「苦しみの中にある現在の精神科医療にスポットライトを」名匠が見た医療の奇跡
サプライズのような出来事は、毎日起こっていた
―なるほど。「もっとも美しいシーンは、不意に意図せずに撮れることが多い」とおっしゃっていますが、今回の撮影でもそのように感じた瞬間はありましたか?
監督精神科医療の現場にいると、サプライズのような出来事は毎日起こりました。でも、そこで絶対にしてはいけないのは、自分が撮りたいと思っていたものにはめようとしたり、固定観念を持って取り組んだりすること。あくまでも、これから起こることに対してつねに準備万端の状態でいることが重要なのです。
撮影中は予測していたことが起こるなんてことはなく、むしろ予測不可能なことばかり。それでもしっかりと注意さえ払っていれば、湧いてくるように素晴らしい出来事にたくさん出会えるのです。それこそが僕にとっては、監督としての喜びでもあります。
―そのなかでも、印象に残っている場面を挙げるとすれば?
監督毎週月曜日の朝に、アダマン号で行われている患者とスタッフのミーティングに参加していたときのこと。
そこでは新人の自己紹介があったり、プロジェクトの説明があったり、前週の振り返りをしたりしていますが、何度も行くとだんだん誰がよく発言する人で、誰が座っているだけの人なのか、というのがわかってきます。