技術は必須スキルとなっていくことが予想されているので、社会に出てから苦労しないようにぜひとも取り入れておきたい教育方法です。しかし、ICT教育には気をつけなければいけないことが多々あります。もし子どもにICT教育を受けさせるのならばデメリットに関して把握しておき、ICT教育によるデメリットを最小限にする努力が必要になるでしょう。●ライター/高須 亮
2019年06月06日編集部:学研キッズネット編集部学研キッズネットfor Parentsの記事からわかった、すくすく伸びる子どもたちのために本当に大切なことをふり返る特集第4回のテーマは「子どもとネット」です。わたしたち保護者の子どもの頃と今の子どもの環境を比べたとき、もっとも大きな違いは「スマホやパソコンが身近にあるかないか」ではないでしょうか。調べたいことをすぐに検索できる便利さや、遠方に住む人ともネット上で知り合いになれる手軽さがある反面、ネットを通じた深刻なトラブルや犯罪、健康被害も心配です。子どもにふさわしいスマホやネットとのかかわり方を、専門家の方の言葉をもとに考えていきます。このページの目次小中学生のスマホ利用、増加に伴ってトラブルも!子どもに渡す前に決めたいスマホのルール我が子がスマホ依存かなと思ったら大切なのは、親子の会話1.小中学生のスマホ利用、増加に伴ってトラブルも!スマホの世帯普及率がガラケーを抜いた2016年。それから数年のうちにスマホの普及率はどんどん上がり、多くの子どもたちもスマホを利用する時代になりました。内閣府の「青少年のインターネット利用環境実態調査」2018年の結果によると、小学生の約3割、中学生の6割弱がスマホを利用しているそう。前年からの小中学生利用率の伸びを考えると、今後もさらに割合が増えていく可能性があります。いまや一番身近なICT※機器はスマホかもしれません。※ICT……Information and Communication Technologyの略。情報通信技術。電話・パソコン・インターネット・携帯電話など,情報処理や情報通信に関わる技術をまとめた呼び名。スマホでのネット利用の内訳を見ると、動画視聴が伸びています。この動画の閲覧では、年齢区分が厳密になされていないものや、一見子ども向けの動画のようでいて、再生すると子どもにはふさわしくない内容の「エルサゲート」などもあるため、見せっぱなしにしないという親の注意と見守りの姿勢を喚起しているのがコドモットの渡邉純子さんです。■中学生のスマホ利用、6割目前「データで読み解く、子どもとスマホ」(渡邉純子さん)スマホの利用率が上がるにつれて、トラブルに遭う子どもの数も増えています。なんらかのトラブルに遭ったことのある子どもは約6人に1人という状況のなか、保護者は子どものトラブルにあまり関知できていないようです。児童ポルノの被害も増加傾向、その4割が自画撮り被害によるもの。犯人は巧みに子どもたちを信頼させ、追い詰めていきます。わたしたちは「うちの子は大丈夫」とは思わずに情報を収集し、万が一のことがあったときに子どもがすぐに相談できるような親子関係を心がける必要がありますね。■子どもの携帯・スマホの使い方にもっと興味を「データで読み解く、子どもとスマホ」(渡邉純子さん)■広がる“自画撮り被害”「データで読み解く、子どもとスマホ」(渡邉純子さん)2.子どもに渡す前に決めたいスマホのルール進学のお祝いや何かのごほうびに、新調した子ども用のスマホ。楽しくウキウキと買ったのに、それがきっかけで親子の会話が減ったり成績が下がったり睡眠時間が減ったりしたら…。そうならないために、わたしたちはどうしたらよいのでしょう。「使うときは必ず親といっしょに」「どんな目的で使うのかをはっきりさせる」など、手渡す前に明確にしたい事柄を遠藤美季さんが教えます。■スマホ依存予防対策は念入りに前編「スマホ依存!」(遠藤美季さん)「スマホなどの機器は、子どもさんの持ち物にはしないでください。」と言うのは高橋大洋さん。たしかに「子どもの所有物」となってしまうと、保護者は口出しがしにくいですね。「親が子どもに貸し出している」というだけで、保護者は子どもの利用について話し合ったり、子どもに今の流行について聞いたりしやすくなります。「あとから厳しくするやり方は、親子ともにくたびれます。保護者が良いお手本を心がけ、子どもとの間に信頼関係が成り立っていれば、子どもがどんなスマホの使い方をしているのか、友だちともめていないかどうかも、保護者にちゃんと伝わってくるんです。」と高橋さん。■情報モラル教育のエキスパートが語る、ネットと子ども、そして保護者の望ましい関係とは ピットクルー株式会社高橋大洋氏インタビュー第4回ルールを決めるには、保護者がスマホについて必要な知識を得ておく必要があります。たとえば「SNSの年齢制限」について。保護者世代ではまだメールがコミュニケーションツールとして活躍していますが、子どもたちにとって、ネットでのコミュニケーションの中心はソーシャルメディア(SNS)。でもこのSNS、LINE以外は13歳未満は禁止されています。「小学生のうちはSNSの利用は控え、もしどうしてもする必要があるという場合には、『保護者といっしょに』を徹底」することを渡邉さんはすすめています。■SNSの年齢制限を知っていますか?「データで読み解く、子どもとスマホ」(渡邉純子さん)また、スマホの使い過ぎは深刻な健康被害につながります。「目が悪くなる」可能性は容易に想像がつきますが、同じ姿勢で狭い画面を長時間見ていることによる体のゆがみやあごの未発達、歯並びの乱れといった悪影響は、じわじわ進行するので、気づいたら深刻な事態になっているかもしれません。睡眠不足による集中力の低下、運動不足による体の不具合など一見関係のないような事柄も、じつはネットやスマホの利用と深く関係する場合があると遠藤さん。■健康診断でわかるスマホの悪影響。親子で健康美をとりもどそう「ネット依存にならない、かっこいいネットとのつきあい方」(遠藤美季さん)スマホの利用時間と学校の成績との関係も、保護者としては気になるところですね。「ケータイやスマホの使用時間が短い子どもほど正答率が高い」という結果、これには何となくうなずけます。ところが「勉強時間が長くても、ケータイやスマホを長時間使うと、勉強時間が短い生徒より成績が悪くなってしまう」という結果も。さらに「ケータイやスマホの使用をやめると学力が戻り、使用していなかった生徒が使用し始めると学力が低下する」という調査結果があるそうです。一度や二度、使いすぎて失敗することがあっても、スマホやケータイと粘り強く向き合えば「自制心を育てる絶好の機会」にすることができると説くのは中曽根陽子さんです。■ネット時代に必要なのは、自制心「AI時代を生き抜くために『失敗力』を育てる6つの栄養素」(中曽根陽子さん)じつは、保護者側は「ルールを作った」と思っていても、子ども側は認識していなかった、という場合も多いようです。「ルールを作って、スマホを渡して、ひと安心」となってしまいがちですが、スマホを子どもに渡すときは覚悟をもって、渡したあとも情報とルールのアップデートを怠らず、子どもを見守っていきたいものです。■スマホの利用ルール決め根気よく「データで読み解く、子どもとスマホ」(渡邉純子さん)3.我が子がスマホ依存かなと思ったらルールの大切さは身にしみてわかったけれど、それでももし子どもがスマホやタブレットのゲームにハマってしまったら……?我が子がスマホを気にしすぎて「なにか変だな」と感じたとき、その直感は、「スマホ依存」のサインに結び付くものかもしれません。「スマホ依存」には原因があり、その原因は一人ひとり違うものだと遠藤美季さんは言います。単にスマホを取り上げようとするのではなく、やめるにやめられない子どもなりの事情を探りながら、スマホとの距離を離していくのが良いようです。「スマホ依存」サインのチェック項目、解決に向けたヒントは心強い味方です。■スマホ依存予防対策は念入りに後編「スマホ依存!」(遠藤美季さん)ここでひとつ実例を見てみましょう。タブレットのゲームにハマってしまった子どもに対し、子どもの特徴を考えて親子でルールをつくり、実行する努力をすることで依存から脱しました。「親子関係や環境づくりなど、ネット以外のところにルールを守るための成功のひけつがある」と遠藤さんは言います。■ルール作りは学びのチャンス「ネット依存にならない、かっこいいネットとのつきあい方」(遠藤美季さん)子どもが「スマホ依存」にならないために、親がしてあげられる第一のことは「子どもに『大好きだよ』という気持ちを伝えること」。というのも、自己肯定感の低さと「スマホ依存」とは密接なつながりがあるから。「親が自分のことを大切にしてくれている、その気持ちが自分自身を大切にする気持ちへと育っていきます。そんなあたりまえのような日常が子どもをネットに依存させないことへの重要な布石になっているのです」自分自身を大切にする気持ち「自尊感情」が育っていないうちはスマホを持たせない、と保護者が覚悟を決めることも必要になってくるでしょう。■依存経験者から学ぶネットに依存させない子育て「ネット依存にならない、かっこいいネットとのつきあい方」(遠藤美季さん)■スマホ依存予防対策は念入りに前編「スマホ依存!」(遠藤美季さん)4.大切なのは、親子の会話ネットやスマホについて知れば知るほど恐ろしいものに思え、子どもに触れさせるのが怖くなる、という保護者も多いかもしれません。けれども、子どもたちの学習の場にはICTが浸透しつつありますし、大人の多くがスマホを使うように、子どもたちがスマホやネットを利用する場面もこれからますます増えていくはずです。ネットを通して国境を越えて情報をやりとりする時代の流れを考えればネット環境から子どもを過度に遠ざけるのはもったいないといえるでしょうし、子どもたちのSNS上のやりとりを逐一チェックするというのも考えものです。わたしたちは、ICTにどう向き合い、ICT機器を扱う子どもたちをどのような目で見守ればよいのでしょうか。「学習アプリでもオンライン学習でもなんでもいいので、まずは保護者自身が自分でやってみること、そのうえで、自分がいいと思ったものを子どもといっしょにやってみるという姿勢が大切だと思っています。そして、学んだ 内容をもとにして『これをやってみたらおもしろかったから、あなたもやらない?』というように親子で会話をすることが重要だと思います。」■「オープンなオンライン教育で新しい学びを創造する」株式会社ドコモgacco代表取締役社長 伊能美和子氏インタビュー第4回子どもたちにとって「スマホ」は道具で、「自分の耳とか口がスマホの先にあって、友だちとつながってくっついちゃっているような感覚」があると言うのは杉本卓先生です。「スマホという道具とのつきあい方にだって、人間の根本的な部分を考える必要があると思うんです。スマホを使うことで、この情報を得ることで、このゲームをすることで、このルールを決めることで、わが子は人として幸せになるのか、ということを保護者は考えて欲しいんです。近視眼的なレベルではなく、一段高いレベルで(スマホの使い方について)考えましょうということです」■ICTが進化する未来へ、子どもたちはどう育っていくのか青山学院大学杉本卓先生インタビュー第4回ICTの特徴である「わかった気になる」を学びに転換するうえでも、適切な声かけや興味に応じた体験の場を提供するなど保護者のサポートが必要になるでしょう。「わかった気になる」のではなく「理解を深めるためには、言葉でちゃんと説明できるかどうかが、いまのところ非常に大事だと思います。『知ってるよ』とか『検索すれば出てくるよ』ではなく、自分の言葉でものごとを説明できるところまで理解するということです。」「いろいろな状況で身体をともなって体験しないと身につかないと思いますし、情報教育とかICTを使うときに、体験をないがしろにして情報を取り扱うだけにしてしまったら、これから必要な教育にはならないだろうと思います。」■ICTが進化する未来へ、子どもたちはどう育っていくのか青山学院大学杉本卓先生インタビュー第2回「保護者には監督官や指揮者のような立場に立つだけでなく、保護者自身がネットとのつき合い方をしっかり見直してほしい」と話すのは高橋大洋さん。「保護者は知らなきゃいけないことがいっぱいあると思いがちなんですが、実は子どもたちの多くがオンラインコミュニケーションで直面する悩みのほとんどは、人間どうしのコミュニケーション、心理の話です。そんなの、長生きしている大人の方が小学生・中学生より絶対に詳しいんですよ」「新しいアプリの流行に右往左往するより、根っこにあるネットのしくみや背景を学んだうえで、子どもといっしょに日々試行錯誤していきましょうと伝えたい」■情報モラル教育のエキスパートが語る、ネットと子ども、そして保護者の望ましい関係とは ピットクルー株式会社高橋大洋氏インタビュー第1回わが子がまだ言葉を交わせない赤ちゃんだったころ、「だれに教わるでもなく、相手のことを思う一心で、その表情や泣き声、スキンシップという“言語以外”の情報で、目の前の赤ちゃんと気持ちのキャッチボールをしながら、お互いのコミュニケーション能力を育ててきたのです。そして共感、伝える、聞く、思いやり、理解、お互いを認める気持ちなどさまざまな能力を育ててきたのです。」それと同じことを、友だちとのコミュニケーションに役立てることを親は教えてあげることができるのです。■会話の基本はFTF(Face To Face)「ネット依存にならない、かっこいいネットとのつきあい方」(遠藤美季さん)流行の移り変わりは激しいし、子どもたちのゲームやコミュニケーションツールに対する習得の速さは、大人にはとてもついていけず……。子どものスマホ利用を放任する傾向の裏には「知らないものは怖い」という保護者の物怖じもあるように感じます。けれども時代は変わっても、人間関係を育んでいくうえで大切なことはあまり変わりがないようです。保護者として子どもに「大好き」の気持ちや、スマホを利用するうえでの心配を伝え、子どもから相談があるようなら話を聞き、スマホの新しい機能やアプリについてはときに子どもに教えを請いながら、いっしょに「試行錯誤」していきましょう。この回の最後に、ネット依存の専門家・遠藤美季さんが、母親として、ネットに関してお子さんとどのようにかかわってきたのかがわかる記事を紹介します。子どもがネットに依存しなくても済む環境を保護者としてどのよう整えたらよいのかを真剣に考え、「朝は笑顔で送り出す」「家のことを親子でいっしょにする」など小さな心がけを積み重ねてきた遠藤さん。この実践の結果、お子さんがスマホやゲームとどのような関わり方をするようになったのかは、多くの保護者に様々なきっかけを与えてくれるように思います。■デジタルネイティブを育てるpart1「ネット依存にならない、かっこいいネットとのつきあい方」(遠藤美季さん)次回は子どもたちに、ときに大きな影響を与えてくれる「ナナメの関係」に焦点をあてていきます!次のページ自分ががんばらなきゃと思わなくていいんです。子どもにも親にも必要な「ナナメの関係」学研キッズネット編集部(がっけんきっずねっと)『学研キッズネット』は、1996年にオープンした小・中学生のためのWebメディアです。学研の子ども向け書籍や雑誌の編集ノウハウを活かし、子どもたちが安全に楽しめるサイトとして運営しています。子どもたちのしあわせのために、家族のしあわせのために、有益な情報やサービスをお届けできるよう、いつも精一杯がんばっています。すくすく伸びる子どもたちのために
