2017年8月10日 21:15
イタリア人彼氏の「知られざる姿」|12星座連載小説#137~射手座 11話~
お願い、早く来て。
スマホの着信音が鳴る―――
クリスからだ!
トイレに向かい、急いで電話に出る。
『もしもし、クリス!?』
「お待たせ、今店の前に着いたヨ」
『クリス、ありがとう……あの、よく聞いて欲しいの』
「どうしたの?」
『あのね……私、今日すごく飲んじゃって、料金が払えないの……』
「フゥ……」
電話の向こうで、彼の溜め息が聞こえる。当然よね……。
『それで……ゴメンなさい。クリス、立て替えて欲しいの……』
「Jun、キミはいつもそう。ボクの気持ちを考えてくれたことなんてあるのかい?」
『こんなお願いをするなんて、本当に悪いと思ってるわ……』
「そうじゃない。……ボクはJunにとって何なんだい? 帰国してから、クラブに行ったりホストの店で飲んだり……ボクと一緒にいてくれた時間はほとんどないじゃないか?」
『…………』
返す言葉もない。
クリスはいつだって私のことを考えてくれていたわ。
空港に迎えに来てくれたり。酔っ払った私を介抱してくれたり。そして、愛してくれた。
でも、私はそこにあぐらをかいて、彼のことをないがしろにしていた。
いつでも、クリスは私だけの味方だと思っていたから―――
『私……クリスを大切にできていなかったわ……』
「Jun、約束して欲しい……せめて日本にいる時は、ボクとの時間を大事にして欲しいんだ」