学校給食は学びの宝庫! 食を通して身につける「自ら考え、判断する力」とは
ここぞとばかり、食事中にテストや宿題の話などをされたら、子どもは嫌な時間だと思ってしまいますから。
日本人らしい食のプロセスを大切に
最後に少し興味深いエピソードを紹介しましょう。かつて上野動物園の園長を務めておられた中川志郎先生から伺った話です。1970年代のこと、上野動物園ではじめて飼育されたゴリラの発育が良くなく、アメリカから輸入した栄養たっぷりのゴリラケーキを与えたそうです。すると、体重は順調に増えたものの、1か月後にはストレスが溜まって抜毛するようになってしまいました。その原因は、食形態の変化。本来、野生のゴリラは7~8時間かけて餌を探し食べるのですが、ゴリラケーキは15分で食べ終わってしまうのです。そこで、野生のゴリラに近い食形態に戻したところ、抜毛が治ったのだと言います。
動物本来の食のプロセスを大切にしないとゴリラでもストレスになる。まして人間は……?どうでしょう、考えてみてください。
日本人は農耕民族です。大昔から、農作物を育ててそれを調理して家族そろって食事をしてきました。素材から調理して家族そろって食べるという、日本人らしい食のプロセスを大切にしたいですね。
農作物を育てることが奪われ、家庭での調理も奪われ、家族そろって食事をすることも奪われている子どもたち。これでは、おかしくなるのは当たり前です。これまでお話してきたように、子どもは「食べる」ことを通して、人間社会で楽しく逞しく生きていく力をつけていきます。
それぞれのご家庭で、もう一度我が家の食事を見直し、「これならできる!」を1つでも2つでも取り入れていただけると嬉しいです。(参考)
千葉県|千葉県教育委員会|文部科学省「平成29年度全国学力・学習状況調査」及び、スポーツ庁「平成28年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査」の結果から見える相関関係
中川志郎(2006),「基調講演:動物の一生からみた人間の発達を考える」,神戸大学発達科学部研究紀要,13(3),pp.2-17.
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