新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は8月20日、NEDOプロジェクトの成果をもとに京都大学・再生医科学研究所とリプロセルが、毒性のないヒトES/iPS細胞用の細胞凍結保存液を開発したと発表した。同保存液はリプロセルが商品化し、8月24日より販売を開始する予定。ヒトES/iPS細胞の凍結保存液には、一般にジメチルスルホキシド(DMSO)が用いられてきたが、DMSOは良好な細胞生存率が容易に得られる一方で、細胞の分化形質が変化してしまう可能性が指摘されている。今回開発した細胞凍結保存液は、DMSOの機能を代替しながらも毒性を示さないため、再生医療分野だけでなく、幹細胞を用いた研究分野における新たな凍結保存法として期待される。
2015年08月20日京都大学は8月20日、ウシ体細胞から生殖系列細胞を含む全ての組織・器官に分化するiPS細胞の作製に成功したと発表した。同成果は同大学大学院農学研究科の今井裕 教授と川口高正氏(現小野薬品工業研究員)、農業・食品産業技術総合研究機構畜産草地研究所の木村康二上席研究員(現岡山大学大学院環境生命科学研究科准教授)、同研究所の松山秀一 主任研員らの研究グループによるもの。8月19日(現地時間)に米科学誌「PLOS ONE」オンライン速報版に掲載された。iPS細胞などの多能性幹細胞から、生殖系列細胞や組織・器官形成へと細胞分化を誘導するには、ナイーブ型と呼ばれる細胞株が必要となる。これまで、マウスの体細胞ではナイーブ型多能性幹細胞の作製に成功していたが、マウス以外の哺乳類では生殖系列細胞への分化能力が低いプライム型と呼ばれる細胞しか作製することができていなかった。今回の研究では、ウシ妊娠胎仔から得られた羊膜細胞に、マウス由来の多能性関連転写遺伝子を4種類導入し、3種類の薬剤を添加した培養液で培養することによりナイーブ型のiPS細胞を樹立することができた。このナイーブ型iPS細胞を導入したキメラ胚を雌牛に移植し、妊娠90日目に胎仔を回収したところ、脳、心臓、生殖原基などを含むさまざまな組織にiPS細胞の寄与が認められた。また、このナイーブ型ウシiPS細胞は胚体外細胞系列へも分化しうることが示されたことから、体を構成するすべての細胞に分化する能力を有していると考えられるという。同研究グループは今後、ウシ以外の動物種でもナイーブ型のiPS細胞の樹立を試みていくとしている。
2015年08月20日フィリップスは3日、AH-IPSパネルを採用する21.5型 / 23型 / 25型ワイド液晶ディスプレイ3モデルを発表した。8月初旬より発売する。価格はオープン。店頭予想価格は税込17,800円前後から。○257E7QDSB/11「257E7QDSB/11」は、ベゼル幅2.5mmの狭額ベゼルを採用する25型ワイド液晶ディスプレイ。解像度は1,920×1,080ドット(フルHD)で、液晶パネルはAH-IPSを採用する。独自技術「SmartContrast」では、色調整やバックライトの抑制を自動的に行い、コントラストを動的に調整する。画面に表示されるコンテンツを分析し、コントラスト / 彩度 / 鮮明度を調整する「SmartImage Lite」も搭載する。主な仕様は、解像度が1,920×1,080ドット(フルHD)、液晶パネルがAH-IPS、視野角が横 / 縦ともに178度、輝度が250cd/平方メートル、コントラスト比が1,000:1(スマートコントラスト比が20,000,000:1)、応答速度が14ms(GTG)、スマートレスポンス時:5ms。映像入力インタフェースはHDMI×1、DVI-D×1、D-Sub×1。スタンドのチルト角度は-5度~20度。VESAマウント100mmに対応し、本体サイズはW577×D213×H436mm、重量は約3.73kg。店頭予想価格は税込24,800円前後。○237E7QDSB/11「237E7QDSB/11」は、画面サイズが23型ワイドのモデル。基本機能や仕様は「257E7QDSB/11」とほぼ共通。本体サイズはW532×D213×H414mm、重量は約3.21kg。店頭予想価格は税込19,800円前後。○227E7QDSB/11「227E7QDSB/11」は、画面サイズが21.5型ワイドのモデル。基本機能や仕様は「237E7QDSB/11」とほぼ共通。本体サイズはW499×D213×H398mm、重量は約2.96kg。店頭予想価格は税込17,800円前後。
2015年08月03日大日本住友製薬、京都大学iPS細胞研究所(CiRA)、日立製作所(日立)は7月24日、ヒトiPS細胞を用いたパーキンソン病に対する再生医療の実用化に向けた共同研究に着手すると発表した。同研究では、ドパミン神経前駆細胞の生産方法の確立などに関する基盤技術および評価手法の開発を目指す。具体的には、抗体を用いたセルソーティングプロセスや中間体および最終製品などの細胞凍結保存の評価手法の開発、細胞自動培養装置の導入に伴う加工プロセス改良時の妥当性評価、非臨床試験での細胞の有効性と安全性についての予備検討ならびに理論構築などが含まれている。3者は同共同研究の成果を用いて、高い安全性と一定の品質を確保した細胞を効率的に大量生産し、安定供給するための生産方法などの確立を目指すとしている。
2015年07月27日タカラバイオは7月24日、歯髄細胞を用いた再生医療の開発について、再生医療推進機構と共同で行うことに合意したと発表した。歯髄細胞は、ヒトの乳歯や親知らずといった、これまで廃棄されていた脱落歯や抜去歯から容易に採取することができ、再生医療への利用が有望視されている。今回の合意にもとづいて両社は今後、歯髄細胞の拡大培養法や凍結保存法などについて研究および開発を進める。タカラバイオは、同共同研究開発を通じて、再生医療に利用可能な歯髄細胞の調製技術の開発や歯髄細胞の培養に適した培地など製品の開発を行い、同技術を応用した再生医療製品の製造開発受託サービスの提供や培地など製品の販売を目指すとしている。
