2022年8月20日 18:30
パリで絶賛! 仏で2つも勲章をもらった巨匠・長谷川潔の「ゾクゾクする版画」
自分の欲する表現ができるよう多様な技法を駆使し、彼独自のメゾチントを確立していったのです。黒を際立たせるには、白との関係も大事で、白い部分をどうやって浮き上がらせるかもポイントになります。描画はもちろん、表現も技術も含めてすべての能力が高い方でした。
――シンプルな風景画もありますが、神秘的な雰囲気の静物画もあります。作品のテーマも深いのですか。
滝沢さんかなり深いです。長谷川は、自然の成り立ちの法則を考え、物理や数学にも興味をもち、さまざまな文献を読み、哲学的な思想のなかで作品を制作していました。黒を使っていますが夜の絵ではなく、白昼のなかにモチーフを置き、その日常のなかに神秘を感じて独特な作風をつくり出していました。
また、構図も数学的・物理的な視点で考え、安定感のあるものになっています。長谷川は、まじめで几帳面で、完全主義的なところもあります。すべての作品は、考え抜かれた構図で仕上げられているのです。
戦争中は収容所に…
長谷川潔《アカリョムの前の草花》1969年、メゾチント 269×360mm 町田市立国際版画美術館
――長谷川は、戦前からフランスで評価されていましたが、戦争中は敵国となりました。