2018年12月25日ICTとは、Information and Communication Technology(情報通信技術)のこと。広く知られているIT(Information Technology)に代わって使われつつある言葉です。「ICT教育」や「教育のICT化」といった表現を耳にしたことはありませんか?高度に発達したテクノロジーを利用し、より効果的に教育を行おうとすることは一般的になっています。そこで今回は、教育現場でどのようにICTが使われているのか、保護者の皆さんにご紹介しますね。教育におけるICTとは小学校学習指導要領が改正され、2020年度から施行されるのはご存知のとおり。「小学校でプログラミング教育が行われる」として、大きな話題になっていますね。新たな学習指導要領には、以下のような記述があります。第3学年におけるローマ字の指導に当たっては、(中略)コンピュータで文字を入力するなどの学習の基盤として必要となる情報手段の基本的な操作を習得し、児童が情報や情報手段を主体的に選択し活用できるよう配慮することとの関連が図られるようにすること。(国語)児童がコンピュータや情報通信ネットワークを積極的に活用する機会を設けるなどして、指導の効果を高めるよう工夫すること。(国語)コンピュータや情報通信ネットワークなどを適切かつ効果的に活用して、情報を収集・整理・発信するなどの学習活動が行われるよう工夫すること。その際、コンピュータで文字を入力するなどの学習の基盤として必要となる情報手段の基本的な操作を習得し、情報や情報手段を主体的に選択し活用できるよう配慮すること。(総合的な学習の時間)(太字による強調は編集部で施した)(引用元:文部科学省|小学校学習指導要領)このように、コンピュータを積極的に用いた学習が公立小学校でも行われるようになるのです。文部科学省の資料「幼稚園教育要領、小・中学校学習指導要領等の改訂のポイント」では、「コンピュータ等を活用した学習活動の充実」「コンピュータでの文字入力等の習得」「プログラミング的思考の育成」が重要事項として挙げられています。文部科学省は教育におけるICTの活用を推進しています。2016年に策定された「教育の情報化加速化プラン」では、ICT教育の必要性が以下のように述べられました。現代社会において、身の回りのものにICTが活用されていたり、日々の情報収集やコミュニケーション、生活上の必要な手続きなど、日常生活における営みを、ICTを通じて行ったりすることが当たり前となっている中では、子供たちには、ICTを受け身で捉えるのではなく、手段として積極的に活用していくことが求められている。(太字による強調は編集部で施した)(引用元:文部科学省|教育の情報化加速化プラン~ICTを活用した「次世代の学校・地域」の創生~)現代はスマートフォンを持つのが当たり前の世界。スマートフォンは多くの便利な機能や楽しい娯楽の詰まった利器ですが、SNSを媒介とした犯罪、ソーシャルゲーム依存など、スマートフォンによって起こる問題は皆さん知っての通り。ICTとのつき合い方は、ぜひ学校で教えてほしいですよね。2016年度~2020年度を対象とした「教育の情報化加速化プラン」においては、具体的に以下をはじめとした施策が取り組まれるそう。-教員自身が自在にICTを活用して授業を設計できるようにする。-児童生徒に一人一台ずつ教育用コンピュータが行き渡るようにする。-デジタル教材等の開発を官民連携で進める。-情報モラル教育に関する教材や研修を充実させる。-文書の電子化など、ICTを利用した校務効率化を促進させる。このように、「教育でICTを活用する」とは、ただ授業でタブレットを使う・プログラミングを学ぶといったことではないのです。子どもはICTそのものを学び、またICTを利用して従来の教科を効果的に学習します。一方、先生はICTの導入によって学習効果のより高い授業を行え、事務仕事の負担を軽減することもできるのです。幼児教育におけるICT内閣府が2017年、0~9歳の子どもの保護者を対象に実施した調査によると、1歳でタブレットを使う子は2.5%でしたが、2歳になると13.5%に急上昇。その後も年齢が上がるにつれ増加傾向にあり、9歳では28.6%にもなりました。タブレットやスマートフォンなどの機器でインターネットを使う目的として最も多いのは「動画視聴」(85.4%)。平均利用時間は60.9分で、2歳の子ですら65.1分だったそう。また、24.2%の保護者が「注意しても子どもがインターネットをやめない」という経験を持っていたとのこと。読者の皆さんにも、就学前の子どもがインターネットを使うことに抵抗を覚える人が多いのではないでしょうか。しかし、ICTが幼児教育の分野でうまく活用されている事例があります。有名なのが、鹿児島県の「つるみね保育園」。「9割のアナログ保育と1割のデジタル保育」をモットーに、豊かで広大な自然のなか子どもを育てる「アナログ保育」と、タブレットとプロジェクターを使う「デジタル保育」を組み合わせ、個性的な保育が行われています。つるみね保育園の「デジタル保育」では、園児がタブレットとプロジェクターを使って写真を大きく投影し、プレゼンテーションを行うそう。県外や海外の人たちとリアルタイムでおしゃべりしたり、Google EarthやYouTubeを利用して楽しく学んだりしているそうです。園長の杉本正和氏によると、「デジタル保育」は週に1回・15分でも充分な効果が上がっているそう。また、発表会の背景として使う大きな絵を、従来は職員が描いていたところ、プロジェクターで写真を壁に映すようになったとのこと。これによって、職員の負担が大幅に減ったそうです。杉本氏は、タブレットとプロジェクターを用いた保育の魅力を以下のように述べています。プロジェクターを使ってお遊戯で使うコンテンツを大きく映すと、子どもたちからは大きな歓声が上がります。これまでは、A3サイズの紙でコンテンツを表現して見せていましたが、なかなか大きな反応は得られませんでした。やはり、子どもたちにとってプロジェクターから映る大画面のコンテンツは、与える印象が違うのです。(太字による強調は編集部で施した)(引用元:リコー|お客様事例(社会福祉法人上名福祉会 つるみね保育園 様))「大きい」ということは子どもにとって、大人が思う以上に魅力的なのですね。直感的に操作できるタブレットを用い、大画面で画像や動画を共有する。シンプルですが、これもICT。このような使い方であれば、従来のアナログな教育とも組み合わせやすいですね。佐賀県の「高岸幼稚園」も、教育にICTを取り入れています。「創造力・表現力を育む」こと、「グループ活動の中で協力と貢献を意識付け、お互いを認めあう関係を築く」ことを目標とし、「ICTタイム」を実践しているそう。活動内容としては、パズル、プレゼンテーション、別の園とのリアルタイム通信など。「絵本創り」の活動の際は、グループで1台のタブレットを用い、絵本を制作したそう。完成したものは印刷・製本し、ほかのグループと交換して読み合ったそうです。このような活動の結果、子どもたちの集中力が高まり、協調的な活動ができるようになったのだとか。タブレットは直感的に使えるため、子どもの創作活動を後押ししてくれるツールといえるでしょう。アナログの画材ではできない表現を楽しみ、お友だちとコミュニケーションすることは、「カラフルな絵を描きたい」「みんなで楽しみたい」という子どもらしい欲求に合致しているといえます。英語教育におけるICT2020年度から施行される新学習指導要領によって、小学校での英語学習も大きく変わることは、「あなたのお子さんの年は移行期?全面実施期?3分でわかる『小学校英語教育』」でもお伝えしたとおり。新たな学習指導要領には、「外国語科」の目標が以下のように書かれています。外国語の音声や文字、語彙、表現、文構造、言語の働きなどについて、日本語と外国語との違いに気付き、これらの知識を理解するとともに、読むこと、書くことに慣れ親しみ、聞くこと、読むこと、話すこと、書くことによる実際のコミュニケーションにおいて活用できる基礎的な技能を身に付けるようにする。(太字による強調は編集部で施した)(引用元:文部科学省|小学校学習指導要領)つまり、いわゆる「英語4技能」の基礎を小学生のうちから身につけることが目指されているのです。文部科学省による2019年度概算要求において、「英語4技能育成のためのICT活用普及推進事業」として新たに2億5,000万円が計上されました。「新学習指導要領の全面実施に向けて、自治体が民間機関と連携し、各地域の実態に応じた効果的なICTの活用法について事例を創出し、全国各地に普及する」とのことです。では実際、小学校での英語教育においてICTはどのように活用されているのでしょう?英語教育で有名なのが、京都府の立命館小学校。朝の15分間を「モジュールタイム」とし、その一部を英語の発声練習(音声ドリル)にあてています。PowerPointで作成した、英単語の書かれた140~230枚程度のスライドを電子黒板に次々と写しつつ、児童に発声させるのだそうです。同校の英語科アドヴァイザー・田縁眞弓氏によると、ICTをうまく使ったこの活動は「児童の集中を切らすことなく、緊張感を与えながらスピーディに多量のインプットが与えられる」のだとか。たくさんの資料をテンポよく次々と見せるのは、アナログ環境ではできないことですね。また、立命館小学校の英語の授業では、英語の絵本をスキャナーでデータ化し、電子黒板に大きく映しながら読み聞かせているそう。物語の魅力だけでなく、「紙媒体の絵本と比べてデジタルでみる絵本の大きさやカラフルさ、その迫力」が児童を引きつけ、やがて児童全員が絵本のテキストを自然と目で追うようになったそうです。英語の音とスペルが一致して頭に入ってきそうですね。つるみね保育園の例でもそうでしたが、プロジェクターや電子黒板を使って教材を大きく映すということは、想像以上に子どもを集中させやすいようです。また、小学校英語教育などを研究する高橋美由紀教授(愛知教育大学)らは某小学校の6年生を対象に、Skypeを使った英語活動を実践しました。1グループ3~4人で1つのタブレットを使い、「Can you ~?」など特定のフレーズを使ってSkype越しにネイティブ講師とやりとりをしたのです。この活動には以下をはじめとする効果があったそう。①子ども達一人一人の発話機会が多くなったこと、②ネイティブ講師達は目の前の子ども達に合わせて彼らの理解できる表現を使用して授業を行えたこと、③子ども達の英会話を行うことへのモチベーションが高まったこと(太字による強調は編集部で施した)(引用元:愛知教育大学学術情報リポジトリ|ICTを活用した小学校英語教育 ― スカイプを使用した事例研究を基に ―)ICTを利用することにより、少人数で効果的な会話練習ができた、というわけですね。児童の数に応じたネイティブ講師をそのつど学校に呼ぶ、というのは費用などの面から現実的ではありませんが、Skypeならば可能になるというわけです。特別支援教育におけるICTICTの利用は、障害を抱える子どもの教育において非常に有用だと考えられています。目が見えなかったり、耳が聞こえなかったりといった不便さを、デバイスやソフトが補ってくれるからです。独立行政法人・国立特別支援教育総合研究所が、障害のある児童生徒の教育におけるICT活用事例を収集したところ、弱視(視力が正常に発達せず、眼鏡をかけてもよく見えない状態)の小学生がタブレットと漢字練習用アプリケーションを用いて書き取り練習を行う例があったそう。同研究所の共同研究によると、弱視の子はそうでない子に比べ、漢字を正確に書くのが困難なのだとか。文字を間違って覚えていたり、「点画が外れている、二重書きの線がある、不要な突出部分ができてしまうといった傾向」があったりするそうです。そこで、学習アプリケーション「常用漢字筆順辞典」で学ばせたところ、画面を拡大することで、線と線がつながっているか・離れているかなど、漢字の細部を確認しながら漢字を書く練習ができたそう。直感的な操作で画面を拡大でき、画面に直接書いて勉強できることは、タブレット学習の大きな利点ですね。発達障害がある子の学習支援にも、ICTの導入は効果的です。文部科学省の調査によると、アスペルガー症候群・学習障害(LD)・注意欠陥多動性障害(ADHD)などを含む発達障害を抱え、通常学級において教育支援を必要としている子は各学級に少なくとも2~3人いると推定されるそう。ICTを利用すれば、彼らの困難さを取り除きやすくなるのです。たとえば、授業中に集中しづらい子がいる場合、大型ディスプレイを用いるとよいそう。子どもたちの視線が自然と前のほうに向かうほか、それぞれの表情が教員からよく見えるようになるので、集中していない子どもに教員が気づきやすくなるそうです。また、集中が困難だったり聴覚過敏だったりして、教員の指示を聞きもらしがちな子もいます。そのような場合には、タブレットやICレコーダーで教員の話を録音することにより、重要な連絡事項をあとから確認できます。また、ノイズキャンセリングヘッドフォンを装着すれば、人間の声以外の雑音を軽減することが可能なので、空調設備や自動車の音などに煩わされにくくなるのです。さらに、病気や障害などの理由により学校に通えない子が、ICTを利用して自宅や病院から遠隔授業を受けることもできます。公益財団法人・日本財団で行われている「難病の子どもと家族を支えるプログラム」は、2017年から鳥取県で遠隔教育事業を行っています。カメラ・マイク・スピーカーを搭載した、高さ21.5cmのロボット「OriHime」を利用することで、実際に教室にいるように授業を受けられるのだそう。タブレットなどに専用アプリケーションをインストールすると、カメラを通して現場の風景を見たり、「OriHime」を自分の分身のように動かしたりすることができます。2018年4月時点で、鳥取県の養護学校および院内学級で3台の「OriHime」が稼働しているそう。重度の心臓病を持つ小学生のAさんは、感染予防や体調を考慮して先生が自宅に訪問して授業をする訪問学習を受けています。(中略)OriHimeが来たことで、これまで先生のお話でしか聞けなかった学校行事や大人数での授業など、OriHimeのおかげで、「見る」「参加する」「経験する」ことができるようになりました。(中略)また、治療により入院前と違う自分の姿を見られることに抵抗を持つ子どもも多い中、OriHimeが分身になってくれるおかげで、自分の姿を相手に見られることなく友だちと勉強ができることは、子どもにとって大きな安心につながるという効果もあることがわかりました。(太字による強調は編集部で施した)(引用元:日本財団|分身ロボットで、学校へ通えない子ども達に学習の機会を!鳥取県での実践)このような遠隔授業が一般的になれば、事情により学校に通えない子どもたちの大きな助けになりますね。文部科学省は2018年11月、今後の政策の柱のひとつとして「遠隔教育の推進による先進的な教育の実現」を掲げました。病気療養しているなど「特別な配慮」を必要としている子どもや、人口の特に少ない地域に住む子どもたちにも質の高い教育を届けるためです。教育分野において本格的にICTが活用されれば、都会の子も地方の子も、高度な学習をしたい子も学習の苦手を補いたい子も、それぞれが恩恵を受けられそうです。教育のICT化を支援する企業これまで述べたような「教育のICT化」は、先生の個人的な努力や政府の意向だけで成し遂げられるものではありません。教育の現場で使えるデバイスやソフトウェアを開発したり、システムを提供したりする民間企業あってのもの。企業が教育現場向けに打ち出しているICT関連の製品やサービスは「文教ソリューション」と総称されています。たとえば富士通株式会社は、児童生徒向けのタブレットを開発しています。そのひとつ「ARROWS Tab Q506/ME」には、以下をはじめとした特徴があります。-机から落ちにくい設計。-落としても衝撃が伝わりにくい。-家庭科室や屋外でも使いやすい防水・防塵。-鉛筆のように書けるペン入力。-薄暗い体育館でも撮影時にブレにくいカメラ。教育のICT化に意欲的な岐阜県岐阜市では2016年度、このタブレットが全ての市立小中学校に配備されました。児童生徒3.4人に1台の割合だそうです。タブレットを授業で使いはじめたところ、以下のような効果があったのだとか。-言葉での説明では難しいことを、デジタル資料で視覚的に示せる。-大量のプリントをコピーするなど教員側の負担が減った。富士通は文教ソリューションとして、子どもの個別学習をサポートする「手書き電子ドリル」も提供。国語・算数・英語など各教科の問題をタブレットに書き込んで解答すると、自動で採点されます。漢字のテストでは書き順をチェックしたり、計算問題ではかかった時間を計測して前回と比較したりできるのが、紙のドリルにはない大きな特徴。前回間違えた問題のみを表示したり、全問正解すると「合格」マークが表示されたりなどの要素は、子どもの積極的な反復学習につながります。また、教員はテンプレートに沿って自分で問題を作ることが可能。教員の手間を大幅に削減しつつ、子どもが楽しく効果的な学習を行える電子ドリルのメリットは大きいといえます。教育ITソリューションEXPOとは上記のような文教ソリューションを提供する企業が一堂に会する「教育ITソリューションEXPO」という展示会があります。東京・大阪で毎年開催されており、2018年5月に東京ビッグサイト(江東区)で開催された第9回には、ベネッセや東芝など450社以上が出展し、学校関係者など約3万2,000人が来場しました。市場調査を手がける株式会社富士キメラ総研が、教育機関向けICT関連の国内市場規模を2017年に発表したところによると、2021年度は1,920億円の見込みで、2015年度と比べて41.8%増えるそう。市場は大きく「ハードウェア」「教材/コンテンツ」「校内設備/インフラ」「業務支援システム」の4つに分かれ、特に無線LANシステム(2015年度比4.1倍)とタブレット端末(同3.4倍)の市場の伸びが著しいようです。2018年6月に閣議決定された「第3期教育振興基本計画」は、2018年度~2022年度を対象としており、教育政策の目標のひとつとして、「ICT利活用のための基盤の整備」が挙げられています。測定指標として示されているのは「学習者用コンピューターを3クラスに1クラス分程度整備」「普通教室における無線LANの100%整備」など。このように、政府によって教育のICT化が促進されるのであれば、関連市場はますます拡大していくでしょう。「教育ITソリューションEXPO」もさらに活気を呈しそうです。2019年度の開催は、東京で6月19日~21日、大阪で9月25日~27日。あくまで商談の場なので、子どもと見学に行く、というわけにはいかないのですが、教育をもっと進化させてくれる最新ICTが一堂に会しているかと思うと、わくわくしますね。教育におけるICTの課題教育にICTを導入することは、子どもにとっても教員にとっても大きなメリットがあり、政府も推進していることがわかりましたね。とはいえ、教育のICT化のために解決するべき課題は山積しています。上で紹介した事例のように教育現場でICTを活用するには、教室で無線LANが使えることと、できるだけ多くの子どもにコンピュータが行き渡っていることが必要です。文部科学省の「学校における教育の情報化の実態等に関する調査」によると、2017年度における「教育用コンピュータ1台当たりの児童生徒数」は5.6人(前年度5.9人)、「普通教室の無線LAN整備率」は34.5%(前年度29.6%)でした。これを見ると、ICT利用環境は順調に整備されつつあるように思えますが、実は大きな地域差があるのです。「教育用コンピュータ1台当たりの児童生徒数」が最も少ないのは、佐賀県の1.8人。一方、最も多いのは埼玉県の7.9人でした。東京都は平均に近い5.4%です。1台当たりの児童生徒数が多いと、ひとりひとりが充分にコンピュータを利用することができず、狙い通りの教育効果を上げられないかもしれません。また、「普通教室の無線LAN整備率」が最も高かったのは静岡県の68.6%。最低は福岡県の9.4%でした。ちなみに、東京都は47.3%です。普通教室で無線LANが利用できないと、コンピュータは従来どおり、コンピュータ室のデスクトップPCを使うことになるでしょう。そうなると、いつもの教室にタブレットを持ち込んでインターネットに接続することができず、遠隔授業も実現できません。教育のICT化を促進するために、やるべき施策は多くありますが、「教育用コンピュータ1台当たりの児童生徒数」および「普通教室の無線LAN整備率」の地域間格差を是正することが目下の課題だといえるでしょう。***あまり知られていない、教育現場におけるICT事情についてお伝えしました。「タブレット教育」「プログラミング教育」ばかりが注目されがちな昨今ですが、最新テクノロジーを教育に導入することには、もっと多様なメリットがあるのです。お子さんの通う幼稚園や学校ではどうなのか、調べてみてはいかがでしょうか?(参考)コトバンク|ICT文部科学省|小学校学習指導要領文部科学省|幼稚園教育要領、小・中学校学習指導要領等の改訂のポイント文部科学省|教育の情報化加速化プラン~ICTを活用した「次世代の学校・地域」の創生~文部科学省|2019年度概算要求のポイント文部科学省|発達障害のある子供たちのためのICT活用ハンドブック文部科学省|発達障害とは文部科学省|遠隔教育の推進に向けた施策方針文部科学省|「新時代の学びを支える先端技術のフル活用に向けて ~柴山・学びの革新プラン~」について文部科学省|教育振興基本計画文部科学省|学校のICT環境整備について文部科学省|平成29年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(概要)内閣府|低年齢層の子供のインターネット利用環境実態調査リコー|お客様事例(社会福祉法人上名福祉会 つるみね保育園 様)つるみね保育園学校法人高岸幼稚園|園紹介ムービーJ-STAGE|幼稚園におけるICT を活用した保育の検討-高岸幼稚園の事例より-J-STAGE|小学校英語と ICT ―私立小学校での実践から愛知教育大学学術情報リポジトリ|ICTを活用した小学校英語教育 ― スカイプを使用した事例研究を基に ―独立行政法人国立特別支援教育総合研究所|ICTを活用しよう独立行政法人国立特別支援教育総合研究所|弱視児童生徒の特性を踏まえた 書字評価システムの開発的研究日本弱視斜視学会|弱視日本財団|分身ロボットで、学校へ通えない子ども達に学習の機会を!鳥取県での実践分身ロボット「OriHime」富士通|ARROWS Tab Q506/ME 製品詳細富士通|岐阜県岐阜市教育委員会様/岐阜市立岩野田北小学校様富士通|手書き電子ドリル教育ITソリューションEXPO富士キメラ総研|『エデュケーションマーケット 2017』まとまる(2017/5/16発表 第17041号)