2015年07月27日京都大学は7月22日、急性腎障害マウスにヒトiPS細胞から作製した腎臓の前駆細胞を移植することで、腎機能障害や腎組織障害が軽減することを発見したと発表した。同成果は京都大学iPS 細胞研究所(CiRA)の長船健二 教授グループとアステラス製薬によるもので、7月21日に「Stem Cells Translational Medicine」でオンライン公開された。同研究では、ヒトiPS細胞から「OSR1」と「SIX2」というタンパク質を指標に腎臓の前駆細胞を作製する方法を確立し、その細胞が腎臓の尿細管様の3次元の管構造を作る能力を持ち、腎臓の前駆細胞として十分に機能することを明らかにした。さらに、この方法で作製した腎臓の前駆細胞を、腎障害マウスの腎皮膜下に移植した結果、移植した細胞はマウスの腎臓に一部にはならなかったが、腎機能の検査値である血中尿素窒素値や血清クレアチニン値が、細胞を移植しなかったマウスとくらべて顕著に低下していることがわかった。また、腎臓の組織切片を観察したところ、尿細管の壊死や線維化など、腎臓が障害を受けた時に発生する現象もかなり小さく抑えられていた。この成果について同研究グループは「腎移植を必要とするような人工透析を受けている慢性腎不全の方の場合、腎臓の細胞がほとんど壊れているため、治療には腎臓そのものを作製して移植することが必要であり、今回の方法だけでは治療は困難です。しかし、急性腎障害を負った方の腎機能を回復し、腎障害の慢性化を防げる可能性を示しており、腎疾患にも細胞移植を使った治療が適応できることを示唆しました。」とコメント。今後は、今回の方法を活用した臨床応用の可能性を探りながら、慢性腎臓病や慢性腎不全の治療に向けた研究も進める予定だとしている。
2015年07月22日マウスコンピューターは21日、iiyamaブランドの液晶ディスプレイとして、AH-IPSパネルを採用し、ブルーライト低減機能を備えた25型フルHDモデル「ProLite XU2590HS」を発売した。価格は31,800円(税込)。ProLite XU2590HSは、従来のIPSパネルよりも透過率が向上し、低消費電力であるAH-IPSパネルを採用した25型液晶ディスプレイ。3パターンの省エネ・節電モードにより、通常モードと比べて消費電力を最大約35%削減できる。ブルーライトを最大60%低減する機能も搭載している。上左右のベゼル部分と画面部分に段差がないフラットなデザインを採用。また、ベゼル幅(非表示部分を含む)は12mmと細く、マルチディスプレイとして使う場合でも、すっきりと使用できる。画面表示機能として、テキスト作成、ゲーム、ムービーなど用途に合わせた画質を選べるi-Style Color機能を持っている。色温度は、ウォーム、ノーマル、クール、sRGBというプリセット設定から選べるほか、ユーザー側でのRGBカスタム調整も可能だ。主な仕様は、液晶がAH-IPS方式パネル、画面サイズが25型、解像度が1,920×1,080ドット(フルHD)、輝度が250cd/平方メートル、コントラスト比が1,000:1(ACR時5,000,000:1)、視野角が上下各89度/左右各89度、GtoGの応答速度が5ms。映像入力インタフェースはHDCP対応DVI-D、HDMI、D-Subの3系統。2W+2Wのスピーカーを内蔵し、音声入力は3.5mmステレオミニジャック。消費電力は最大40W、標準26W、パワーマネジメントモード時で最大0.5W。スタンドのチルド角度は上20度~下4度。VESA 100mmマウントに対応する。本体サイズはW577.5×H407.5×D180.0mm、重量は4.4kg(スタンドなし3.6kg)。付属品はDVI-Dケーブル、HDMIケーブル、D-Subケーブル、オーディオケーブル。
2015年07月21日京都大学は7月17日、ヒトiPS細胞からヒト始原生殖細胞を効率よく誘導する方法の開発に成功したと発表した。同成果は同大学大学院医学研究科の斎藤通紀 教授(兼 京都大学物質-細胞統合システム拠点 主任研究者、京都大学iPS細胞研究所 研究員)、同研究科の佐々木恒太郎 特定研究員、横林しほり 特定助教らの研究グループによるもので、7月16日(現地時間)に米科学誌「Cell Stem Cell」のオンライン版に掲載された。ヒト始原生殖細胞は卵子や精子のもととなる細胞で、その発生機構はほとんど解明されていない。今回の研究では、遺伝情報を、細菌由来の遺伝子分解・切断酵素などを用いて改変するゲノム編集技術を用いて、ヒト始原生殖細胞で発現するとされている2つの遺伝子「BLIMP1」と「TFAP2C」が発現すると、緑色の蛍光を発するヒトiPS細胞を樹立。そのiPS細胞を用いることで、ヒト始原生殖細胞様細胞を効率よく誘導する培養条件を突き止めることに成功した。得られたヒト始原生殖細胞様細胞は、ヒトの始原生殖細胞と良く似た遺伝子発現パターンを示し、初期のヒト始原生殖細胞に似た状態であることが示唆されたという。また、あらかじめゲノム編集をiPS細胞に用いなくても、細胞を選別するために使われる細胞表面マーカーで生きた細胞を標識することで、ヒトiPS細胞から誘導したヒト始原生殖細胞様細胞を高い純度で単離できることも判明。これにより、原則的にはどのiPS細胞からもヒト始原生殖細胞様細胞を誘導・単離することができるようになった。今後、同研究成果をベースにヒト生殖細胞の発生機構の解明が進み、ヒト精子やヒト卵子の誘導が可能になれば、遺伝情報継承機構だけでなく不妊症や遺伝病の発症機序解明につながる可能性がある。
2015年07月17日マウスコンピューターは6日、iiyamaブランドとして、AH-IPS方式パネルを採用し、ブルーライト低減機能を備えた液晶ディスプレイを2機種発表した。価格はオープン。発売時期と直販サイト(楽天市場)での販売価格は「ProLite XUB2390HS-2」が7月10日発売で税込28,800円、「ProLite XU2390HS-2」が7月中旬発売で税込26,800円。ProLite XUB2390HS-2とProLite XU2390HS-2は、モニタ自体にブルーライトを低減する機能が付いている液晶ディスプレイ。3パターンの省エネ・節電モードを搭載しており、通常モードと比べて消費電力を最大約35%削減できる。液晶パネルには、従来のIPSパネルよりも透過率が向上し、低消費電力を実現したAH-IPSパネルを搭載。外観は、上左右のベゼル部分と画面部分に段差がないフラットなデザイン。また、ベゼル幅(非表示部分を含む)が12mmと短く、複数台を横方向に並べてマルチモニタとして使う場合でも、すっきりと使用できる。