2021年7月2日 19:00
彼女は魔法使いのように人を…ダウン症の女性と注目の監督が紡いだ強い絆
―驚くことに、今回カロリーナさんは脚本を1ページも読まずに撮影に挑まれたと聞きました。どのようにして撮影していたのでしょうか?
監督彼女が読まなかったというよりも、僕が彼女に脚本を渡さなかったというほうが正しいかもしれませんね。というのも、事前に脚本を渡していたら、おそらく彼女はセリフや演技をかっちりと覚えてきてくれたと思います。でも、僕としてはそうではなくて、あまりいろいろ考えずに彼女にリアクションを取ってほしいと思っていたので、あえて渡しませんでした。
その結果、毎朝「今日はこういうシーンを撮るよ」と話してから撮影を進めたので、通常よりは複雑な手順にはなることも。でも、彼女は記憶力と洞察力が素晴らしいので、すぐに覚えてくれましたよ。そんなふうに、とにかくカロリーナのコンディションを整え、彼女のリアクションをうまく引き出すことに一番力を注ぎました。
とはいえ、その方法だと脚本に書いてあることと違う動きをしてしまうこともありますし、ときにはセリフがすぐに出てこないときもあったので、このチャレンジを一緒に引き受けて、柔軟に対応してくれた父親役のアントニオ・ピオヴァネッリには本当に感謝しています。