2018年12月19日専門家・プロ:渡邉純子(コドモット)SNSの顔写真、顔出しNGが7割今回も、一般社団法人日本スマートフォンセキュリティ協会(JSSEC)の「中高生のスマホ利用傾向調査レポート」※1から、気になるデータを読み解きます。今回着目するのは、SNSへの顔写真投稿についてです。まず、自分や家族の顔写真をSNSに投稿することに対して、世代ごとに意識の違いがあるのか、みてみましょう。《自分や家族の顔写真をSNSなどに投稿すること》一般社団法人日本スマートフォンセキュリティ協会「中高生のスマホ利用傾向調査レポート」 (2018年3月)」より自分や家族の顔写真についてSNSに投稿を「良くする」と回答した割合が高いのは、10代から30代まで。それぞれ13%~14%と7人に1人程度ですから、さほど目立つ数字ではありません。しかし気になるのは10代、20代に多い「気にしたことはない」という回答です。これは、顔写真の投稿に無とんちゃくだったり、投稿にあたってためらわない状態といえるので、自覚的でないぶん、「良くする」人に比べて配慮の呼びかけが届きにくいと考えられます。10代、20代では「良くする」「気にしたことはない」を合わせた回答は約3割となっていて、これは少し気になる傾向です。では、自分や家族の顔写真をSNSなどに投稿を「絶対にしない」「極力しない」という人はどれくらいいるのでしょうか。「絶対にしない」「極力しない」の合計は次のようになっています。全体77%10代69%20代67%30代74%40代81%50代84%60歳以上91%全体で8割弱、10代~20代で7割弱が投稿を控えていることがわかります。面白いことに「極力しない」の回答がもっとも多かったのは10代(39%)です。情報モラル教育の浸透を感じるとともに、10代の子どもたちもなかなか考えているなと感心させられます。10代女性の3割は友だちの顔写真をSNSによく投稿するさて、自分の顔写真のSNSアップには慎重な姿勢がみえる若年層ですが、友だちの写真についてはかなり状況がことなります。《友達の顔写真をSNSなどに投稿すること》一般社団法人日本スマートフォンセキュリティ協会「中高生のスマホ利用傾向調査レポート」 (2018年3月)」より10代で友だちの顔写真投稿を「良くする」と回答した割合は25%。10代の女性に限ってみると30%で、全世代で断トツのトップです。自分や家族の顔写真の投稿は控えめ、でも友だちの顔写真はよく投稿するという非対称性には少々驚かされます。とはいえ、一般的にSNSには画像や書き込みを友だちなどに限定して公開する機能がありますから、広く一般に顔写真を公開しているということではないのでしょう。記念写真などをクローズドなグループ内で公開しあうことで、自分の撮った写真を仲間で共有したり、イベントの余韻を味わったりした経験は、きっと読者のみなさんにも心当たりがあるでしょう。気になるのは、「本当にそのグループはクローズドなのか?」ということ。たとえばLINEのグループトークには、友だちの友だちの友だち……というような、仲間というには微妙な関係の人も、だれかの招待で入ってくる可能性があります。そんな立場の人がアップされた写真をどう扱うかは未知数です。あまり知らない人に自分や友だちの写真を渡す人はいませんよね。同じように、SNSの(一見)クローズドなグループのなかであっても、顔が特定できる写真については慎重に取り扱いたいものです。グループではなく個人あてにダイレクトメッセージを送る、GooglePhotoの共有アルバムで信頼のおける人にだけ見せたら共有をオフにするなど、くふうしだいでさまざまなやりかたがあります。人生の早いタイミングでスマホという“拡散機能付きカメラ”を手にしている子どもたち。子ども自身が慎重に対応できるよう、保護者がSNSデビューのころから導いていきましょう。 ※1 一般社団法人日本スマートフォンセキュリティ協会「中高生のスマホ利用傾向調査レポート」(2018年3月発表)渡邉純子(コドモット)(わたなべじゅんこ)株式会社コドモット代表取締役社長。NTT在籍時代の2001年、子ども向けポータルサイト「キッズgoo」を立ち上げ、同サイトでデジタルコンテンツグランプリ・エデュテイメント賞受賞。独立後は小学生向けのコンテンツを中心に、企業の子ども向けWebサイトや公共団体の子ども向けツールなどの企画制作を数多く手がける。一男一女の母。
2018年12月14日トップライター:坂上さえブラックボックスはNGTwitterの初期設定をわたしといっしょに行なって、非公開アカウント(かぎアカ)を作った娘。はじめにしてもらうのは、娘が大変に嫌がっている、わたしのアカウントとの相互フォローです。わたしの気持ちは、何度も娘に伝えました。「かぎアカをブラックボックス化してしまったら、なにかあっても大人がすぐ対応できない。だから、非常口としてフォロー/フォロワーになる。」自分の交友範囲内に親が入ることには抵抗があることはよく分かります。それでも、大人サービスの代表格であるTwitterデビューにあたって、いわば救命具として、大人の目が必要だというのがわたしの考えです。だから、揺るがず「あなたの友人関係との交流を監視するつもりはまったくない。フォローはするけどミュートする。」という姿勢をつらぬきました。兄からも「親に見られて困るようなツイートをしなければいいだけでしょ。」という援護射撃があり、娘はしぶしぶ同意しました。最後の最後までぼやきつつ、娘のアカウントとわたしのアカウントで相互フォローを完了。そして約束どおり、わたしのアカウントからは娘の日々のつぶやきが見えないようにミュートしました。わたしのアカウントの扱いについては娘に任せました。実は、かくいうわたしも、自分のアカウントのつぶやきが子どもたちに見られると思うと、身構える気持ちになります。でも、それは同時に、子どもに見られてみっともないつぶやきはできないな……という自制心につながっているような気がします。子どもとフォロー/フォロワーになるということは、子どもの日常に立ち入るライン、そして自分の日常に立ち入らせるラインを決めることです。親子で節度を意識しなくてはいけないと感じました。そして自分の現実的な行動として、グチや不平不満のつぶやきは封印します!海外の友だちとDMのやりとり娘はさっそく海外研修で知り合った友だちのアカウントにダイレクトメッセージ(DM)を送って近況報告をしたり、フォローしあったりしています。娘はDMではSNS特有の英語表現(大文字を使わない、for you の音から4u とつづる、など)にとまどいながらも、Google の翻訳機能を駆使してなんとか意志疎通をしているようです。てのひらに収まる小さな端末が世界につながり、人の輪が広がっていくようすに、時代は変わったなという思いを強くしました。アメリカ、カナダ、シンガポール、マレーシア、インドネシア……娘のフォロワーにはさまざまなプロフィールの子たちが並ぶでしょう。そんな友だちとのやりとりから多様性を見いだし、その刺激で未来を開く力を育んでほしいと願います。子どもの納得、親の子離れ今回、娘のTwitterデビューをいっしょにやってみて強く感じたのは、SNSを通じてどう子どもとつきあうのか、親自身がきちんと考えなくては、ということです。親が考えておかないと、勢いに負けて子どものいいなりになったり、子どもにとって納得いかない押しつけになって、かえって距離が遠くなってしまったりしそうです。このあたりの距離の取り方は、子どもの年齢にかかわらず難しいことのようです。娘の友だちにも、いまだにLINEやメールのやりとり全てを親がチェックしているという子がいます。ネット大人である18歳を過ぎても、親が子どものTwitterのアカウントを逐一チェックしてダメ出しをしてくるのに閉口しているという子も知っています。ネットにおいて、親が子離れをどう行なっていくかは、これからの親の大きな課題なのかもしれません。思えば、12歳でスマホデビュー+SNSデビューをしたとして、ネット大人の18歳までは6年。その間にネットでのふるまいかた(受信も発信も)、いざというときの自分の守り方、付き合いの広げ方を教えるだけでも一苦労です。さらにそこから、子どもの自制心を信じて見守り、段階的に子離れしていくとなると、6年間では短いくらいです。18歳までに太鼓判を押してわが子を世の中に出せるよう、スピード感をもって子どもと接していかなくてはならないようです。坂上さえ(さかがみさえ)大学卒業直後からIT関係の仕事に従事する。子どもの小学校入学を機に退職し、現在はフリーのプランナーとして、子ども向けのWebゲームや学習コンテンツの企画にいそしんでいる。趣味はスキューバダイビングと滝をみること。紅海でダイビングし、ヴィクトリアの滝をおがむのが夢。東京在住のB型、大1男子・中3女子の母。
2018年11月06日専門家・プロ:遠藤美季あとの祭りにならないために。ネットの世界を知って備える今回から、大人は見過ごしがちな子どものネット利用をとり上げていきます。仕事、生活、学習でも必要不可欠な存在になっているインターネット。年齢や立場で利用のしかたに違いがみられます。とくに子どもは、大人にはとても思いもつかないようなネットの使い方をしたり、まさか子どもが?と思うような行動をして親や教師を驚かせることがよくあります。社会に役立つアプリや動画での自己表現など、常識の型にはまらない子どもたちが、次にどんな視点で新しいものを生み出すのだろうと、わたしは楽しみと期待に胸がはずむ思いです。しかし、子どもの思いがけないネット利用が深い闇への入り口になることもあります。次は君の番かもしれない……わたしが監修した『次は君の番かもしれない……本当は怖いスマホの話』(金の星社)という本では、実際にあったスマホのトラブル事例について解説と対策を紹介しています。この本を知りあいの小学校の養護の先生に保健室に置いてもらったところ、子どもたちに大人気で常に貸し出し中とのこと。子どもたちを魅了しているのはタイトルなのではないかと思っています。「本当にあった」「怖い話」など、子どもたちの興味あることばが並んでいます。子どもは怖い話が大好きです。まだネットのなかった時代でも「口さけ女」や「トイレの花子さん」は全国の子どもたちが話題にするほど広まりました。この記事を読んでいる保護者のみなさんのなかには「こっくりさん」に夢中になった経験がある方もいるのではないでしょうか。当時は口コミで広がりましたので、現実とはちがう想像のなかの怖さでした。ですがネットの時代になり、それらの想像の恐怖は具象化され、パソコンやスマホの画面から画像や動画で子どもの目にダイレクトに飛び込んできます。大人は予測して避けることができますが、子どもは怖いもの見たさにアクセスしがちです。以前、保護者向け講座で、子どもが見ているネットの世界として、ホラーサイトや子どもがアップした自傷行為の写真を紹介したところ、前置きをしておいたにも関わらず、見て具合が悪くなったというお母さんがいました。そんな世界を子どもたちは親の目の届かぬところで見ているかもしれないのです。フィルタリングは確かに子どもたちを有害情報などから守るものですが、完ぺきとは言えません。友だちのLINEやSNSで拡散された画像を見ることもあれば、友だちのスマホから見てしまうこともあります。あるいは友だちがいたずら目的で見せてくることもあります。親としては悩ましいところです。友だちがいっしょに見ようって言ったんだもんさて、わたしの子どもが小学生のときに「赤い部屋」というものがネットではやりました。サイトにアクセスするとポップアップ広告が出て、何度も消しているといきなり怖い画像がフルスクリーンで表示されるという、たちの悪いおどかし系のサイトでした。わが家はパソコンがリビングにあり、親がいないときに子どもだけでは立ち上げないという約束があったことと、怖いものが苦手な娘だったので、自宅からこういうサイトにアクセスすることはありませんでした。また、なにかのはずみでアクセスしてしまってもすぐ消すという習慣付けをしておきました。心配なのは、自由にネットを使うことができる友だちの家でのネット利用。友だちの家にお邪魔してそのようなことがあった場合どうするかということを親子で考えました。そのときに出てきた案は怖いサイトにアクセスしそうになったら、ちがう遊びに話題を変える「ホラーサイト苦手なの。マンガ貸して」といってマンガを読んでやり過ごす「そろそろ家に帰らないと」と言って帰るといったものでした。ホラーサイトの問題はわが家だけの問題ではないので、うちに友だちをよんで、なぜ子どもが怖いサイトを見てはいけないのかということを話したこともあります。びっくりしてしまうコンピュータウィルスがしかけられていて感染するとパソコンが使えなくなる夜、夢に見てしまいトイレに行けなくなる現実のことじゃなくてうそが多い……こんな話をして子どもたちが自ら有害サイトを避けて欲しいと考えました。SNSやゲームの影響力は大きく見過ごせない状況も……悲しいことにローティーンの事件のなかには、ネットが引き金となった自殺やリストカットがあります。また、静かに子どもたちに広まりつつある「自殺チャレンジゲーム」という恐ろしいものもあり、海外では自殺例まであって問題になっています。ゲームのなか、もしくはSNSでさまざまな課題が与えられ、クリアしていくうちに自殺に追いやられていくという、とんでもないものです。なんだか怖そうだけど、面白そう。どんなものかな?という好奇心だけで子どもがアクセスするのは本当に危険です。ネットはいろいろな人と出会うことができる素晴らしいツールではありますが、現実世界で「危険なところには行かない」というのと同様、ネットでも「危険な情報とつながりをつくらない」という選択が、実は子どもにとっては大切なことなのです。遠藤美季(えんどうみき)任意団体エンジェルズアイズ主宰、情報教育アドバイザー・ネット依存アドバイザー。保護者・学校関係者に対し子どものネット依存の問題の啓発活動を展開するため、2002年にエンジェルズアイズを設立。学校講演、Web上での普及啓発活動、メールによる相談活動などをおこなっている。著書に『子どものネット依存小学生からの予防と対策』(かもがわ出版)、『ネット依存から子どもを救え』(墨岡孝氏との共著、光文社)など。