画面表示においては、ゲームや映画、風景、テキスト作成など用途に合わせた画質を選べるi-Style Color機能を持つ。色温度はウォーム、ノーマル、クール、sRGBというプリセット設定から選べるほか、ユーザー側でのRGBカスタム調整も可能。○ProLite XUB2390HS-2ProLite XUB2390HS-2のスタンドには、最大130mmの高さ調節、最大24度のチルト調整、90度回転のピボット、90度のスウィーベルが可能なパーフェクトスタンドを採用している。主な仕様は、液晶がAH-IPS方式パネル、画面サイズが23型、解像度が1,920×1,080ドット(フルHD)、輝度が250cd/平方メートル、コントラスト比が1,000:1(ACR時5,000,000:1)、視野角が上下各89度/左右各89度、GtoGの応答速度が5ms。映像入力インタフェースはHDCP対応DVI-DとHDMI、D-Subの3系統。2W+2Wのスピーカーを内蔵し、音声入力は3.5mmステレオミニジャック。消費電力は最大52W、標準24W、パワーマネジメントモード時で最大0.5W。VESA 100mmマウントに対応する。本体サイズはW532.5×H386.0~516.0×D230.0mm、重量は5.4kg(スタンドなし3.3kg)。付属品はDVI-Dケーブル、HDMIケーブル、D-Subケーブル、電源コード、オーディオケーブルなど。○ProLite XU2390HS-2ProLite XU2390HS-2と上記ProLite XUB2390HS-2の主な違いは、スタンド機能。ProLite XU2390HS-2のスタンドでは最大24度のチルトのみ可能で、高さ調節、スウィーベル、ピボット機能は持たない。本体サイズがW532.2×H387.5×D180.0mm、重量が4.0kg(スタンドなし3.22kg)。
2015年07月06日京都大学は6月29日、生きたマウスの脳内の細胞内RNAを可視化することに成功したと発表した。同成果は同大学物質-細胞統合システム拠点(iCeM S)の王丹 特定拠点助教らの研究グループによるもので、6月19日(現地時間)に英科学誌「Nucleic Acids Research」で公開された。RNAは体内で働くタンパク質が、いつ、どこで、どれだけ必要かという情報を持つほか、細胞内の生体反応の制御を行う役割をもつ。そのため、生体内で目的遺伝子がどのように機能しているかを知るためには、このRNAが細胞内のどこでどのように局在しているのかを突き止めることが必要となる。RNAが集まり、局在するという現象は正常な細胞でも発生するが、一部の神経変性疾患において異常な集まりがあることが観察されており、この局在変化によって本来のRNAの機能を果たせず、神経細胞の健康状態が破たんしてしまうと考えられている。しかし、生きた組織内でその局在を見るのは困難だったため、RNAの集まりがどのように細胞内で制御され、異常がもたらされているかは明らかになっていなかった。今回の研究では、目的とするRNAの有無によって蛍光のオン・オフができる点灯型蛍光プローブ(DNAやRNAなどの核酸を元にしたオリゴ鎖)を脳内に打ち込み、電流を流して細胞内に導入することで、生きた組織内でのRNAの標識を可能とした。この標識方法を用いて、組織内のRNAの集まりが薬剤に対してどう応答するのか検証したところ、ディッシュ内で培養した細胞と、生きた組織内の細胞では反応に違いがあることを初めて定性的に示すことができた。同研究グループは「今後は、生きた個体の細胞内でのRNAの集まりが環境応答によってどのように出現・消失するのか、何がそれを制御するのか、正常な組織と疾患にかかった組織でどのように異なっているのかを明らかにすることで、生きた組織・個体での遺伝子発現のメカニズムおよび疾患をもたらすRNAの動きの解明に繋げていきたいと考えています。」とコメントしている。
2015年06月29日慶應義塾大学(慶大)は6月16日、北里大学との共同研究で、遺伝性パーキンソン病患者由来のiPS細胞を樹立し、分化誘導した神経細胞を用いてパーキンソン病患者の脳内における病態を解明したと発表した。同成果は慶大学医学部生理学教室の岡野栄之 教授、北里大学医療衛生学部再生医療・細胞デザイン研究施設細胞デザイン研究開発センターの太田悦朗 講師(慶應義塾大学医学部共同研究員)、小幡文弥 教授らの研究グループによるもので、6月8日(現地時間)に医学誌「Human Molecular Genetics」に掲載された。同研究グループは全患者の10%を占める遺伝性パーキンソン病患者の発症メカニズム解明を目的に、原因遺伝子LRRK2に変異を有する優性遺伝性パーキンソン病家系内の患者2名からiPS細胞を樹立し、これらのiPS細胞から神経細胞のもととなる神経幹細胞を作製後、分化誘導した神経細胞について機能解析を行った。LRRK2に変異を持つ患者は、全患者の90%を占める孤発性パーキンソン病と臨床症状や発症年齢、治療薬に対する反応など似た特徴を示すことがわかっている。解析の結果、iPS細胞から誘導した患者の神経細胞群では、健常者の神経細胞群に比べ、酸化ストレスに対する脆弱性があったほか、ドーパミンの放出異常あること、細胞内のAKT/GSK-3βシグナル伝達経路の異常によってリン酸化タウが増加することも明らかとなった。また、iPS細胞を樹立したうちの1名の患者の死後脳を調べたところ、GSK-3β活性化によるリン酸化タウの増加、そしてそれが脳内に沈着して引き起こされる神経原線維変化が確認された。同研究グループは「今後、この患者由来のiPS 細胞を用いることで遺伝性だけでなく孤発性も含めたパーキンソン病の病態解明や治療のための新薬開発が期待される」とコメントしている。
2015年06月17日SBIファーマとリプロセルは6月8日、iPS細胞由来の分化細胞を用いた再生医療を行う際に問題となる残留iPS細胞を、再生医療に適したALAというアミノ酸で選択的に除去する技術を開発したと発表した。iPS細胞から心筋、神経、肝臓などの細胞を作製する際、iPS細胞が変化せず残留し、生体に移植した時にがん化してしまう場合があった。そのため、再生医療に向けた品質管理の観点から、体細胞に変化した細胞群から残留iPS細胞のみを除去する技術の開発が必要とされていた。ALAは、がん組織ではプロトポルフィリンIXという物質へ変化し、蓄積するという特徴を持つ。プロトポルフィリンIXは特殊な波長の光を浴びると細胞を破壊する物質を生成することから、海外ではALAはがん治療薬として承認されている。今回開発された技術ではがん細胞とiPS細胞に共通する特徴に着目し、ALAを含んだ培養液中でiPS細胞から変化させた体細胞に特殊な条件で光照射することで、容易にiPS細胞を選択的に除去することに成功した。
