2017年7月31日 21:15
「I balance.」~私は調和する。~|12星座連載小説#129~天秤座 最終話~
―――可愛い。彼って、意外とムキになりやすい性格なのよね……。
彼が私のグラスを白ワインで満たしてくれているのを見て、ふと思った。
“あの時”もそうだったな―――。
恵比寿で裕太と私、そして薫さんとで待ち合わせたあの夜。
私は、しばらく何も言えなかった。
色々言うべきこと、言いたいことを考えていたのに、いざ薫さんを目の前にすると、何も言えなくて。空気を察してか、裕太が一生懸命盛り上げようとしてくれた。
最初に口を開いたのは、薫さんだった。
「僕、気にしてますから……この間のこと……」
いつになく、ハッキリと、静かに彼は言った。
『ゴメンなさい……』
私には謝る事しかできなかった。彼が気にしていることの理由がわからなかったから。
「いや、そうじゃなくて! ……何で謝るんですか!?」
少し大きな声を出す彼。
『……だって、薫さん、嫌だったんでしょ?』
消え入るような私の声。
「ちょ、ちょ、あのさ……全然わかんねーんだけど」
あの時、裕太が間に入って、整理してくれたのよね。ホント、あいつイイ奴。
裕太は私たちのキューピッドね……。
私は、てっきり薫さんから嫌われたものだと思っていた。