2021年2月8日 20:30
古川雄大「魂に訴えかけてくるものがある」 ミュージカルの官能性を語る
父親役を演じてくださっている市村(正親)さんの顔が浮かび、そこに自分の父親が重なって、いろんな感情が湧き上がってきて、楽曲がスーッと入ってきて、ふいに涙がこみ上げてきたりします。その時のような感覚を舞台に立っている時に味わいたいと思うけれど、ここでロングトーンを出したいとか、次のセリフなんだっけとか、舞台上だからいろいろ考えてしまうんです。そういう邪念を一切なくして無心で役と向き合えた時に、できるのかなと思うんですけれど」
大きく作用するのは、そのミュージカルの楽曲そのものの力だ。『モーツァルト!』は、メロディの美しさに、登場人物たちが抱える葛藤や苦悩、悲しみや愛が織り込まれた名曲が詰め込まれた作品。
「たとえば、母親が亡くなって歌う『残酷な人生』という曲があって、最初は何も変わらない街の景色を淡々と描写していくんですけれど、徐々に音がクレッシェンドしていくに従って、歌詞も絶望から苛立ちへと変わっていき、最後の“ただひとり”で高音になる。気持ちの流れを音楽がしっかり作ってくれているんです。ほかにも、同じ曲なのに後半では転調して歌われることで最初とは違う気持ちを表現するとか、リプライズ(反復)