2016年3月11日 20:00
夢のネガティブな部分も書きたかった…『罪の余白』芦沢央が新作上梓、テーマは「誘拐」
これは12年間時が止まってしまった宮下家の成長物語でもあるんです」
一方、江間夫婦の間に何があったかも、次第に明らかになっていく。また、誘拐された愛子が視力以外の感覚を駆使して脱出を試みる様子は非常にスリリング。
「愛子が最後までぶれないでいてくれた。彼女がこの物語を救ってくれたなと思います」
次第に立ち上ってくるのは“夢”というテーマ。
「私自身、12年間作家を目指していたんですが、もしなれなかったら周囲に合わせる顔がない、という気持ちがありました。夢を追いかけるというのはキラキラしたイメージがありますが、将来に焦点を当てすぎて自分の現在や過去がよどんでしまうこともある。夢を持つのはそんなにいいことなのかという、ネガティブな面も書きたかった」
展開のテンポのよさ、やがて辿りつく犯人の動機、そしてそこからの展開にも読者は圧倒されるはず。
「読んだ人がこの場面で“はっ”とするだろう、と考えるのが楽しくて。
暗い話のわりには本人はニヤニヤしながら書いています(笑)」
◇12年前の誘拐事件の際に視力を失った愛子は、はじめて友達同士で出かけたコンサート会場で誘拐されてしまう。犯人の目的とは?KADOKAWA1800円
◇あしざわ・よう作家。