「苦しみの中にある現在の精神科医療にスポットライトを」名匠が見た医療の奇跡
人間というのは、誰もが心に影のようなゾーンを持っていますが、それがどういうものかわからずに恐怖や不安を抱いてしまうことがあります。
僕自身も自分のなかにそういう部分があるにもかかわらず、認めたくないと考えていた時期が長らくありました。実際、25年前に精神科クリニックのドキュメンタリーを初めて作ったときでさえ、最初は認めようとはしなかったほどです。でも、精神医学を学んだことによって、いまは自分にもそういう部分があることを簡単に自覚できるようになりました、
―本作を通してご自身が感じたことを日本の観客にも教えてください。
監督彼らは風変りなところもありますが、一緒にいるとすごくホッとすることがあります。なぜかというと、私たちは「こうあるべきだ」というスタンダードやプレッシャーを感じながら生きていることが多いですが、そんななかでも彼らはファンタジーのような軽やかさを持って生きているからです。
精神疾患の治療を受けている患者のなかには、深刻で苦しみを抱えている人も当然います。でも、この作品に登場する彼らのように頭脳明晰で世界から解放されている人たちと触れ合っているだけで感動を覚えるはずです。