2018年11月01日トップライター:川筋真貴月末になって、スマホのデータ通信に制限がかかって驚いた経験はありませんか?動画や音楽を視聴していなくてもSNSの投稿を閲覧したり、地図アプリを使ったり、友だちに写真画像や動画を送信するだけでも意外に使ってしまうのがデータ通信量。「カナヘイの通信量チェッカー」は、端末のデータ通信量の残量を簡単にチェックできるアプリです。まずは、今日のデータ通信量の確認からはじめてみませんか。タイトル画面、ストアでのアプリ検索結果の画面カナヘイの通信量チェッカー / 通信量チェッカー★カナヘイのデータ通信制限を予防するアプリアプリアイコン画像残量のなかで使用可能な目安もわかる、データ通信量チェックアプリ「カナヘイの通信量チェッカー」は、人気イラストレーター、カナヘイさんのキャラクター「ピスケとうさぎ」といっしょに、自分が使用したスマホのデータ通信量をチェックできるアプリ。自分で設定した上限をもとに、今日の通信量と今月の使用可能な残りの通信量を確認することができるので、自分やお子さんのスマホとのつきあいかたを再確認してみましょう。親子で楽しむ使い方【Android】Androidでアプリを起動すると「端末上の画像、動画、音声、Wi-Fi接続情報、電話番号、端末ID、通話状況の情報にアクセスします」というメッセージが表示されます。「同意する」をタップしましょう。「さっそく始める♪」をタップ。次の画面で料金集計の開始日を「1日」または「その他」、「わからない・そのほか」から選択します。「通信量の上限を決めよう!」の画面が表示されたら、1~30GBの間で上限を決めます。Androidでは、「設定ありがとうございます」と表示されたら設定完了。画面下部の「はじめる!」をタップして、通信量測定画面へ移ります。【iPhone・iPad】iPhoneやiPadではじめてアプリを起動すると、「通知を送信します」というメッセージが表示されます。「許可しない」をタップしましょう。※あとで、本体の「設定」から変更できます。「さっそく始める♪」をタップして、自分が使っているキャリアを選択します。「通信量の上限を決めよう!」の画面が表示されたら、1~30GBの間で上限を決めます。アラームの設定画面で、アプリをチェックする時間を設定します。「設定ありがとう!」の画面で「はじめる!」をタップすると、測定チェッカーの画面に移ります。「通信量チェッカー」画面で「けいそく!」をタップすると、いまの通信量と月末までの日数で残り何GB(ギガバイト)利用できるのかを確認することができます。通信量のチェック方法は、アプリを起動して、ホーム画面の「通信量チェッカー」画面の「けいそく!」をチェックするだけ。※Wi-Fi環境で使用している通信量の測定はできません。※家族間でデータ容量を共有している場合、全体での通信量を把握することはできません。使用量の残量は、ピスケが食べたホットケーキと数字で表示されます。通信量が多くなるとホットケーキタワーが減っていき、使用できる残量が少なくなっているのがわかります。※アプリを使いはじめてからの通信量を表示します。ホーム画面の左下にある「のこり」をタップすると「残り(通信可能量)」でできるWEBの閲覧ページ数、動画の再生時間、音楽の再生曲数、地図アプリの利用回数などの目安が表示されます。データ通信量の残量に誤差がある場合は、「設定」画面の「調節設定 / 今月の使用料」→「キャリアサポート」→自分が使用しているキャリアの「キャリアサポート」画面で実際のデータ通信量を確認して、入力しなおすことができます。ホーム画面の「プレゼント」→「壁紙プレゼント」画面で、カナヘイさんの壁紙をダウンロードできます。学ぶアプリ案内人のツボいまのデータ使用量と月末までにあとどれくらい使用できるかの目安がわかるので、どのアプリでどのくらいの通信量を使うのかをイメージしやすくなりました。計画的な使いかたを考えたり、無駄なデータ通信を控えたりするきっかけになりそうです。【DATA】アプリストアのスクリーンショット3点アプリ名:カナヘイの通信量チェッカー / 通信量チェッカー★カナヘイのデータ通信制限を予防するアプリ(UNITED, Inc.)価格:無料対象学年:すべて【iPhone・iPad】カナヘイの通信量チェッカー/id959434195?mt=8&ign-mpt=uo%3D4カテゴリー:エンターテインメントAppレーティング:4+【Android】カテゴリー:ツールコンテンツレーティング:3歳以上※紹介した手順・情報は執筆時のものです。川筋真貴(かわすじまき)中学校の国語教員を経てライターに転職。女性向けの媒体での執筆が多く、IT関係からファッション・ペット・インテリアまで、女性のライフスタイルに役立つ記事の作成を得意としている。趣味は長年続けている茶道と御朱印集め。東京都在住。
2018年10月24日トップライター:坂上さえTwitterアカウントをつくったさまざまな約束事を決めてTwitterデビューすることになった娘。インストールや設定は、わたしといっしょに行ないました。App StoreでTwitterのiPhone公式アプリをダウンロードしたら、設定開始です。Twitterアカウントの作り方(iPhone公式アプリの例)「アカウントを作成」画面で、名前と電話番号(またはメールアドレス)を登録「アカウントを作成」画面で「登録する」をタップパスワードを設定「連絡先の同期」画面で「今はしない」をタップ「興味のあるトピックを選ぶか、検索して追加してください」画面で「今はしない」をタップ「おすすめのアカウント」画面では、出てくるアカウントをフォローせず「次へ」をタップ「通知をオンにする」画面では、「今はしない」をタップ「Twitterへようこそ」画面で「使ってみる」をタップアカウント名は約束どおり、名前や学校名、LINEアカウントなどとは関係ないものにしました。※第61回Twitter、どう付きあおう?参照また、つながる人は慎重に選んでほしいので、スマホ内の連絡先と自動的につながる設定にはしませんでした。※ツイッターのヘルプセンター連絡先の同期についての詳細アカウントの登録自体はとても簡単で、ものの3分もあれば完了です。でも、4番から7番の設定で、目立つ方・興味が引かれる方をタップすると、初期段階でいろいろなアカウントとつながってしまいます。慎重なアカウントづくりのポイントは、これらの設定で基本的に「NO」となるようにタップすること。こうしておけば、だれともつながっていないアカウントができるので、じっくりフォロー先を選べます。おすすめアカウントが紹介されるが、フォローしなくてOK余談ですが、おすすめアカウントで上位に表示されていたのが、ダライ・ラマ、ティム・クック(アップル社CEO)、ビル・ゲイツという、なんとも濃い人選でした。娘は「これはフォローしないでしょ……」と笑っていましたが、Twitterが世界とダイレクトにつながっているツールであることを実感したようです。プロフィールは地味に次はプロフィールの登録です。人型アイコンをタップすると、設定画面に遷移する プロフィール設定のしかた(iPhone公式アプリの例)左上の人型アイコンをタップ「プロフィールを入力」をタッププロフィール画像をアップロードカバー画像をアップロード自己紹介を入力「どちらにお住まいですか?」画面で「後で入力する」をタップ「“Twitter”の使用中に位置情報の利用を許可しますか?」で「許可しない」をタップ「“Twitter”は通知を送信します。よろしいですか?」で「許可しない」をタップここでのポイントは、3番から5番の自己紹介の画像と文章で個人を特定されないようにすること、そして6番から8番の設定で“NO”や“後で”を選ぶことです。娘はプロフィール画像に、普段使っている文具など、娘を知っている人であればピンとくるけれど、ほかの人には意味をなさない画像を選んでいました。手慣れたものですね。プロフィールはあとで入力することにしたようです。非公開アカウントに設定Twitterは非公開アカウントで使うことを約束したので、次はその設定をします。非公開アカウントの設定のしかた(iPhone公式アプリの例)左上のプロフィールのアイコンをタップ設定とプライバシー>プライバシーとセキュリティ>「ツイートを非公開にする」をオンにするその他の設定を確認する。「自分を画像にタグ付けすることを許可」はオフ「すべてのアカウントからメッセージを受け取る」はオフ「Periscopeと連携」をオフ一番上のツイートを非公開にするをオフ(緑色)に、自分の画像にタグ漬けすることなどの許可をオフに設定したこれで最低限の設定が終わりました。SNSは基本的に人脈を広げるための道具ですから、ふつうにタップしていくと、スマホ内の連絡先が同期されたり、リアルで知らない人とつながったり、だれでもつぶやきを見ることができる公開アカウントに設定されるようになっています。娘にはTwitterをできる限り慎重に使ってほしいので、いっしょに設定してよかったとつくづく思いました。さて次回は、娘が最も嫌がっているわたしとのフォロー/フォロワー設定、そして基本的な操作の練習です。坂上さえ(さかがみさえ)大学卒業直後からIT関係の仕事に従事する。子どもの小学校入学を機に退職し、現在はフリーのプランナーとして、子ども向けのWebゲームや学習コンテンツの企画にいそしんでいる。趣味はスキューバダイビングと滝をみること。紅海でダイビングし、ヴィクトリアの滝をおがむのが夢。東京在住のB型、大1男子・中3女子の母。
2018年10月18日専門家・プロ:渡邉純子(コドモット)トラブルにあった子どもは16.2%で増加中今回も、東京都の「家庭等における青少年の携帯電話・スマートフォン等の利用等に関する調査」(平成29年度)※1を読み解きます。この調査では、携帯・スマホのトラブルの有無と内容について聞いています。「お子さんが携帯電話・スマートフォンを利用する中で、どのようなトラブルに遭ったことがありますか。(いくつでも)」という設問に対して、最も多かったのは「トラブルに遭ったことはない」の70.1%です。<<トラブルの有無・内容>>お子さんが携帯電話・スマートフォンを利用する中で、どのようなトラブルに遭ったことがありますか。(いくつでも)東京都「家庭等における青少年の携帯電話・スマートフォン等の利用等に関する調査」 (平成29年度)」よりなんらかのトラブルがあったとした回答の合計は16.2%で、前回調査(平成28年度)より6.5ポイント増えています。東京都の子どもは、約6人に1人が携帯・スマホでトラブルを経験しており、増加傾向にあるということがわかりました。トラブルの内容を見てみると、友だちとのトラブル、チェーンメール、歩きスマホといった従来型のもの、高額請求、個人情報を盗まれた、自画撮りのような深刻なものまでさまざまです。子どもが慎重なネットの使い方をしていても、トラブルに巻き込まれたり、周囲の悪意にさらされるケースはないとはいえません。もしも子どもがトラブルにあったときには、保護者などの大人に相談したり、行政のネットトラブルの相談窓口や場合によっては警察に相談することが大前提です。絶対に子どもだけで解決しようと思わないことが大事だと、お子さんによく伝え、理解してもらい、親に話しにくいときのために、相談窓口の連絡先などの情報を共有しておいてください。保護者としての課題は、知識・コミュニケーション・興味関心さて、この調査では保護者自身の課題意識についても聞いています。「携帯電話・スマートフォン・インターネットを、お子さんが正しく使用するために、保護者として必要な課題は何だと思いますか。(2つまで)」という質問についてみていきます。<<保護者として必要な課題>>携帯電話・スマートフォン・インターネットを、お子さんが正しく使用するために、保護者として必要な課題は何だと思いますか。(2つまで)東京都「家庭等における青少年の携帯電話・スマートフォン等の利用等に関する調査」 (平成29年度)」より保護者が考える課題の上位3つは次の回答です。インターネットや携帯電話等について、子供に教育できる 十分な知識を身につけること43.5%親子のコミュニケーションを緊密にすること37.4%子供の使用状況について、保護者がもっと関心を払うこ と30.9%保護者に、知識不足や子どもとのコミュニケーション不足、子どもの使い方についての関心不足について自覚があることがわかります。もっと興味をさて、今回あげた2つの調査結果で、非常に気になっていることがあります。それは、子どもの携帯・スマホの使い方に関して、保護者の興味関心が薄くなっている傾向が見られることです。子どものネットトラブルの有無についての質問で2番目に多かったのは、「わからない(13.7%)」という回答でした。子どもの携帯・スマホの使い方が放任気味になっているのではないかと危惧します。また、保護者として必要な課題についての質問でも、2位は親子のコミュニケーション不足、3位は子どもの使用状況への関心不足で、関心の薄さを感じさせる回答が上位に入っています。さらによく見てみると、「今のままで問題ない」という回答が前回より2.7ポイント増えています。一方、課題としてあげられている項目では、ほとんどが昨年よりも数値を減らしています。「うちの子は携帯・スマホをうまく使っている、いまのままでOK」と感じる保護者がじわりと増えているのです。しかしながら、子どものネットトラブルは前回調査よりも6.5ポイント増えているわけで、保護者のこの傾向はよろしくありません。子どもがどんなふうにスマホを使っているのか、愛情をもって注意深く見守ることは、保護者にしかできない応援のしかたです。思春期のお子さんにいやがられたとしても、見守りは保護者の仕事と腹をくくって、わが子がどんなふうに携帯・スマホを使っているのか、関心をもち続けてほしいと思います。※1 東京都「家庭等における青少年の携帯電話・スマートフォン等の利用等に関する調査」 (平成29年度)渡邉純子(コドモット)(わたなべじゅんこ)株式会社コドモット代表取締役社長。NTT在籍時代の2001年、子ども向けポータルサイト「キッズgoo」を立ち上げ、同サイトでデジタルコンテンツグランプリ・エデュテイメント賞受賞。独立後は小学生向けのコンテンツを中心に、企業の子ども向けWebサイトや公共団体の子ども向けツールなどの企画制作を数多く手がける。一男一女の母。
2018年10月09日トップライター:坂上さええっ、いいの?前回(第60回)、娘のTwitterデビューにあたって細かい注文をつけたわたし。始めが肝心とばかりに、いろいろな項目を挙げました。<娘の自己申告>かぎアカにするリアルに知っている人とだけつながるかぎアカでも、スクリーンショットが出回ったりするから、個人情報や不用意なことはつぶやかない<わたしの要望>アカウント名・ユーザID・プロフィールは、氏名や学校名、LINEアカウントなどが類推できないようなものにするタレントやテレビ番組などのアカウントはフォローせず、ハッシュタグからの検索だけにする急上昇ワードはあまり見ないようにする番組を見たあとに感想を検索しないリツイート禁止エアリプ禁止親に見られたら気まずいと感じるようなつぶやきはしないさて、娘の反応はどうだったのでしょう?実は意外なことに、多くの項目で「それはそうだよね~」という同意だったのです。わたしと娘の意見が合った!娘が言うには、「ちょっと厳しいけど、Twitterはわたしにとって背伸びしたSNSだから、はじめはこんなもんだと思う」だそう。アカウント名については、他校の友だちで、学校名やクラス名をわかりやすい略称にしていろいろつぶやいていて、先生に注意された子もいるそう。「学校名を隠したつもりでも見え見えなんだもん」と冷静です。番組後の検索についても、わたしと同意見でした。以前、すごく感動したコンサートのあとブラウザでTwitterをチラ見したら、感動に水を差すようなつぶやきがたくさんあり、がっかりした経験があるのだそう。リツイート禁止については、「リツイはよくやり方がわからないし、かぎアカでリツイしてもしょうがない。」とのこと。確かに……エアリプ禁止については、「エアリプはLINEのステメ(ステータスメッセージ:自己紹介文)で十分。」だそうで、思わず笑ってしまいました。妥協点を探した娘から提案があったのは2つの項目です。1つ目は、タレントやテレビ番組などのアカウントはフォローしないという項目。「本当に興味があるアーティストの公式アカだけだったらフォローしていいでしょ?」むやみにフォローして、情報過多になってしまうことを懸念してのことでしたが、確かに公式アカウントだけであれば、タイムラインが情報であふれかえることはなさそうです。具体的にフォローしたいアカウントを聞いてみたらCDを持っていたり、日ごろ名前を聞くアーティストばかりでした。情報を求めて何度も検索することと天秤にかけると、公式アカウントのみフォローOKは妥当な着地点に思えてきました。娘に一本。もう1つは、急上昇ワードはあまり見ないようにするという項目でした。「急上昇は見ちゃうと思う」その気もち、わかります。わたしもつい見てしまっています。でも、急上昇ワードの怖さは、常に「いま」を切り取っているから、やめどころがないことです。どうやったらほどよく切り上げることが出来るのでしょう?わたしはタイマーで乗り切りましたが、娘はどうでしょうか。これは継続審議。使いながら抑制するしくみを考えることにしましょう。ここは踏ん張りどころ娘が激しく抵抗したのは、親に見られたら気まずいと感じるようなつぶやきはしないという項目です。「わたしのアカウントをフォローするってこと?いやだよ!」でも、かぎアカで運用するなら、フォローしておかないと状況がつかめないので、これは譲れないところです。とはいえ、わたしには娘のつぶやきを逐一チェックしたい気もちはありません。なにかあったときに見られるようになっていればいいんです。そこで、息子のTwitterアカウントでかつてやっていた、フォロー&ミュートを提案しました。わたしの個人アカウント(非公開アカウント)で娘をフォローし、同時にミュート(発言が見えないようにする設定のこと)しておくのです。なにか不穏なようすを感じたら、わたしがミュートを解除すればつぶやきを見ることができますが、普段はわたしからは見えないという設定です。かつて息子に大変嫌がられつつも、強引に導入したこのフォロー&ミュートですが、結局トラブルがなかったため全く内容を見ることなく過ごし、大学入学時にフォローを解消しました。でも、息子はいざとなったら親が関与してくるかも、という緊張感は感じていたようでしたので、抑止力にはなっていたようです。兄からも情報収集をした娘、「あんまり見ないでね!」と最後まで抵抗しつつも、どうにかこのフォロー&ミュート案を了承したのでした。次ページへ「第62回Twitterの設定、慎重に」坂上さえ(さかがみさえ)大学卒業直後からIT関係の仕事に従事する。子どもの小学校入学を機に退職し、現在はフリーのプランナーとして、子ども向けのWebゲームや学習コンテンツの企画にいそしんでいる。趣味はスキューバダイビングと滝をみること。紅海でダイビングし、ヴィクトリアの滝をおがむのが夢。東京在住のB型、大1男子・中3女子の母。
