香りをまとうことは、ナチュラルメイクと似ている。
「なせ香水をつける必要があるの?日本人には体臭がないのに!」
フレグランスアドバイザーとして香水の楽しさや香りのエチケットについて、媒体でのコメントや企業での講演、個人カウンセリングを通してお伝えしているなか、当初こんな質問がきて戸惑いました。
フレグランスとは、広義で芳香、狭義では化粧品や香水に使われる香料のこと。
パフューム(香水)はフレグランス製品の中の一つですが、スキンケアやメイクアップ商品と違い、純粋に香りを楽しむことに特化したアイテムです。
■その香水、飾り物になってない?
私自身は、常日頃香水をまとっていた祖母(その名は薫)の影響で、幼い頃から香りを使うことが歯磨きやヘアブラッシングと同じように当たり前でしたから、つける理由というのを改めて考えたことがなかったのです。
それ以前にメーカーで働いていている頃、
香水はお土産かプレゼントでもらうものだと思っている人が多い
↓
従って自分らしい香水を選んでいない
↓
舶来品的な発想が中心で、日本人に使いやすい製品や情報が少ない
↓
自分で納得して選んだ香りではないので、消費量も増えない(それどころか家のディスプレイと化している)
↓
結果、上手に使いこなしている人が少ない
という状況に、買うよりまずは慣れてもらうためのサービスを始めたいと独立したのです。
最初に開いたのは、表参道ヒルズ裏に立つ隠れ家的な一部屋で、予約制のパーソナルセレクトカウンセリングと陳列コーナーに置いてある香水を自由に試すことができるサロン。そうそう、当時「王様のブランチ」(TBS系)はしのえみさん扮する姫様も取材に来てくださいました。
■「私には体臭はない」思い込みは危険
話は戻り、香水をつける必要があるのかということですが、答えは「つける必要はない」です。
ハイ、つけなくても生きていけますから(私は自信ないですが)。でもフレグランスをつけないなんて、歯を磨かず、髪を整えずに人と会うのと同じではないでしょうか?ヘアブラッシングだって必要性はないですが、身だしなみとしては必須でしょう。
つまり、自分では自分の匂いに気づきにくいからこその心配りが必要なのです。口臭のCMにありがちですが、自分が不快な匂いを発することなどないと思い込んでいるのは危険で、まして理由が日本人だからというのでは気遣いがあると思えません。
というか、その自信がコワイ?
ちなみに当サロンでは体臭チェックというメニュー(オプション)がございます。気になる方、本当のところを知りたい方はどうぞ……。
■日本の香り文化には歴史がある
私は、身体を清潔にした上で薄いベールのように香りをまとうことは、ナチュラルメイクと同じだと考えています。世界的に見て肌が美しいとされる日本人でも、ファンデーションは使いませんという人は少ないと思います。いかにもメイクしているということを感じさせず、疲れや濁りを見せない肌の演出それこそが洗練であり、好印象が持続するでしょう。
そもそも日本の文化とされている「香」は、仏教とともに入り仏前用として扱われていましたが、奈良時代以降、日本で採取できる素材が一つもなかったその貴重な香薬を、上流階級の者たちはまるで調香師のように自分で数種類を練り合わせて複雑な香りを楽しむ「薫物」「衣香」を作り、部屋や着物などに移して楽しんだそうです。その嗜みは和歌と同様知性や感性、ひいては身分や財力までを表すものとして、平安時代の「枕草子」や「源氏物語」にも頻繁に登場しています。
しかし武家時代になると香の嗜好は複雑で妖艶なものから、一種の香木を愛でるというシンプルで清楚なものとなり、それが日本固有の香り文化として、室町時代に「香道」が確立しました。
排泄物や死臭など悪臭に満ちていた時代も経るなか、実は自己表現や精神性までを香りに託していたという日本人の歴史があるのです。DRESS世代だからこそ、素のままで良しとはせず、シルエットや素材で下着を選ぶように香りの印象も意識し、さりげなくも芳しい存在感を漂わせたいものです。
2016年3月31日公開
2019年10月26日更新
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