2015年06月08日東京大学(東大)は5月28日、悪性度の極めて高い小細胞肺がんを移植したマウスに、がん細胞にのみ結合する抗体「90Y標識抗ROBO1抗体」を投与したところ、腫瘤が著明に縮小することを確認したと発表した。同成果は、東大医学部附属病院 放射線科/東大大学院 医学系研究科核医学分野 准教授の百瀬敏光氏、東大医学部附属病院 放射線科 特任助教/東大大学院 医学系研究科核医学分野 博士課程学生(当時)の藤原健太郎氏、東大先端科学技術研究センター 計量生物医学 教授の 浜窪隆雄氏、東大先端科学技術研究センター システム生物医学 特任教授の児玉龍彦氏らによるもの。詳細は「PLOS ONE」に掲載された。肺がんは、がんの中で最も罹患率・死亡率が高く、その内、成長が早く、転移しやすい小細胞肺がんが約15%を占めているが、身体の他の部位までがんが広がってしまっている段階の進展型小細胞肺がんは、悪性度が高く、有効や治療法が確立されていない。今回、研究グループは、放射性同位元素で標識した「がん細胞にのみ結合する抗体(90Y標識抗ROBO1抗体)」を開発し、実際に、小細胞肺がんを移植したマウスに投与したところ、がん細胞を殺傷し、腫瘤を縮小させる効果があることを確認したという。また、こうした抗体を投与して、がんに集積させることで、小細胞肺がんを移植したマウスの体内から放射線治療をする「放射免疫療法」が、進展型小細胞肺がんの根治や余命の改善に向けた治療法の確立につながることが期待できるとしており、今後は、同薬剤の治療効果と副作用に関する詳細な評価に加え、治療効果や副作用のさらなる改善を目指して、化学治療との併用治療や、別の治療用放射性同位元素の導入、抗体の小分子化などを検討していくとするほか、抗体の体内動態を可視化することで、SPECT/PETイメージング用診断薬の開発にもつなげたいとしている。
2015年06月01日慶応義塾大学(慶応大)は5月27日、小児神経発達障害であるレット症候群患者からiPS細胞を樹立し、神経発生過程における異常を明らかにしたと発表した。同成果は慶大医学部生理学教室の岡野栄之 教授、山梨大学大学院総合研究部環境遺伝医学講座の久保田健夫 教授、順天堂大学大学院医学研究科ゲノム・再生医療センターの赤松和土 特任教授の共同研究グループによるもので、5月27日付(現地時間)の英医学雑誌「Molecular Brain」オンライン版に掲載された。レット症候群は女児の1万5000人に1人の確率で発症する疾患で、6カ月~18カ月は通常の発達経過をたどるものの、徐々にそれまでに獲得した言語・運動能力を失うとともに特徴的な手もみ運動やてんかん、自閉症といった症状が現れる。この疾患の患者の約90%以上が2本のX染色体上にあるMECP2遺伝子のどちらかに変異を有していることがわかっている。現在は根本的治療法がないものの、自閉症状を示す疾患のなかで原因遺伝子がわかっている数少ない疾患であることから、レット症候群の研究が進めば自閉症全体の治療法の解明にもつながることが期待されている。これまでの研究では、患者の脳から神経系の細胞を入手することは不可能なため、MECP2遺伝子に変異を加えたマウスを用いてレット症候群の解析を行っていたが、実際の患者の症状は再現出来ていなかった。今回の研究では、MECP2遺伝子に同じ遺伝子変異を持つ2名の患者の皮膚細胞を使用した。女性の細胞は2本のX染色体を有し、ランダムに片方のX染色体の遺伝子発現が抑制されるため、正常MECP2遺伝子発現細胞と変異MECP2遺伝子発現の2種類の細胞が混在している状態からiPS細胞を作成した。その結果、正常MECP2遺伝子が発現しているiPS細胞と変異MECP2遺伝子が発現しているiPS細胞の2種類が得られた。作成した2種類のiPS細胞から誘導した神経幹細胞と神経細胞を比較したところ、変異MECP2遺伝子をもつ細胞では、細胞外のイオン濃度調整や血流調整、神経伝達物質の調節を担うグリア細胞の一種であるアストロサイトが、正常な細胞に比べてに比べて多く存在していることが判明した。研究グループは、今後の研究で、グリア細胞の発生異常がレット症候群の諸症状とどう関連しているか明らかにする必要があるとしている。
2015年05月27日メディネット5月26日、東京都品川区に保有する細胞培養加工施設(品川CPF)が、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」に基づき、特定細胞加工物製造許可を取得したと発表した。同施設は免疫細胞治療に係る細胞加工に加え、体細胞、幹細胞、iPS細胞などの多様な細胞加工の製造開発を受託することを視野に入れて設計されたもので、特定細胞加工物の製造受託、再生・細胞医療製品の開発から商業生産まで対応可能だという。なお、同社は今回の許可取得により、本格的に細胞加工の製造開発受託を開始するとしている。
2015年05月26日京都大学は5月22日、細胞内マイクロRNAを使って細胞を選別する人工RNA(RNAスイッチ)を用い、自動的に心筋細胞以外の細胞が取り除かれるシステムを開発したと発表した。同成果は同大学iPS 細胞研究所の三木健嗣 研究員、遠藤慧 研究員(現東京大学大学院新領域創成科学研究科)、齊藤博英 教授、吉田善紀 講師らによるもので米国科学誌「Cell Stem Cell」に掲載された。ES細胞やiPS細胞など幹細胞から高純度の心筋細胞を得るためには、細胞表面の抗原を識別して細胞を選別する必要がある。しかし、心筋細胞には特異的な抗体が無く、ゲノムに傷をつける可能性があるDNA導入などを使わないと高効率に純化することは困難だった。そこで研究グループは、マイクロRNAを検知することで細胞を識別する方法の開発に着手。心筋細胞に特徴的なマイクロRNAを同定し、そのマイクロRNAが存在しない時だけ蛍光タンパク質が光るRNAスイッチを作製した。また、この仕組を応用し、蛍光タンパク質の代わりに細胞死を誘導する遺伝子を導入し、心筋細胞のマイクロRNAを持たない細胞では細胞死が起きるシステムを構築した。これにより、機械で選別することなく、高純度に心筋細胞だけを培養することに成功した。同システムは上皮細胞や肝細胞、インスリン生産細胞などにも応用可能とのことで、従来では選別が難しかったさまざまな細胞が取得できるようになり、幹細胞分野における幅広い研究での活用が期待される。