2018年10月04日専門家・プロ:高橋大洋子どもがネット動画を見ている保護者に共通の悩みに、「やめられない」「止まらない」があります。保護者はどうすればよいのでしょうか。軽く考えると一生後悔する?長時間利用問題最新の全国調査※1によれば、中学生の56.7%が、平日1日あたり2時間以上ネットを利用しています。小学校高学年でも、33.4%が2時間以上利用するなど、低年齢化も進んでいます。Photo by Mpho Mojapelo on Unsplash小学生の段階から人気が高いネット利用は、「動画」と「ゲーム」です。とくに、「動画」の長時間利用に悩む家庭は少なくありません。ネット利用が長くなったとき、最初に犠牲になるのは睡眠時間ですから心配も当然です。睡眠は、健康や発達の大切な基礎です。低年齢の時点での睡眠不足の慢性化は、成長後の睡眠障害などの原因にもなります。長時間利用は、子どもたちの一生に関わる問題なのです。つい長時間になるのはうちの子の意思が弱いから?動画の視聴がほどよいところでやめられないのは、わが子の意思が弱いからでしょうか。よその子たちは上手に切り上げられているのでしょうか?もちろんそんなことはありません。ネット動画の多くが、掲載広告と引き換えに無料で楽しめます。運営会社は、より多くの人に、より長く広告を見てもらえるよう、さまざまな工夫をこらします。たとえばYouTubeでは、目あての動画を見終わると必ず、「次の動画」が表示されます。推薦されるのは、自分自身の好みにぴったり合った動画です。自制心がまだ弱く、好奇心おうせいな子どもたちは、そうした働きかけにあらがえません。運営会社の思惑どおり、次々に動画とそれに付随してくる広告を見ることになります。まずは「終わりの時間」に集中してみようどうしたら動画視聴の長時間化に歯止めをかけられるのでしょうか。家庭での取り組みの第一歩は、ネット利用に使える時間帯を親子でいっしょに計算するところからです。個人差はあっても、小学生(6〜12歳)段階での望ましい睡眠は9〜12時間※2です。起きる時間は、学校に行く時間と身支度や朝食にかかる時間で決まるので、簡単な引き算で就寝の時間が決まります。睡眠の質を保つため、就寝1時間前をネット動画視聴の「終わりの時間」とします。※3まず保護者が集中すべきは、睡眠や「終わりの時間」の大切さを子どもとよく話し合い、理解させたうえで、毎日守らせることです。「一晩くらい大丈夫」、「寝るときにベッドで動画を見たい」、「友だちもみんな遅くまで起きている」などの反論には、寝だめはできないこと寝る直前の光の刺激は睡眠の質を下げるので同じ睡眠時間でも効果が下がること人間の身体は適切な睡眠なしで能力を発揮できないので、ロナウドや大谷翔平など有名なスポーツ選手はだれもが睡眠をとても大切にしていることなどを説明しましょう。Photo by Simon Matzinger on Unsplashまた「子どもがなにを見ているか」の不満は、いったん切り離して考えることが大切です。保護者は、「子どもにはヘンなもの、クダラナイものは見せたくない」と考えます。しかし、その動画の価値を、わたしたち大人が将来を予見して判断することなどできません。「見たい」「分かる」「価値がある」という子どもなりの判断を頭ごなしに否定する方がマイナスと考えましょう。「終わりの時間」さえ動かなければ、いずれ子どもの側も見るものに優先度をつけるようになるのです。Windows10など、パソコンの基本ソフトには利用時間帯を制限する機能が備わっています。この秋以降、スマホやタブレットにも同様の機能が標準装備される見込みです。そうしたツールを使えば、さらに確実に「終わりの時間」を守らせることができるでしょう。ネット動画について考えるうえでは、家庭学習時間や他の遊びとのバランスなども気になります。しかし、睡眠リズムが守られていなければ、学習や遊びは充実させられません。まずは睡眠の確保に集中しましょう。次回は、まだあまり知られていない、「子ども専用のYouTubeアプリ」についてご紹介します。※1平成29年度 青少年のインターネット利用環境実態調査※2米国睡眠医学会(AASM)※3子どもたちのインターネット利用について考える研究会高橋大洋(たかはしたいよう)株式会社ミヤノモリ・ラボラトリー 代表取締役。2008年より、「子どもとインターネット」領域での保護者や学校支援に取り組んでいる。「ネットとのつきあい方をオトナにもわかりやすく」をモットーに研修講師、教材開発、執筆、自治体の会議委員など幅広く活動中。子どもたちのインターネット利用について考える研究会(子どもネット研)事務局。ピットクルー株式会社インターネット利用者行動研究室 室長。一般社団法人セーファーインターネット協会 主席研究員。2児の父。
2018年09月28日専門家・プロ:遠藤美季教育のシーンにもタブレットやスマホが今回は社会の変化とデジタルネイティブの子育て、とくに教育との関係について考えてみましょう。くどいようですが、子どもたちの生活のなかでネットを遠ざけることは難しくなっています。子どもが通う学校でも、プログラミングやタブレットを使った学習だけでなく、登下校の管理にスマホを使ったり、語学の授業に教師ロボットがとりいれられたりと、多様なICTの導入が進められています。さらに部活の連絡に、親も子どももSNSを使う現状があります。このような状況に向き合うため、家庭だけでなく学校の先生と情報や課題を共有しながら、スマホやタブレットの家庭での管理について親子でいっしょに考える機会を作っておくといいでしょう。困っているんですわが子のスマホ依存を心配する親の話を聞いていると、必ずしも親が納得して端末を与えているわけではないのだと改めて感じることがあります。「本当はまだ早いと思っていたのだけれど、同じ部活の親から、連絡に困るからお子さんにスマホ買ってあげてと言われて買うしかなかった。」「学校で学習用にタブレットを全員購入しなくてはならず、買ったのだけれどYouTubeばかり見ていて困る。先生に話すと、YouTubeは授業でも使うので削除しないように言われた」など。ご家庭でスマホやタブレットを持たせるタイミングや使うコンテンツを計画している親にとっては頭の痛いことですね。とくにお子さんの勉強への影響を心配する親にとって、その悩みは重くのしかかっているように感じます。「うちはうち」というスタンスを貫きたいところですが、先輩ママから半強制的に言われたり、学校からの要請とあればそれも難しい。「わが子を思う親心やわが家の事情」よりも「自分が迷惑をかけているような気もち」が勝ってしまったり、「どうにもならない状況」にいると気付き、もやもやしながらも子ども用のスマホを購入してしまうようです。スマホ包囲網がわが家にせまってくる悩みは深刻です。そんなときはばく然と不安に思うより、気持ちを切り替えて「スマホを上手に教えられる親になって、上手に使える子に育てよう」と考えてみてはいかがでしょう。学校+家庭のトータルで考えてさて、学校の授業でタブレットを利用するようになれば、視力低下や、のちに失明にかかわる眼病のきっかけになると心配されるブルーライトを浴びる量が多くなります。※家庭のタブレットやスマホの利用をいままでより減らすなど、学校+家庭の時間のトータルで考えましょう。そして現在目が悪くなくても、ブルーライトを軽減するメガネの使用や、端末にブルーライトを軽減するスクリーンシートを貼るなどの工夫も必要です。そして、スマホと健康について子どもといっしょに考え、親の表情や言い回しで、使い過ぎることのリスクを伝えていけるといいと思います。たとえば、心配そうな表情で「目が悪くなったら、大好きなお父さんやお母さんの顔も見えなくなっちゃうんだよ」というように。端末にもひと工夫を利用時間だけでなく、端末についてもひと工夫するといいかもしれません。学校で授業に使っても、子どもはスマホやタブレットを鉛筆やノート、参考書と同じように学習目的だけに使用するものだとは考えません。CMを見てもスマホは楽しいことが満載の道具として宣伝されていますし、実際大人でも勉強に使っている人は少ないですよね。子どもはCMや親の姿、友だちからの情報から、スマホは「友だちとの連絡や調べ物、買い物、動画、ゲームの道具」と学びます。実際にスマホやタブレットを勉強に使っているという子に聞くと、勉強や調べ物に利用していても、友だちからのメッセージや動画やゲームの通知に反応してしまうといいます。もちろん自分で通知をオフにできるようになるまで、親がていねいにかかわっていければ問題ないのですが、それが無理なうちは学習用とそれ以外の利用端末を分けるのも対策の一つだと思います。勉強専用の端末をいつもの端末と別に用意するやり方です。これなら、子どもがいま勉強に使っているのか遊んでいるのか一目瞭然ですよね。少々費用がかかり無駄なように感じますが、勉強と遊びの切り替えが苦手な子にはそのような対策も考えてみてはいかがでしょうか。※ブルーライトに関する記事遠藤美季(えんどうみき)任意団体エンジェルズアイズ主宰、情報教育アドバイザー・ネット依存アドバイザー。保護者・学校関係者に対し子どものネット依存の問題の啓発活動を展開するため、2002年にエンジェルズアイズを設立。学校講演、Web上での普及啓発活動、メールによる相談活動などをおこなっている。著書に『子どものネット依存小学生からの予防と対策』(かもがわ出版)、『ネット依存から子どもを救え』(墨岡孝氏との共著、光文社)など。
2018年09月27日専門家・プロ:渡邉純子(コドモット)悪影響を感じる保護者、東京都で5割超前回に引き続き、東京都の「家庭等における青少年の携帯電話・スマートフォン等の利用等に関する調査」(平成29年度)※1から、気になるデータを読み解いていきます。この調査では、子どもが携帯・スマホを持ったことによる悪影響やトラブルについて、保護者に聞いています。「お子さんに携帯電話・スマートフォンを持たせたことにより、どのような悪影響がありましたか。(いくつでも)」という設問に対して、「悪影響は特にない」という回答は48.8%にとどまり、2人に1人以上の保護者が携帯・スマホの悪影響を感じていることがわかりました。お子さんに携帯電話・スマートフォンを持たせたことにより、どのような悪影響がありましたか。(いくつでも)東京都「家庭等における青少年の携帯電話・スマートフォン等の利用等に関する調査」 (平成29年度)」より何らかの悪影響があったとした回答の合計は51.2%です。悪影響のうち、上位3つは次の回答項目です。睡眠不足になった19.9%視力が落ちた18.7%勉強に集中できなくなったり、記憶力が下がったりした15.3%以下、次の回答が続きます。家族や友達と過ごす時間が減った(手伝いをしない、外で遊ばない等)12.7%猫背になったり、巻き肩になるなど、姿勢が悪くなった12.3%成績が下がった10.7%肩こりや頭痛、めまい等の不調を訴えるようになった4.1%健康に関する悪影響を感じている保護者が多いことがわかります。睡眠不足でイライラ睡眠不足、視力低下、悪い姿勢、体の不調……どの項目をとりあげても、心身の成長期にある子どもたちにとっては大問題です。とくに睡眠不足は心身の成長の大敵。携帯・スマホの時間が生活時間を侵食し、睡眠時間を削って帳尻を合わせるような生活は、子どもの心身の成長に取り返しのつかない影を落としかねません。小学生と中学生では、就寝時刻が遅いほど、イライラすることが「よくある」 「ときどきある」の割合が高いという調査結果もあります。※2子どもが携帯・スマホに夢中で、睡眠時間を削ってまでいじり、イライラしてキレてしまう……「しかたなく」(前回記事参照)持たせたスマホでそんなことになってしまったら大変です。削るべきは睡眠ではなく、携帯・スマホの時間だということを、きちんと子どもに伝えていかなくてはなりませんね。視力と姿勢にも要注意視力低下も、学齢期の子どもをもつ保護者にはおおいに気になるところです。最近では、目から近い距離でスマホを見続けることで目の機能が低下する「スマホ老眼」などという言葉もあるくらいです。近視の度合いによっては、つけない職業も存在します(パイロットや警察官など)。いまのスマホの使いすぎが、将来子どもの可能性をせばめてしまっては悔いが残ります。姿勢についても、携帯・スマホの使いすぎによる姿勢の悪化で、「背筋をのばしてね」という小さいころからの家庭での習慣づけが、だいなしになりかねません。回答に出てきた巻き肩とは、肩が前方に出て内側に丸まった姿勢のこと。スマホを見るとき、前かがみの姿勢でうつむいているとなりやすいとされています。猫背や巻き肩は、肩こりや頭痛、肺活量の減少の原因になるとの指摘もあります。家庭全体で適正な使い方をもちろん、目をリラックスさせるストレッチ、猫背や巻き肩のコリをほぐす体操などもありますが、成長期の子どもには、寝不足解消のためにも、使う時間をコントロールしていくほうが先決でしょう。また、携帯・スマホありきではなく、機器の選択も考えてみてください。画面が狭く手元で見るしかないスマホではなく、画面が大きく距離をとってみる必要があるパソコンモニタのほうが、視力やいい姿勢の維持に良いとされています。また、保護者のみなさんも、一度自分が携帯・スマホを使っている姿勢を確認してみてください。家族のだれかに写真やムービーをとってもらえば一目瞭然です。自分の姿勢の意外な悪さにびっくりするかもしれません。携帯・スマホを適正に使う方法について、家庭で習慣づけていけるようにしたいものです。※1 東京都「家庭等における青少年の携帯電話・スマートフォン等の利用等に関する調査」 (平成29年度)※2 睡眠を中心とした生活習慣と子供の自立等との関係性に関する調査の結果(概要)平成26年文部科学省渡邉純子(コドモット)(わたなべじゅんこ)株式会社コドモット代表取締役社長。NTT在籍時代の2001年、子ども向けポータルサイト「キッズgoo」を立ち上げ、同サイトでデジタルコンテンツグランプリ・エデュテイメント賞受賞。独立後は小学生向けのコンテンツを中心に、企業の子ども向けWebサイトや公共団体の子ども向けツールなどの企画制作を数多く手がける。一男一女の母。
2018年09月25日トップライター:坂上さえTwitterについて、どのくらい知ってる?海外の友だちとのやりとりにTwitterを使いたいと言う娘。かぎアカ(非公開アカウント)で使うとはいえ、なにかと世間を騒がす事件が多いTwitterなので、わたしは不安がぬぐえません。娘はTwitterについてどのくらい知識があるのでしょうか。聞いてみたところ、“バカッター”などと言われ、ひんしゅくを買うような投稿が炎上したり、なにか事がおこったときに過去のツイートから身元がわかってしまったりというような、Twitterにまつわる事件のことをよく知っていました。学校のSNS教室で、Twitterがきっかけでおきた数々のトラブルについて、情報提供と注意喚起があったのだそうです。同時に、有名人やテレビ番組、YouTubeなどの公式アカウントの発信する情報、いま現在おきていることについての情報が豊富なことも知っていました。ただの“あこがれ”からTwitterを使いたがっていたのではないとわかったことは安心材料です。とはいえ、似たような属性をもつ子とつながることが多いLINEと異なり、Twitterは完全な大人文化のサービスです。万が一にも騒ぎに巻き込まれないように、Twitterを使うときに気をつけることについて、娘と話しました。Twitter、どう付き合うか考える娘から出た意見です。かぎアカにするリアルに知っている人とだけつながるかぎアカでも、スクリーンショットが出回ったりするから、個人情報や不用意なことはつぶやかない基本中の基本については、さすがにきちんと押さえていました。それをふまえ、わたしはこんなふうに使ってほしいと言いました。まずは前提から。アカウント名・ユーザID・プロフィールは、氏名や学校名、LINEアカウントなどが類推できないようなものにする※アカウント名とは、Twitter上の名前のこと。ユーザIDは、@がついた識別記号のこと。Twitterは本当にいろいろな人が見ています。個人の特定をさけるため、他のSNSとつながらないように、独立した運用をしてほしいのです。Twitter、情報の受信はひかえめに娘のTwitter利用は、海外の友だちとのやりとりのほかには、情報の受信が中心になるようです。自分の経験からも、Twitterには時間泥棒の側面がありますので、情報受信はできるだけ絞り込んでほしいと伝えました。<情報を受信するとき>タレントやテレビ番組などのアカウントはフォローせず、ハッシュタグからの検索だけにする(理由)タイムラインに表示されると、それほど興味がなくともつい見てしまう。興味があるときに検索して調べる程度の付き合い方にしてほしいから。急上昇ワードはあまり見ないようにする(理由)つぶやきは無限に生成されるので、いちいち見ていたらきりがない。流行しているものではなくて、自分の知りたい情報を見るために使ってほしいから。番組を見たあとに感想を検索しない(理由)自分の感想は自分のもの。自分の感情を自分で消化する習慣をつけてほしいから。リツイ、エアリプはNGTwitterでの発信は「あんまりつぶやくネタもないから、やりとりはDM(ダイレクトメッセージ)でやろうと思っている」とのこと。とはいっても、発信は0ではないでしょうから、慎重にしてほしいのです。<情報を発信するとき>リツイート禁止(理由)情報通でもない娘が知っている情報は、フォロワーも知っている。引用は自分の言葉で発信するよりも難しいことなので、初心者のうちは控えてほしいから。エアリプ禁止※エアリプとは、本来は@をつけて個人に返信するべきところを、特定の相手を想定しつつ、だれにともなくつぶやくやり方のこと。(理由)「聞こえよがし」のつぶやきは、いらぬトラブルのもとだから。そして、親に見られたら気まずいと感じるようなつぶやきはしないでほしいとも伝えました。心配がつのって、あれこれと注文が多い親になってしまいましたが、娘の反応はどうだったのでしょう。次回に続きます。坂上さえ(さかがみさえ)大学卒業直後からIT関係の仕事に従事する。子どもの小学校入学を機に退職し、現在はフリーのプランナーとして、子ども向けのWebゲームや学習コンテンツの企画にいそしんでいる。趣味はスキューバダイビングと滝をみること。紅海でダイビングし、ヴィクトリアの滝をおがむのが夢。東京在住のB型、大1男子・中3女子の母。
