くらし情報『スマホなしで“文通”の恋愛物語… 岩井俊二「最新作」の主題は?』

2020年1月13日 21:00

スマホなしで“文通”の恋愛物語… 岩井俊二「最新作」の主題は?

主人公の裕里が夫にスマホを壊されて、初恋の相手と手紙でしか連絡が取れなくなるというアイデアを思いつき、この作品が始まりました。人の関係がアナログだった時代は、ふいに“あの人は元気でやってるのかな”と思っても、遠い昔を眺めるように思うしかできなかった。それが、今は、検索したら情報が出てくるし、人との関係がタイムライン上に並ぶような時代。そんな究極の人間関係のありようになった今でも、今作のように奇跡の邂逅みたいなことが、時にあっさり起きてしまうんじゃないか。そして、そんな出来事に対して、みんな意外に無防備かもしれない、という僕のイメージが作品には描かれています。

でも、実現できたからこそ言えますが、あらためて、手紙は素敵なものだという実感がありました。書いたり読んだりしている佇まいには奥ゆかしさや雰囲気があるし、人が手をかけて字を書くという行為も含めてですが、伝わるぬくもりとか、いろいろなものが違います。スマホのほうがよほど高級品だし、手紙は紙切れなのに、なんともすごい、秘めたるパワーがあります。
裕里の姉である未咲の葬儀のシーンから始まる本作には、未咲を一途に想っている鏡史郎が、彼女を死へと追い込んだ元恋人の阿藤陽市(豊川悦司)

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