2020年12月20日 19:10
“異色”の漫画!? 『約束のネバーランド』をファン目線で英米文学者が解読
『約束のネバーランド』の冒頭でも、子供たちが無邪気に暮らす孤児院グレイス=フィールドハウスの様子は、まるで子供の楽園のようです。しかし、エマをはじめとする子供たちは、やがてこの孤児院が「鬼」のための食料となる食用児を育てる「農園」であることに気づきます。その時、タイトルに込められた「ネバーランド」という言葉は子供の楽園ではなく、「子供が大人に“なれない”世界」、すなわち死の世界であるという残酷な事実が浮かび上がってくるのです。
また、エマたちがハウスの秘密に気づくきっかけとなるのは、少女コニーが大事にしていた白ウサギのぬいぐるみ、リトルバーニーです。白いウサギを追いかけて少女が冒険へと誘い込まれる物語、といえば、ご存じルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』です。アリスが追いかける白ウサギは紳士らしくチョッキを着て、懐中時計を持っていると描かれますが、リトルバーニーもまたチョッキを着て、時計の形の蝶ネクタイをつけています(実写版ではどんな姿なのか、気になりますね!)。
『約束のネバーランド』と深い結びつきを持つ『ピーター・パン』と『不思議の国のアリス』は、十九世紀のイギリス児童文学を代表する古典的傑作ですが、いずれも「常識に縛られた支配的な大人vs自由で無垢な子供」