2018年09月20日専門家・プロ:渡邉純子(コドモット)東京都調査からみえる親のかっとう今回は、東京都の「家庭等における青少年の携帯電話・スマートフォン等の利用等に関する調査」(平成29年度)※1から、スマホや携帯電話を子どもに使わせている保護者について、その実態をみていきます。この調査は東京都が平成26年から毎年行なっており、都内在住の青少年の保護者を対象に、携帯電話・スマホの所有率や保護者の意識などについて調べています。前回までお伝えしてきた内閣府の調査と重なる部分も多いのですが、より細かく調べている項目もありますので、その内容を中心にお伝えしていきます。はじめに、子どもにスマホを持たせた理由についてみてみます。東京都「家庭等における青少年の携帯電話・スマートフォン等の利用等に関する調査」 (平成29年度)」より。なお当該質問項目は複数回答です。最も多いのが、「子供にせがまれたため仕方なく持たせた」で33.1%、2番目が「子供の所在地がわかるようにするため」で30.8%。この2つの回答が飛び抜けて多くなっています。「子供にせがまれたため仕方なく」という理由は、実にリアルで、保護者のかっとうがみえるようです。同じ状況で心揺れている保護者の方も多いことと思います。さて、子どもの安全にかかわる「子供の所在地がわかるように」という回答を学校種別ごとにみてみます。小学生が 42.6%、中学生は 37.4%で、高校生の19.6%に比べ割合が高くなっています。学齢の低い子どもの保護者ほど子どもの居場所把握に敏感なことがわかります。ポジティブな理由で選ぶ保護者もさて、回答のうち3番目に多かったのは、「持たせた方が、メディアリテラシーや情報処理能力がつくと思ったため」の14.9%です。学校種別ごとにみると、小学生が24.4%で、中学生(12.7%)、高校生(12.6%)のおよそ2倍と高いのが興味深いところです。早めにスマホを持たせてリテラシーを鍛えることを選択した小学生の保護者が一定数いることがわかります。東京都「家庭等における青少年の携帯電話・スマートフォン等の利用等に関する調査」 (平成29年度)」より「携帯電話にはない便利なアプリ等を使用するため(11.0%)」、「パソコンの代わり(7.0%)」「学校の授業・宿題等で必要なため(6.6%)」も、大きなくくりで分類すると、ICTのポジティブ利用といえるでしょう。子どもにスマホを持たせる理由は、“しかたなく”と“居場所把握”、ぐっと離れて“ポジティブ利用”の3つに大別されることが調査結果からみえてきました。7割×7割=5割未満この調査でも、スマホ・携帯電話を使うにあたって家庭内でなんらかのルールを作っている保護者は7割を超えています。東京都「家庭等における青少年の携帯電話・スマートフォン等の利用等に関する調査」 (平成29年度)」よりそして、作ったルールが「守られている」「だいたい守られている」と回答した保護者は7割以上となっています。東京都「家庭等における青少年の携帯電話・スマートフォン等の利用等に関する調査」 (平成29年度)」よりさて、ここでひとつ簡単な計算をしてみましょう。0.7×0.7=0.49全体の7割の家庭でルールが決められていて、その7割がおおむね守られている、ということを単純に計算すると、上記のとおり。ルールが守られているのは全体の家庭の5割を切っているということになります。そのことを示す調査結果があります。子どもの携帯電話・スマホの利用を適切に監督できているかという質問では、「利用状況は把握しているが、監督まではできていない」が42.6%。「利用状況を把握しておらず、監督もできていない」の13.9%を合わせると、5割以上の保護者が子どもの携帯電話・スマホの利用を監督できていないと回答しています。上記の計算とおおむね合致しますね。東京都「家庭等における青少年の携帯電話・スマートフォン等の利用等に関する調査」 (平成29年度)」よりなにごとも、決まりを作ることは難しいけれど、それを守っていくことはもっと難しいもの。スマホルールも例外ではありません。このことは、今後も悩ましい課題として保護者が向き合って考えていかなければならないようです。※1東京都「家庭等における青少年の携帯電話・スマートフォン等の利用等に関する調査」 (平成29年度)渡邉純子(コドモット)(わたなべじゅんこ)株式会社コドモット代表取締役社長。NTT在籍時代の2001年、子ども向けポータルサイト「キッズgoo」を立ち上げ、同サイトでデジタルコンテンツグランプリ・エデュテイメント賞受賞。独立後は小学生向けのコンテンツを中心に、企業の子ども向けWebサイトや公共団体の子ども向けツールなどの企画制作を数多く手がける。一男一女の母。
2018年09月11日専門家・プロ:遠藤美季ネットが利用できる端末ごとに特徴を考えてみようデジタル機器が日常生活にあふれた環境で育つ子どもたちについて考える第2回は、利用する端末についてです。いまの子どもたちは小さいときからさまざまな端末に親しみながらネットを利用しています。パソコン、スマホ、ガラケー、タブレット、TV、ゲーム機などに加え、今年はAIスピーカー※が家庭にあるという子にも数人出会いました。スマホだけでなく、家庭内にちりばめられた複数の端末を使いこなしているようすがうかがえます。※音声操作に対応したAIアシスタントが利用可能なスピーカー。スマートスピーカーともいうそれぞれの端末には特徴があります。スマホを例にして考えてみましょう。スマホはパソコンに比べるとはるかに小さく、子どもの手でも無理なく使うことができますが、使うときの姿勢を考えると心配です。まず、スマホに顔を近づけて利用しなくてはならないため、目への負担は大きくなります。スマホやパソコンから出ている“ブルーライト”は近くで浴びるほどリスクが高くなり目への悪影響が指摘されているからです。また顔から15cm~20cmの位置で見るため、より目や片眼視のくせがつくおそれもあります。ストレートネックのリスクも心配ですね。ストレートネックとは、本来重たい頭を支えるため柔軟に少しカーブしている首の骨が、うつむき加減の同じ姿勢が長時間続くことで、文字どおりまっすぐになってしまうこと。スマホなどを悪い姿勢のまま長時間同じ姿勢で使っていると、ストレートネックになりやすいのです。ストレートネックは肩こり、頭痛の原因になるだけでなく、気持ちの落ち込みや疲れもひきおこします。これらの点を考えただけでも、利用する子どもの年齢や体の大きさ、健康を考えた端末選びが必要になることがわかりますね。ブルーライトに関してはブルーライト軽減のメガネもありますが、まずは間近で浴びることを避けるようにしたいところです。そのためにはなるべくスマホよりパソコンを利用することがおすすめです。またパソコンを使うならば、大きなモニターで目からの距離をあけたり、目の高さに合わせて利用すると心身への負担はかなり軽減されます。ストレーネックにならないようにするためには、まずスマホやタブレットを使用するときの姿勢に注意しましょう。うつむき加減や、寝そべった姿勢で長時間利用するのはNGです。ときに首のストレッチも取り入れましょう。そして自分の頭を支える首の骨をイメージしながら「いま首はこんな状態」など意識して首に負担がかからないように姿勢を正しましょう。こんなふうに、家庭にある端末ごとに、特徴やメリット・デメリット、どう付き合うかを考えることは、とても重要です。とくにスマホは、他の端末に比べて依存性が高いと指摘されていること※1も考慮に入れておきましょう。端末は成長に合わせてバージョンアップここで、わが家のことをふり返ってみます。わが子の子ども時代でも、ゲーム機やガラケーなど新しいデジタル端末が出るたびに、小中学生は「みんな持ってるから自分も欲しい」と親に訴える傾向はありました。いつの時代も変わらない光景ですね。でもわたしは、端末の特徴を親子で理解したうえで、わが子の心身の成長に合わせた端末選びを心がけていました。経験を積みながら、安全性を自分で理解して操作できるよう、自分で判断できる力をつけさせることが大事と考えていたからです。ネットを利用する端末も、パソコンからタブレット、ガラケーもしくはスマホというように、年齢と必要性に応じて端末選びをするのも大事な選択肢と考えてほしいと思います。より簡単、便利で新しい端末がどんどん出てくるけれど……ネットにつながる端末の開発は息をつく間もありません。メガネや時計のようなウェアラブル端末、AIスピーカーのようにユーザーの意図を反映する端末など、大人のわたしでもすぐ飛びつきたくなるのですから、子どもはなおのことでしょう。ですが飛びつくまえに「これは依存性が高いのかな?だったらどう使おう」「メリット・デメリットは?」「自分の性格でこれを使って大丈夫かな?」と考えることを習慣にする子になって欲しいと思います。なんでもスマホで代替できる世の中ですが、文房具屋さんや日用生活品のお店などに足を運んで、日記をつけるならスマホではなく紙の日記帳、目覚ましに使うならスマホではなく時計など、いろいろな選択肢を広げておくと、のちにスマホに依存せず、自分でなにを利用するか選択することもできます。またデジタルネイティブの子どもたちにとっては、スマホなどの端末で利用しているものに、元となったアナログの時代があったことが新鮮な気づきになるかもしれません。親子で楽しくアナログとデジタルの関係を探してみると、子どもは新鮮に、親は忘れていた生活スタイルに気づくなどいろいろな発見があるかもしれませんね。※1スマートフォン利用と依存傾向について(2013年総務省、東京大学橋元研究室)デジタルネイティブを育てるpart1遠藤美季(えんどうみき)任意団体エンジェルズアイズ主宰、情報教育アドバイザー・ネット依存アドバイザー。保護者・学校関係者に対し子どものネット依存の問題の啓発活動を展開するため、2002年にエンジェルズアイズを設立。学校講演、Web上での普及啓発活動、メールによる相談活動などをおこなっている。著書に『子どものネット依存小学生からの予防と対策』(かもがわ出版)、『ネット依存から子どもを救え』(墨岡孝氏との共著、光文社)など。
2018年08月27日専門家・プロ:高橋大洋小学生の将来なりたい職業として最近おなじみのユーチューバー。大人はどう受けとめれば良いのでしょうか。人気職業としてのユーチューバー小学生がよく見るネット動画に、「ユーチューバーの番組」があります。ユーチューバーとは、自らYouTubeに公開した動画の再生回数に応じて支払われる広告収入のみで暮らしている人のことをさします。ヒカキンやはじめしゃちょーといった有名ユーチューバーの年収は1億円を超えるとされます。ふだんから彼らの動画を楽しむ子どもたちが、憧れをもつのはごく自然なことでしょう。ユーチューバーの番組の多くは、「商品の紹介」や「ゲーム実況」「やってみた(歌う、踊る、食べる、作る、出かけるなど)」です。手作り感あふれる内容が多いのですが、いかにおもしろく、視聴者に飽きられず、再生回数を増やし続けるのか、企画はもちろん、字幕や編集にさまざまな創意工夫をこらした動画が日々つくり出されています。「子どもユーチューバー」も人気です。未就学から小学校低学年の子どもが新作のおもちゃを紹介したり、アミューズメント施設を訪問したりする内容で、同世代の子どもたちには宣伝効果が絶大です。出演しているのは子どもですが、保護者が企画・撮影・編集から対外折衝まで一手に引き受けているようです。実在の人物ではなくCGキャラクターと声優の組み合わせによる「バーチャルユーチューバー」も同様ですが、ユーチューバーの世界も、個人のアイデア、タレント性や編集能力に頼るのではなく、企画やプロデュースなど組織力での勝負になりつつあると言えるでしょう。ユーチューバーは子どもの良いお手本かわたしたち保護者にとって、子どもが将来の職業としてユーチューバーに憧れても、素直に応援しようという気持ちになるのは難しいところがあります。収入のしくみがよくわからないうえ、安定した職業にはみえないからです。実際、ユーチューバーが、CMのように「好きなことで、生きていく」のは、やさしいことではないのです。広告収入の分配割合はサイトの運営元に一方的に決められ、いつ広告単価を切り下げられるかわかりません。英語圏と比べると、日本語を解する視聴者の数が圧倒的に少ないのも再生回数のうえでは不利だと考えられます。一方、短い時間で他者になにかを伝えるという点で、人気ユーチューバーに学べることは少なくありません。北米の幼稚園・小学校などで行なわれているShow & Tellという授業について聞いたことはありますか?自宅にある好きなおもちゃなどを教室に持ち込み、クラスメイトに「なぜ、どう好きなのか」などを説明し、質問に答えるという、プレゼンテーションの基礎訓練のようなものです。ユーチューバー動画は、その究極の形だと見ることもできます。家庭ではどう対応したらよいかユーチューバーの番組を子どもといっしょにじっくり見たことがあるという保護者は少ないでしょう。最初からつまらないものと決めつけず、まずは子どもが好きなものをいっしょに楽しんでみてはいかがでしょうか。「好きな動画を2つ見たら終わりにしよう」などの約束をして、そのとおりに終わらせられたら、たくさんほめてあげましょう。またユーチューバーの動画の表現や工夫のどこがスゴイのか、どういうしくみで収入を得ているのかについて、お子さんと話をする機会をもつのもいいでしょう。ユーチューバーとして大成功したければ、日本語だけでなく英語も使えると有利だと伝えると、英語の学習のはげみになるかもしれません。Photo by Duangphorn Wiriya on Unsplash漫然とユーチューバーの番組を見ているだけでは、得られることは少ないので、家庭内でのShow & Tell実践として、スマホやタブレットを使い、ユーチューバー風の動画を自分たちで作ってみるのも楽しいでしょう。収録だけでなく編集もスマホの無料アプリでかなりのことができます。「子どもユーチューバー」のように再生回数を増やすことが目的ではないので、子どもの自由なアイデアを親が撮影などで支えてあげましょう。でき上がった作品は、YouTubeにアップする必要はなく、家族で楽しんだり、祖父母に送ったりするのが良いですね。次回は、ネット動画とのつきあいかたで最大の悩み、長時間利用との向き合いかたについて考えます。高橋大洋(たかはしたいよう)株式会社ミヤノモリ・ラボラトリー 代表取締役。2008年より、「子どもとインターネット」領域での保護者や学校支援に取り組んでいる。「ネットとのつきあい方をオトナにもわかりやすく」をモットーに研修講師、教材開発、執筆、自治体の会議委員など幅広く活動中。子どもたちのインターネット利用について考える研究会(子どもネット研)事務局。ピットクルー株式会社インターネット利用者行動研究室 室長。一般社団法人セーファーインターネット協会 主席研究員。2児の父。
2018年08月24日専門家・プロ:渡邉純子(コドモット)内閣府の定点観測調査から、子どもが家庭でネットをする際のルールづくりの現状を読み解きます。保護者の取り組みは変わらず平成30年発表の「青少年のインターネット利用環境実態調査」(内閣府)※1から、子どもが家庭でネットをする際の保護者の取り組みについてみていきます。小学生・中学生の保護者は、子どもがスマホを利用するときにどのような配慮をしているのでしょうか。子どもがスマホを利用している保護者の84.4%は、なんらかの方法でネット利用に関する取り組みをしていると回答しています。この割合は、平成26年度から現在までほぼ同じような値で推移しています。どんな取り組みを行なっているのでしょうか。もっとも多いのは「フィルタリングを使っている」(44.0%)、次いで「子供のネット利用状況を把握している」(36.1%)です。この数値も、この4年間あまり変化していません。スマホを使ったネット利用に関して、保護者の取り組み状況があまり変わっていないようすが見えてきます。内閣府「平成29年度 青少年のインターネット利用環境実態調査調査結果(概要)」よりスマホ・ノールール、小中学生は約6割そんななかスマホについて「利用時間等のルールを決めている」との回答は、平成26年度比で10.6ポイント増えています。しかし、その割合はまだまだ低いのです。利用時間等のルールを決めている保護者の割合は、直近の30年度調査でも、小学生の保護者41.5%、中学生の保護者39.6%、高校生の保護者18.5%にとどまっています。小学生と中学生の保護者の約6割、高校生の保護者の8割以上は、子どもにスマホをノールールで使わせているのが現状です。子ども、とくに小学生・中学生のスマホ利用率が上がっているなか(第55回参照)、ルール作りをして子どもにスマホを使わせる保護者の割合は大きく変化していない。このことが示すのは、ルールなしでスマホを使う小学生・中学生の絶対数が増えているということです。スマホの使い始めの時期にあたることからも、家庭での保護者の取り組みがさらに広がることを期待したいところです。 ルールについての認識ギャップが親子間で広がるしかしここで、保護者と子どもの間にある意識ギャップが課題となります。スマホにかぎらず、いずれかの機器※2でネットを使っている子どもと保護者を対象とした設問をみてみます。インターネットを利用するときの家庭のルールについて「ルールを決めている(計)」と回答した保護者は83.5%なのに対して、子どもは65.1%。18.4ポイントの差があります。保護者は「ルールを決めている」と認識しているのに、子どもはそうは思っていないということです。内閣府「平成29年度 青少年のインターネット利用環境実態調査調査結果(概要)」より作成とくに気になるのは小学生の保護者と子どもの認識ギャップの広がりです。「ルールを決めている」とした小学生の保護者は91.5%(前年度比+0.9ポイント)なのに対して、小学生は72.7%(同-5.2ポイント)。保護者と子どもの認識ギャップは18.8ポイントで、前年度より7.1ポイント拡大しています。保護者のネットルールへの関心の高さが、小学生には伝わっていないことが見えてきます。小学生はネットの使い始めの時期ですから、無鉄砲な利用に走らないよう、子どもの個性に合わせた保護者のきめ細かな対応がいります。家庭で確実にネットの使い方のルールを身につけていけるよう、根気づよく子どもと話し合っていきましょう。※1 内閣府青少年のインターネット利用環境実態調査※2スマートフォン、いわゆる格安スマートフォン、機能限定スマートフォンや子供向けスマートフォン、携帯電話の契約が切れたスマートフォン、携帯電話、機能限定携帯電話や子供向け携帯電話、ノートパソコン、デスクトッパソコン、タブレット、学習用タブレット、子供向け娯楽用タブレット、携帯音楽プレイヤー、携帯ゲーム機、据置型ゲーム機、インターネット接続テレビの15機器渡邉純子(コドモット)(わたなべじゅんこ)株式会社コドモット代表取締役社長。NTT在籍時代の2001年、子ども向けポータルサイト「キッズgoo」を立ち上げ、同サイトでデジタルコンテンツグランプリ・エデュテイメント賞受賞。独立後は小学生向けのコンテンツを中心に、企業の子ども向けWebサイトや公共団体の子ども向けツールなどの企画制作を数多く手がける。一男一女の母。
