2017年7月20日 21:15
悲しくないのに「頬を伝う涙」…|12星座連載小説#122~水瓶座11話~
書きながら思う。
短いようで長く、長いようで短かった。“愛社精神”なんてものは、これっぽっちもないけど、私は私なりにできることをやってきた。別に会社から守ってもらおうなんて思ってないけど、こんな仕打ちはあんまりなんじゃない……!?
いろんな思い出が頭の中をめぐる。社内では、“一匹狼”で通ってた私だけど、チームプロジェクトが成功したときは本当に嬉しかったし、友達は少ないけど、飲み会には顔を出していた。もうこのデスクからの景色が見られなくなるかと思うと、少し……寂しい。
なんてね、感傷にひたるなんて、私には似合わない、か……。書き終えた退職届を封筒に入れ、そのまま階下へ。
そこで思い出した。営業の三橋のことだ。
『あいつ……大丈夫かな』
今回の件で、一番苦しい状況に立たされているのは三橋だ。届けを出す前に、営業課へ寄って顔見とかなくちゃな。
違う部署に行くのは、どうも慣れないもんだけどね……。営業課入口の内線にコールする。
「はい、受付です」
『あ、どうも。コンテンツ部の中野です。
三橋さんに用事があるんですが……』
「了解いたしました。少々お待ち下さい」
何だってこう、おカタいのかねぇ、受付ってのは……。