2018年9月20日 11:00
直木賞作家の“夫婦論”が深い! 裏切りがテーマの短編集
全10話の本作は、1編が原稿用紙30枚の短編。比較的短いなかに、
「一編ずつ、夫婦のやりとりを証明問題を解くように書いていき、全体を見た時に二人の間に流れている時間が分かればいいなと思いました」
ささやかな波乱はあっても、二人の生活は続く。こうして人と人は一緒に暮らしていくのだという事実に、豊かさすら感じさせる。互いに支えあっている彼らについて、
「責任って取るものでなく、持つものだと思う。この二人は、同じだけ二人で責任を持っている。それは継続から生まれたものでしょうね。ただ、夫婦って、毎日ちゃんと出会って、ちゃんと別れないとうまく時間が流れないから難しいですよね」
それは“おはよう”“おやすみ”をちゃんと言う、なんてことではない。
「毎日上手に別れるというのは上手に忘れる、流す、ということ。
毎日出がけにハグする習慣の夫婦もいますが、そうやってリセットできるといいでしょうね。水色を塗り重ねて、同じ景色を見続ける経験が、もし気まずい状況が訪れた時に、救いになるのではないかなと思います」
『ふたりぐらし』北海道に暮らす信好と紗弓の夫婦。札幌に住んでいた彼らだが、信好の母が亡くなったことから、実家の江別に移り住むことにして…。