2018年08月23日トップライター:坂上さえ12歳と15歳、使えるネットサービスはこんなにちがうスマホ・ルールの見直しプロジェクトは、娘へのヒアリングと、わたし自身の使い方の振り返りを終えました。ここでもうひとつ、知っておきたいことがあります。それはネットの世界について。ネット、とくにSNSの子ども向け対応について調べてみました。中学入学と同時に自分のスマホを手にしたとき、娘は12歳。それから2年と4カ月が過ぎ、誕生日を迎え、娘は15歳になりました。12歳と15歳では利用できるネットサービスに大きな違いがありました。たとえば、Twitterの利用は13歳以上からです。2018年5月に規約が改訂され、Twitterを利用するためには「少なくとも13歳以上でなければならない」と明示されました。アプリのサービス開始をシャレで誕生日登録していたら、規約の年齢に満たないと判断され、そのアプリのTwitterアカウントが一時凍結される騒ぎもおこりましたので、これまでの有名無実状態とは異なるようです。また、娘に限らず、若い世代に人気のYouTubeは13歳から自分のアカウントが作れます。Facebook、Instagramなど、おもなSNSも利用は13歳からです。なお、LINEには利用にあたっての年齢制限はありませんが、ID検索(LINEアプリからIDでユーザーを検索するサービス)が利用できるのは18歳以上。18歳未満はID検索ができないだけでなく、ほかのユーザーがID検索をしても検索結果に出てきません。自分の意志でアカウントを作れるという事実このようにSNSには13歳の壁があったのですが、中学1年生としてあわただしくすごしていたころに、この壁をこえてしまっていました。意識するまえにネットサービスの間口が広くなっていたのですね。うかつでした。(この記事を読んだみなさんは、どうぞわが家のようなことのありませんように……)さて現在、娘がアカウントを登録しているSNSは、YouTubeとLINE、そして読書感想文サイトの3つ。あとはスマホのブラウザ経由のチラ見で済ませていますが、自分の意志でアカウントを作ることができるという事実は忘れてはいけませんね。SNSに限らず、ネットの世界には今後も魅力的なサービスやアプリが続々と出てくるでしょう。それらのすべてを親が調べあげて、これはアカウント登録OK、これはNGと分別していくのは事実上不可能です。自分の意志でアカウントが作れるということは、そのサービスが自分に合っているかどうかを自分で判断し、合わなかったときにはすっぱり退会する、そんな行動も求められます。どんどん広がっていくSNSの世界に対して、参加するかしないかも含め、自分を守る一番のフィルターとなるのは、自分の考える力というわけです。15歳になったばかりの娘にそんなことができるのでしょうか?じつはわたしは、ある程度のところまではできるんじゃないかと考えているのです。自分で考えるクセをつけるこれまでわたしは、娘に対して「スマホの使い過ぎはだめよ」とか「勉強するときにはスマホを開いてはだめ」といった、禁止に類する注意をしてきませんでした。フィルタリングや事前のルールづくりでNGな行動はすでに決めてありましたし、親のわたしがスマホを多用している状況で一方的にダメと言われても反発することが予想できたからです。そのかわり、日々の運用のなかで、あれっ?と感じることがあったら、「どうしたらいいんだろうね」というような投げかけをしてきたように思います。勉強のときにスマホの通知がうるさかったら、どうしたらいいんだろうね。最近スマホを長い時間使ってるみたいだけど、テスト前にはどうしたらいいんだろうね……というような会話を通じて、娘には自分で考えてスマホを使うクセがついてきたように思います。「どうしたらいいんだろう」と自分で考えることができて、かつそれをスマホでの行動に結びつけられるかどうかが、どうやらスマホ中級者になれるかどうかのカギのようです。坂上さえ(さかがみさえ)大学卒業直後からIT関係の仕事に従事する。子どもの小学校入学を機に退職し、現在はフリーのプランナーとして、子ども向けのWebゲームや学習コンテンツの企画にいそしんでいる。趣味はスキューバダイビングと滝をみること。紅海でダイビングし、ヴィクトリアの滝をおがむのが夢。東京在住のB型、大1男子・中3女子の母。
2018年08月23日お笑いコンビ・ロンドンブーツ1号2号の田村淳(42)が、13日に生放送されたTOKYO MXの情報番組『週刊リテラシー』(毎週土曜17:00~17:55)で、共にMCを務めていたジャーナリスト・上杉隆氏(48)が降板したことについてコメントした。冒頭で降板の経緯と番組サイドの見解がテロップ表示され、その文章が男性によって読み上げられた。テロップ明けに淳は、「MXテレビさんのおっしゃっていることと上杉隆さんがおっしゃっていることは真反対の意見」とし、「弁護士さんの預かるところになっているということなので、その話し合いは弁護士さん、もしくは話がもつれにもつれれば裁判所というかたちになるんでしょうけども」と説明した。また、「僕たち出演者は今、残された契約期間、まずは視聴者のみなさんのために上杉隆さんがいなくなった番組を少しでも面白くお届けできるように頑張って参りたいと思います」と意気込みを述べ、「よろしくお願いいたします」と頭を下げた。そしてこの日のゲスト、作家の百田尚樹氏と憲法学者の木村草太氏を紹介しながら、「すみません。お二人には全く関係のないことなんですけども」「重苦しい空気がドンと乗っかって参りましたが」と明るく詫びて笑いを誘っていた。上杉氏は先月12日、都知事への出馬を表明。同31日に選挙は終了したものの、上杉氏のブログによると今月5日に契約終了通知書が届いたという。12日付けのブログでは、「17年間のジャーナリスト人生で最も思い入れのあるテレビ番組『淳と隆の週刊リテラシー』のプロデューサーから、突如、契約途中での降板を言い渡されたのは東京都知事選の真っただ中でした」と振り返り、「局側からの一方的な通告で、私自身もいまだ事情を理解できない」「今回の番組降板の経緯に関しては、既に法的な対応が不可避な段階に達しており、すべての交渉を代理人弁護士に委ねていますので、今の段階で言及することは避けます」などとつづられている。■番組冒頭のコメント全文「週刊リテラシー」の出演者でありました上杉隆氏の番組降板につきまして、視聴者の皆様へご報告させていただきます。上杉氏には、本番組のメインMCを約2年間勤めていただきましたが、先般、上杉氏より、東京都知事選挙に立候補する旨の報告があったため、当社は、本番組から上杉氏に降板いただくという判断をいたしました。法律上、政治的公平性が要求される放送局として、公職へ立候補された上杉氏を本番組のメインMCとして起用し続けることは、放送基準等に照らして困難と判断し、やむなく降板という判断に至ったものです。上杉氏にもその旨をお伝えしており、降板についてご了承いただいております。本番組につきましては、今後も政治・経済・事件・芸能等の世の中の注目ニュースを様々なアングルから徹底解説をするという姿勢は変えずに、放送を継続してまいります。視聴者の皆様には、変わらずご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
2016年08月13日NECは3月14日、ブラジルに位置するトム・ジョビン国際空港(ガレオン国際空港)のセキュリティや運営に関するICTシステムを構築したと発表した。構築したシステムは2016年4月より順次稼働する予定。同社は、世界各地のスマートシティプロジェクトで培ったノウハウを活用し、新たに拡張された第2ターミナルの南ウイングを含むトム・ジョビン国際空港の2つのターミナルにICTシステムを導入した。具体的には、不正侵入を防止するための監視カメラシステムやICカードを用いた職員用の入退場システム、運航に関する情報を空港利用客に提供するディスプレイ、火災による熱や煙を検知し報知を行う火災報知システム、無線インターネット接続環境などを提供している。さらに、電話・メール・テキストメッセージ・Web会議/テレビ会議など様々なコミュニケーションツールの統合的な利用を実現する「UNIVERGE 3C(ユニバージュ・スリーシー)」を提供し、職員間におけるコミュニケーションの円滑化に寄与するという。同社は2015年7月には、ブラジル連邦税務局から14の主要国際空港において税関で利用される顔認証システムを受注した。こうした実績をもとに、安全で効率的な空港運営に貢献していくとしている。
2016年03月14日NECと綜合警備保障(ALSOK)は3月8日、ICTと警備サービスを組み合わせ、国内の治安維持・向上および生活の安全・快適性の確保に貢献するとともに、国際的な平和維持に寄与するため、相互に協力して国内外に展開可能な新しいスタイルのサービス提供を目指し、協業を開始したと発表した。近年、オフィス商業ビルをはじめとした都市空間や大規模イベント会場といった不特定多数の人が集まる環境下では、施設・空間における事故発生時の対処・被害拡大防止に加え、犯罪などの未然防止・予兆検知の必要性が高まっている。特に大規模イベント開催時の警備では、緊急事態に対応するための最適な人員配置など効率的なマネジメントを可能にする警備手法の実現が課題となっている。また、自然災害の発生に備えた防災基盤の強化や、空港・税関などの重要施設、公共交通機関・大規模集客施設といった比較的警備が厳重でない場所、いわゆるソフトターゲットに対する警戒・警備の強化が求められているという。両社はこれらの社会課題の解決に取り組むため、大型のオフィス商業ビルや大規模イベントでの実証実験を通じ、警備サービスの生産性向上および品質向上に関する検討を行なってきた。これまでの実証結果を踏まえ、両社では新たなサービスの提供を目指し、検討を行うため協業することに合意した。それぞれが提供する社会価値を共有し、これまで培ったノウハウやリソースを相互に投入することで新しい警備スタイルを構築し、多様な社会課題の解決に取り組んでいくとしている。今回の協業では、ALSOKがこれまで推進してきたオフィス商業ビルをはじめとした施設や大規模イベントなどに対し、品質向上を図った警備およびコスト最適化を実現する「ALSOKゾーンセキュリティマネジメント」をNECのAI技術などと組み合わせることで具体化し、新たな警備サービスの提供に取組んでいく。さらに、ゾーンセキュリティマネジメントの提供で得られる知見・データを蓄積、知識化(ナレッジ化)し、新たな警備サービスの根幹となるプロセスとして「情報収集、判別・識別、予測・判断、実行・対処」を継続的に進化させていく方針だ。
2016年03月08日日立システムズと群馬県みなかみ町は2月29日、農業ICTによる地方創生モデルを共同推進することで合意した。今後、同社はICT活用により同町の農業の大規模化・集約化を促進し、周辺産業の活性、雇用創出を支援するため、内部環境の現状や事業モデルの実現性を多面的に調査するほか、ビジネスパートナーであるアグリコンパスのノウハウ、同社の親会社である三井物産が有する食品マーケット情報などを活用し、具体的な計画を立案する。みなかみ町の人口は1955年の3万6000人をピークに下降を続け、現在は約2万人まで減少し、過疎化・高齢化が進む中で、持続可能な地域づくり推進のため具体的な振興策づくりが急務となっている。農業分野においては、農業従事者の高齢化、耕作放棄地や鳥獣被害の増加など農業振興を図るうえで問題を抱えているが、持続可能な地域づくりにおいて担い手となる次世代の育成は喫緊の課題となっている。課題解決に向けては、農業を魅力ある産業に転換していく必要があるが、個々の農家による取り組みだけでは十分であるとは言い難いことから、法人化や農業ベンチャーの育成・誘致を進め、農業を大規模・集約化したうえで、生産性の向上や就労環境の改善、マーケットニーズへのタイムリーな対応などを実現する新たな仕組みが求められている。こうした背景を踏まえ、同町は民間企業の事業・経営ノウハウを活用することで、効果的で具体的な振興策を立案、実施したいと考え、農業ICT分野に知見を有し、自治体業務にも精通している日立システムズと農業ICTによる地方創生モデルを共同推進することで合意。同社は、日立グループの情報・通信システム事業における中核企業であり、農業ICTなどの社会インフラ分野にも事業進出しており、昨年11月には農業ICTベンダーのアグリコンパスと資本・業務提携契約を締結するなど、事業体制強化を図っている。今後、同社はビジネスパートナーの知見なども活用し、中長期視点による持続的な発展に向けて、ICT活用による高付加価値いちごの通年栽培、温泉熱を活用したハウス栽培、栽培施設や直売所のショールーム化による観光業の活性化などを中核に多角的な事業モデルの調査を行う。一方、同町は同社の調査結果を踏まえて、具体的な施策の立案とその実現に向けて取り組む方針だ。
2016年02月29日NECは2月26日、2月28日に開催される「東京マラソン2016」において、警視庁と連携し、ICTを活用した先進の警備システム・技術の実証実験を行うと発表した。具体的には、同社独自の「群衆行動解析技術」を用いた固定カメラ映像のリアルタイム解析による混雑状況の早期検知や、一般ランナーと並走する警察官(ランニングポリス)が身に着けるカメラ(ウェアラブルカメラ)から警視庁への高品質かつリアルタイムな映像伝送を行う。混雑状況のリアルタイム検知では、群衆映像から混雑状況や異変を検知するNEC独自の「群衆行動解析技術」を活用し、ゴール付近に設置したカメラの映像から、周辺エリアの混雑状況をリアルタイムに検知。これにより、混雑状況に応じた群衆の適切かつ効率的な誘導を目指す。群衆行動解析技術は、事件・事故の発生やその兆しが周りの群衆や集団の行動に影響を与えるという点に着目し、異変につながる「群衆全体の動きの変化」をとらえ、解析するもの。例えば、人の流れの急激な変化や、人の流れに逆らって滞留している集団、人の転倒時の周りに生じる人垣などを防犯カメラを用いて検知する。ランニングポリスと警視庁間での情報共有では、ランニングポリスがウェアラブルカメラと送信機を装着し、ランナーの様子や会場で発生した不測の事態に関する映像をLTE回線により警視庁に送信し共有する。映像送信においては、同社独自の「適応レート制御技術」により、高画質かつリアルタイムな映像配信を行う。適応レート制御技術は、モバイル通信網(LTE/3G)を利用して、高画質な映像をリアルタイムに配信できる通信技術で、通信スループットの変動にあわせて、映像のビットレートとフレームレートを最適化する。
2016年02月26日●ある農家の現状就農人口の減少と高齢化。それに伴う耕作放棄地の増加。これが日本の農業を巡る大きな課題となっている。ITの力を活用した農業ICTは、耕作放棄地の受け入れ農家にとって圃場管理の有効な手段ともなるが、現場はどう捉えているのか。ある農家に聞いた。○ある農家の転機千葉県の横芝光町は、千葉県北東部に位置する人口約24000人程度の小さな町だ。ここに、高齢化の波に揉まれ、離農していく農家も多い中、海外からの研修生を含めて15人以上を雇用し、成長を続けている農家がある。この成長を支える秘密のひとつが、農業ICTを駆使することだった。「グリーンギフト」は横芝光町の鈴木敏弘・紗依子夫妻が運営する農業法人だ。敏弘氏は今年30歳。20歳から家業を継いで農業を始め、当初は普通の農家と同じように農業を営んでいたが、今は特産の米とネギを中心に、ウェブ経由で農作物の直販を行っている。既存の流通を使わず、インターネット経由で消費者と直接取引きをするスタイルは、いかにもICTを駆使する先進的な若い農家の典型例といった感じだ。さぞや昔からパソコンなどのITに慣れ親しんでいたのかと思いきや、「パソコンは苦手」という。以前は家のパソコンでウェブサーフィンする程度で、農業に活用することは考えていなかったのだという。しかし転機が訪れるのは数年前、農業ショーにおいて「アグリノート」のデモンストレーションを見てからだ。「5~6年前から人を雇って、高齢化や離農などの理由で耕作放棄された田んぼを借りて、耕作面積を広げてはじめたんです。でもあちこちに田んぼが点在していて、しかもどの田んぼが誰の家のものか、看板が出ているわけでもなくわかりづらいんです」(鈴木敏弘氏、以下発言同)。グリーンギフトでは現在、約200もの圃場を管理している。しかも、管理する圃場は、自動車を走らせ、たどり着けるような場所も少なくない。これをすぐ覚えろというのは到底無理な話だ。グリーンギフトの本社から自動車で15分ほど走った先にある、実際に耕作している畑を見せてもらった。「ここいら一帯がうちのネギ畑なんですよ。あそこから向こうは別の農家の畑。こっち側も違う」。そういって敏広氏が指差す先は、一面のネギ畑。地元民であれば見分けもつくのだろうが、素人眼にはどこも同じ畑にしか見えない。「うちはパートさんや海外からの農業研修生も受け入れていますから、経験の少ない人でもわかるような手段が欲しかったんです」。間違って他人の圃場を耕作してしまうのは論外。自分の圃場でも行程を飛ばしてしまう、あるいは繰り返すのはロスが大きいので、絶対に避けたい。そこで、当初は経験のある人とない人でグループを組ませるなどしていたという。それが、今では一人で目的の圃場までいって、必要な作業を済ませられるように変わった。