香水と自分の物語を語ることなんてできるだろうか。
香りはほとんど直感で選んでいるし、お気に入りの香水をつけている時期に激しく熱い恋をしていて、その香りを嗅ぐと相手の目の色や髪の色、一緒に過ごした季節の風の匂いまでを思い出す、なんてこととは無縁になってしまったし、そういう香水は想い出と共に既に手放してしまった。
今は穏やかな恋心のような気持ちで旦那と日々を共にし、違う意味で激しい感情と戦いながら子どもを育て、自分のキャリア形成に試行錯誤しながら仕事をしている毎日だ。恋心や激情とは無縁ながらも、まぁまぁ激しい感情に日々揉まれながら過ごしている。
そんな中、朝洋服を着る前に、その日1日をイメージして、冷静でいたいときはユニセックスな香りを選び、忙しくなりそうなときはあえてフローラルな香りを選ぶ。だから私にとって「香り」は、精神のバランスを取るための必需品と言っても過言ではない。
今回、ひとつの香水についての記事を依頼されたときに、どの香水について書こうかは、頭ではすぐに決まっていた。日々いろいろな香水に出会い、そのときどきのお気に入りは変わるのに、特別な香水はひとつしかなかった。
しかし、なかなか文章が進まなかった。