2020年1月13日 21:00
スマホなしで“文通”の恋愛物語… 岩井俊二「最新作」の主題は?
に会いに行き、ののしられる場面がありますが、それこそが今作で描きたかった核心部分です。25年前に撮った、悪い人が出てこない『Love Letter』にはない唯一の部分であり闇の部分です。当時、僕は30歳くらいで、中学時代を眺めるのに15年しか経っていない。でも、今回はそこから25年が経ち、その間、物作りや小説を書く立場として過ごした時間は、僕にとって決して簡単なものではありませんでした。出会った人とうまくいかないこともあるし、昨日今日のわだかまりではない、カオスのようなものを抱えていたりする。そんなことがありながらも、物作りや仕事を続けることに果たして意味があるのかどうか。そんな自分を、夢や恋愛を一途に追い続けた結果、阿藤にののしられてしまう小説家の鏡史郎に重ねています。
実は、劇中に登場する鏡史郎が書いた『未咲』という小説を、映画を撮る前に書きました。
その内容は物語に出てこないけど、今作のバックストーリーとして存在しています。そんなふうに最近は、全体がどういう世界になっているかというのを、まずはゲーム感覚でとにかく書き溜めておき、最後に“こんな話だ”と切り取る作り方をしています。映画だから2時間で収まるように作るのは、植木鉢に土を盛って花を咲かす行為というか…。