その秘密はどこにあるのだろうか。●ツールの導入で農作業に変化○アグリノートで作業効率が大幅にアップ前述した「アグリノート」は、東京大学発の農業ベンチャー、ベジタリアのグループ会社のウォーターセルが開発・販売している農作業記録用のクラウドシステムだ。NTTドコモも販売に協力している。同システムはGoogleマップやYahoo!地図の航空写真の上に圃場をマーキングし、マップ上に直接情報を書き込める。GPS情報があれば、現在位置と地図上の圃場を見比べられるので、圃場数が多い生産者でも視覚的に確認できる。また、入力フォームがシンプルで、作業記録を記入するのも容易だ。ウェブブラウザからの入力に加え、Android用アプリがあるので、PCのほかにAndroidタブレットが利用できる(今後iOSにも対応予定)。導入コストについても「月々の利用料金がほかのシステムと比べて安いのも魅力的でした。当時はお試しで無料期間があったというのもありますが、このくらいの額であれば、失敗しても飲みに行ったと思えば諦められますから」。それまでは紙のノートに作業手順などを手書きをしていた敏弘氏だが、その頃は指示のニュアンスが農業経験者に対するものになっていたという。アグリノートの導入により、事前にタブレットに指示を入力しておいて渡すことができるようになり、文面も初心者へのわかりやすさを念頭に入れたものに変わってきた。アグリノートへのデータ入力は、先代である敏弘氏の父親が行うこともあるという。「現場ではAndroidタブレットを使うことにしました。最初は社員の中にも不安な声はありましたが、興味のある人から使ってもらおうと」。システムの導入と同時にソニーのXperia Z Tabletを購入し、入力用端末として社員に貸し出した。ちなみに防水防塵端末なので、泥などで汚れても水洗いできる点がお気に入りだとのこと。タブレットを持っていくことで、現在位置を見ながら圃場にたどり着けるようになったため、これまで2人で向かっていたところが1人で済むようになった。また、不明な場合などはタブレットのカメラを使って写真付きでメールを送ってきて確認するようになったため、作業効率が大幅に向上した。さらに、これまでは各自の実際の作業内容をおおまかにしか把握できていなかったものが、誰が何時間でどのくらい作業をしたのか、きちんと記録できるようになった。このため、給与計算の際に一人一人の頑張りを反映することができ、社員のモチベーション維持にも繋がっているという。ほかにも次のようなメリットが見出せたという。「副作用的なものですが、うちが出荷した米が袋ごとに、誰がいつどこでどんな作業をしたのか、10分もあれば全部洗い出せます。いわゆるトレーサビリティというやつですね。また、農作物を輸出するための『GLOBAL G.A.P』や安全な農作物を作るための管理基準を示した『JGAP』といった認証制度があるのですが、これを取得するための記録やデータを日々の入力から自動的に生成してくれる機能があります。海外への輸出を考えている人はもちろんですが、自分の生産物に責任を持つという意味でもGAP対応は重要だと思います」。●農業ICTの普及には課題も?○ICTの効果は見えにくい農業ICTのメリットを感じるグリーンギフト。その一方で農業ICTがキーワードになったのは近年のことであり、本格普及はこれからといったところだろう。普及に向けた課題として、アグリノートのような圃場管理ツールは直接生産性に影響するものではないため、外からはそのメリットがなかなか感じ取りにくいことがありそうだ。また、グリーンギフトのような農業法人はともかく、家族経営の農家では、情報のやり取りはわざわざデータ化せずとも口頭で済んでしまうし、記録を取っておく必要も感じにくい。既存の農家は、なまじこれまでのノウハウがあるだけに、未知のICTに投資して失敗するリスクを恐れてしまうこともありうる。だがデータ化すれば、それだけ分析もしやすくなるだけでなく、農業経験の浅い人にノウハウを伝える際に客観的な説得力が増す。きちんと管理するならICTを導入したほうがトータルで見てお得になるが、そこまで農家側のマインドセットが辿りついていないのが現状なのかもしれない。農家側の意識改革も、今後の農業ICTが成功するうえでの重要なポイントだろう。アグリノートの販売に関わっているNTTドコモでは、この他にもべジタリアと連携し、田んぼの水位センサーなどの農業向けICT製品を展開している。こうしたものに興味はあるかとの質問には「興味はあるけど、コスト面でのメリットがまだ小さいことと、盗難にあう恐れがあるのでなかなか手が出せない」とのこと。水位管理は稲作の中でも非常に重要なポイントだけに効率化はしたいが、例えば通信費ひとつをとっても、まだインフラ側が整備されきっていない。ICTだからといって何でも導入するのではなく、必要性を見極めて導入する冷静さが求められているようだ。また提供する側も、インフラとして適切な価格設定などをしっかり定めておく必要がありそうだ。
2016年02月25日総務省は12月24日、国内ICT産業における国際競争力を取りまとめたレポート「平成27年版ICT国際競争力指標」を公表した。2008年から毎年ICT国際競争力指標を作成しており2015年で8回目。平成27年版ICT国際競争力指標は、調査会社などが算出した2014年の実績値を基に作成しており、国内企業製品を品目ごと「世界シェア」「輸出額シェア」を数値化している。平成23年度版と増加・減少傾向を比べている。レポートによると、平成27年版における世界全体の市場規模は2兆1289億ドルで平成23年版と比べて10.6%増であった。一方で国内企業の市場シェアは10.9%と平成23年版より2.9%減となった。企業競争力(市場シェア)は、指標の対象となる全37品目中、競争力が強い品目(シェア25%以上)が6品目、企業競争力が弱い品目(シェア5%以下)が13品目となった。これは平成23年版と比較し、9品目のシェアが増加し、27品目でシェアが減少した結果となった。シェア25%以上の品目に注目すると、増加傾向にあるのは「DVD/Blu-rayレコーダ」で80.3%(平成23年版)から(96.3%)となった。「コピー機」は73.9%から74.6%、「プリンタ」も31.1%から40.9%へと増加した。DVD/Blu-rayレコーダーは世界シェアの大半が国内企業で占めているが、市場規模は縮小傾向にある一方で、コピー機やプリンタは世界市場でも拡大傾向にある。一方でシェアが高いものの減少傾向にある品目は、ソーラーモジュールなどの光学素子の「オプトエレクトロニクス」で43.4%(平成23年版)から32.5%(平成27年版)に落ち込んだ。また、トランジスタやコンデンサなど単機能半導体素子の「ディスクリート半導体」は36.4%から29.9%、「携帯電話用液晶デバイス」は35.7%から29.7%と減少した。シェア5%以下の品目では「プラズマデバイス」が47.6%から1.2%、「プラズマテレビ」が47.7%から1.5%と大幅に減少した。これらは国内企業の市場シェアと世界の市場規模が共に縮小している。国内からの世界全体への総輸出額は1兆3692億ドルで、平成23年版より20.0%増加した。世界各国と比較した輸出額のシェアは3.0%と2.3%減少したが、アジア太平洋地域全体では75.7%とシェアを4.4%増加させた。輸出競争力(輸出額シェア)は、対象の全20品目のうち「PC用ディスプレイ」「モバイルインフラ」の2品目で、どちらも世界の総輸出額は減少傾向にある。一方で減少した品目は15品目と多く、「デジタルカメラ」で27.2%から16.0%、「放送機器用デバイス」が10.4%から6.2%と顕著な数字を示した。
2015年12月25日田辺三菱製薬、日本電気(NEC)、理論創薬研究所は12月9日、ICTを駆使した創薬技術「インシリコ創薬」の高精度かつ高速なアプローチを3社共同で開発したと発表した。田辺三菱製薬と理論創薬研究所は2012年より、膨大な化合物情報が一元化されたデータベースから、医薬品創製に役立つ過去の成功/失敗事例といった「創薬ナレッジ」を目的に応じて効率的に抽出できるシステム「改良版MMPA」を研究・構築してきた。2014年よりNECも参画。オープンソースのデータベース「PostgreSQL」に検索を並列処理させるソフトウェア「NEC PostgreSQL Accelerator」を適用させることで、改良版MMPAを用いた創薬ナレッジの抽出速度を最大で約24倍向上させたという。3社は、改良版MMPAとNEC PostgreSQL Acceleratorを効果的に用いたICTによるインシリコ創薬で、医薬候補品の選択を効率化させることが可能になるとしている。
2015年12月09日日本マイクロソフトは11月27日、ICT活用を推進する学校への支援プログラム「Microsoft Associate Showcase School 2016 エビデンス・チャレンジ」の募集を12月1日より開始すると発表した。より広くタブレットPCの活用や校務の情報化などの実践を支援することを目的としている。このプログラムは、マイクロソフト本社が認定する教育ICT先進校プログラムで、世界中から約150校が選出される。「ICTで教育を変えたい」という強いビジョン持ち、ICTを日常的に授業に活用し、実践を広めていくことできる意思のある学校が認定されるもので、1年の任期で活動を行い、実践内容のレポートを提出する。同時に、日本市場として「エビデンス・チャレンジ」の展開も行う。この試みは、自治体における教育のICT化を進めるために、ICT導入による効果などについて、科学的根拠(エビデンス)を取る目的で行われる。マイクロソフトが持つ海外での知見を、日本で実証するプログラムとして、学校を選定する。募集期間は、12月1日~2016年1月31日。認定期間は、認定より1年間で、実践支援費10万円やエビデンス取得ノウハウ・導入サポート、教員研修や授業公開などに利用する機材の短期(数週間)貸し出しなどが行なわれる。同時に、1年間の実践を終えたMicrosoft Showcase Schoolのベストプラクティスをまとめた研修コース「タブレットPCとOffice 365を活用した教材作成と運用実践」の無償提供プログラムも用意する。
2015年12月01日NECは11月9日、IoTソリューションを支えるICTプラットフォーム製品事業の強化として、エッジコンピューティングを中核に、デバイスを含めた統合運用管理やデータ分析など、IoT関連技術に注力し、2016年度中に開発要員を現状の300名から1,000名に増強することを発表した。また、製品強化の第一弾として、1ラックあたり572台のサーバを収容可能で、大量で多様なデータ分析に適したな集積サーバ「DX2000」や、離れた場所にあるCPUやGPU(3Dなどの画像に必要な計算処理を行う処理装置)などのコンピューターリソースを高速な通信を介して接続する「ExpEther 40G」を同日より発売を開始した。また、スマートデバイスからクラウドを介してデバイスを遠隔利用できるソフトウェア「Collaboration Assistant」を2016年度に発売する予定だと発表した。同社の執行役員常務 庄司信一氏は、同社が考えるIoTの5層モデルにおける強化ポイントとして、5つ挙げた。「1点目は、無数のデバイスから収集された大量なデータをリアルタイムで処理し、有効に利用するための高速なコンピューティング基盤と高精度な分析処理。2点目は、負荷の変動に応じて、アプリケーションを最適な場所で実行させることで、サービス提供を可能とする分散協調型処理。3点目は、データを安全かつ効率的に処理するデバイスの仮想化。4点目は無数のデバイスが接続される5層全体のセキュリティの確保。5点目はデバイスやネットワークを含めた統合管理。IoTシステムを迅速に導入し、安全に運用していただけるよう、組織を上げて取り組んでいく」(庄司氏)同社の執行役員 福田公彦氏は、「今後、大量のデバイス(モノ)がネットワークを介してシステムに接続されるようになると、モノから上がってくるデータを活用して、"コト"を理解し、新しい価値を生み出していくことが期待されてくる。大量のモノがつながり、システムが煩雑化し、大規模化する中でうまく円滑にシステムを動かすためには、エッジコンピューティングの概念が必要となる。また、複数のアプリケーションで連携しながら、最適な場所でサービスが提供されるような分散協調型の処理も必要だ」と、エッジコンピューティングと分散協調型処理の必要性を述べた。新製品となる「DX2000」は、1ラックあたり572台のサーバを収容可能な集積サーバ。高速なインメモリ分散処理に適した設計により、大量・大規模・多様なデータの高速処理が必要なリアルタイム分析に最適とされ、事前に検証済みの分散処理ミドルウェア「Hadoop」と組み合わせることで、従来システムで数時間を要する分析を数秒~数分で処理することが可能だという。1シャーシ14台のサーバから導入可能で、データ量や必要処理量に応じてシステム拡張が可能となっている。価格は1シャーシ14台サーバ搭載時で1,150万円~(税別)、出荷日は2016年2月となっている。「ExpEther 40G」は、コンピューターの設置場所や筐体サイズ、電源確保などの物理的な制約を受けずにCPUやGPU、ハードディスクなどのコンピューターリソースを、高速な通信を介して遠隔接続することが可能となっている。複数のサーバの拡張スロットに「ExpEtherボード」を挿入し、Ethernetで接続することで、1つのコンピューターリソースとして利用可能だという。また、「I/O拡張ユニット」にGPGPUや高速なSSDといったPCI Express準拠の各種周辺装置を挿入することで、柔軟なI/O拡張も可能としている。さらに、通信にはNECの独自技術となる高速・軽量暗号技術「TWINE」が利用されており、データ量の増加に応じた効率的なシステム拡張や、安全で高速なデータ転送を実現するとしている。価格は「ExpEtherボード」と「I/O拡張ユニット」のセットで、55万円~(税別)、出荷日は2016年3月となっている。2016年度発売予定の「Collaboration Assistant」は、デバイス層において、センサーや周辺機器を活用したデータ収集や、機器操作、アプリケーション利用を可能とするクラウドサービス。同サービスを活用することで、例えば現場作業者がスマートフォンなどを用いて、収集したデータや作業状況がクラウドセンターを介して熟練技術者などと共有することができ、場所や距離の制約を超えてさまざまなノウハウを活かすことが可能になるとしている。同社は、2020年にはIoT関連事業で3,000億円を支える事業体制へ変革することを目標に掲げた。
2015年11月10日東芝と東芝テックは11月5日、訪日外国人向けのビジネス拡充に取り組む企業や団体に対し、ICTを活用した集客・接客をサポートする「トータルインバウンドサービス」の提供を開始した。同サービスは、東芝のメディアインテリジェンスや位置情報、クラウド基盤技術などのICT技術と、東芝テックのPOSシステムや免税処理サービス、各種決済サービスを組み合わせたもの。「商業施設向け同時通訳サービス Powered by RECAIUS」と「訪日前プロモーションサービス」「位置情報サービス」「電子決済サービス」で構成する。2016年1月からの提供開始を予定する「商業施設向け同時通訳サービス Powered by RECAIUS」は、日英・英日、日中・中日に対応する商業施設向け会話の同時通訳サービスで、来店者と店員の会話がリアルタイムにスマートフォンなどの画面上に表示され、コミュニケーションをサポートするほか、各店舗で異なる商品名などの訳語を辞書登録しておくことで、精度の高い通訳を実現する。「訪日前プロモーションサービス」は、電通と連携し、東芝が運営する現地SNSや広告を活用して地域・イベント・店舗・商品などの情報提供を行うもの。訪日前から地域・施設・店舗の認知や関心を高め、購買を喚起する紹介プロモーションなどに活用することができる。また、「位置情報サービス」は、BLEビーコンを施設・店舗などの各チェックポイントに配置することで、BLEビーコンと訪日外国人の持つスマートフォンのアプリケーションが連携し、チェックポイントを通過した訪日外国人のスマートフォンに観光情報やイベント情報、店舗情報などの情報を提供できるというもの。これら2つのサービスは、2016年3月からの提供開始を予定する。「免税処理サービス」は、訪日外国人が利用する商業施設や店舗の免税オペレーションを効率化し、免税販売・購入明細・内容物明細レシートを発行するPOSシステムにより訪日外国人を待たせない免税処理システムを提供。2015年4月に施行された「手続委託型消費税免税店制度」に対応する端末と一括免税管理システムにより、ショッピングセンターや商店街などの各テナント・免税事業者の免税額・必要書類を一括管理することで、訪日外国人の商業施設内でのスムーズな買い回りを支援するほか、店舗側の業務負担を軽減することで、免税関連業務の効率化と訪日外国人へのサービス向上を図る。なお、「免税対応POSシステム」は既に販売されており、「一括免税管理システム」は2016年2月のリリースを予定。「電子決済サービス」では、訪日外国人にスマートフォンを活用した時間と手間のかからないストレスフリーな決済サービスを提供。初期サービスとして、2015年10月からネットスターズが訪日中国人向けに提供を開始したWeChat Paymentサービスの提供を予定する。(販売時期は未定)なお、具体的な取り組みとして、福岡県天神地下街で11月中旬から開催されるイルミネーションやクリスマスイベントにおいて、「訪日前プロモーションサービス」と「商業施設向け同時通訳サービス」「位置情報サービス」を提供し、集客力・回遊性・接客のサービス向上のための実証実験を実施する。また2016年1月からは、「軽井沢・プリンスショッピングプラザ」にて、「商業施設向け同時通訳サービス」が導入される。
2015年11月06日