2015年05月25日マウスコンピューターは15日、iiyamaブランドの液晶ディスプレイとして、ブルーライト低減機能やAH-IPS方式パネルを搭載した21.5型フルHD液晶ディスプレイ「ProLite XU2290HS-2」を発売した。価格はオープン、直販サイト(楽天市場)での参考価格は24,800円。ProLite XU2290HS-2は、モニタ自体にブルーライトを低減する機能が付いている、AH-IPS方式パネルを採用した液晶ディスプレイ。3パターンの省エネ・節電モードを搭載しており、通常モードと比べて消費電力を最大約35%削減できる。主な仕様は、液晶がAH-IPS方式パネル、画面サイズが21.5型、解像度が1,920×1,080ドット(フルHD)、輝度が250cd/平方メートル、コントラスト比が1,000:1(ACR時5,000,000:1)、視野角が上下各89度/左右各89度、GtoGの応答速度が5ms。映像入力インタフェースはHDCP対応DVI-DとHDMI、D-Subで、2W×2のスピーカーを内蔵する。音声入力は3.5mmステレオミニジャック。消費電力は最大35W、標準22W、パワーマネジメントモード時で最大0.5W。スタンド機能は上20度/下4度のチルト、VESA 100mmマウントに対応する。本体サイズはW499.5×D370.5×H180.0mm、重量は3.7kg。付属品はD-Subケーブル、DVI-Dケーブル、HDMIケーブル、電源コード、オーディオケーブルなど。
2015年05月15日ニコンは5月7日、スイスLonzaと日本における細胞受託生産に関する戦略的業務提携契約を締結し、ニコン100%出資の新会社を設立し、再生医療用細胞などの受託生産事業に参入すると発表した。再生医療を取り巻く環境は、国内では薬事法改正法により早期実用化の期待が高まっているほか、欧米でも体性幹細胞を用いた再生医療への早期応用が見込まれる状況となっており、同社では、そうした環境を踏まえ、日本国内において高品質の再生医療向け細胞の受託生産ができる体制を構築することを決定したという。具体的には、再生医療向け細胞生産大手であるLonzaの有する体性幹細胞などの細胞生産ノウハウを習得し、将来のiPS細胞の再生医療の実用化に向けた取り組みを加速していく方針。同社では、2007年よりiPS細胞などのライブセル(生きた細胞)向け細胞培養観察装置「BioStation CT」の製造・販売を行ってきたが、将来のiPS細胞の再生医療の実用化には、製造工程における品質・安全評価の基準作りや運用方法の確立が必要となるほか、目的とする細胞への分化誘導の方法や大量細胞培養の必要性を考慮した、スケールアップのノウハウなどが求められていた。同社では、今回を機にコア技術である光学技術および画像解析技術を活用し、それらの課題に取り組むことで、再生医療用細胞などの受託生産事業の拡大を目指すとするほか、周辺領域への事業基盤の拡大も目指すとしている。なお、新設子会社の概要は以下のとおり。会社名:株式会社ニコン・セル・イノベーション所在地:検討中(京浜地区を予定)設立時期:2015年度 上期受託開始(一部稼働):2015年度 下期工場竣工:2017年度 上期出資:20億円(資本金 10億円、資本準備金10億円)
2015年05月08日近畿大学(近大)は5月7日、ES/iPS細胞など従来型の多能性幹細胞とは大きく性質が異なる、新規の多能性幹細胞である領域選択型エピ幹細胞の樹立に成功したと発表した。同成果は近畿大学農学部バイオサイエンス学科の岡村大治 講師らのグループによるもので、5月6日付(現地時間)の英科学誌「Nature」に掲載される。研究グループは今回、「(1)タンパク質FGF2、(2)小分子化合物Wntinhibitor、(3)無血清」という培養条件を満たすことで、着床前後のマウス胚から、領域選択型エピ幹細胞を樹立することに成功した。この条件下で培養したヒトES/iPS細胞を着床後のマウス胚の後極側(将来の下半身側)に移植すると、神経や筋肉の前駆細胞などに分化した。また、後極側に細胞塊を移植した時のみ定着・増殖・拡散・分化をするという、従来型の多能性幹細胞には見られない「領域選択性」を持つことが明らかになった。今回の研究成果は、ヒト多能性幹細胞から異種間キメラ胚が作製可能であること示すもので、ヒトの臓器をブタなどの動物に作らせる技術へ発展する可能性がある。また、ヒトの着床後の初期発生の理解につながり、流産を防ぐための治療法の開発にもつながることが期待される。
2015年05月07日私たちが1日=24時間で生活しているのは、何となくでも、感覚的にでもありません。体内に概日リズムを刻むペースメーカー細胞があり、そこが毎日リズムを刻んでいるからなのです。最近、その細胞の実態が明らかになったとのことです。ペースメーカー細胞を特定!私たちの脳には1日のリズムを刻む、いわゆる体内時計のペースメーカーとして機能する神経細胞があります。この存在は知られていたものの、最近までどの細胞がその役割を担っているのかは不明だったそうです。しかし、2015年3月にテキサス大学サウスウェスタン医学センターとの共同研究でその細胞をついに特定したと筑波大学が発表しました。その名前は「ニューロメジンS産生細胞群」。マウスの実験によって発見されたとのことです。まだ未知の部分も……研究チームは、概日リズムを刻む視交叉上核の神経細胞のうち、約4割を占める細胞に注目しました。それがニューロメジンSという神経ペプチドをつくる働きをしている細胞。この細胞の時計遺伝子の働きを操作によって乱すと、行動リズムが乱れることからペースメーカー細胞である、と結論づけたそうです。ただ、全貌が解明されたわけではなく、体内時計に関わる未知の神経伝達物質もあるのだとか。一般人の私には、とても難しい話ですが、とにかくまた一歩、私達の脳の謎が解明に近づいたということですね。睡眠障害の治療にも役立つ可能性私たちが気になるのは、それがわかったところで具体的に何がどうなるの?というところ。調べてみたところ、今回の研究によって睡眠障害の治療にも役立つ可能性があるそうです。ペースメーカー細胞は「睡眠と覚醒のリズム」を調整する役割を担っているので、今後、ますますメカニズムが解明されれば、睡眠障害で苦しむ人に朗報をもたらすかもしれませんね。これからも新たな事実が解明されることを期待しましょう! またわかったことがあれば、ここで取り上げてご紹介したいと思います!Photo by Derek D
