「苦しみの中にある現在の精神科医療にスポットライトを」名匠が見た医療の奇跡
ところがある日、いままでずっと黙っていた人が突然手をあげて発言したことがあったんです。そこは本編にも使っていますが、ある女性がダンスのワークショップを開きたいといって話し始めました。まさか彼女があんなに長く話をするとはまったく予想していませんでしたが、リアルなサプライズをもたらしてくれましたし、とても素晴らしくて力強いシーンになったと思っています。
精神医学を学ぶことで、自分を認められるようになる
―観客にとっても、非常に印象的な場面のひとつですね。本作は日本との共同製作となりましたが、監督にとって日本はどのような存在ですか?
監督日本は本当に大好きな国ですよ。特にヨーロッパにとって日本は謎めいた国でもあるので、そこがとても魅力的だなと。近代的であると同時に伝統的な部分も色濃く残っていて、さらに詩的でありながら隠された暴力性みたいなものも共存しているように感じるので、霧のようなイメージです。
―日本でも最近はメンタルヘルスの重要性が叫ばれていますが、精神医学を学ぶことはなぜ大切だとお考えですか?
監督僕が精神医学に心を動かされる理由は、自分自身と向き合うきっかけを作ってくれるから。