雑誌って、広告ほどお金は儲からないんだけど、名前が出るから目立つわけ。しかも、当時は雑誌が本当に売れていて、100万部売れるとか、よくあることだったから、そんなにたくさんの人が見てくれるって、楽しいんだよね。それでおもしろくなってきちゃって、芸術カメラマンをやめて、芸能カメラマンになっちゃった(笑)。
――写真を撮って発表する。その根っこには、ご自身のことを知ってほしいとか、いろんな人に認められたいっていう気持ちもあったんでしょうか?
篠山:うーん、それよりも写真ってさ、撮ったときは1枚だけど、印刷して複製することによって本当にたくさんの人の手に渡るでしょう?これって写真特有の可能性だと思うわけ。そこがおもしろかった。芸術的な写真を撮って、「はい、これがアートでございます。さあ皆さんありがたく鑑賞しなさい」って見せるのは、僕はつまんない。
それよりも、毎週毎週100万人が僕の写真を見てくれて、おもしろいとかカッコいいとか反応があるというほうが、社会を受け入れて、時代を撮ってるって感じがして、自分には向いてる気がしたんですよ。だから僕はアーティストではないの。写真は、時代の映し鏡。その時代の社会の突出した人や物や事を撮って、雑誌というメディアを使いながら写真をばらまいてきたっていうのが、篠山紀信という写真家。