2015年05月07日科学の進歩は病気で苦しむ人にとっては本当にうれしく、ありがたいことに違いありません。今回は、最新の研究によって明らかになったグリア細胞の働きに注目します。この新事実によって私たちはどのような恩恵を受けることができるのでしょうか?睡眠障害とグリア細胞の関係私たちの脳の中には「グリア細胞」と呼ばれる細胞が存在します。これは脳内の神経細胞以外の細胞のことで、脳の免疫の修復などさまざまな働きをしています。文部科学省脳科学研究戦略推進プログラムの一環として行われたマウスを使った研究によって、このグリア細胞の機能不全が睡眠障害やうつ病にみられる異常行動を引き起こす、ということが判明したそうです。一体どのようなことなのか、研究内容をかみくだきながら少し詳しくみていきたいと思います。マウス実験で判明したこと人間の脳は、主に神経細胞とグリア細胞の2つで構成されていると言われています。数としては、グリア細胞のほうが多いそうですが、この細胞が精神疾患や神経疾患に対してどのような役割を担っているのかについてはわからないことがたくさんあったそうです。そこでグリア細胞を人為的に欠損させたマウスを用いて実験したところ、正常なマウスに比べてうつ病患者に多くみられる入眠からレム睡眠までの時間短縮やレム睡眠時間の延長などが現れたそうです。このことから、グリア細胞の機能不全が睡眠障害やうつ病の症状に似た異常行動を引き起こす可能性を示唆しているとの結論に至ったそうです。新たな抗うつ薬の開発に期待グリア細胞の働きが明らかになったことで今後は、現在の薬よりも副作用の少ない抗うつ薬の開発が期待されています。抗うつ薬の副作用で現在苦しんでいる人には、近い将来、うれしいニュースが届くかもしれませんね!この研究結果は昨年末、アメリカの科学誌 Journal of Neuroscience(ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス)のオンライン版で発表されたそうです。今後、ますます睡眠の研究は進んでいくことは間違いないでしょう。不眠や睡眠障害で苦しむ人達を少しでも助けられるような研究結果が発表されることを楽しみに待ちたいですね。Photo by David Compton
2015年05月06日熊本大学は4月30日、乳がん細胞がホルモン療法に対し耐性化する仕組みを明らかにしたと発表した。同成果は熊本大学発生医学研究所細胞医学分野の斉藤典子 准教授、中尾光善 教授らと、同大学院生命科学研究部乳腺・内分泌外科学分野の冨田さおり 医師、岩瀬弘敬 教授、九州大学医学研究院の大川恭行 准教授らの共同研究によるもの。4月29日付(現地時間)の英科学誌「Nature」に掲載された。乳がん治療では、エストロゲンという女性ホルモンとその受容体の働きを阻害する薬剤が使用される。しかし、この治療を長期にわたり受けていると、がん細胞が薬剤に耐性をもって再発する可能性がある。再発したがんは周りの組織に広がっていったり、リンパ節に転移するなど難治性となってしまう。研究グループはエストロゲン受容体を作る遺伝子で、活性化すると乳がん細胞の中でエストロゲン受容体が過剰に働くようになることで知られるESR1に注目し、ホルモン療法が効きにくい状態におけるESR1遺伝子の変化を調査した。その結果、難治性の乳がん細胞ではエストロゲン受容体およびESR1メッセンジャーRNA の量が数倍に増加していた。また、核内のESR1遺伝子の近くに非コードRNAの大きな塊ができていることも判明。エストロゲン受容体をもつ乳がん細胞では、ESR1遺伝子の近くに多量の非コードRNAが蓄積していると考えられた。この非コードRNAを調べたところ、難治性細胞においてESR1遺伝子の働きを高く維持していることがわかった。これらの研究結果から、エストロゲン受容体をもつ乳がん細胞は、ホルモン療法によってエストロゲンを長期に枯渇すると、ゲノム中のESR1遺伝子とその周囲の部分から非コードRNAが誘導されて、エストロゲン受容体を多量につくるように変わることで、ホルモン療法に対して耐性化すると結論づけられた。なお、研究グループはポリフェノールの一種であるレスべラトロールが、その非コードRNAとESR1遺伝子の高発現を阻害し、乳がん細胞の増殖を抑制することを突き止めており、今後新しい乳がん治療の開発につながることが期待される。
2015年04月30日名古屋大学は4月24日、シロイヌナズナとう植物を用いた実験で、細胞死をもたらす新しい細胞融合現象を発見したと発表した。同成果は丸山大輔 YLC特任助教と東山哲也 教授らのグループによるもので、4月23日付(現地時間)の科学誌「Cell」のオンライン版に掲載された。花粉には精細胞を胚のうへと届けるための花粉管という細胞を持つ。花粉管は長い管状で、先端内部に2個の精細胞をもっている。花粉が雌しべに受粉すると、この花粉管が伸びて雌しべ内部へ入っていき、種の元になる胚珠と精細胞を届ける。この時に、卵細胞の隣に2つある助細胞が花粉管を正確に胚珠に導くための誘引物質を放出する。花粉管が胚珠にたどり着くと、片方の助細胞の破壊と引き換えに内部の2つの精細胞を放出する。このうち1つは卵細胞と受精し幼植物となる「胚」をつくり、片方は中央細胞と受精して胚への影響を供給する「胚乳」という細胞をつくる(重複受精)。この2つの受精の後で、生き残った方の助細胞は素早く不活性化され、花粉管の誘引停止が起こるが、その仕組について詳しいことはわかっていなかった。今回の研究では、受精後に残った方の助細胞の不活性化について調べるために、シロイヌナズナという植物を用いて、ミトコンドリアを緑色蛍光タンパク質(GFP)でラベルした助細胞の経時観察を行った。その結果、助細胞のミトコンドリアが隣に位置する胚乳へ移動することが判明した。