「I balance.」~私は調和する。~|12星座連載小説#129~天秤座 最終話~
「まぁ、リラックスしてよ。自分の家だと思って」
薫さんが、私を気遣ってくれる。
カウンターキッチンの向こうから、知的な雰囲気の女性と私より少し若い女の子が料理を運んできてくれた。薫さんのお母様と薫さんの妹さんだ。
「お待たせしました、ゆっくり食べていってね」
そう言って“お母さん”が高そうな白ワインをワインセラーから出してきた。
『あ、いえ……とんでもありません。こちらこそお招きありがとうございます』
食卓には、色とりどりの食材が並んでいる。そして、その横で一生懸命コルクを抜こうとしている薫さん。
「もう、お兄ちゃん、下手なんだからー!……貸して!」
“妹さん”が薫さんの手からワインを奪い、ポンという音と共にあっという間にコルクを抜く。
「いやぁ、ハハハ……」
照れくさそうな彼。
「恭子さん、ゴメンなさいね、こんなアニキで……。でも、ビックリしちゃった! アニキにこんな綺麗な彼女ができたなんて、我が家始まって以来のビッグニュースでしたよ!」
飲んでもいないのに饒舌な彼女は、薫さんとは正反対の性格のようだ。
「僕だって、やる時はやるんだからな! ほら、返して」
私の横で薫さんが、少しだけムキになっている。