医療的ケア児とは?学校でケアをする意義と課題、保護者の深刻な負担。切れ目ない支援に必要な4つのこと【専門家監修】
支援を得るための手続きが煩雑であったり、医療的ケアが可能な保育園などの預け先が見つからない、という困りごともあり、本人にとっても保護者・家族にとっても、まだまだ負担が大きい現状は見過ごせません。
医療的ケアは、痰の吸引と経管栄養の一部の行為であれば、介護福祉士や、専門の研修を修了し「認定特定行為業務従事者」として都道府県知事から認定を受けた職員もできますが、すべての行為をできるわけではありません。そのため、現場では実際に医療的ケアを行える人材が足りず、学校でケアを行う学校看護師は、慢性的に不足しています。また、看護師の配置にも地域格差があります。
学校に看護師が配置されていたとしても、医療的ケア児に対しては保護者のつき添いを求めている場合もあります。医療的ケア児の家族は就労に制限が出たり、転職や離職を余儀なくされてしまうなど、厳しい状況に立たされてきました。
これを解消するためにできたのが、「医療的ケア児支援法」(2021年)です。
本来であれば、子ども本人の自立を促す観点から考えても、保護者がつき添わず、学校の中で支援が完結されることが望ましいでしょう。
医療的ケア児支援法に則って、自治体は必要であれば看護師を配置し、教員による医療的ケアを進めていく必要があります。
医療的ケア児とその家族を支援するための喫緊の課題は、大きく分けて4つあります。
1.教員による医療的ケアの充実
医療的ケア児のことをよく理解し、その子どもと信頼関係のある教員が、ケアを実施することで生まれる教育効果も多く報告されています。まだまだ教員が医療的ケアを主体的に担っていくには課題のある学校現場や自治体もありますが、将来的には、子どもの一番身近にいる教員が、看護師の見守りのもとで医療的ケアを行いながら、教育を保障していく形に近づいていくことが望ましいでしょう。
2.教員と看護師の連携(校内連携)
学校看護師は、学校で医療的ケア児の教育を保障していく上で、なくてはならない存在です。学校看護師は、人工呼吸器の管理等や体調急変時の対応など、教員にはできない医療的ケアや処置などを率先して行いつつ、教員ができる医療的ケアを見守り、医療・保健の視点からの専門的なアドバイスを行います。教員は、看護師の見守りのもとで授業を進め、担当する子どもの健康の保持・増進を教育的に支えます。また、校内の医療的ケアや医療的ケア児についての情報の管理や看護師と教員のスムーズな連携をコーディネイトする養護教諭の役割も重要です。