電子顕微鏡で助細胞と胚乳を隔てる部分を調べると、受精前には無かった穴が発見され、受精後に助細胞と胚乳が融合し、助細胞の内容物が胚乳へと流れ出ていることがわかった。また、助細胞が作り出していた花粉管の誘引物質をGFPでラベルして観察したところ、誘引物質も胚乳へ移動しており、助細胞での濃度が急激に低下していた。したがって、細胞融合によって誘引物質の供給が途絶えることによって、2本目以降の花粉管が目標を定められない状態となっていることがわかった。さらに、助細胞の核を観察した結果、胚乳核の分裂に合わせて分裂しようとするものの、最終的に分裂できず変性することも判明した。これらにより、助細胞の不活性化は、細胞融合による誘引物質などの希釈と核の崩壊という二段階の仕組みで発生していると結論づけられた。植物の細胞は堅い細胞壁に覆われているため、卵細胞と中央細胞の受精以外で植物細胞同士が融合するとはこれまで考えられていなかった。また、成長過程での細胞死は、死ぬべき細胞自身が自殺プログラムを実行していると考えられていた。今回の現象は細胞融合によって融合相手が不活性化するという新しい細胞融合があることを示したもので、同研究グループは「教科書を書き換えるほどの成果といえる」としている。
2015年04月24日日本エイサーは23日、IPS液晶の光沢パネルを採用する液晶ディスプレイとして、23型ワイドモデル「G237HLbmix」と、21.5型ワイドモデル「G227HQLbmix」を発表した。5月1日より発売する。価格はオープン。○G237HLbmix「G237HLbmix」は、ベゼルを極小とした「ゼロ・フレーム」デザインの23型ワイド液晶ディスプレイ。液晶パネルにIPS方式の光沢パネルを搭載し、表面には内外光の乱反射を軽減し映り込みを抑える「Crystal Briteテクノロジー加工」を採用。色彩豊かな映像を表示する。「ブルーライト」を軽減する機能も搭載。ブルーライト透過率を50~80%までの4段階で調整でき、フリッカーをなくす「フリッカーレステクノロジ」とあわせて、長時間使用しても眼精疲労が溜まりにくくなっている。主な仕様は、解像度が1,920×1,080ドット(フルHD)、液晶パネルがIPS方式の光沢(グレア)、視野角が水平 / 垂直ともに178度、輝度が250cd/平方メートル、コントラスト比が1,000:1(ACMオン時:100,000,000:1)、応答速度が4ms(GTG)。映像入力インタフェースはHDMI×1、D-Sub×1。スタンドのチルト角度が上15度 / 下5度。1.5W+1.5Wのステレオスピーカーを搭載する。本体サイズはW532×D185×H402mm、重量は3.0kg(スタンドあり)。○G227HQLbmix「G227HQLbmix」は、画面サイズが21.5型ワイドのモデル。画面サイズ以外の機能や仕様は「G237HLbmix」とほぼ共通。本体サイズはW499×D185×H384mm、重量は2.8kg(スタンドあり)。
2015年04月23日京都大学iPS細胞研究所(CiRA)と武田薬品工業(武田薬品)は4月17日、心不全、糖尿病、神経疾患などにおけるiPS細胞技術の臨床応用に向けた共同研究契約を締結したと発表した。「T-CiRA(Takeda-CiRA Joint Program for iPS Cell Applications)」と名付けられた同提携のもと、iPS細胞技術を用いた創薬研究や細胞治療に関する研究プロジェクトが実施されることになるという。京都大学の山中伸弥 教授が研究全体を指揮し、武田薬品は10年間で200億円の資金および研究運営に関する助言を提供するほか、神奈川県・藤沢市の湘南研究所内の研究設備を提供する。研究人員は全体で100名程度を予定しており、CiRAと武田薬品から50名程度が参加する。当初の研究分野として可能性の高いものには心不全、糖尿病、精神神経疾患、がん免疫療法などが挙げられており、共同研究の進展と共に新たなプロジェクトを追加していく。同研究が軌道に乗った段階では、10件前後のプロジェクトが同時進行することになるという。
2015年04月17日産業技術総合研究所(産総研)と和光純薬工業は4月10日、移植用細胞から腫瘍の原因となるiPS細胞やヒトES細胞を除く技術を開発したと発表した。同成果は産総研創薬基盤研究部門の舘野浩章 主任研究員、平林淳 首席研究員、幹細胞工学研究グループの小沼泰子 主任研究員、伊藤弓弦 研究グループ長と、和光純薬工業試薬化成品事業部 開発第一本部 ライフサイエンス研究所の共同研究によるもので、4月9日(現地時間)の米科学誌「Stem Cell Reports」オンライン版に掲載された。ヒトiPS/ES細胞はあらゆる細胞に分化能力を持つ。しかし、全てのヒトiPS/ES細胞を目的の細胞に分化させることは難しく、一定数の未分化な状態のものが残ってしまう場合があり、移植後に腫瘍を形成してしまう可能性がある。そのため、移植用細胞からそうした細胞を取り除く必要があるが、従来の方法では1つ1つの細胞に解離してから特殊な装置を用いるため、細胞シートへの適用ができない、処理速度が遅い、移植用細胞の生存に悪影響を与える可能性があるなどの課題があった。今回の研究では、rBC2LCNというタンパク質がヒトiPS/ES細胞に結合した後に、細胞内に取り込まれるという現象を発見。そこで、細胞内に取り込まれるとタンパク質合成を阻害し細胞死を引き起こす毒素をrBC2LCNに融合させた組換えタンパク質を開発した。この組換えタンパク質を細胞培養液に添加すると、分化した体細胞の増殖や生存には影響を与えずに、未分化なヒトiPS/ES細胞を選択的に除去することができた。この組換えタンパク質は細胞をあらかじめ分離するといった前処理も必要なく、細胞培養液に添加するだけで選択的にヒトiPS/ES細胞を除去できるため、大量の細胞や細胞シートなどへの適用も可能だという。同技術は1年以内の実用化が予定されており、再生医療に用いるヒトiPS細胞由来の心筋細胞などの細胞製造への適用性を検証することで、再生医療の安全性向上につながることが期待される。
