2016年5月24日 20:00
作家より人工知能のほうがお得意? 朝井リョウが“外注したい”執筆作業とは
でも電子媒体で読んだからといって作品の価値が落ちるわけではない。そこを考える話にしたかったんです」
ならば著者は技術革新に好意的なのかと思いきや、逆に「自分自身が老害になりそうなので」と言う。
「私自身、新しいものを試そうとしないんです。今あるものですませようとしてしまう。そうやって新しいものを遠ざけていくことが、老害的思考に繋がるんだろうなと思って。でもネット世代ですし、年齢的に新人類と言われる世代でもあるので、どちらにも足を突っ込んでいる今の状態のうちに書きたいなと」
だから雪子の気持ちも、薫の言い分も、とことん掘り下げた。また、二人の恋愛事情も、きちんと書きたかったことのひとつ。
「私たちの世代は草食系と言われますが、確かに恋愛の優先順位が高くない気がします。
できないことが少なくなって、日常生活で自分を変える必要がないのに、恋愛は思い通りにいかないことがたくさんあるから嫌になるんだと思う。だから、雪子が思い通りにならないながらも恋人とお互いの体に触れ合う場面はちゃんと書いておきたかった」
もう一編「レンタル世界」は、結婚式などで他人に友人に扮してもらうなど、人のレンタルがモチーフ。