2021年3月25日 17:00
「だったらいらない」専業主婦を望む夫と自身のキャリア。後回しになった「親になる」という選択肢【前編】
と言われていた。お母さんになっても仕事を続けたいと伝えると、返ってきた言葉は「だったらいらない」。
いつか子どもは欲しいけど、仕事だって辞めたくない。そんな30代前半を過ごした。
2人ともいつかは親になりたいと願っていたというのに。
30代半ば、流産がきっかけで向き合った不妊治療
2人の考え方が変わったのは、34歳で流産したことがきっかけだった。妊娠が判明し、「親になる」という意識が夫婦に小さく芽生えた。だが、夫と二人で向かった産婦人科で伝えられたのは「胎児の心臓が止まっている」ということ。
超音波検査で発育が止まっていると診断される稽留(けいりゅう)流産だった。
「え、心臓が止まるってどういうこと?」
ショックが大きく、現実が受け入れられなかった。妊娠って誰でも普通にできるんじゃないの? 心臓って本当に止まるの? 何度も何度も確認してもらったが、鼓動は止まったままだった。
「ショックすぎて当時のことはあまり覚えてません。付き添った夫もすごいショックを受けていました。そのときはまだ身近に流産を経験した人がいなかったので、なおさら信じられませんでした」
手術のため、総合病院に1泊2日で入院した。そのとき、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と診断された。
「多嚢胞性卵巣症候群は妊娠しづらい原因にもなります。
妊娠を望むようでしたら、不妊治療専門のクリニックに通った方がいいでしょう」と医師は告げた。
抵抗があった不妊治療、タイミング法で始めることに
日本内分泌学会によると、多嚢胞性卵巣症候群は①月経不順 ②卵巣にたくさんの小さな嚢胞(卵胞)がある ③ホルモン値がアンバランスになる(男性ホルモンが高くなるなど)、という症状が揃うと診断される。卵胞が発育不良な状態で、無月経や月経不順、不正出血などの排卵障害が起こる。程度の差はあるものの、不妊の原因になる。
振り返れば高校生の頃から月経不順に悩まされていた。だらだら続いたり、来なかったりを繰り返していた。でもまさか治療が必要とは。豊華さんの場合、ホルモンの調整が必要と指摘された。
「なぜ私が不妊治療に通わなきゃいけないのって抵抗がありました。