2015年04月10日楽天の三木谷浩史社長と米セールスフォース・ドットコムのマーク・ベニオフCEOは4月8日、京都大学の「iPS細胞研究基金」へそれぞれ約2.5億円を寄付する事を発表し、都内で調印式を開催した。調印式には京都大学の山中伸弥教授と三木谷浩史社長が出席、マーク・ベニオフCEOは中継で参加した。2009年4月に設立された同基金はiPS細胞研究所において基礎から応用研究まで実施できる研究環境を整備し、研究の加速化を図ることを目的としている。寄付金は知的財産の確保と維持、優秀な研究者・研究支援者の確保、安定的な研究の推進、医療応用に向けた研究費としての支出などに使用されている。今回の件は、ベニオフCEOが来日した際に山中教授に資金援助を申し出たことがきっかけだという。その際、ベニオフCEOが「他に賛同してくれる人はいないか」と聞いたところ山中教授から三木谷社長の名前が挙がったという。会見で三木谷社長は「山中先生は研究者という立場を超えて再生医療の実現に向けて資金調達をやっておられる。国からの支援も制約があると聞いた。今回の寄付金でより自由に研究できるようになればといい」とコメントした。iPS細胞研究所は国から競争的資金という名目の援助を受けている。しかし、この資金で同研究所でかかる費用の全てをカバーできるわけでなはい。競争的資金では国から許認可を得る専門家、高度な実験を行う技術員などを有期雇用することしかできず、研究所の職員の9割が不安定な立場にとどまっているという。iPS細胞研究の医療応用を目指している同研究所にとって、優秀な研究者や技術員を確保できないということは大きな痛手だ。自身もマラソン大会に参加するなどして資金集めに奮闘している山中教授は「研究所では年間5億から10億円の資金が必要となる。今回の支援をいたたいだことは、研究にとって非常にありがたい。最大限有効に生かして臨床応用の実現に向かってこれからも頑張っていきたい」と感謝を述べた。
2015年04月08日国立がん研究センターは4月2日、乳がんの脳転移にがん細胞から分泌される微小な小胞エクソームが関わっていると発表した。同成果は分子細胞治療研究分野の富永直臣 研修生、落合孝広 分野長の研究グループによるもので、4月1日付けの米科学誌「Nature Communications」電子版に掲載された。乳がんは比較的予後の良いがんとして知られる一方、治療後、長期間を経て脳転移が認められることがある。脳への転移は予後に大きな影響を及ぼしQOLを著しく低下させるが、そのメカニズムについてはわかっていなかった。同研究では、がん細胞が分泌する直径約100nmの顆粒(エクソーム)が、脳血管で物質透過を制限しているBBBという生体バリア構造を破壊していることを突き止めた。エクソームに含まれるmiR-181cというマイクロRNAがBBBの構造を変化させた結果、バリア機能が失われ、がん細胞が容易にBBBを通過し、脳転移を引き起こしていると考えられるという。がんの脳転移メカニズムを明らかにした今回の成果は今後、早期発見および新規治療法の開発への応用が期待される。
2015年04月02日富士フイルムは3月30日、iPS細胞の開発・製造を手がける米Cellular Dynamics International(CDI)を約3億700万ドル(約360億円)で買収すると発表した。今回、CDIを買収したことでiPS細胞を使った創薬支援分野に参入することになる。CDIは2004年に設立され、2013年7月にNASDAQに上場したバイオベンチャー企業で、良質なiPS細胞を大量に安定生産する技術に強みを持ち、大手製薬企業や先端研究機関と供給契約を締結している。現在は創薬支援や細胞治療、幹細胞バンク向けのiPS細胞の開発・製造を行っており、創薬支援向けに、心筋や神経など12種類のiPS細胞を安定的に供給している。富士フイルムは、写真フィルムの研究開発・製造で培ってきたノウハウを活用して、細胞増殖のための「足場」として生体適合性に優れ、さまざまな形状に加工できるリコンビナントペプチドを開発したほか、2014年12月には日本で再生医療製品を提供しているジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J-TEC)を連結子会社化するなど、再生医療分野への取り組みを強化してきた。今後、CDIのiPS細胞関連技術・ノウハウと富士フイルムの高機能素材技術・エンジニアリング技術やJ-TECの品質マネージメントシステムとのシナジーを発揮させ、再生医療製品の開発加速、再生医療の事業領域の拡大を図るとともに、再生医療の産業化に貢献していくことを目指すとしている。
2015年03月30日日本科学未来館(未来館)は3月20日から、5階常設展の生命エリアで新展示「細胞たち研究開発中」を公開する。同展示ではiPS細胞をはじめ、現在"研究開発中"の細胞研究について知ることができる。エリアはシアター部分と展示部分に分かれており、5つあるシアターでiPS細胞について約8分間の映像を見たあと、展示エリアに進むことになる。シアターの映像は、iPS細胞による治療などが現実になった近未来が舞台となっており、難病や怪我などを抱えた患者や相談者の人生ドラマを通じてiPS細胞とどう向き合っていくべきか「自分ごと」として実感できる内容となっている。展示エリアでは、体性幹細胞、ES細胞、iPS細胞という3種類の本物の幹細胞、受精の瞬間から6日間をとらえたヒト受精卵の映像、胎児が成長し誕生するまでの様子の3D画像などを見ることができる。また、情報を「知る」だけでなく実物大のヒト胎児模型や体の動きに合わせタンパク質の動きがわかるインタラクティブ展示など、細胞研究を「体験」できるように工夫した展示も用意された。同館ではこのほか、生命科学をはじめとする先端研究分野における社会的・倫理的な課題についてアンケート方式で回答し意見を発信する「オピニオン・バンク」も新設。科学技術に関する最新ニュースとリアルタイムの回答結果を得られる大型ディスプレイもあり、来場者に科学について自分なりに考えるきっかけを提供する。また、4月からは本物のiPS細胞を実験で扱う「iPS細胞から考える再生医療」がクラブMiraikan会員限定でスタートする。小学4年生以上を対象とし細胞の観察などを行う基礎編(所要時間2.5時間)、中学1年生以上を対象としiPS細胞をさまざまな細胞へと変化させる発展編(2週間にわたって実施:1回目は終日、2回目は2.5時間)という2コース設定された。募集人数は基礎編が各回16名、発展編が各回8名。月1回程度、2コースを月替りで交互に開催する。参加にはホームページから事前申し込みが必要で、その後抽選となる。
2015年03月19日