悪魔、怪物、大食、淫欲… キャラ立ちがスゴい「悪ものたち」を集めた異色の展覧会
「死」の訪れで財産が崩れ去り、結局死んでしまえば何も残らないという教訓がこめられています。
――このような版画は、当時の人たちは飾って楽しんでいたのですか?
渡辺さん版画は、本来は手元に置いて、見て楽しむものです。例えば、16世紀に入ると素描のコレクションをする人たちが出てきますが、これは一点ものでなかなか手に入らないので、その代わりに版画をコレクションしていました。今の切手帳みたいに帳面に版画を貼って、鑑賞するというやり方です。裕福な人の趣味ですが、安い物もありました。
フェリシアン・ロップス《ポルノクラテスあるいは豚を連れた女》1881年エッチング、アクアティント
――最後のセクション「近代都市の悪ものたち」の見どころを教えてください。
渡辺さんロップスの作品はインパクトがあります。裸の女性が目隠しをしてブタを連れて歩いている版画です。
「ポルノクラテス」とは「娼婦政治家」のことで、自分の利益しか見ていない政治家を風刺している作品です。近代都市の堕落したところを見せつけているように思います。
左:フランシスコ・ホセ・デ・ゴヤ・イ・ルシエンテス《『ロス・カプリーチョス』より、何たる犠牲か》1799年エッチング、アクアティント(一部掻き落とし)